JP4461633B2 - ガラス導波路の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばフェムト秒レーザビームを照射することによって、ガラスの内部、またはクラッド層の内部に高寸法精度の光伝搬層を形成するガラス導波路の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ガラス板の表面あるいは内部にフェムト秒レーザビームを照射し、その照射した微小領域の屈折率を高め、その高屈折率領域をガラス板のX方向、Y方向あるいはZ方向に連続的に形成することによって、光伝搬層を形成するガラス導波路の製造方法が知られている。
【0003】
図7a,bは、ガラス板20の内部にフェムト秒レーザビームを照射して、直線状の光伝搬層21を形成した例を示し、図8a,bは、同じく曲線状の光伝搬層22を形成した例を示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の製造方法には、(1)〜(4)の問題があった。
【0005】
(1)フェムト秒レーザビームのわずかな位置変動によって、光伝搬層21,22のパターンがずれたり、不連続な光伝搬層21,22になったり、光伝搬層21,22に不要な曲がりなどが生じたりして、ガラス導波路の散乱損失増大要因になっていた。(2)レーザビームのスポット径の変動が光伝搬層の形状変化につながり、これも同じく散乱損失増大要因になっていた。(3)ガラス板のX方向、Y方向のわずかな変位による変動が光伝搬層の形状変化につながり、これも同じく散乱損失増大要因になっていた。(4)曲がり構造を持った光伝搬層22でY分岐回路、方向性結合回路、リング共振回路等を実現しようとすると、上記要因により光伝搬層22の側面の荒れによる散乱損失が問題となり、低損失なガラス導波路型光回路を実現することがむずかしかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、光伝搬層の形状変化を抑制して、高寸法精度の光伝搬層を形成することができるガラス導波路及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、ガラスの内部にレーザビームを照射することにより光伝搬層を形成するガラス導波路の製造方法において、上記ガラスの表面に上記レーザビームを反射する反射膜で形成された反射膜マスクパターンを、上記レーザビームの通過領域を有するように設け、上記レーザビームの通過領域のギャップを、上記レーザビームの幅よりも狭く設定し、上記反射膜マスクパターンにおける上記レーザビームの通過領域に沿って、上記ガラスの内部に上記レーザビームを照射することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、基板上に低屈折率を有するクラッド層を備え、このクラッド層の内部にレーザビームを照射することにより光伝搬層を形成するガラス導波路の製造方法において、上記クラッド層の表面に上記レーザビームを反射する反射膜で形成された反射膜マスクパターンを、上記レーザビームの通過領域を有するように設け、上記レーザビームの通過領域のギャップを、上記レーザビームの幅よりも狭く設定し、上記反射膜マスクパターンにおける上記レーザビームの通過領域に沿って、上記クラッド層の内部に上記レーザビームを照射することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のものにおいて、上記光伝搬層が上記ガラスの表面または上記クラッド層の表面から10μm以上深いガラス内部に形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項記載のものにおいて、上記ガラスの表面またはクラッド層の表面と、上記反射膜マスクパターンとの間に低屈折率層を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項記載のものにおいて、上記レーザビームの波長λfが200nm〜2400nmの範囲から選ばれることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項記載のものにおいて、上記反射膜マスクパターンがフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を経てパターン化されることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、ガラス表面に反射膜を形成する工程と、この反射膜に対してフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を経て、レーザビームの通過領域を有する反射膜マスクパターンをパターン化する工程と、上記反射膜マスクパターンを介してガラスの内部に集光させるように上記反射膜マスクパターンの上から、上記レーザビームの幅よりも狭く設定されたギャップを有する上記レーザビームの通過領域に沿って上記ガラスの内部にレーザビームを照射する工程とを備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明は、請求項7記載のものにおいて、上記ガラスが化学的あるいは物理的成膜方法により作成され、その後、400℃〜1000℃の温度範囲で熱処理されることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、基板上に低屈折率を有するクラッド層を形成する工程と、上記クラッド層上に反射膜を形成する工程と、上記反射膜に対してフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を経て、レーザビームの通過領域を有する反射膜マスクパターンをパターン化する工程と、この反射膜マスクパターンを介してクラッド層の内部に集光させるように上記反射膜マスクパターンの上から、上記レーザビームの幅よりも狭く設定されたギャップを有する上記レーザビームの通過領域に沿って上記クラッド層の内部にレーザビームを照射する工程とを備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明では、レーザビームを反射膜マスクパターンを介して照射することにより、上記マスクパターンで定められたパターン形状の光伝搬層が上記マスクパターンの下部に形成されるため、例えば、波長がλfでパルス幅がfs級のレーザビームを用いた場合、このレーザビームのわずかな位置変動や、レーザビームのスポット径の変動や、ガラス板のX方向、Y方向のわずかな変位による変動に対しても光伝搬層を高寸法で形成することができる。すなわち、光伝搬層の形状をその伝搬方向に均一に保って形成することができ、光伝搬層の側面荒れが極めて少なく、極局所的な不連続個所、不連続な曲がり等がほとんどない、超低散乱損失の導波路を実現することができる。
【0020】
また、反射膜マスクパターンの下のガラスの表面から少なくとも10μmよりは深いガラス内部に光伝搬層が形成されるので、低損失なガラス板を用いることにより、ガラス表面の凸凹や汚れ、キズなどの影響を受けることなく、低損失な導波路及び導波路型光回路が実現可能となる。
【0021】
ガラス表面と反射膜との間に低屈折率層を形成しておくことにより、光伝搬層への光の閉じ込めを良くすることができ、より低損失な導波路及び導波路型光回路が実現可能となる。なお、上記反射膜も光伝搬層内の光の伝搬を促進させる上で有効に作用している。
【0022】
レーザビームの波長を200nm〜2400nmの範囲で選ぶことにより、反射膜の特性を光伝搬層内を伝搬する光信号に有効に作用させることができる。たとえば、レーザビームの波長λfと光伝搬層内を伝搬する光信号の波長λsとが略等しい場合、反射膜は光信号に対しても反射膜として作用する。このため、光伝搬層内を伝搬する光信号の波長λsとほぼ等しい波長λfのレーザビームを選択すれば、光信号が光伝搬層内に効率良く閉じ込められ、伝搬効率を向上させることができると共に、上記反射膜の上面から光信号の波長近傍の不用な光(雑音光)が導波路内(含む光伝搬層)に入射することがなく、S/N(光信号/雑音光)を劣化させることがない。
【0023】
また、高寸法精度の光伝搬層を所望の位置に所望のパターンで形成させるため、反射膜マスクパターンを介してレーザビームを照射する。この反射膜マスクパターンは、フォトレジスト塗布、ベーキング、露光のフォトリソグラフィ工程、反射膜のエッチング工程によって形成される。
【0024】
低温で作成した低屈折率層の中にレーザビームを集光して、光伝搬層を形成することにより、低密度の層を一気に高密度の層に変えることができるので光伝搬層と低屈折率層との間に高い比屈折率差を実現できる。
【0025】
また、光伝搬層を形成するガラスを化学的反応法(液体ソースやガスソースを用いた化学的気相反応法、ゾル・ゲル法等)や物理的成膜方法(イオンビームスパックリング法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法等)により作成したものを用いるので、低損失導波路が実現可能となる。
【0026】
さらに、高寸法精度を実現できる半導体製造プロセスと、レーザビーム照射による簡易な方法で、かつ低損失を実現できる光伝搬層の形成プロセスを併用することにより、高寸法精度、低損失な導波路を簡易に低コストで、製造することが可能となる。また、反射膜マスクパターンが常に形成されているので、そのマスクパターンを介してフェムト秒レーザビームを何回でも照射することができ、しかも同じ位置の光伝搬層にレーザビームが集光されるので、その光伝搬層の屈折率を容易に制御することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0028】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態によるガラス導波路の製造方法の工程図を示す。まず、図1aに示すように、ガラス板1の上に反射膜3を成膜する。この反射膜3の素材には、たとえばフェムト秒レーザパルスビームを高反射率で反射させる多層コーティング膜や、アルミニウムを用いたコーティング膜や、アルミニウムの上に誘電体層をオーバーコートしたプロテクテッドアルミニウムコーティング膜等が用いられる。例として、コヒーレントジャパン株式会社製の広帯域多層高反射コーティング膜を用いた場合、波長620nmから860nm、あるいは850nmから1100nmの範囲で100%近い反射率が得られた。
【0029】
ついで、図1bに示すように、上記反射膜3の上にフォトレジスト膜を塗布して、加熱後、フォトマスクを介してフォトレジスト膜を露光し、所望のフォトレジストパターン15を形成する。そして、このフォトレジストパターン15をマスクにして、図1cに示すように、反射膜3をエッチングして所望の反射膜マスクパターン3Aを形成する。その後、図1dに示すように、反射膜マスクパターン3Aの上部のフォトレジストパターン15を剥離させ、レーザビームの通過領域4と反射領域5とを形成する。
【0030】
すなわち、上記反射膜3は、CVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法等で成膜され、その後、フォトリソグラフィ、ドライあるいはウエットエッチング工程を経てパターン化され、上記反射膜マスクパターン3Aが得られる。
【0031】
つぎに、図1eに示すように、上記レーザビームの通過領域4の上からフェムト秒レーザパルスビーム7をレンズ6で集光し、ガラス板1の内部の点0に集束させる。そして、図1fに示すように、ガラス板1の内部に、高屈折率に変化した光伝搬層2を形成する。
【0032】
図2は、図1eと図1fに対応した製造工程を示す。ここでは、ガラス板1内にそのガラスの屈折率よりも高い光伝搬層2を直線状に形成する場合の例を示す。ガラス板1の上部に形成した反射膜マスクパターン3Aは、直線状に延びるレーザビーム7の通過領域4を有し、その通過領域4以外はレーザビーム7の反射領域5からなっている。直線状の通過領域4のギャップSは、その領域4の表面に照射されるレーザビーム7の幅Wよりも狭く形成されている。そして、レーザビーム7は、ガラス板1の内部であってA−A軸とB−B軸との交点に集光されるように構成されている。
【0033】
この状態で、ガラス板1を、矢印Pの方向に所望速度で移動させる。すなわち、レーザビーム7が直線状の通過領域4に沿って照射されるように、ガラス板1を所望速度で移動させる。これによって、ガラス板1の内部には、直線状に延びた光伝搬層2が形成される。
【0034】
本実施形態では、レーザビーム7が直線状の通過領域4に沿って照射されるため、このレーザビーム7の通過領域4に対応した忠実なパターンの光伝搬層2が形成される。すなわち、ガラス板1がX方向あるいはY方向に微小の変位を生じていても、レーザビーム7の通過領域4に忠実なパターンの光伝搬層2が形成される。また、フェムト秒レーザビーム7のわずかな位置の変位に対しても、ほとんど影響を受けずに、高寸法精度で、かつ、側面荒れのほとんどない光伝搬層2を形成することができる。
【0035】
光伝搬層2は、反射膜マスクパターン3Aの下のガラスの表面から少なくとも20μmよりは深いガラスの内部に形成することが望ましい。このように深いガラスの内部に光伝搬層2を形成した場合、ガラス表面の凸凹や汚れ、キズなどの影響を受けることが少なくなるため、低損失なガラス板を用いて、低損失な導波路及び導波路型光回路を実現できる。
【0036】
フェムト秒レーザビーム7には、波長が200nm〜2400nm、パルス幅が数十fs〜数百fs、繰り返しが数10Hz〜数百KHz、平均出力が10mw〜数百mwのものが用いられる。上記波長を200nm〜2400nmの範囲で選ぶことにより、反射膜3の特性を光伝搬層2内を伝搬する光信号に有効に作用させることができる。たとえば、レーザビームの波長λfと光伝搬層2内を伝搬する光信号の波長λsとが略等しいと、反射膜3は光信号に対しても反射膜として作用する。このため、光伝搬層2内を伝搬する光信号の波長λsとほぼ等しい波長λfのレーザビームを選択すれば、光信号が光伝搬層2内に効率良く閉じ込められ、伝搬効率を向上させることができると共に、上記反射膜3の上面から光信号の波長近傍の不用な光(雑音光)が導波路内(含む光伝搬層2)に入射することがなく、S/N(光信号/雑音光)を劣化させることがない等の効果が得られる。また、上記光伝搬層2の大きさは、シングルモード伝搬用の場合には直径が数μmから十数μmの範囲で選ばれ、マルチモード伝搬用の場合には直径が20μmから数十μmの範囲で選ばれる。
【0037】
例として、ガラス板1として厚みt=0.5mmのものを用い、その厚みのほぼ真中に光伝搬層2を形成する場合、レーザビームの通過領域4のギャップSを、光伝搬層2の直径よりも少しだけ大きい値になるように設定し、またそのギャップSに照射されるフェムト秒レーザビーム7の幅Wを、上記ギャップSよりも少しだけ大きく設定する。このようにした場合、ガラス板1のX方向、Y方向への微小なずれ、レーザビーム7の微小なずれに対しても光伝搬層2を高寸法精度で形成することができる。
【0038】
(第二の実施形態)
本実施形態では、図3に示すように、基板10と反射膜マスクパターン3Aとの間に低屈折率のクラッド層9が形成され、このクラッド層9の内部に光伝搬層2が形成される。低屈折率のクラッド層9を形成することによって、光伝搬層2への光の閉じ込めを良くすることができ、より低損失な導波路及び導波路型光回路を提供することが可能となる。なお、上記反射膜3も光伝搬層2内の光の伝搬を促進させる上で有効に作用する。
【0039】
基板10としては、石英ガラスや多成分系ガラスなどのガラス以外に、Si、GaAsなどの半導体、LiNbO3、LiTaO5などの強誘電体、アルミナ、ルミセラムなどのセラミックス等が用いられる。
【0040】
低屈折率のクラッド層9には、SiO2にF、B、P、Ti、Ge、Ta、Znなどの屈折率制御用ドーパントを少なくとも1種添加したもの、極低OH基SiO2等が用いられる。このクラッド層9は、CVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法等で成膜される。このクラッド層9は400℃〜1000℃の温度範囲で成膜されるので、密度は低い。このクラッド層9にレーザビーム7を照射した場合、低密度の層が一気に高密度の層に変化するため、屈折率がより高くなり、光伝搬層と低屈折率層との間に高い比屈折率差を実現することができる。
【0041】
(第三の実施形態)
図4a、図4bは、方向性結合器の構成を示す。この方向性結合器は長さLとギャップGを有する結合部11と、その両サイドに形成された曲線部12A、12B及び直線部13A、13Bを備えて構成される。
【0042】
上記曲線部12A、12Bを有する方向性結合器を形成する場合、まず、反射膜マスクパターン3Aのレーザビームの通過領域の形状を、曲線部12A、12B及び直線部13A、13Bの形状に対応した、通過領域4A、4Bのようにパターン化する。ついで、フェムト秒レーザパルスビームを、通過領域4A、4Bに沿って照射して、そのパターン化されたマスクパターン3Aに対応した光伝搬層2A、2Bを形成する。この光伝搬層2A、2Bは、ガラス板1の板厚tのほぼ中央の位置に形成される。
【0043】
(第四の実施形態)
図5に示すように、ガラス板1と反射膜マスクパターン3Aとの間に低屈折率層14が設けられ、フェムト秒レーザパルスビームが、この低屈折率層14を通過して、ガラス板1の内部に光伝搬層2が形成されている。この低屈折率層14には、図3に示したクラッド層9と同様の材料が用いられるが、ガラス板1の屈折率ngよりも低い屈折率nlになるように構成される。ここでガラス板1には石英系ガラス、多成分系ガラス等が用いられる。
【0044】
低屈折率層14としては、Fを添加したSiO2層が好ましい。低OH基導波路を実現する上で、ガラス板1には、SiCl4とO2との高温(>1000℃)反応により形成したSiO2板、極低OH基化処理を施したSiO2板等を用いることが好ましい。なお、ガラス板1の表面以外に裏面にも、低屈折率層14を形成し、ガラス板1のほぼ真中に光伝搬層2を形成するようにすれば、温度変化に対して安定な光学特性を維持することができる。
【0045】
(第五の実施形態)
図6は、別の実施形態を示す。この実施形態では、ガラス板1の両面に、上述したように、反射膜マスクパターン3A−1,3A−2を形成し、各反射膜マスクパターン3A−1,3A−2のそれぞれの通過領域4A−1、4A−2、4B−1、4B−2に沿って、フェムト秒レーザパルスビームを照射して、そのパターン化されたマスクパターン3A−1,3A−2に対応した光伝搬層2A−1、2A−2、2B−1、2B−2を形成する。
【0046】
これによっても、正確な反射膜マスクパターン3A−1,3A−2を形成しておくことにより、ガラス板1の内部に上記マスクパターンに反応した各光伝搬層を忠実に形成することができる。
【0047】
第一から第五の各実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0048】
(1)反射膜マスクパターンを介してフェムト秒レーザパルスビームを照射しているので、レーザビームのわずかな位置変動や、レーザビームのスポット径の変動や、ガラス板のX方向、Y方向のわずかな偏位による変動に対しても光伝搬層を高寸法で形成することができる。また、その光伝搬層の形状をその伝搬方向に均一に保って形成することができる。さらに、光伝搬層の側面荒れが極めて少なくなり、極局所的な不連続個所、不連続な曲がり等がほとんどない、超低散乱損失の導波路を実現することができる。
【0049】
(2)反射膜マスクパターン自身が光伝搬層内への光の閉じ込めを強くするのに寄与し、また反射膜マスクパターンの上からガラス内部に漏れ込もうとする雑音光を反射させることができる。
【0050】
(3)ガラス板表面と反射膜マスクパターンとの間に低屈折率層を形成しておくことにより、光伝搬層への光の閉じ込めを良くすることができる。
【0051】
(4)レーザビームの波長を200nmから2400nmの範囲内から選ぶことにより、反射膜マスクパターンの光学特性を光伝搬層内を伝搬する光信号に有効に作用させることができる。
【0052】
(5)上記反射膜マスクパターンはフォトリソグラフィ、エッチング行程によって作成されており、このマスクパターンを介してレーザビームを照射することにより、このマスクパターンに忠実な光伝搬層を形成することができる。しかも上記反射膜マスクパターンは、常に、一体的にガラス板に形成されているので何回でもレーザビームを照射することができ、導波路の比屈折率差の制御を容易に行うことができる。
【0053】
(6)光伝搬層を形成するガラスを化学的反応法や物理的成膜方法により作成したものを用いた場合、低損失導波路を実現することができる。
【0054】
特に、図3に示すように、上記化学的反応法や物理的成膜方法で成膜した低屈折率のクラッド層9を1000℃以下の低温で成膜し、熱処理を経て実現した場合、密度の低いガラス層である。このクラッド層9の内部にレーザビームを集光して光伝搬層2を形成すると、高比屈折率差を容易に実現することができる。しかも、上記クラッド層9を成膜するのに1000℃以下の低温プロセスを用いているので、基板10の反りがほとんど生じない。これにより、大面積の基板10上に高集積度の光回路を形成することができる。
【0055】
(7)反射膜マスクパターン3Aの描画作成ソフトプログラムをそのまま使ってガラス板の移動方向P(図2)を操作することができるので、高寸法精度で光伝搬層2を実現することができ、かつ、上記マスクパターン作成と光伝搬層2の形成を併用できるので経済的である。
【0056】
(8)反射膜マスクパターン3Aを半導体製造プロセスを用いて高寸法精度に実現し、そのマスクパターンにレーザビームを照射することによって簡易な方法で、かつ低損失を実現できる光伝搬層2の形成プロセスを見いだすことができた。その結果、高寸法精度、低損失な導波路を簡易に低コストで製造することができることがわかった。
【0057】
【発明の効果】
本発明では、光伝搬層の形状変化を抑制して、高寸法精度の光伝搬層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】a〜fは、本発明の一実施形態を示す製造工程図である。
【図2】ガラス導波路の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】ガラス導波路の別の実施形態を示す斜視図である。
【図4】aは、ガラス導波路の別の実施形態を示す端面図であり、bは、aにおけるC−C線の断面図である。
【図5】ガラス導波路の別の実施形態を示す端面図である。
【図6】ガラス導波路のさらに別の実施形態を示す端面図である。
【図7】aは、ガラス導波路の従来例を示す端面図であり、bは、aにおけるA−A線の断面図である。
【図8】aは、ガラス導波路の従来例を示す端面図であり、bは、aにおけるB−B線の断面図である。
【符号の説明】
1 ガラス板
2 光伝搬層
3 反射膜
3A 反射膜マスクパターン
4 通過領域
5 反射領域
6 レンズ
7 フェムト秒レーザパルスビーム
Claims (9)
- ガラスの内部にレーザビームを照射することにより光伝搬層を形成するガラス導波路の製造方法において、
上記ガラスの表面に上記レーザビームを反射する反射膜で形成された反射膜マスクパターンを、上記レーザビームの通過領域を有するように設け、
上記レーザビームの通過領域のギャップを、上記レーザビームの幅よりも狭く設定し、
上記反射膜マスクパターンにおける上記レーザビームの通過領域に沿って、上記ガラスの内部に上記レーザビームを照射することを特徴とするガラス導波路の製造方法。 - 基板上に低屈折率を有するクラッド層を備え、上記クラッド層の内部にレーザビームを照射することにより光伝搬層を形成するガラス導波路の製造方法において、
上記クラッド層の表面に上記レーザビームを反射する反射膜で形成された反射膜マスクパターンを、上記レーザビームの通過領域を有するように設け、
上記レーザビームの通過領域のギャップを、上記レーザビームの幅よりも狭く設定し、
上記反射膜マスクパターンにおける上記レーザビームの通過領域に沿って、上記クラッド層の内部に上記レーザビームを照射することを特徴とするガラス導波路の製造方法。 - 上記光伝搬層が上記ガラスの表面または上記クラッド層の表面から10μm以上深いガラス内部に形成されることを特徴とする請求項1または2記載のガラス導波路の製造方法。
- 上記ガラスの表面またはクラッド層の表面と、上記反射膜マスクパターンとの間に低屈折率層を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のガラス導波路の製造方法。
- 上記レーザビームの波長λfが200nm〜2400nmの範囲から選ばれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載のガラス導波路の製造方法。
- 上記反射膜マスクパターンがフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を経てパターン化されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のガラス導波路の製造方法。
- ガラス表面に反射膜を形成する工程と、上記反射膜に対してフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を経て、レーザビームの通過領域を有する反射膜マスクパターンをパターン化する工程と、上記反射膜マスクパターンを介してガラスの内部に集光させるように上記反射膜マスクパターンの上から、上記レーザビームの幅よりも狭く設定されたギャップを有する上記レーザビームの通過領域に沿って上記ガラスの内部にレーザビームを照射する工程とを備えたことを特徴とするガラス導波路の製造方法。
- 上記ガラスが化学的あるいは物理的成膜方法により作成され、その後、400℃〜1000℃の温度範囲で熱処理されることを特徴とする請求項7記載のガラス導波路の製造方法。
- 基板上に低屈折率を有するクラッド層を形成する工程と、上記クラッド層上に反射膜を形成する工程と、上記反射膜に対してフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を経て、レーザビームの通過領域を有する反射膜マスクパターンをパターン化する工程と、この反射膜マスクパターンを介してクラッド層の内部に集光させるように上記反射膜マスクパターンの上から、上記レーザビームの幅よりも狭く設定されたギャップを有する上記レーザビームの通過領域に沿って上記クラッド層の内部にレーザビームを照射する工程とを備えたことを特徴とするガラス導波路の製造方法。
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JP2002311272A (ja) | 2002-10-23 |
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