JP4468595B2 - Cft構造柱 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、鋼管の内部にコンクリートを充填したCFT(Concrete Filled Steel Tube:コンクリート充填鋼管)構造を、柱に適用したCFT構造柱に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は従来のCFT構造柱の一例を示す縦断面図である。
【0003】
図7において、1はCFT構造柱を示し、図示を省略した基礎の上に立てられた鋼管本体2と、この鋼管本体2の内部に充填されたコンクリート4とによって構成されている。
なお、鋼管本体2の中には、後述する梁11を構成するH形鋼の上下のフランジに対応する位置に、内ダイヤフラム3が、例えば溶接によって接合されている。
【0004】
11は梁を示し、対向する鋼管本体2に所定の手段、例えば溶接によって所定の階高Hに接合された2つの端部H形鋼12と、この2つの端部H形鋼12の間に接合された中央部H形鋼13とで構成されている。
そして、端部H形鋼12と中央部H形鋼13とは、ウェブ同士および上下のフランジ同士が、継ぎ手板14、HTB(High Tension Bolt:高力ボルト)15を用いて接合されている。
Ghは梁成(梁高さ)、Hoは上下階の梁11の間に形成された内法柱長さを示す。
【0005】
図7に示すCFT構造柱1は、鋼管本体2が型枠代わりになることによって型枠が不要になるとともに、内部に配置する鉄筋が不要になるので、施工費用が安くなるとともに、工期を短縮することができる。
また、鋼管本体2が、コンクリート4の横断面形状の変形を拘束する効果(コンファインド効果)を発揮する拘束部材として機能するので、コンクリート4の見かけ上の強度が増大し、柱材として大きな軸方向強度および曲げ強度が得られることにより、柱径を小さくすることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のCFT構造柱1は、鋼管本体2が軸方向に降伏した後にコンファインド効果が得られるため、最終的な最大耐力としては非常に高いものの、その時の軸方向の変形が大きくなる。
したがって、それ以上の荷重に対して充分に耐え得る性能を有している場合でも、実用上は軸方向歪み度の2%程度を上限とし、その時点を最大耐力と見なし、設計に反映する必要がある。
【0007】
また、地震時の水平力が建物に作用する場合、軸歪み度を制限する観点に立つと、中程度の地震時で鋼管本体2が降伏し、コンファインド効果を期待することは避けるべきである。
このためには、コンファインド効果を期待しない時点での軸方向耐力に対してある安全率を設定し、軸力制限を設けて各部材の設計を行う必要がある。
したがって、軸力制限は、コンファインド効果が非常に大きい設計断面の場合、かなり安全側の評価を与える必要があるので、不経済的になる。
【0008】
この発明は、上記したような不都合を解消するためになされたもので、鋼管本体の外側にリング補強部材を嵌め込み、このリング補強部材にコンファインド効果を担わせることにより、安全性の向上が図れ、経済的に施工することのできるCFT構造柱を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1にかかる発明は、内部にコンクリートが充填され、所定の階高で梁が接合された鋼管本体と、上下階の前記梁の間に形成された内法柱長さの範囲で、前記鋼管本体の外側に嵌め込み装着されたリング補強部材とを備え、前記リング補強部材を、所定の縦方向長さを有した鋼製部材で構成し、前記リング補強部材の内面と、前記鋼管本体の外面との間に、所定の装着クリアランスを設け、前記所定の装着クリアランスは、前記鋼管本体が弾性範囲にある状態からコンファインド効果を前記リング補強部材に発揮させる時期により定められる、ことを特徴とするCFT構造柱である。
【0010】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のCFT構造柱において、
前記リング補強部材を、鋼管で構成した、
ことを特徴とするCFT構造柱である。
【0012】
請求項3にかかる発明は、請求項1または請求項2に記載のCFT構造柱において、前記リング補強部材を、前記内法柱長さの範囲で、ほぼ全域に亘る縦方向長さにした、ことを特徴とするCFT構造柱である。
【0013】
請求項4にかかる発明は、請求項1または請求項2に記載のCFT構造柱において、前記リング補強部材を、前記内法柱長さの範囲に、上下階の前記梁に近接させて柱頭部および柱脚部に2つ装着した、ことを特徴とするCFT構造柱である。
【0014】
請求項5にかかる発明は、請求項1または請求項2に記載のCFT構造柱において、前記リング補強部材を、前記内法柱長さの範囲に、離隔させて3つ以上装着した、ことを特徴とするCFT構造柱である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1はこの発明の第1実施形態であるCFT構造柱の正面図、図2は図1に示したCFT構造柱の縦断面図、図3は図1に示したCFT構造柱の拡大横断面図、図4は柱軸力、曲げモーメントなどの説明図である。
【0016】
この発明の第1実施形態であるCFT構造柱1Aは、内部にコンクリート4が充填され、所定の階高Hで梁11が接合された鋼管本体2と、上下階の梁11の間に形成された内法柱長さHoの範囲で、鋼管本体2の外側に嵌め込み装着されたリング補強部材5とで構成されている。
【0017】
鋼管本体2は、図3に示すように、横断面形状が円形をした円形鋼管であり、梁11を接合する位置の内側に、内ダイヤフラム3が接合されている。
この鋼管本体2の横断面形状は、円形の他、例えば楕円形、正方形、長方形、五角形、六角形などの他の形状であってもよい。
【0018】
リング補強部材5は、所定の縦方向長さ、例えば上下階の梁11の間の長さ、すなわち内法柱長さHoのほぼ全域に亘る縦方向長さL1を有した鋼製部材、例えば鋼材、鋼管で構成され、鋼管本体2の横断面形状の変形を拘束する拘束部材として機能するものである。
そして、リング補強部材5は、横断面形状の内面(内形)が鋼管本体2の横断面形状の外面(外形)と相似形に形成されている。
【0019】
さらに、リング補強部材5の内面と、鋼管本体2の外面との間に、図3に示すように、所定の装着クリアランスCL1が設けられている。
この装着クリアランスCL1は、鉄骨製作上のクリアランス、鋼管本体2とリング補強部材5とにおける規格品の断面形状、鋼管本体2とリング補強部材5とのコンファインド効果の相乗効果などを考慮して設定する。
【0020】
BBはコンクリート4の外径(鋼管本体2の内径)、Biは鋼管本体2の外径、Tiは鋼管本体2の肉厚、Boはリング補強部材5の外径、Toはリング補強部材5の肉厚、S1はリング補強部材5と梁11との隙間(例えば20mm)、Nは柱軸力、Ht1は鋼管本体2の円周方向引張力、Ht2はリング補強部材5の円周方向引張力、Mは曲げモーメントを示す。
【0021】
このように、鋼管本体2の外側にリング補強部材5を嵌め込み装着することにより、図4に示すように、地震時の柱の曲げモーメントMと、柱軸力(圧縮力、引張力)Nとに対して抵抗する能力を鋼管本体2に担わせ、鋼管本体2の横断面形状の変形を拘束するコンファインド効果を、拘束部材として機能するリング補強部材5に担わせることができる。
そして、リング補強部材5に、鋼管本体2が弾性範囲にある状態(降伏前)からコンファインド効果を発揮させることができる。
【0022】
このように、鋼管本体2が弾性範囲にある状態(降伏前)からコンファインド効果をリング補強部材5に発揮させる時期は、装着クリアランスCL1によって自由に設計することができる。
なお、装着クリアランスCL1をゼロにすれば、鋼管本体2とリング補強部材5とに、同時にコンファインド効果を発揮させることができる。
【0023】
したがって、鋼管本体2によってコンファインド効果が得られるとともに、リング補強部材5によってもコンファインド効果が得られるので、安全性の向上を図ることができる。
また、鋼管本体2とリング補強部材5との厚さの合計は、柱材の作用荷重の種類、大きさなどを考慮して設計できることにより、鋼管本体2の外側にリング補強部材5を嵌め込み装着した場合、鋼管本体2のみの場合の肉厚よりも薄くすることができるので、所期の目的を達成する施工を経済的に実施することができる。
【0024】
そして、リング補強部材5と梁11との間に隙間S1を設けたので、柱軸力Nがリング補強部材5に直接作用しなくなる。
さらに、鋼管本体2とリング補強部材5との間に装着クリアランスCL1を設けた場合、鋼管本体2がコンファインド効果を発現して膨らんだ後、リング補強部材5によるコンファインド効果が発現するので、二重の安全性の向上の役割を果たすように設計することができる。
そして、リング補強部材5を鋼管で構成したので、リング補強部材5を簡単かつ安価に得ることができる。
【0025】
図5はこの発明の第2実施形態であるCFT構造柱の縦断面図である。
【0026】
この発明の第2実施形態であるCFT構造柱1Bは、内部にコンクリート4が充填され、所定の階高Hで梁11が接合された鋼管本体2と、上下階の梁11の間に形成された内法柱長さHoの範囲に、鋼管本体2の外側に嵌め込み装着された2つのリング補強部材6とで構成されている。
【0027】
リング補強部材6は、内法柱長さHoの範囲に、地震時の曲げモーメントM(図4参照)が大きくなる柱頭部および柱脚部の位置に上下階の梁11に近接させて鋼管本体2の外側に嵌め込み装着され、縦方向長さL2を有した鋼製部材、例えば鋼材、鋼管で構成され、鋼管本体2の横断面形状の変形を拘束する拘束部材として機能するものである。
そして、リング補強部材6の横断面形状の内面は、鋼管本体2の横断面形状の外面と相似形に形成されている。
さらに、鋼管本体2とリング補強部材6との間に、図3に示すように、装着クリアランスCL1が設けられている。
【0028】
この第2実施形態のCFT構造柱1Bによれば、第1実施形態のCFT構造柱1Aと同様な効果を得ることができるとともに、少ないリング補強部材6を効果的な位置に配置することにより、所期の目的を達成する施工を一層経済的に実施することができる。
なお、リング補強部材6の縦方向長さL2は、柱材の作用荷重の種類、大きさなどを考慮して決定する。
【0029】
図6はこの発明の第3実施形態であるCFT構造柱の縦断面図である。
【0030】
この発明の第3実施形態であるCFT構造柱1Cは、内部にコンクリート4が充填され、所定の階高Hで梁11が接合された鋼管本体2と、上下階の梁11の間に形成された内法柱長さHoの範囲に、鋼管本体2の外側に嵌め込み装着された6つのリング補強部材7とで構成されている。
【0031】
リング補強部材7は、内法柱長さHoの範囲に、離隔させて鋼管本体2の外側に嵌め込み装着され、縦方向長さL3を有した鋼製部材、例えば鋼材、鋼管で構成され、鋼管本体2の横断面形状の変形を拘束する拘束部材として機能するものである。
そして、リング補強部材7の横断面形状の内面は、鋼管本体2の横断面形状の外面と相似形に形成されている。
さらに、鋼管本体2とリング補強部材7との間に、図3に示すように、装着クリアランスCL1が設けられている。
【0032】
この第3実施形態のCFT構造柱1Cによれば、第1および第2実施形態のCFT構造柱1A,1Bと同様な効果を得ることができるとともに、少ないリング補強部材7をより効果的な位置に配置することにより、所期の目的を達成する施工をより一層経済的に実施することができる。
なお、リング補強部材7の縦方向長さL3は、柱材の作用荷重の種類、大きさなどを考慮して決定する。
この第3実施形態の場合、リング補強部材7を3つ以上としても、同様な効果を得ることができる。
【0033】
上記した実施形態において、リング補強部材5,6,7と梁11との間に隙間S1を設けたり、リング補強部材6,7同士の間隔を確保したり、鋼管本体2とリング補強部材5,6,7との間に装着クリアランスCL1を設けるために、介在物を挿入してもよい。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼管本体の外側にリング補強部材を嵌め込み装着することにより、地震時の柱の曲げモーメントと、柱軸力とに対して抵抗する能力と、コンクリートの横断面形状の変形を拘束するコンファインド効果とを鋼管本体に担わせ、鋼管本体の横断面形状の変形を拘束するコンファインド効果を、拘束部材として機能する補強部材に担わせることができる。
【0035】
したがって、鋼管本体と、リング補強部材とによってそれぞれ二重構造のコンファインド効果を得ることができるので、安全性の向上を図ることができる。
また、鋼管本体とリング補強部材との厚さの合計は、柱材の作用荷重の種類、大きさなどを考慮して設計できることにより、鋼管本体のみの場合よりも薄くすることができるので、所期の目的を達成する施工を経済的に実施することができる。
【0036】
さらに、リング補強部材を鋼管で構成したので、リング補強部材を簡単かつ安価に得ることができる。特に、鋼管本体とリング補強部材との間に装着クリアランスを設けたので、鋼管本体がコンファインド効果が発現して膨らんだ後、リング補強部材によるコンファインド効果が発現することにより、二重に安全性の向上を図ることができる。そして、リング補強部材のコンファインド効果の発現時期は、装着クリアランスを調整することにより、自由に設計することができる。
【0037】
また、リング補強部材を、内法柱長さの範囲でほぼ全域に亘る縦方向長さにすれば、内法柱長さの全域で所期の目的を達成することができ、リング補強部材を、内法柱長さの範囲に、上下階の梁に近接させて柱頭部および柱脚部に2つ装着すれば、少ないリング補強部材を効果的に配置することにより、所期の目的を達成する施工を一層経済的に実施することができ、リング補強部材を、内法柱長さの範囲に、離隔させて3つ以上装着すれば、より少ないリング補強部材を効果的に配置することにより、所期の目的を達成する施工をより一層経済的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態であるCFT構造柱の正面図である。
【図2】図1に示したCFT構造柱の縦断面図である。
【図3】図1に示したCFT構造柱の拡大横断面図である。
【図4】柱軸力、曲げモーメントなどの説明図である。
【図5】この発明の第2実施形態であるCFT構造柱の縦断面図である。
【図6】この発明の第3実施形態であるCFT構造柱の縦断面図である。
【図7】従来のCFT構造柱の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1,1A〜1C FT構造柱
2 鋼管本体
3 内ダイヤフラム
4 コンクリート
5〜7 リング補強部材
11 梁
L1〜L3 縦方向長さ
BB,Bi,Bo 外径
Ti,To 肉厚
S1 間隙
CL1 装着クリアランス
Gh 梁成
H 階高
Ho 内法柱長さ
N 柱軸力
Ht1,Ht2 円周方向引張力
M 曲げモーメント
Claims (5)
- 内部にコンクリートが充填され、所定の階高で梁が接合された鋼管本体と、上下階の前記梁の間に形成された内法柱長さの範囲で、前記鋼管本体の外側に嵌め込み装着されたリング補強部材とを備え、
前記リング補強部材を、所定の縦方向長さを有した鋼製部材で構成し、
前記リング補強部材の内面と、前記鋼管本体の外面との間に、所定の装着クリアランスを設け、
前記所定の装着クリアランスは、前記鋼管本体が弾性範囲にある状態からコンファインド効果を前記リング補強部材に発揮させる時期により定められる、
ことを特徴とするCFT構造柱。 - 請求項1に記載のCFT構造柱において、
前記リング補強部材を、鋼管で構成した、
ことを特徴とするCFT構造柱。 - 請求項1または請求項2に記載のCFT構造柱において、
前記リング補強部材は、前記内法柱長さの範囲で、ほぼ全域に亘る縦方向長さを有する、
ことを特徴とするCFT構造柱。 - 請求項1または請求項2に記載のCFT構造柱において、
前記リング補強部材は、前記内法柱長さの範囲に、上下階の前記梁に近接して柱頭部および柱脚部に2つ装着されている、
ことを特徴とするCFT構造柱。 - 請求項1または請求項2に記載のCFT構造柱において、
前記リング補強部材は、前記内法柱長さの範囲に、離隔して3つ以上装着されている、 ことを特徴とするCFT構造柱。
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