JP4463223B2 - 自動変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、前後進切換機構を備えた自動変速機に関するものである。
従来、自動変速機に用いられる前後進切換機構として図3に示すようなものがある。この前後進切換機構について説明すると、この前後進切換機構は、所謂ダブルピニオン型遊星歯車機構を用いた前後進切換機構であって、プライマリプーリの固定プーリ2に連結されるサンギア4sとフォワードクラッチハブ15とを結合し、キャリア4cをフォワードクラッチドラム7と結合し、フォワードクラッチハブ15とフォワードクラッチドラム7間にフォワードクラッチ5を配置し、リングギア4rをリバースクラッチ6によりケース8に静止可能とすることで、フォワードクラッチドラム7に入力された回転を、フォワードクラッチ締結時(リバースクラッチ非締結時)には、サンギア4sとキャリア4cの一体回転により正回転でプライマリプーリ2に伝達し、リバースクラッチ締結時(フォワードクラッチ非締結時)には、キャリア4cの回転が逆転してプライマリプーリ2に伝達する。
しかしながら、従来技術においては、前後進切換機構の組み立て性の要件より、フォワードクラッチドラム7とキャリア4cとの結合は、スプライン結合に制約される。このため、遊星歯車機構のガタによりキャリア4cが軸方向に変位し、この変位により軸直方向の軸回りに回転(倒れ)が生じ、この倒れによりギアノイズが悪化するという課題がある。
この倒れを抑制する手段として、キャリア4cとサンギア4sの間にベアリングやメタルブッシュ等を設ける手段がある。しかしながら、このような抑制手段は、部品点数の増加、加工工数の増加等によりコストアップ、重量増加を招くことになる。
本発明は、こうした事実を鑑みてなされたものであり、コストや重量が増加することなく、キャリアの軸方向変位を抑制する前後進切換機構を備えた自動変速機を提供することを目的とする。
本発明は、エンジンの回転を伝達する入力軸と、この入力軸の回転速度を変速する自動変速機構と、前記入力軸と前記自動変速機構との間に設置され、前記入力軸の回転方向を適宜切り換える前後進切換機構と、前記入力軸と前記自動変速機構と前記前後進切換機構とを内部に設置するケースとを備え、前記前後進切換機構は、前記自動変速機構に接続するサンギアと、前記ケースに接続するリングギアと、前記サンギアと前記リングギアと間で回転を伝達する第1、第2ピニオンギアと、前記第1、第2ピニオンギアを回転自在に支持するとともに前記リングギアを相対回転自在に支持し、前記入力軸に固定されたドラムに前記入力軸の軸方向に摺動自在に接続するキャリアと備える遊星歯車機構と、前記ドラム内に設置されるとともに前記サンギアに接続し、前記キャリアの前記第1、第2ピニオンギアを支持する側の面の背面を相対回転自在に支持する第1クラッチ機構と、前記ケースと前記リングギアとの間に設置される第2クラッチ機構と、からなる自動変速機において、前記サンギアと前記第1、第2ピニオンギアと前記リングギアは、はすば歯車で形成され、前記第2クラッチ機構が締結され、前記第1クラッチ機構を非締結状態として、前記入力軸と前記自動変速機構の回転方向をとした場合に、前記第1ピニオンギアと噛合する前記サンギアの歯先の向きを、噛合時に前記サンギアに生じる前記軸方向の力の向きが前記キャリアと反対側に向くように設定し、前記第2ピニオンギアに噛合する前記リングギアの歯先の向きを、噛合時に前記リングギアに生じる前記軸方向の力の向きが前記キャリア側に向くように設定して、前記キャリアの前記軸方向の変位を規制することを特徴とする自動変速機である。
本発明は、第2クラッチ機構が締結され、第1クラッチ機構を非締結状態として、入力軸と自動変速機構の回転方向をとした場合に、第1ピニオンギアと噛合するサンギアの歯先の向きを、噛合時にサンギアに生じる軸方向の力の向きがキャリアと反対側に向くように設定し、第2ピニオンギアに噛合するリングギアの歯先の向きを、噛合時にリングギアに生じる軸方向の力の向きがキャリア側に向くように設定したため、リングギアをキャリアに押し付け、またサンギアが第1クラッチ機構をキャリア側に引き付けることでキャリアの軸方向の変位を規制することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した自動変速機の前後進切換機構の部分断面図である。
この自動変速機は、エンジンの動力が伝達される入力軸1と、入力軸1の回転速度を変速し、図示しない出力軸に動力を伝達するVベルト式変速機構のプライマリプーリの固定プーリ2と、入力軸1と固定プーリ2との間に設置され、入力軸1から固定プーリ2に伝達される動力の回転方向を制御する前後進切換機構3とを備える。なお、本実施形態では、変速機構としてVベルト式無段変速機構を用いて説明するがこれに限られない。
前後進切換機構3は、1組の遊星歯車機構4と、2つのクラッチ(フォワードクラッチ5とリバースクラッチ6)とから構成される。
詳しく説明すると、遊星歯車機構4は、所謂ダブルピニオン型の遊星歯車機構であって、互いに噛合する第1ピニオン4p1と図示しない第2ピニオンをそれぞれのピニオンシャフト4psを介して回転自在に支持するキャリア4cを備える。キャリア4cはスプライン結合により、入力軸1と同軸に形成されたフォワードクラッチドラム7の円筒状の外壁7aの内周面に連結される。またフォワードクラッチドラム7の円筒状の内壁7bも入力軸1と同軸に円筒状に形成され、内壁7bは入力軸1にスプライン結合される。
またフォワードクラッチドラム7の外壁7a内周面には、フォワードクラッチ5のドライブプレート5aがスプライン結合により連結され、一方、ドライブプレート5aから動力が伝達されるドリブンプレート5bは、遊星歯車機構4のサンギア4sに連結するフォワードクラッチハブ15に固定される。ここで、ドライブプレート5aとドリブンプレート5bは、入力軸1と平行方向に積層状に構成される。つまりフォワードクラッチ5は多板式クラッチとして構成される。サンギア4sは、第1ピニオン4p1と噛合すると共に、固定プーリ2に固定されて固定プーリ2を回転する。また、フォワードクラッチハブ15とキャリア4cとの間に第2ベアリング16が設置され、キャリア4cの軸方向の位置決めがなされると共に、フォワードクラッチハブ15とキャリア4c間の相対回転が許容される。
遊星歯車機構4の図示しない第2ピニオンと噛合する内歯歯車のリングギア4rは、リバースクラッチ6を介して自動変速機のケース8に固定される。リバースクラッチ6もフォワードクラッチ5と同様に、多板式クラッチとして構成される。
フォワードクラッチドラム7の外壁7aと内壁7bのエンジン側の端部を繋ぐ側壁7cが形成され、これら壁7a、7b、7cにより画成されるフォワードクラッチドラム7内には、フォワードクラッチ5を入力軸と平行方向に押し付けるピストン9が設置される。ピストン9は、フォワードクラッチドラム7の側壁7cとの間に形成される油室10に作用する油圧により入力軸1の軸方向に外壁7aの内周面に沿って移動し、フォワードクラッチ5を押し付け、ドライブプレート5aとドリブンプレート5b間に摩擦力を発生させ、入力軸1に伝達されたエンジンの動力をサンギア4sに伝達する。油室10には入力軸1に形成された油路1aから作動油が供給される。
フォワードクラッチドラム7に固定されるハブ11が設置され、このハブ11とピストン9と間にピストン9を軸方向に押圧するスプリング12が設置される。このようなスプリング12を設置したため、フォワードクラッチ5の非係合時には、油室10に作動油が供給されず、油室10の油圧が低下し、スプリング12の押圧力が油室10内の油圧を上回り、ピストン9がフォワードクラッチ5から離れる方向に移動し、フォワードクラッチ5の係合を中断する。
一方、リバースクラッチ6を押圧し、リバースクラッチ6のドライブプレート6aとドリブンプレート6b間に摩擦力を発生させるためのピストン13がケース8に設置され、ケース8とピストン13との間の図示しない油室に作動油が供給することでピストン13がリバースクラッチ6を押圧し、リバースクラッチ6を係合状態とする。なお、リバースクラッチ6を非係合状態とするスプリングは図示しない。また、リングギア4rとキャリア4cとの間に第1ベアリング17が設置され、キャリア4cの軸方向の位置決めがなされると共に、リングギア4rとキャリア4c間の相対回転が許容される。
このように構成される前後進切換機構3において、フォワードクラッチ5が締結され、リバースクラッチ6が非締結状態の場合には、入力軸1の回転は、フォワードクラッチドラム7から、フォワードクラッチ5、フォワードクラッチハブ15を介してサンギア4sに伝達され、サンギア4sが固定プーリ2を回転する。つまり、入力軸1の回転と固定プーリ2の回転とが同じ方向に回転することになる。
対してリバースクラッチ6が締結され、フォワードクラッチ5が非締結状態の場合には、入力軸1の回転は、フォワードクラッチドラム7から、キャリア4r、第1、第2ピニオンを介してサンギア4sに伝達され、入力軸1の回転方向と逆方向にサンギア4sが回転し、サンギア4sは固定プーリ2を回転する。つまり、この場合には入力軸1の回転と固定プーリ2の回転とが逆方向に回転することになる。
このような前後進切換機構3において、キャリア4cはフォワードクラッチドラム7の外壁7aの内周面にスプライン結合しており、入力軸1の軸方向に変位可能である。また、遊星歯車機構4の構成部品の部品精度により軸方向にガタが生じ、このガタによりキャリア4cが軸方向に変位を生じたり、図面に直交する軸に対して反時計回りにキャリア4cが回転する(倒れる)という課題がある。
本発明は、このガタ詰めを抑制する手法として、遊星歯車機構4を構成する、はすば歯車からなるサンギア4s、第1、第2ピニオンギア4p1、4p2及びリングギア4rの歯先の向きを所定方向に規定し、はすば歯車の噛合時に生じる軸方向の力を用いてガタ詰めすることを特徴とする。ここで、サンギア4s、第1、第2ピニオンギア4p1、4p2は外歯歯車であり、リングギア4rは内歯歯車で形成される。
以下、具体的な手法を図2を用いて説明する。
キャリア4rの軸方向のガタ詰めのためには、キャリア4cをフォワードクラッチハブ15に押し付ける力がギアの噛合により生じさせればよい。つまり、リングギア4rに生じる軸方向の力がキャリア4rをフォワードクラッチハブ15に押し付けるようにリングギア4rの歯先の向きを設定する。
ガタ詰めは、車両後進時に行われるようにはすば歯車の歯先の向きを設定し、今、入力軸1の回転方向を図の右側(エンジン側)から見て時計回りの回転を車両後進時の回転(以下、正回転という)とすると、前述のように後進時にはリバースクラッチ6が締結され、キャリア4cが正回転し、リングギア4rが停止する。したがって、第2ピニオンギア4p2は逆回転し、かつ駆動ギアとなり、被動ギアとしての第1ピニオンギア4p1を正回転する。
次に第1ピニオンギア4p1は駆動ギアとして、被動ギアとしてのサンギア4sを逆回転し、固定プーリ2を逆回転する。
そして、第2ピニオン4p2(逆回転)とリングギア4r(停止)との噛合時に、内歯歯車のリングギア4rに第1ベアリング17を介してキャリア4cをフォワードクラッチハブ15側に押し付ける方向の力を生じさせるためには、内歯歯車のリングギア4rの歯先の向きは、右捩れであればよい。したがって、各ギアの回転方向と歯先の向き及び噛合により生じる力の向きは、表1のようになる。なお、噛合時に生じる力の向きは、エンジン側をプラス(+)方向として表記する。
Figure 0004463223
ここで、サンギア4sにはマイナス方向の力、つまりサンギア4sに接続するフォワードクラッチハブ15をキャリア4rに引き付ける力が生じ、リングギア4rのキャリア4cをフォワードクラッチハブ15に押し付ける力と合わせて、キャリア4cのガタを抑制することができる。
したがって、本発明では、エンジンの回転を伝達する入力軸と、この入力軸の回転速度を変速する自動変速機構と、前記入力軸と前記自動変速機構との間に設置され、前記入力軸の回転方向を適宜切り換える前後進切換機構と、前記入力軸と前記自動変速機構と前記前後進切換機構とを内部に設置するケースとを備え、前記前後進切換機構は、前記自動変速機構に接続するサンギアと、前記ケースに接続するリングギアと、前記サンギアと前記リングギアと間で回転を伝達する第1、第2ピニオンギアと、前記第1、第2ピニオンギアを回転自在に支持するとともに前記リングギアを相対回転自在に支持し、前記入力軸に固定されたドラムに前記入力軸の軸方向に摺動自在に接続するキャリアと備える遊星歯車機構と、前記ドラム内に設置されるとともに前記サンギアに接続し、前記キャリアの前記第1、第2ピニオンギアを支持する側の面の背面を相対回転自在に支持する第1クラッチ機構(フォワードクラッチ)と、前記ケースと前記リングギアとの間に設置される第2クラッチ機構(リバースクラッチ)と、からなる自動変速機において、前記サンギアと前記第1、第2ピニオンギアと前記リングギアは、はすば歯車で形成され、前記第2クラッチ機構が締結され、前記第1クラッチ機構を非締結状態として、前記入力軸と前記自動変速機構の回転方向をとした場合に、前記第1ピニオンギアと噛合する前記サンギアの歯先の向きを、噛合時に前記サンギアに生じる前記軸方向の力の向きが前記キャリアと反対側に向くように設定し、前記第2ピニオンギアに噛合する前記リングギアの歯先の向きを、噛合時に前記リングギアに生じる前記軸方向の力の向きが前記キャリア側に向くように設定して、前記キャリアの前記軸方向の変位を規制するため、リングギアをキャリアに押し付け、またサンギアが第1クラッチ機構をキャリア側に引き付けることでキャリアの軸方向の変位を規制することができる。
本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
本発明の前後進切換機構の部分断面図である。 前後進切換機構のガタ詰め手法を説明する図である。 従来の前後進切換機構の部分断面図である。
符号の説明
1 入力軸
2 固定プーリ
3 前後進切換機構
4 遊星歯車機構
4s サンギア
4r リングギア
4c キャリア
4ps ピニオンシャフト
4p1 第1ピニオンギア
4p2 第2ピニオンギア
5 フォワードクラッチ(第1クラッチ)
5a ドライブプレート
5b ドリブンプレート
6 リバースクラッチ(第2クラッチ)
6a ドライブプレート
6b ドリブンプレート
7 フォワードクラッチドラム
7a 外壁
7b 内壁
7c 側壁
8 ケース
15 フォワードクラッチハブ
16 第2ベアリング
17 第1ベアリング

Claims (2)

  1. エンジンの回転を伝達する入力軸と、
    この入力軸の回転速度を変速する自動変速機構と、
    前記入力軸と前記自動変速機構との間に設置され、前記入力軸の回転方向を適宜切り換える前後進切換機構と、
    前記入力軸と前記自動変速機構と前記前後進切換機構とを内部に設置するケースとを備え、
    前記前後進切換機構は、
    前記自動変速機構に接続するサンギアと、前記ケースに接続するリングギアと、前記サンギアと前記リングギアと間で回転を伝達する第1、第2ピニオンギアと、前記第1、第2ピニオンギアを回転自在に支持するとともに前記リングギアを第1ベアリングを介して相対回転自在に支持し、前記入力軸に固定されたドラムに前記入力軸の軸方向に摺動自在に接続するキャリアと備える遊星歯車機構と、
    前記ドラム内に設置されるとともに前記サンギアに接続し、前記キャリアの前記第1、第2ピニオンギアを支持する側の面の背面を前記第1ベアリングより径の小さい第2ベアリングを介して相対回転自在に支持する第1クラッチ機構と、
    前記ケースと前記リングギアとの間に設置される第2クラッチ機構と、
    からなる自動変速機において、
    前記サンギアと前記第1、第2ピニオンギアと前記リングギアは、はすば歯車で形成され、
    前記第2クラッチ機構が締結され、前記第1クラッチ機構を非締結状態として、前記入力軸と前記自動変速機構の回転方向をとした場合に、
    前記第1ピニオンギアと噛合する前記サンギアの歯先の向きを、噛合時に前記サンギアに生じる前記軸方向の力の向きが前記キャリアと反対側に向くように設定し、
    前記第2ピニオンギアに噛合する前記リングギアの歯先の向きを、噛合時に前記リングギアに生じる前記軸方向の力の向きが前記キャリア側に向くように設定して、前記キャリアの前記軸方向の変位を規制することを特徴とする自動変速機。
  2. 前記前後進切換機構に対して前記入力軸の右側に前記エンジンを配置し、前記エンジン側から見た前記入力軸の回転方向が時計回りの場合に、
    前記サンギアの歯先の向きを右捩れに設定し、
    前記リングギアの歯先の向きを右捩れに設定することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
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