JP4471255B2 - スチレン系樹脂積層シートの製造方法及び容器の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系樹脂からなる積層シートの製造方法及びそれを成形してなる容器の製造方法に関する。特に、食品トレイやカップ麺の丼などの包装容器用途に適したスチレン系樹脂積層シートの製造方法及び容器の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリスチレンに代表されるスチレン系樹脂は安価であり、透明性、成形性、寸法安定性、剛性、発泡特性等にも優れることから、樹脂シートや樹脂フィルムへと加工され広く用いられている。また、スチレン系樹脂シートとしては発泡体シートと非発泡体シートがあり、食品包装分野で食品用容器などへ熱成形する用途に多用されている。
【0003】
スチレン系樹脂フィルムは、フィルムの持つ高光沢、透明性と腰の強さの特徴から、食品包装分野や、封筒窓材用途で使用されている。食品包装分野ではスチレン系樹脂シート基材としてのハイインパクトポリスチレンシート(以下HIPSシート)や発泡体状のポリスチレンペーパー(以下PSP)などとのラミネート用途に広く使用されており、スチレン系樹脂シート基材と同素材でリサイクルし易いことも使用される理由である。それらは、スチレン系樹脂シート基材と同様に真空成形や圧縮成形等により成形され、食品用容器、飲料用容器、カップ麺容器等に広く利用されている。
【0004】
これらのスチレン系樹脂には、スチレン系単量体やスチレン系2量体、スチレン系3量体などの低分子量成分が含まれており、僅かな量においても成形加工性や製品性能の点で好ましくない影響を及ぼすことがある。
例えば、スチレン系樹脂フィルムとPSPとのラミネートシートを食品トレイやどんぶりなどの容器へ二次加工を行う際、ラミネートシート中に含まれる低分子量成分が成形加工中に揮発して金型や加工機器に付着、あるいは成形体表面に直接付着することによって製品を汚し、美観を損ね商品価値が低下する等の問題が起こる場合がある。このため、成形加工時のシート予熱温度を低く設定する、金型や機器の清掃頻度を増やす等の対策が取られるが、これらの対応は生産性や成形性低下の要因となり、弊害もある。また、成形された最終製品の性能の点では、スチレン系樹脂中に低分子量成分が多く含まれると、製品の剛性、特に加熱時の剛性低下を来たし、耐熱性が低くなることがある。
【0005】
また、スチレン製容器からスチレン系樹脂中に含まれる低分子量成分が溶出または揮発する場合もある。例えば、東京衛研年報50、208頁−214頁(1999)では、各種スチレン製容器について、油脂および脂肪性食品を想定した擬似溶媒としてn−ヘプタンを用いた場合のスチレン系低分子量成分の溶出試験が行なわれており、スチレン単量体、2量体、3量体が溶出するスチレン製容器も存在することが報告されている。
【0006】
スチレン系低分子量成分含有量やn−ヘプタンへのスチレン系低分子量成分溶出量を低減したスチレン系樹脂フィルムとスチレン系樹脂発泡体シート、スチレン系樹脂非発泡体シートから成る積層シートや成形容器としては、特開2002−316393号公報、特開2002−104366号公報、特開2002−337832号公報、特開2001−341246号公報がある。
特開2002−316393号公報、特開2002−104366号公報、特開2002−337832号公報は、スチレン系樹脂とスチレン系ゴムからなるスチレン系フィルムとスチレン系樹脂発泡体シートとのスチレン系樹脂積層シート及び容器であり、フィルム製造時や積層加工性の向上、容器からのスチレン系低分子量成分溶出量の低減が可能であることが開示されている。
【0007】
しかしながら、これらの特許公報のスチレン系樹脂フィルムには樹脂組成物中にゴム成分としてジエン系の共重合成分を含んでいることから、弊害がある。つまり、ジエン系成分を含むとフィルム製造装置内での滞留部分での熱履歴によりゲル化や炭化が進み、フィルム中にゲル、炭化物が混入することがあるため、特に食品容器などの用途には不適応である。また、ゴム成分を含むことはフィルムの透明性や光沢を悪化する要因になり、光沢感や美観を重視するような用途にも不適応である。
【0008】
特開2001−341246号公報は、アニオン重合により得られるスチレン系低分子量成分の少ないスチレン系樹脂シートと樹脂フィルムとのスチレン系樹脂非発泡体積層シートであり、積層シート成形性、二次加工成形性に優れ、最終製品の高温剛性に優れることが開示されている。
しかしながら、該特許公報では、成形性に優れる点とはスチレン系低分子量成分の揮発によるダイス汚れや金型汚れを低減することであり、積層シートを加熱成形する時の型決まり性や積層樹脂フィルムの成形追随性としての成形性の発想ではない。
【0009】
ラミネート加工性や積層体シートの成形性に優れるスチレン系樹脂積層シートに関し、特開平9−123322号公報は、ポリスチレンとスチレンと脂肪族カルボン酸エステルとの共重合体(スチレンブチルアクリレート共重合ポリマーなど)からなるスチレン系フィルムとPSPとの積層シートであり、フィルムの120℃における破断伸度と弾性率が適正範囲にある場合において、ラミネートシートの成形性に優れることが開示されている。
【0010】
しかしながら、該特許公報はフィルムとしてのビカット軟化温度を下げることで成形性等を向上させているが、生産性の観点から問題を有する。近年では効率面から積層体シートの成形加工はハイショットサイクルで行うことが一般的で、成形温度は、より高温側の方向になっている。つまり、該特許公報に記載されているフィルムのようにビカット軟化温度が低い場合では、フィルムの収縮が急激に起こるため、製品にシワの発生や表面のフィルム浮きが発生する問題がある。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−123322号公報
【特許文献2】
特開2001−342208号公報
【特許文献3】
特開2002−53719号公報
【特許文献4】
特開2002−121343号公報
【特許文献5】
特開2000−248103号公報
【特許文献6】
特開2000−355083号公報
【特許文献7】
特開2001−220477号公報
【特許文献8】
特開2001−329128号公報
【特許文献9】
特開2002−104366号公報
【特許文献10】
特開2002−316393号公報
【特許文献11】
特開2002−317087号公報
【特許文献12】
特開2002−331622号公報
【特許文献13】
特開2002−79623号公報
【特許文献14】
特開2002−337832号公報
【特許文献15】
特開2002−337833号公報
【特許文献16】
特開2002−79622号公報
【特許文献17】
特開2002−79623号公報
【特許文献18】
特開2000−218742号公報
【特許文献19】
特開2001−341246号公報
【非特許文献1】
東京衛研年報50、208頁−214頁(1999)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、表面光沢、強度、コスト、型決まり性、高速成形性に優れ、臭気の発生が少ないスチレン系樹脂積層シートの製造方法及び容器の製造方法の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明をなすに至った。すなわち、本発明では、ビカット軟化温度よりダイス温度が55〜95℃高いダイスで成形され、特定の低分子量成分含有量が少ないスチレン系樹脂2軸延伸フィルムをスチレン系樹脂発泡体シート及びスチレン系樹脂非発泡体シートと積層することによって初めて、表面光沢、強度、コスト、型決まり性、高速成形性に優れ、臭気の発生が少ないスチレン系樹脂積層シート及びそれからなる容器が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)(A)平均厚みが10〜300μmであるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムと、(B) 平均厚みが0.5〜5mmであるスチレン系樹脂発泡体シート、又は(C)平均厚みが0.10〜2mmであるスチレン系樹脂非発泡体シートとを積層することを含む、少なくとも一方の表面層がスチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)であるスチレン系樹脂積層シートの製造方法であって、スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)は、スチレン系モノマー、ダイマー及びトリマーから成るスチレン系低分子量成分の含有量が50〜3000ppm、ビカット軟化温度が103〜130℃、ASTM−D882法に準じて測定した120℃における引張弾性率が縦横共に3〜13MPa、ASTM−D1504法に準じて測定した加熱収縮応力が縦横共に400〜2000KPaであり、スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)は、ビカット軟化温度よりダイス温度が55〜95℃高いダイスで成形されたことを特徴とするスチレン系樹脂積層シートの製造方法。
【0015】
(2)スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)の含有するスチレン系モノマー、ダイマー及びトリマーから成るスチレン系低分子量成分の含有量が100〜2000ppmであることを特徴とする(1)に記載のスチレン系樹脂積層シートの製造方法。
(3)スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)がハイインパクトポリスチレンを1〜10重量%含むことを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載のスチレン系樹脂積層シートの製造方法。
【0016】
(4)スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)側の面において、スチレン系モノマー、ダイマー及びトリマーから成るスチレン系低分子量成分のn−ヘプタンによる溶出量が100ppb以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のスチレン系樹脂積層シートの製造方法。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のスチレン系樹脂積層シートを成形して容器を形成することを含むことを特徴とする容器の製造方法。
(6)容器を形成することにおいて、スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)側の面を容器の内側にすることを特徴とする(5)に記載の容器の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明について、特に好ましい態様を中心に、以下具体的に説明する。
まず、本発明に用いるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムについて説明する。
本発明に用いるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムの平均厚みは、10〜300μmであり、好ましくは15〜150μm、さらに好ましくは20〜50μmである。平均厚みが10μm未満である場合は、印刷やラミネート加工時に破れやすくなる。また、平均厚みが300μmを越える場合は、ラミネート加工時の熱量が不足しラミネート強度が低くなりやすく、後の成形工程においてもスチレン系樹脂2軸延伸フィルムの剥離が起こりやすくなる。
【0018】
スチレン系樹脂2軸延伸フィルムに用いるスチレン系樹脂は、スチレン単独の重合体、もしくは本発明の要件と特性を損なわない範囲であればスチレン単量体を50重量%以上含有すれば共重合体であってもかまわない。共重合成分としては、具体的にはα−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル酸、ハロゲン含有ビニルモノマーなどが挙げられ、これらの単量体を単独または2種以上混合して用いることができる。本発明では、これらのスチレン系樹脂を単独または2種類以上混合してもかまわないが、該スチレン系樹脂は、剛性および透明性の観点からポリスチレン樹脂を好ましくは50重量%以上、さらには70重量%以上含有することが好ましい。
【0019】
本発明では、スチレン系樹脂2軸延伸フィルムに用いるスチレン系樹脂の製法に関しては特に限定されないが、樹脂組成物中に含まれるスチレン系低分子量成分の含有量が50〜3000ppmでなくてはならない。また、好ましくは100〜2000ppmであり、より好ましくは100〜1000ppmである。スチレン系低分子量成分が3000ppmを越えると、フィルム製造時にフィルムの表面汚れが発生しやすくなると共に、フィルム中での残存量も多くなり、n−ヘプタンへのスチレン系低分子量成分の溶出量が多くなってしまう。この条件を満たすスチレン系樹脂を得る方法としては、以下のような例がある。スチレン系樹脂の重合法として有機リチウムを用いたアニオン重合による方法、重合時の熱履歴において熱的処理時間が短いもの、重合時に重合系内に存在する酸素量を低減したもの、低分子量物の脱揮時の真空度を高くしたもの、およびこれらの方法で得たスチレン系樹脂に熱安定剤を加えたもの等である。具体例としては、スチレン樹脂として、エー・アンド・エムスチレン(株)製のA&Mポリスチレン(商標)G0002等がある。
【0020】
該スチレン系樹脂の分子量としては、GPCにより測定した重量平均分子量が、好ましくは16〜50万、より好ましくは18〜40万である。該平均分子量が50万以下のスチレン系樹脂を用いることで、押出し延伸加工に十分な流動性が得られ、溶融押出、延伸成膜が大きな支障がなく行え、また16万以上のスチレン系樹脂を用いることで、延伸安定性とフィルムに十分な配向度を与えることができる。
該スチレン系樹脂には、本発明の目的を損なわない限り、ハイインパクトポリスチレンを1〜10重量%までの範囲で含むことが好ましく、より好ましくは2〜7重量%、さらに好ましくは3〜5重量%である。上記範囲とすることにより、耐衝撃性の改善効果を充分に得られる上、フィルムの光沢と透明性にも優れ、n−ヘプタンへの溶出量も少なく維持できるので、好ましい。
【0021】
本発明では、スチレン系樹脂2軸延伸フィルム中に残存するスチレン系低分子量成分は、50〜3000ppmであることが必要である。好ましくは、スチレン系低分子量成分が100〜2000ppm、さらに好ましくは、100〜1000ppmである。スチレン系低分子量成分が3000ppmを越えると、フィルムをラミネート加工や成形加工する際、積層シートや成形品の表面汚れが発生しやすくなるため、ラミネートロール温度および積層シートの成形温度を下げることや、成形サイクルを長くする等の対応が必要となったりするため好ましくない。また、n−ヘプタンへの溶出量も多くなり、臭気の発生も起こりやすくなる。反対にスチレン系低分子量成分が50ppm未満である場合は、フィルムが脆くなるため好ましくない。
【0022】
スチレン系低分子量成分とは、スチレン系モノマーとダイマー、トリマーをあわせたものであり、スチレン系樹脂がスチレン単独である場合では、ダイマーとは、1,3−ジフェニルプロパン、cis−1,2−ジフェニルシクロブタン、2,4−ジフェニル−1−ブテン、trans−1,2−ジフェニルシクロブタンである。また同様に、トリマーとは、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン、1e−フェニル−4e−(1´―フェニルエチル)テトラリン、1a−フェニル−4e−(1´−フェニルエチル)テトラリン、1a−フェニル−4a−(1´−フェニルエチル)テトラリン、1e−フェニル−4a−(1´―フェニルエチル)テトラリンである。
【0023】
本発明では、スチレン系樹脂2軸延伸フィルムの加熱収縮応力および高温引張弾性率を適正範囲にすることにより、スチレン系樹脂積層シートの成形性も具備しつつ、加えてラミネート加工適性が良好となることを明らかにした。すなわち、ラミネート適性は、ラミネート時の温度とテンションに耐える適度な抵抗力として、スチレン系樹脂2軸延伸フィルムの加熱収縮応力が適正範囲にある必要がある。また、スチレン系樹脂積層シートの成形性については、成形時のシート伸びの指標としてスチレン系樹脂2軸延伸フィルムの120℃での弾性率を適正範囲にする必要がある。
【0024】
本発明に用いるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムの加熱収縮応力(120℃のシリコーンオイル浴中で測定したピーク応力値)は、縦横ともに400〜2000KPaの必要がある。好ましくは、500〜1600KPaである。フィルムの加熱収縮応力が、400KPa未満の場合は、ラミネート加工時の温度とテンションに対してフィルム自身が伸びやすくなりすぎるため、フィルムの印刷模様が長くなる方向に位置ズレが大きくなる。フィルムの伸びを抑えるためには、かかるテンションを下げる、加工速度を抑える等の対応をとる必要があるが、スチレン系樹脂積層シートに気泡やシワが入り易くなり、品質や生産性が悪くなったりするため好ましくない。反対に、2000KPaを越える場合は、過大な収縮応力によりフィルムの収縮が起こり、印刷模様が短くなる方向に位置ズレが大きくなる。そのため、フィルムに掛かるテンションを上げる、ラミネート温度を上げるなどの対応をとるが、フィルムの破れ、伸び斑(収縮斑)による印刷模様の乱れ、ラミネートシートの表面性悪化などの弊害を伴い好ましくない。
【0025】
また、本発明に用いるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムの120℃における引張弾性率(ASTM−D882法に準じて測定)は、スチレン系樹脂積層シートの成形性から、120℃での引張弾性率が3〜13MPaである。好ましくは5〜10MPaである。120℃の引張弾性率が13MPaを越えた場合は、スチレン系樹脂積層シートの成形時におけるフィルムの伸びが不足するため、フィルム破れや型決まり性不足などの成形不良になりやすい。また、成形不良を改善するために成形温度を上げる、成形サイクルを長くするなどの対応をとった場合は、過予熱による成形品表面状態の悪化、成形品の変形や生産性の低下を伴い好ましくない。
【0026】
本発明に用いるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムの加熱収縮応力と120℃における引張弾性率を達成するためには、フィルムの製造時において適度な延伸配向をかけることが好ましい。そのためには、スチレン系樹脂自身の特性としては分子量とビカット軟化温度、フィルムの製造条件としては延伸温度と延伸倍率について、本発明において明示した適正範囲にあることが好ましい。
本発明に用いるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムのビカット軟化温度は103〜130℃である。スチレン系樹脂積層シートの高速成形性から、好ましくは105〜120℃である。ビカット軟化温度が103℃未満の場合は、スチレン系樹脂積層シートの予熱温度の高温化に伴い、フィルムの浮き、シワが発生しやすくなり、成形品の品質を悪くするため好ましくない。また、130℃を越える場合は、成形性が悪くなる、PSPとの積層により成るスチレン系樹脂積層シートの成形時では、シートの二次発泡が大きくなり設計通りの製品が得られにくくなる等の問題が起こるため、好ましくない。
【0027】
本発明に用いるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムには、スチレン系樹脂に熱安定剤、酸化防止剤などの安定剤を添加することも、フィルム製造時や後加工時の低分子量成分増加を抑制する点では効果的である。熱安定剤、酸化防止剤の例としては、フェノール系、アミン系、リン系、イオウ系、ヒンダードアミン系安定剤などがあり、本発明の目的を損なわない範囲でこれらの安定剤を配合してもかまわない。
【0028】
本発明に用いるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムには、上記の安定剤以外に、紫外線吸収剤、無機系微粒子や有機系微粒子などの微粒子状アンチブロッキング剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤など、公知の添加剤を、本発明の要件と特性を損なわない範囲で配合することが可能である。
本発明に用いるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムには、ラミネート加工時の相手基材との接着性の向上、スチレン系樹脂積層シートやそれから成る成形品の帯電防止性、防曇性、離型性などの機能を付与する目的で、表面処理を施しても良い。ここで言う表面処理とは、フィルム表面に対するコロナ処理などの親水化処理や、界面活性剤や防曇剤、帯電防止剤、シリコーンのような離型剤などのフィルム表面へのコーティングであり、これらの処理を単独または2種以上組合せても良い。
【0029】
本発明に用いるスチレン系2軸延伸フィルムの製造法は、スチレン系樹脂を溶融してT−ダイなどから押出し、原反を延伸ロールで縦延伸した後にテンターで横延伸するテンター法、またはサーキュラーダイから押出し、インフレーション延伸するインフレーション法のいずれでも良い。
インフレーション延伸法では、延伸倍率は、縦方向および横方向それぞれに3.5〜12倍が好ましく、延伸配向の付与によるポリスチレン系フィルムの特徴である腰の強さの発現と延伸の均一性の観点から、特に5〜10倍の範囲が好ましい。延伸倍率が3.5倍未満の場合は、延伸配向度が低すぎるため、フィルムの耐衝撃性が低くなりやすく、ラミネート加工時にフィルムが切れやすくなる。耐衝撃性の付与については、汎用のポリスチレン(低分子量成分を多く含むもの)よりも低分子量成分の少ないポリスチレンの方が耐衝撃性に劣る傾向があるため、本発明において耐衝撃性の向上は重要である。
【0030】
延伸倍率以外の延伸条件としては、本発明ではダイス温度を該スチレン系樹脂のビカット軟化温度+55〜95℃の範囲にすることが好ましく、そうすることにより延伸開始点における樹脂温度(以下、延伸温度)を特定の範囲にすることができる。
前記ダイス温度の範囲は、延伸前の押出し時における熱履歴とダイスでのせん断による樹脂の熱分解を抑制するための適正範囲である。一般的な方法においては、押出し機内でのせん断による発熱等によりポリスチレン樹脂の低分子量成分が増加することは知られており、ベント口付きの押出し機が用いられ、低分子量成分を脱揮しているのが現状である。また、成形加工性の観点から、押出し機内の樹脂温度よりもダイス温度の方を高温にしているのが通常である。これは、ダイス内での滞留時間が短いことから、成形加工性を優先したものである。
【0031】
しかしながら、本発明者らは、ダイス温度がオリゴマーの発生に寄与していることを発見した。すなわち、ダイス温度がビカット軟化温度+95℃を超えると、急激に低分子量成分が増加することを見出した。そして、ダイス温度が低い条件下においても、低分子量成分が増加せずに延伸でき、かつ、ラミネート用フィルムに適したフィルムが得られる延伸加工条件を見出した。ダイス温度が該スチレン系樹脂のビカット軟化温度+95℃を越える温度である場合は、熱分解により低分子量成分の増加を来たし、本発明の要件であるフィルム中に残存する低分子量成分量を達成しにくくなる。また、生成した低分子量成分がダイスなどの製造装置を汚したり、フィルムに付着して汚したりする場合がある。反対に、ビカット軟化温度+55℃未満の低温の場合は、ダイス内での樹脂圧力が高くなりすぎるので、押出し量を下げる対応が必要となり、生産性が低下しやすい。また、ダイス温度に準じて延伸温度も低くなるため、フィルムに過剰な延伸配向がかかり、本発明の要件にあるフィルム物性が得られにくく、ラミネート加工性や積層体シートの成形性が不十分となる場合がある。
【0032】
本発明では、ダイス温度のコントロールに加え、延伸温度も一定範囲とすることが好ましい。
インフレーション延伸法での延伸温度は、ビカット軟化温度+45〜70℃が好ましい。この範囲から外れる場合は、本発明の要件であるフィルム物性が得られにくくなる。延伸温度が高温側に外れる場合は、フィルムの延伸配向度が低くなることでフィルムが脆くなりやすく、ラミネート加工時の印刷位置ズレも起こりやすい。さらに、延伸時の溶融張力が低いので、インフレーションバブルの安定性が不十分となり、フィルムの厚み斑が起こりやすくなる。また、延伸温度が低温側に外れる場合は、フィルムの延伸配向度が高くなり積層シートの成形性が不十分となる。
【0033】
テンター延伸法では、延伸倍率は、縦方向および横方向それぞれに2〜8倍が好ましく、延伸配向の付与によるスチレン系樹脂フィルムの特徴である腰の強さの発現と延伸の均一性の観点から、特に3〜6倍の範囲が好ましい。延伸倍率が2倍未満の場合は、延伸配向度が低くなりフィルムの耐衝撃性が低くなるので、ラミネート加工時にフィルムが切れやすくなる。反対に延伸倍率が8倍を越える場合は、配向度が高くなりラミネート加工時にフィルムの収縮が起こりやすい。
【0034】
テンター延伸法での延伸温度は、該スチレン系樹脂のビカット軟化温度+20〜40℃が好ましい。この範囲から外れる場合は、所望のフィルム物性が得られにくくなる。延伸温度が高温側に外れる場合は、フィルムの延伸配向度が低くなることでフィルムが脆くなりやすく、ラミネート加工時の印刷位置ズレも起こりやすくなる。さらに、延伸時の溶融張力が低いので、延伸の安定性が不十分となりフィルムの厚み斑が起こりやすくなる。また、延伸温度が低温側に外れる場合は、フィルムの延伸配向度が高くなりラミネート加工性や積層シートの成形性が不十分となりやすい。
【0035】
次に、本発明で用いるスチレン系樹脂発泡体シートについて説明する。
本発明で用いるスチレン系樹脂発泡体シートは、ポリスチレンペーパー(以下PSP)の一般名で知られる3〜15倍程度(密度で0.35〜0.06g/ml)の発泡倍率のものである。該発泡体シートの平均厚みは、0.5〜5mmであり、好ましくは1.0〜3.0mmである。発泡体シートの平均厚みが0.5mm未満の場合は、積層シートや成形容器の剛性が不足し、断熱効果も少なくなる。また、5mmを越える場合は、分厚くなるため成形性に劣る傾向がある。
【0036】
該発泡体シート用の樹脂は、主としてポリスチレンであるが、ポリスチレンに少量のゴム成分を含む耐衝撃性ポリスチレンも使用でき、これらの重合体は目的に応じて1種あるいは2種以上組合せても良い。該発泡体シートの製造方法は、一般的に知られる押出し発泡による方法、押出しシートを後加熱して発泡させる方法などがあるが、生産性と経済性からサーキュラーダイを用いた押出発泡による方法が好ましく利用される。
【0037】
次に、本発明で用いるスチレン系樹脂非発泡体シートについて説明する。
本発明で用いるスチレン系樹脂非発泡体シートは、平均厚みが0.10〜2mmであり、好ましくは0.15〜1.5mmである。該非発泡体シートの平均厚みが0.10mm未満の場合は、積層シートや成形容器の剛性が不足する。また、2mmを越える場合は、成形性に劣る傾向があり、成形容器も重いものになる。
【0038】
該非発泡体シート用の樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲でスチレン単量体を50重量%以上含有する共重合体であってもかまわない。ポリスチレン樹脂を主成分とする透明性に優れたOPSシート(商標:旭化成)やハイインパクトポリスチレンを主成分とする耐衝撃性と成形性に優れたHIPSシートなどがある。該非発泡体シートの製造方法としては、OPSシートである場合は、Tダイより押出した樹脂を縦横に逐次2軸延伸するテンター延伸法が良く利用されており、HIPSシートの場合は、Tダイより押出した樹脂をロールにて冷却し、未延伸シートとして得る方法等が利用される。
【0039】
本発明におけるスチレン系樹脂積層シート及び成形体において、スチレン系2軸延伸フィルム面でのn−ヘプタンへのスチレン系低分子量成分の溶出量は100ppb以下が好ましい。より好ましくは50ppb以下である。更に好ましくは、30ppb以下である。n−ヘプタンへの溶出量がこの範囲であれば、容器から食品へのスチレン系低分子量成分の移行量が少なく、異臭発生等の問題が起こりにくい。
【0040】
本発明のスチレン系樹脂積層シートを得るために積層シート化する方法としては、成形ダイスから押出された溶融またはビカット軟化温度以上の基材樹脂シートに直ちにフィルムを圧着させる押出しラミネート法、フィルムと基材樹脂シートを熱ロールで圧着する熱ラミネート法、接着剤をコーティングしたフィルムと基材樹脂シートを熱圧着ロールにより圧着するドライラミネート法、フィルムと基材樹脂シートとの間にHIPS樹脂を押出し、挟み込むようにロールで圧着するサンドラミ法などの一般的な方法で積層シート化が可能である。
【0041】
【実施例】
次に、実施例および比較例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、実施例および比較例で用いた、評価の測定方法と判定基準について以下に説明する。
【0042】
(1)フィルム中に残存するスチレン系低分子量成分の含有量
低分子量成分の含有量は、スチレン系モノマー、ダイマー、トリマーについて下記方法で定量を行った。
試料調整:フィルム1gをメチルエチルケトンに溶解。メタノールを加え、ポリマーを沈殿させて分離、上澄み液をGCで測定した。
GC測定条件
機器:Agilent製 GC6890(商標)
検出方法:FID
カラム:HP−1(商標、100%ジメチルシロキサン)
長さ30m、膜厚0.25μm、内径0.32mmφ
カラム温度:40℃−2分−20℃/分−260℃−5分
注入口温度:200℃
検出器温度:320℃
キャリアガス:ヘリウム
低分子量成分量により以下の評価基準で判定した。
◎:50〜2000ppm
○:2001〜3000ppm
×:3000ppm超
【0043】
(2)積層シート及び容器からのn−ヘプタンへのスチレン系低分子量成分の溶出量
n−ヘプタンへの溶出条件
抽出法:片面抽出法
抽出溶媒量:積層シート及び容器の表面積1cm2当たり2ml
抽出温度:25℃
抽出時間:1時間
n−ヘプタン中の低分子量成分(スチレン系モノマー、ダイマー、トリマー)を(1)と同様の方法でGC6890を使用して定量した。
n−ヘプタンへの溶出量により以下の評価基準で判定した
◎:50ppb以下
○:51〜100ppb
×:100ppb超
【0044】
(3)フィルムの加熱収縮応力
ASTM−D−1504に準拠し、2軸延伸フィルムおよびシートの縦方向と横方向のそれぞれについて、120℃のシリコーンオイル浴中で、配向緩和応力のピーク値を測定し、整数値に四捨五入して求めた。
(4)スチレン系樹脂2軸延伸フィルムの高温引張弾性率(120℃)
ASTM−D882法に準拠して測定した。高温測定のため、引張試験機以外に恒温槽を使用し、測定温度を120℃に調整した。120℃の測定温度における引張弾性率を測定し(10〜30%伸びの間)、小数点以下一桁の値に四捨五入して求めた。
【0045】
(5)フィルムのビカット軟化温度
フィルムを積層し熱プレスにより溶融後、冷却し3mm厚の板状サンプルを得る。サンプルをASTM−D−1525に準じて測定した。荷重9.8N(ウエイト1kg)、昇温速度2℃/min。
(6)ラミネート適性(ラミネート加工時のフィルム破れ性、位置ズレ性)
フィルムと発泡体(PSP)、非発泡体(HIPSシート)との熱ラミネート法による積層を行い、ラミネート適性を評価した。積層加工条件を下記に示す。
【0046】
<PSP積層シートの場合>
熱ラミネート法で実施:600mm巾のサンプルフィルム(印刷品)と厚み2.5mmのPSP(平均発泡倍率14倍、巾630mm)を、熱圧着ローラー(ロール表面温度165℃の加熱ロール、直径400mm、ロール巾1.3m、ロール速度10m/分)を装備した熱ラミネート機でラミネートする。その際のフィルムテンションは、350N(フィルム巾610mm当たり)とし、500mの積層シートを得た。
【0047】
<HIPS積層シートの場合>
熱ラミネート法で実施:600mm巾のサンプルフィルム(印刷品)と厚み0.5mmのHIPSシート(エー・アンド・エムスチレン(株)製A&Mポリスチレン475D(商標)100%使用)を、熱圧着ローラー(ロール表面温度180℃の加熱ロール、直径400mm、ロール巾1.3m、ロール速度20m/分)を装備した熱ラミネート機でラミネートする。その際のフィルムテンションは、350N(フィルム巾610mm当たり)とし、500mの積層シートを得た。
【0048】
(a)フィルム破れ性
積層加工時のフィルム破れの発生状況により下記基準で評価した。
○:フィルム破れ発生なし
△:1〜2度のフィルム破れ発生
×:3度以上のフィルム破れ発生
(b)位置ズレ性
フィルムに1mm間隔の碁盤目印刷を施しておき、ラミネート後の寸法変化量(下記計算式、ただし、数値は絶対値とする)を5m間隔で10回測定し、その平均値について、以下の基準で評価した。なお、測定は積層シートの最外層から10m巻き出した位置より開始した。
【0049】
ΔL=(L2−L1)
ここで、ΔLは寸法変化量(mm)、L1はラミネート前の碁盤目1000個分の長さ(=1000mm)、L2はラミネート後の碁盤目1000個分長さ(mm)である。
○:寸法変化量が、30mm未満
△:寸法変化量が、30〜50mm
×:寸法変化量が、50mm超
【0050】
(7)積層シートの成形性
ラミネート時の位置ズレ性評価で作製した積層シートについて、真空成形機(シート巾630mm、加熱ゾーン2ゾーン、遠赤外線ヒータ輻射加熱式)により、図1に記載する容器の成形を行った。成形は、各条件でそれぞれ18ショット行い、スタートから5ショット目までと最後から2ショット目までを除く、11ショット分(成形品99個分)を評価対象サンプルとした。成形性の指標として、フィルムの破れ性と型決まり性について、下記基準により評価した。
【0051】
(a)フィルム破れ性
○:全ての成形品で、フィルム破れがなかった
△:1〜5個の成形品で、フィルム破れが発生した
×:5個以上の成形品で、フィルム破れが発生した
(b)型決まり性
○:全ての成形品で、金型通りに成形できた
△:1〜5個の成形品で、金型通りに成形できなかった
×:6個以上の成形品で、金型通りに成形できなかった
【0052】
<PSP積層シートの成形条件>
予熱時間4秒、金型温度84℃の条件で、予熱温度(ヒータ温度設定)270℃、280℃、290℃の3水準で成形を行った。
<HIPS積層シートの成形条件>
予熱時間8秒、金型温度50℃の条件で、予熱温度(ヒータ温度設定)300℃、310℃、320℃の3水準で成形を行った。
【0053】
(8)成形品の外観
上記(7)で得た成形品について評価を行った。PSP積層シートの場合は成形温度290℃の条件で得た成形品について、HIPS積層シートの場合は成形温度320℃の条件で得た成形品について、99個全てを検査し、最も外観の悪い成形品の目視判定結果により、以下の評価基準で判定した。
○:表面のシワ、汚れ、曇り、フィルムの浮きがなく美麗である
△:表面のシワ、汚れ、曇り、フィルムの浮きが少しある
×:表面のシワ、汚れ、曇り、フィルムの浮きが多い
【0054】
(実施例1〜18および比較例1〜16)
実施例および比較例において用いたフィルムは、表1記載の樹脂を用い、表2に記載の樹脂組成と延伸条件(ダイス温度、延伸温度、延伸倍率)でインフレーション法により2軸延伸することによって得た。また、表2にはフィルム特性についても記載する。
<インフレーション法>
L/D=45の60mmφスクリューを有するサーキュラーダイ付き押出機で押出したチューブをインフレーションして冷却し、所望のフィルムとして巻取る。この際、フィルム厚みはダイス径と延伸倍率で適宜調節した。
実施例8〜14および比較例9〜15は、表1に記載の樹脂を用い、表3に記載の樹脂組成と延伸条件(ダイス温度、延伸温度、延伸倍率)でテンター法により2軸延伸した。
<各実施例のおよび各比較例の評価>
各実施例および各比較例の評価結果については、表3および表4に示す。
【0055】
(実施例1〜実施例9)
実施例1〜実施例9は、スチレン系樹脂フィルムとスチレン系樹脂発泡体(PSP)との積層シート、容器である。これらは、ラミネート加工性、積層シートの成形性に優れ、得られた容器の外観にも優れ、積層シート及び容器からのn−ヘプタンへのスチレン系低分子量成分が極めて少ないものであった。
【0056】
(実施例10〜実施例18)
実施例10〜実施例18は、スチレン系樹脂フィルムとスチレン系樹脂非発泡体(HIPSシート)との積層シート、容器である。これらは、ラミネート加工性、積層シートの成形性に優れ、得られた容器の外観にも優れ、積層シート及び容器からのn−ヘプタンへのスチレン系低分子量成分が極めて少ないものであった。
【0057】
(比較例1および比較例9)
比較例1および比較例9は、スチレン系低分子量成分含有量が多いスチレン系樹脂フィルムを積層シートに使ったものである。ラミネート適性と積層シート成形性は良いものの、積層シートと容器からのn−ヘプタンへのスチレン系低分子量成分の溶出量が多く、容器の外観にも劣るものである。
【0058】
(比較例2および比較例10)
比較例2および比較例10は、スチレン系樹脂フィルムの厚みが本発明の範囲よりも薄いものである。ラミネート加工時にフィルム破れが発生したため、積層シートを得ることが出来なかった。
【0059】
(比較例3および比較例11)
比較例3および比較例11は、スチレン系樹脂フィルムの厚みが本発明の範囲よりも厚いものである。ラミネート加工、積層シートの成形は可能であったが、ラミネート強度が低く成形時にフィルムの浮きが発生したため、容器の外観に劣るものであった。
【0060】
(比較例4および比較例12)
比較例4および比較例12は、スチレン系低分子量成分含有量が多く、120℃での弾性率と加熱収縮応力が低いスチレン系樹脂フィルムを使用したものである。ラミネート加工時の位置ズレが大きく、積層シートと容器からのn−ヘプタンへのスチレン系低分子量成分の溶出量が多く、容器の外観にも劣るものである。
【0061】
(比較例5および比較例13)
比較例5および比較例13は、120℃での弾性率と加熱収縮応力が低いスチレン系樹脂フィルムを使用したものである。ラミネート加工時の位置ズレが大きく、容器の外観にも劣るものである。
【0062】
(比較例6および比較例14)
比較例6および比較例14は、スチレンブタジエンブロック共重合体を30重量%含むスチレン系樹脂フィルムを使用したものである。フィルム中の低分子量成分含有量が多く、積層シートと容器からのn−ヘプタンへの溶出量も多く、容器の外観にも劣るものである。
【0063】
(比較例7および比較例15)
比較例7および比較例15は、スチレン−ブチルアクリレート共重合体を30重量%含むスチレン系樹脂フィルムを使用したものである。ラミネート加工適性、ラミネートシートの成形性は良好である。しかしながら、フィルムのビカット軟化温度が100℃以下であることから、成形時において、表面にシワが発生し、容器の外観が悪くなってしまった。また、フィルム中の残留低分子量成分が多く、積層シートと容器からのn−ヘプタンへの溶出量も多くなってしまった。
【0064】
(比較例8および比較例16)
比較例8および比較例16は、スチレン系樹脂発泡体(PSP)およびスチレン系樹脂非発泡シート(HIPSシート)の厚みが本発明の範囲よりも厚いものである。積層シート成形時の型決まり性が悪く、型通りの容器が得られなかった。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【発明の効果】
本発明のスチレン系樹脂積層シート及び容器は、特定の低分子量成分含有量が少ないスチレン系樹脂2軸延伸フィルムをスチレン系樹脂シートの片面あるいは両面に積層することによって、食品等へのスチレン系低分子量成分の移行を低減、臭気の発生を少なくできる。また、成形性や剛性の点で問題の少ない容器を提供できる上、フィルムにゲルなどによる品質悪化がなく、光沢、透明性に優れるため積層シートや容器の美観にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例および比較例で、積層シートの成形性と性能評価の対象とした容器の斜視説明図。
Claims (6)
- (A)平均厚みが10〜300μmであるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムと、
(B)平均厚みが0.5〜5mmであるスチレン系樹脂発泡体シート、又は(C)平均厚みが0.10〜2mmであるスチレン系樹脂非発泡体シートとを積層することを含む、
少なくとも一方の表面層が前記スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)であるスチレン系樹脂積層シートの製造方法であって、
前記スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)は、
スチレン系モノマー、ダイマー及びトリマーから成るスチレン系低分子量成分の含有量が50〜3000ppm、
ビカット軟化温度が103〜130℃、
ASTM−D882法に準じて測定した120℃における引張弾性率が縦横共に3〜13MPa、
ASTM−D1504法に準じて測定した加熱収縮応力が縦横共に400〜2000KPa
であり、
前記スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)は、前記ビカット軟化温度よりダイス温度が55〜95℃高いダイスで成形された
ことを特徴とする前記スチレン系樹脂積層シートの製造方法。 - 前記スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)の含有する前記スチレン系モノマー、ダイマー及びトリマーから成るスチレン系低分子量成分の含有量が100〜2000ppmであることを特徴とする請求項1に記載のスチレン系樹脂積層シートの製造方法。
- 前記スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)がハイインパクトポリスチレンを1〜10重量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂積層シートの製造方法。
- 前記スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)側の面において、前記スチレン系モノマー、ダイマー及びトリマーから成るスチレン系低分子量成分のn−ヘプタンによる溶出量が100ppb以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂積層シートの製造方法。
- (A)平均厚みが10〜300μmであるスチレン系樹脂2軸延伸フィルムと、
(B)平均厚みが0.5〜5mmであるスチレン系樹脂発泡体シート、又は(C)平均厚みが0.10〜2mmであるスチレン系樹脂非発泡体シートとを積層し、
少なくとも一方の表面層が前記スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)であるスチレン系樹脂積層シートを形成することと、
前記スチレン系樹脂積層シートを成形して、容器を形成すること
とを含む容器の製造方法であって、
前記スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)は、
スチレン系モノマー、ダイマー及びトリマーから成るスチレン系低分子量成分の含有量が50〜3000ppm、
ビカット軟化温度が103〜130℃、
ASTM−D882法に準じて測定した120℃における引張弾性率が縦横共に3〜13MPa、
ASTM−D1504法に準じて測定した加熱収縮応力が縦横共に400〜2000KPa
であり、
前記スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)は、前記ビカット軟化温度よりダイス温度が55〜95℃高いダイスで成形された
ことを特徴とする前記容器の製造方法。 - 前記容器を形成することにおいて、
前記スチレン系樹脂積層シートの前記スチレン系樹脂2軸延伸フィルム(A)側の面を前記容器の内側にすることを特徴とする請求項5に記載の容器の製造方法。
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