JP2003149145A - 血糖値の無侵襲測定装置 - Google Patents
血糖値の無侵襲測定装置Info
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Abstract
確実に測定することができるコンパクトで安価な血糖値
の測定装置を提供する。 【解決手段】 波長可変半導体レーザ11から出射され
る周期的に波長変調されたレーザ光を、アッテネータ1
2で周期的に強度変調する。このレーザ光をビームスプ
リッタ14で光路13a、13bに分離し、光路13a
から血糖値を測定すべき検査部位17に照射する。検査
部位17からの透過光又は反射光の強度及び光路13b
のレーザ光の強度を第1検知器21及び第2検知器22
で検出し、対数比率増幅器25により両者の比率を検出
する。この比率の波長変調の波長の変化に対する変化率
をロックイン増幅器26で検出し、この変化率から検査
部位におけるグルコースの吸収スペクトルの微分スペク
トル信号を取り出す。演算処理装置27は、微分スペク
トル信号から測定部位の血糖値を検出する。
Description
を用いて血糖値を無侵襲状態で測定する血糖値の無侵襲
測定装置に関し、より詳しくは、光の波長変調と強度変
調とを組み合わせて糖尿病の疑いのある患者の血流もし
くは生体組織におけるグルコースを無侵襲で測定するた
めの血糖値の無侵襲測定装置に関するものである。
生体外におけるグルコース濃度を測定するための方法や
装置としては、従来より、種々のものが提案されてい
る。
光を照射光源として用い、体液におけるグルコースの赤
外線吸収を測定する方法とその装置が開示されており、
これによれば、異なった波長λ1とλ2のもとで、透過
と反射、すなわち、後方散乱効果による漿液ないし尿の
吸収スペクトルを測定している。この際、波長λ2は、
測定すべき物質(たとえばグルコース)の特有な吸収波
長とし、また、波長λ 1は、測定すべき物質の濃度とは
およそ無関係に吸収される波長としている。この波長λ
1とλ2とにおける吸収値の比を求めることにより、測
定データが得られるのであるが、測定すべき物質の吸収
帯域は、波長λ1では940ないし950cm−1(1
0.64ないし10.54μm)、波長λ2では109
0ないし1095cm−1(9.17ないし9.13μ
m)である。
生物学的物質、あるいは、減衰全反射(ATR)プリズ
ムを用いて皮膚を介して生物学的物質を検出する無侵襲
的検査方法が開示されている。この方法では、分析すべ
きサンプル(たとえば口唇か、または舌)にウエーブガ
イド(ATRプリズム)を直接あてがい、赤外線を導光
している。ウエーブガイドの屈折率はサンプルの媒体
(光学的な表面薄層)の屈折率よりも大きく、赤外線は
全反射路に沿ってその中を通過し、それにより赤外線が
上記表面薄層と相互作用するようになっているが、この
相互作用は、反射部位における漏れ減衰光成分が関与し
ている(非特許文献1参照)グルコースが吸収しやすい
所定の赤外線波長を使うと、ATRプリズム中を伝播す
る光線が、光学的表面薄層におけるグルコース濃度に応
じて減衰することから、この減衰量を確認するととも
に、これを以てグルコース検出データに処理している。
襲式検出装置であって、患者の眼中におけるグルコース
を検出するようになっている。詳述すれば、この特許文
献3に開示されている装置は、角膜の一方側から赤外線
を照射する光源と、反対側で透過光量を検出する検出子
とを含む、コンタクトレンズ形のセンサ装置で構成され
ている。そこで、測定部位に赤外線を照射すると、照射
赤外線は角膜と眼房水とを透過して検出子に達する。検
出子は透過光量を電気信号に変換した後、遠隔受信機に
供給するが、受信機の次段の読取り装置が、患者の眼球
におけるグルコースの濃度を、照射赤外線が眼球を通過
した時の特定の変化の関数として出力する。
おける物質、すなわち、CO2、酸素、ないしグルコー
スを調べる検出装置が開示されている。この検出装置
は、患者の体中、すなわち皮下組織から後方散乱ないし
反射してきた減衰光を検出する受光手段とで構成されて
いることを特徴とするもので、照射光として、紫外線ま
たは赤外線を用いている。
法を用いて、血液の流れや、酸化ヘモグロビン、あるい
は還元オキシヘモグロビンなどの生体活性パラメータや
成分を測定、もしくはモニタするものとしては、以下の
ようなものがある。
体組織における酸素やその他の物質を測定する方法と装
置が開示されている。この特許文献5にかかる装置は、
照射光源と患者の体に配置する検出器とからなり、検出
器を患者の耳に配置した場合には、耳を透過する光の強
度を、また、前額部にあてがった場合では、血液と皮下
組織を通過した後にそこから反射してくる光の強度を測
定している。照射光としては可視光線の赤色部の波長か
ら近赤外線の波長の範囲にあるもの、すなわち、660
nm,715nm,805nmのものが使われている。
この方法において同時に用いる波長の数は、検査部位に
存在する各物質(求める物質も含めて)に対して、それ
ぞれ特有な少なくとも1つの波長の合計に1を加えた数
に等しい。種々の波長における吸収作用から検出して得
た信号を適当に電子回路で処理することにより、測定す
べき物質の濃度にかかわる定量データが、検出器の変
動、照射強度や方向、角度などのズレ、検査部位におけ
る血液流量の変動などの測定条件の変動に影響されるこ
となく得られるようになっている。
ビンやサイトクロームの酸化還元作用の変化もしくは、
脳、心臓、腎臓などの器官における血液流量の変動な
ど、生体器官の代謝機能を生体内で、しかも、非破壊状
態で測定し、かつ、モニタする分光光度装置が開示され
ている。この分光光度装置を用いて測定するに当たって
は、700ないし1300nmの波長範囲にある照射光
を用いているが、これは、皮下数ミリの深さまで照射光
が生体組織に浸透するのに有効なものである。
反射率測定を行う装置であって、生体に対してあてがっ
たウエーブガイド(光ファイバー束)に光を導光する光
源で構成されたものが図示されている。ウエーブガイド
を生体に対してあてがうに当たっては皮膚表面に対して
斜め方向から照射光が照射されるとともに、方向性のあ
る照射光が皮膚を介して体内に浸透し、その後、光源よ
りいくらか距離のある分析すべき組織から反射もしくは
後方散乱されるようにする。その時、一部のエネルギは
吸収されて、皮膚上におかれているとともに、光源とは
離されている第1検出器に入射する。また、光源と同時
に第2検出器が設けられており、この第2検出器は後方
照射基準信号を検出するようになっていて、第1検出器
からの分析信号と第2検出器からの基準信号とは演算回
路に出力され、この演算回路の出力をもって求めている
分析情報に関するデータを得るようになっている。
ット
細書
リサーチズ(Hormone& Metabolic
Res.)」の補追版Ser(1979)30ないし3
5頁
な近赤外分光法を用いたグルコース濃度等の測定におい
て、近赤外分光器により得られるスペクトルデータの質
は、近赤外分光器を構成するハードウエアの性能によっ
てほぼ決まってしまう。現在、最高の性能を有する近赤
外分光器の信号対雑音S/N比は、105ないし106
の程度である。これに対し、単純にスペクトルの絶対強
度そのものを測定する従来の手法では、たとえば血液中
の生理学的なグルコース濃度である100mg/dLを
分光学的に実用精度で測定するためには、スペクトル信
号のS/N比は105ないし106の程度必要であり、
分光器で測定できる限界に近い。
グルコース等の濃度測定法は、一般に、試薬を用いてこ
れらのものの濃度を分析する化学分析法と比較すると、
測定感度、精度、確度並びに安定性が劣るばかりでな
く、高いS/N比を有する性能の高い近赤外分光器は構
成が複雑で高価であるといった問題があった。
単純にスペクトルの絶対強度そのものを測定するのでは
なく、もし、生理学的なグルコース濃度である100m
g/dLからのグルコース濃度の変化量を測定する参照
法が可能で、その変化量を2ないし3桁の精度で測定で
きれば、たとえば糖尿病の疑いのある患者の血糖値が標
準値からどれだけ変化しているかを知ることができ、患
者の血糖値の管理等に有利に適用することができること
になる。
手段を備えた簡単な構成により、糖尿病の疑いのある患
者の血糖値の標準値からの変化量を、患者の個人差等に
関係なく無侵襲で簡単かつ確実に測定することができる
コンパクトで安価な血糖値の測定装置を提供することで
ある。
するとともに複数の強度に強度変調し、この波長変調お
よび強度変調された光を血糖値を測定すべき検査部位に
照射し、上記強度変調を受けた光の各々について、上記
検査部位からの透過光もしくは反射光の強度および上記
検査部位への入射光の強度を検出して両者の比率を検出
し、この比率の上記波長変調による波長の変化に対する
変化率を検出してこの変化率に基づいて上記検査部位に
おけるグルコースの吸収スペクトルの微分スペクトルを
それぞれ取り出し、これら微分スペクトルに基づいて測
定部位の血糖値を検出することを特徴とする。
変調幅Δλで波長変調されるとともに強度変調された光
が検査部位に照射され、検査部位への入射光の強度変調
により、皮膚への浸透深さが変わり、血液成分を含む体
液の存在する部位のグルコース濃度に関係する情報が取
り出されるとともに、血液成分を含む体液の存在する部
位のグルコースの吸収スペクトルの微分スペクトルによ
る定量が行われるので、患者の個人差に関係なく、グル
コース濃度を簡単かつ確実に検出することができる。
波長変調の繰り返しに応じて積算平均される。このよう
に、微分スペクトルを積算平均すれば、雑音成分はこの
積算回数の平方根に比例して低減できるので、信号対雑
音(S/N)比が向上する。
る波長変調光発生手段と、この波長変調光発生手段から
の波長変調された光の強度を複数の強度に強度変調する
強度変調手段と、この強度変調手段から入射する波長変
調および強度変調された光の光路を分離するビームスプ
リッタ手段と、このビームスプリッタ手段で分離された
一つの光路を通過し血糖値を検査すべき検査部位に入射
して透過もしくは反射した光を集める集光手段と、この
集光手段で集めた光の強度を検出する第1光検出手段
と、上記ビームスプリッタで分離されたいま一つの光路
を通過する光の強度を検出する第2光検出手段と、上記
第1光検出手段の出力と第2光検出手段の出力との比率
を検出する比率検出手段と、この比率検出手段から上記
比率に対応する比率信号が入力し、この比率信号の上記
波長変調による波長変化に対する変化率を検出して上記
検査部位におけるグルコースの吸収スペクトルの微分ス
ペクトル信号を検出する微分スペクトル信号検出手段
と、上記強度変調を受けた複数の強度の光の各々につい
て、上記微分スペクトル信号検出手段により検出された
上記微分スペクトル信号に基づいて測定部位の血糖値を
演算する演算手段とを備えたことを特徴とする。
光を波長変調するとともに、波長変調された光を強度変
調して検査部位に入射し、グルコースの吸光度スペクト
ルの微分スペクトルを検出しているので、高品質の微分
データがコンピュータ処理を必要とせず、リアルタイム
で得ることができ、また、広い波長域走査する一般の分
光器に比べて繰り返し走査速度が速く、短時間測光によ
り、光学系のドリフトの影響のないグルコース濃度の測
定データを得ることができる。
波長可変半導体レーザである。これによれば、波長可変
半導体レーザとして、光ファイバ通信用途で開発されて
いる半導体レーザを採用できることから、波長可変半導
体レーザの特徴を効果的かつ最大限に引き出すことがで
き、測定光の波長変調のための手段の構成がきわめて簡
単になり、構成が簡単でコンパクトな血糖値の無侵襲測
定装置を得ることができる。
に、添付の図面にしたがってこれを説明する。以下で
は、本発明の理解に必要な微分分光法および微分スペク
トルを得るための波長変調法について、次の[1]およ
び[2]の各項においてそれぞれ説明する。また、一次
微分スペクトル、グルコース定量のための検証および最
適波長の選択および皮膚の拡散反射スペクトルと強度変
調分光法について、[3],[4]および[5]の各項
においてそれぞれ説明する。さらに、血糖値の無侵襲測
定装置の構成については、[6]において説明する。
られている。この波長変調法については、ティー・シー
・オツハーバ(T.C.O´Haver)により、クリ
ニカル・ケミストリ(Clinical Chemis
try)の第25巻第9号,1979年の第1548頁
ないし第1553頁に「ポテンシャル・クリニカル・ア
プリケーションズ・オブ・デリバティブ・アンド・ウエ
ーブレングス・モジュレーション・スペクトロメトリ
(Potential Clinical Appli
cations of Derivative and
Wavelength−Modulation Sp
ectrometry)」に紹介されている。波長変調
分光法の概念と微分分光法の概念とは密接に関係してい
る。それらは、波長に対する強度または吸光度の変化の
測定に基づいている。
分光法とは、強度または吸光度スペクトルを、波長に対
して一次微分または高次微分して波長に対してプロット
することである。微分分光法の目的とするところは、
(a)ベースラインのシフトの補正、矯正、(b)微小
なスペクトルの特徴の検出能力の向上、にある。
二次微分スペクトルを示す。原スペクトルのピーク最大
点Pmaxは、一次微分ではゼロクロス点P01に、ま
た、二次微分では中央ピーク点Pcに対応する。一次微
分スペクトルのピーク最大点Pdmax、最小点P
dminは、原スペクトルの最大勾配点Ps1,Ps2
にそれぞれ対応し、また、二次微分のゼロクロス点P
02,P03にそれぞれ対応する。
々の手法がある。まず第1に、スペクトルデータがデジ
タル値でコンピュータ処理が可能であれば、微分スペク
トルは、ソフトウエア的手法により数値微分で計算でき
る。
スペクトルの時間微分をとることにより、ハードウエア
的な手法を用いてリアルタイムで収集できる。これは、
波長走査レートdλ/dtが一定であれば、次の第1式
からも明らかなように、波長に関する強度Iの微分dI
/dλは、時間tに関する強度Iの微分dI/dtに比
例することに基づいている。すなわち、電気微分器を用
いることにより、次の第1式 dI/dλ=dI/dt/dλ/dt … (1) の演算を行なうことができる。
る波長変調法により得ることができる。波長変調法は、
図2に示すように特定の波長λiを中心として狭い変調
幅Δλで周期的に変調した光をサンプルに照射し、その
透過光または反射光をディテクタで検出する。その出力
信号からリップルまたは交流成分を分離、または電気的
に測定する。変調幅Δλがそのスペクトルのバンド幅よ
りも十分小さいときは、変調周波数点での光電信号の交
流成分は、変調波長幅内において、スペクトルの勾配に
比例した振幅をもつ交流信号、すなわち微分スペクトル
Dを生成する。
ノクロメータのスリット、ミラー、回折格子、プリズム
を振動させる、(b)モノクロメータ内の光ビームに振
動ミラーまたは回転屈折ミラーを挿入する、(c)波長
連続可変型フィルタを使用する、(d)干渉フィルタを
振動またはティルティングさせる、(e)ファブリ−ペ
ロ(Fabry−Perot)干渉計を振動させる、等
の手法がある。また、波長変調の手法として、(f)連
続波長可変型半導体レーザを使用する、ことも考えられ
る。
設け回折格子の角度を制御して発振波長を変える方法
は、従来から知られている。この方法では、狭スペクト
ル線幅と同時に波長変化が可能である。連続変化でなく
縦モード間のジャンプが起こってもよい場合は装置化は
単純である。
さらに狭帯域幅で同調波長に同期するシングルモードフ
ィルタを加えれば任意に設定した全ての波長でシングル
モード発振する。これらは、外部共振型チューナブル半
導体レーザと呼ばれる。
7年6月15日号(No.423)第149頁ないし第
161頁には、コーヒレント光通信用途に開発されてい
る波長可変半導体レーザが記載されている。この文献に
は、たとえば、分布型ブラッグ反射型単一モードレーザ
を基礎として3電極構造で波長を制御する半導体レーザ
が記載されており、同一の縦モードを保って滑らかに連
続的に波長を変える波長範囲は、3.1nmのものが実
現されていることが記載され、また、縦モードが途中で
変わってもよければ、波長範囲は約6nmである。
調法 波長変調法において、変調幅Δλ(=λ2−λ1)がス
ペクトルのバンド幅よりも十分小さいときには、変調周
波数点での光電信号の交流成分ΔI(=I2−I1)
は、変調波長幅内において、スペクトルの勾配に比例し
た振幅をもつ交流信号ΔI/Δλ、すなわち次の第2式
で表される微分スペクトルDを生成する。交流信号の振
幅のみを取り出すことは適当な電気系でリアルタイムに
できる。 D=ΔI/Δλ=I2−I1/λ2−λ1 … (2)
直流成分は交流成分に比べて大きい。このように意味を
もたない大きい値を有する直流成分をカットできること
は、後述する血糖値の測定装置において使用されるA/
D変換器のダイナミックレンジを有効かつ効率的に利用
できるメリットがある。また、その後の数理処理におい
ても有利である。
前後に走査することから、広い波長域走査する一般の分
光器に比べて、高速に繰り返し走査できる。したがっ
て、積算平均操作が容易である。そして、雑音成分は、
積算回数の平方根に比例して低減できるので、積算回数
を大きく取ることにより、信号対雑音(S/N)比を向
上できる。また、短時間測光は、分光器の光学系のドリ
フトを抑制する効果が大きい。
されるが、波長変調法を使用すれば、高品質の微分スペ
クトルがコンピュータ処理を必要とせず、リアルタイム
で得られる利点がある。このことから、波長変調法は、
特性の十分わかったサンプルのルーチン的な分析、たと
えば、品質管理や臨床分析への応用に適している。
数値微分演算する場合には、強度Iiそのものの数値精
度と品質が問題になる。微分操作は高周波ノイズを高く
するので、質の悪いスペクトルを微分演算するとS/N
比が著しく低下する。
スペクトルの強度Iiそのものの数値精度と有効桁数が
大きくなれば、目的とする成分の微分スペクトルの有意
味の変化は得られない。すなわち、S/N比はかなり大
きくなければならない。
定量のための検証 微分スペクトルは、スペクトルデータがデジタル値であ
れば、数値微分で計算できる。そこで、フーリエ変換分
光器で得た吸光度スペクトルを数値微分して一次微分ス
ペクトルを求め、波長変調法によるグルコース濃度の定
量性を検証した。サンプルとしては、水、グルコース水
溶液1000mg/dL,3000mg/dL,500
0mg/dLを使用した。
ル同士の比較では、サンプル間の変化を詳細に観察する
ことは困難であるため、基準の水に対する変化量、すな
わち差吸光度スペクトルと差一次微分スペクトルを計算
し、その差を視覚的に観察できるようにした。微分操作
は、長波長側から短波長側に向かって、行った。
1.93μmの中間に存在するグルコース吸収帯につい
て考察する。図3に吸光度スペクトルを、また、図4に
その一次微分スペクトルをそれぞれ示す。さらに、図5
に差吸収スペクトルを示す。この図5の差吸光度スペク
トルにおいて、1.55ないし1.85μmにグルコー
スの吸収が観測される。また、1.35μmないし1.
45μmにはS字特性が観測される。これは、水の吸収
ピーク1.43μmのシフトに起因するもので、水和現
象に由来する。波長変調の中心波長としては、干渉を受
けないゼロクロス点またはその近傍の波長域1.45な
いし1.58μm、干渉の影響が少なくかつ吸収帯の勾
配の急な波長域の1.6ないし1.67μmと1.75
ないし1.85μmから中心周波数を選択することがで
きる。
るように、一次微分スペクトルからグルコース濃度が定
量できることは明らかであり、波長1.555μmにお
ける一次微分吸光度とグルコース濃度との関係を図10
に示す。
ァイバー通信用途で開発されている波長可変半導体レー
ザを流用できることから装置化しやすい。波長可変半導
体レーザを波長変調法に適用すれば、波長可変半導体レ
ーザの特徴を効果的かつ最大限に引き出せる。
2.1μm,2.27μm,2.33μmに、グルコー
スの吸収帯があり、この吸収ピーク前後の勾配に注目す
る。図7に示す差微分スペクトルからわかるように、 2.06ないし2.1μm,2.1ないし2.24μ
m,2.24ないし2.27μm,2.27ないし2.
3μm,2.3ないし2.32μm,2.32ないし
2.38μmから選択することができる。
と1.15μmの間では、1.06μmにグルコースの
ブロードな吸収バンドがある。図8に示す差微分スペク
トルからわかるように、1.07ないし1.125μ
m,1.00ないし1.05μmから選択することがで
きる。
と1.43μmの間では、1.25μmにグルコースの
ブロードな吸収バンドがある。図9に示す差微分スペク
トルから分かるように、1.28ないし1.36μm,
1.18ないし1.23μmから選択することができ
る。
に、角質層1,表皮2,および真皮3からなり、深さ方
向に異方な構造を有している。そして血液成分を含む体
液の存在する部位(capillary bed)4の
グルコース濃度を、皮膚の上から拡散反射法を用いて経
皮測定するためには、使用する波長は重要であり、測定
法と不可分のものである。
波長領域と可視光に近い単波長領域を相対的に比較する
と次の通りである。長波長領域では、光は生体組織に存
在する水の吸収を受けて生体(皮膚)の深部まで浸透し
にくく、光散乱の影響が少ないので散乱減衰しにくい。
また、グルコースの吸収帯の吸光係数が大きいのでパス
長はより短くてもよい。すなわち、光浸透深さは相対的
に小さくてもよい。
吸収を受けにくく、皮膚深部まで到達しやすい。しかし
光は散乱の影響を受けやすく散乱減衰しやすい。また、
グルコースの吸収帯の吸収係数は小さいので、測定感度
を上げるためにはパス長が長くなければならない。
る多くの因子がある。最適なグルコースの測定波長は、
既に説明した選択波長帯の中から、また、グルコースの
特性吸収係数、光の皮膚への浸透深さから、さらには、
実用的な観点から、コーヒレント光ファイバー通信用途
の波長可変半導体レーザが流用できることから、1.4
5ないし1.58μmから選ぶのが好ましい。
調分光法 既に述べたように、波長変調法を使用すれば、高品質の
微分データがコンピュータ処理を必要とせずリアルタイ
ムに得られる。微分データは、いわば1点のデータであ
り、実用的な観点からは、データが正規化されているこ
と、各種の変動要因、たとえば、サンプル温度の変化や
成分の干渉などが自動的に補償されていることが重要で
ある。本発明では、波長変調法に光強度変調法を組み合
わせ、これらの変動要因を自動的に補償する。
吸収と散乱を繰り返して、再び皮膚表面に出てきた微弱
な拡散反射光を積分球で集光し、ディテクタで検出した
信号をもとにしている。皮膚の深さ方向の異方な構造に
関連して、図11に示すように、(a)入射光5の皮膚
表面での正反射光7のスペクトル成分、(b)入射光5
の皮膚表面近傍のグルコースを含まない角質層1、表面
組織からの拡散反射光8のスペクトル成分、(c)入射
光5の血液成分を含む体液の存在する部位4からの拡散
反射光9のスペクトル成分、(d)入射光5のさらに深
部組織への透過光6のスペクトル成分、などが混在した
ものである。そして、一般的にいえば、皮膚表面に近い
部位のスペクトル成分の寄与が大きく、血液成分を含む
体液の存在する部位4のスペクトル成分の寄与は小さ
い。これが通常の拡散反射スペクトルである。
ルコース濃度に注目すると、上記(a)および(b)の
スペクトル成分を取り除いたスペクトルに対して定量解
析することができれば、グルコース濃度をより精度よく
測定できることは明らかである。これを実現する手法の
一つとして、本願の発明者等は、日本特許出願特願昭6
2−290821号および米国特許第4,883,95
3号において、つぎのような光強度変調法を提案した。
ことにより確保する。すなわち、図12に示すように、
入射光強度がより強ければ、弱い場合にくらべて、より
深部の情報が含まれている。検出限界の浸透深さがb1
の適当に弱い入射光強度I0 1での浸透深さb1/2か
らの拡散反射光強度Is1を測光し、その比率を次の第
3式により演算し正規化する。 A1=log(I01/Is) … (3) この第3式は、皮膚表面近傍のみのスペクトル情報をも
つ。
入射光強度I02での浸透深さb2 /2からの拡散反射
強度Is2を測光し、その比率を次の第4式により演算
し正規化する。 A2=log(I02/Is2) … (4) この第4式は、より深部のスペクトル情報を含んでい
る。そして両者の差ΔAを計算する。
グルコースを含まない皮膚表面近傍組織のスペクトルが
基準にとられているとみることができる。このことは、
見方をかえれば、人種、性別、年令など個人差の影響を
受けないことを意味する。
とえば減衰比の異なるアッテネータを搭載した回転ディ
スクで切り替えることにより行うことができる。入射光
強度の変調の1サイクルごとに強度の比率演算で正規化
するとともに、吸光度の差演算を行う。そして、多サイ
クルにわたって積算平均化処理を行えばS/N比を向上
させることができる。
て、この差演算値と化学的な分析手法で得られた参照濃
度値を用いて回帰式を作成する。この回帰式を用いて未
知サンプルのグルコースを定量する。なお、以上ではス
ペクトル強度Iを用いて、入射光強度変調法のアルゴリ
ズムを説明したが、回帰手法を用いると、微分強度につ
いても定量性があることが知られている。そこで、本実
施例では、波長変調法で求めた一次微分値D=ΔA/Δ
λを用いるために、第3式、第4式、第5式の吸光度値
AをΔA/Δλに置き換え、後述する第8式,第9式お
よび第10式の演算を行う。
血糖値の無侵襲測定装置は、波長可変半導体レーザ1
1、この波長可変半導体レーザ11からの波長変調され
たレーザ光の強度を周期的に変化させるアッテネータ1
2、このアッテネータ12から入射する波長変調および
強度変調されたレーザ光の光路13を光路13aと13
bに分離するビームスプリッタ14、およびこのビーム
スプリッタ14で分離された一つの光路13aを通過し
血糖値を検査すべき皮膚16の検査部位17に入射して
透過もしくは反射したレーザ光を集める積分球18を備
える。
積分球18で集光されたレーザ光の強度を検出する第1
検知器21、上記ビームスプリッタ14を透過したレー
ザ光の強度を検出する第2検知器22、上記第1検知器
21の出力を増幅する増幅器23、上記第2検知器22
の出力を増幅する増幅器24、これら両増幅器23,2
4の出力の比率の対数値を出力する対数比率増幅器2
5、この対数比率増幅器25の出力の波長変化に対する
変化率から上記検査部位17におけるグルコースの吸収
スペクトルの微分スペクトル信号を検出するロックイン
増幅器26、およびこのロックイン増幅器26により検
出された上記微分スペクトル信号をA/D変換し、デジ
タル値に変換された上記微分スペクトル信号を処理して
上記測定部位の血糖値を演算する、マイクロプロセッサ
等により構成される演算処理装置27を備える。
長λi、波長変調幅Δλに調整および制御された波長変
調されたレーザ光は、アッテネータ12にて強度変調を
受けた後、ビームスプリッタ14で2つのビームに分離
される。上記ビームスプリッタ14を透過するレーザ光
L2は入射光強度をモニタするためのもので、第2検知
器22で電気信号I0に変換される。他方のレーザ光L
1は、血糖値を検査する上記検査部位17に入射する。
この検査部位17からの拡散反射光は、積分球18で集
光された後、第1検知器21で電気信号ISに変換され
る。
3および増幅器24にてそれぞれ増幅された後、対数比
率増幅器25に入力する。この対数比率増幅器25は、
次の第6式であらわされる正規化された吸光度信号 A=log(I0/IS) … (6) を出力する。なお、上記吸光度信号Aは、上記電気信号
ISおよびI0が、第1検知器21および第2検知器2
2により、同じレーザ光がビームスプリッタ14で分離
されたレーザ光を同時測光した値であるので測定の確度
が高く、かつ、ドリフトの影響を受けない。
7式に示すような交流信号の振幅のみを取り出す。 D=ΔA/Δλ … (7) 交流成分は、波長変調の中心波長点における、サンプル
のスペクトルの勾配に比例した信号である。
皮膚16の検査部位17への光浸透深さを変えるために
入射光強度を変調させるもので、減衰比の異なる2組の
アッテネータユニット12a,12bまたはそれ以上の
アッテネータユニットを回転ディスク12cで切り替え
る構成を有する。この入射光強度変調により、血液成分
を含む体液の存在する部位のグルコース濃度をより精度
よく測定することができる。
2による入射光強度I01に対して、次の第8式であら
わされる交流信号、 D1=ΔA1/Δλ … (8) を出力する。また、上記ロックイン増幅器26は、アッ
テネータ12による入射光強度I0 2に対して、次の第
9式であらわされる交流信号、 D2=ΔA2/Δλ … (9) を出力する。
よびD2をA/D変換し、上記交流信号D2とD1の入
射光強度の変調の1サイクルごとに、次の第10式であ
らわされる差演算を行う。 ΔD=D2−D1=ΔA2/Δλ−ΔA1/Δλ … (10) 上記演算処理装置27は、予め求められて図示しないメ
モリに記憶された回帰式のデータを用い、上記第10式
により得られた値から、検査部位のグルコース濃度を検
出する。
テネータ12のアッテネータユニット12aと12bと
の交互切替の多サイクルの積算平均化処理を行えばS/
N比が向上する。また、入射光強度を少なくとも3段階
以上にわたって強度変調すれば、グルコースの定量に最
適な入射光強度域も分かり、最適なアッテネータ12の
選択や手法をさらに精密化できる。従来の拡散反射法で
較正に使用する標準拡散板も不要になる。
プルの底部から洩れない、いわゆる無限サンプル厚みの
条件を満足していれば、透過法と異なり検査部位の厚み
情報は不要である。
よび二次微分スペクトルの説明図である。
の説明図である。
る。
る。
を示すグラフである。
る。
一実施例のブロック図である。
2a アッテネータユニット、12b アッテネータユ
ニット、12c 回転ディスク、13 光路、13a
光路、13b 光路、14 ビームスプリッタ、16
皮膚、17 検査部位、18 積分球、21 第1検知
器、22 第2検知器、23 増幅器、24 増幅器、
25 対数比率増幅器、26 ロックイン増幅器、27
演算処理装置。
Claims (2)
- 【請求項1】 波長変調された光を発生する波長変調光
発生手段と、この波長変調光発生手段からの波長変調さ
れた光の強度を複数の強度に強度変調する強度変調手段
と、この強度変調手段から入射する波長変調および強度
変調された光の光路を分離するビームスプリッタ手段
と、このビームスプリッタ手段で分離された一つの光路
を通過し血糖値を検査すべき検査部位に入射して透過も
しくは反射した光を集める集光手段と、この集光手段で
集めた光の強度を検出する第1光検出手段と、上記ビー
ムスプリッタで分離されたいま一つの光路を通過する光
の強度を検出する第2光検出手段と、上記第1光検出手
段の出力と第2光検出手段の出力との比率を検出する比
率検出手段と、この比率検出手段から上記比率に対応す
る比率信号が入力し、この比率信号の上記波長変調によ
る波長変化に対する変化率を検出して上記検査部位にお
けるグルコースの吸収スペクトルの微分スペクトル信号
を検出する微分スペクトル信号検出手段と、上記強度変
調を受けた複数の強度の光の各々について、上記微分ス
ペクトル信号検出手段により検出された上記微分スペク
トル信号に基づいて測定部位の血糖値を演算する演算手
段とを備えたことを特徴とする血糖値の無侵襲測定装
置。 - 【請求項2】 上記波長変調光発生手段が波長可変半導
体レーザであることを特徴とする請求項1記載の血糖値
の無侵襲測定装置。
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