JP4478305B2 - 化粧シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の外装、内装、建具、家具、車両内装等の表面装飾等に用いられる化粧シートに関する。特に、塩化ビニル樹脂シートを使用しない非塩ビ系の化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、化粧シートの基材層や表面層等とする樹脂シートには、塩化ビニル樹脂シートが多用されてきたが、最近では、それに替わってポリオレフィン系樹脂シート等の非塩ビ系の樹脂シートが使用される様になってきた。
例えば、(1) 特開平6−16832号公報、特許第2916130号公報等では、着色したポリオレフィン系樹脂シートを基材層として用い、これに絵柄層を印刷形成した上で、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂からなる透明な表面層(表面シート)を積層し、基材層及び表面層共にポリオレフィン系樹脂からなる構成の化粧シートを開示している。
(2) また、表面層はポリオレフィン系樹脂だが、基材層にアクリル樹脂を用いた化粧シート等も試みられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1) の様に基材層及び表面層の両層にポリオレフィン系樹脂を用いた化粧シート、或いは上記(2) の様に基材層にアクリル樹脂を用い表面層にポリオレフィン系樹脂を用いた化粧シートは、いずれも、従来の塩化ビニル樹脂シートを使用した化粧シートに比べて、必ずしも満足すべき性能が得られてはいなかった。
【0004】
例えば、真空成形性が不十分な場合があった。この為、被着体の凹凸面へ真空成形積層法等で化粧シートをラミネートする場合に、化粧シートの凹凸追従性が不十分となったり、熱成形加工の適正条件幅が狭かったり(特に高結晶性ポリオレフィンを用いた場合)、或いは、化粧シートが延ばされる部分でネッキングが発生して局所的に不均一な伸びが発生したりする事があった。また、Vカット加工等の折曲加工性が不十分な場合があり、白化、亀裂、割れを生じ易かった。また、基材層をポリオレフィン系樹脂とした場合は、ポリオレフィン系樹脂は一般に難接着性の為に、化粧シートを被着体にラミネートする際には、コロナ放電処理、オゾン処理等の易接着処理や、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を使用する等、接着性を十分に留意した処方とする必要があった。
【0005】
一方、基材層にアクリル樹脂を用い表面層にポリオレフィン系樹脂を用いた化粧シートの場合では、上記被着体との接着性の問題は解消するが、アクリル樹脂は耐有機溶剤性が弱く、基材層とするアクリル樹脂シートに絵柄層を印刷形成したり、表面層を塗工形成する場合に、アクリル樹脂シートが膨潤して絵柄層の見当ズレが発生したり、アクリル樹脂シートが版に巻き付いたり白化したりする事があった。また、真空成形性、或いは、Vカット加工等の折曲加工性も十分とは言えない場合があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、塩化ビニル樹脂シートを使用しない化粧シートでありながら、真空成形性等の成形性、Vカット加工等の折曲加工性、及び、被着体に対する接着性を良好にする事である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決するために、本発明の化粧シートは、基材層上に絵柄層が形成され、前記絵柄層上にポリオレフィン系樹脂からなる表面層を積層してなる化粧シートにおいて、前記基材層が非晶性ポリエステル樹脂からなり、前記表面層が極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる内側表面層と極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂からなる外側表面層とからなる2層が共押出法により前記絵柄層上に、前記内側表面層側が前記絵柄層上に積層されている構成とした。また、本発明の化粧シートは、基材層上に絵柄層が形成され、前記絵柄層上にポリオレフィン系樹脂からなる表面層を積層してなる化粧シートにおいて、前記基材層が非晶性ポリエステル樹脂からなり、前記表面層が極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂層と前記極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂層の両面に極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂層が積層されてなる3層が共押法により前記絵柄層上に積層されている構成とした。さらに、本願発明の化粧シートは、上記構成において、前記絵柄層上に積層される極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる層が厚さ10μm以上である構成とした。
【0008】
この様に基材層に非晶性ポリエステル樹脂を用いた構成とすることで、その物性によって、真空成形性等の成形性、Vカット加工等の折曲加工性、及び被着体に対する接着性を良好にすることができる。従って、凹凸面へのラミネート時でも化粧シートの凹凸追従性は良好となる。また、熱成形加工の適正条件幅も広く成形加工し易い上、基材層によるネッキング発生も起きず、Vカット加工等の折曲加工時に白化、亀裂、割れを生じ難い。そして、被着体にラミネート時に、易接着層や接着剤に特別に留意する必要も無い。
しかも、表面層のポリオレフィン系樹脂は、少なくとも基材側を極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂とする層としてあるので、一般に密着性が悪いと言われているポリオレフィン系樹脂系ではあっても、基材層と表面層との層間密着性も良好な化粧シートにできる。
【0009】
また、本発明の化粧シートの製造方法は、非晶性ポリエステル樹脂からなる基材層上に、絵柄層を印刷形成して印刷シートとし、前記印刷シートの前記絵柄層上に共押出法によって、極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂と極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂とからなる2層構成の表面層を成膜と同時に前記極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂が前記絵柄層上になるように積層することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の化粧シートの製造方法は、非晶性ポリエステル樹脂からなる基材層上に、絵柄層を印刷形成して印刷シートとし、前記印刷シートの前記絵柄層上に共押出法によって、極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂及びその両面に極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂とからなる3層構成の表面層を成膜と同時に前記絵柄層上に積層することを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化粧シートについて、図面を参照しながら実施の形態を説明する。
【0012】
〔概要〕
先ず、図1は本発明の化粧シートの幾つかの形態例を示す断面図である。図1(A)の化粧シートSは、最も基本的な層構成と言えるものであり、非晶性ポリエステル樹脂からなる基材層1上に、ポリオレフィン系樹脂からなり且つ少なくとも基材層1側が極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる表面層2が形成され、これら基材層1と表面層2との2層から構成された化粧シートである。この場合、表面層2は、その厚み方向の全層が極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる層でも良い。
【0013】
なお、もちろんの事だが、例えば図1(A)の様な構成の本発明の化粧シートSは、何らかの装飾機能を有する。図1(A)の如く基材層1及び表面層2のみからなる構成の化粧シートSで、これら両層が無着色透明層の場合では、化粧シートを貼着する被着体に対して、塗装感等の装飾効果を付与できる化粧シートとなる。但し、通常は更に高意匠とすべく何らかの装飾処理が成された化粧シートとなる。例えば図1(A)の場合では、基材層を着色剤添加により着色した層とする装飾処理である。或いはまた、例えば次の図1(B)及び(C)で例示する如く、絵柄層3等の印刷形成による装飾処理等である。
【0014】
次に、図1(B)の化粧シートSは、非晶性ポリエステル樹脂からなる基材層1上に、絵柄層3が印刷等で形成された上に、ポリオレフィン系樹脂からなり且つ少なくとも基材層1側が極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる表面層2として、極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる内側表面層2Aと、極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂からなる外側表面層2Bとの2層構成の表面層2を形成した例である。表面層2をこの様に2層構成とする形態は、該表面層2を少なくとも基材層1側が極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる層とする形態として、(基材層全層を極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる層とするよりは)コスト面等で好ましい一形態である。
また、図1(C)の化粧シートSは、図1(B)の構成に対して、絵柄層3が形成された基材層1と表面層2とを、間に接着剤層4を介して積層した構成例である。接着剤層4により、表面層2と基材層1や絵柄層3等との層間密着性もより良好にし易くなる。
また、図1(B)及び図(C)等の形態に於いて、基材層1は着色隠蔽性として、表面層2は無着色の透明とする構成は、代表的構成でもある。
【0015】
なお、上記絵柄層3は必須ではないが、意匠表現上、通常は、各種模様を表現する為に印刷法等で、基材層とする非晶性ポリエステル樹脂シートに対して形成する。そして、この絵柄層が形成された基材層(印刷シート)に対して、表面層をポリオレフィン系樹脂シートのドライラミネーション法や、或いは該樹脂の溶融押出塗工法によって積層する。この際、表面層の基材側を極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂とするには、例えば図1(B)及び(C)に例示の如く2層構成の表面層等とする。表面層を2層構成とするには、二種類の樹脂シートの熱融着等によるラミネート、2層共押出等によると良い。
【0016】
以下、各層について順をおって更に詳述する。
【0017】
〔基材層〕
基材層1は、非晶性ポリエステル樹脂から構成する。この基材層は、通常は、該ポリエステル樹脂からなる樹脂シートとして構成する。しかし、基材層は、表面層を表面シートとして用意し、該表面シートに対して該非晶性ポリエステル樹脂の溶融塗工法で形成したりする他の方法によって形成する事も可能である。そして、基材層に非晶性ポリエステル樹脂を使用する事で、真空成形性等の成形性、折曲加工性、及び被着体への接着性が良好となる。
【0018】
上記非晶性ポリエステル樹脂としては、市販されているものとして、例えば、イーストマンケミカル社製の「Eastar PETG 6763」(商品名)(押出グレード)が使用出来る他、既に樹脂シートとなっているものとしては、鐘紡株式会社による「カネボウPETシート」(商品名)、帝人株式会社による「テイジンテトロンシート」(商品名)、電気化学工業株式会社による「デンカA−PETシート」(商品名)、東洋紡績株式会社による「東洋紡PETMAXシート」(商品名)、長瀬産業株式会社による「NAGASE A−PETシート」(商品名)、ポリテック株式会社による「ポリテックA−PETシート」(商品名)、SAEHAN社による「SAEHAN APET SEET」(商品名)、三菱化学株式会社による「ノバクリアー」(商品名)、三井・デュポンポリケミカル社による「シーラーPT」(商品名)等が使用できる。なお、包装材料分野でA−PETと呼ばれている樹脂乃至はシートは、非晶性ポリエステル樹脂である。
【0019】
非晶性ポリエステル樹脂の酸成分及びジオール成分は、例えば上記イーストマンケミカル社製の「Eastar PETG 6763」の場合は、酸成分にはテレフタル酸を、ジオール成分にはエチレングリコールの他の更に1,4−シクロヘキサンジメタノールを併用した共重合樹脂である。エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールとの割合を調整する事で、結晶化速度を約ゼロとする事ができると言われている。また、この割合を調整する事で、物性を調整する事も出来る。
【0020】
上記は非晶性ポリエステル樹脂の酸成分及びジオール成分の一例であったが、本発明で使用する非晶性ポリエステル樹脂としては、この他の酸成分及びジオール成分から構成される樹脂でも非晶性を呈する樹脂であれば構わない。例えば、酸成分としては、テレフタル酸以外にも、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸の芳香族ジカルボン酸、或いは脂環式ジカルボン酸、或いは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。また、ジオール成分としては、上述1,4−シクロヘキサンジメタノール以外のその他の脂環式ジオール、或いは、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、キシレングリコール等の芳香族ジオール等が挙げられる。非晶性ポリエステル樹脂は、通常、ジオール及び酸成分の合計が3種以上となる様に、これらの、1種又は2種以上のジオール成分と、1種又は2種以上の酸成分との共重合体として得られる。
なお、非晶性とは結晶化を全く起こさない様な樹脂でも良いが、非結晶性を呈する部分と共に結晶性を呈する部分を有する樹脂でも良い。また、非晶性ポリエステル樹脂には結晶性ポリエステル樹脂が混合されていても良い。
【0021】
なお、従来から化粧シートの基材層としてポリエステル樹脂が使用される場合、該ポリエステル樹脂としては2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)シートが一般的であり、このポリエチレンテレフタレートはエチレングリコール成分とテレフタル酸成分とからなる結晶性ポリエステル樹脂であった。従って、真空成形性等の成形性、Vカット加工等の折曲加工性が乏しく、この様な用途の化粧シートに対しては使えなかったのである。
【0022】
なお、上述の如き非晶性ポリエステル樹脂からなる基材層は、無着色透明でも良いが、無着色不透明、着色透明、着色不透明(着色隠蔽性)等でも良い。着色とするには、後述する絵柄層で述べる様な公知の着色剤を樹脂中に添加すれば良い。
【0023】
基材層は、通常は樹脂シートとして用意されるが、その様な基材層の厚みは用途によるが、通常は50〜300μm程度である。
また、基材層は単層の他に2層、3層等の複層構成であっても良い。
【0024】
〔表面層〕
表面層2は、ポリオレフィン系樹脂からなり、しかもその少なくとも基材層側すなわち内側を、極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂で構成した層である。特に内側を極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂とする事で、表面層と基材層或いは絵柄層等の表面層と接する他の層との密着性を良好にできる。
表面層の内側を極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂で構成する好ましい一形態は、図1(B)の様に、表面層2を極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂で構成する内側表面層2Aと、極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂で構成する外側表面層2Bとの2層構成とした形態であった。極性官能基は、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基等であり、これら極性官能基の1種又は2種以上がポリオレフィン系樹脂骨格に結合した構造を極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂は有する。
外側表面層2Bのポリオレフィン系樹脂は極性官能基を含有する樹脂でも良いが、少なくとも基材層等の内側の層との密着性は考慮する必要が無いので、極性官能基は含有しない極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂で構わない。しかし、表面層の上に更に上塗り層等を形成し、これらの密着性向上が必要な場合には、表面層の少なくとも表側面も、極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂で構成した方が好ましい場合もある。この様な場合は、図1(A)に例示の化粧シートSに於ける単層構成の表面層2を、その全厚み分が極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂で構成すると良い。或いは、図示は省略するが、内部を極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂として表裏両側(内外両側)を極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂とする3層構成の表面層としても良い。なお、表面層のうち、内側表面層2A等の極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂で構成する部分は、物性調整等の為に極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂を併用しても良い。
【0025】
そして、上記極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(低密度、中密度、又は高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン系樹脂、或いは各種のオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば下記のものが使用できる。
【0026】
(1)特公平6−23278号公報記載の、(A) ソフトセグメントとして、数平均分子量Mnが25,000以上、且つ、質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90質量%と、(B) ハードセグメントとして、メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10質量%、との混合物からなる軟質ポリプロピレン。
【0027】
この種のオレフィン系熱可塑性エラストマーの中でも、所謂「ネッキング」を生じ難く、加熱、加圧により各種形状に成形したりエンボス加工する際に適性良好なものとしては、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとの混合割合が、アタクチックポリプロピレンの質量比で5質量%以上50質量%以下のものである。
ポリプロピレン系のオレフィン系熱可塑性エラストマー自体は既に公知のものであるが、包装容器等従来公知の用途に用いられる場合は、強度を重視する為に、ソフトセグメントとなるアタクチックポリプロピレンの質量比が5質量%未満のものが専ら使用されていた。
しかしながら、三次元形状、乃至凹凸形状に成形したりエンボス加工するという新規な用途にこれを適用しようとすると、前記の如くネッキングを生じて良好な加工が不可能であった。
そこで、従来の組成の設計とは逆に、ポリプロピレン系のオレフィン系熱可塑性エラストマーに於いて、アタクチックポリプロピレンの質量比を5質量%以上とすることにより、エンボス加工したり、三次元形状、乃至凹凸形状の物品表面形状に成形する際のネッキングによる不均一なシートの変形、及びその結果としての皺、絵柄の歪み等の欠点を解消する事ができる。特にアタクチックポリプロピレンの質量比が20質量%以上の場合が良好である。一方、アタクチックポリプロピレンの質量比が増加し過ぎると、シート自体が変形し易くなり、シートを印刷機に通したときにシートが変形し、絵柄が歪んだり、多色刷りの場合に見当が合わなくなる等の不良が発生し易くなる。また、成形時にも破れ易くなる為に好ましくない。アタクチックポリプロピレンの質量比の上限としては、輪転グラビア印刷等の通常の輪転印刷機を用いて絵柄層を印刷し、また、シートのエンボス加工、真空成形、Vカット加工、射出成形同時ラミネート等を採用する場合は50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0028】
(2)エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂からなる熱可塑性エラストマー。ここで、そのブテンとして、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレンの3種の構造異性体のいずれも用いることができる。共重合体としては、ランダム共重合体で、非晶質の部分を一部含む上記エチレン−プロピレン−ブテン共重合体の好ましい具体例としては次の(i) 〜(iii) が挙げられる。
(i) 特開平9−111055号公報記載のもの。これは、エチレン、プロピレン及びブテンの三元共重合体によるランダム共重合体である。単量体成分の質量比はプロピレンが90質量%以上とする。メルトフローレートは、230℃、2.16kgで1〜50g/10分のものが好適である。そして、このような三元ランダム共重合体100質量部に対して、燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50質量部、炭素数12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3質量部を熔融混練してなるものである。
(ii)特開平5−77371号公報記載のもの。これは、エチレン、プロピレン、1−ブテンの三元共重合体であって、プロピレン成分含有率が50質量%以上の非晶質重合体20〜100質量%に、結晶質ポリプロピレンを80〜0質量%添加してなるものである。
(iii) 特開平7−316358号公報記載のもの。これは、エチレン、プロピレン、1−ブテンの三元共重合体であって、プロピレン及び/又は1−ブテンの含有率が50質量%以上の低結晶質重合体20〜100質量%に対して、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶質ポリオレフィン80〜0質量%を混合した組成物に対して、N−アシルアミノ酸アミン塩、N−アシルアミノ酸エステル等の油ゲル化剤を0.5質量%添加してなるものである。
【0029】
なお、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂は、単独で用いても良いし、上記(i) 〜(iii) に必要に応じ更に他のポリオレフィン系樹脂を混合して用いても良い。
【0030】
(3)特公昭53−21021号公報記載の如き、(A) ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン重合体(結晶性高分子)をハードセグメントとし、これに(B) 部分架橋したエチレン−プロピレン共重合体ゴム、不飽和エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体ゴム等のモノオレフィン共重合体ゴムをソフトセグメントとし、これらを均一に配合し混合してなるオレフィン系エラストマー。なお、モノオレフィンゴム/オレフィン重合体=50/50〜90/10(質量比)の割合で混合する。
【0031】
(4)特公昭53−34210号公報等に記載の如き、(B) 未架橋モノオレフィン共重合体ゴム(ソフトセグメント)と、(A) オレフィン系共重合体(結晶性、ハードセグメント)と架橋剤とを混合し、加熱し剪断応力を加えつつ動的に部分架橋させてなるオレフィン系エラストマー。なお、(B) モノオレフィンゴム/(A) オレフィン系共重合体=60/40〜80/20(質量比)である。
【0032】
(5)特公昭56−15741号公報等に記載の如き、(A) アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体等のペルオキシドと混合・加熱すると分子量を減じ、流動性を増すペルオキシド分解型オレフィン重合体(ハードセグメント)と、(B) エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体ゴム等のペルオキシドと混合・加熱することにより、架橋して流動性が減じるペルオキシド架橋型モノオレフィン共重合体ゴム(ソフトセグメント)、(C) ポリイソブチレン、ブチルゴム等のペルオキシドと混合・加熱しても架橋せず、流動性が不変の、ペルオキシド非架橋型炭化水素ゴム(ソフトセグメント兼流動性改質成分)、及び(D) パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油系軟化剤、とを混合し、有機ペルオキシドの存在下で動的に熱処理してなるオレフィン系エラストマー。なお、(A) が90〜40質量部、(B) が10〜60質量部で、(A) +(B) =100質量部として、これに、(C) 及び/又は(D) が5〜100質量部の配合比となる。
【0033】
(6)特開平2−139232号公報に記載の如き、エチレン−スチレン−ブチレン共重合体からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー。
【0034】
一方、上述の極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、極性官能基としてヒドロキシル基又は/及びカルボキシル基を持たせた、上記(1)から(6)のオレフィン系熱可塑性エラストマー等を使用できる。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のグラフト重合でヒドロキシル基を、また、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の共重合体でカルボキシル基を導入したオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いる。極性官能基がこの様に例えばヒドロキシル基とカルボキシル基の場合、どちらか一方、又は両方を併用してもよい。また、極性官能基としては、カルボニル基等でも良い。また、これら極性官能基を付与するポリオレフィン系樹脂としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー以外のポリオレフィン系樹脂、例えば、ポリエチレン(低密度、中密度、又は高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン系樹脂等でも良い。
【0035】
また、極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂としては、エチレンと、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド又はカルボン酸イミド、アルデヒド、ケトン等に基づくカルボニル基を単独で、或いは、シアノ基、ヒドロキシル基、エーテル基、オキシラン環等との組み合わせで有するエチレン系不飽和単量体の1種又は2種との共重合体等も用いることができる。なお、この様な極性官能基含有単量体の共重合比は、通常0.1〜10質量%程度でその密着性向上効果が得られる。
【0036】
なお、上記エチレン系不飽和単量体としては、例えば次の(A) 〜(D) 等が挙げられる。なお、好ましくは、(A) エチレン系不飽和カルボン酸、或いは(B) エチレン系不飽和無水カルボン酸が用いられる。また、エチレンとエチレン系不飽和カルボン酸との共重合体の金属中和物(アイオノマー)等も使用する事ができる。
【0037】
(A) エチレン系不飽和カルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等。
(B) エチレン系不飽和無水カルボン酸;テトラヒドロ無水フタル酸等。
(C) エチレン系不飽和エステル;アクリル酸エチル、メタクリ酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、γ−ヒドロキシメタクリル酸プロピル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−N−エチルアミノエチルアクリレート等。
(D) エチレン系不飽和アミド又はイミド;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレインイミド等。
【0038】
なお、表面層の形成は、予め熔融押出法、カレンダー法等の公知の成膜方法によってシート(フィルム)化した樹脂シートを、基材層とするシートにドライラミネーション、或いは熱融着によって積層する事で形成できる。或いは、表面層とする樹脂を、基材層とするシートに対して、熔融押出塗工法(EC法)によって成膜と同時に形成しても良い。また、図1(B)や図1(C)で例示の2層構成の表面層の様に多層構成の表面層は、シート化した各層を熱融着等で接着積層しても良いが、熔融押出時に多層押出しする事で形成すれば良い。
なお、表面層(全体の)の厚みは、用途、層構成(単層、多層)等によるが、通常は10〜300μm程度である。また、表面層を2層等の多層構成する場合等に於ける、極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂から構成する内側表面層2Aは、層間密着性向上が目的であるので、安定的に成膜できる厚さ以上であれば良く、通常は10μm以上である。
【0039】
なお、表面層2中には、必要に応じ、着色剤、充填剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤を添加する。
また、表面層は通常はその下側に設ける絵柄層が透視可能な様に、透明(無着色又は着色)とするが、表面層の下に絵柄層が無く例えば表面層の着色自体が装飾機能を有する場合等では、表面層は不透明であっも良い。
【0040】
なお、上記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系等の有機物の紫外線吸収剤の他に、粒径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物を用いることができる。光安定剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤を用いることができる。
【0041】
〔装飾処理〕
前述した如く、本発明の化粧シートには通常は何らかの装飾処理が施されている。装飾処理としては、基材層や表面層中への着色剤添加による着色(透明又は不透明着色)、装飾層として図1(B)や図1(C)の化粧シートSで示す様な、模様等を表現する印刷等による絵柄層3の付与、或いは、エンボス加工(加熱プレス)、ヘアライン加工等による表面層表面等への凹凸模様賦形等である。この様な装飾処理は、化粧シートに於ける従来公知の各種装飾処理で良い。また、各種装飾処理は、用途に応じて適宜組み合わせても使用する。なかでも、次に述べる絵柄層3は、装飾処理によって設ける代表例でもある。
【0042】
絵柄層3は、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インキジェット印刷等公知の印刷法によってインキにて形成する。また、全面ベタ柄の場合は、グラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法によって塗料で形成する事もできる。絵柄層の模様としては、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、或いは全面ベタ等がある。
なお、絵柄層は、木目模様等の模様を表現する柄パターン層と、全面ベタ層との組み合わせでも使用される。全面ベタ層は、通常、隠蔽層、着色層、着色隠蔽層等として使用される。但し、全面ベタ層を基材層と表面層との間に表面層に接して設ける場合は、表面層は基材層と全く接触しない為、表面層を少なくとも基材層側を極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる層とする目的は、表面層と基材層との直接の層間密着性で無く、表面層と該全面ベタ層からなる絵柄層と層間密着性向上が目的となる。
【0043】
なお、絵柄層は、通常は、基材層1とする樹脂シートに印刷形成する為、図1(B)及び(C)で例示する化粧シートSの如く、基材層1の表側面に形成されるが、この他、絵柄層は、基材層の裏面、表裏両面、或いは、表面層を樹脂シートで形成する場合では、該樹脂シートの裏側面、表側面、表裏両面等も可能である。特に、本発明では、基材層に非晶性ポリエステル樹脂を使用しているので、従来、基材層にアクリル樹脂シートを使用した場合に起き易かった印刷時の耐有機溶剤性の問題が起き難いので、基材層とする樹脂シートに対して絵柄層を形成する方法、及びそれによる層構成は、好ましい形態の一つである。
【0044】
なお、上記絵柄層形成に用いるインキ(或いは)塗料としては、バインダーとして、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、或いは、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン樹脂等を、1種又2二種以上混合して用いる。
また、上記インキ(或いは)塗料に用いる着色剤としては、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノンイエロー、ハンザイエローA、キナクリドンレッド、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(或いは染料も含む)、アルミニウム、真鍮、等の金属粉末からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料、蛍光顔料等を、1種又は2種以上混合して用いる。
【0045】
上述絵柄層は、装飾層として形成する代表的な層の一つであったが、装飾層としては、金属薄膜層等でも良い。金属薄膜層の形成は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を用い、真空蒸着、スパッタリング等の方法で製膜する。或いはこれらの組み合わせでも良い。該金属薄膜層は、全面に設けても、或いは、部分的にパターン状に設けても良い。
【0046】
装飾処理としての凹凸模様賦形では、凹凸模様を、ヘアライン加工、サンドブラスト加工、エンボス加工等により賦形する。例えば、エンボス加工は、熱プレス方式の枚葉又は輪転式エンボス機を用いて、加熱軟化させた樹脂シートの表面にエンボス版を押圧して形成する。該樹脂シートは、表面層とする樹脂シート、或いは基材層とする樹脂シートである。また、凹凸模様の賦形は、樹脂シートの成膜と同時に賦形しても良い。例えば、Tダイ溶融押出法にて、冷却ローラとして凹凸模様を冷却面に有するエンボス兼冷却ローラを用いて、成膜と同時に賦形する方法等である。また、凹凸模様の賦形は、基材層とする樹脂シートと、表面層とする樹脂シートとを積層すると同時に、表面層とする樹脂シートの表側面に熱圧によるエンボス加工で賦形する所謂ダブリングエンボス法によって、賦形する方法もある。
なお、凹凸模様としては、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等である。また、凹凸模様は通常は表面層の表側面だが、表面層裏側面、基材層表側面、基材層裏側面の場合もある。
【0047】
また、装飾処理としては、凹凸模様の凹部内に公知のワイピング法(特公昭58−14312号公報等参照)によって、着色インキを充填して着色部を形成することもできる。着色インキは前記絵柄層と同様の物が可能である。但し、耐摩耗性の点で、2液硬化型ウレタン樹脂をバインダーとする物が好ましい。なお、ワイピング法は、ドクダーブレード法、ロールコート法等、従来から使用されているワイピング法のいずれによっても良い。すなわち、凹凸模様全面に着色インキを塗工し、而る後に、凸部のインキをドクダーブレード、スポンジロール、布等で掻き落としたり、拭き取ったりして、凹部に着色インキを残留させるようにする。
【0048】
また、装飾処理には、艶調整、塗装感等の意匠性付与の為の上塗り層を、表面層の上に更に形成する処理等もある。但し、上塗り層は化粧シートの最表面層となる為に、装飾処理と言うよりは、耐擦傷性、耐汚染性等の表面物性の向上目的で通常は設ける。もちろん、装飾と表面物性向上の両方を目的に設ける事もある。上塗り層には、2液硬化型等のウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート系等の電離放射線硬化性樹脂等の樹脂が使用される。上塗り層の形成は、これら樹脂からなる塗液を用いてグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法で形成する。なお、上塗り層中には、必要に応じ適宜、炭カルシウム、シリカ等の艶消し剤、アルミナ、シリカ等の減磨剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等の公知の添加剤を添加する。また、上塗り層の厚さは通常1〜10μm程度である。
【0049】
〔接着剤層〕
接着剤層4は、基材層1と表面層2との間に設けてこれらの層間密着性を向上させる層であるが、好ましくは図1(C)の如く、表面層2の基材側面に接する様に設ける。その結果、本発明では表面層2を、その基材側の面を極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂から構成してはいるが、該接着剤層によって更に、表面層の基材側の面に接する層(基材層、絵柄層等)との密着性をより向上させる事ができる。
【0050】
接着剤層4としては、2液硬化型ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、或いは、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン樹脂等を使用すれば良い。接着剤層は、これら樹脂による塗料又はインキを、ロールコート、グラビア印刷等の公知の塗工又は印刷法で形成すれば良い。形成対象は、表面層とする樹脂シート、基材層とする樹脂シート、或いはこれら両方である。そして、例えば、表面層とする樹脂シートに接着剤層を形成後、この樹脂シートと、基材層とする樹脂シートに絵柄層等を印刷した印刷シートとを、該接着剤層を介してドライラミーション法等によって接着積層して化粧シートとする。
【0051】
なお、上記2液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオールを主剤としイソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。ポリオールは分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物で、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が用いられる。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートが用いられる。或いはまた、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等も用いられる。
【0052】
〔化粧シートの被着体〕
なお、本発明の化粧シートの用途は特に限定されず、各種被着体の表面に積層して表面を化粧する用途に用いる。被着体は各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等である。例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として用いられる木質板素材、鉄、アルミニウム等の板材、立体形状物品或いはシート等として用いられる金属素材、ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として用いられる窯業系素材、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品或いはシート等として用いられる樹脂素材、或いは、専らシートとして用いられる上質紙、和紙等の紙、炭素、石綿、ガラス、合成樹脂等の繊維からなる不織布または織布が挙げられる。
【0053】
〔化粧シートの被着体への積層方法〕
被着体への化粧シートの積層方法としては、例えば(1) 接着剤を間に介して板状の被着体に加圧ローラーで加圧して積層する方法、(2) 特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載される様に、化粧シートを射出成形の雌雄両金型間に配置した後、溶融樹脂を型内に射出充填し、樹脂成型品である被着体の成形と同時にその表面に化粧シートを接着積層する、所謂射出成形同時ラミネート方法、(3) 特公昭56−45768号公報、特公昭60−58014号公報等に記載される様に、立体形状の被着体の表面に化粧シートを、間に接着剤を介して対向又は載置し、被着体側からの少なくとも真空吸引と更に適宜化粧シート側からの圧空押付けの併用による圧力差により化粧シートを被着体の表面に積層する、所謂真空成形積層方法、(4) 特公昭61−5895号公報、特公平3−2666号公報等に記載されるように、円柱、多角柱等の柱状の被着体の長軸方向に、化粧シートを間に接着剤を介して供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、被着体を構成する複数の側面に順次化粧シートを加圧接着して積層してゆく、所謂ラッピング加工方法が有る。
【0054】
なお、化粧シートを積層して化粧板とした物に対する更なる加工方法としては、実公大15−31122号公報、特開昭48−47972号公報に記載される様に、まず化粧シートを板状の被着体に間に接着剤を介して積層して化粧板とし、化粧シートとは反対側の面に、化粧シートと被着体との界面に到達する、断面がV字状、又はU字状溝を切削し、次いで該溝内に接着剤を塗布した上で該溝を折り曲げ箱体又は柱状体を成形する所謂、Vカット又はUカット加工法等の折曲加工法がある。
【0055】
特に、本発明の化粧シートでは、真空成形性等の成形性、及び折曲加工性を確保してあるので、上記方法のうち(2) 、(3) 、(4) 等の積層方法、及びVカット加工法等の折曲加工方法が好適である。
【0056】
〔化粧シート及びその積層物の用途〕
本発明の化粧シートは各種被着体に積層し、必要に応じて所定の成形加工等を施して、各種用途に用いる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、家具又は弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輛内装、航空機内装、船舶内装、窓硝子の化粧等である。
【0057】
【実施例】
以下、本発明の化粧シートを実施例により更に説明する。
【0058】
〔実施例1〕
図1(B)に示す構成の化粧シートSを、次の様にして作製した。
先ず、基材層1として、非晶性ポリエステル樹脂〔イーストマンケミカル社製、「Easter PETG 6763」(商品名)〕に、着色剤としてチタン白、黄鉛、弁柄を主体とする着色顔料を添加して、黄褐色に着色した着色樹脂を熔融押出法で成膜して、厚さ60μmで隠蔽性の着色樹脂シートを用意した。
次に、上記着色樹脂シートの片面に、木目模様の絵柄層3を印刷形成して印刷シートとした。該絵柄層は、バインダーの樹脂に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との1対1質量比の混合樹脂を使用し、着色剤に弁柄及びカーボンブラックを使用した着色インキをグラビア印刷して形成した。
【0059】
そして、上記印刷シートの絵柄層印刷面に対して、2層共押出法によって、厚さ10μmの内側表面層2A及び厚さ50μmの外側表面層2Bとからなる2層構成で厚さ60μmの表面層2を成膜と同時に積層して、化粧シートSを得た。なお、内側表面層2Aには、マレイン酸をグラフト重合したポリプロピレン系のオレフィン系熱可塑性エラストマー(アイソタクチックポリプロピレン/アタクチックポリプロピレン=75/25質量比混合)を、極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂として使用した。一方、外側表面層2Bには、エチレン−プロピレンランダム共重合体系のオレフィン系熱可塑性エラストマーにベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.5重量%及びヒンダードアミン系光安定剤を0.3重量%添加した樹脂を、極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂として使用した。
【0060】
〔実施例2〕
図1(C)に示す構成の化粧シートSを、次の様にして作製した。
実施例1に於いて、基材層1に絵柄層3を形成した印刷シートに、表面層3を2層共押出法で積層する前に、前記印刷シートの絵柄層印刷面に対して、アクリルポリオール100質量部と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート8質量部とからなる2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を塗工して、厚さ10μmの接着剤層4を形成した後、表面層2を積層して、化粧シートとした。
【0061】
〔比較例1〕
基材層としてエチレン−プロピレンランダム共重合体からなる厚み60μmの樹脂シートを使用して、この樹脂シートの片面に実施例1同様の絵柄層を印刷形成して印刷シートとした後、該絵柄層印刷面に、表面層としてエチレン−プロピレンランダム共重合体系のオレフィン系熱可塑性エラストマーを熔融押出塗工法で成膜と同時に積層して、化粧シートを作製した。
【0062】
〔比較例2〕
比較例1に於いて、基材層として、厚さ60μmのアクリル樹脂シートを使用した他は、比較例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0063】
〔性能評価〕
真空成形性と、化粧シートの層間密着性の評価結果について、表1に示す。なお、真空成形性と層間密着性は次の様にして評価した。
【0064】
(1) 真空成形性:縦横各100mm、厚さ30mmのラワン合板の表面中央部に、深さ5mmで角度90度の断面V字状の直線状V溝を形成したものを被着体として、この被着体に、裏面にウレタン系接着剤を施した上記化粧シートを、真空成形積層方法にて貼り合わせた。そして、化粧シートが上記V溝内に綺麗に成形されて入り込んだものは良好、V溝から浮いていたものは不良とした。
【0065】
(2) 層間密着性:基材層と表面層間の層間密着性について、25mm幅に切断した化粧シートの端部分を、基材層側と表面層側の二つに引き剥がした後、引張試験機を用いたT型剥離試験により基材層側と表面層側とを引き剥がし、その時の剥離強度で評価した。剥離強度が20〔N/25mm幅〕(約2kgf/25mm幅)以上は良好、それ未満は不良とした。
【0066】
【表1】
【0067】
表1の如く、実施例1及び実施例2は、真空成形性、層間密着性共に良好であった。しかし、比較例1は何方も不良であり、また、基材層がアクリル樹脂である比較例2は、真空成形性は一応満足したものの、層間密着性が不良であった。
なお、被着体との接着性は、各実施例及び比較例2は良好であったが、基材層にポリオレフィン系樹脂を用いた比較例1は十分とは言えず不良であった。また、Vカット加工適性は実施例1及び実施例2は良好であったが、比較例1及び比較例2は、十分とは言えず不良であった。
【0068】
【発明の効果】
(1) 本発明の化粧シートによれば、真空成形等の成形性、折曲加工性、及び被着体に対する接着性が良好となる。この結果、成形性が良好な為に、凹凸面へのラミネート時でも化粧シートの凹凸追従性が良く、また、熱成形加工の適正条件幅も広く成形加工し易い上、基材層によるネッキング発生も起きない。また、折曲加工性が良好な為に、Vカット加工等の折曲加工時に、ネッキングや、白化、亀裂、割れを生じ難い。そして、接着性が良好な為に、化粧シートを被着体にラミネート時に、易接着層や接着剤に特別に留意する必要も無い。また、化粧シート層内の層間密着性も良好となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧シートの幾つかの形態例を示す断面図。
【符号の説明】
1 基材層
2 表面層
2A 極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる内側表面層
2B 極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂からなる外側表面層
3 絵柄層
4 接着剤層
S 化粧シート
Claims (5)
- 基材層上に絵柄層が形成され、前記絵柄層上にポリオレフィン系樹脂からなる表面層を積層してなる化粧シートにおいて、
前記基材層が非晶性ポリエステル樹脂からなり、前記表面層が極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる内側表面層と極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂からなる外側表面層とからなる2層が共押出法により前記絵柄層上に、前記内側表面層側が前記絵柄層上に積層されていることを特徴とする化粧シート。 - 基材層上に絵柄層が形成され、前記絵柄層上にポリオレフィン系樹脂からなる表面層を積層してなる化粧シートにおいて、
前記基材層が非晶性ポリエステル樹脂からなり、前記表面層が極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂層と前記極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂層の両面に極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂層が積層されてなる3層が共押法により前記絵柄層上に積層されていることを特徴とする化粧シート。 - 前記絵柄層上に積層される極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂からなる層が厚さ10μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。
- 非晶性ポリエステル樹脂からなる基材層上に、絵柄層を印刷形成して印刷シートとし、前記印刷シートの前記絵柄層上に共押出法によって、極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂と極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂とからなる2層構成の表面層を成膜と同時に前記極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂が前記絵柄層上になるように積層することを特徴とする化粧シートの製造方法。
- 非晶性ポリエステル樹脂からなる基材層上に、絵柄層を印刷形成して印刷シートとし、前記印刷シートの前記絵柄層上に共押出法によって、極性官能基未含有ポリオレフィン系樹脂及びその両面に極性官能基含有ポリオレフィン系樹脂とからなる3層構成の表面層を成膜と同時に前記絵柄層上に積層することを特徴とする化粧シートの製造方法。
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