JP4475025B2 - 透明軟質組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、透明軟質組成物に関し、更に詳しくは、透明性に優れると共に、耐衝撃性及び粘弾性に優れる透明軟質組成物に関する。
ゴムに代表される低硬度の材料は、従来より各種分野で使用されている。そして、各種分野に適した物性を得るために、様々な構造の材料や、様々な成分を併用した組成物が開発されている。例えば、下記特許文献1には、特定の水添ブロック共重合体と、パラフィン系プロセスオイル等の液状添加剤とを特定の割合で含有する軟質組成物が開示されている。そして、かかる軟質組成物は、柔軟性、低分子保持性、力学的性質、ホットメルト粘・接着性及び液体保持性に優れていることが記載されている。また、下記特許文献2には、特定の熱可塑性ブロック共重合体よりなる三次元連続網目骨格間に、パラフィン油等の低分子材料が保持されており、クッション材料等に用いられる高分子網状構造体が開示されている。更に、下記特許文献3には、下記特許文献2に開示されている高分子網状構造体と、ゴム材料とを混合してなるゴム組成物が開示されている。かかるゴム組成物は、低分子材料が均一に分散し、且つ該低分子材料を良好に保持して低分子材料のブリードが少ない低弾性のゴム組成物であることが開示されている。
一方、液晶パネルに代表される平面状ディスプレイパネルを構成するガラス板等の基層は、薄く且つ無アルカリガラスを使用する必要があるため、あまり粘弾性がなく、押さえ付けたり、ぶつけたりすることで容易に破損することが知られている。そのため、従来、携帯機器等で液晶パネルやプラズマディスプレイ及びELパネル等の平面状ディスプレイパネルを用いる場合、そのディスプレイパネルを保護するために、ポリカーボネート製又はアクリル製の透明樹脂層を使用していた。また、下記特許文献4及び5に示すように、樹脂フィルムの一方の面に粘着剤等を設け、ディスプレイパネルの表面に貼付するディスプレイパネル保護シートが知られている。
特開平9−263678号公報 特開平8−127698号公報 特開平8−127699号公報 特開平4−030120号公報 特開2000−56694号公報
しかし、上記特許文献4に示すようなディスプレイパネル保護シートは、梱包状態の輸送時の保護や、据置型ディスプレイの保護用がおもな用途であり、携帯電話等用ディスプレイパネルの保護のために作られたものではない。また、上記特許文献5のディスプレイパネル用保護シートは、衝撃や引っ掻き等の保護をすることができるが、落下して床に衝突することによる衝撃、尻ポケットに該装置を入れて座ったり、押さえ付けられたり等の携帯時の負荷に対しては言及されていない。
更に、ディスプレイパネルを保護するために、ポリカーボネート製又はアクリル製の透明樹脂層を使用する場合、かかる透明樹脂層を設けても、透明樹脂層の肉厚が薄いと、透明樹脂層のゆがみが基層に伝わり、基層が破損してしまうことがあった。一方、携帯電話等、携行する製品用途では、ディスプレイパネルはできるだけ薄くできることが好ましい。かかる観点から、ディスプレイパネルの損傷を起こすことがなく、保護板自体の厚さを薄くすることができる手段が望まれている。そして、かかる実情に鑑み、ディスプレイパネルの表示内容の視認性を確保できる透明性を具備すると共に、基層の押さえ付けや衝突等に由来する破損から防ぐことができる衝撃吸収層を設けることが検討されている。そして、かかる衝撃吸収層として利用できる材料、即ち、透明性に優れると共に、耐衝撃性に優れるゴム組成物の開発が検討されている。
しかし、耐衝撃性及び粘弾性に優れ、衝撃吸収層として利用できるゴム組成物は透明性が十分ではなく、一方、透明性を有するゴム組成物は、耐衝撃性及び粘弾性に劣るのが現状である。また、上記特許文献1〜3は、透明軟質組成物に関するものでなく、しかも、ゴム組成物において、透明性と、耐衝撃性及び粘弾性とを両立する必要性、及びそれを実現するための手段については全く言及がない。よって、従来、ゴム組成物において、透明性、耐衝撃性及び粘弾性を両立することは困難であった。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、透明性に優れると共に、耐衝撃性及び粘弾性に優れる透明軟質組成物を提供することを目的とする。
本発明の透明軟質組成物は、以下の通りである。
〔1〕熱可塑性エラストマー成分(A)100質量部と、液状材料(B)500〜5000質量部とを含み、25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上であり、
上記熱可塑性エラストマー成分(A)は、共役ジエンの水添ブロック重合体からなるエラストマー(A−1)と、他のエラストマー(A−2)と、を含み
上記他のエラストマー(A−2)は、ブチルゴムであり、
上記エラストマー(A−1)及び上記他のエラストマー(A−2)の含有量は、上記エラストマー(A−1)及び上記他のエラストマー(A−2)の合計を100質量%としたときに、30〜95質量%及び5〜70質量%であることを特徴とする透明軟質組成物。
〔2〕上記共役ジエンの水添ブロック重合体は、ビニル結合含量がブロック中の5〜25%であるブタジエン重合体ブロック(I)、及び共役ジエンと他のモノマーとの質量割合が100〜50/0〜50であり、ビニル結合含量が25〜95質量%である重合体ブロック(II)をそれぞれ分子中に少なくとも1つ有するブロック重合体が水素添加されてなる水添ブロック重合体である上記〔1〕記載の透明軟質組成物。
〔3〕上記ブチルゴムは、イソブチレン−イソプレン共重合体、塩素化イソブチレン−イソプレン共重合体及び臭素化イソブチレン−イソプレン共重合体から選ばれる少なくとも1種である上記〔1〕又は〔2〕記載の透明軟質組成物。
〔4〕上記液状材料(B)は、40℃における動粘度が500mm/s以下であり、−100〜50℃で不揮発性の液状材料である上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の透明軟質組成物。
〔5〕30℃、1Hzでの動的粘弾性測定における剪断貯蔵弾性率が200000dyn/cm以下である上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の透明軟質組成物。
〔6〕30℃、1Hzでの動的粘弾性測定における損失正接が0.03以上である上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の透明軟質組成物。
〔7〕ディスプレイパネル用透明軟質組成物として用いられる上記〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載の透明軟質組成物。
本発明の透明軟質組成物は、上記構成を有することにより、透明性に優れると共に、耐衝撃性及び粘弾性に優れるという作用効果を奏する。
また、本発明の透明軟質組成物において、熱可塑性エラストマー成分(A)を、上記共役ジエンの水添ブロック重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエンとの水添ブロック重合体、及びエチレン・α−オレフィン系ゴムから選ばれる少なくとも1種であるエラストマー(A−1)を含むものとすると、耐衝撃性及び粘弾性を向上させることができる。
また、本発明の透明軟質組成物において、上記共役ジエンの水添ブロック重合体を、ビニル結合含量がブロック中の5〜25%であるブタジエン重合体ブロック(I)、及び共役ジエンと他のモノマーとの質量割合が100〜50/0〜50であり、ビニル結合含量が25〜95質量%である重合体ブロック(II)をそれぞれ分子中に少なくとも1つ有するブロック重合体が水素添加されてなる水添ブロック重合体とすると、透明性に優れると共に、耐衝撃性及び粘弾性を向上させることができる。
更に、本発明の透明軟質組成物において、上記熱可塑性エラストマー成分(A)を、更に他のエラストマー(A−2)を含むものとすると、優れた透明性を維持しつつ、耐衝撃性及び粘弾性をさらに向上させることができる。
更に、本発明の透明軟質組成物において、上記液状材料(B)を、40℃における動粘度が500mm/s以下であり、−100〜50℃の範囲で不揮発性の液状材料とすると、広い温度範囲で透明性に優れると共に、耐衝撃性及び粘弾性に優れる透明軟質組成物とすることができる。
また、本発明の透明軟質組成物において、30℃、1HzでのG’が200000dyn/cm以下である透明軟質組成物とすると、優れた透明性を有すると共に、耐衝撃性及び粘弾性に優れた透明軟質組成物とすることができる。
更に、本発明の透明軟質組成物において、30℃、1Hzでのtanδが0.03以上である透明軟質組成物とすると、優れた透明性を有すると共に、耐衝撃性及び粘弾性に優れた透明軟質組成物とすることができる。
以下に本発明について更に詳細に説明する。
(1)熱可塑性エラストマー成分(A)
上記熱可塑性エラストマー成分(A)は、熱可塑性を有するエラストマーである。本発明の透明軟質組成物は、上記熱可塑性エラストマー成分(A)を含むことにより、後述の液状材料(B)を含んでいても、透明軟質組成物の形状を維持することができる。本発明の透明軟質組成物において、上記熱可塑性エラストマー成分(A)は三次元骨格を形成していると考えられる。また、上記熱可塑性エラストマー成分(A)が三次元骨格を形成する場合、上記熱可塑性エラストマー成分(A)は、本発明の透明軟質組成物を得た段階で三次元骨格を有していればよい。即ち、上記熱可塑性エラストマー成分(A)の原料となる熱可塑性エラストマー成分自体が三次元骨格を有する必要はない。
上記熱可塑性エラストマー成分(A)は、熱可塑性のエラストマーであ、優れた透明性を維持するために、25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上、好ましくは91%以上、更に好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上の熱可塑性エラストマーが好適に使用できる。また、上記熱可塑性エラストマー成分(A)は、耐衝撃性向上の観点から、分岐構造を有する熱可塑性エラストマー成分が好ましい。また、上記熱可塑性エラストマー成分(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーでのポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常1万〜80万、好ましくは3万〜70万、さらに好ましくは3万〜50万、より好ましくは5万〜40万である。上記熱可塑性エラストマー成分(A)の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、力学的性質が優れた透明軟質組成物とすることができるので好ましい。
上記熱可塑性エラストマー成分(A)は、2種以上のエラストマー成分を含む。上記熱可塑性エラストマー成分(A)としては、共役ジエンの水添ブロック重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエンとの水添ブロック重合体、及びエチレン・α−オレフィン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のエラストマー(A−1)を含むが、本発明におけるエラストマー(A−1)は、共役ジエンの水添ブロック重合体である。また、上記エラストマー(A−1)も上記のように、耐衝撃性向上の観点から、分岐構造を有する重合体が好ましい。
上記共役ジエンの水添ブロック重合体は、共役ジエンの1種又は2種以上の重合体又は共役ジエンの1種又は2種以上と他の単量体との共重合体に水素添加をした重合体である。即ち、上記「水添ブロック重合体」は、水添ブロック共重合体も含む概念である。また、上記芳香族ビニル化合物と共役ジエンとの水添ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物の1種又は2種以上と共役ジエンの1種又は2種以上との共重合体に水素添加をした重合体である。勿論、上記芳香族ビニル化合物及び上記共役ジエン以外の他の単量体も含めた共重合体に水素添加をした重合体でもよい。尚、共役ジエンと他の単量体とが共重合した場合、共役ジエンの分布は、ランダム、テーパー(分子鎖に沿って共役ジエン単位の割合が増加又は減少するもの)、一部ブロック状、又はこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
上記共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、及びクロロプレン等の1種又は2種以上が挙げられる。この中で、工業的に利用でき、また物性の優れた組成物を得るには、1,3−ブタジエン、イソプレン、及び1,3−ペンタジエンが好ましく、更に好ましくは1,3−ブタジエン及びイソプレンである。尚、上記共役ジエン単量体は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジエチル−p−アミノスチレン、ビニルピリジン等の1種又は2種以上が挙げられる。この中で、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。また、上記芳香族ビニル単量体は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
更に、上記共役ジエンの水添ブロック重合体及び上記芳香族ビニル化合物と共役ジエンとの水添ブロック共重合体のビニル結合(1,2−及び3,4−結合)含量として好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、特に好ましくは30〜90%である。上記ビニル結合含量を上記範囲とすることにより、耐衝撃性を向上させることができるので好ましい。
また、上記共役ジエンの水添ブロック重合体として、ビニル結合含量がブロック中の5〜25%であるブタジエン重合体ブロック(I)及び共役ジエンと他のモノマーとの重量比が100〜50/0〜50であり、ビニル結合含量が25〜95質量%である重合体ブロック(II)をそれぞれ分子中に少なくとも1つ有するブロック重合体が水素添加されてなる水添ブロック重合体を用いると、耐衝撃性及び粘弾性の点から好ましい。この水添ブロック共重合体は、1種単独で用いてもよく、2種以上のブレンド物を用いてもよい。
上記ブタジエン重合体ブロック(I)において、ビニル結合含量(1,2−及び3,4−結合の含量)は5〜25%、好ましくは5〜20%、さらに好ましくは7〜19%である。従って、上記ブタジエン重合体ブロック(I)は、水素添加によりエチレン−ブテン共重合体に類似の構造を示す結晶性のブロックとなる。上記ビニル結合含量を上記範囲とすることにより、力学的性質や形状保持性を向上させることができるので好ましい。尚、ビニル結合含量の「%」は、質量%又はモル%を意味する。即ち、ビニル結合含量が質量%で表した場合とモル%で表した場合とで差異が生じる場合、いずれかが上記範囲に含まれていればよい。
また、上記重合体ブロック(II)において、ビニル結合含量(1,2−及び3,4−結合の含量)は、通常25〜95質量%、好ましくは25〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%である。従って、上記重合体ブロック(II)は、水素添加により、例えば共役ジエンが1,3−ブタジエンの場合、ゴム状のエチレン−ブテン共重合体ブロックと類似の構造を示す非結晶性の強い重合体ブロックとなる。上記含量をかかる範囲とすることにより、力学的性質が極めて優れた組成物が得られる。更に、上記共役ジエン/他のモノマーの質量割合は、100/0〜50/50、好ましくは100/0〜70/30、さらに好ましくは100/0〜90/10である。かかる範囲とすることにより、透明性を維持すると共に、耐衝撃性及び粘弾性を向上させることができるので好ましい。
上記ブタジエン重合体ブロック(I)及び重合体ブロック(II)をそれぞれ分子中に少なくとも1つ有するブロック共重合体において、上記重合体ブロック(II)の含有量は、好ましくは30〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは50〜90質量%、より好ましくは50〜85質量%、特に好ましくは60〜85質量%である。上記重合体ブロック(II)の含有量を上記範囲とすることにより、形状保持性及び力学的性質を向上させることができる。
また、上記ブタジエン重合体ブロック(I)及び重合体ブロック(II)をそれぞれ分子中に少なくとも1つ有するブロック共重合体の構造は、上記要件を満たすものであればいかなるものでもよい。例えば一般式(A−B)n1、(A−B)n2−A、(B−A)n3−B〔式中、Aはブタジエン重合体ブロック(I)、Bは上記重合体ブロック(II)、n1〜n3は1以上の整数を示す〕等で表されるブロック共重合体が挙げられる。尚、上記ブタジエン重合体ブロック(I)及び重合体ブロック(II)をそれぞれ分子中に少なくとも1つ有するブロック共重合体としては、トリブロック以上のブロックからなる共重合体が、形状保持性や力学的性質が特に優れているため好ましい。従って、上記一般式では、n1は、2以上の整数の場合が特に好ましい。また、上記ブタジエン重合体ブロック(I)及び重合体ブロック(II)をそれぞれ分子中に少なくとも1つ有するブロック共重合体は、上記ブタジエン重合体ブロック(I)及び上記重合体ブロック(II)をそれぞれ分子中に少なくとも1つ有していればよく、他のブロック、特に他の共役ジエン以外の他の単量体を50質量%を超えて含むブロックを含有することもできる。
また、上記ブタジエン重合体ブロック(I)及び重合体ブロック(II)をそれぞれ分子中に少なくとも1つ有するブロック共重合体としては、例えば、(A−B)X、(B−A)X、(A−B−A)X、(B−A−B)Xのように、カップリング剤残基を介して重合体分子鎖が延長又は分岐されたものでもよい。上記各式中、A〜Bは上記に同じであり、mは2以上の整数、Xはカップリング剤残基を示す。ここで、特にmが3以上の場合、形状保持性、ホットメルト粘・接着性に優れた組成物が得られる。上記カップリング剤としては、例えば1,2−ジブロモエタン、メチルジクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、トリレンジイソシアナート、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化アマニ油、テトラクロロゲルマニウム、テトラクロロスズ、ブチルトリクロロスズ、ブチルトリクロロシラン、ジメチルクロロシラン、1,4−クロロメチルベンゼン、及びビス(トリクロロシリル)エタン等が挙げられる。
上記共役ジエンの水添ブロック重合体及び上記芳香族ビニル化合物と共役ジエンとの水添ブロック共重合体の水添率は、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。上記水添率を80%以上とすることにより、形状保持性や力学的性質を向上させることができる。また、上記共役ジエンの水添ブロック重合体は、少なくとも1種の官能基をこの水添ブロック重合体に導入して、変性水添ブロック重合体として用いることも可能である。上記共役ジエンの水添ブロック重合体は、例えば特開平2−133406号公報、特開平3−128957号公報、特開平5−170844号公報に開示されている方法によって得ることができる。
上記共役ジエンの水添ブロック重合体として具体的には、例えば、ブタジエンブロック共重合体の水添ブロック共重合体(CEBC)、ブタジエン−イソプレン−ブタジエン共重合体の水添ブロック共重合体、及びスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水添ブロック共重合体(SEBS)等のスチレン系エラストマー等が挙げられる。ここで、スチレン等の芳香族ビニル化合物を単量体として使用せずに(共)重合して得られる共役ジエンの水添ブロック重合体であると、上記液状材料(B)の割合を高くすることができる結果、本発明の透明軟質組成物の耐衝撃性及び粘弾性を向上させることができる。よって、上記共役ジエンの水添ブロック重合体としては、芳香族ビニル単量体単位を含まない共役ジエンの水添ブロック重合体が好ましい。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴムは、エチレンとエチレンを除くα−オレフィンとの共重合体である。上記α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン等の炭素数3〜12のα−オレフィンを挙げることができる。これらの単量体のうちプロピレン、1−ブテンが好ましい。これらのうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記エチレン・α−オレフィン系ゴムとして、その構造中に極性基を有する極性基含有エチレン・α−オレフィン系ゴムを用いてもよい。ここで、上記極性基としては、例えば、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシシリル基及びニトリル基等が挙げられる。また、この極性基含有エチレン・α−オレフィン系ゴムでは、1種の上記極性基を含んでいてもよく、あるいは2種以上の異なる上記極性基を含んでいてもよい。
尚、上記エチレン・α−オレフィン系ゴムは、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体等のように、エチレン及びα−オレフィン以外の他の単量体を共重合したものでもよい。該他の単量体としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、3,6−ジメチル−1,7−オクタジエン、4,5−ジメチル−1,7−オクタジエン、5−メチル−1,8−ノナジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、及び2,5−ノルボルナジエン等の非共役ジエン等、並びに無水マレイン酸及び(メタ)アクリル酸等の極性基含有単量体等を挙げることができる。これらのうちジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。これらのうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。尚、上記極性基含有単量体に含まれる極性基としては、上述の極性基含有エチレン・α−オレフィン系ゴムの項で挙げられている極性基が例示される。
上記熱可塑性エラストマー成分(A)は、上記エラストマー(A−1)を含むエラストマー組成物であ、該エラストマー組成物は、更に他のエラストマー(A−2)を含。ここで、上記他のエラストマー(A−2)は、1種単独でもよく、2種以上併用してもよい。上記他のエラストマー(A−2)を含むことにより、耐衝撃性及び粘弾性をさらに向上させることができる。また、上記熱可塑性エラストマー成分(A)が三次元骨格を形成する場合、上記他のエラストマー(A−2)は、三次元骨格を形成するエラストマーでもよく、三次元骨格を形成しないエラストマーでもよい。
上記他のエラストマー(A−2)は、上記エラストマー(A−1)以外のエラストマーであ、上記のように、耐衝撃性の向上の観点から、分岐構造を有するエラストマーが好ましい。上記他のエラストマー(A−2)としては、ブチルゴムである。本発明以外の他のエラストマー(A−2)としては、エチレン−オクテン共重合体、ポリヘキセン等の1種又は2種以上を挙げることができる。
上記ブチルゴムとしては、イソブチレンの重合体又はその部分架橋重合体の他、イソブチレンと他の単量体との共重合体又はその部分架橋重合体が挙げられる。上記イソブチレンと他の単量体との共重合体又はその部分架橋重合体としては、例えば、イソブチレンとイソプレンとの共重合体、イソブチレンとイソプレンと極性基含有単量体との共重合体、及びこれらの部分架橋共重合体等を挙げることができる。ここで、上記極性基含有単量体(極性基を有する共重合性単量体)としては、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシシリル基及びニトリル基等のうちの1種又は2種以上を有する単量体を挙げることができる。また、上記部分架橋共重合体は、単量体に多官能性不飽和結合含有単量体を共重合して得られるが、この多官能性不飽和結合含有単量体は、この単量体としては、多価アリル化合物、多価(メタ)アクリレート化合物、ジビニル化合物、ビスマレイミド化合物、ジオキシム化合物などが挙げられる。上記ブチルゴムとして具体的には、例えば、イソブチレン−イソプレン共重合体、塩素化イソブチレン−イソプレン共重合体、及び臭素化イソブチレン−イソプレン共重合体等の1種又は2種以上が挙げられる。
上記熱可塑性エラストマー成分(A)、上記エラストマー(A−1)及び上記他のエラストマー(A−2)を含むエラストマー組成物であ、上記エラストマー(A−1)の含有割合は、30〜95質量%、好ましくは40〜85質量%、更に好ましくは50〜85質量%、より好ましくは50〜80質量%、特に好ましくは55〜80質量%である(但し、上記エラストマー(A−1)+上記他のエラストマー(A−2)=100質量%)。また、上記他のエラストマー(A−2)の含有割合は、5〜70質量%、好ましくは15〜60質量%、更に好ましくは15〜50質量%、より好ましくは20〜50質量%、特に好ましくは20〜45質量%である。上記エラストマー(A−1)及び上記他のエラストマー(A−2)を上記範囲とすることにより、透明性、耐衝撃性及び粘弾性のバランスに優れた透明軟質組成物とすることができるので好ましい。
(2)液状材料(B)
本発明の透明軟質組成物に含まれる上記液状材料(B)は、25℃において液体又はペースト状の物質である。本発明の透明軟質組成物は、上記液状材料(B)を含むことにより、透明性を維持しつつ、組成物の耐衝撃性を向上させることができる。本発明の透明軟質組成物において、上記液状材料(B)は、上記熱可塑性エラストマー成分(A)に保持されて存在すると考えられる。より具体的には、本発明の透明軟質組成物において、上記熱可塑性エラストマー成分(A)は三次元骨格を形成し、この三次元骨格に上記液状材料(B)が保持されていると考えられる。
上記液状材料(B)は、通常透明であるが、本発明の透明軟質組成物の25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率を90%以上とすることができる限り、特に透明な材料に限定はされない。また、上記液状材料(B)は、25℃において液体又はペースト状であれば、その種類に特に限定はない。上記液状材料(B)は、より詳細には、通常−100〜50℃、好ましくは−80〜50℃、更に好ましくは−50〜50℃で不揮発性(液状)の液状材料であり、その種類について特に限定はない。また、上記液状材料(B)の40℃における動粘度は、通常500mm/s以下、更に好ましくは400mm/s以下、より好ましくは0.1〜100mm/sである。上記液状材料(B)の40℃における動粘度を上記範囲とすると、広い温度領域で本発明の透明軟質組成物の形状を保持することができるので好ましい。より具体的には、例えば、上記液状材料(B)として、40℃における動粘度が500mm/s以下であり、−100〜50℃で不揮発性の液状材料が好ましい。更に、低温環境における使用の観点から、上記液状材料(B)は、流動点が−10℃以下、特には−20℃以下、更には−40℃以下、水分が500ppm以下、特には200ppm以下、更には100ppm以下であり、重金属等の不純物が少ないものが好ましい。
上記液状材料(B)として具体的には、例えば、プラスチック・ゴム用の各種滑剤、可塑剤、軟化剤及び液状オリゴマー等の1種又は2種以上が挙げられる。上記滑剤としては、パラフィン系滑剤、炭化水素系滑剤、金属セッケン等が挙げられる。また、上記可塑剤としては、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、テトラヒドロフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、セバシン酸誘導体、フマル酸誘導体、クエン酸誘導体等の各種脂肪酸誘導体等の1種又は2種以上が挙げられる。更に、上記軟化剤としては、パラフィン系プロセスオイル等の石油系軟化剤、エチレン−α−オレフィン系コオリゴマー及びギルソナイト等の鉱物油系軟化剤、オレイン酸やリシノール酸等の脂肪酸等の1種又は2種以上が挙げられる。また、上記液状オリゴマーとしては、ポリイソブチレンや各種液状ゴム(ポリブタジエンやスチレン−ブタジエンゴム等)、シリコーンオイル等の1種又は2種以上が挙げられる。後述のように、本発明の透明軟質組成物は、携帯電話等、屋外で使用されるディスプレイ等に使用されることが多い。そのため、上記液状材料(B)として、パラフィン系プロセスオイル、パラフィン系合成油、水添パラフィン系オイル等のように、二重結合がないオイル又は二重結合を有する成分が少ない(具体的には20質量%以下、更には10質量%以下)オイルの1種又は2種以上を用いると、耐候性に優れた透明軟質組成物とすることができるので好ましい。尚、上記液状材料(B)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の透明軟質組成物における上記液状材料(B)の配合量は、上記熱可塑性エラストマー成分(A)100質量部に対して500〜5000質量部、好ましくは500〜4000質量部、更に好ましくは500〜3000質量部、より好ましくは500〜2000質量部、特に好ましくは600〜1800質量部である。上記液状材料(B)の配合量が500質量部未満であると、耐衝撃性及び粘弾性が低下するため好ましくない。一方、上記液状材料(B)の配合量が5000質量部を超えると、上記液状材料(B)がにじみ出るおそれがあり、また、本発明の透明軟質組成物が形状を保持することが困難になるため好ましくない。
(3)透明軟質組成物
本発明の透明軟質組成物は、上記構成を備えることにより、優れた透明性を有する。具体的には、本発明の透明軟質組成物は、25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上、好ましくは91%以上、更に好ましくは92%以上である。また、本発明の透明軟質組成物は、広い温度範囲で優れた透明性を有する。具体的には、本発明の透明軟質組成物は、−100〜90℃、好ましくは−50〜90℃、更に好ましくは−40〜90℃で透明(肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上、好ましくは91%以上、更に好ましくは92%以上)を維持することができる。尚、上記全光線透過率は、実施例記載の方法により測定した値を示す。
また、本発明の透明軟質組成物は、上記構成を備えることにより、優れた粘弾性を有する。具体的には、本発明の透明軟質組成物は、下記実施例記載の方法により測定した30℃、1Hzでの動的粘弾性測定における剪断貯蔵弾性率(G’)を200000dyn/cm以下、好ましくは150000dyn/cm以下、更に好ましくは100000dyn/cm以下とすることができる。また、本発明の透明軟質組成物は、下記実施例記載の方法により測定した30℃、1Hzでの動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)を0.03以上、好ましくは0.04以上、更に好ましくは0.05以上とすることができる。更に、本発明の透明軟質組成物は、下記実施例に記載の方法により測定した落球高度を30cm以上、好ましくは40cm以上、更に好ましくは55cm以上とすることができる。
上記tanδ、G’及び落球高度は、例えば、ブチルゴム等の上記他のエラストマー成分(A−2)を併用したり、あるいは、上記熱可塑性エラストマー成分(A)及び上記液状材料(B)の含有量の割合を変更する等の方法により適宜調製することができる。
本発明の透明軟質組成物は、上記熱可塑性エラストマー成分(A)及び上記液状材料(B)を必須とするが、25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上である限り、他の成分を含んでもよい。上記他の成分として、例えば、着色剤を添加して着色することができる。これにより、本発明の透明軟質組成物を用いた場合に、意匠性を向上させることができる。その他に、例えば、老化防止剤、耐候剤、金属不活性剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤、防菌・防黴剤、分散剤、可塑剤、架橋剤、共架橋剤、加硫剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤等を用いることができる。
本発明の透明軟質組成物を得る方法は特に限定はなく、必要に応じて種々の方法により得ることができる。通常は、上記熱可塑性エラストマー成分(A)と上記液状材料(B)とを、必要の応じて他の成分を添加し、適宜の方法により混合すればよい。また、上記熱可塑性エラストマー成分(A)が三次元骨格を形成することができる条件で混合してもよい。更に、本発明の透明軟質組成物は、本質的に高温で低粘度となる材料と高分子材料とのブレンド物であることから、各成分の混合には、液状の材料を高速攪拌できる機器を用いるのが好ましい。本発明の透明軟質組成物を得る方法としてより具体的には、上記熱可塑性エラストマー成分(A)と上記液状材料(B)とを、必要の応じて他の成分を添加し、ホモミキサー等を用いて、温度80〜200℃、好ましくは90〜190℃の条件で、回転数10rpm以上、好ましくは30rpm以上の剪断下で攪拌することによって調製することができる。また、本発明の透明軟質組成物の成形品は、押出成形、コーター成形、圧縮成形及び射出成形等の従来公知の加工方法により、容易に作製することができる。
本発明の透明軟質組成物は、上記のように、透明性に優れると共に、耐衝撃性及び粘弾性に優れている。このため、本発明の透明軟質組成物は、透明性と共に、耐衝撃性及び粘弾性が要求される様々な用途、部材に使用することができる。本発明の透明軟質組成物は、例えば、電子・電気機器、医療機器、土木建築用材料、食品関係材料、事務機器部品等の種々の用途に使用することができる。より具体的には、例えば、電子・電気機器等のディスプレイ、意匠ケース、包装材、各種機器における透明表示部材等に使用することができる。本発明の透明軟質組成物は、特に電子・電気機器等のディスプレイに好適に使用することができる。この場合、ディスプレイパネルの用途は特に限定されず、デスクトップ型コンピュータ用ディスプレイ等のディスプレイ機能単体の用途の他、携帯電話、携帯情報端末(いわゆるPDA、モバイル機器を含む)、ノート型コンピュータ、車載用コンピュータ、タッチパネル、テレビジョン、時計及び測定機器等に組み込む用途を例示することができる。更に、携行及び据置き等の形態を問わない。また、上記ディスプレイパネルは、板状ディスプレイパネルであれば好ましいが、その形状は問わない。例えば、平坦でもよいし、湾曲していてもかまわない。更に、ディスプレイパネルの種類の例として、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネセンス(EL)ディスプレイ等を挙げることができる。
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。また、実施例中の「%」及び「部」は、特に断らない限り質量基準である。
(1)透明軟質組成物の調製
原料として、下記の成分を使用した。
<1>エラストマー(A−1)
以下に記載の方法により、本実施例で使用するエラストマー(A−1)である水添ブロック重合体1及び2を製造した。水添ブロック重合体1及び水添ブロック重合体2の組成及び物性を以下の表1に示す。尚、上記水添ブロック重合体1及び水添ブロック重合体2の1,2−結合含量(結合スチレン含量)は、赤外吸収スペクトル法を用い、ハンプトン法によって求めた。また、エラストマー(A−1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製、「GMHHR−H」)を用いてポリスチレン換算で求めた。更に、エラストマー(A−1)のブロック比率は、DSC測定による結晶構造の溶解熱量を測定することにより求め、水添率は、四塩化エチレンを溶媒に、100MHz、H−NMRから算出した。
〔水添ブロック重合体1〕
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(1.25g)、ブタジエン(1500g)、及びn−ブチルリチウム(4.5g)を加え、70℃からの断熱重合を行った。反応完結後、温度を15℃としてテトラヒドロフラン(350g)及び1,3−ブタジエン(3500g)を添加して断熱重合した。30分後、メチルジクロロシラン(3.23g)を添加し、15分反応を行った。反応が完結した後、n−ブチルリチウム2g、水素ガスを0.4MPa−Gの圧力で供給し、20分間撹拌し、リビングアニオンを水素化リチウムとした。反応溶液を90℃にし、特開2000−37632号公報記載のチタノセン化合物を使用して水添反応を行った。水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、次いで反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒を水蒸気蒸留により除去することによって、水素添加ジエン系重合体である水添ブロック重合体1を得た。得られた水添ブロック重合体1の水添率は98%、重量平均分子量は28万、水添前ポリマーの1段目のポリブタジエンブロックのビニル結合含量は14%、水添前ポリマーの2段目のポリブタジエンブロックのビニル結合含量は80%であった。
〔水添ブロック重合体2〕
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(1.25g)、ブタジエン(1000g)、及びn−ブチルリチウム(4.00g)を加え、70℃からの断熱重合を行った。反応完結後、温度を30℃としてテトラヒドロフラン(125g)及び1,3−ブタジエン(4000g)を添加して断熱重合した。30分後、メチルジクロロシラン(2.87g)を添加し、15分反応を行った。反応が完結した後、n−ブチルリチウム2g、水素ガスを0.4MPa−Gの圧力で供給し、20分間撹拌し、リビングアニオンを水素化リチウムとした。反応溶液を90℃にし、特開2000−37632号公報記載のチタノセン化合物を使用して水添反応を行った。水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、次いで反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒を水蒸気蒸留により除去することによって、水素添加ジエン系重合体である水添ブロック重合体2を得た。得られた水添ブロック重合体2の水添率は98%、重量平均分子量は34.8万、水添前ポリマーの1段目のポリブタジエンブロックのビニル結合含量は14%、水添前ポリマーの2段目のポリブタジエンブロックのビニル結合含量は47%であった。
<2>他のエラストマー(A−2)
「ブチルゴム」;JSR社製、商品名「JSR ブチル268」
<3>液状材料
「液状材料1」;パラフィン系プロセスオイル(出光興産社製、商品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」、40℃における動粘度;95.54mm/s)
「液状材料2」;パラフィン系プロセスオイル(出光興産社製、商品名「ダイアナプロセスオイルPW−32」、40℃における動粘度;30.85mm/s)
尚、上記液状材料1及び2は、いずれも−100〜50℃で不揮発性である。
上記の各成分を用い、これらを表2に記載の割合で配合した。次いで、160℃、窒素ガス雰囲気下で3時間攪拌後、室温まで冷却し、得られたゲル状の生成物をホットプレスにて加熱・加圧成形することにより、No.1〜8の各透明軟質組成物を得た。
Figure 0004475025
Figure 0004475025
(3)物性評価
上記の方法により得られたNo.1〜8の各透明軟質組成物を用いて、下記に記載の方法により、落球高度、粘弾性及び全光線透過率を測定した。その結果を上記表2に併記する。
〔1〕耐衝撃性
図1に示すように、大理石等からなる基台62の上に、シリコーンゴム薄肉板61(厚さ5.15mm)を載せ、この上に厚さ0.7mmの溶融成形アルミノケイ酸薄板ガラスである基層2(コーニング社製、商品名「Corning 1737」)を載せた。そして、該基層2の上に、No.1〜8の各透明軟質組成物1(厚さ0.5mm)を載置した。更に、該透明軟質組成物1の上に、厚さ0.5mmのアクリル板3(日東樹脂工業社製商品名「クラレックス」)を載置した。次いで、ゴルフボール7(直径42.7mm、質量45.8g)を、所定高さから透明軟質組成物1上に自由落下させ、衝突させた。その後、基層2にひびや割れが起きていないか目視で確認した。そして、基層2が破損した時の高さを落球高度(cm)として求め、耐衝撃性を評価した。
〔2〕粘弾性
動的粘弾性測定装置(レオロジー社製「MR−500」、測定条件:印加周波数1Hz、歪み0.1、温度30℃、コーン径40mm、コーン角5°のコーンプレート)を用い、上記No.1〜8の各透明軟質組成物のtanδ及びG’(dyn/cm)を測定した。
〔3〕全光線透過率(%)
上記No.1〜8の各透明軟質組成物の肉厚が0.5mmとなるように、測定用サンプルを調整した。この測定用サンプルを用いて、BYK−ガードナーGmbh社製モデル(haze−gard plus)を使用して、25℃におけるNo.1〜8の各透明軟質組成物の全光線透過率(%)を求めた。
(4)実施例の効果
表2より、本発明の上記熱可塑性エラストマー成分(A)と上記液状材料(B)とを併用していない透明軟質組成物No.8は、透明性及び粘弾性に優れる反面、落球高度が著しく低く、耐衝撃性に劣ることが分かる。これに対し、本発明の上記熱可塑性エラストマー成分(A)と上記液状材料(B)とを併用してい透明軟質組成物No.1〜は、いずれも全光線透過率が90%を超え、優れた透明性を有すると共に、粘弾性に優れ、更に落球高度も45cm以上であることから、耐衝撃性にも優れていることが分かる。
また、上記熱可塑性エラストマー成分(A)として、エラストマー(A−1)に該当する水添ブロック共重合体と、他のエラストマー(A−2)に該当するブチルゴムとを併用している透明軟質組成物No.1〜4と、ブチルゴムを使用していない透明軟質組成物No.5〜7とを対比すると、透明軟質組成物No.1〜4は、透明性は透明軟質組成物No.5〜7と同程度を維持すると共に、tanδが0.15以上、G’が55000dyn/cm以下と、透明軟質組成物No.5〜7よりも優れた粘弾性を有し、更に、落球高度も55cm以上であり、透明軟質組成物No.5〜7よりも優れた耐衝撃性を有することが分かる。この結果から、本発明において、上記熱可塑性エラストマー成分(A)として、エラストマー(A−1)と、他のエラストマー(A−2)とを併用することにより、優れた透明性を維持しつつ、更に耐衝撃性及び粘弾性を向上させることができることが分かる。
更に、エラストマー(A−1)に該当する水添ブロック重合体として、非結晶部分であるブロック(II)のビニル結合含量が50%を超える水添ブロック重合体1を用いた透明軟質組成物No.1と、ブロック(II)のビニル結合含量が50%未満である水添ブロック重合体2を用いた透明軟質組成物No.2とを対比すると、透明軟質組成物No.1は、透明性は透明軟質組成物No.2と同程度を維持すると共に、G’が小さく、落球高度は高いことから、透明軟質組成物No.2よりも優れた粘弾性及び耐衝撃性を有することが分かる。この結果から、水添ブロック重合体として、非結晶部分のビニル結合含量を50%以上とすることにより、優れた透明性を維持しつつ、更に耐衝撃性及び粘弾性を向上させることができることが分かる。
尚、本発明では、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて種々変更した実施例とすることができる。
本発明の透明軟質組成物は、携帯電話、携帯情報端末、デスクトップ型コンピュータ用ディスプレイ、ノート型コンピュータ、車載用コンピュータ、タッチパネル、テレビジョン、及び時計等のディスプレイパネル等に好適に使用することができる。
本実施例の耐衝撃性試験を説明するための模式図である。
符号の説明
1;透明軟質組成物、2;基層、3;アクリル板、61;弾性板、62;基台、7;ゴルフボール。

Claims (7)

  1. 熱可塑性エラストマー成分(A)100質量部と、液状材料(B)500〜5000質量部とを含み、25℃、肉厚0.5mmにおける全光線透過率が90%以上であり、
    上記熱可塑性エラストマー成分(A)は、共役ジエンの水添ブロック重合体からなるエラストマー(A−1)と、他のエラストマー(A−2)と、を含み
    上記他のエラストマー(A−2)は、ブチルゴムであり、
    上記エラストマー(A−1)及び上記他のエラストマー(A−2)の含有量は、上記エラストマー(A−1)及び上記他のエラストマー(A−2)の合計を100質量%としたときに、30〜95質量%及び5〜70質量%であることを特徴とする透明軟質組成物。
  2. 上記共役ジエンの水添ブロック重合体は、ビニル結合含量がブロック中の5〜25%であるブタジエン重合体ブロック(I)、及び共役ジエンと他のモノマーとの質量割合が100〜50/0〜50であり、ビニル結合含量が25〜95質量%である重合体ブロック(II)をそれぞれ分子中に少なくとも1つ有するブロック重合体が水素添加されてなる水添ブロック重合体である請求項1記載の透明軟質組成物。
  3. 上記ブチルゴムは、イソブチレン−イソプレン共重合体、塩素化イソブチレン−イソプレン共重合体及び臭素化イソブチレン−イソプレン共重合体から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の透明軟質組成物。
  4. 上記液状材料(B)は、40℃における動粘度が500mm/s以下であり、−100〜50℃で不揮発性の液状材料である請求項1乃至3のいずれかに記載の透明軟質組成物。
  5. 30℃、1Hzでの動的粘弾性測定における剪断貯蔵弾性率が200000dyn/cm以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の透明軟質組成物。
  6. 30℃、1Hzでの動的粘弾性測定における損失正接が0.03以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の透明軟質組成物。
  7. ディスプレイパネル用透明軟質組成物として用いられる請求項1乃至6のいずれかに記載の透明軟質組成物。
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