JP4460837B2 - 新規なポリチオール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い屈折率及び高い透明性が要求される光学材料やポリウレタン樹脂等の樹脂分野や、塗料、合成樹脂の加硫剤等の樹脂添加剤に好適に使用されるポリチオール及び該ポリチオールの組成物、更には、該ポリチオールを使用して製造される透明樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。
これらプラスチックレンズに要求され続けている性能は光学性能としては高屈折率、高アッベ数、物理的性質としては高耐熱性、低比重である。
【0003】
これらの性能の内、高耐熱性、低比重については現在の高屈折率プラスチックレンズでも高いレベルで実現されてきている。現在、これらの目的に広く用いられる樹脂としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(以下、D.A.Cと称す)をラジカル重合させたものがある。この樹脂は、耐衝撃性に優れていること、軽量であること、染色性に優れていること、切削性および研磨性等の加工性が良好であること等、種々の特徴を有している。しかしながら、この樹脂は、屈折率nd が1.50前後と低く、レンズの中心厚やコバ厚が厚くなってしまい、より屈折率の高いレンズ用樹脂が望まれていた。
【0004】
D.A.C樹脂よりも屈折率を高くしたものとして、樹脂中に硫黄原子を導入した、ポリチオウレタン樹脂や含硫O−(メタ)アクリレート樹脂やチオ(メタ)アクリレート樹脂が知られている。ポリチオウレタン樹脂は、高屈折率で耐衝撃性が良好である等、バランスの優れた樹脂である(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照)。
しかしながら、屈折率とアッベ数に関しては屈折率が上昇するほどアッベ数が低くなると言った相反する物性であるため両方を同時に向上させることは非常に困難である。そこで、アッベ数の低下を抑えながら、高屈折率化を行う検討が盛んに行われている。
【0005】
このようなアッベ数の低下を抑えながら、高屈折率化を行う検討の中で最も代表的な提案はエピスルフィド化合物を使用する方法である(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。
しかしながら、エピスルフィド化合物を使用する上記の方法で得られる樹脂は、光学物性が非常に優れたものであるものの、脆さや耐衝撃性が低いなどの物理的性能に劣る面があり、レンズに要求される諸物性を全て満足しているわけではない。
そのような中で、光学物性や物理的物性面でバランスの取れた素材であるポリチオウレタン樹脂を使用した上で、アッベ数の低下を抑えながら、高屈折率化を行う提案が新たになされた(例えば、特許文献7参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−46213号公報
【特許文献2】
特開平4−161410号公報
【特許文献3】
特開昭63−188660号公報
【特許文献4】
WO−89/10575号公報
【特許文献5】
特開平9−110979号公報
【特許文献6】
特開平11−322930号公報
【特許文献7】
特開2001−342172号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような最新の方法によれば、比較的高いアッベ数を有しながら高い屈折率が実現可能となった。しかしながら、この方法で製造されたポリチオールは骨格が非常に大きいために、工業的に蒸留法を用いて精製する事が非常に難しい。樹脂の色相を重んじる光学材料用途では、色相を改善するための精製方法が必要であり、種々の精製方法の中でも蒸留法は、工業的に非常に有用である。そこで、要求物性を満足しつつ、蒸留可能なポリチオールを開発する必要があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、工業的に蒸留が可能であり、更に、得られる樹脂の要求物性を十分に満足しうるポリチオールを見出し本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明は、
[1]式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオール。
【0010】
【化5】
【0011】
【化6】
【0012】
【化7】
[2]式(4)で表される構造を有する化合物を出発原料とする、式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオールの製造方法。
【0013】
【化8】
(式中Xは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子のいずれかであり、Xは同一分子内で異なっていても良い。)
[3]トリチオ炭酸アルカリ金属塩を出発原料として使用する、[2]に記載の製造方法。
[4][1]の式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオールを含有する組成物。
[5][4]に記載の組成物を使用して硬化して得られる透明樹脂。
[6][4]に記載の組成物とポリイソシアナートを使用して硬化して得られる透明樹脂。
[7][5]又は[6]に記載の透明樹脂からなる光学材料。
[8][7]に記載の光学材料からなるプラスチックレンズ。
[9][5]又は[6]に記載の透明樹脂を注型重合で得ることを特徴とする透明樹脂の製造方法。
に関するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
【0015】
本発明に係る、式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオールは、1,3−ジチオラン骨格、または、1,4−ジチアン骨格、または、1,3−ジチエタン骨格を有する含硫環状骨格に直接メルカプト基もしくは、メルカプトメチル基が結合した骨格を有するものであり、(1)は、2−メルカプトメチル−4−メルカプト−1,3−ジチオランであり、(2)は、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアンまたは2,6−ジメルカプト−1,4−ジチアンであり、(3)は2,4−ジメルカプトメチル−1,3−ジチエタンである。
【0016】
本発明に係る式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオール化合物は、例えば、次のような方法で合成することが可能である。
【0017】
本発明に係る式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオール化合物の原料としては、式(4)で表される構造を有する。
【0018】
【化9】
(式中Xは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子のいずれかであり、Xは同一分子内で異なっていても良い。)
1,1,2−トリハロゲノエタンを使用する。その他の原料としては、トリチオ炭酸アルカリ金属塩が挙げられる。トリチオ炭酸アルカリ金属塩は次の様に合成される。
【0019】
まず、水硫化ナトリウム又は水硫化カリウム等の水硫化アルカリ金属塩と水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩とを反応させることにより、硫化二ナトリウム又は硫化二カリウム等のアルカリ金属の硫化物を合成する。次いで得られたアルカリ金属の硫化物と硫黄を反応させることにより、二硫化二ナトリウムまたは二硫化二カリウム等のアルカリ金属の二硫化物を合成する。得られたアルカリ金属の二硫化物へ二硫化炭素を添加することで反応させ褐色の反応物を得る。この得られた反応物がトリチオ炭酸アルカリ金属塩、即ち、M2CS3(ここで、Mはアルカリ金属を示す)の構造を有する化合物が合成される。このようなトリチオ炭酸アルカリ金属塩を合成する際に使用される溶媒は、極性を有するものが使用されるが、好ましくは、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が用いられる。以降の反応成績まで考慮すれば、N,N−ジメチルホルムアミドがより好ましい。反応温度は、使用する溶媒などにより異なるが、−10℃〜150℃が好ましく、5℃〜100℃がより好ましく、15℃〜80℃が特に好ましい。
【0020】
次いで、原料の1,1,2−トリハロゲノエタンを溶媒の存在あるいは非存在下、敷き液として、得られたトリチオ炭酸アルカリ金属塩の溶液を滴下して装入し、原料が減少もしくは消失するまで反応を行う。逆にトリチオ炭酸アルカリ金属塩の溶液を敷き液とすることも可能である。この反応に使用される溶媒は、公知のものであればいずれでも良いが、1,1,2−トリハロゲノエタンやトリチオ炭酸アルカリ金属塩溶液と反応しないものを選ぶ必要がある。反応温度は、5℃〜100℃で行うと好ましく、15℃〜80℃で行うとより好ましい。
【0021】
以上の反応終了後、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸又はその水溶液を反応系内へ装入し、次の反応を行う。この反応の進行とともに、二硫化炭素が回収される。この反応で用いる溶媒としては、公知の溶媒であればいずれでもよいが、水溶性が低い芳香族もしくは脂肪族の炭化水素化合物またはハロゲン系の炭化水素化合物が好ましい。より好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンである。反応温度は、5℃〜100℃で行うと好ましく、15℃〜80℃で行うとより好ましい。
【0022】
反応終了後、得られた有機層を水洗し、脱水、濃縮することで、目的物である本願発明の式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオールの組成物が残査として得られる。得られた残査は、クロマトグラム法等の公知の方法により精製する事が可能であり、特に、蒸留により精製する事が可能である。精製により得られたポリチオールは、無色の液体又は固体である。
【0023】
このようにして得られた本願発明の式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオールは、ウレタン系の樹脂からなる光学材料に好適に使用することができる。また、エポキシド系及び/またはエピスルフィド系の樹脂からなる光学材料やオレフィン系の樹脂からなる光学材料にも好適に使用することも可能である。更には、ポリウレタン樹脂用の原料や塗料原料、合成樹脂の加硫剤等の原料や添加剤として使用することも可能である。
【0024】
次に、本願発明の硬化樹脂に関して記載する。
本願発明の式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオールは、ポリイソシアナートと反応させることで硬化樹脂を製造することが可能である。ここで言うポリイソシアナートとは、分子内に2個以上のイソシアナート基を有する化合物のことを言い、公知のポリイソシアナートであればいずれでも使用可能である。
【0025】
ここで、分子内に2個以上のイソシアナート基を有する化合物の好ましいものの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカトリイソシアナート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルエーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、メシチリレントリイソシアナート、2,6−ジ(イソシアナトメチル)フラン等の脂肪族ポリイソシアナート、
【0026】
イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアナート、2,2−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアナート、
【0027】
フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート、3,3−ジメチルジフェニルメタン−4,4−ジイソシアナート、ビベンジル−4,4−ジイソシアナート、ビス (イソシアナトフェニル)エチレン、3,3−ジメトキシビフェニル−4,4−ジイソシアナート、フェニルイソシアナトエチルイソシアナート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアナート、ヘキサヒドロジフェニルメタン−4,4−ジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、
【0028】
ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナト−2−イソシアナトメチル−3−チアペンタン等の含硫脂肪族イソシアナート、
【0029】
ジフェニルスルフィド−2,4−ジイソシアナート、ジフェニルスルフィド−4,4−ジイソシアナート、3,3−ジメトキシ−4,4−ジイソシアナトジベンジルチオエーテル、ビス(4−イソシアナトメチルベンゼン)スルフィド、4,4−メトキシベンゼンチオエチレングリコール−3,3−ジイソシアナートなどの芳香族スルフィド系イソシアナート、
【0030】
ジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソシアナート、2,2−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアナート、3,3−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアナート、3,3−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6−ジイソシアナート、4,4−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアナート、3,3−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソシアナート、4,4−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3−ジイソシアナートなどの芳香族ジスルフィド系イソシアナート、2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン等の含硫複素環化合物、
【0031】
その他にも、2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−2−メチル−1,3−ジチオランなどが挙げられるが、例示化合物に限定されるものではない。また、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。
【0032】
これら化合物の内、本願発明の光学物性の要求を加味すれば、より好ましいものとしては、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、キシリレンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−2−メチル−1,3−ジチオランからなる化合物群から少なくとも1種選択された化合物である。
【0033】
本願発明に係る式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオールは2官能であるため、上記のイソシアナートの内、2官能のイソシアナートを使用した場合、その3次元架橋性がなく、光学用途の樹脂としては、耐熱性に劣る場合がある。そこで、3次元架橋性を上げるために公知のポリチオールを添加することも可能である。ここでいうポリチオールとは、分子内に2個以上のメルカプト基を有する化合物であるが、3次元架橋性を向上させることが目的であれば、分子内に3個以上メルカプト基を有する化合物もしくは、メルカプト基を2個有し、かつ、その他にイソシアナート基と反応可能な活性水素基を1個以上有する化合物や、メルカプト基を1個有し、かつ、その他にイソシアナート基と反応可能な活性水素基を2個以上有する化合物であれば添加することが可能である。
【0034】
ここで3次元架橋性を上げるために添加を可能とするポリチオールの具体例としては、1,2,3−トリメルカプトプロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトチオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトチオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス3−メルカプトプロピオネート)、1,1,1−トリメチルメルカプトエタン、1,1,1−トリメチルメルカプトプロパン、2,5−ジメルカプトメチルチオファン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3−メルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン等の脂肪族チオール、及び、
1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,2,5−トリメルカプトベンゼン等の芳香族チオールが挙げられるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。これら例示化合物は、単独でも2種類以上混合して使用しても良い。
【0035】
これら化合物の内、本願発明の光学物性の要求を加味すれば、より好ましいものとしては、1,2,3−トリメルカプトプロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタンからなる化合物群から少なくとも1種選択された化合物である。
【0036】
その他に3次元架橋性を上げる方法として、公知のエピスルフィド化合物、エポキシ化合物、オレフィン化合物等を添加することも可能である。
【0037】
ここで、添加を可能とするエピスルフィド化合物の具体例としては、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、3,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1−(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]エタン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物、及び、
【0038】
1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物、及び、
【0039】
1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフォン、4,4’−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族2,3−エピチオプロピルチオ化合物等を挙げることができるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。これら例示化合物の内、より好ましい化合物としては、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド及びビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドであり、より好ましい化合物としてはビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドである。
【0040】
また、上記のエピスルフィド化合物のエピチオプロピルチオ基をエピチオプロピルオキシ基に置き変えた化合物も挙げることができる。しかしながら、本願発明の光学物性の要求を加味すれば好ましい化合物は、エピチオプロピルチオ基を有する化合物であり、また、上記の例示化合物のみに限定されるものではない。また、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわない。
【0041】
更に、添加を可能とするエポキシ化合物の具体例としては、上記のエピスルフィド化合物のエピチオ基をエポキシ基に置き変えた化合物を挙げることができる。しかしながら、エポキシ化合物についても本願発明の光学物性の要求を加味すれば好ましい化合物は、エポキシプロピルチオ基を有する化合物であり、また、上記の例示化合物のみに限定されるものではない。また、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわない。
【0042】
添加を可能とするオレフィン化合物の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、1,1−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)メタン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレート、メチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のアリル化合物、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9−ジビニルスピロビ(m−ジオキサン)等のビニル化合物、ジイソプロペニルベンゼン等が挙げられるが、例示化合物のみに限定されるものではない。
【0043】
必要とする物性を満足することが可能である範囲であれば、これらオレフィン化合物はいずれも単独でも2種類以上を混合して使用しても何ら差し支えない。
【0044】
本発明に用いる硬化触媒としては3級アミン類、ホスフィン類、4級アンモニウム塩類、4級ホスホニウム塩類、ルイス酸類、ラジカル重合触媒類、カチオン重合触媒類等が通常用いられる。
【0045】
硬化触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチレンジアミン、トリフェニルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−イソプロピルモルホリン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、β−ピコリン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルピペリジン、2,2’−ビピリジル、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン等の3級アミン類、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリn−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、テトラクロロ錫、ジブチル錫オキサイド、ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン、塩化亜鉛、アセチルアセトン亜鉛、塩化アルミ、フッ化アルミ、トリフェニルアルミ、テトラクロロチタン、酢酸カルシウム等のルイス酸、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、n−ブチル−4,4’−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のラジカル重合触媒、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ燐酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ砒酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロ硼酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ燐酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ砒酸等のカチオン重合触媒が挙げられるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0046】
これら例示化合物の内、好ましいものはジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、テトラクロロ錫、ジブチル錫オキサイド、ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン等の有機錫化合物である。
上記硬化触媒は単独でも2種以上を混合して用いても良いが、活性の異なる2種類以上の硬化触媒を併用すると得られる樹脂の色相や光学ひずみ(脈離)が良好となる場合がある。
【0047】
硬化触媒の添加量は、本願発明に係る式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオール化合物を含有する組成物の総重量に対して0.001〜1wt%の範囲で用いるのが好ましく、0.005〜5wt%の範囲で使用するとより好ましい。硬化触媒の添加量が0.001〜1wt%の場合は重合性は良好であり、調合時のポットライフや得られる樹脂の透明性、光学物性、又は耐候性の点で好ましい。
【0048】
本発明の樹脂(例えば、プラスチックレンズ)を得る際の代表的な重合方法としては、注型重合が挙げられる。即ち、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド間に、硬化触媒を含有する本願発明に係る式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオール化合物を含有する組成物を注入する。この時、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等の処理を行っても何ら差し支えはない。
【0049】
次いで、オーブン中または水中等の加熱可能装置内で加熱することにより硬化させ、樹脂を取り出すことができる。
【0050】
本発明の樹脂を得るための硬化触媒等の種類や量、モノマーの種類や割合は重合する組成物の構成により異なり、よって、一概に限定する事はできない。
【0051】
成型モールドに注入された本発明の重合性組成物の加熱重合条件は、本願発明の式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオール化合物を含有する組成物の組成、硬化触媒の種類、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定できないが、およそ−50〜200℃の温度で1〜100時間かけて行われる。
【0052】
場合によっては、10℃〜150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温し、1〜80時間で重合させると好ましい。
【0053】
更には、本発明の重合性組成物は、紫外線の照射により重合時間の短縮を図ることも可能である。この際には、ラジカル重合触媒等の硬化触媒が必要となる場合がある。
【0054】
本発明の樹脂成形の際には、目的に応じて公知の成形法におけると同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、外部または内部離型剤、密着性向上剤などの種々の物質を添加してもよい。
【0055】
また、取り出した樹脂については、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。アニール温度は50℃〜200℃の間で行われるが、90℃〜150℃で行うと好ましい。100℃〜130℃であればより好ましい。
【0056】
本願発明に係る式(1)〜(3)で表される構造を有するポリチオールを含有する組成物を硬化してなる樹脂は、色相良好で、屈折率とアッベ数が高く、光学歪みのない透明性に非常に優れた樹脂である。本樹脂は、注型重合時のモールドを変えることにより種々の形態の成形体として得ることができ、高度な屈折率や透明性を必要とする、眼鏡レンズ、カメラレンズ、発光ダイオード(LED)等の光学用樹脂としての各種の用途に使用することが可能である。特に、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料として好適である。
【0057】
さらに、本発明の樹脂を用いたレンズでは、必要に応じ、反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいは、ファッション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理等の物理的あるいは化学的処理を施すことができる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。尚、得られた樹脂の性能試験のうち、屈折率、光学歪みは以下の試験法により評価した。
・屈折率(ne):プルフリッヒ屈折計を用い20℃で測定した。
・耐熱性:TMAペネトレーション法(50g荷重、ピン先0.5mmφ)
・光学歪み :高圧水銀灯下目視で観察した。光学歪みのあるものを×、歪みのないものを○とした。
【0059】
実施例1
攪拌機と温度計、ジムロートを備えた反応機中に70%水硫化ナトリウム160.2g(2.0mol)とN,N−ジメチルホルムアミド150gを装入し、撹拌して結晶体を膨潤・溶解させた。続いて、48.5%水酸化ナトリウム水溶液164.9g(2.0mol)を内温40℃付近で1時間かけて滴下し、50℃にて1時間熟成した。更に、二硫化炭素152.3g(2.0mol)を内温50℃付近で2時間かけて滴下し、60℃にて2時間熟成した。ここまでで得られた反応液は、トリチオ炭酸ナトリウムの溶液である。次に前述と同様の反応機中に1,1,2−トリクロロエタン133.4g(1.0mol)を仕込んだ所へ、全反応で得られたトリチオ炭酸ナトリウムの溶液を内温60℃付近で2時間かけて滴下して装入し、70℃付近で更に2時間熟成した。このとき、原料の1,1,2−トリクロロエタンの消失を分析で確認した。次に、トルエン400gを装入した後、35%塩酸水溶液304g(3.0mol)を滴下しながら装入し、同時に揮発してくるガス(ニ硫化炭素)をトラップして回収した。40℃にて2時間熟成後分液し、水層は廃棄した。更に得られた有機層を水500gで3回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した後に濃縮した。濃縮残査は、88.6gであった。濃縮残査のIR分析を行ったところ、2536cm-1にメルカプト基の吸収を確認した。得られた残査をシリカゲルのショートカラムを通し脱タールした後に、単蒸留を行い、65Pa、143℃の留分を回収した。回収した留分は22.2gであり、無色透明であった。回収した留分は、分析の結果、2−メルカプトメチル−4−メルカプト−1,3−ジチオランと2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアンまたは2,6−ジメルカプト−1,4−ジチアンと2,4−ジメルカプトメチル−1,3−ジチエタンの混合物であった。得られた混合物を以下、化合物(A)とする。
【0060】
化合物(A)の同定データーを以下に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【化10】
【0063】
【表2】
【0064】
【化11】
【0065】
【表3】
【0066】
【化12】
【0067】
実施例2
化合物(A)の性能を確認するために、ポリイソシアナートと重合を行った。化合物(A)13.8gと3次元架橋剤として4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン(以下化合物(B)とする)4.3gとポリイソシアナートとしてm−キシリレンジイソシアナート(以下化合物(C)とする)18.8gを混合したところへ、触媒としてジブチル錫ジクロライドを200ppm、内部離型剤として酸性リン酸エステル(商品名ZelecUN)を1000ppm添加し混合溶解した後で濾過を行い透明溶液とした。得られた透明溶液を600Paにて1時間脱気を行った。脱気終了後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ混合液を注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃〜120℃まで徐々に昇温し24時間で重合した。重合終了後オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた樹脂は無色透明で良好なものであった。得られた樹脂の光学物性及び耐熱性を表4に示した。
【0068】
比較例1
化合物(A)の代わりに2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(以下化合物(D)とする)を15.9g使用する以外は、実施例2と同様にして樹脂を作成した。得られた樹脂は無色透明なものであった。得られた樹脂の光学物性及び耐熱性を表4に示した。
【0069】
比較例2
化合物(A)と(B)の合計の代わりに化合物(B)を17.3g使用する以外は、実施例2と同様にして樹脂を作成した。得られた樹脂は無色透明なものであった。得られた樹脂の光学物性及び耐熱性を表4に示した。
【0070】
【表4】
【0071】
【発明の効果】
本発明により、超高屈折率分野における光学材料に好適に使用される蒸留可能なポリチオールが見出され、該ポリチオールを使用した透明硬化樹脂を得ることが可能となり、特にメガネレンズの分野でレンズの薄型化に貢献する。
Claims (9)
- 請求項1に記載の製造方法により生成される示性式C4H8S4で表されるポリチオール。
- 請求項2又は3に記載のポリチオールを含有する組成物。
- 請求項4に記載の組成物を使用して硬化して得られる透明樹脂。
- 請求項4に記載の組成物とポリイソシアナートを使用して硬化して得られる透明樹脂。
- 請求項5又は6に記載の透明樹脂からなる光学材料。
- 請求項7に記載の光学材料からなるプラスチックレンズ。
- 請求項5又は6に記載の透明樹脂を注型重合で得ることを特徴とする透明樹脂の製造方法。
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