JP4472794B2 - グルコース濃度の定量装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、健康管理や疾病の治療のため生体組織中のグルコース濃度、あるいは血液、血清、血漿、細胞液、唾液、涙、汗、尿などの体液中のグルコースの濃度を測定する定量装置に関するものであり、特に、近赤外領域における分光分析手法を用いるグルコース濃度の定量装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近赤外分光分析は、試料に特別な操作を行う必要がなく、非破壊で迅速な計測ができることから、近年、農業や食品、石油化学をはじめ様々な分野で利用されるようになっている。近赤外領域での分光分析は、中赤外領域における分光分析と比較すると、一般に
・近赤外領域では水の吸収スペクトルが小さいので中赤外領域では難しい水溶液系の分析が可能である
・生体を透過する能力が高い
・測定に際して特別な試料を調製する必要がない場合が多い
といった長所を有する反面、中赤外領域での分析が分子の基準振動に由来する吸収をとらえるのに対して、近赤外領域では分子振動の非調和性に起因して観察される基準振動の倍音または結合音をとらえることになる上に、近赤外領域での吸収は水素原子が関与するCH基、OH基、NH基のような非調和性の大きい分子振動により生じるものであることから、
・信号レベルが中赤外領域と比較して100分の1程度と小さい
・CH基、OH基、NH基は生体において普遍的な存在であり、この分子結合の信号をとらえることになるので、吸収ピークの帰属が明確でないことが多い
といった短所がある。この短所のために、近赤外領域での定量あるいは定性分析を行う場合、中赤外における分析のようにピーク位置やピーク高さによる分析手法では正確な分析を行うことが難しい。
【0003】
この問題を解決するために、近年、測定スペクトルを統計解析手法、たとえば、線形重回帰分析(MLR)、主成分回帰分析、PLS回帰分析といった多変量解析手法を用いて分析する手法、いわゆるケモメトリクスと呼ばれる手法が用いられている。この手法はパーソナルコンピュータの発達とともに急速に普及してきた分析手法であり、数値解析を利用した統計的手法により近赤外領域でのSN比の小さい吸収信号でも、実用に供する定量・定性分析が可能となる。
【0004】
このような背景をもとに、近赤外光を用いた生体中のグルコース濃度の定量が近年非常に注目されている。採血を必要としない非侵襲的な定量が可能となるためであるが、その中で代表的なものとして以下のようなものがある。
米国特許第4,655,225号明細書:非侵襲的な分光測定方法及び装置;
この米国特許には1575,1765,2100,2270±15nmより選択される少なくとも1波長と、グルコースの吸収が皆無である、あるいは重要でない1000nmから2700nmより選択される参照波長とからグルコースを定量する手法が開示されており、実施例において参照波長として1100nmが選択されている。この参照波長1100nmは第2倍音の吸収領域に属する波長であり、1575,1765,2100,2270nmの属する第1倍音あるいは基準振動の吸収領域に比較すると、信号の大きさが1/100以下程度であり、このためにグルコースの吸収が皆無である、あるいは重要でない参照波長と言える。
【0005】
逆にいえば、これは第2倍音あるいは第3倍音といった高調波領域以外から参照波長を選択することが困難であることを示している。図1及び図2は夫々第1倍音領域および第2倍音領域で測定した蒸留水と固体(粉体)状態のグルコース、アルブミン、コレステロールの吸収スペクトルを示しているが、分子結合の第1倍音やその結合音が存在する領域中にはグルコースによる吸収が皆無な波長は存在せず、相対的に吸収の少ないところが存在するだけである上に、前記の4波長においての吸収がグルコース成分のみによる吸収であることはありえず、他の生体成分の吸収が重畳していることを考えると、他の生体成分の寄与を考慮せずにグルコース濃度を定量することは実用的には不可能であると考える。さらに、1575,1765,2100,2270nmの波長選択の理由として、固体状態のグルコースを測定したスペクトルのピークが前記の4波長に存在することを示しているが、体液に溶解した水溶液状態でのグルコースの吸収ピークが固体状態のままで存在するということに関しては有りえないと考えるべきである。グルコースのようなOH基を多く含む分子は後述するように水中では水分子による水素結合の影響を受けて、吸収スペクトルのピークがシフトすると考えられ、このために前記の4波長の内、グルコースのOH基に関連する1575,2100nmの2波長の吸収ピークが水溶液中では波長シフトのために正確な測定が困難となっていると考えるのが自然である。
【0006】
米国特許第5,028,787号明細書:血糖の非侵襲的測定;
この米国特許には600nmから1100nmの範囲でグルコースを定量する手法が示され、実施例には980±Xnmとなる2波長を用いてグルコースを定量する例が示されている。具体的には945nmと1015nm(つまりX=35)を利用した手法が示されている。ここで重要な意味を持つ980nmは、水の第2倍音の吸収ピークを示す波長であるので、この実施例では水の吸収ピークを挟んで選択した2波長を利用してグルコースの定量を実施していることになる。945nmと1015nmの選択理由としてグルコース濃度と良い相関が得られることが示されている。
【0007】
米国特許第5,070,874号明細書:患者の人体中のグルコース濃度の非侵襲判定;
この米国特許には血糖の非侵襲的測定に1660nm付近の狭い範囲で波長を変化させて得たスペクトルのn次導関数よりグルコースを定量する手法が開示されている。具体的には1660nm付近で測定した吸光度log1/Tの2次導関数を導き,多変量解析を用いてグルコースの定量を行っている。詳細は後述するが、我々が行った実験においても第1倍音領域での2次微分スペクトルをPLS解析して得た回帰係数が1660nm付近にピークを有している。しかし、1660nm付近の特徴的な吸収はグルコースのCH基に由来するもので、このグルコースのCH基に由来する1660nmの吸収に着目した定量分析は、グルコースのOH基に由来する吸収に着目する定量分析に比べて測定精度がかなり悪いという結果が出ている。CH基はグルコースだけでなく他の生体成分に普遍的に存在する分子結合で、その吸収は図1から明らかなように1700nm付近の領域にピークが集中して観察され、グルコース以外の生体成分のCH基由来の吸収とグルコースのCH基由来の吸収とを分離することが難しい上に、そもそもグルコースのCH基由来の吸収が他の生体成分に比べて小さいからと思われる。しかし、他の生体成分の寄与を考慮することについては開示されておらず、この点においてもグルコース濃度の定量は難しい。
【0008】
米国特許第5,222,496号:近赤外グルコースセンサ;
この米国特許にはグルコースのOH基に由来する吸収ピークがある1600nm付近とその波長から60nm以内の参照光によってグルコースを定量することが開示されている。具体的には1630nmから1660nmの範囲で選択された参照波長と1600nmのグルコースによる吸収波長とからグルコースの定量を行う例が示されている。1600nmから60nm以内の参照波長を利用する理由としては、波長が近接する光同士は屈折率などの光学的性質がほぼ同じであるから、外乱の影響の小さい信号が得られるためとしている。また、グルコースの吸収波長の選択理由としては米国特許第4,655,225号明細書と同じく固体状態のグルコースを測定したスペクトルのピークが1600nmに存在することを示している。しかし、本従来例にあるような1600nm付近においては、グルコース成分の吸収は吸収ピークというよりブロードな吸収帯を形成しており、場合によっては30nm以内より選択する参照光ではグルコース信号が明確に分離しにくいと考えられる。また、この従来例においても他の生体成分の寄与を考慮することについては開示されておらず、この点においてもグルコース濃度の定量は難しい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように従来技術は、おおむね参照光に対するグルコースの吸収で生体中のグルコース濃度の定量を行おうというものである。しかしながら、近赤外領域での吸収スペクトルは、上述のようにOH基、NH基、CH基のような生体成分が基本的に持っている分子によって生じること、またピークが不明瞭なブロード状態で吸収が観察されることから、ある波長における吸収信号は程度の差はあるものの様々な生体成分の吸収が重畳していると考えるべきである。たとえば、NH基に由来する吸収領域は、グルコースのOH基に由来するブロードな吸収領域の中に存在しているし、そのグルコースのOH基に由来する吸収も他の生体成分の吸収に重畳して存在する。そのためグルコースの定量はグルコース以外の生体成分の影響や温度、散乱、光路長等の外乱成分の影響を考えなければ成立し得ないといえる。生体中の溶解したグルコースの状態と近赤外スペクトルを関連づけて現象を理解するとともに、大きな外乱要因となる生体組織あるいは体液中の蛋白成分や脂肪成分の影響を近赤外スペクトルと関連づけて理解しなくてはならない。
【0010】
本発明は、このような知見に基づき、生体組織や体液のような刻々と変動する生体成分中のグルコース濃度の定量に際して、上記のような外乱要因の考慮を行うことで精度よくグルコース濃度の定量分析を行うことができる定量装置を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明に係るグルコース濃度の装置は、近赤外光源と、近赤外光を検出する検出手段と、前記近赤外光源から発する近赤外光を生体組織あるいは体液に導入し、前記生体組織あるいは体液を透過あるいは拡散反射した近赤外光を前記検出手段に誘導する誘導手段と、前記検出手段で得られる信号を基にグルコース濃度の回帰分析を行う演算手段とからなり、上記演算手段は、分子の第1倍音が観察できる波長領域で且つ水の吸収の影響が比較的小さい1480nmから1880nmの波長領域内におけるグルコース分子のOH基由来の吸収を測定するための1550nmから1650nmの第1の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のNH基由来の吸収を測定するための1480nmから1550nmの第2の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のCH基由来の吸収を測定するための1650nmから1880nmの第3の波長域からの少なくとも一つの吸収信号の、少なくとも3つの吸収信号を基にグルコースの定量を行うものであることに特徴を有している。
【0012】
また本発明は、赤外光を検出する検出手段と、前記近赤外光源から発する近赤外光を生体組織あるいは体液に導入し、前記生体組織あるいは体液を透過あるいは拡散反射した近赤外光を前記検出手段に誘導する誘導手段と、前記検出手段で得られる信号を基にグルコース濃度の回帰分析を行う演算手段とからなり、上記演算手段は、分子の第2倍音が観察できる波長領域で且つ水の吸収の影響が比較的小さい1000nmから1300nmの波長領域内におけるグルコース分子のOH基由来の吸収を測定するための1050nmから1130nmの第1の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のNH基由来の吸収を測定するための1000nmから1050nmの第2の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のCH基由来の吸収を測定するための1130nmから1300nmの第3の波長域からの少なくとも一つの吸収信号の、少なくとも3つの吸収信号を基にグルコースの定量を行うものであることに特徴を有している。
【0013】
上記吸収信号の少なくとも一つ、複数試料の定量分析で測定した連続スペクトルを主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析して得た回帰係数がとる正または負のピーク周辺の波長とすると、あるいは複数の試料の分析で測定した連続スペクトルを主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析して算出された複数の主成分因子に対する回帰係数同士の交点付近の波長の吸収信号であると、好適な結果を得ることができる。
【0014】
第1の波長域が1600±40nmであり、第2の波長域が1530±20nmであり、第3の波長域が1685±20nmまたは1715±20nmまたは1740±20nmのいずれか一つであっても、好適な結果を得ることができるものとなる。
【0015】
生体組織中あるいは体液中のグルコース濃度の測定に際しては、上記3つの波長域より選択した所定の半値幅を有する少なくとも3つの中心波長の光を基にグルコース濃度の定量を行うとよい。
この場合の半値幅は、複数試料の分析で測定した連続スペクトルを主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析を行い、前記分析手法により算出された各波長に対する回帰係数がとるピーク値の70%程度以下の値を示す波長幅を用いるのが好ましい。また、少なくとも1波長の中心波長を1560nmから1640nmの範囲内に設定するとともに半値幅を60nm以下とすることも好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
前述のように、生体組織あるいは体液中のグルコース成分の定量を行うにあたっては、生体組織中あるいは体液中における生体成分の状態およびそれに起因する近赤外光の吸収変化を把握する必要がある。
生体中のグルコース定量を行うにあたっての現象認識を以下に述べる。近赤外領域での吸収は主に、CH基、OH基、NH基によるもので、その他にC−N,C−O,C=O基あるいはSH,PH基が観測されるが、生体中においてもOH,CH,NH基の吸収を中心に考えればよい。もっとも毛髪に関してはSH基も重要な意味を持ってくる。
【0020】
また、近赤外分光分析による物質の定性あるいは定量についてどの波長を用いるかについては、被測定物の特性、目的とする定量物質のシグナルの大きさ、光源の光の強さ、受光素子の特性などを考慮して総合的に判断することになるが、グルコースの定量に際しては、生体に存在する蛋白質、脂質、水等の物質と比較して特異的な吸収を有する波長の吸収信号を用いて行えばよいことは自明であり、前述した従来技術もその考えに立脚しているが、グルコース(C6 H12O6 )の分子構造および固体状態で計測したグルコース吸収スペクトルから考えて、その特異的な吸収信号としてグルコースのOH基に由来する吸収を捉えることが最善と考える。固体状態でのグルコースのOH基由来の吸収ピークは、図1に示すように第1倍音領域(1350〜1880nm)では1525nから1640mm付近のブロードなピークとして存在し、第2倍音領域(900〜1350nm)では図2に示すように1000nmから1140nm付近のブロードなピークとして存在している。この領域で観察できるグルコースのOH基の吸収が水のOH基のピーク(第1倍音では1450nm、第2倍音では980nm)に比べて長波長側に存在するのは、固体状態でのOH基の分子振動状態と水溶液中でのOH基の分子振動状態とが異なるためで、特に水溶液中では水分子の非常に大きな水素結合の影響を受ける。水溶液中においてグルコースのOH基に由来する吸収は分子間の相互作用変化と水分子による水素結合の影響を受けてシフトしていると考えるべきである。
【0021】
水溶液中においてグルコースのOH基に由来する吸収スペクトルが、固体状態の時のように1530nmから1600nm付近にピークを持たず、シフトにより平坦な吸収となるということは、グルコースのOH基に着目した定量方法が近赤外領域での定量分析に通常用いている微分操作(1次微分、2次微分)によるデータの前処理が適していない可能性があることを意味する。つまり、1530nmから1600mm付近にもグルコースのOH基に由来する吸収は存在するが、波長に対する変化としては小さいため、微分操作つまり波長に対する変化量を求める操作ではその吸収信号をとらえることが難しいためである。
【0022】
体液あるいは生体スペクトルの特徴として、
・近赤外領域における生体中の微量物質の吸収スペクトルは水の大きな吸収に隠れているが、その吸収に重畳して確実に存在している。このことはPLS回帰分析で得られる回帰係数あるいは主成分に特徴的に現れている
・近赤外領域で観察される吸収は主にCH,OH,NH基であるので、水溶液中では水素結合の影響を受ける。影響の大きさは分子の特性に応じて異なり、グルコースのように低分子でOH基を多く持つものは大きな影響を受けるが、アルブミンのような高分子タンパクヘの影響は比較的小さい
ということがいえる。
【0023】
従って、生体中でのグルコース定量のためには、生体中の他の成分のスペクトルが重畳したスペクトル情報(測定した通常の生体成分スペクトル)より、グルコースの吸収が他の生体成分と異なった挙動を示す特異吸収帯を見い出すことが重要であることがわかる。また、その特異吸収帯においても他の生体成分(以下外乱成分と呼ぶ)の信号が重畳されているので、外乱成分の寄与分を取り除くための情報を得ることが信頼性の高い計測手法を確立するために重要であると考える。
【0024】
外乱成分の影響を考察するために牛血清中のグルコース、アルブミン、水の3成分を人為的に変動させた系での実験を第1倍音および第2倍音で行った。つまり、アルブミンを外乱成分としてグルコース濃度の定量実験を行った。
−実験A−(グルコースーアルブミン−水変動系 第1倍音)
牛血清80mlに対してグルコースを蒸留水に溶解させた水溶液を5ml、アルブミンを蒸留水に溶解させた水溶液を15ml添加して試料とするとともに、試料中のグルコース濃度が30mg/dl,93mg/dl,155mg/dl,280mg/dl,530mg/dl,1030mg/dlの6水準、アルブミン濃度が2.24g/dl,2.84g/dl,3.44g/dl,4.64g/dl,5.84g/dlの5水準の計6×5=30種類の組合せから、15種類の組合せをピックアップして試料を作成した。試料はその調製方法からもわかるように、グルコースとアルブミンと水の3成分のみが変動するように調整されている。
【0025】
この実験では、グルコースとアルブミンの両方の濃度変動が存在するため、単純にグルコースと水あるいはアルブミンと水の関係だけではグルコースの定量ができない。
スペクトル測定及び回帰分析は1mm厚のガラス製セルに試料を入れ、ニコレー社製マグナ850を用い、加算平均128回、レゾルーション16、検出器DTGS KBr、白色光光源の条件で行った。リファレンス信号の測定は試料のスペクトル測定に先立ち、分光分析機(FT−IR)内のメモリに保存されたリファレンス信号で測定した吸収信号を吸光度に変換して得たスペクトルデータを市販の多変量解析ソフトウェアを用いてPLS回帰分析で行った。PLS回帰分析に用いた波長範囲は、第1倍音の高調波が観察される1250nmから1800nmである。
【0026】
外乱成分としてアルブミンを選択した理由は、血液中に存在するもっとも一般的なタンパク成分であることに加え、生体を構成するタンパク成分の特性を推定する情報が得られると考えられるからである。
実験Aでのグルコース定量の結果は主成分数7での推定で、検量線作成の相関係数0.996、標準誤差SEP28.1mg/dl、検量線検定の相関係数0.992、標準誤差SEP38.1mg/dlであった。
【0027】
図3に第7主成分までを利用した回帰係数を示す。図1に示した各単体成分のスペクトルと比較して、アルブミン分子のNH基に由来する15l0nm付近の負のピーク、グルコース分子のOH基に由来する1580nm付近の正のピーク、アルブミン分子のCH基に由来する1700nm付近の負のピークからグルコース濃度の定量が行われている様子がうかがえる。
【0028】
この実験結果のグルコース分子のOH基に由来する1580nm付近の正のピークの存在は、水溶液中におけるグルコースのOH基スペクトルは固体でのスペクトルがシフトしたブロードな吸収をもつことに一見矛盾した結論に思える。しかしながら、同一スペクトルデータを2次微分処理して解析を行った図4の結果を見ると、1580nm付近より1550nmから1570mmにかけて回帰係数の大きなピークが観察され、吸収が1580nmにあるならば当然そこに観察されるべき吸収ピークがシフトしていることになる。このことからもグルコースの1580nm付近の吸収はピークがシフトした比較的平坦な吸収特性を示していると考えられ、上記の結果と矛盾しない解釈が成立する。
【0029】
微分処理を行わない吸収スペクトルの解析で1580nmにピークを有する回帰係数が算出される理由は、この付近のグルコースのOH基由来の吸収がブロードで隣接するNH基由来の吸収とCH基由来の吸収との影響を受けているためである。つまり両者の影響を一番受けにくい波長が1580nm付近に存在すると解釈できる。
【0030】
−実験B−(グルコース−アルブミン−水変動系 第2倍音)
牛血清80mlに対してグルコースを蒸留水に溶解させた水溶液を5ml、アルブミンを蒸留水に溶解させた水溶液を15ml添加して試料とするとともに試料中のグルコース濃度が35mg/dl,136mg/dl,220mg/dl,412mg/dl,750mg/dlの5水準、アルブミン濃度が2.6g/dl,3.0g/dl,3.3g/dl,4.0g/dl、5.4g/dlの5水準の計5×5=25種類の組合せから、13種類の組合せをピックアップし試料を作成した。なお、検出器は液体窒素で冷却して測定した。また、PLS回帰分析は17点の移動平均により平滑化した吸収スペクトルに対して行った。PLS回帰分析に用いた波長範囲は、第2倍音の高調波が観察される900nmから1350nmである。
【0031】
実験Bでのグルコース定量の結果は主成分数7での推定で、検量線作成の相関係数0.981、標準誤差SEP53.1mg/dl、検量線検定の相関係数0.959、標準誤差SEP77.2mg/dlであった。
図5に第7主成分までを利用した回帰係数を示す。図2に示した3成分各単体のスペクトルと比較して、アルブミン分子のNH基に由来する1020nm付近の負のピーク、グルコース分子のOH基に由来する1070nmから1120nm付近の正のピーク、アルブミン分子のCH基に由来する1150nm付近の負のピークからグルコース濃度の定量が行われている様子がうかがえる。つまり、第2倍音領域での結果は第1倍音領域で得られた結果と相似性の強い結果となっている。
【0032】
第1倍音および第2倍音領域での外乱変動を付与した上記のグルコース定量実験結果より、生体中でのグルコース濃度は、外乱成分とグルコース吸収スペクトル、特にグルコースのOH基由来の吸収スペクトルの関係から求めることが信頼性が高く、精度のよい計測手法を確立できることがわかる。定量分析に利用するグルコースの特異吸収帯としては前述のように水のOH基の吸収とは異なった位置に出現するグルコースのOH基の吸収が有効であり、外乱の把握として生体成分に多く含まれるNH基、CH基の吸収を把握すればよいわけである。
【0033】
また、各高調波領域から水のOH基に起因する大きな吸収の部分を除いた領域で、NH基、OH基(グルコースの)、CH基の吸収を含む波長域を設定するにあたっては、第1倍音領域では1480nmから1880nmの範囲において、OH基由来の吸収範囲は1550nmから1650nm、NH基由来の吸収範囲は1480nmから1550nm、CH基由来の吸収範囲は1650nmから1880nmとするのがよく、第2倍音領域では1000nmから1300nmの範囲において、OH基由来の吸収範囲は1050nmから1130nm、NH基由来の吸収範囲は1000nmから1050nm、CH基由来の吸収範囲は1130nmから1300nmとすればよい。
【0034】
生体成分以外の外乱要因の1つとして生体あるいは測定試料の温度変化がある。温度変化については人間が恒温動物であるから適切な環境下で測定を行えば大きな問題とならないが、温度をグルコース濃度定量のための説明変数とすることもできる。また、生体組織あるいは体液において温度変化を最も受けるのは水分子であることから水分子の吸収の影響が小さい領域で定量することにより温度変化の影響を小さくすることができる。
【0035】
定量分析には各高調波の領域ごとに解析を行うようにする方が良いが、利用する波長での最大、最小値を利用した変動の規格化を行えば複数の高調波領域にまたがる吸収信号も同列に利用できる。
また多波長成分を含む光あるいは単色光を被測定物に照射し、その反射光あるいは透過光を検出することによってグルコース濃度の定量を行うことができるが、この場合は被測定物に到達する前か反射あるいは透過した後に分光操作を行う必要があり、この分光操作には、干渉フィルター、回折格子、フーリエ変換方式などを用いることができる。
【0036】
以下に本発明におけるグルコース濃度の定量装置についてのべると、前述のように本発明のグルコース濃度の定量装置は、近赤外光源と、近赤外光を検出する検出手段と、前記近赤外光源から発する近赤外光を生体組織あるいは体液に導入し、前記生体組織あるいは体液を透過あるいは拡散反射した近赤外光を前記検出手段に誘導する誘導手段と、前記検出手段で得られる信号を演算してグルコース濃度に変換する演算手段とからなるもので、上記検出手段はグルコース分子のOH基由来の吸収を測定するための波長域と、生体成分のNH基由来の吸収を測定するための波長域と、生体成分のCH基由来の吸収を測定するための波長域の少なくとも3つの波長域の近赤外光を検出することに特徴を有するもので、前記演算手段では予め入力されている検量式を用いて近赤外光の吸収信号を利用してグルコースの定量を行う。
【0037】
近赤外光源としては、前述したところから明らかなように比較的狭い波長の範囲でグルコースの定量が可能であること、また、場合によっては数点の波長でグルコースの定量が可能であることから、発光ダイオード(LED)が適している。第1,第2倍音領域で利用できる発光ダイオードは現在の技術ではInP系のものがあり、第3倍音領域ではGaAsあるいはGaAlAs系発光ダイオードがある。また第1,第2倍音領域で利用できる受光素子はInGaAsP系のものがあり、第3倍音領域ではシリコン受光素子がある。
【0038】
また、発光ダイオードの特性によっては分光手段を用いる必要のない場合も存在する。特に、グルコース分子のOH基由来の吸収を測定する範囲では半値幅を比較的大きく設定できるために、干渉フィルター等の分光手段を不用とすることができる。
分光手段が必要な場合、前述のように様々な分光手段を用いることが可能であるが、一般的には干渉フィルターを用いるとよい。
【0039】
誘導手段としては生体組織を非侵襲的に測定してグルコース濃度を定量する場合は光フアイバーを利用することが適している。特に、第1倍音領域で定量を行う場合は、探さ方向への光の到達度合を光ファイバー間隔で制御し、任意探さの皮下組織中のグルコース濃度を定量する手法により測定精度を向上させることができる。
【0040】
光ファイバー間隔を簡単に制御する方法として任意径の光ファイバーを接触させて得られる中心間距離により、つまり受発光に用いる光ファイバー径の変化で設定できるようにする手法がある。このような光ファイバーを利用しての分析は、受発光ファイバー8,9の束を図15のように被測定物の表面にはぼ直角につき当てて行う。なお、透過する光路が特定できれば直角に限るものではない。
【0041】
発光ファイバー8より被測定物に照射された光は隣接する受光ファイバー9への光路A、さらに離れた受光ファイバー9への光路B、さらに離れた受光ファイバー9への光路C等、様々な光路を通った光が受光ファイバー9に入射される。いま、光路A、B、Cの光路長を比較すると、同一径の光ファイバーを受発光に用いたならば光路B,Cは光路Aのほぼ2倍,3倍と考えてよい。光学的に不透明で散乱の多い生体等の物質中の光の透過は厳密にはLambert−Beerの法則には従わないが、透過光量は光路長に応じて急激に減少し、光路長が2倍になると散乱状悪によっては1/10以下、3倍となるとさらにそれの1/10以下となる程度となる。そのため、受光ファイバー9に集光される透過光は基本的には隣接する発光ファイバー8からの透過光の和と考えてよいこととなる。
【0042】
また、光ファイバーは1本の光ファイバーだけでなく複数の光ファイバーを束ねることにより受発光操作が容易になることは周知の事実で、上述の発光ファイバー8と受光ファイバー9とを測定側において束ねるとともに、測定側とは反対側の端部を発光ファイバー8同士及び受光ファイバ9ー同士で束ねて分岐させることで計測に都合の良いファイバーバンドルを作製できる。利用する光ファイバーは直径が数μmから数千μm(数mm)のものを用いることができ、特に直径70μmから1000μmの光ファイバーの利用が適している。利用する光ファイバーは細いファイバーを被覆して任意の線径としたものを用いるようにしても良い。
【0043】
具体的な生体組織としては図16に示すような人間の真皮イが上げられる。人間の真皮イは100μm程度の厚さの表皮ロと、多量の脂肪細胞からなる皮下組織ハとに挟まれた1mm程度の厚さの組織である。この真皮イ中の化学成分の分析には受発光ファイバーの中心間距離を250〜1000μmに調節した光ファイバーの束を用いるのが適している。例えば受発光距離(中心間距離)が500μmの光ファイバーバンドルを用いて分光分析を行うことで、真皮イ中のグルコース成分の分析が可能である。皮膚組織中を透過する光の経路は組織の物性や分析に用いる光の波長により異なるので、予め予備実験や数値シミュレーションを行い、測定に用いる受発光距離を決定することが好ましい。得られた吸光信号は演算部での数値計算によってグルコース濃度が算出される。
生体中のグルコース濃度の測定、特に生体組織中のグルコース濃度の定量を正確に行うことは、生体中でのグルコースの状態と外乱成分の影響を近赤外領域での吸収信号として把握したソフトウェア、再現性の高い正確な吸収スペクトルを測定可能にするハードウェア、医学的見地にたった安定な測定部位の選定等、多くの最適な要因を結びつけてはじめて可能となる。
【0044】
【実施例】
−実施例1−
本実施例は生体成分として牛血清中のグルコースの定量分析を行ったもので、15l0から1880nmまでのNH基、OH基、CH基由来の吸収領域を連続スペクトルとして測定し解析を行った。牛血清試料は前述のグルコース、アルブミン、水の3成分変動系の実験と同一で、牛血清80m1に対してグルコースを蒸留水に溶解させた水溶液を5ml、アルブミンを蒸留水に溶解させた水溶液を15ml添加し試料を作成した。試料は試料中のグルコース濃度が39mg/dl,93mg/dl,155mg/dl,280mg/dl,530mg/dl,1030mg/dlの6水準、アルブミン濃度が2.24g/dl,2.84g/dl,3.44g/dl,4.64g/dl,5.84g/dlの5水準の計6×5=30種類の組合せから、15種類の組合せをピックアップし試料を作成した。
【0045】
スペクトル測定は1mm厚のガラス製セルに試料を入れ、ニコレー社製マグナ850を用いて加算平均128回、レゾルーション16、検出器DTGS KBr、白色光源の条件で測定し、吸光度に変換したスペクトルデータは市販の多変量解析ソフトウェアを用いてグルコース濃度を目的変量、吸光スペクトルを説明変量としたPLS回帰分析を行った。前述のようにPLS回帰分析に用いた波長範囲は、15l0nmから1880nmである。
【0046】
実験でのグルコース定量の結果は主成分数6での推定で、検量線作成の相関係数0.996、標準誤差SEP27.8mg/dl、検量線検定の相関係数0.996、標準誤差SEP27.8mg/dlであった。
−実施例2−
本実施例における実験系は実施例1と同一で、牛血清試料中のグルコース、アルブミン、水の3成分を変動させたものである。多変量解析に用いたソフトウェアも実施例1と同じである。
【0047】
本実施例では1510,1540,1590,1655,1700nmの5波長の吸光度を説明変量、グルコース濃度を目的変量とした線形重回帰分析(MLR)を行った。
実験でのグルコース定量の結果は、検量線作成の相関係数0.980、標準誤差SEP62.5mg/dl、検量線検定の相関係数0.975、標準誤差SEP68.0mg/dlであった。
【0048】
15l0,1590,1700nmの波長の選択は図3に示す回帰係数のピーク値を示す波長として、1540,1655nmの波長は複数の主成分因子による回帰係数が交わる交点として選択した。
−実施例3−
本実施例における実験系は実施例1と同一で、牛血清試料中のグルコース、アルブミン、水の3成分を変動させたものである。多変量解析に用いたソフトウェアも実施例1と同じである。
【0049】
本実施例では15l0,1590,1700nmの3波長の吸光度を説明変量、グルコース濃度を目的変量とした線形重回帰分析(MLR)を行った。グルコース定量の結果は、検量線作成の相関係数0.978、標準誤差SEP65.8mg/dl、検量線検定の相関係数0.975、標準誤差SEP69.0mg/dlであった。
【0050】
15l0,1590,1700nmの波長の選択は図3に示す回帰係数のピーク値を示す波長として選択した。
−実施例4−
本実施例における実験系は実施例1と同一で、牛血清試料中のグルコース、アルブミン、水の3成分を変動させたものである。多変量解析に用いたソフトウェアも実施例1と同じである。
【0051】
本実施例では1525,1590,1690nmの3波長の吸光度を説明変量、グルコース濃度を目的変量とした線形重回帰分析(MLR)を行った。
実験でのグルコース定量の結果は、検量線作成の相関係数0.983、標準誤差SEP57.0mg/dl、検量線検定の相関係数0.981、標準誤差SEP60.1mg/dlであった。
【0052】
1590nmの波長の選択は図3に示す回帰係数のピーク値を示す波長、1525と1690nmの波長はそれぞれのピークよりOH基由来の吸収側の波長として選択した。このようにNH基、CH基由来の吸収ピークについてはOH基由来の吸収に少しずれた波長を選択する方が定量性が向上する場合もある。
−実施例5−
本実施例は生体成分として牛血清中のグルコースの定量分析を行ったもので、1480から1850mmまでのNH基、OH基、CH基由来の吸収領域を連続スペクトルとして測定し解析を行った。牛血清試料中のグルコース、アルブミン、コレステロール、中性脂肪、水の5成分を変動させグルコースの定量を行った。試料は試料中のグルコース濃度が35mg/dl,85mg/dl,140mg/dl,220mg/dl,270mg/dl,415mg/dl,5l0mg/dl,800mg/dl,985mg/dl,1500mg/dlの10水準、アルブミン濃度が2.2g/dl,2.3g/dl,2.4g/dl,2.5g/dl,2.8g/dl,3.4g/dl,4.5g/dl,5.4g/dlの8水準、コレステロール濃度が55mg/dl,63mg/dl,70mg/dl,75mg/dl,83mg/dl,100mg/dl,135mg/dl,205mg/dl,350mg/dlの9水準、中性脂肪濃度が10mg/dl,15mg/dl,20mg/dl,70mg/dl,133mg/dl,250mg/dl,480mg/dlの7水準となるように45種類の組合せをピックアップし試料を作成した。
【0053】
スペクトル測定は1mm厚のガラス製セルに試料を入れ、ニコレー社製マグナ850を用いて加算平均128回、レゾルーション16、検出器DTGS KBr、白色光源の条件で測定し、吸光度に変換したスペクトルデータは市販の多変量解析ソフトウェアを用いグルコース濃度を目的変量、吸光スペクトルを説明変量としたPLS回帰分析を行った。前述のようにPLS回帰分析に用いた波長範囲は、1480nmから1850nmである。
【0054】
実験でのグルコース定量の結果は主成分数7での推定で、検量線作成の相関係数0.992、標準誤差SEP48.7mg/dl、検量線検定の相関係数0.991、標準誤差SEP5l.1mg/dlであった。
−実施例6−
本実施例における実験系は実施例5と同一で、牛血清試料中のグルコース、アルブミン、コレステロール、中性脂肪、水の5成分を変動させたものである。多変量解析に用いたソフトウェアも実施例5と同じである。
【0055】
本実施例では1520,1540,1580,1645,1685,1715,1740nmの7波長の吸光度を説明変量、グルコース濃度を目的変量とした線形重回帰分析(MLR)を行った。
実験でのグルコース定量の結果は、検量線作成の相関係数0.989、標準誤差SEP55.6mg/dl、検量線検定の相関係数0.988、標準誤差SEP57.8mg/dlであった。
【0056】
1520,1580,1685,1715,1740nmの波長の選択は1250nmから1850nmの範囲をPLS回帰分析を行って得られた図6に示す回帰係数のピーク値を示す波長として、1540,1645nmの波長は複数の主成分因子による回帰係数が交わる交点として選択した。
−実施例7−
本実施例における実験系は実施例5と同一で、牛血清試料のグルコース、アルブミン、コレステロール、中性脂肪、水の5成分を変動させたものである。多変量解析に用いたソフトウェアも実施例5と同じである。
【0057】
本実施例では1520,1580,1685nmの3波長の吸光度を説明変量、グルコース濃度を目的変量とした線形重回帰分析(MLR)を行った。
実験でのグルコース定量の結果は、検量線作成の相関係数0.983、標準誤差SEP68.0mg/dl、検量線検定の相関係数0.983、標準誤差SEP69.2mg/dlであった。
【0058】
1520,1580,1685nmの波長の選択は実施例6により得られた図6に示す回帰係数のピーク値を示す波長として選択した。
−実施例8−
本実施例における実験系は実施例5と同一で、牛血清試料のグルコース、アルブミン、コレステロール、中性脂肪、水の5成分を変動させたものである。多変量解析に用いたソフトウェアも実施例5と同じである。
【0059】
本実施例では1525,1580,1680nmの3波長の吸光度を説明変量、グルコース濃度を目的変量とした線形重回帰分析(MLR)を行った。
実験でのグルコース定量の結果は、検量線作成の相関係数0.987、標準誤差SEP60.0mg/dl、検量線検定の相関係数0.987、標準誤差SEP61.0mg/dlであった。
【0060】
1590nmの波長の選択は実施例6により得られた図6に示す回帰係数のピーク値を示す波長、1525nmと1690mmの波長はそれぞれのピークよりOH基由来の吸収側の波長として選択した。
−実施例9−
本実施例における実験系は実施例5と同一で、牛血清試料のグルコース、アルブミン、コレステロール、中性脂肪、水の5成分を変動させたものである。多変量解析に用いたソフトウェアも実施例5と同じである。
【0061】
本実施例では15l0nmから1820nmまでのNH基、OH基、CH基由来の吸収領域を連続スペクトルとして測定したデータをsavitzky−Golayの微分手法を用いて2次微分処理を行い解析を行った。解析は2次微分値を説明変量、グルコース濃度を目的変量としたPLS回帰分析を行った。
実験でのグルコース定量の結果は主成分数6での推定で、検量線作成の相関係数0.986、標準誤差SEP63.5mg/dl、検量線検定の相関係数0.983、標準誤差SEP69.0mg/dlであった。
【0062】
−実施例10−
本実施例は生体成分として牛血清中のグルコースの定量分析を行ったもので、1000から1300nmまでのNH基、OH基、CH基由来の吸収領域を連続スペクトルとして測定し解析を行った。牛血清試料は前述のグルコース、アルブミン、水の3成分変動系の実験と同一で、牛血清80mlに対してグルコースを蒸留水に溶解させた水溶液を5ml、アルブミンを蒸留水に溶解させた水溶液を15ml添加して試料を作成した。試料は試料中のグルコース濃度が35mg/dl,136mg/dl,220mg/dl,412mg/dl,750mg/dlの5水準、アルブミン濃度が2.6g/dl,3.0g/dl,3.3g/dl,4.0g/dl,5.4g/dlの5水準の計5×5=25種類の組合せから、13種類の組合せをピックアップし試料を作成した。
【0063】
スペクトル測定は1mm厚のガラス製セルに試料を入れ、ニコレー社製マグナ850を用いて加算平均128回、レゾルーション16、検出器MCT/A、白色光源の条件で測定し、吸光度に変換したスペクトルデータは市販の多変量解析ソフトウェアを用いグルコース濃度を目的変量、吸光スペクトルを説明変量としたPLS回帰分析を行った。
【0064】
前述のようにPLS回帰分析に用いた波長範囲は、1000nmから1300nmである。
実験でのグルコース定量の結果は主成分数6での推定で、検量線作成の相関係数0.980、標準誤差SEP54.2mg/dl、検量線検定の相関係数0.962、標準誤差SEP74.8mg/dlであった。
【0065】
−実施例11−
本実施例における実験系は実施例5と同一で、牛血清試料中のグルコース、アルブミン、コレステロール、中性脂肪、水の5成分を変動させたものである。多変量解析に用いたソフトウェアも実施例5と同じである。
本実施例では測定した各波長の吸光度と1540nmにおける吸光度の差をとることで、スペクトルデータの前処理を行った。解析に用いた波長範囲は、1480nmから1880nmである。
【0066】
前処理を行った各波長データを説明変量、グルコース濃度を目的変量としPLS回帰分析を行った。
実験でのグルコース定量の結果は主成分数8での推定で、検量線作成の相関係数0.997、標準誤差SEP28.9mg/dl、検量線検定の相関係数0.996、標準誤差SEP31.9mg/dlであった。
【0067】
1540nmの波長を選択した理由は、図6に示すように複数の主成分因子による回帰係数が交わる交点として選択した。
−実施例12−
本実施例における実験系は実施例10と同一で、牛血清試料中のグルコース、アルブミン、水の3成分を変動させたものである。多変量解析に用いたソフトウェアも実施例5と同じである。
【0068】
本実施例では測定した各波長の吸光度と1060nmにおける吸光度の差をとることで、スペクトルデータの前処理を行った。解析に用いた波長範囲は、1000nmから1300nmである。
前処理を行った各波長データを説明変量、グルコース濃度を目的変量としPLS回帰分析を行った。
【0069】
実験でのグルコース定量の結果は主成分数6での推定で、検量線作成の相関係数0.978、標準誤差SEP56.8mg/dl、検量線検定の相関係数0.961、標準誤差SEP76.1mg/dlであった。
【0070】
−実施例13−
本実施例における生体中のグルコース濃度の定量装置は図7に示すように、近赤外光源である発光手段(発光ダイオード1)から照射した近赤外光を干渉フィルター2により任意の中心波長および半値幅に分光し、集光手段であるレンズ3によって光ファイバー4の端面に集光した光を被測定物に誘導し、被測定物の透過光を検出手段であるフォトダイオード5により検出することで吸収信号を測定し、演算手段によりグルコース濃度を算出した。
【0071】
干渉フィルターは円盤の同心円上に3つ配置されており、モータ6で回転させることにより干渉フィルターの特性に応じた中心波長および半値幅が得られる。検出した吸収信号は吸光度に変換され予め設定された検量線によりグルコース濃度が演算される。
発光ダイオードには中心波長が1600nmで半値幅160nmのInGaAsP系の素子を用いた。前記3種類の干渉フィルターには中心波長1530nmで半値幅10nm、中心波長1585nmで半値幅60nm、中心波長1680nmで半値幅10nmのものを用いた。前記中心波長1585nmで半値幅60nmの干渉フィルターの中心波長および半値幅の設定理由はグルコースのOH基に由来する信号をとらえるために実施例5で得られた回帰係数のOH基由来のピークを参考にした。実施例5の回帰係数の部分拡大を図8に示す。主成分7における回帰係数はおおよそ1580nmにおいて極大値をとり、この極大値の70%の値をとるのが1555nmおよび1615nmである。そこで中心波長を1555nmと1615nmの中点である1585mmで半値幅を60nmに設定した。この手法で中心波長および半値幅を設定した近赤外光を照射することで、1点の測定を行うだけで多数の点を計測するのと同等の計測ができることになる。
【0072】
光ファイバーの照射端7は被測定物に垂直にあてて使用する。照射端7では光ファイバーの発光側8と受光側9が交互に並んでおり、発光側ファイバー8より照射され、生体組織中を透過した近赤外光を受光側ファイバー9でうけ、検出器5に導いている。発光、受光に用いた光ファイバー径は500μmで、受光、発光ファイバーの中心間距離も500μmである。
【0073】
グルコース濃度を算出するための検量線は、本発明の利用者あるいは複数の人間を被験者として、他の標準手法より得られるグルコース濃度の真値と本発明による吸光度の関係を統計解析手法により解析することにより得られる。
本発明の利用者本人より検量線を作成する場合はグルコース負荷試験を用い、グルコース含有物を飲食後、一定時間間隔で採血と本発明による信号測定を行うようにしてもよいし、生活中において血糖値が安定する時間を選んで信号測定を行うようにしてもよい。
【0074】
採血した血液を分析する標準手法により得られたグルコース濃度と測定時にメモリされた信号を対比してデータ化し、演算手段に内蔵される解析手段により検量線が作成される。
本実施例のように数点での吸収信号より個人対応の検量線作成する場合には重回帰分析手法が適している。
【0075】
−実施例14−
本実施例における生体中のグルコース濃度の定量装置は実施例13と同じ図7に示す構成を有する。相異点は3種類の干渉フィルターの中心波長および半値幅で、中心波長1520nmで半値幅10nm、中心波長1580nmで半値幅40nm、中心波長1685nmで半値幅10nmのものを用いた。前記中心波長1580nmで半値幅40nmの干渉フィルターの中心波長および半値幅の設定理由は実施例5で得られた回帰係数のピーク波長を参考にした。実施例5の主成分7における回帰係数はおおよそ1520,1580,1685nmにおいて極大値をとり各ピークの幅の大ささで干渉フィルターの半値幅を設定した。回帰係数がピークをとる波長を選択することで、1520mmや1685nmのように比較的急峻なピークでも10nm程度の半値幅を用いれば安定した値を計測できる。また1680nmに関してはピークがブロードなので半値幅を40nmと広く設定した。
【0076】
この手法で中心波長および半値幅を設定した近赤外光を照射することで、1点の測定を行うだけで多数の点を計測するのと同等の計測ができることになる。
−実施例15−
本実施例における生体中のグルコース濃度の定量装置は図9に示すように、近赤外光源である3つの発光手段(半導体レーザー)1から照射した近赤外光を凹面鏡10によって光ファイバー4の端面に集光した光を被測定物に誘導し、被測定物の透過光を検出手段であるフォトダイオード5により検出することで吸収信号を測定し、演算手段によりグルコース濃度が算出される。検出した吸収信号は吸光度に変換され予め設定された検量線によりグルコース濃度が演算される。
【0077】
半導体レーザーには中心波長が1530nmで半値幅10nmのInGaAsP系の素子、中心波長1585nmで半値幅30nmの素子、中心波長1680nmで半値幅10nmの素子を用いた。
前記半導体レーザーの半値幅については素子自体の特性として前記半値幅のものを用いても良いし、発光ダイオードの照射面に干渉フィルターを設置し、任意の半値幅に調節してもよい。光ファイバーについては実施例13と同じである。
【0078】
−実施例16−
本実施例における生体中のグルコース濃度の定量装置は図10に示すように、ハロゲンランプである発光手段1、発光手段1からの光を被験者の身体のある部分(たとえば前腕の皮膚組織)Bに導くとともに拡散透過光をフラットフィールド型回折格子20に導く光ファイバー4、回折格子20で分光操作がなされた光をアレイ型フォトダイオード5で受光して吸収信号を測定し、演算手段CPUにより血糖値を算出する。演算ユニットCPUは吸収信号を吸光度に変換した後、予め設定した検量線を使用して被験者のグルコース濃度を計算する。図10中の21は反射ミラー、22は回折格子20と光ファイバー4との間に配置したスリット、23はA/D変換器である。
【0079】
ここで用いた光ファイバー4は、図11に示すように、各発光側ファイバー8のまわりを六角形パターンの各コーナーに位置する受光側ファイバー9で囲んでいるもので、これら6本の受光側ファイバー9と1本の発光側ファイバー8とからなる組において、X軸方向に隣接する組で1本の受光側ファイバー9が共有され、Y軸方向に隣接する組で2本の受光側ファイバー9が共有されるようにしてある。また、各組において、発光側ファイバー8と受光側ファイバー9との中心間距離Lは0.5mmに設定(各直径は200ミクロン)している。被験者の皮層の真皮層からのスペクトル情報を選択的に抽出する場合、中心間距離Lは0.1〜2mm、特に0.2〜1mmの範囲に設定することが好ましい。光ファイバー4の照射端7は被験者の前腕の皮層表面に対して垂直に押し当てられる。光ファイバーバンドル4を所定の圧力で皮膚表面に押し当てるため圧力ゲージや固定具を使用することが好ましい。1350nmから1850nmの波長範囲における前腕皮膚組織の吸収スペクトルの一例を図12に示す。
【0080】
上記装置を用いて被験者の血液中のグルコース濃度を定量した。年齢30才の健康な男性の被験者に対し、30分間の安静の後,デンプン部分加水分解物製剤トレーランG(清水製薬製)を服用させて75gに相当するブドウ糖を摂取させた。そして血糖値の測定を安静開始時から10分毎に採血式の簡易血糖計ノボアシスト(ノボノルディスクファーマ製)を用い指尖血液により行った。また、前腕のスペクトル測定を採血後5分毎に4回実施した。(前腕皮膚組織におけるグルコース濃度は血中グルコース濃度に対して個体差を有する時間遅れが存在するが、この被験者においては5分の時間遅れが適切であった。)採血による血糖値測定は安静開始後90分まで、前腕のスペクトル測定は最終の採血後5分まで実施した。検量線の作成は前記実測血糖値を目的変量とし、その5分後に測定したスペクトルを説明変量として、PLS回帰分析および重回帰分析を利用して行った。本実測での被験者の血糖値は89〜134mg/dlの範囲で変動している。
【0081】
PLS回帰分析により得た回帰係数を図13に示す。PLS回帰分析にあたっては、クロスバリデーション法を使用して第1倍音の高調波が観察される1350nm〜1850nmの波長範囲でグルコース濃度を目的変量、吸光度を説明変量として行った。この回帰係数の形状は、1600nm付近にピークを有する前実施例に示した血清系での実験で得られた回帰係数(図3,図6)と類似な形状を示し、グルコースの吸収から血糖値を定量していることがわかる。このPLS回帰分析の結果は,主成分数7の推定で、検量線作成の相関係数は0.993、標準誤差SEPは1.9mg/dl、検量線検定の相関係数は0.988、標準誤差SEPは2.6mg/dlであった。
【0082】
同一データにおける1550nm、1640nm、1690nmの3波長を用いてクロスバリデーション手法による重回帰分析を行って得られた検量線に実測データをあてはめた結果を図14に示す。この3波長の重回帰分析で得られた結果は、検量線作成の相関係数0.957、標準誤差SEP4.8mg/dl、検量線検定の相関係数0.949、標準誤差SEP53mg/dlであった。
【0083】
【発明の効果】
以上のように本発明の請求項1の発明は、分子の第1倍音が観察できる波長領域で且つ水の吸収の影響が比較的小さい1480nmから1880nmの波長領域内におけるグルコース分子のOH基由来の吸収を測定するための1550nmから1650nmの第1の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のNH基由来の吸収を測定するための1480nmから1550nmの第2の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のCH基由来の吸収を測定するための1650nmから1880nmの第3の波長域からの少なくとも一つの吸収信号の、少なくとも3つの吸収信号を基にグルコースの定量を行うものであり、請求項2の発明は分子の第2倍音が観察できる波長領域で且つ水の吸収の影響が比較的小さい1000nmから1300nmの波長領域内におけるグルコース分子のOH基由来の吸収を測定するための1050nmから1130nmの第1の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のNH基由来の吸収を測定するための1000nmから1050nmの第2の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のCH基由来の吸収を測定するための1130nmから1300nmの第3の波長域からの少なくとも一つの吸収信号の、少なくとも3つの吸収信号を基にグルコースの定量を行うものであり、グルコースによる特異吸収としてもっとも適切と思われるOH基由来の吸収を用いる上に、外乱としての生体成分を考慮したものとなっていることから、グルコース濃度の定量の精度を大きく向上させることができるものである。
【0084】
しかも上記3つの波長域を生体水分に由来する水分子の吸収の影響が比較的小さい範囲に設定しているために、生体水分の影響の排除が容易であり、また上記波長を用いるために、良好な定量結果を得ることができる。
なお、上記3つの波長域は、相互に隣接した波長域となっているために、広い波長範囲の光を発する光源を必要としなくなる上に、検出手段の検出感度を揃えることができることになるために、定量が容易となる。
【0086】
また、上記吸収信号の少なくとも一つは、複数試料の定量分析で測定した連続スペクトルを主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析して得た回帰係数がとる正または負のピーク周辺の波長とすると、あるいは複数の試料の分析で測定した連続スペクトルを主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析して算出された複数の主成分因子に対する回帰係数同士の交点付近の波長の吸収信号を用いると、好適な結果を得ることができる。
【0087】
第1の波長域が1600±40nmであり、第2の波長域が1530±20nmであり、第3の波長域が1685±20nmまたは1715±20nmまたは1740±20nmのいずれか一つであっても、良好な定量結果を得ることができる。
生体組織中あるいは体液中のグルコース濃度の測定に際しては、上記3つの波長域より選択した所定の半値幅を有する少なくとも3つの中心波長の光を基にグルコース濃度の定量を行うとよい。光源として入手の容易なものを用いることができる。
【0088】
この場合の半値幅は、複数試料の分析で測定した連続スペクトルを主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析し、前記分析手法により算出された各波長に対する回帰係数がとるピーク値の70%程度以下の値を示す波長幅を用いると、さらに良好な結果を得ることができ、さらに少なくとも1波長の中心波長を1560nmから1640nmの範囲内に設定するとともに半値幅を60nm以下とするとよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1倍音領域における生体物質の吸収スペクトル図である。
【図2】第2倍音領域における生体物質の吸収スペクトル図である。
【図3】第1倍音領域でグルコース、アルブミン、水の3成分を変動させた実験系での回帰係数の説明図である。
【図4】第1倍音領域でグルコース、アルブミン、水の3成分を変動させた実験系での2次微分の回帰係数の説明図である。
【図5】第2倍音領域でグルコース、アルブミン、水の3成分を変動させた実験系での回帰係数の説明図である。
【図6】第1倍音領域でグルコース、アルブミン、コレステロール、中性脂肪、水の5成分を変動させた実験系での回帰係数の説明図である。
【図7】本発明に係る装置の一例の概略図である。
【図8】図6の回帰係数の部分拡大図である。
【図9】本発明に係る装置の他例の概略図である。
【図10】本発明に係る装置の更に他例の概略図である。
【図11】同上の光ファイバーの断面図である。
【図12】皮膚組織の吸収スペクトルの一例の説明図である。
【図13】PLS回帰分析で得られた回帰係数の説明図である。
【図14】重回帰分析の検量線と実測データとの説明図である。
【図15】光ファイバーから生体組織へ照射された近赤外光の光路の槻念図である。
【図16】人間の皮膚組織の概念図である。
Claims (8)
- 近赤外光源と、近赤外光を検出する検出手段と、前記近赤外光源から発する近赤外光を生体組織あるいは体液に導入し、前記生体組織あるいは体液を透過あるいは拡散反射した近赤外光を前記検出手段に誘導する誘導手段と、前記検出手段で得られる信号を基にグルコース濃度の回帰分析を行う演算手段とからなり、上記演算手段は、分子の第1倍音が観察できる波長領域で且つ水の吸収の影響が比較的小さい1480nmから1880nmの波長領域内におけるグルコース分子のOH基由来の吸収を測定するための1550nmから1650nmの第1の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のNH基由来の吸収を測定するための1480nmから1550nmの第2の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のCH基由来の吸収を測定するための1650nmから1880nmの第3の波長域からの少なくとも一つの吸収信号の、少なくとも3つの吸収信号を基にグルコースの定量を行うものであることを特徴とするグルコース濃度の定量装置。
- 近赤外光源と、近赤外光を検出する検出手段と、前記近赤外光源から発する近赤外光を生体組織あるいは体液に導入し、前記生体組織あるいは体液を透過あるいは拡散反射した近赤外光を前記検出手段に誘導する誘導手段と、前記検出手段で得られる信号を基にグルコース濃度の回帰分析を行う演算手段とからなり、上記演算手段は、分子の第2倍音が観察できる波長領域で且つ水の吸収の影響が比較的小さい1000nmから1300nmの波長領域内におけるグルコース分子のOH基由来の吸収を測定するための1050nmから1130nmの第1の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のNH基由来の吸収を測定するための1000nmから1050nmの第2の波長域からの少なくとも一つの吸収信号と、生体成分のCH基由来の吸収を測定するための1130nmから1300nmの第3の波長域からの少なくとも一つの吸収信号の、少なくとも3つの吸収信号を基にグルコースの定量を行うものであることを特徴とするグルコース濃度の定量装置。
- 上記吸収信号の少なくとも一つは、複数試料の定量分析で測定した連続スペクトルを主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析して得た回帰係数がとる正または負のピーク周辺の波長の吸収信号であることを特徴とする請求項1または2記載のグルコース濃度の定量装置。
- 上記吸収信号の少なくとも一つは、複数の試料の分析で測定した連続スペクトルを主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析して算出された複数の主成分因子に対する回帰係数同士の交点付近の波長の吸収信号であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のグルコース濃度の定量装置。
- 第1の波長域が1600±40nmであり、第2の波長域が1530±20nmであり、第3の波長域が1685±20nmまたは1715±20nmまたは1740±20nmのいずれか一つであることを特徴とする請求項1記載のグルコース濃度の定量装置。
- 生体組織中あるいは体液中のグルコース濃度の測定に際して、上記3つの波長域より選択した所定の半値幅を有する少なくとも3つの中心波長の光を基にグルコース濃度の定量を行うものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のグルコース濃度の定量装置。
- 複数試料の分析で測定した連続スペクトルを主成分回帰分析あるいはPLS回帰分析し、前記分析手法により算出された各波長に対する回帰係数がとるピーク値の70%程度以下の値を示す波長幅を半値幅としていることを特徴とする請求項6記載のグルコース濃度の定量装置。
- 少なくとも1波長の中心波長を1560nmから1640nmの範囲内に設定しているとともに半値幅を60nm以下としていることを特徴とする請求項6記載のグルコース濃度の定量装置。
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