JP4465908B2 - 缶体の検査装置及び検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、缶胴を一方の型に装着させ、この缶胴の外周面に印刷された模様に他方の型を位置合わせし、前記一方の型と前記他方の型とで前記模様の少なくとも一部に凹凸加工を施して缶体を成形する際に、前記模様と加工された凹凸とが位置合わせされているかどうかを検査する缶体の検査装置及び検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デザインの多様性,缶胴肉厚の薄肉化にともなう缶胴強度向上などの理由から、缶胴に凹部及び/又は凸部の加工を施した缶体が開発され商品化されつつある。
【0003】
図8に缶体の一例を斜視図で示す。図8に示す缶体10は、缶胴11と缶蓋12及び缶底13からなる3ピース缶であり、缶胴11は金属製の薄板からなり、両端を溶接部14で溶接することによって円筒状としてある。
【0004】
この缶胴11の外周面の上部には、「BEER」なる模様(文字)11aが印刷してあるとともに、中央部には凹凸加工を施す対象となる「CAN」なる模様(文字)15が大きく印刷してある。
これら模様11a,15は、缶胴11の外周表面に印刷した後、その上をポリエステルフィルム又は有機被膜で覆ってあるが、ポリエステルフィルム又は有機被膜の裏面(缶胴外周表面と接する側)に印刷しておくこともできる。
【0005】
缶胴11には、模様15と位置合せした状態で、「CAN」なる凹部16が成形加工される。模様15と凹部16を一致させて成形する態様としては、模様全体と凹部全体を一致させる態様だけでなく、模様15と凹部16の一部を少なくとも一致させる態様、たとえば、模様「CAN」の「A」のみに凹部の加工を施したり、凹部「CAN」の「A」のみに印刷を施したりした態様もある。
【0006】
このように、缶体に印刷してある模様,文字等(本明細書では、これらを総称して模様と記す)に合せて凹部及び/又は凸部の加工を施した缶体は、意匠性が高く、近年急速に普及しつつある。
【0007】
缶胴に凹部及び/又は凸部の加工を施す先行技術として国際公開公報WO98/03279の「TOOLING AND METHOD THE EMBOSSING OF A CONTAINER AND THE RESULTING CONTAINER」あるいは、同WO97/21505の「METHOD OF ORIENTING CANS」が公知になっている。
【0008】
これらの先行技術では、缶胴の模様部分に凹部及び/又は凸部の加工を施す成形手段を位置合せするため、図8の缶体10に示すように、缶胴11に模様部分の位置を示す位置決めマーク17を形成し、この位置決めマーク17をセンサで読み取って、成形手段と対応した位置に模様15がくるように缶胴11の回転制御を行っている。
また、缶体の製造コストを削減するために、高速で凹凸加工を施すロータリー方式の装置及び方法が、例えば、国際公開公報WO98/03279、WO98/03280で開示されている。
【0009】
図9は、ロータリー方式の装置及び方法で缶胴11に凹凸加工を施す手順を説明する図である。
図9中▲1▼で示す位置から缶胴11が導入される。缶体の成形装置に導入された缶胴11は、各ポケットに配置されたセンサ151等によって、▲1▼及び▲2▼のターレット位置において缶胴11に形成してある位置決めマーク17の検出が行なわれる。
【0010】
センサ151等が缶胴11の位置決めマーク17を検出し、模様15が所定の位置(成形型の凹凸部と一致する位置)を向くよう缶胴11を回転させる。この後、その位置を保持したままで、缶胴11は図9中のターレット位置▲3▼で示す位置まで送られ、インナローラ101が挿入される。
【0011】
また、ターレット位置▲3▼から▲6▼の範囲よりやや広い範囲にわたって、カム部材140がインナローラ101の外方に配置してある。このカム部材140は、図示しないカムローラで缶胴11の外周を押すことで、ターレット位置▲4▼から▲5▼の範囲でアウタローラ102と接する側の缶胴11の内壁をインナローラ101に押し付ける。
【0012】
ターレット位置▲4▼から▲8▼の範囲で、インナローラ101及びアウタローラ102を回転させながら缶胴11に凹凸加工が施される。缶胴11が、ターレット位置▲9▼の位置まで送られてくると、カム部材140による図示しないカムローラの押圧が解除され、インナローラ101が缶胴11から抜け出る。
このようにして、缶胴11の模様15に凹部16の加工が施される。検査を終了した缶胴11は、排出位置Aで缶体の成形装置の外に搬出される。
【0013】
しかしながら、位置決めマーク17によって成形前に缶体10の方向を調整しても、成形中にアウタローラ102と缶胴11との間で滑りを生じると、模様15と凹部16とがずれて不良品が発生する。
一方、成形後に模様15と凹部16との検査を行うには、各ポットに設けたセンサ151で位置決めマーク17が所定の方向を向いているか否かを検出すればよいが、アウタローラ102が缶胴11から離れる際に缶胴11とアウタローラ102との間で滑りが生じて缶胴11が回転することがあり、このような場合、良品であるにもかかわらず不良品であると誤判断されるおそれがあるという問題がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題にかんがみてなされたもので、模様に位置合わせして凹凸加工が施された缶体において、前記模様と凹凸加工とが一致しているかどうかを確実に検査して品質を常に一定に維持することができるとともに、このような検査を、工程数を増すことなく高速で行うことによって、凹凸加工の高速化にも十分に対応することができる缶体の検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、缶胴を装着する一方の型と、この缶胴の外周面に印刷された模様に位置合わせされる他方の型とで前記缶胴の前記模様の少なくとも一部に凹凸加工を施す缶体の成形装置に設けられ、前記模様と加工された凹凸とが位置合わせされているかどうかを検査する缶体の検査装置において、缶胴の所定位置に付された検査用マーク及び前記他方の型の所定位置に付された基準マークと、所定位置に位置決めされ、凹凸加工中の缶体を撮影する第一のカメラ及び凹凸加工中の前記他方の型を撮影する第二のカメラと、前記凹凸加工中に、検査タイミングを検出する検査タイミング検出手段と、前記第一のカメラ及び第二のカメラによって撮影された画像を処理する画像処理手段と、前記検査タイミング検出手段が前記検査タイミングを検出したときに、前記第一のカメラの撮影画像の中から前記検査用マークを探索するとともに前記第二のカメラの撮影画像の中から前記基準マークを探索し、前記検査用マーク及び基準マークが発見されたときに、前記検査用マークの位置と前記基準マークの位置とから両者の位置関係を求め、この位置関係が予め設定された範囲内にあるときに、前記模様と加工された凹凸とが位置合わせされていると判断する判断手段とを有する構成としてある。
【0016】
この構成によれば、検査用マークの位置座標と他方の型との相対的な位置関係によって缶胴の位置ずれを判断することができる。このようにして、凹凸加工中の缶胴のずれを検出することで、凹凸加工と模様との位置ずれを検出することができる。また、検査のための専用の工程を設ける必要もない。
【0017】
また、二つのカメラで缶胴及び他方の型のマークを別々に撮影するようにしているので、マーク情報を各カメラで確実に読みとることができ、誤動作のない信頼性の高い検査装置を得ることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、前記判断手段は、少なくとも前記検査用マークについて、検査用マークを含む部分の画像情報が、予め設定された基準画像情報と一致するかどうかを判断するように構成してある。
この構成によれば、例えば、検査用マーク近傍の模様やバーコード等を含む画像情報を、予め設定された基準画像情報と比較することで、検査用マークと他のマークや模様等とを確実に識別することが可能になる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記検査用マークの位置を求めるための基準位置を前記第一のカメラの撮影画像の所定位置に予め設定し、前記基準マークの位置を求めるための基準位置を前記第二のカメラの撮影画像の所定位置に予め設定した構成としてある。
このように、検査用マーク及び基準マークの座標位置は、画面上に予め設定された基準位置に基づいて求めることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記第一のカメラの撮影画像内又は第二のカメラの撮影画像内に予め選択領域を設けておき、前記検査タイミングが検出されたときに前記選択領域に前記検査用マーク又は基準マークが存在するかどうかを判断し、前記検査用マーク又は前記基準マークが存在するときに、検査を行うように構成してある。
このように構成すれば、選択領域を可能な限り狭く設定することで、検査用マーク及び基準マークを探索するための領域を狭めることができ、処理に要する時間を短縮することができるほか、他のマーク等との誤認防止にも有効である。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記第一のカメラの撮影画像及び第二のカメラの撮影画像を並べて表示するディスプレイをさらに有し、このディスプレイの表示画面上で前記選択領域及び前記基準位置の設定を行うように構成してある。
このように構成することで、各マークごとに選択領域の設定及び基準位置の設定を同一の画面で同時に行うことが可能になる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、缶胴を一方の型に装着し、この缶胴の外周面に印刷された模様に他方の型を位置合わせし、前記一方の型と前記他方の型とで前記模様の少なくとも一部に凹凸加工を施したときに、前記模様と加工された凹凸とが位置合わせされているかどうかを検査する缶体の検査方法であって、予め、缶胴に検査用の検査用マークを付しておくとともに前記他方の型には基準マークを付しておき、所定の検査タイミングで、第一のカメラで前記缶胴を撮影するとともに第二のカメラで前記他方の型を撮影し、前記第一のカメラ及び第二のカメラで撮影された画像の中から、前記検査用マーク及び前記基準マークを探索し、探索した前記検査用マークの位置及び前記基準マークの位置から前記検査用マークと前記基準マークの位置関係を求め、この位置関係が予め設定された所定の範囲内であるときに、前記模様と加工された凹凸とが位置合わせされていると判断する検査方法である。
【0023】
この方法によれば、検査用マークの座標位置と他方の型との相対的な位置関係によって、凹凸加工と模様との位置ずれを検出することができ、検査のための専用の工程を設ける必要なく、高速で缶体の検査を行うことが可能になる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、前記第一のカメラの撮影画像及び第二のカメラの撮影画像の中に選択領域を設定し、この選択領域内に前記検査用マーク及び基準マークが存在するかどうかに基づいて検査を行う検査方法である。
この方法によれば、選択領域を可能な限り狭く設定することで、検査用マーク及び基準マークを探索するための領域を狭めることができ、処理に要する時間を短縮することができるほか、他のマーク等との誤認防止にも有効である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面にしたがって詳細に説明する。
まず、本発明の検査装置及び検査方法が適用される缶体の成形装置の主要部の構成を、図6にしたがって簡単に説明する。
【0026】
左右両端をフレーム111及び112によって回転自在に支承された回転軸110の一端側(図6では左端側)には、回転軸110と同心状に固定歯車114がフレーム111に取り付けられている。また、回転軸110には、回転軸110と一体に回転する回転部材115が同心状に取り付けられ、その周縁部には、インナローラ軸101aとアウタローラ軸102aが回転可能かつ対をなすように複数組(この実施形態では均等間隔に16組)取り付けられている。凹凸加工を行うインナローラ101とアウタローラ102は、このインナローラ軸101aとアウタローラ軸102aの一端側にそれぞれ装着される。
インナローラ軸101aの他端には、固定歯車114と噛合するインナローラ歯車116が取り付けられている。インナローラ軸101aのインナローラ歯車116とインナローラ101との間には、中間歯車117が取り付けられ、アウタローラ軸102aの他端に取り付けられたアウタローラ歯車118と噛合している。
【0027】
これにより、図示しない駆動装置の駆動によって、回転軸110の他端(図6の右端)に取り付けられた歯車113を介して回転軸110が回転すると、対をなすインナローラ軸101aとアウタローラ軸102aは、常に一定の関係の維持したままそれぞれ逆方向に同期回転する。
第一回転部材115には、第一回転部材115と一体に回転する第二回転部材119が取り付けられ、この第二回転部材119の周面の、インナローラ101の右側に位置する箇所には、インナーローラ101に缶胴を供給するための缶胴保持手段120が設けられている。
【0028】
この缶胴保持手段120は、缶胴11を回転自在な缶底チャック126で保持した状態でスライドガイド121に沿ってスライド体122がスライドし、ステッピングモータ129の駆動によって缶胴の回転方向の位置決めを行いながら、缶胴をインナーローラ101に受け渡すものである。
インナローラ101の外側にはカム部材140が配置され、このカム部材140によって揺動体125が図6の左側に移動し、スライドガイド121に沿ってスライド体122をスライドさせる。
なお、これら構成については本願出願人による特開平9−192763号と同じであるので、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0029】
本発明の検査装置を備えた缶体の成形装置における凹凸加工の手順を図7に示すが、この実施形態における凹凸加工の手順において図9に示した従来例と異なるところは、缶体10に、位置決めマーク17の他に停止用のマークを設け、各ポットのそれぞれに二つのセンサ151,152,151′,152′(他のポットのものは図示を省略する)を設け、センサ151,151′・・・で缶胴11の停止用マークを検出して回転を停止させ、センサ152,152′・・・で位置決めマーク17を検出して模様が所定の位置を向いているか否かを判定するようにしている点と、模様15と凹部16の位置が一致しているか否かの検査を、凹凸加工の途中、すなわち、図7のターレット位置▲6▼で行うようにしている点である。
その他については、図9の加工手順と変わりがないので、従来例で説明した凹凸加工の手順と同一の部位及び同一の部材には図9と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0030】
本発明の特徴の一つは、このように、凹凸加工の途中に凹凸加工と模様とが一致しているか否かの検査を行うようにすることで、検査のための専用の工程を設ける必要なく、缶体の品質の安定化と凹凸加工の高速化を図った点にある。
【0031】
以下、図1〜図3にしたがって本発明の缶体の検査装置を説明する。
図1は缶体の検査装置の構成を説明するブロック図、図2は凹凸加工中の缶胴とアウタローラの位置関係を示す斜視図、図3はカメラで撮影された画像を示す図である。
図示するように、缶胴11には、缶底13の近傍に付されたバーコード11bの近くに、予め検査用の検査用マーク18が付されている。このように、バーコード11bの近くに付することで、外観上、検査用マーク18を目立たなくすることができる。
【0032】
検査装置1は、検査用マーク18が付された缶胴11の底部13側の部分を撮影する第一のカメラ3aと、基準マーク102aが付されたアウタローラ102の部分を撮影する第二のカメラ3bと、第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bによって撮影された画像を処理する画像処理部4と、アウタローラ102の回転と同期して回転するカム等によってスイッチングされる検査タイミング検出手段としての図示しないスイッチと、前記スイッチから検出信号が入力されたときに画像処理部4に対して検査タイミング信号を出力する検査タイミング信号出力部2と、検査タイミング信号が出力されたときに画像処理部4から得られた結果を演算処理し、この結果に基づいて、加工の結果が良品か不良品かを判断する判断部7と、予め設定された各種設定内容を記憶するメモリ8とを有する。
【0033】
図1に示すように、画像処理部4の処理結果及び判断部7の判断結果を表示するためのディスプレイ6を設けるとよい。また、メモリ8への入力等は、キーボードなどの入力部5の操作によって行うことができる。
前記スイッチは、アウタローラ102の回転と同期してタイミング信号を検出することができるものであれば、光電スイッチ等の電気的スイッチのほか、マイクロスイッチ等の機械的なスイッチであってもよい。
【0034】
第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bは、凹凸加工の途中、すなわち、図7のターレット位置▲6▼に配置される。なお、凹凸加工の加工位置と缶体10の模様15(図6参照)の位置ずれを検査することができるのであれば、カメラ3は図7のターレット位置▲4▼〜▲8▼又は▲9▼,排出位置Aのいずれに配置してもよい。図7のターレット位置▲5▼〜▲7▼は、アウタローラ102とインナーローラ101との間で缶胴11が強固に挟み付けられていて、インナーローラ101に対する缶体10の移動及び回転が拘束されているので、この間に検査用の第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bを配置することで、凹凸加工による加工位置と缶体11の模様15の位置ずれを正確に検査することができるという点で好ましい。
【0035】
また、第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bは、撮影した画像を画像処理部4で処理することにより、撮影画像の中から特定の領域を抽出したりマーク18,102aを認識したりすることができるものであればよい。特に、撮影した画像を二値データ(デジタルデータ)で画像処理部4に送信することができるCCDカメラ等を用いるのがよい。これら第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bは、凹凸加工中の振動などによって容易に撮影位置が変化しないように、缶体の成形装置等に位置決めしてしっかりと固定する。
また、第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bの撮影画像の中から検査用マーク18及び基準マーク102bを識別しやすくするために、第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bの撮影部位を照らすライト等の照明器具を、第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bの近傍に設けるとよい。
【0036】
画像処理部4は、第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bから送信された画像データを処理する。検査タイミング信号出力部2から検査タイミングの入力があったときは、図3に示すような検査タイミング信号が入力されたときの画像、すなわち、缶胴11の検査用マーク18を撮影した第一の画像30及びアウタローラ102の基準マーク102aを撮影した第二の画像40をディスプレイ6上に並べて表示するとともに、二値データで判断部7に送る。
【0037】
メモリ8には、ディスプレイ6に表示されている第一の画像30及び第二の画像40のどの位置に選択領域31,41を設定するかが、キーボード5によって予め入力されて記憶されている。選択領域31,41の位置及び後述する検査用マーク31,基準マーク102bの位置は、予めディスプレイ6の画面上に設定された第一の基準位置32及び第二の基準位置42を原点とする位置座標や距離で決定することができる。第一の基準位置32及び第二の基準位置42の設定は、ディスプレイ6の画面を見ながらキーボード入力によって行うことができる。
【0038】
第一の基準位置32は、ディスプレイ6に表示された第一の画像30における検査用マーク18の位置を決定するための基準となるものである。第一の基準位置32は、ディスプレイ6の画面上の任意の位置に設定することができる。この実施形態では、第一の基準位置32は、図3に示すように、第一の画像30の左隅に設定されている。
また、第二の基準位置42は、ディスプレイ6に表示された第二の画像40における基準マーク102aの位置を決定するための基準となるものである。第二の基準位置42も、第一の基準位置32と同様に、ディスプレイ6の画面上の任意の位置に設定することができる。この実施形態で第二の基準位置42は、第二の画像40の右隅に設定されている。
【0039】
前記した第一の基準位置32及び第二の基準位置42を原点として、メモリ8に予め記憶された記憶内容にしたがって、第一の画像30及び第二の画像40にそれぞれ選択領域31,41が設定される。画像処理部4は、選択領域31,41内の画像情報を作成する。この画像情報は、選択領域31,41内の画素の白黒(明暗)の配列に基づいて作成することができる。
【0040】
選択領域31,41の大きさは、第一の画像30及び第二の画像40の全体であってもよいが、第一の画像30及び第二の画像40の一部を占め、かつ、マーク18,102aを含むように一定の大きさとしてもよい。マーク18,102aと同じ大きさであってもよい。
この実施形態のように、撮影された画像30,40の中から比較的狭い範囲の選択領域31,41を予め設定しておくことで、所定形状の検査用マーク18及び基準マーク102aを画像30,40の全体を走査して探索する必要が無くなる。すなわち、選択領域31内に検査用マーク18の存在が認められないとき、又は、選択領域41内に基準マーク102aの存在が認められないときは、ただちに不良品であると判断することができ、処理時間を大幅に短縮することができる。
【0041】
また、図3に示すように、選択領域31内に、検査用マーク18の他にバーコード11bや缶胴11に付された模様等の一部又は全部を含ませ、これらを画像情報としてメモリ8に予め登録しておくことで、誤認を生じさせやすい他のマーク(例えば位置決めマーク17)や模様等が存在していても、判断部7は検査用マーク18と他のマーク等とを確実に識別することができる。すなわち、判断部7は、選択領域31から取り出された検査用マーク18を含む画像情報と、予めメモり8に記憶された選択領域31内の画像情報とが同一かどうかを比較することで、誤認等の間違いを生じにくくしているわけである。
この判断は、選択領域31という第一の画像30内の限定された領域内で行えばよいので、このような処理を行う場合にも、検査装置のCPUにかける負担を小さくすることができ、短時間で処理を終了することができるという利点がある。
【0042】
判断部7は、選択領域41内に基準マーク102aが存在すると判断したときであって、かつ、選択領域31内に検査用マーク18が存在すると判断したとき、又は選択領域31内の画像情報が予め設定されたメモリ8内の画像情報と一致したときに、以後の検査処理を実行する。
判断部7は、画像処理部4から送信された画像情報を演算処理し、第一の基準位置32を原点とする検査用マーク18の位置座標及び第二の基準位置42を原点とする基準マーク102aの位置座標を求める。そして、予め設定された検査用マーク18の許容範囲(しきい値)α,βに基づいて、検査用マーク18の位置が許容範囲α,βの範囲外である場合には、不良品であるとして図示しない缶体の成形装置の制御部に出力信号を送信する。前記した許容範囲α,βは、第一の画像30における検査用マーク18の位置座標に基づいて設定することができる。
【0043】
次に、本発明の検査方法の好適な一実施形態を、図1〜図7を参照しながら説明する。
なお、図4及び図5は本発明の検査方法の実施形態にかかるフローチャートで、図4は凹凸加工開始前の各種基準値の設定手順を示し、図5は凹凸加工を行う際の検査手順を示す。
最初に、図4にしたがって各種基準値の設定の手順を説明する。
【0044】
まず、第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bを配置している図7の▲6▼の位置に、検査の基準となる缶胴11及びアウターローラ102を正確に位置させる。そして、検査タイミング信号出力部2から検査タイミング信号が出力されている状態にする。この状態で設定を開始する(ステップS10)。
ディスプレイ6には、図3に示すように、第一のカメラ3aによって撮影された第一の画像30と、第二のカメラ3bによって撮影された第二の画像40とが左右に並べて表示される。この状態で、ディスプレイ6の画面の左上の隅に第一の基準位置32を設定し、前記画面の右上の隅に第二の基準位置42を設定する(ステップS11,S14)。この設定結果は、メモリ8に記憶される。
【0045】
なお、これら第一の基準位置32及び第二の基準位置42は、凹凸加工を施す模様な缶胴の大きさなどの缶体の種類が切り替わっても、設定を変更する必要は特にない。したがって、一度第一の基準位置32及び第二の基準位置42を設定してメモリ8に記憶させてしまえば、次の缶体からはステップS11,S14の工程は省略することが可能である。
【0046】
次いで、第一のカメラ3aが撮影している第一の画像30の中から、缶胴11の検査用マーク18を含む領域部分を選択する(ステップS12)。このようにして選択された領域が選択領域31である。
なお、選択領域31は面積が広いほど処理しなければならないデータ量が増え、処理時間も長くなるため、確実に他のマークや模様等との識別ができる範囲内で、可能な限り狭く選択するのが好ましい。
また、図3に示すように、検査用マーク18の他にバーコード11bの一部又は全部が含まれるように選択領域31を設定することで、他のマークや模様等と検査用マーク18の識別を確実に行うことができるようになる。
【0047】
このようにして選択した選択領域31及びこの選択領域31内の検査用マーク18を含む画像情報をメモリ8に記憶させる(ステップS13)。この際、凹凸加工を行う際の各ターレット位置における缶胴11の保持位置や缶胴11ごとの検査用マーク18の印刷位置のばらつき等を考慮して、ディスプレイ6の表示画面のX座標軸上及びY座標軸上に予め許容範囲α,βを設定しておく。
以上の手順で、缶胴11側の設定が完了する。同様にして、アウタローラ102側の設定を行う。
【0048】
第二の画像40の中から、基準マーク102aを含む領域を選択する(ステップS15)。この際、基準マーク102aが、選択された領域のほぼ中央に位置するようにするのが好ましい。このようにして選択された範囲が、選択領域41である。この選択領域41も、凹凸加工と缶体10の模様15とが一致しているか否かの判断の基準となるため、16個あるターレット位置におけるアウタローラ102のばらつきを考慮して、可能な限り狭い範囲とするのが好ましい。
このようにして選択した選択領域41に含まれる基準マーク102aに関する情報を、メモリ8に記憶させる(ステップS16)。
メモリ8に記憶された検査用マーク18を含む選択領域31の画像情報及び基準マーク102aを含む選択領域41の画像情報は、判断部7が選択領域31,41から検査用マーク18及び基準マーク102aを探索する際に用いられる。
【0049】
さらに、この実施形態のように、検査用マーク18と基準マーク102aとの適切な位置関係の範囲を設定するようにしてもよい。
例えば、検査用マーク18と基準マーク102aとの距離を求め、この距離を、検査を行う際の基準となる距離としてメモリ8に記憶させる(ステップS17)。この距離に対しても、各ターレット位置ごとのばらつきを考慮して許容範囲を予め決めておき、この許容範囲とともにメモリ8に記憶させておくとよい。
これらの設定は、ディスプレイ6の画面を見ながら、入力部5の操作によって行うことができる。
以上の手順によって各種設定値の設定手順を終了する(ステップS18)。
【0050】
次に、凹凸加工を実際に行う際の検査の手順を、図5のフローチャートにしたがって、図1〜図3及び図7を参照しながら説明する。
図7のターレット位置▲6▼において、第一のカメラ3aによる缶胴11の撮影と、第二のカメラ3bによるアウタローラ102の撮影とが行われる(ステップS32)。
図示しないスイッチが検査のタイミングを検出することで、検査タイミング信号出力部2から検査タイミング信号が出力されると(ステップS33)、メモリ8に設定された記憶内容にしたがって、第一のカメラ3aの第一の画像30(図3参照)の中の所定位置に選択領域31が設定され(ステップ34)、第二のカメラ3bの第二の画像40(図3参照)の中の所定位置に選択領域41が設定される(ステップS35)。
【0051】
選択領域31及び選択領域41では、メモリ8に記憶された検査用マーク18及び基準マーク102aに関する情報に基づいてマーク18,102aの探索が行われ(ステップS36,S37)。選択領域31,41内でマーク18,102aが見つからなければ(ステップS38,S39)、不良品と判定して(ステップS48,S49)以後の検査は行わない。
さらに、判断部7は、先に説明したように、メモリ8に記憶された選択領域31内の画像情報、例えば、検査用マーク18及びバーコード11bの一部を含む画像情報とメモリ8に予め記憶された選択領域31内の画像情報とを比較する(ステップS40)。そして、両者が一致せず、かつ、ずれ量が許容範囲(図3のα,βの範囲内)外であると判断した場合には不良品と判定して以後の検査は行わない(ステップS48)。
次いで、判断部7は、第一の基準位置32を原点とする検査用マーク18の位置を演算し(ステップS41)、得られた位置がメモリ8に予め設定された許容範囲内(図3のα,βで囲まれた範囲内)であるかどうかを判断する(ステップS43)。許容範囲内でなければ、不良品と判定して以後の検査は行わない(ステップS48)。
【0052】
同様に、判断部7は、選択領域41内に基準マーク102aが存在すると判断した場合は(ステップS39)、第二の基準位置42を原点とする基準マーク102aの位置を演算し(ステップS42)、この位置がメモリ8に予め設定された許容範囲内であるかどうかを判断する(ステップS44)。許容範囲内でなければ、不良品と判定して以後の検査は行わない(ステップS49)。
また、判断部7は、ステップS44,S45で得られたマーク18,102aの位置から、検査用マーク18及び基準マーク102aの位置関係、例えば距離を演算によって求め(ステップS45)、メモリ8に予め設定された基準となる位置関係(例えば距離)及びその許容範囲と比較する(ステップS46)。
【0053】
その結果、許容範囲内であると判断したきは、良品であると判定して(ステップS47)して図示しない缶体の成形装置の制御部に出力信号を送信し、許容範囲外であると判断したときは、不良品であると判定して(ステップS49)、図7の排出位置Aから機外に排出したのち、不良品であるとして加工ラインから排除する。
以下、上記ステップの繰り返しによって検査が繰り返される。
なお、上記のステップS32〜S49に基づく処理は、図1の検査装置1において数十ms単位の時間的オーダーで実行されるため、毎分数百缶という高速加工にも十分に対応することができる。
【0054】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態により何ら限定されるものではない。
例えば、マーク18,102aの位置を決定するための基準となる基準位置32,42は、第一の画像30及び第二の画像40の隅部に設定するものとして説明したが、基準位置32,42の設定位置は任意であり、例えば、ディスプレイ6の画面の中央に、基準位置を設定することもできる。このようにすることで、一つの基準位置を第一の画像30及び第二の画像40で共有することができる。
また、上記した検査装置及び検査方法の実施形態では、検査のための検査用マーク18を例に挙げて説明したが、このようなマークに限らず、文字の一部や他の模様であってもよい。
【0055】
さらに、上記の実施形態では、インナーローラ101に缶胴11が装着されているか否かを第一のカメラ3aの第一の画像30によって行うものとしたが、凹凸加工を行う前(例えば図7のターレット位置▲5▼)に、インナーローラ101に缶胴11が装着されているか否かを検出する検出手段を設け、インナーローラ101に缶胴11が装着されていないときには缶胴11の凹凸加工の検査を行わないようにするようにしてもよい。
【0056】
また、画像処理部4及び判断部7は第一のカメラ3a及び第二のカメラ3bに共通のものであることを前提に説明したが、画像処理部4及び判断部7を各カメラ3a,3bごとに設け、各カメラ3a,3bで撮影された画像を並列処理することで、より高速に検査を行なうことが可能になる。
さらに、図5で示したステップS40については、省略が可能である。この場合は、他のマーク等との誤認を避けるために、検査用マーク18の長さ、幅、形状等を予めメモり8に記憶させておくとともに、選択領域31を検査用マーク18と同一又は検査用マーク18に合わせて可能な限り小さく設定するとよい。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、缶胴の模様に位置合わせして凹凸加工を施す場合に、前記模様と凹凸加工とが一致しているかどうかを高速かつ確実に検査することができるので、凹凸加工の高速化を図ることができる。
また、このような検査を行うための専用の工程が必要ないので、缶体の成形装置への缶体の導入から排出までの工程数を短縮することができる
したがって、毎分数百缶という高速加工においても、缶体を確実に検査して缶体の品質を安定的にすることができる。
【0058】
さらに、二つのカメラで缶胴及び他方の型のマークを別々に撮影するようにしているので、マーク情報を各カメラで確実に読みとることができ、誤動作のない信頼性の高い検査装置及び検査方法を得ることができる。
また、選択領域内の画像情報と予め設定された画像情報とを比較することで、マーク等の誤認を確実に防止することができ、信頼性の高い検査装置及び検査方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】缶体の検査装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】凹凸加工中の缶胴とアウタローラの位置関係を示す斜視図である。
【図3】缶胴用のカメラの撮影画像を示す図である。
【図4】本発明の検査方法の一実施形態にかかるフローチャートで、凹凸加工開始前の各種設定値の設定手順を示す。
【図5】本発明の検査方法の一実施形態にかかるフローチャートで、凹凸加工を行う際の検査手順を示す。
【図6】本発明が適用される缶体の成形装置の主要部の構成を説明する図である。
【図7】図6の缶体の成形装置による凹凸加工の手順を説明する図である。
【図8】缶体の斜視図である。
【図9】本発明の従来例にかかり、凹凸加工の手順を説明する図である。
【符号の説明】
1 検査装置
2 検査タイミング信号出力部
3a 第一のカメラ
3b 第二のカメラ
4 画像処理部
5 入力部
6 ディスプレイ(表示手段)
7 判断部(判断手段)
8 メモリ(記憶手段)
10 缶体
11 缶胴
11a 模様
15 凹凸加工用の模様
17 位置決めマーク
18 検査用マーク
30 第一の画像
31 選択領域
32 第一の基準位置
40 第二の画像
41 選択領域
42 第二の基準位置
101 インナーローラ(一方の型)
102 アウタローラ(他方の型)
102a 基準マーク
Claims (7)
- 缶胴を装着する一方の型と、この缶胴の外周面に印刷された模様に位置合わせされる他方の型とで前記缶胴の前記模様の少なくとも一部に凹凸加工を施す缶体の成形装置に設けられ、前記模様と加工された凹凸とが位置合わせされているかどうかを検査する缶体の検査装置において、
缶胴の所定位置に付された検査用マーク及び前記他方の型の所定位置に付された基準マークと、
所定位置に位置決めされ、凹凸加工中の缶体を撮影する第一のカメラ及び凹凸加工中の前記他方の型を撮影する第二のカメラと、
前記凹凸加工中に、検査タイミングを検出する検査タイミング検出手段と、
前記第一のカメラ及び第二のカメラによって撮影された画像を処理する画像処理手段と、
前記検査タイミング検出手段が前記検査タイミングを検出したときに、前記第一のカメラの撮影画像の中から前記検査用マークを探索するとともに前記第二のカメラの撮影画像の中から前記基準マークを探索し、前記検査用マーク及び基準マークが発見されたときに、前記検査用マークの位置と前記基準マークの位置とから両者の位置関係を求め、この位置関係が予め設定された範囲内にあるときに、前記模様と加工された凹凸とが位置合わせされていると判断する判断手段と、
を有することを特徴とする缶体の検査装置。 - 前記判断手段は、少なくとも前記検査用マークについて、検査用マークを含む部分の画像情報が、予め設定された基準画像情報と一致するかどうかを判断することを特徴とする請求項1に記載の缶体の検査装置。
- 前記検査用マークの位置を求めるための基準位置を前記第一のカメラの撮影画像の所定位置に予め設定し、前記基準マークの位置を求めるための基準位置を前記第二のカメラの撮影画像の所定位置に予め設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の缶体の検査装置。
- 前記第一のカメラの撮影画像内又は第二のカメラの撮影画像内に予め選択領域を設けておき、前記検査タイミングが検出されたときに、前記判断手段が前記選択領域に前記検査用マーク又は基準マークが存在するかどうかを判断し、前記検査用マーク又は前記基準マークが存在するときに、以後の処理を続行する判断を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の缶体の検査装置。
- 前記第一のカメラの撮影画像及び第二のカメラの撮影画像を並べて表示するディスプレイをさらに有し、このディスプレイの表示画面上で前記選択領域及び前記基準位置の設定を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の缶体の検査装置。
- 缶胴を一方の型に装着し、この缶胴の外周面に印刷された模様に他方の型を位置合わせし、前記一方の型と前記他方の型とで前記模様の少なくとも一部に凹凸加工を施したときに、前記模様と加工された凹凸とが位置合わせされているかどうかを検査する缶体の検査方法であって、
予め、缶胴に検査用の検査用マークを付しておくとともに前記他方の型には基準マークを付しておき、
所定の検査タイミングで、第一のカメラで前記缶胴を撮影するとともに第二のカメラで前記他方の型を撮影し、
前記第一のカメラ及び第二のカメラで撮影された画像の中から、前記検査用マーク及び前記基準マークを探索し、
探索した前記検査用マークの位置及び前記基準マークの位置から前記検査用マークと前記基準マークの位置関係を求め、この位置関係が予め設定された所定の範囲内であるときに、前記模様と加工された凹凸とが位置合わせされていると判断すること、
を特徴とする缶体の検査方法。 - 表示手段に表示された画面上で前記第一のカメラの撮影画像及び第二のカメラの撮影画像の中に選択領域を設定するとともに、前記検査用マーク及び基準マークの位置を決定するための基準位置を設定し、前記選択領域内に前記検査用マーク及び基準マークが存在するかどうかを判断し、前記選択領域内に前記検査用マーク及び基準マークが存在するときに、前記基準位置を原点とする前記検査用マーク及び基準マークの位置を求めることを特徴とする請求項6に記載の缶体の検査方法。
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