JP4474713B2 - 高温プロトン伝導性電解質膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温プロトン伝導性電解質膜に関し、更に詳しくは、固体高分子型燃料電池や水電解セル等に用いられる固体高分子電解質膜等に好適な100℃以上の高温条件下でのプロトン伝導性に優れた高温プロトン伝導性電解質膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質は、高分子鎖中にスルホン酸基やカルボン酸基等のプロトン伝導性官能基を有する固体高分子材料であり、特定のイオンと強固に結合したり、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過する性質を有していることから、粒子、繊維、あるいは膜状に成形し、電気透析、拡散透析、電池隔膜等、各種の用途に利用されているものである。
【0003】
そうした中で、例えば固体高分子型燃料電池においては固体高分子電解質膜として利用される。電解質に固体高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池は、出力密度が高く小型軽量化に有利であること、固体であることから電解質の散逸の問題がないこと、両極間の差圧に強く加圧制御が容易であること、電解質が腐食性でないため耐久性の面で有利であること、動作温度が低いため電池構成材料面での制約が少ないことなど種々の特徴を有している。
【0004】
このような固体高分子電解質膜としてはフェノールスルホン酸膜、ポリスチレンスルホン酸膜、ポリトリフルオロスチレンスルホン酸膜など種々のイオン交換膜が検討されてきたが、現在では主にパーフルオロカーボンスルホン酸膜が使用されている。
【0005】
パーフルオロカーボンスルホン酸膜の形状はパーフルオロアルキレン鎖によって保たれているが、架橋されていないため、側鎖部にあるイオン交換基は比較的自由度が大きく、イオン化した状態では本来疎水性の強い主鎖部分と親水性基が共存した状態を形成している。このような膜の代表的なものとしてデュポン社製のナフィオン(登録商標)が良く知られている。上述のパーフルオロカーボンスルホン酸膜に代表されるフッ素系電解質膜は、化学的安定性が非常に高いことから、過酷な条件下で使用される電解質膜としてその開発や特性解明に種々の研究が行われてきた。
【0006】
しかしながら、フッ素系電解質膜は製造が困難で、非常に高価であるという欠点がある。そのため、フッ素系電解質膜は、宇宙用あるいは軍用の固体高分子型燃料電池等、特殊な用途に用いられ、自動車用の低公害動力源としての固体高分子型燃料電池等、民生用への応用を困難なものとしていた。
【0007】
そこで、フッ素系電解質膜と同等以上の特性を有し、しかも低コストで製造可能な固体高分子電解質膜を得るために、従来から種々の試みがなされている。例えば、特開平9−102322号公報にあるように、炭化フッ素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた主鎖と、スルホン酸基を有する炭化水素系側鎖とから構成される、スルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE−g−PSt)膜等が提案されている。このような固体高分子電解質膜は結晶性の高い主鎖ポリマにプロトン伝導性官能基を有する側鎖ポリマをグラフト重合することにより膜の高い力学的強度と電気伝導度を兼ね備えたものとして活発に研究されるようになってきた。
【0008】
このような研究成果により、固体高分子電解質膜は燃料電池や水電解セル等での使用において、従来の電解質膜に比べて多くの利点を見い出すことができるようになった。
【0009】
上述した固体高分子電解質の多くは、電解質を溶解・解離する能力を持ったいわゆる一種の流れない液体であり、高分子中で解離生成したキャリヤーが高分子鎖の局所運動により運ばれることによってイオン伝導性が発現されると考えられている。ナフィオンの場合、電荷キャリアーは水和プロトン(H+・xH2O)であり、これがスルホン酸基から他のスルホン酸基へ移動することによりプロトン伝導性を示すことが分かっており、25℃で0.05〜0.10(S/cm)ほどの電気伝導度を示す。
【0010】
しかしながら、これら固体高分子電解質による膜は、未だプロトン伝導性が充分とは言えず、さらに100℃以上の高温条件下においては、プロトン伝導性を維持するために必要な水和物の形成が損なわれることにより、プロトン伝導性が低下したり、膜自体が収縮して形状が保てなくなるなど充分満足できるものは開発されておらず、最高動作温度が100℃に制限されてしまうといった問題があった。
【0011】
そのため、100℃以上の高温条件下で高いプロトン伝導性を有する固体高分子電解質が必要となる固体高分子型燃料電池においては、特に問題が生じることとなる。このような燃料電池としては、例えば、燃料として天然ガス、メタノールからの改質ガス(COガスを含む燃料)を用いたものであるが、この場合、電極触媒は少量のCOでも被毒されてしまうことから、高電流密度領域における電池特性は著しく劣化してしまうことになる。しかしながら、100℃以上の高温条件下で動作可能であれば、COがCO2に酸化されることにより、COによる被毒作用を回避できるようになる。ところが高温条件下で高いプロトン伝導性を有し、かつ、高い膜強度を有する安価な固体高分子電解質はほとんど存在していないのが現状である。
【0012】
これらの問題を解決するため、燃料電池作動圧力を常圧型から加圧型に変更した加圧型システムを用いることより、高温域における高電流密度化が進められてきた。しかしながら、このような方法は燃料電池システムの複雑化、非効率化を招き、軽量化に逆行するなどデメリットも多い。また、使用温度を上昇させるために加圧すればするほど、固体高分子電解質膜にかかる力学的負担も大きくなり、膜使用限界を超越してしまうといった問題も生じかねない。
【0013】
また、固体高分子電解質膜の高温条件下におけるプロトン伝導性を向上させる目的で、特表平11−503262号公報では安定な酸とともに複合体を形成することが可能な塩基性ポリマを含有する固体高分子電解質材料を膜として用いる技術が開示されている。このような膜にリン酸をドープした場合、100℃以上の高温条件下でも安定なプロトン伝導性を示す固体高分子電解質膜を得ることができるとの報告がなされている。そのような塩基性ポリマとしてはポリピリジン、ポリピリミジン、ポリイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノリン、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、ポリベンズイミダゾールなどが挙げられるが、中でもポリベンズイミダゾールがその好適なポリマであるとされている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
前記した塩基性ポリマ/リン酸型の固体高分子電解質の場合、特に高温、低湿度領域におけるプロトン伝導性のメカニズムは塩基性ポリマ又はリン酸の塩基性部位によるプロトンホッピングであるため、一般にプロトン伝導性を向上させるためには、リン酸分子及びリン酸をドープしたベースポリマである塩基性ポリマが高い分子運動性を持つことが重要であり、また、同時に燃料電池用の電解質膜として機能させるためには電池作動条件で膜形状を維持することができる力学的膜強度も具備する必要がある。
【0015】
しかしながら、上述した特表平11−503262号公報で開示されている塩基性ポリマ/リン酸型の固体高分子電解質膜で好適に使用されているポリベンズイミダゾールは低い水活性、化学的安定性などの利点を有するものの、ポリマ主鎖中にベンゼン環を有しているため結晶性が高く、また分子鎖が剛直であるため、膜形状を維持する目的では有用であるが、その一方で分子運動性が低く、また、塩基性部位が比較的少ないため、ドープ可能なリン酸量が限定されてしまうといった欠点を有しており、発現されるプロトン伝導性は低い値に留まってしまっているのが現状である。
【0016】
また、このような問題を解決する目的で、より柔軟で、塩基性部位の多い分子鎖を持つ塩基性ポリマにリン酸をドープした例もあるが、それ単独では膜形状を維持できないといった問題点はなんら解決されていない。
【0017】
本発明の解決しようとする課題は、上記既知の問題がなく、燃料電池作動条件で膜形状を維持すると同時に、高温条件下で高いプロトン伝導性を有するプロトン伝導性電解質膜を提供し、これにより燃料電池の性能を向上させ、地球環境に配慮した電気自動車分野等への適用を高めんとするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明の高温プロトン伝導性電解質膜は、請求項1に記載のように、グラフト重合可能な基材ポリマ膜にポリビニルピリジンをグラフト重合し、該グラフト基材ポリマ膜にポリビニルピリジンのピリジン単位に対するリン酸のドープ量P/N比が0.8〜1.3の範囲においてリン酸をドープすることにより100℃以上の高温条件下でのプロトン伝導性に優れた高温プロトン伝導性電解質膜を提供することを要旨とするものである。このP/N比が小さ過ぎると導電性を著しく損なってしまい、大き過ぎるとドープしたリン酸が過剰になり、電解質膜から抜け落ちてしまうといった問題が生じるためである。
【0019】
この場合に基材ポリマ膜は請求項2に記載のように、グラフト重合可能な単一種類の重合体又は共重合体よりなり、その具体例としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが一例として挙げられる。
【0020】
前記基材ポリマ類による膜は高い結晶性を有し、また高い靱性を示すことから膜の形状維持能力に優れる。これらの基材ポリマに側鎖塩基性ポリマとしてポリビニルピリジン(PVP)をグラフト重合する。ここで側鎖として導入するポリビニルピリジンは、ポリベンズイミダゾールに比較して多くの塩基性部位を有するため、ドープ可能なリン酸量を増やすことができるものの、ガラス転移温度が低く、柔軟で高い分子運動性を持つため、リン酸ドープ型電解質膜用の材料として好適であるにも関わらず、単独では膜形状を維持することができないといった性質を有すものである。
【0021】
しかしながら高い結晶性を有する基材ポリマのグラフト側鎖としてポリビニルピリジンを用いることにより、合成された固体高分子電解質膜が膜形状を維持できないといった問題を回避することができるようになる。
【0022】
このようにして得られた上記固体高分子電解質膜は基材ポリマの高い結晶性に基づく燃料電池作動条件での膜形状の維持能力及び塩基性部位の多いポリビニルピリジンに基づく柔軟で高い分子運動性といった両ポリマの優れた面を併せ持った固体高分子電解質膜となる。この結果、グラフト重合するポリビニルピリジンの導入量を任意に増加させることによりリン酸のドープ量を容易に増加させることが可能となり、同時にベースポリマの運動性自体が高いことと相まって、100℃以上の高温条件下で良好なプロトン伝導性を示す高温プロトン伝導性電解質膜を得ることが可能となるのである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
(実施例1〜3、参考例4)
グラフト重合可能な基材ポリマ膜としてエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体膜(ETFE膜)を用い、該基材ポリマ膜にポリビニルピリジン(PVP)をグラフト重合してなるポリビニルピリジン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE−g−PVP)膜にリン酸をドープしたETFE−g−PVP/リン酸膜。
【0026】
初めに、以下の手順に従い、ポリビニルピリジン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE−g−PVP)膜を作成した。すなわち、ドライアイス冷却下で10、20及び30kGyの電子線を厚さ100μm、100mmx100mmの大きさのETFE膜にそれぞれ照射し、ETFE膜内部にラジカルを生成させ、これらETFE膜をドライアイス冷却下で保存し、室温に戻した後に速やかに過剰量のビニルピリジンモノマに浸漬して、反応容器内部を窒素置換した後、60℃で24時間反応させることによりポリビニルピリジングラフト鎖を導入した。反応後は、クロロホルムを用いて還流処理することにより非グラフト成分(ビニルピリジンモノマおよびホモポリマ)を抽出除去し、室温で減圧乾燥して、グラフト率180、250、280%のポリビニルピリジン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE−g−PVP)膜を得た。
【0027】
次に得られた各ETFE−g−PVP膜を、85%リン酸に浸漬し、150℃で8時間加熱することによりピリジン単位に対するリン酸ドープ量P/N=1.19でリン酸がドープされたETFE−g−PVP/リン酸膜を合成した。なお、ピリジン単位に対するリン酸ドープ量を示すP/N比はグラフト率によらずほぼ一定の値となった。ここで得られたグラフト率180、250、280%、P/N=1.19の各ETFE−g−PVP/リン酸膜をそれぞれ実施例1、実施例2、実施例3とする。
【0028】
上記手法により得られた実施例3のグラフト率280%、P/N=1.19のETFE−g−PVP/リン酸膜を蒸留水に室温で24時間浸漬してリン酸を脱ドープした後、室温で減圧乾燥することにより得られたグラフト率280%、P/N=0.68のETFE−g−PVP/リン酸膜を参考例4とする。
【0029】
ここでETFE−g−PVP膜のグラフト率は、次の数1の式より算出した。
【数1】
グラフト率(%)=(WETFE−g−PVP−WETFE)x100/WETFE
但し、WETFE−g−PVP:グラフト化反応後の膜重量(g)
WETFE :反応前の膜重量(g)
【0030】
(実施例5)
グラフト重合可能な基材ポリマ膜としてポリフッ化ビニリデン膜(PVDF膜)を用い、該基材ポリマ膜にポリビニルピリジン(PVP)をグラフト重合してなるポリビニルピリジン−グラフト−ポリフッ化ビニリデン(PVDF−g−PVP)膜にリン酸をドープしたPVDF−g−PVP/リン酸膜。
【0031】
上記実施例1〜3と同様な手順に従い、ポリビニルピリジン−グラフト−ポリフッ化ビニリデン(PVDF−g−PVP)膜を作成した。すなわち、ドライアイス冷却下で30kGyの電子線を照射したPVDF膜をビニルピリジンモノマに浸漬して、60℃で24時間反応させることによりグラフト率360%のポリビニルピリジン−グラフト−ポリフッ化ビニリデン(PVDF−g−PVP)膜を得た。次に得られたPVDF−g−PVP膜を、85%リン酸に浸漬し、150℃で8時間加熱することによりP/N=1.25でリン酸がドープされたPVDF−g−PVP/リン酸膜を合成した。ここで得られたグラフト率360%、P/N=1.25のPVDF−g−PVP/リン酸膜を実施例5とする。
【0032】
(比較例1)
上記実施例1〜3、5の比較用として、従来より広く使用されているナフィオン112(デュポン社製、登録商標)を用いた。
【0033】
上記実施例1〜3、5、参考例4で用いられるポリビニルピリジン(PVP)の化学構造を化1に示す。また実施例1〜3、参考例4で合成したポリビニルピリジン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE−g−PVP)膜にリン酸をドープしたETFE−g−PVP/リン酸膜の化学構造を化2に示す。また、実施例5で合成したポリビニルピリジン−グラフト−ポリフッ化ビニリデン(PVDF−g−PVP)膜にリン酸をドープしたPVDF−g−PVP/リン酸膜の化学構造を化3に示す。
【化1】
【化2】
【化3】
【0034】
次に本実施例1〜3、参考例4のETFE−g−PVP/リン酸膜、実施例5のPVDF−g−PVP/リン酸膜、比較例1のナフィオン112の各種固体高分子電解質膜について高温電気伝導度測定装置を用いて100℃から150℃の温度範囲、0%から100%の相対湿度範囲で電気伝導度を測定した。
【0035】
以上のようにして得られたETFE−g−PVP/リン酸膜の高温条件下での電気伝導度の測定結果を図1に示す。図1は、横軸に相対湿度(%)をとり、縦軸に電気伝導度(S/cm)をとっている。図1から分かるように100℃および120℃の各温度条件下において、実施例3のグラフト率280%、P/N=1.19のETFE−g−PVP/リン酸膜と比較例1のナフィオン112を各相対湿度条件下に亘ってそれぞれ比較した場合、実施例3のほうが高い電気伝導度を示した。また、実施例3は比較例1に比べ、電気伝導度の相対湿度依存性が少なく、更に、低湿度領域においても電気伝導度の低下が少ないといったように非常に良好な結果を示した。
【0036】
ここで特表平11−503262号公報で開示されているPBI/リン酸型(ポリベンズイミダゾール/リン酸型)の従来膜と本発明品の一実施例である実施例3のETFE−g−PVP/リン酸型の膜について水分圧400Torrにおける電気伝導度を各温度範囲に亘り、比較した結果を表1に示す。PBI/リン酸型の従来膜は電気伝導度が10−2〜10−3S/cmの範囲であるのに対し、本発明品の一実施例である実施例3のETFE−g−PVP/リン酸膜は10−1〜10−2S/cmと極めて高いプロトン伝導性を示した。
【表1】
【0037】
これはドープされたリン酸が高温、低湿度領域で良好なプロトン伝導性を有すると同時に、ベースポリマの運動性自体が高いことと相まって、100℃以上の高温条件下で良好なプロトン伝導性を示したものと考察される。
【0038】
また、図1より120℃における参考例4のグラフト率280%、P/N=0.68のETFEg−PVP/リン酸膜と実施例3のグラフト率280%、P/N=1.19のETFE−g−PVP/リン酸膜を比較した場合、参考例4は実施例3に比較して各相対湿度条件下で、電気伝導度が著しく低い結果となった。これはベースポリマが高い運動性を有するにも関わらず、リン酸のドープ量が側鎖にグラフトしたポリビニルピリジンのピリジン単位に対して少な過ぎたため(リン酸を脱ドープし過ぎたため)、十分なプロトンホッピングが生じなかったためと考えられる。
【0039】
ここで、ピリジン単位に対するリン酸ドープ量を示すP/N比は0.5〜1.6までの範囲で種々変更可能であるが、0.8〜1.3の範囲であるのが好ましい。というのも、P/N比が0.8より小さいと参考例4のように導電性を著しく損なってしまい、又、P/N比が1.3より大きいとドープしたリン酸が過剰になり、電解質膜から抜け落ちてしまうといった問題が生じる恐れが考えられ、それ以上ドープする必要性が少ないためである。
【0040】
また、実施例1〜3及び5の120℃、相対湿度50%における電気伝導度測定結果を表2に示す。表1から分かるように側鎖にポリビニルピリジンをグラフト重合し、リン酸をドープした電解質膜はいずれも高い電気伝導度を示した。また、実施例1〜3の比較において、ポリビニルピリジンのグラフト率を高くし、リン酸のドープ量を増やしていく程、電気伝導度の値が高くなる傾向にあることも明らかとされた(実施例1のグラフト率180%、実施例2のグラフト率250%、実施例3のグラフト率280%、かつ、各実施例のP/N=1.19より)。尚、基材ポリマ膜としてETFE−g−PVP膜(実施例1〜3)とPVDF−g−PVP膜(実施例5)とではどちらが優れているかは、このデータからは明らかではない(実施例5では、グラフト率もP/N比も高いため)が、いずれにしてもグラフト率を上げて、かつ、リン酸のドープ量を増やしていけば、高い電気伝導度が得られることが期待されるものである。
【表2】
【0041】
本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能であることは勿論である。例えば、上記実施例ではグラフト重合可能な基材ポリマ膜として、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体膜(ETFE膜)及びポリフッ化ビニリデン膜(PVDF膜)の例を示したが、それ以外の例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのグラフト重合可能な各種単一種類の重合体又は共重合体膜を適用できるものである。また、ポリビニルピリジンのグラフト率やリン酸のドープ量、さらに本発明の電解質膜の作成方法等は、上記実施例に限られるものではなく、各種の手法が用いられるものである。
【0042】
【発明の効果】
本発明の高温プロトン伝導性電解質膜によれば、グラフト重合可能な基材ポリマ類を原料として、その基材ポリマ膜にポリビニルピリジン(PVP)をグラフト重合してなるグラフト基材ポリマ類にリン酸をドープすることにより、基材ポリマ類の高い結晶性に基づく高い膜強度を有し、側鎖として導入された塩基性部位の多いポリビニルピリジンに基づく柔軟で高い分子運動性といった両ポリマの優れた面を併せ持つ固体高分子電解質膜となる。この結果、グラフト重合するポリビニルピリジンの導入量を任意に増加させることにより、リン酸のドープ量を容易に増加させることが可能となり、同時にベースポリマの運動性自体が高いことと相まって、100℃以上の高温条件下で良好なプロトン伝導性を示す高温プロトン伝導性電解質膜を得ることが可能となる。この高温プロトン伝導性電解質膜を使用することにより固体高分子型燃料電池の性能が向上し、電気自動車分野等への適用がより加速されるようになり、その経済的効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るポリビニルピリジン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE−g−PVP)膜にリン酸をドープしたETFE−g−PVP/リン酸膜の各種高温条件・相対湿度下での電気伝導度変化を比較例との対比において示した図である。
Claims (2)
- グラフト重合可能な基材ポリマ膜にポリビニルピリジンをグラフト重合し、該グラフト基材ポリマ膜にポリビニルピリジンのピリジン単位に対するリン酸のドープ量P/N比が0.8〜1.3の範囲においてリン酸をドープしてなることを特徴とする高温プロトン伝導性電解質膜。
- 前記基材ポリマ膜が単一種類の重合体又は共重合体から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高温プロトン伝導性電解質膜。
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