JP4475774B2 - 放電ランプ用の陰極の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アーク放電に伴う発光を利用する放電ランプ用の陰極を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は、アーク放電に伴う発光を利用する放電ランプの構造を示す正面図である。図中10は、石英ガラス製の封体であり、石英ガラス製の円筒の長手方向の中央部を略球状に膨出させた形状になしてある。封体10の両端は図示しないモリブデン箔によって封止してあり、該両端に口金11,11を外側から嵌着してある。封体10内にはキセノン又は水銀などの所要のガスが適宜の圧力にて封入してある。
【0003】
封体10の中央部の内部には、アーク放電中の温度に耐えられるだけの2600℃以上の融点を持つタングステン又はモリブデンなどの高融点金属を尖頭棒状および砲弾形状に形成した陰極9および陽極12が、封体10の中心軸上に所定距離を隔てて対向配置してある。陰極9及び陽極12は、導体製の支持ロッド13,13によって支持され、支持ロッド13,13はモリブデン箔を介して口金11,11に夫々連結してある。そして、口金11,11の間に所要の電圧を印加し、陰極9及び陽極12の間でアーク放電を起こすことによって高輝度の光を放射させる。
【0004】
陰極からの電子放射性を向上させ、アーク放電を安定させるために、電子放射性が良いトリウム又はランタン等の電子放射性物質を含んだ高融点金属にて製造した陰極が、従来用いられている。また、これを改良したものとして、耐熱性を向上させるために、陰極の本体は高融点金属により形成されており、前記電子放射性物質を含んで陰極の本体よりも電子放射性が良い電子放射体を先端部に備えた陰極が、よく知られている。
【0005】
図6は、電子放射性が良い電子放射体を先端部に備えた陰極を製造する従来の方法を示した断面図である。図6(a)に示す如く、高融点金属にて円柱形状に形成された陰極基体8の先端部に空洞14を設け、陰極基体8よりも電子放射性が良い電子放射体1を空洞14に挿入する。電子放射体1には、電子放射性物質を数%含んだ高融点金属の粉末を焼結させたものが主に用いられる。次に、図6(b)に示す如く、ハンマHにて陰極基体8および電子放射体1の先端を叩きつぶし、図6(c)に示す如く、電子放射体1を空洞14に充填すると共に固定する。最後に、図6(d)に示す如く、陰極基体8の先端部を裁頭円錐状に切削加工して陰極9を完成させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述の如き製造方法を用いて製造された陰極は、電子放射体と陰極基体との間の密着性が良くないために、電子放射体と陰極基体との間の熱伝導性が悪い。このため、放電ランプの点灯中に最も温度が高くなる先端に位置する電子放射体が、陰極基体へ熱が伝わらないために局所的に過熱され、電子放射体が蒸発して陰極が損耗し、さらに蒸発した電子放射体が付着して放電ランプの内面が曇るため、陰極および放電ランプの寿命が短いという問題があった。
【0007】
また、陰極基体および外径が1〜2mm程度の電子放射体を個別に形成し、陰極基体の先端に電子放射体の外径とほぼ同じ径の空洞を設け、電子放射体を挿入してハンマにて一体化させるため、作業対象の寸法が小さく、作業が困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、電子放射性が良い電子放射体を埋め込んだ高融点金属の粉末を焼結して陰極を製造することにより、陰極基体と電子放射体との密着性を向上させ、また、電子放射体と陰極基体とを一体化させる作業を簡便化することができる放電ランプ用の陰極の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る放電ランプ用の陰極の製造方法は、先端部に電子放射性が良い電子放射体を備えた放電ランプ用の陰極の製造方法において、有底の筒状に形成された金型の底に、該金型の中心軸に沿って棒状の電子放射体を配置し、該電子放射体が高融点金属の粉末に埋め込まれて開放側には露出しないように、前記金型内を高融点金属の粉末で充填し、前記金型内を充填した高融点金属の粉末を圧縮し、前記電子放射体が埋め込まれて圧縮された前記粉末を焼結することにより、先端部に前記電子放射体が位置した柱状の陰極素体を形成し、該陰極素体の先端部が先細り状になり、また該陰極素体の先端に前記電子放射体の先端が露出するように、前記陰極素体の先端部を鍛造または切削することを特徴とする。
【0010】
本発明においては、電子放射性が良い電子放射体を高融点金属の粉末の中に埋め込み、該粉末を圧縮および焼結して前記電子放射体が一体化した陰極素体を製造するため、陰極基体と電子放射体との密着性を向上させることができる。また、電子放射体と陰極基体とを一体化させる作業を簡便化することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、電子放射性が良い電子放射体の製造工程を説明する説明図である。図中1は電子放射体であり、2はタングステンロッドである。電子放射性が良いトリウム又はランタン等の電子放射性物質を数%包有したタングステンからなるタングステンロッドが、市販されている。このタングステンロッド2を適宜の長さに切断し、棒状の電子放射体1を作成する。電子放射体1の主成分はタングステンに限るものではなく、モリブデンなど他の高融点金属であってもよい。また、タングステンなどの高融点金属の粉末と前記電子放射性物質の粉末とを混合し、混合した粉末を棒状に焼結させて電子放射体1を形成する手順としてもよい。
【0012】
図2は、本発明の圧縮の工程を示す断面図である。図中3は金型であり、有底円筒状に形成されている。金型3の底の中央には縦穴が設けられ、設けられた縦穴の形状は電子放射体1の外形に合わせられ、該縦穴の長さは電子放射体の長さよりも短く形成されている。図2(a)に示す如く、前記縦穴に電子放射体1を挿入して立て、タングステンの粉末5を金型3の中に充填する。このとき、タングステンの粉末5は金型3の形状に合わせて円柱状に成型され、金型3の底に当たる方の端には電子放射体1が位置している。次に、図2(b)に示す如く、油圧式又は機械式のプレス機を用い、金型3の開放側からパンチ4により粉末5を所要の圧力にて圧縮し、圧縮粉末5aに電子放射体1が一体化した圧縮成型体6を形成する。
【0013】
次に、形成した圧縮成型体6を金型3より取り出し、焼結炉による加熱、又は圧縮成型体6に通電することによる加熱などの方法により、圧縮成型体6を1000℃〜1500℃程度の適宜の温度まで加熱して焼結させ、陰極素体を形成する。以上の圧縮および焼結の工程は、不純物の混入を避けるために、真空中または所要の雰囲気中にて行う。図3は、圧縮および焼結の工程にて円柱状に形成した陰極素体7を示す断面図であり、図中8は圧縮粉末5aが焼結した陰極基体である。陰極素体7の先端部には電子放射体1が位置しており、陰極基体8に電子放射体1が密着して一体化している。
【0014】
次に、陰極素体7の先端部を、適宜の温度まで加熱して先細り状に鍛造するか、又は切削加工することにより、先細り状に加工し、円錐の先端に電子放射体1の先端が露出した円錐形状に加工して陰極を完成する。図4は、完成した陰極9を示す断面図である。
【0015】
本実施の形態においては、陰極基体8の原料である粉末5はタングステンの粉末としたが、モリブデンなど他の高融点金属の粉末であってもよい。また、プレス機を用いた圧縮の工程の後に高温加熱による焼結を行う手順を示したが、圧縮成型体6を金型3の内部でそのまま高温加熱して焼結させ、陰極素体7を形成する手順としてもよい。また、圧縮の工程においては、静水圧プレスを用いて圧縮成型体6を形成する手順としてもよい。
【0016】
【発明の効果】
本発明により製造された陰極は、陰極基体よりも電子放射性が良い電子放射体と陰極基体との密着性が良く、電子放射体の熱が陰極基体に伝わり易いために、電子放射体が局所的に過熱されて蒸発することを抑制し、放電ランプの寿命を長くすることができる。また、電子放射体を埋め込んだタングステン粉末を焼結させることで陰極基体の形成と電子放射体の陰極基体への一体化とを同時に行うため、陰極基体を電子放射体へ一体化させる作業を簡便化することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】電子放射体の製造工程を説明する説明図である。
【図2】本発明の圧縮の工程を示す断面図である。
【図3】陰極素体を示す断面図である。
【図4】完成した陰極を示す断面図である。
【図5】アーク放電に伴う発光を利用する放電ランプの構造を示す正面図である。
【図6】先端部に電子放射体を備えた陰極を製造する従来の方法を示した断面図である。
【符号の説明】
1 電子放射体
2 タングステンロッド
3 金型
4 パンチ
5 粉末
5a 圧縮粉末
6 圧縮成型体
7 陰極素体
8 陰極基体
9 陰極

Claims (1)

  1. 先端部に電子放射性が良い電子放射体を備えた放電ランプ用の陰極の製造方法において、
    有底の筒状に形成された金型の底に、該金型の中心軸に沿って棒状の電子放射体を配置し、該電子放射体が高融点金属の粉末に埋め込まれて開放側には露出しないように、前記金型内を高融点金属の粉末で充填し、前記金型内を充填した高融点金属の粉末を圧縮し、前記電子放射体が埋め込まれて圧縮された前記粉末を焼結することにより、先端部に前記電子放射体が位置した柱状の陰極素体を形成し、該陰極素体の先端部が先細り状になり、また該陰極素体の先端に前記電子放射体の先端が露出するように、前記陰極素体の先端部を鍛造または切削することを特徴とする放電ランプ用の陰極の製造方法。
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