JP4475599B2 - 車両挙動安定化装置 - Google Patents

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Description

本発明は車両挙動安定化装置に関し、特に、車両のアンダーステアやオーバーステア等の車両挙動不安定を検出し、原動機制御器による原動機出力低減とトランスミッション制御器による変速比の変更を自動的に実施し、車両を減速させることで、車両挙動を安定化させるための車両挙動安定化装置に関するものである。
従来の車両挙動安定化装置として、車両挙動不安定を検出し、原動機制御器による原動機出力低減とトランスミッション制御器による変速比の低速側(原動機1回転当たりの駆動輪回転数が少ない側)への変更(以降、シフトダウンと記載する)を自動的に実施し、車両を減速させることで、車両挙動を安定化する装置があった(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−312465号公報
一般的なトランスミッション制御器は、車両の速度、アクセル開度、シフトレバー位置等に応じて、目標の変速比を決定し、現在の変速比から目標の変速比への変更を常に行っており、ドライバはシフトレバー操作によりシフトダウンやシフトアップを指示することができる。ここでドライバのシフトレバー操作によるシフトダウンを実施する際の、変速比の時間変化例を図13に示す。図13において、変速比は現在の変速比から目標の変速比へ、ある程度の時間(以降、変速時間と記載する)をかけて徐々に変更される。トランスミッション制御器内では、上記変速時間(又は変速時間に影響するパラメータ)が予め設定されており、これに基づいて変速比が徐々に変更される。そして、この変速時間は、一般的に搭乗者の乗り心地確保を優先して設定されており、通常、変速機構が機械的に耐えうる最短の変速時間よりも大幅に長い時間に設定されている。
このような中、上記特許文献1に記載されているような従来装置は、車両挙動不安定を検出し、自動的にシフトダウンを実施する際、前記のようなドライバのシフトレバー操作によるシフトダウン時と同じ変速時間設定値(搭乗者の乗り心地確保を優先して設定した値)に基づき変速比を変更していた。このため、車両の減速が緩やかで、車両挙動の安定化効果が小さいという問題点があった。
この発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、車両挙動不安定を検出し自動的に変速比を変更する際、通常走行時に比べ短時間で変速比を変更し、車両を即座に減速させることで、車両挙動を的確に安定化することが可能な車両挙動安定化装置を得ることを目的としている。
この発明は、車両の挙動不安定あるいは挙動不安定度合いを検出する車両挙動不安定検出手段と、原動機の状態に応じて原動機出力を制御する原動機制御手段と、前記原動機制御手段からの前記原動機出力の車輪への伝達を制御するトランスミッション制御手段とを備え、前記トランスミッション制御手段は変速比の変更を実施するものであって、前記車両挙動不安定検出手段の検出結果により前記車両が挙動不安定であると判定された時に、前記トランスミッション制御手段は、前記変速比の変更動作を通常走行時に比べて短時間で実施することで、車輪の駆動トルクを即座に減少させ、車両を減速させる車両挙動安定化装置である。
この発明は、車両の挙動不安定あるいは挙動不安定度合いを検出する車両挙動不安定検出手段と、原動機の状態に応じて原動機出力を制御する原動機制御手段と、前記原動機制御手段からの前記原動機出力の車輪への伝達を制御するトランスミッション制御手段とを備え、前記トランスミッション制御手段は変速比の変更を実施するものであって、前記車両挙動不安定検出手段の検出結果により前記車両が挙動不安定であると判定された時に、前記トランスミッション制御手段は、前記変速比の変更動作を通常走行時に比べて短時間で実施することで、車輪の駆動トルクを即座に減少させ、車両を減速させる車両挙動安定化装置であるので、車両挙動不安定を検出し自動的に変速比を変更する際、通常走行時に比べ短時間で変速比を変更し、車両を即座に減速させることで、車両挙動を的確に安定化することができる。
以下、この発明に係る車両挙動安定化装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る車両挙動安定化装置の構成図である。1は電動パワーステアリング制御器(本実施の形態における、車両挙動不安定検出手段)であり、電動パワーステアリングの制御を行うとともに車両が通常走行か挙動不安定かを検出するものである。2は、原動機の状態に応じて原動機出力を制御する原動機制御器、3は、原動機出力の車輪への伝達を制御するトランスミッション制御器である。これらの制御器は例えばCANのような通信バスに接続されており、互いにメッセージ通信を行えるようになっている。
次に本実施の形態に係る車両挙動安定化装置の動作を説明する。本実施の形態に係る車両挙動安定化装置は、電動パワーステアリング制御器1が車両挙動不安定(ここではアンダーステアとする)を検出した場合に、原動機制御器2及びトランスミッション制御器3が車両の減速制御を実施するものである。以下に、それぞれの制御器の詳細について説明する。
電動パワーステアリング制御器1の詳細を説明する。図2は、本実施の形態における電動パワーステアリング制御器1の詳細構成図である。なお、ここではアンダーステア検出に関する部分を示し、操舵アシストトルク制御のみに関する部分は一般的であるので省略する。図2において、電動パワーステアリング制御器1は、操舵角センサ11、車速センサ12、操舵トルクセンサ13、モータ電流センサ14およびモータ回転速度センサ15からなる各種センサと、規範路面反力トルク演算器16、推定路面反力トルク演算器17およびアンダーステア判定器18からなる演算処理部を備えている。
操舵角センサ11、車速センサ12、操舵トルクセンサ13、モータ電流センサ14およびモータ回転速度センサ15は、電動パワステ装置を含む車両の操舵系(図示せず)に関連して設けられている。操舵角センサ11は、車両のハンドル(図示せず)の操舵角θhを検出し、車速センサ12は、車両の車速Vを検出し、操舵トルクセンサ13は、車両のドライバによりハンドルに印加される操舵トルクTsを検出する。モータ電流センサ14は、ドライバの操舵力をアシストするための電動パワステ用の電動モータ(図示せず)に流れるモータ電流Imtrを検出し、モータ回転速度センサ15は、電動パワステ用の電動モータのモータ回転速度ωmtrを検出する。
操舵角センサ11からの操舵角θhおよび車速センサ12からの車速Vは、規範路面反力トルク演算器16に入力される。
また、車速センサ12からの車速V、操舵トルクセンサ13からの操舵トルクTs、モータ電流センサ14からのモータ電流Imtrおよびモータ回転速度センサ15からのモータ回転速度ωmtrは、推定路面反力トルク演算器17に入力される。
規範路面反力トルク演算器16は、操舵角θhおよび車速Vに基づいて、規範路面反力トルクTalign_refを演算してアンダーステア判定器18に入力する。
推定路面反力トルク演算器17は、操舵トルクTs、モータ電流Imtr、モータ回転速度ωmtrおよび車速Vに基づいて、推定路面反力トルクTalign_estを演算して、アンダーステア判定器18に入力する。
なお、路面反力トルクとは、ハンドルを操舵した際に、タイヤを直進方向に戻そうとするトルクである。
アンダーステア判定器18は、規範路面反力トルク演算器16からの規範路面反力トルクTalign_refと推定路面反力トルク演算器17からの推定路面反力トルクTalign_estとに基づいて、車両がアンダーステアであるか否かを判定する。
電動パワーステアリング制御器1の動作フローを図3に示す。電動パワーステアリング制御器1は図3の動作フローを周期的に繰り返すものである。まず、操舵角センサ11は操舵角θhを検出し(ステップE1)、車速センサ22は車速Vを検出し(ステップE2)、操舵トルクセンサ13は操舵トルクTsを検出し(ステップE3)、モータ電流センサ14はモータ電流Imtrを検出し(ステップE4)、モータ回転速度センサ15はモータ回転速度ωmtrを検出する(ステップE5)。
次に、規範路面反力トルク演算器16は、操舵角θhおよび車速Vに基づいて、以下の式(1)のように、規範路面反力トルクTalign_refを演算する(ステップE6)。
Figure 0004475599
ただし、式(1)において、Kalignは、路面反力トルクが飽和しない走行領域での、操舵角θhに対する路面反力トルクの比率であり、車両ごとに固有の値である。
また、比率Kalignの値は、車速によっても異なるので、あらかじめ各車速に対応したテーブル値として求めて電動パワーステアリング制御器1のメモリ(図示省略)に記憶しておくものとする。
次に、推定路面反力トルク演算器17は、操舵トルクTs、モータ電流Imtr、モータ回転速度ωmtrおよび車速Vに基づいて、推定路面反力トルクTalign_estを演算する(ステップE7)。
推定路面反力トルクTalign_estの具体的な演算処理については、ここでは省略するが、たとえば、特許第3353770号公報、特開2003−312521号公報および特開2005−324737号公報などに示される公知の手法を用いることができる。
次に、アンダーステア判定器18は、規範路面反力トルクTalign_refと推定路面反力トルクTalign_estとの偏差に基づいて、以下の式(2)のように、アンダーステア度US_Indexを演算する(ステップE8)。
Figure 0004475599
なお、式(2)から求まるアンダーステア度US_Indexは、値が大きいほど、車両のアンダーステアが強いことを示している。
ここで、図4の説明図を参照しながら、操舵角θhおよびアンダーステア状態と、規範路面反力トルクTalign_ref、路面反力トルクおよびヨーレートとの関係について説明する。
図4は、低摩擦係数路面での一定車速走行において、操舵角θhをゼロから増加させていった際の、規範ヨーレートと実ヨーレートとの関係(上段参照)と、規範路面反力トルクTalign_refと路面反力トルクとの関係(下段参照)とを示している。
図4において、操舵角θhを増加させていくと、規範路面反力トルクTalign_refおよび規範ヨーレート(実線参照)は、操舵角θhの増大とともに線形に増大していく。
一方、路面反力トルク(2点鎖線参照)は、操舵角θhが第1の操舵角θh1以上の領域では、規範路面反力トルクTalign_refの値から離れて飽和し、操舵角θhの増大とともに両トルク間の偏差が大きくなっていく。
さらに操舵角θhが増加して、第2の操舵角θh2(>θh1)以上の領域になると、実ヨーレート(1点鎖線参照)が規範ヨーレートの値から離れて飽和し、操舵角θhの増大とともに両ヨーレート間の偏差が大きくなっていく。すなわち、操舵角θhが増加するほど、アンダーステア度US_Indexが高くなり、車両のアンダーステアが強くなっていく。
なお、路面反力トルクの飽和は、実ヨーレートの飽和よりも「θh2−θh1」だけ早期に発生するが、このことは、たとえば公知文献「中島他、A Vehicle State Detection Method Based on Estimated Aligning Torque using EPS, 05AC−46, 2005 SAE」などから知られており、本発明ではこの現象を用いて、アンダーステア度を検出する。なお、路面反力トルクの飽和メカニズムに関しては、特許文献1の段落[0006]〜[0009]にも記載されているので省略する(本明細書における路面反力トルクは特許文献1記載のセルフアライニングトルクと同じである)。
アンダーステア判定器18においては、前記アンダーステア度US_Indexが予め設定された所定の閾値Th_usを越えるか否かによって、アンダーステアであるか否かを判定し(ステップE9)、アンダーステア判定結果を、原動機制御器2およびトランスミッション制御器3に通信バスを介して送信し(ステップE10、ステップE11)、今回の処理を終了する。
次に、原動機制御器2の詳細を説明する。原動機制御器2の構成については一般的であるので省略する。原動機制御器2の動作フローを図5に示す。原動機制御器2は図5の動作フローを周期的に繰り返すものである。まず、電動パワーステアリング制御器1から送信されるアンダーステア判定結果を受信する(ステップG1)。その判定結果を確認し(ステップG2)、アンダーステアでない場合は、通常処理(アクセルペダル踏み込み量や原動機の状態等に応じた原動機出力制御)を実施し(ステップG3)、今回の処理を終了する。
一方、ステップG2の判定の結果、アンダーステアである場合は、車両を減速させるため、原動機出力を予め定めた所定値まで低減し(ステップG4)、今回の処理を終了する。
次にトランスミッション制御器3の詳細を説明する。トランスミッション制御器3の構成については一般的であるので省略する。トランスミッション制御器3の動作フローを図6に示す。トランスミッション制御器3は図6の動作フローを周期的に繰り返すものである。まず、電動パワーステアリング制御器1から送信されるアンダーステア判定結果を受信する(ステップT1)。その判定結果を確認し(ステップT2)、アンダーステアでない場合は、通常走行時の変速比及び変速時間設定処理(ステップT3〜ステップ7)を実施する。すなわち、車速(ステップT3)、アクセル開度(ステップT4)、シフトレバー位置を検出し(ステップT5)、これらを基に、例えば1速相当の変速比2.3から4速相当の変速比0.5の間で目標変速比を決定し(ステップT6)、変速時間設定値を通常走行時用の1.5秒に決定する(ステップT7)。なお、ここで、変速時間設定値とは、変速比の変更動作にかける時間のことである。
一方、アンダーステアである場合は、車両減速用の変速比及び変速時間設定処理を実施する(ステップT8〜ステップT9)。すなわち、変速比を予め定めた値(例えば1速相当の2.3)に決定し(ステップT8)、また、変速時間設定値を車両減速用の0.5秒に決定する(ステップT9)。
なお、上記の目標変速比の値や通常走行時用および車両減速用の変速時間設定値は、予めトランスミッション制御器3のメモリ(図示せず)にそれぞれ1以上記憶されているものとする。
アンダーステアでない場合のステップT7以降と、アンダーステアである場合のステップT9以降の処理は同じであり、ここまでに決定した変速比及び変速時間設定値に基づき、実際に変速比を変更して(ステップT10)、今回の処理を終了する。
このように本実施の形態では、通常走行時の変速時間設定値と、車両減速用の変速時間設定値(通常走行時の変速時間設定値よりも短い値)を備え、車両挙動不安定時に車両減速用の変速時間設定値を用いる。こうして図7に示すように、車両挙動不安定時(実線)は、通常走行時(破線)に比べ、短時間で変速比を変更することができ、これによって車両を即座に減速させ、車両挙動を的確に安定化できるため、車両挙動の安定化効果が大きい。
なお、本実施の形態においては変速時間設定値を1.5秒や0.5秒としたがこれに限るものではなく、走行試験結果等に基づいて最適な値に設定するか、あるいは、何らかの状態量に基づいてその都度決定するようにしても良い。
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る車両挙動安定化装置の構成は実施の形態1と基本的に同じである。但し、本実施の形態では、図8に示すように、実施の形態1におけるアンダーステア判定器18の代わりに、アンダーステア度演算器28を備えている。上述の実施の形態1における電動パワーステアリング制御器は、車両挙動が不安定か否かを出力したが、本実施の形態においては、車両の挙動不安定度合いを出力する。また、実施の形態1におけるトランスミッション制御器は、車両挙動不安定時に、所定の車両挙動不安定時用(車両減速用)の変速時間設定値を用いるようにしたが、本実施の形態においては、車両の挙動不安定度合いに応じて、変速時間設定値をその都度決定する。以下、詳細に説明する。
本実施の形態に係る電動パワーステアリング制御器1の詳細を説明する。図8は、本実施の形態における電動パワーステアリング制御器1の詳細構成図である。図8において、操舵角センサ11、車速センサ12、操舵トルクセンサ13、モータ電流センサ14およびモータ回転速度センサ15からなる各種センサと、規範路面反力トルク演算器16、推定路面反力トルク演算器17は、上記の実施の形態1と同じである。なお、上述したように、本実施の形態では、実施の形態1におけるアンダーステア判定器18の代わりに、アンダーステア度演算器28を備えている。実施の形態1におけるアンダーステア判定器18は、アンダーステア度US_Indexを演算し、アンダーステア度US_Indexが所定の閾値Th_usを越えるか否かによって、アンダーステアであるか否かを判定し、その結果を出力したが、本実施の形態におけるアンダーステア度演算器28は、アンダーステア度US_Indexを実施の形態1と同様に演算し、その演算結果をそのまま出力するものである。
本実施の形態に係る電動パワーステアリング制御器1の動作フローを図9に示す。電動パワーステアリング制御器1は図9の動作フローを周期的に繰り返すものである。ステップE1〜E7は実施の形態1と同じであるため、ここでは説明を省略する。本実施の形態では、ステップE7の次に、アンダーステア度演算器28が、規範路面反力トルクTalign_refと推定路面反力トルクTalign_estとの偏差に基づいて、実施の形態1と同じく上記の式(2)によって、アンダーステア度US_Indexを演算する(ステップE28)。そして、アンダーステア度US_Indexを原動機制御器2およびトランスミッション制御器3に通信バスを介して送信し(ステップE29)、今回の処理を終了する。
次に、原動機制御器2の詳細を説明する。原動機制御器2の動作フローを図10に示す。原動機制御器2は図10の動作フローを周期的に繰り返すものである。まず、電動パワーステアリング制御器1から送信されるアンダーステア度US_Indexを受信する(ステップG21)。次に、アンダーステア度US_Indexが予め設定された所定の閾値Th_usを越えるか否か判定し(ステップG22)、越えない場合は、通常処理(アクセルペダル踏み込み量や原動機の状態等に応じた原動機出力制御)を実施し(ステップG23)、今回の処理を終了する。
一方、ステップG22の判定で、アンダーステア度US_Indexが所定の閾値Th_usを越える場合は、車両を減速させるため、原動機出力を予め定めた所定値まで低減し(ステップG24)、今回の処理を終了する。
次にトランスミッション制御器3の詳細を説明する。トランスミッション制御器3の動作フローを図11に示す。トランスミッション制御器3は図11の動作フローを周期的に繰り返すものである。まず、電動パワーステアリング制御器1から送信されるアンダーステア度US_Indexを受信する(ステップT21)。次に、アンダーステア度US_Indexが予め設定された所定の閾値Th_usを越えるか否か判定し(ステップT22)、越えない場合は、通常走行時の変速比及び変速時間設定処理(ステップT23〜ステップ27)を実施する。なお、ステップT23〜T27は実施の形態1におけるステップT3〜T7と同じである。
一方、アンダーステア度US_Indexが所定の閾値Th_usを越える場合は、車両減速用の変速比及び変速時間設定処理を実施する(ステップT28〜ステップT29)。具体的には、まず、変速比を予め定めた値(例えば1速相当の2.3)に決定する(ステップT28)し、次に、アンダーステア度US_Indexに応じて、マップ演算により、変速時間設定値を決定する(ステップT29)。ここでは、例えば図12に示すようにアンダーステア度US_Indexが大きいほど変速時間設定値が短くなるようにマップが設定されており、当該マップは、トランスミッション制御器3のメモリに記憶されているものとする。
アンダーステア度US_Indexが所定の閾値Th_usを越えない場合のステップT27以降と、アンダーステア度US_Indexが所定の閾値Th_usを越える場合のステップT29以降の処理は同じであり、ここまでに決定した変速比及び変速時間設定値に基づき、実際に変速比を変更して(ステップT210)、今回の処理を終了する。
このように本実施の形態では、車両の挙動不安定度合いに応じて、変速時間設定値を決定する。このため、車両の挙動不安定度合いが小さい場合は、搭乗者の乗り心地を大きく悪化させずに、車両挙動を安定化でき、車両の挙動不安定度合いが大きい場合のみ変速時間設定値を短くするので、搭乗者の乗り心地確保を考慮しつつ、車両挙動も的確に安定化することができる。
なお、本実施の形態においては、マップ演算により変速時間設定値を決定したが、これに限るものではなく、アンダーステア度US_Indexから変速時間設定値を求めるための、予め定めた演算式等を用いても良い。
また、実施の形態1及び2においては車両挙動不安定時に、原動機出力を予め定めた所定値まで低減し、また、変速比を予め定めた値に変更するようにしたが、これらは予め定めた値でなくても良く、例えば、車両の挙動不安定度合いやその他の状態量を応じて都度決定するようにしても良い。
また、実施の形態1及び2においては、変速比を徐々に変更するためのパラメータを「変速時間」としたが、変速時間に影響するパラメータであれば他のものでも良く、例えば、目標変速比の演算にローパスフィルタを適用する場合は、その時定数を車両挙動不安定時に小さくするようにしても良い。
また、実施の形態1及び2においては、変速比が連続的に変化するCVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)の例を示したが、有段変速機でも良く、その場合は変速機を非係合状態から係合状態へ変化させる時間を、変更すれば良い。また、原動制御手段は内燃機関でも電動モータでどちらでも良く、原動機が内燃機関であれば供給空気量や燃料量を抑制したり、点火時期を変更する等によって、また原動機が電動モータであれば、モータへの供給電流を抑制する等によって出力低減を行うものである。
また、実施の形態1及び2においては、アンダーステアを検出するために、推定路面反力トルクと規範路面反力トルクを演算し、その偏差の絶対値をアンダーステア度US_Indexとして、これが所定の値を超えた場合にアンダーステアと判定したが、推定路面反力トルクに基づいたアンダーステアの判定方法はこれに限るものではなく、例えば、本実施の形態と同様に演算した推定路面反力トルクを、微分して「推定路面反力トルクの変化率Talign_rate_est」を求め、また、下記の式(3)で「路面反力トルクの規範変化率Talign_rate_ref」を演算し、下記の式(4)をアンダーステア度US_Indexとすれば、本実施の形態と同様、路面反力トルクの飽和現象に基づいてアンダーステアを検出することができる(路面反力トルクの飽和時は、路面反力トルクの規範変化率Talign_rate_refと推定路面反力トルクの変化率Talign_rate_estに差異が生じるため)。なお、この方法であれば、図2および図8に示した操舵角センサ11は不要であり、アンダーステア抑制装置の製作コストが低減できる。
Figure 0004475599
但し、数(3)において、ωh:ハンドル操舵速度(モータ回転速度ωmtrにギア比を乗じたもの)とし、V、Kalignについては上記式(1)と同様である。
Figure 0004475599
また、実施の形態1及び2においては、電動パワーステアリング制御器の情報を基にアンダーステアを検出する例を示したが、車両挙動不安定の検出手法は、他の公知の手法でも良く、例えば、特開平6−99800号公報に示されるように、ハンドル角と車速から演算する規範ヨーレートと、ヨーレートセンサで検出する実ヨーレートを比較してアンダーステアやオーバーステアを検出する手法が知られている。
また、本実施の形態においては、車両挙動不安定を検出し、原動機制御器による原動機出力の低減とトランスミッション制御器によるシフトダウンの双方を実施するようにしたが、トランスミッション制御器によるシフトダウンのみ実施しても良い。また、原動機の出力状態によってはシフトダウンではなくシフトアップすることで車輪の駆動トルクを低減させ、車両を減速させるようにしても良い。
この発明の実施の形態1に係る車両挙動安定化装置の構成図である。 この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング制御器の構成図である。 この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング制御器の動作フロー図である。 この実施の形態1による操舵角と規範路面反力トルク、路面反力トルク、ヨーレート、アンダーステアの関係を示す説明図である。 この発明の実施の形態1に係る原動機制御器の動作フロー図である。 この発明の実施の形態1に係るトランスミッション制御器の動作フロー図である。 この発明の実施の形態1に係るトランスミッション制御器での変速比遷移図である。 この発明の実施の形態2に係る電動パワーステアリング制御器の構成図である。 この発明の実施の形態2に係る電動パワーステアリング制御器の動作フロー図である。 この発明の実施の形態2に係る原動機制御器の動作フロー図である。 この発明の実施の形態2に係るトランスミッション制御器の動作フロー図である。 この発明の実施の形態2に係るトランスミッション制御器の変速時間演算マップである。 この発明が解決しようとする課題を説明するための、変速比遷移説明図である。
符号の説明
1 電動パワーステアリング制御器、2 原動機制御器、3 トランスミッション制御器、11 操舵角センサ、12 車速センサ、13 操舵トルクセンサ、14 モータ電流センサ、15 モータ回転速度センサ、16 規範路面反力トルク演算器、17 推定路面反力トルク演算器、18 アンダーステア判定器、28 アンダーステア度演算器。

Claims (5)

  1. 車両の挙動不安定あるいは挙動不安定度合いを検出する車両挙動不安定検出手段と、
    原動機の状態に応じて原動機出力を制御する原動機制御手段と、
    前記原動機制御手段からの前記原動機出力の車輪への伝達を制御するトランスミッション制御手段と
    を備え、
    前記トランスミッション制御手段は変速比の変更を実施するものであって、
    前記車両挙動不安定検出手段の検出結果により前記車両が挙動不安定であると判定された時に、前記トランスミッション制御手段は、前記変速比の変更動作を通常走行時に比べて短時間で実施することで、車輪の駆動トルクを即座に減少させ、車両を減速させる
    ことを特徴とする車両挙動安定化装置。
  2. 前記トランスミッション制御手段は、前記変速比の変更を実施するとともに前記変速比の変更動作にかける設定時間である変速時間設定値を設定するものであって、
    前記変速時間設定値として、通常走行時に用いる第一の変速時間設定値と、車両挙動不安定時に用いる前記第一の変速時間設定値よりも短い値の第二の変速時間設定値とを備え、前記車両挙動不安定検出手段の検出結果に応じて、前記第一の変速時間設定値と前記第二の変速時間設定値のいずれを用いるかを決定する
    ことを特徴とする請求項1記載の車両挙動安定化装置。
  3. 前記車両挙動不安定検出手段は、車両の挙動不安定度合いを検出するものであって、
    前記車両の挙動不安定度合いが所定値を越える場合に、
    前記トランスミッション制御手段は、前記車両の挙動不安定度合いに基づいて前記変速時間設定値を決定する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両挙動安定化装置。
  4. 前記トランスミッション制御手段は、前記車両の挙動不安定度合いが大きいほど、前記変速比の変速時間を短くすることを特徴とする請求項3記載の車両挙動安定化装置。
  5. 前記車両挙動不安定検出手段は、
    車速を検出する車速検出手段と、
    ドライバの操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
    ドライバの操舵力をアシストする電動モータと、
    前記電動モータのモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、
    前記電動モータの回転速度を検出するモータ速度検出手段と、
    前記車速と前記操舵トルクと前記モータ電流と前記回転速度とに基づき推定路面反力トルクを演算する推定路面反力トルク演算手段と
    を備え、
    前記推定路面反力トルク演算手段の出力に基づいて、車両の挙動不安定あるいは挙動不安定度合いを検出する
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両挙動安定化装置。
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