JP4465569B2 - エンジンの液化ガス供給方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液化ガス、一般には液化石油ガスを燃料に使用し、これを所定正圧の気化ガスに調整して吸気管路に噴射させることによりエンジンに供給する方法、詳しくはエンジンが暖機未完状態で減速運転を行なうときの供給方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液化石油ガスを火花点火エンジンの燃料に使用することは従来から広く知られており、ボンベに充填されている高圧液状の液化石油ガスを大気圧程度の液化ガスに調整し吸気管路に吸入空気流が発生する負圧を利用して吸引させる、という方式に代って正圧の状態で燃料噴射弁により吸気管路に噴射させる方式が検討されている。
【0003】
この方式は、実開昭59−43659号公報或いは実開昭62−87162号公報などに記載されているように、ボンベ内の飽和蒸気圧を利用し或いはポンプで加圧して液体のまま噴射させる方式と、特開平6−17709号公報などに記載されているように所定正圧の気体に調整して噴射させる方式とに分けることができるが、前者の方式は液体の液化石油ガスが温度の影響を受けやすく不安定であるために噴射量の制御が困難であるという問題をもっていることから、現在は所定正圧の気化ガスに調整して噴射させるという後者の方式とする考えが主流となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記後者の方式において、ボンベに充填されている高圧液状の液化ガスは、一般にエンジン冷却水を気化のための熱源に使用する圧力調整器によって所定正圧の気化ガスとされる。しかしながら、エンジン始動時のように冷却水の温度が低いときは充分な熱交換が行なわれないこと、および一般に30KPa程度とされる噴射圧力に調整する圧力調整器にあっては減圧による気化の度合いが小さいこと、によって液体成分を含んだ気化ガスが噴射され、また圧力調整器の構造によっては液状の液化ガスが内部に溜る。
【0005】
一方、エンジンの減速運転時に燃料の未燃焼成分が排出されて排気の悪化やアフタバーンの発生を生じることがないように、燃料を全量カットまたは一定割合で一部カットすることが普通に行なわれている。
【0006】
この燃料カットによる減速対策手段を前述の液化ガスを所定正圧の気化ガスに調整して噴射させる方式に適用した場合、エンジンが暖機未完状態、即ち半暖機状態で通常運転から減速運転に移行すると、圧力調整器内の気化ガスを所定正圧に維持保有する調圧室に液体の液化ガスと気体の気化ガスとが封入された状態となる。冷却水は充分な熱交換を行なうことができない温度であっても、封入されている液化ガスを徐々に気化して調圧室の圧力を上昇させる。
【0007】
このため、減速運転から増速して通常運転に戻るとき、燃料カット条件が解消して燃料噴射弁が所定の開弁動作を開始するため、高圧の、従って大量の気化ガスを噴射して過濃混合気をエンジンに供給し、運転不調や排気悪化或いはエンジン停止を招くこととなる。
【0008】
ここで、半暖機状態では酸素センサが不活性であってフィードバック制御を行なうことができないので、オープンループ制御により過濃分を見込んで燃料噴射弁の開弁時間を短かくすることが考えられる。しかしながら、減速運転の時間、冷却水の温度によっては調圧室の圧力が著しく高いものとなり、通常運転に戻ると噴射量の増加を避けられないばかりか、燃料噴射弁が作動不能となってエンジン停止を招くことがある、という問題がある。
【0009】
本発明はエンジンが暖機未完状態で減速運転から通常運転に戻るとき、気化ガスが大量に噴射され或いは燃料噴射弁が作動不能となる、という前記課題を解決するためになされたものであって、半暖機状態での減速運転時に調圧室の圧力上昇を抑制して通常運転に円滑に戻ることができるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は高圧液状の液化ガスを圧力調整器に導入してエンジン冷却水の熱により気化させるとともにこの気化ガスを調圧室に所定正圧で保有させ、調圧室の気化ガスを燃料噴射弁より吸気管路に噴射させエンジンに供給するものにおいて、エンジンが暖機未完状態で減速運転を行なうとき、調圧室内に存在する液化ガスが気化して圧力を上昇することによって生じる前記課題を解決するために次のようにした。
【0011】
即ち、エンジンが暖機未完状態で減速運転を行なうとき、調圧室の気化ガスから可燃混合気を作る流量範囲内の気化ガスをエンジン冷却水の温度に応じて燃料噴射弁より噴射させることを第一の解決手段とした。また、エンジン冷却水の温度に代えて調圧室の気化ガスの温度、或いは調圧室の気化ガスの圧力に応じて噴射させることをそれぞれ第二の解決手段、第三の解決手段とした。更に、エンジン冷却水の温度、調圧室の気化ガスの温度、調圧室の気化ガスの圧力の内で少なくとも二つの値に応じて噴射させることを第四の解決手段とした。
【0012】
このように、減速運転時に可燃混合気を作ることができる量、即ち可燃限界内の気化ガスを前記の値に応じて噴射させることにより消費させて調圧室の圧力上昇を抑制し、気化ガスを大量に噴射したり燃料噴射弁を作動不能にする、という不都合を伴なわずに円滑に通常運転に戻すことができるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明すると、液化ガス、一般には液化石油ガスを充填したボンベ1の液相部分から延び電磁駆動の遮断弁2を設けた液化ガス通路3が圧力調整器10の燃料入口13に接続されている。ボンベ1の高圧液状の液化ガスは液化ガス通路3を通って圧力調整器10に導入され、所定正圧の気化ガスに調整されて燃料出口27に接続した気化ガス通路4を通り燃料噴射弁5に送られて吸気管路6に噴射されエンジン7に供給される。遮断弁2および燃料噴射弁5は、吸気管路6の空気流量、絞り弁位置、エンジン7の冷却水温度、クランク角度、排気中の酸素濃度などの検出値に基いて電気式演算処理装置から送られる信号により電子制御される。以上は従来の一般的な燃料供給システムと基本的に同じである。
【0014】
圧力調整器10は本体11に横並びに配置した縦長の予熱室12と調圧室14と分離室25とを有しており、予熱室12の底端に燃料入口13が開口している。調圧室14は本体11の一つの側面に開放したくぼみを本体11とカバー体15とに周縁部を挟み固定したダイヤフラム16で遮蔽することによって形成されている。
【0015】
ダイヤフラム16の中心部にはカバー体15に螺装した調節ナット17との間に装入した圧縮コイルばねからなる調整ばね18が作用させてあり、ダイヤフラム16を調圧室14の方へ変位させるように働く調整ばね18のばね荷重を調整ねじ17によって調節することができる。また、調圧室14には支軸19に回転可能に支持させた弁レバー20が内蔵されており、その一端に入口弁21の弁体22が取り付けられているとともにもう一端はダイヤフラム16の中心部に係合している。入口弁21は予熱室12と調圧室14とをそれらの最も高い部分で互いに連通した導通路24に設けた弁座23と前記の弁体22とによって構成されている。
【0016】
ダイヤフラム16が調圧室14の方へ変位すると弁レバー20の回動に応じて弁体22が弁座23から離れ、反対の方へ変位すると弁体22が弁座23に着座する。即ち、調圧室14の圧力が調整ばね18によって設定した圧力よりも低くなると入口弁21が開弁して予熱室12と調圧室14とを連通し、設定圧力よりも高くなると入口弁21が閉弁して予熱室12と調圧室14とを遮断することにより、調圧室14の内部を所定の設定圧力に維持する。
【0017】
調圧室14と分離室25とは連通路26によって互いに常時連通させられている。この連通路26は入口弁21に隣接しない個所、好ましくは高所に設けた入口弁21に対して底に近い個所で調圧室14に開口し、これより本体11の内部を上端近くに達するまで上方へ延び、次に横方向へ延びて分離室25に縦方向へ垂下させて内蔵したパイプ状の部分を経て分離室25の最も低い部位に開口した構成となっている。そして、分離室25の上端に燃料出口27が開口している。
【0018】
一方、エンジン7の冷却水を循環させる冷却水通路28が本体11に設けられている。この冷却水通路28は主に予熱室12を加熱するように形成されるが、分離室25や調圧室14も良好に加熱することができるように配置することが好ましい。
【0019】
ボンベ1に充填されている高圧液状の液化ガスは液化ガス通路3を通り燃料入口13から予熱室12に入ってエンジン冷却水と熱交換することにより加熱されて気化ガスとなる。調圧室14が設定圧力よりも低い圧力になると入口弁21が開弁し、予熱室12で作られた気化ガスが導通路24より調圧室14に流入する。調圧室14が設定圧力よりも高い圧力になると入口弁21が閉弁して気化ガスの流入を停止する。このことにより、所定の一定正圧に圧力調整された気化ガスが連通路26を通って分離室25に入り、燃料出口27から気化ガス通路4を通って燃料噴射弁5に送られる。
【0020】
エンジン7が始動するときや暖機未完状態のときは、エンジン冷却水が液化ガスを加熱して完全な気化ガスとすることができる温度に達していないことが多い。エンジン冷却水の温度が低く予熱室12で充分な熱交換を行なうことができないと、上部に溜った気化ガスが調圧室14に流入する際に液体のままの液化ガスも入口弁21を通過する。高圧の液化ガスはこれよりも低圧の調圧室14に流入すると減圧によって気化するが、調圧室14は30KPa程度の圧力であるため完全に気化することが困難であり、液化ガスが未気化のまま調圧室14に入ることを避けられない場合が多い。
【0021】
本実施の形態では連通路26の調圧室14への開口を上部の入口弁21から離れた底に近い個所に設け、入口弁21から噴出状態で流入する液化ガスが飛散しても連通路26に入りにくい配置としていること、液化ガスが連通路26に入っても上方へ延びて連行されにくい形状としていること、液化ガスが分離室25に連行されることがあっても底部に溜るようにしていること、から暖機未完状態であっても通常運転時には気化ガスのみを燃料噴射弁5に送ることができるように配慮している。
【0022】
エンジン7が通常運転から減速運転を行なうと、一般的には燃料を全量カットまたは一定割合で一部カットするように燃料噴射弁5を制御し、未燃焼成分の排出による排気の悪化やアフタバーンの発生を防止するようにしている。しかし、液化ガスを所定正圧の気化ガスに調整して噴射させることによりエンジン7に供給する、という本発明のシステムにおいては、圧力調整器10でエンジン冷却水の熱による気化作用が常時行なわれているので、暖機未完状態で通常運転から減速運転に移行したときも調圧室14更には分離室25に入っている液体の液化ガスは気化を続け、しかも気化の度合いはエンジン冷却水の温度に大きく依存する。
【0023】
このため、燃料を一定割合で一部カットする、という減速対策は減速運転時に空燃費を一定に保つように制御するので、通常運転に戻るときに気化ガスを大量に噴射する事態を確実に防止することができない。
【0024】
本発明の第一の手段では、暖機未完状態で減速運転を行なうとき、調圧室14の気化ガスから可燃混合気を作る流量範囲内の気化ガスをエンジン冷却水の温度に応じて燃料噴射弁5より噴射させるようにしている。
【0025】
この噴射制御のためのエンジン冷却水の温度は、ラジエータ内の温度であってもよいが、圧力調整器10で熱交換を終わったときの温度とするのが適切であり、熱交換後の温度を検出することによって調圧室14の気化ガスの温度、従って圧力を正確に知ることができる。本実施の形態では、エンジン7のラジエータと圧力調整器10の冷却水通路28とを接続した循環管路29の圧力調整器10の出口に近い個所に温度センサ31を設置している。温度センサ31は可能であれば冷却水通路28の出口部分に設置されることもある。
【0026】
この温度センサ31が検知した温度が高いときは、調圧室14での液化ガスの気化度合いが大きく、従って気化ガスの圧力上昇が大きいものと判断し、高濃度の可燃混合気をエンジン7に供給するように燃料噴射弁5を制御して圧力上昇分の気化ガスを燃焼消費させる。温度センサ31が検知した温度が低いときは、調圧室14での液化ガスの気化度合いが小さく、従って気化ガスの圧力上昇が小さいものと判断し、低濃度の可燃混合気をエンジン7に供給するように燃料噴射弁5を制御する。
【0027】
このことにより、減速運転を行なっている間に調圧室14内の気化ガス圧力が大幅に上昇し、通常運転に戻るとき気化ガスを大量に噴射したり燃料噴射弁5を作動不能にする、という不都合を解消することができる。また、可燃混合気をエンジン7に供給することにより、未燃焼成分を排出して排気を悪化させる、という問題がなくなる。更に、調圧室14の圧力上昇が抑制されることにより、本発明の実施の形態におけるダイヤフラム16や入口弁21に無理な力が働いて早期劣化、破損を招く、という不都合が回避される。
【0028】
本発明の第二の手段では、暖機未完状態で減速運転を行なうとき、調圧室14の気化ガスから可燃混合気を作る流量範囲内の気化ガスを調圧室14の気化ガスの温度に応じて燃料噴射弁5より噴射させるようにしている。
【0029】
この噴射制御のための気化ガスの温度は、本実施の形態では気化ガス通路4の燃料出口27に近い個所に設置した温度センサ32によって検知させており、温度が高いときは調圧室14での液化ガスの気化度合いが大きく、温度が低いときは気化度合いが小さいものと判断して前者の場合には高濃度の、後者の場合は低濃度の可燃混合気をエンジン7に供給するように燃料噴射弁5を制御する。
【0030】
本発明の第三の手段では、暖機未完状態で減速運転を行なうとき、調圧室14の気化ガスから不燃混合気を作る流量範囲内の気化ガスを調圧室14の気化ガスの圧力に応じて燃料噴射弁5より噴射させるようにしている。
【0031】
この噴射制御のための気化ガスの圧力は、本実施の形態では気化ガス通路4の燃料出口27に近い個所に設置した圧力センサ33によって検知させており、この圧力センサ33は調圧室14の気化ガスの圧力を直接検知してその値が高いときは調圧室14での液化ガスの気化度合いが大きく、低いときは気化度合いが小さいものと判断して前者の場合は高濃度の、後者の場合は低濃度の可燃混合気をエンジン7に供給するように燃料噴射弁5を制御する。
【0032】
これら第二、第三の手段によっても、減速運転を行なっている間に調圧室14の気化ガス圧力が上昇することを抑制し、また減速運転中に未燃焼成分を排出しない、という第一の手段と同様の効果が得られる。殊に第三の手段は気化ガス圧力を直接検知しているため、簡単なシステムで適確な噴射制御を行なうことができる。また、これらにおける温度センサ32,圧力センサ33は可能であれば調圧室14または分離室25に設置されることもある。
【0033】
本発明の第四の手段では、暖機未完状態で減速運転を行なうとき、調圧室14の気化ガスから可燃混合気を作る流量範囲内の気化ガスをエンジン冷却水の温度、調圧室14の気化ガスの温度、調圧室14の気化ガスの圧力の内で少なくとも二つの値に応じて燃料噴射弁5より噴射させるようにしている。
【0034】
この噴射制御のための三つの値は、本実施の形態では先に述べた温度センサ31,32,圧力センサ33によって検知させており、これらの内で少なくとも二つの値に応じて燃料噴射弁5を制御することによって減速運転時における可燃混合気の供給と調圧室14の圧力上昇抑制とをより適確に行なうことができる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると減速運転時に調圧室内の液化ガスの気化が進行しても、これを可燃混合気を作る流量範囲で燃料噴射弁から噴射させることにより、未燃焼成分を排出することなくエンジン内部で燃焼消費して調圧室の気化ガス圧力の上昇を抑制し、円滑に通常運転に戻すことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す配置図。
【符号の説明】
1 ボンベ, 5 燃料噴射弁, 6 吸気管路, 7 エンジン, 10 圧力調整器, 14 調圧室, 28 冷却水通路, 31,32 温度センサ, 33 圧力センサ,

Claims (3)

  1. 高圧液状の液化ガスを圧力調整器に導入してエンジン冷却水の熱により気化させるとともにこの気化ガスを調圧室に所定正圧で保有させ、前記調圧室の気化ガスを燃料噴射弁より吸気管路に噴射させエンジンに供給するにあたり、エンジンが暖機未完状態で減速運転を行なうとき、前記調圧室の気化ガスから可燃混合気を作る流量範囲内の気化ガスを温度センサーにより検知したエンジン冷却水の温度に応じて前記燃料噴射弁より噴射させるエンジンの液化ガス供給方法において、前記温度センサをエンジンのラジエータと圧力調整器の冷却水通路とを接続した循環管路の圧力調整器の出口に近い個所に設置していることを特徴とするエンジンの液化ガス供給方法。
  2. 前記請求項1に記載したエンジンの液化ガス供給方法において、エンジンが暖機未完状態で減速運転を行なうとき、前記調圧室の気化ガスから可燃混合気を作る流量範囲内の気化ガスを前記調圧室の気化ガスの温度に応じて前記燃料噴射弁より噴射させることを特徴とするエンジンの液化ガス供給方法。
  3. 前記請求項1に記載したエンジンの液化ガス供給方法において、エンジンが暖機未完状態で減速運転を行なうとき、前記調圧室の気化ガスから可燃混合気を作る流量範囲内の気化ガスを前記調圧室の気化ガスの圧力に応じて前記燃料噴射弁より噴射させる、ことを特徴とするエンジンの液化ガス供給方法。
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