JP4470382B2 - 熱可塑性成形材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体を含んでなる、各種用途に使用される熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂は剛性が高く、寸法安定性に優れ、かつ安価であることから、成形用途に広く使用されている。しかしながら、オレフィン系樹脂に比べ、薬品には犯されやすい。近年、種々の用途において、スチレン系樹脂の耐薬品性の向上が求められている。
そこで、シンジオタクティックポリスチレンとアタクティックポリスチレンからなるスチレン系樹脂組成物を270〜370℃程度の高温で加熱溶融し、100℃以下の金型温度で成形し、有機溶剤に対する耐薬品性を向上させた方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、透明性の低下、及び射出成形は可能であるが、押出成形は困難であるという制限がある。
【0003】
また、ポリスチレンと他の樹脂とのアロイや、多層成形により、耐薬品性を高める方法(例えば特許文献2参照)もあるが、操作性やモルホロジーの制御が困難であり、汎用樹脂の用途、特に包装資材分野には向かない。
【0004】
そのような中で、耐薬品性を高めるためには、水酸性の官能基を含有した樹脂設計を容易に思いつくが、スチレンと1級のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートなどの共重合体は、高い熱履歴(200℃以上)を受けるような成形条件において、分子間による架橋反応が促進し、即座にゲル化が生じるため、成形材料に使用することはできない。
現在、コーティング材料、ラテックス、水酸性ゲル、複合材料、発泡用途などでスチレン、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルを主成分とし、更に架橋反応を生じるために、2級のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを併用してなる樹脂が使用されている(例えば、特許文献3参照)。このような樹脂は、実質的に架橋剤を用いて硬化させることを目的としているため、所謂熱可塑性を有する成形材料として使用することができない。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−92385号公報
【特許文献2】
特開平6−263941号公報
【特許文献3】
特開昭61−288663号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、ポリスチレンの透明性を維持し、耐薬品性を発現させたスチレン系熱可塑性成形材料の提供である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、高い流動性を有し、透明性、耐薬品性に優れ、高温加熱成形時にもゲル化しないスチレンと2級ヒドロキシ基含有の(メタ)アクリレートの共重合体が成形材料として使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、メルトマスフローレートが0.1/10min〜25g/10minであるスチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体を含んでなる熱可塑性成形材料及びそれからなるシート、容器を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可塑性成形材料は、スチレンと2級ヒドロキシ基含有の(メタ)アクリレートからなる共重合体を含有するものである。
【0010】
本発明で使用されるスチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体は、スチレンと1級ヒドロキシ基含有の(メタ)アクリレート(例えば、2−HEMA、2−HEA)からなる共重合体が高い熱履歴を受けると、即座に分子間架橋反応が起り、ハードゲルが生じるため、熱可塑性を失うのに対して、架橋反応が非常に抑制されることから、成形材料に好適に用いることができるものである。
【0011】
かかるスチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体は、熱可塑性成形材料として用いるためには、適切な流動性を保持している。即ち、かかる共重合体は、JIS K7210:99に従って測定されたメルトマスフローレート(以下、MFRと略す)が、0.1/10min〜25g/10minであり、1.0g/10min〜15g/10minであることが好ましい。かかるMFRの値が0.1/10minよりも小さいと成形性が悪く、25g/10minを越えると強度が劣るという不都合が生じて成形材料として好ましくない。
【0012】
スチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体においての重量平均分子量(Mw)は、前記のMFRとの関連から、Mw10万〜50万が好ましく、15万〜35万がより好ましい。
【0013】
スチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体は、トルエン不溶分の含有の比率が高まると、押出成形(シート成形)による、透明性や成形表面の外観不良が発生することから、トルエン不溶分の比率は5質量%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。
【0014】
スチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの質量比において、2級ヒドロキシ基含有アクリレートの質量比が、30%を超えると成形時の熱履歴による架橋反応が増加し、成形材料としての利用が難しくなる。また、逆に2級ヒドロキシ基含有アクリレートの質量比が、小さいと、耐薬品性の効果が薄れることから、スチレン:2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート=95:5〜75:25が好ましく、90:10〜80:20がより好ましい。
【0015】
本発明での共重合体の成分である2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートについては、特に制限はなく、例えば2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレートなどをあげることができる。熱履歴による架橋反応がエステル交換反応によると考えられ、架橋反応によるゲル生成を抑制するためには、ヒドロキシ基が結合する炭素の隣接する環境を、嵩高くするのが好ましい。そのような理由から、副反応を起こさない2級ヒドロキシ基を含有するアルキル鎖を有するものが好ましく、特に、水酸基の特徴(耐薬品性)を低下させないためには、ヒドロキシ基が結合する炭素の隣がメチル基である、特に2−ヒドロキシプロピルアクリレートがより好ましい。
【0016】
本発明で使用されるスチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体は、実質的にスチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとからなるものであり、他のモノマーを併用するとしても、他のモノマーの量をできるだけ少量にすべきである。
【0017】
工業的に製造されている2−ヒドロキシプロピルアクリレートは、原料内に不純物として、1−メチル−2−ヒドロキシエチルアクリレートを20質量%程度混入している場合があるが、その場合でも、得られる樹脂全体でかかる不純物の割合が小さく、物性に大きな影響を与えないため、本発明で使用することができる。
【0018】
前記スチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの重合反応には、公知慣用のスチレン系樹脂の重合方法を使用することが可能である。重合方式には特に限定はないが、塊状重合、懸濁重合、あるいは溶液重合が好ましい。重合開始剤を使用せずに熱重合することも可能であるが、慣用のラジカル重合開始剤を使用するのが好ましい。また、重合に必要な懸濁剤や乳化剤などのような重合助剤は、通常のスチレン系樹脂の製造に使用される慣用のものを使用することも可能である。
【0019】
また、共重合体の粘性を低下させるために、反応系に有機溶剤を添加してもよく、その有機溶剤は、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、シアノベンゼン、ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0020】
用いるラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知慣用の例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール類、
【0021】
クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ジシナモイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシイシプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、
【0022】
N,N’−アゾビスイソブチルニトリル、N,N’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、N,N’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、N,N’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、N,N’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
更に前記共重合体の分子量を制御するために連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、連鎖移動基を1つ有する単官能連鎖移動剤でも連鎖移動剤を複数有する多官能連鎖移動剤を使用できる。単官能連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸エステル類等が挙げられる。
【0024】
多官能連鎖移動剤としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール水酸基をチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したものが挙げられる。
【0025】
本発明の成形材料には、必要により、任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、プラスチックの配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、タルク等の無機充填剤、有機繊維、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の顔料、染料、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の可塑剤、ヒンダードフェノール系やリン系の酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、発泡剤、その他添加剤或いはこれらの混合物等が挙げられる。
【0026】
本発明のスチレンと2級ヒドロキシを有する(メタ)アクリレートの共重合体を含有する成形材料を用いて、シート成形行う場合においても、通常のポリスチレン系樹脂と同様な条件で無色透明なシートを得ることが可能である。
【0027】
前記で得られるシートの二次成形、即ち容器成形においても、通常のポリスチレン系樹脂と同様な条件、容易に成形することが可能である。
【0028】
また、本発明の成形材料を有機溶剤に溶解して作成したキャストフィルムによる耐薬品性評価を行うと、ホモポリスチレンに比べ、高い耐薬品性を示すことも判明した。
尚、本発明の成形材料は、上記以外の用途、即ち射出成形、単軸押出成形、二軸延伸押出成形、インフレーション押出成形、異形押出成形、真空成形、圧空成形、吹込成形などの各種成形方法により各種成形品にして使用することができる。その用途は広範なものに及び、例えばオーディオプレーヤーなどの家庭電気・器具類の部品、複写機、プリンター、ファクシミリ、パソコンなどのOA機器の各種部品、ICキャリアマガジン、食品容器、医療器具類の部品、ブリスターパッケージ、食品の包装容器などにも使用することができる。
【0029】
以上より、本発明の成形材料は、成形時にゲル化を抑制しつつ、ホモポリスチレンに比べ高い耐薬品性を発現することが可能である。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。本発明はもとより、これらの実施例の範囲に限定されるべきものではない。次に用いた測定方法について説明する。
【0031】
(GPC測定法)
高速液体クロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8220GPC)、RI検出器、TSKgel G6000H×1+G5000H×1+G4000H×l+G3000H×l+TSKguard columnH×l-H、溶媒THF、流速1.0ml/分、温度40℃にて測定した。
【0032】
(メルトマスフローレイト測定法)
JIS K7210:99に従って測定した。なお測定条件は、温度200℃。荷重49Nである。
【0033】
(シャルピー衝撃強度)
JIS K7111:96に従って測定した。
【0034】
(ビカット軟化点)
JIS K7206:99に従って測定した。
【0035】
(引張破壊応力、引張破壊呼び歪、引張弾性率)
JIS K7161:94、JIS K7162:94に従って測定した。
【0036】
(熱安定性試験)
上記のメルトマスフローレイト測定で使用するMELT INDEXER(東洋精機製 TYPE C-5059D)を用いる。手順として、測定温度に安定化させ、樹脂を10g入れ、オリフィスからストランド樹脂が出だしたら、樹脂出口を塞いで、滞留状態で1kgの荷重を懸けた。
その後、オリフィス出口を開け、樹脂の状態を確認するために、3〜5kgの荷重でストランドを押出し、目視にて樹脂の安定性(ハードゲル化の有無)を確認した。
【0037】
(トルエン不溶分測定法)
試料をトルエンに1g/100mlの濃度にて溶解後、溶液中の不溶分を12000rpmで30分間、遠心分離した。遠心分離されたトルエン不溶分を乾燥し、乾燥後の質量を求め次式によりトルエン不溶分を求めた。
トルエン不溶分(%)=[乾燥後の不溶分質量/試料の質量]×100
【0038】
(透明性)
JIS K7136に基き、2mm厚のカラープレートを成形し、評価した。
【0039】
(キャストフィルムの作成)
樹脂をトルエンに溶解して、12%溶液を調整し、表面がなめらかなガラス板の上に塗布し、乾燥させ、50±10μmのフィルムを作成した。
【0040】
(シート化方法)
30mm一軸シート押出機、ダイス温度210℃〜220℃で、シート成形を行い、目視によりシートの外観状況を確認した。
【0041】
(耐薬品評価)
上記で得られたフィルムに対し、薬品(灯油、エタノール、大豆油、スピンドン酸、サラダ油、ゴマ油、バスマジックリン、ホワイトキープの8つ)をパスツールピペットで、1適滴下し、経時変化を目視により確認した。(表の○は、変化なし、×は、フィルムの溶解や皺寄せが発生したことを示す)
【0042】
(連続塊状重合装置)
本実施例で得られるスチレン樹脂組成物は、図4に示すように配列された装置により得られる。モノマー及び溶媒などを含む混合溶液を、プランジャーポンプ(1)によって20リットルの攪拌式反応器(2)へ送り、攪拌翼による動的混合下で初期重合した。次いで、この混合溶液をギアポンプ(3)により循環重合ライン(I)へ送る。循環重合ライン(I)は入口から順に内径2.5インチ管状反応器(スイス国ゲブリューター・ズルツァー社製SMX型スタティックミキサー・静的ミキシングエレメント30個内蔵)、(4)、(5)及び(6)と混合溶液を循環させるためのギアポンプ(7)から構成されている。管状反応器(6)とギアポンプ(7)の間には非循環重合ライン(II)には入口から順に上記と同様の管状反応器(8)、(9)及び(10)とギアポンプ(11)が直結されている。
【0043】
(実施例1)
容量20mlのアンプル管に、スチレン(9g)と2-ヒドロキシプロピルアクリレート(1g)、トルエン1g、t−ブチルパーオキシベンゾエート2.5mg、テトラドデシルメルカプタン5.0mg加え、窒素置換、封管した後、132℃、1.5時間、138℃、2時間、150℃、45分間、158℃、45分間、順に静置重合させた。重合率73%、得られた共重合体の質量平均分子量(Mw)は31.9万であった。
(実施例2)
スチレン(8.5g)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(1.5g)にした以外は、実施例1と同様に重合を行い、重合率72%、得られた共重合の質量平均分子量(Mw)は、21.1万であった。
(実施例3)
スチレン(8.0g)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(2.0g)にした以外は、実施例1と同様に重合を行い、重合率71%、得られた共重合の質量平均分子量(Mw)は、22.6万であった。
(実施例4)
タービン翼を備えた5リットルステンレス製反応器にイオン交換水1600mlを仕込み、これに懸濁安定剤として、部分けん化ポリビニルアルコール8%水溶液16g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.032g、炭酸ナトリウム10%水溶液、0.64g、リン酸カルシウム0.32g、を添加し溶解後、スチレン1190gと2-ヒドロキシプロピルアクリレート210g混合溶液、ベンゾイルパーオキサイド5.6g、t−ブチルパーオキシベンゾエート1.4gを順次に仕込んだ。
【0044】
反応器内を窒素ガスで置換後、500rpmの攪拌下で昇温し、85℃で4時間、110℃で2時間、懸濁重合させた。生成した樹脂を洗浄、脱水し、1050gの共重合体が得られた。得られた共重合体をシリンダー温度220℃の押出機で造粒した。得られた共重合体の質量平均分子量(Mw)は、26.6万であった。なお、かかる重合体の熱安定性試験では、滞留温度240℃/滞留時間20分および滞留温度220℃/滞留時間120分でもハードゲル化しなかった。
【0045】
(実施例5)
スチレン85.5部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート4.5部をトルエン10部からなる混合溶液を調整し、更に、有機過酸化物としてモノマーに対し150ppmのt-ブチルパーオキシベンゾエート、連鎖移動剤としてモノマーに対し、300ppmのテトラドデシルメルカプタンを加え、上記装置を用いて下記条件で、連続的に塊状重合させた。
【0046】
混合溶液の供給量:9リットル/時間
攪拌式反応器(2)での反応温度:132℃
循環重合ライン(I)での反応温度:132℃
非循環重合ライン(II)での反応温度:140〜160℃
還流比:R= F1/F2 = 6
【0047】
重合させて得られた混合溶液を熱交換器で220℃まで加熱し、50mmHgの減圧下で揮発性成分を除去した後、ペレット化して共重合体を得た。得られた共重合体の質量平均分子量(Mw)は、21.3万であった。なお、かかる重合体の熱安定性試験では、滞留温度240℃/滞留時間20分および滞留温度220℃/滞留時間120分でもハードゲル化しなかった。
【0048】
(実施例6)
実施例5におけるスチレンと2−ヒドロキシプロピルアクリレートの比率を91:9にした以外は、実施例5と同様にして共重合体を得た。得られた共重合体の質量平均分子量は(Mw)は、22.6万であった。なお、かかる重合体の熱安定性試験では、滞留温度240℃/滞留時間20分および滞留温度220℃/滞留時間120分でもハードゲル化しなかった。
【0049】
(比較例1)
スチレンと2-HEMAの共重合体(スチレン:2-HEMA質量比=95:5)に、200℃、20分熱履歴をかけると、ハードゲル化が生じた。
【0050】
(実施例7)
スチレンと2-HPAの共重合体(スチレン:2-HPA質量比=85:15)では、220℃、2時間熱履歴をかけてもハードゲル化は生じなかった。
【0051】
(比較例2)
スチレンと2-HEMAの共重合体(スチレン:2-HEMA質量比=95:5)において、ダイス温度を210℃でシート化した際、ハードゲルが生じ成形材料に使用することは困難であった。
【0052】
(実施例8)
スチレンと2-HPAの共重合体(スチレン:アクリレート重量比=85:15)を、ダイス温度220℃でシート化した場合、ハードゲル化は生じず、外観の奇麗な透明シートが得られる。
【0053】
スチレンと2-ヒドロキシプロピルアクリレートの共重合体(スチレン:アクリレート重量比=85:15)を、押出成形機内に220℃、2時間滞留させ、熱履歴をかけたが、ゲル化の進行は見られず、外観の奇麗な透明シートが得られた。
【0054】
(比較例3)
実施例1におけるスチレン比率100%にした以外は、実施例2と同様にしてポリスチレンを得た。得られた共重合体の重量平均分子量は(Mw)は、19.0万であった。
【0055】
(比較例4)
実施例5におけるスチレンの比率を100%、テトラドデシルメルカプタンを0ppmにした以外は、実施例2と同様にして共重合体を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は(Mw)は、25.4万であった。
【0056】
(比較例5)
スチレンと2−HEMAの比率を85.5:4.5、テトラドデシルメルカプタンを500ppmにした以外は、実施例5と同様にして共重合体を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は(Mw)は、17.9万であった。なお、かかる重合体の熱安定性試験では、滞留温度200℃/滞留時間10分および滞留温度220℃/滞留時間10分ではハードゲル化しなかったが、滞留温度220℃/滞留時間20分および滞留温度200℃/滞留時間30分ではハードゲル化した。
【0057】
【表1】
表1.連続塊状重合で得られた実施例5、6、比較例4の物性値
【0058】
【表2】
表2.実施例1〜3、比較例3〜4のキャストフィルムによる耐薬品性評価
(注)○:劣化せず(カッコ内時間は、保持時間)、×:劣化(フィルムに皺、破れ、溶解
など、カッコ内時間は、劣化時間)
【0059】
(実施例4〜6、比較例4〜5のシート表面評価)
実施例4〜6及び比較例4〜5のシート表面を目視により評価し、その結果を表3に示す。表面がクリアー:○、若干クリアー性に欠ける:△、クリアー性に欠ける、またはゲル化:×
【0060】
【表3】
【0061】
表1で示したとおり、スチレンと2級ヒドロキシ基含有の(メタ)アクリレートからなる共重合体の物性及び透明性は、ホモポリスチレンとほぼ同等であり、また、表2で示したとおり、ホモポリスチレンに比べ、高い耐薬品性を示した。また、グラフ1、シート表面の結果(表3)からわかるとおり、スチレンと1級ヒドロキシ基含有の(メタ)アクリレートに比べ、高い熱安定性、ハードゲル化の抑制を有することが明らかである。
【0062】
(比較例6)
質量比 スチレン/n−ブチルアクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−ヒドロキシプロピルアクリレート/2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート/アクリル酸=120/180/120/108/66/6からなる樹脂を架橋剤(イソシアネート類)で架橋した重合物は、熱可塑性を示さなかった。
【0063】
【発明の効果】
本発明は、流動性に優れ、しかも透明性、耐薬品性にすぐれた熱可塑性成形材料および材料からなるシート、容器などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 静的ミキシングエレメントを有する管状反応器を組み込んだ連続塊状重合ラインの1例を示す工程図である。
Claims (6)
- JIS K7210:99に従い、温度200℃、荷重49Nで測定したメルトマスフローレートが0.1g/10min〜25g/10minである、スチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの質量比が、95:5〜75:25の共重合体を含んでなる熱可塑性成形材料。
- 前記スチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体のトルエン不溶分が5質量%以下である請求項1に記載の熱可塑性成形材料。
- 前記2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートが2−ヒドロキシプロピルアクリレートである請求項1又は2に記載の熱可塑性成形材料。
- スチレンと2級ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体が、質量平均分子量10万〜50万である請求項1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
- 請求項1〜4のいずれか1つに記載の熱可塑性成形材料から成るシート。
- 請求項1〜4のいずれか1つに記載の熱可塑性成形材料から成る容器。
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