以下に、本発明を実施するための複数の形態について説明する。各形態において、先行する形態で説明している事項に対応する部分については同一の参照符を付し、重複する説明を省略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。
図1は、本発明の第1の実施の形態の光学調整装置50を示す斜視図である。光学調整装置50は、光ディスクの厚み寸法の誤差によって球面収差が発生した場合に、その球面収差を調整する装置である。光学調整装置50は、光源である半導体レーザ素子と、立上げミラー53を介して光を集光する対物レンズ54との間の光経路の中途部に設けられる。光学調整装置50は、第2レンズである凹レンズ51と、2枚1群の第1レンズである凸レンズ(以下、単に「凸レンズ」という)52と、凹レンズ51を保持する第2レンズホルダ64と、凸レンズ52を保持する第1レンズホルダ73と、ねじ状部材である送りねじ部材80と、送りねじ部材80と係合する第4減速ギア79と、連結部材であるグリップラック81とを有する。
図2は、光学調整装置50を示す分解斜視図である。第1レンズホルダ73は、凸レンズ52を保持する保持部67を有している。保持部67は板状である。保持部67には、その厚み方向に貫通する孔部66が形成されている。さらに孔部66には、凸レンズ52が嵌まり込んでいる。その保持部67から凸レンズ52の軸線に沿って延びるように、案内部68が形成されている。案内部68は、軸線に垂直な断面を有し、その断面の形状が一様な略C字状に形成されている。また保持部67に形成される孔部66の軸線と、案内部68の軸線とが一致するように、保持部67および案内部68が形成されている。
案内部68は、基部69と、基部69の両端部からそれぞれ立上るように構成される立上がり部70と、各立上がり部70の先端から互いに近づく方向に突出する突出部71とを有している。また案内部68は、内周面が、略円筒状に形成されており、その空間は、突出部71間を介して外部に開放されるように構成されている。突出部71間の距離は、案内部68の直径よりも小さく構成されている。また立上がり部70には、凹み溝72が、案内部68の軸線と平行に一様に延びて形成されている。
第2レンズホルダ64は、円筒状の本体部56の周方向一カ所に、外方に突出する凸部57を有している。本体部56には、凹レンズ51が嵌まり込んでおり、ねじ孔61にねじ部材62などが係合することによって凹レンズ51が固定される。第2レンズホルダ64は、本体部56に嵌まり込んでいる凹レンズ51の軸線と平行に延びるように形成されている。また凸部57も、本体部56に沿うように、軸線方向に延びて形成されている。凸部57には、凸部57から突出する第1上面突起部58および第2上面突起部59が設けられている。
第2レンズホルダ64の本体部56の外径は、第1レンズホルダ73の案内部68の内径よりわずかながら小さくなるように設計されている。この第2レンズホルダ64は、本体部56が、第1レンズホルダ73の案内部68に嵌まり込む。また凸部57が、第1レンズホルダ73の各突出部71間に嵌まり込み、本体部56が、案内部68によって、軸線に垂直な方向の変位が阻止される状態で、軸線に沿って案内される。さらに凸部57は、案内部68の突出部71間に嵌まり込み、凸部57の周方向両端部63が、案内部68の突出部71間によって支持されることによって、軸線周りの回転が阻止される状態で、軸線方向に案内される。
また第2レンズホルダ64の本体部56の軸線方向の長さ寸法は、第1レンズホルダ73の案内部68の軸線方向の長さ寸法よりも短くなるように形成されている。したがって第2レンズホルダ63は、第1レンズホルダ73の案内部68に嵌まり込んでいる状態で、凹レンズ51を凸レンズ52に近づける近接方向および凹レンズ51を凸レンズ52から離反させる離反方向(以下、単に「近接離反方向X」という場合がある)に変位することができる。このようにして、第2レンズホルダ64は、第1レンズホルダ73に沿って案内されるので、凹レンズ51と凸レンズ52との相対位置を調整することができる光学調整装置50を実現することができる。
グリップラック81には、第2レンズホルダ64の第1上面突起部58が嵌入するラック孔82と、第2レンズホルダ64の第2上面突起部59が嵌入する切り欠き83とが形成されている。またグリップラック81は、送りねじ部材80に噛合する係止部84を有する。またグリップラック81は、弾発的に送りねじ部材に当接する山形に曲がる山形部85を有するように形成されている。グリップラック81が、山形部85を有することによって、グリップラック81に、送りねじ部材80に近づく方向へ押圧力が与えられると、グリップラック81は、弾発的に変形する。またグリップラック81は、量産性を考慮して金型にて製作される。
図3は、光学調整装置50を示す平面図である。図4は、光学調整装置50を示す正面図である。図4では、ベース88に載置されるギア収納台87の第1レンズホルダ73側を一部省略して示している。本実施の形態において、近接離反方向Xおよび第1レンズホルダ73の厚み方向にそれぞれ垂直な方向を「Y軸方向」と定義する。図3および図4において、Y軸方向を「Y」と表記する。
光学調整装置50は、さらに第2レンズホルダ64を駆動する駆動源75と、駆動源75の駆動力を送りねじ部材80に伝達する第1減速ギア76、第2減速ギア77、第3減速ギア78および第4減速ギア79とを有する。また第1〜第4減速ギア76〜79、送りねじ部材80および駆動源75は、ギア収納台87に組込まれる。さらに、ギア収納台87および第1レンズホルダ73は、ベース88に載置される。
たとえば電動機によって構成される駆動源75の駆動力は、第1〜第4減速ギア76〜79を介して、送りねじ部材80に伝達され、送りねじ部材80が回転することによって、送りねじ部材80と噛合するグリップラック81が、近接方向および離反方向である近接離反方向Xに変位する。グリップラック81のラック孔82および切り欠き83は、第2レンズホルダ64の第1上面突起部58および第2上面突起部59が嵌入するように設けられているので、グリップラック81が近接離反方向Xへ変位すると、第2レンズホルダ64の第1上面突起部58および第2上面突起部59に、近接離反方向Xへ変位する力が与えられる。これによって第2レンズホルダ64が、第1レンズホルダ73の案内部68に沿って近接離反方向Xへ変位する。したがって光学調整装置50では、球面収差が生じる場合に、凹レンズ51を保持する第2レンズホルダ64を、近接離反方向Xへ変位させることによって、第1レンズホルダ73との相対位置を調整し、球面収差を調整、換言すると球面収差を補正することができる。
前述のように本実施の形態によれば、周方向1カ所に外方へ突出する凸部57が形成されている第2レンズホルダ64が、第1レンズホルダ73の略C字状の案内部68に嵌まり込むように設けられ、第2レンズホルダ64の凸部57の周方向両端部63が、第1レンズホルダ73の案内部68の周方向両端部によって案内される。またグリップラック81が、第1および第2レンズホルダ73,64のいずれか一方、本実施の形態では第2レンズホルダ64に設けられ、さらにグリップラック81に設けられる係止部84が、送りねじ部材80と噛合するように設けられる。
これによって駆動源75の駆動力が、送りねじ部材80を介してグリップラック81に伝達することができ、グリップラック81が変位することによって、第1および第2レンズホルダ73,64のいずれか一方、本実施の形態では第2レンズホルダ64が変位し、第2レンズホルダ64が、第1レンズホルダ73の略C字状の案内部68に沿って変位することができる。したがって複数のガイドを要することなく、第2レンズホルダ64を第1レンズホルダ73に対して変位させることができ、簡単な構成で光学調整装置50を実現することができ、光ピックアップ装置の光学系の球面収差を調整、換言すると球面収差を補正することができる。また光学調整装置50の簡素化および小形化を実現することができる。
また本実施の形態によれば、グリップラック81は山形部85を有しているので、グリップラック81に、送りねじ部材80に近づく方向へ押圧力が与えられると、弾発的に変形して送りねじ部材80に当接することができる。これによって、グリップラック81の係止部84と送りねじ部材80とを噛合することができる。したがって駆動源75の駆動力によって、送りねじ部材80が回転駆動して、グリップラック81が変位する場合において、グリップラック81は、送りねじ部材80の回転にともなって変位することができる。したがって外部からの衝撃などによって送りねじ部材80とグリップラック81との噛合状態が解除され、位置ずれが生じることを防止することができる。
またグリップラック81と送りねじ部材80との間に摩擦力が生じて、各部材が損傷することを防ぐことができ、信頼性の高い光学調整装置50を実現することができる。換言すると、グリップラック81が移動するときの負荷を一定にすることができ、負荷増減による動作の不具合を回避することができる。
また駆動源75の駆動力が、送りねじ部材80を介してグリップラック81に伝達され、グリップラック81は、送りねじ部材80の回転にともなって変位することができ、第2レンズホルダ64を第1レンズホルダ73に対して相対変位させて、光ピックアップ装置の光学系の球面収差を調整、換言すると球面収差を補正することができる。
次に、球面収差を調整するときの第2レンズホルダ64の位置調整について説明する。光学調整装置50は、さらにフォトインタラプタ90および遮蔽板91を有する。フォインタラプタ90は、発光部および受光部を有する光センサである。フォトインタラプタ90は、第1レンズホルダ73のY軸方向一端部に設けられる。遮蔽板91は、フォトインタラプタ90で検知可能な被検知部であり、第2レンズホルダ64に設けられる。遮蔽板91は、フォトインタラプタ90とY軸方向に間隔をあけて設けられる。本実施の形態の遮蔽板91は、グリップラック81に一体形成される。フォトインタラプタ90は、光反射型のフォトインタラプタであり、発光ダイオード(Light Emitting Diode;略称:LED)によって構成される発光部およびフォトダイオードによって構成される受光部を含む。
フォトインタラプタ90は、発光部から光を発し、第2レンズホルダ64に設けられる遮蔽板91または第1レンズホルダ73で反射した光を受光部で受光する。受光部は、受光した光に基づいて電気信号を検出する。フォトインタラプタ90は、受光部によって検出される電気信号に基づいて、第1レンズホルダ73の第2レンズホルダ64に対する相対位置を検知する位置センサとして機能する。
図5は、情報記録再生装置135の構成を簡略化して示すブロック図である。情報記録再生装置135は、光学調整装置50、記憶部136および制御部137を含む。光学調整装置50は、フォトインタラプタ90および駆動源75を含む。記憶部136には、球面収差を調整するための制御プログラムが記憶されている。制御部136は、記憶部136に記憶されている制御プログラムに従って、第1レンズホルダ73に対する第2レンズホルダ64の相対位置を変位させて、光学系の球面収差を調整するように、光学調整装置50を制御する。
フォトインタラプタ90は、受光部によって検出される電気信号を制御部137に与える。制御部137は、フォトインタラプタ90から与えられる電気信号に基づいて、第2レンズホルダ64の第1レンズホルダ73に対する相対位置を把握し、球面収差が最小となる第2レンズホルダ64の第1レンズホルダ73に対する相対位置を算出する。制御部137は、算出した相対位置に第2レンズホルダ64を移動させるための電気信号を、光学調整装置50の駆動源75に与える。
図6は、第2レンズホルダ64の位置調整に関する制御部137の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、光学調整装置50を備える情報記録再生装置135に電源が投入されるか、または光ディスクが入れ換えられたときに繰返し実行される。本処理は、制御部137によって実行される。
ステップa1では、フォトインタラプタ90の受光部から与えられる電気信号に基づいて、第2レンズホルダ64を、前記電気信号の出力が変化する位置に相当する初期位置SPへ移動させるための指令を表す信号(以下、単に「初期移動指令信号」という)を、光学調整装置50の駆動源75に与える。これによって駆動源75は、制御部137から与えられる初期移動指令信号に従って、駆動力を送りねじ部材80に伝達する。これによって送りねじ部材80が回転して、送りねじ部材80と噛合するグリップラック81が、近接離反方向Xに変位する。これによってグリップラック81が装着されている第2レンズホルダ64が、第1レンズホルダ73の案内部68に沿って近接離反方向Xへ変位して、初期位置SPに移動する。第2レンズホルダ64が初期位置SPに移動すると、ステップa2に進む。
ステップa2では、第2レンズホルダ64が、近接離反方向一方X1、すなわち第2レンズホルダ64が第1レンズホルダ73に近接する方向へ移動させるための指令を表す信号(以下、単に「近接移動指令信号」という)を駆動源75に与える。駆動源75は、制御部137から与えられる近接移動指令信号に従って、駆動力を送りねじ部材80に伝達する。これによって第2レンズホルダ64を近接離反方向一方X1へ移動させる。第2レンズホルダ64が近接離反方向一方X1に移動すると、ステップa3に進む。
ステップa3では、第2レンズホルダ64が近接離反方向一方X1に移動し、初期位置SPに戻るまでの間に電気信号を検出させるための指令を表す信号(以下、単に「近接信号検出指令信号」という)をフォトインタラプタ90に与える。フォトインタラプタ90は、制御部137から与えられる近接信号検出指令信号に従って、発光部から光を発し、受光部で反射光を受光して電気信号を検出する。受光部で検出された電気信号は、制御部137を介して記憶部136に一時的に記憶される。第2レンズホルダ64が初期位置SPに戻ると、ステップa4に進む。
ステップa4では、近接離反方向他方X2、すなわち第2レンズホルダ64が第1レンズホルダ73から離反する方向へ移動させるための指令を表す信号(以下、単に「離反移動指令信号」という)を駆動源75に与える。駆動源75は、制御部137から与えられる離反移動指令信号に従って、駆動力を送りねじ部材80に伝達する。これによって第2レンズホルダ64を近接離反方向他方X2へ移動させる。第2レンズホルダ64が近接離反方向他方X2に移動すると、ステップa5に進む。
ステップa5では、第2レンズホルダ64が近接離反方向他方X2に移動し、初期位置SPに戻るまでの間に電気信号を検出させるための指令を表す信号(以下、単に「離反信号検出指令信号」という)をフォトインタラプタ90に与える。フォトインタラプタ90は、制御部137から与えられる離反信号検出指令信号に従って、発光部から光を発し、受光部で反射光を受光して電気信号を検出する。受光部で検出された電気信号は、制御部137を介して記憶部136に一時的に記憶される。第2レンズホルダ64が初期位置SPに戻ると、ステップa6に進む。
ステップa6では、記憶部136に一時的に記憶された電気信号を読出し、その読出した電気信号に基づいて、球面収差が最小となる第2レンズホルダ64の位置を算出する。球面収差が最小となる第2レンズホルダ64の位置が算出されると、ステップa7に進む。
ステップa7では、算出した球面収差が最小となる位置へ第2レンズホルダ64を移動させるための指令を表す信号(以下、単に「移動指令信号」という)を駆動源75に与える。駆動源75は、制御部137から与えられる移動指令信号に従って、駆動力を送りねじ部材80に伝達する。これによって第2レンズホルダ64を、球面収差が最小となる位置へ移動させる。第2レンズホルダ64が、球面収差が最小となる位置に移動すると、ステップa8に進む。
ステップa8では、球面収差が最小であるか否かを判断し、最小であれば本処理を終了し、最小でなければステップa2に戻り、前述と同様の処理を繰返し行う。
前述のように本実施の形態によれば、フォトインタラプタ90によって、遮蔽板91の位置を検知することによって、第2レンズホルダ64の第1レンズホルダ73に対する相対位置を検知することができる。これによって、たとえば第2レンズホルダ64の初期位置SPを検知して、その初期位置SPから第2レンズホルダ64を、近接離反方向Xに移動させるなどして球面収差が最小となるように調整、換言すると球面収差が最小となるように補正することができる。
また第2レンズホルダ64に設けられる遮蔽板91を、グリップラック81に一体形成することによって、光学調整装置50における部品点数を低減することができ、光学調整装置50の簡素化および小形化を実現することができる。
図7は、本発明の第2の実施の形態の光学調整装置93を簡略化して示す正面図である。図8は、図7のセクションIXを拡大して示す正面図である。図9は、図7に示す光学調整装置93を簡略化して示す平面図である。本実施の形態の光学調整装置93は、第1の実施の形態の光学調整装置50と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符を付して説明を省略する。以下の実施の形態において、近接離反方向Xおよび第1レンズホルダ73の厚み方向にそれぞれ垂直な方向を「Y軸方向」と定義する。また、以下の実施の形態の光学調整装置を示す図において、Y軸方向を「Y」と表記する。
光学調整装置93は、凹レンズ51と、凸レンズ52と、凹レンズ51を保持する第2レンズホルダ64と、凸レンズ52を保持する第1レンズホルダ73と、不図示の駆動源と、駆動源の駆動力が伝達されて回転駆動するねじ状部材に相当する送りねじ部材80と、送りねじ部材80と係合する第4減速ギア79と、連結部材であるグリップラック81とを有する。グリップラック81には、第2レンズホルダ34に装着され、送りねじ部材80に噛合するように、係止部84が形成される。光学調整装置93は、凹レンズ51を保持する第2レンズホルダ64と凸レンズ52を保持する第1レンズホルダ73との相対位置を調整することによって、光学系の球面収差を調整、換言すると球面収差を補正する場合に用いられる。
送りねじ部材80は、たとえば、おねじ部材である。送りねじ部材80は、光学調整装置93のベース88に、軸線が凹レンズ51および凸レンズ52の光軸L11と平行になるように回転可能に支持され、駆動源からの駆動力が伝達されて回転駆動する。
係止部84は、おねじ部材である送りねじ部材80に対応して噛合するように、めねじが刻設されためねじ部材である。おねじ部材である送りねじ部材80が回転駆動することによって、送りねじ部材80と噛合する係止部84は、近接離反方向Xと平行な方向に直線駆動する。係止部84が近接離反方向Xと平行な方向に直線駆動することによって、係止部84が形成されるグリップラック81、さらにグリップラック81が装着される第2レンズホルダ64および第2レンズホルダ64に載置される凹レンズ51が、近接離反方向Xに移動することができる。
第1レンズホルダ73は、光軸L11に対して垂直な断面形状、換言すると近接離反方向Xに対して垂直な断面形状が略C字状に形成される。第1レンズホルダ73の内部空間を形成する内壁部68aと開口部68bが、第2レンズホルダ64を案内する案内部68を構成する。第2レンズホルダ64は、光軸L11に対して垂直な断面形状、換言すると近接離反方向Xに対して垂直な断面形状が略円形状に形成され、かつ円周方向の一部に半径方向外方に向かって突出する凸部57が形成される。
第2レンズホルダ64は、第1レンズホルダ73の案内部68に嵌まり込み、特に凸部57が第1レンズホルダ73の開口部68bに嵌まり込み、案内部68で案内されて移動することができるように構成される。前述のように第2レンズホルダ64には、グリップラック81が装着され、グリップラック81が、送りねじ部材80と係止部84とを介して伝達される駆動力によって近接離反方向Xに駆動することができるので、第2レンズホルダ64が近接離反方向Xに移動することができる。
本実施の形態では、凸レンズ52を保持する第1レンズホルダ73の位置は固定であり、凹レンズ51を保持する第2レンズホルダ64が近接離反方向Xに移動可能に構成される。したがって光学調整装置93では、第1レンズホルダ73に対する第2レンズホルダ64の相対位置を変位させることによって、凹レンズ51と凸レンズ52との相対位置を調整し、球面収差を調整、換言すると球面収差を補正することができる。
第1レンズホルダ73に対する第2レンズホルダ64の相対位置を変位させるとき、第1レンズホルダ73の案内部68と、第2レンズホルダ64の外周部および凸部57とが摺動して摺動負荷が発生する。本実施の形態の光学調整装置93では、図7に示すように、グリップラック81の係止部84は、送りねじ部材80に対して一定の与圧P11を負荷する状態で噛合するように設けられる。
したがって与圧P11が作用する方向と正反対の方向に、与圧P11に対する反力P12が作用し、反力P12は、特に第2レンズホルダ64に対しては、光軸L11に関して時計まわり方向に作用する。これによって、第2レンズホルダ64の凸部57の周方向両端部63のうち係止部84から遠い方の周方向両端部63、換言するとY軸方向一方側の周方向両端部(以下、単に「周方向一端部63a」という)と、第1レンズホルダ73の開口部68b1とが摺動する摺動部分は、他の摺動部分に比べて摺動負荷が大きくなる傾向にある。ここで、第1レンズホルダ73の内部空間を形成する開口部は、前記のように参照符「68b」で示したが、特に周方向一端部63aと摺動する第1レンズホルダ73の開口部を参照符「68b1」で示す。
図8では、周方向一端部63aと、周方向一端部63aに当接する第1レンズホルダ73の開口部68b1との摺動部分であって、摺動負荷が他の摺動部分に比べて大きくなる摺動部分を、斜線のハッチングを付して示している。本実施の形態の光学調整装置93において、第2レンズホルダ64の周方向一端部63aに対して当接する第1レンズホルダ73側の摺動部分である開口部68b1は、曲率を有する形状いわゆるR(アール)を付けるように形成されている。換言すると、開口部68b1は、Y軸方向他方側、すなわち凸部57の周方向両端部63のうちY軸方向他方側の周方向両端部であって、係止部84寄りの周方向両端部(以下、単に「周方向他端部」という)側に突出する曲面形状を成している。
このように第1レンズホルダ73の開口部68b1にRを付ける、換言すると開口部68b1を曲面形状に形成することによって、本来摺動負荷が大きくなる傾向を示す摺動部分である周方向一端部63aと開口部68b1とにおいて、その摺動負荷を著しく軽減することができる。換言すると、周方向一端部63aと開口部68b1との当接面積を小さくして摺動摩擦を小さくするとともに、開口部68b1に角部分をなくすことによって、周方向一端部63aを傷付けることを防止することができ、また周方向一端部63aに対して開口部68b1が食込むことを防止することができる。これによって前記周方向一端部63aと開口部68b1とが摺動するときの抵抗を小さくすることができ、滑らかな摺動を実現することができる。
第1レンズホルダ73と第2レンズホルダ64との相対位置の調整に係る摺動負荷を軽減することによって、その位置決め精度を高くすることができるので、高精度に球面収差を調整、換言すると高精度に球面収差を補正することができる。具体的に述べると、球面収差が最小となるように補正することができる。
本実施の形態では、第2レンズホルダ64の周方向一端部63aに対して当接する第1レンズホルダ73側の摺動部分である開口部68b1が、Y軸方向他方側、つまり周方向他端部側に突出する曲面形状に形成される場合について述べたが、このような構成に限定されない。本発明の他の実施の形態では、第2レンズホルダ64の周方向他端部に対して当接する第1レンズホルダ73側の摺動部分である開口部68bが、Y軸方向一方側、つまり周方向一端部63a側に突出する曲面形状に形成されてもよい。このように構成される場合でも、前述の第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また周方向一端部63aに対して当接する第1レンズホルダ73側の摺動部分である開口部が、Y軸方向他方側に突出する曲面形状に形成され、かつ周方向他端部に対して当接する第1レンズホルダ73側の摺動部分である開口部が、Y軸方向一方側に突出する曲面形状に形成されてもよい。このように構成することによって、周方向両端部63と第1レンズホルダ73の開口部68bとの摺動部分における摺動摩擦を小さくすることができるので、さらに摺動負荷を軽減することができ、さらに滑らかな摺動を実現することができる。
図10は、本発明の第3の実施の形態の光学調整装置95を簡略化して示す平面図である。本実施の形態の光学調整装置95は、第2の実施の形態の光学調整装置93と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符を付して説明を省略する。
凹レンズ51を保持する第2レンズホルダ97は、光軸L11に対して垂直な断面形状、換言すると近接離反方向Xに対して垂直な断面形状が略円形状に形成され、かつ円周方向の一部に半径方向外方に向かって突出する凸部が形成される。また第2レンズホルダ97の全体の外観形状は、大略的に円柱状に形成される。
第1レンズホルダ96と第2レンズホルダ97とは、第1レンズホルダ96の案内部と、第2レンズホルダ97の外周部および凸部とが摺動して摺動負荷が発生する。第2レンズホルダ97において、第1レンズホルダ96の案内部を傷付けたり、案内部に食込んだりして摺動負荷を増大し易い摺動部分は、円柱状に形成される第2レンズホルダ64の底面部と側面部とで形成されるコーナ部分98である。本実施の形態の光学調整装置95では、第2レンズホルダ97のコーナ部分98が、曲率を有する形状に、いわゆるRを有するように形成される。
換言すると第2レンズホルダ97において、第1レンズホルダ96に摺動される摺動部分であって周方向両端部を除く摺動部分のうち、第1レンズホルダ96に対して変位する変位方向一端部および他端部と、変位方向に直交する仮想平面を成す第2レンズホルダ97の基端部および他端部の半径方向外周側の外周縁部との成す部分が、曲面形状に形成される。前記第2レンズホルダ64の側面部は、変位方向一端部および他端部に相当し、前記第2レンズホルダ64の底面部は、前記第2レンズホルダ97の基端部および他端部に相当する。また変位方向は、近接離反方向Xに相当する。
第1レンズホルダ96と第2レンズホルダ97との間には、作製時における成形上の寸法公差のばらつきに起因し、組立てたときにクリアランスが生じることがある。図11は、第1レンズホルダ96と第2レンズホルダ97との間にクリアランスが生じたときの光学調整装置95を示す平面図である。図11では、クリアランスを若干誇張して模式的に示している。
第1レンズホルダ96と第2レンズホルダ97との間にクリアランスが存在する場合、第2レンズホルダ52は光軸L11に対して平行な方向、換言すると近接離反方向Xに円滑な移動をすることができず、光軸L11に対して若干の傾斜角αを成して移動する。したがって、第1レンズホルダ96と第2レンズホルダ97との相対位置を調整するために、第2レンズホルダ97を摺動させるとき、第2レンズホルダ97は光軸L11に対して揺れながら移動、換言するとガタツキが生じた状態で移動する。
このガタツキが生じた状態で、第2レンズホルダ97を第1レンズホルダ96の案内部68に対して摺動させるとき、第2レンズホルダ97のコーナ部分98が角部分を有していると、コーナ部分98が案内部68を傷付けたり、案内部68に食い込んだりする。そこで本実施の形態では、前述のように第2レンズホルダ97のコーナ部分98が曲率を有する形状に形成している。
これによって第1レンズホルダ96に対する第2レンズホルダ97の相対位置を調整するとき、換言すると第2レンズホルダ97を第1レンズホルダ96の案内部68に対して摺動させるとき、第2レンズホルダ97のコーナ部分98によって、第1レンズホルダ96の案内部68を傷付けたり案内部68に食い込んだりすることを防ぐことができ、摺動負荷を軽減することができる。これによって第1レンズホルダ96と第2レンズホルダ97とを高精度に位置決めすることができ、高精度に球面収差を調整、換言すると高精度に球面収差を補正することができる。具体的に述べると、球面収差が最小となるように補正することができる。
図12は、本発明の第4の実施の形態の光学調整装置100を簡略化して示す平面図である。図13は、光学調整装置100を簡略化して示す正面図である。本実施の形態の光学調整装置100は、第2の実施の形態の光学調整装置93と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符を付して説明を省略する。
第2レンズホルダ64に装着されるグリップラック81は、その係止部84が送りねじ部材80に対して一定の与圧P11を負荷する状態で噛合するように設けられるので、与圧P11に対する反力P12が、与圧P11が作用する方向と正反対の方向に作用する。反力P12は、グリップラック81が装着される第2レンズホルダ64に作用し、第2レンズホルダ64の凸部57を第1レンズホルダ101の開口部68bに対して押圧させる。
本実施の形態では、グリップラック81に作用する反力P12によって摺動負荷が大きくなる摺動部分であるところの、第2レンズホルダ64の外周面および係止部84を臨む側と反対側に位置する周方向一端部63aと、第1レンズホルダ101の案内部68におけるY軸方向一方側の部分、換言すると第1レンズホルダ101の案内部68における係止部84から遠い側に位置する部分とで形成される摺動部分102に、潤滑剤が塗布される。図12および図13では、摺動部分102を、斜線のハッチングを付して示している。
潤滑剤としては、特に限定されるものではないけれども、粘度が低い液体状(セミウェット状)のたとえばフッ素系潤滑剤が好適に用いられる。粘度の低い潤滑剤を用いることによって、毛細管現象を利用して第1レンズホルダ101と第2レンズホルダ64との隙間に潤滑剤を充分に塗布することが可能になる。
前述のように本実施の形態によれば、第1レンズホルダ101と第2レンズホルダ64とが当接して摺動する摺動部分102に潤滑剤を塗布することによって、第1レンズホルダ101と第2レンズホルダ64との相対位置を調整するとき、摺動部分102の摺動摩擦を小さくすることができるので、摺動部分102における摺動負荷を軽減することができる。したがって第1レンズホルダ101と第2レンズホルダ64とを高精度に位置決めすることができ、高精度に球面収差を調整、換言すると高精度に球面収差を補正することができる。具体的に述べると、球面収差が最小となるように補正することができる。
本実施の形態では、摺動負荷が大きくなる摺動部分102に潤滑剤を塗布するように構成されているけれども、このような構成に限定されない。本発明の他の実施の形態では、第2レンズホルダ64の外周面および凸部57の側部と、第1レンズホルダ101の案内部68とで形成される摺動面の全体、換言すると第2レンズホルダ64における第1レンズホルダ101に摺動される部分であって周方向両端部63を除く部分全体に潤滑剤を塗布するようにしてもよい。このような構成にすることによって、第1レンズホルダ101と第2レンズホルダ64とが当接して摺動する部分の摺動負荷をさらに軽減することができる。これによって、摺動部分102のみに潤滑剤を塗布する場合に比べて、第1レンズホルダ101と第2レンズホルダ64とをさらに高精度に位置決めすることができ、さらに高精度に球面収差を調整、換言すると、さらに高精度に球面収差を補正することができる。
図14は、本発明の第5の実施の形態の光学調整装置105を簡略化して示す正面図である。本実施の形態の光学調整装置105は、第4の実施の形態の光学調整装置100と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符を付して説明を省略する。
第2レンズホルダ64に装着されるグリップラック81は、その係止部84が送りねじ部材80に対して一定の与圧P11を負荷する状態で噛合するように設けられるので、与圧P11に対する反力P12が、与圧P11が作用する方向と正反対の方向に作用する。
本実施の形態では、グリップラック81に作用する反力P12によって摺動負荷が大きくなる摺動部分であるところの、第2レンズホルダ64の凸部57における係止部84を臨む側と反対側に位置する周方向一端部63aと、第1レンズホルダ101の案内部68における係止部84から遠い側に位置する開口部68b1とで形成される摺動部分106に、被膜処理が施される。図14では、摺動部分106を、斜線のハッチングを付して示している。摺動部分106に形成される被膜としては、摺動摩擦を軽減する特性を有していればよく、特に限定されるものではないけれども、たとえばフッ素系コーティングが好適に用いられる。
前述のように本実施の形態によれば、第2レンズホルダ64の摺動部分106に、摺動摩擦を軽減する被膜処理を施すことによって、第1レンズホルダ101と第2レンズホルダ64との相対位置を調整するとき、摺動部分106の摺動摩擦を小さくすることができるので、摺動部分106における摺動負荷を軽減することができる。したがって第1レンズホルダ101と第2レンズホルダ64とを高精度に位置決めすることができ、高精度に球面収差を調整、換言すると高精度に球面収差を補正することができる。具体的に述べると、球面収差が最小となるように補正することができる。
本実施の形態では、摺動部分106のみに被膜処理を施すように構成されているけれども、このような構成に限定されない。本発明の他の実施の形態では、第2レンズホルダ64の外周面および凸部57の側部と、第1レンズホルダ101の案内部68とで形成される摺動面の全体、換言すると第2レンズホルダ64における第1レンズホルダ101に摺動される部分であって周方向両端部63を除く部分全体に被膜処理を施すようにしてもよい。このような構成にすることによって、第1レンズホルダ101と第2レンズホルダ64とが当接して摺動する部分の摺動負荷をさらに軽減することができる。これによって、摺動部分106のみに被膜処理を施す場合に比べて、第1レンズホルダ101と第2レンズホルダ64とをさらに高精度に位置決めすることができ、さらに高精度に球面収差を調整、換言すると、さらに高精度に球面収差を補正することができる。
図15は、本発明の第6の実施の形態の光学調整装置110を簡略化して示す正面図である。本実施の形態の光学調整装置110は、第2の実施の形態の光学調整装置93と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符を付して説明を省略する。以下の実施の形態において、近接離反方向XおよびY軸方向にそれぞれ垂直な方向を「Z軸方向」と定義する。また、以下の実施の形態の光学調整装置を示す図において、Z軸方向を「Z」と表記する。
本実施の形態のグリップラック111は、第2レンズホルダ64に設けられ、グリップラック111の長手方向他一端部、換言するとY軸方向他端部に設けられる係止部84と、グリップラック111の長手方向他端部、換言するとY軸方向一端部に設けられ、かつ第2レンズホルダ64に支持される突起部113とを有する。
突起部113は、光学調整装置110においてZ軸方向一方、換言するとグリップラック111が装着された第2レンズホルダ64が第1レンズホルダ112に案内された状態で、第1レンズホルダ112に近接する方向に突出するように、グリップラック111に形成される。突起部113の光軸L11に対する垂直な断面形状、換言すると近接離反方向Xに垂直な断面形状は、第1レンズホルダ112に当接する側が半円形状になるように形成される。突起部113は、金属製のグリップラック111を、たとえばプレス成形することによって形成される。
突起部113は、光軸L11方向、換言すると近接離反方向Xに延びるように、好ましくはグリップラック111の短手方向、換言すると近接離反方向Xの全長にわたって形成されてもよい。
前述のように本実施の形態によれば、グリップラック111に突起部113を形成することによって、第1レンズホルダ112と第2レンズホルダ64との相対位置を調整するとき、グリップラック111の突起部113と第1レンズホルダ112とが摺動する。これによって摺動負荷の多くは、グリップラック111の突起部113と、突起部113が摺動する第1レンズホルダ112との間で負担され、第1レンズホルダ112と第2レンズホルダ64との摺動部分の摺動負荷を軽減することができる。
また第2レンズホルダ64に設けられるグリップラック111の係止部84は、送りねじ部材80に噛合され、突起部113は第2レンズホルダ64に支持されるので、第1レンズホルダ112と第2レンズホルダ64との相対位置を調整し、第2レンズホルダ64が第1レンズホルダ112の案内部68に案内されるとき、第2レンズホルダ64が第1レンズホルダ112の案内部68に片当たりすることを防ぐことができる。これによって第1レンズホルダ112と第2レンズホルダ64との摺動負荷を軽減することができる。これによって、第1レンズホルダ112と第2レンズホルダ64とをさらに高精度に位置決めすることができ、さらに高精度に球面収差を調整、換言すると、さらに高精度に球面収差を補正することができる。
図16は、本発明の第7の実施の形態の光学調整装置115を簡略化して示す正面図である。本実施の形態の光学調整装置115は、第2の実施の形態の光学調整装置93と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符を付して説明を省略する。図16では、光学調整装置115の特徴部分のみを示している。
光学調整装置115では、送りねじ部材80に噛合する一対の係止部、具体的には第1係止部117および第2係止部118が、送りねじ部材80から離脱することを防止する離脱防止部119として、グリップラック116に設けられる。第1および第2係止部117,118は、グリップラック116に、Y軸方向に間隔をあけて対向するように設けられる。第1および第2係止部117,118は、送りねじ部材80をY軸方向両側から挟持するようにして、送りねじ部材80に噛合する。
前述のように本実施の形態によれば、グリップラック116に設けられる一対の係止部、具体的には第1係止部117および第2係止部118が、送りねじ部材80を挟持するようにして、送りねじ部材80に噛合する。これによって送りねじ部材80が回転駆動しても、第1および第2係止部117,118が、送りねじ部材80から離脱することを防止することができる。換言すると送りねじ部材の回転駆動によって、第1および第2係止部117,118と送りねじ部材80との噛合状態が解除されてしまうことを防止することができる。
したがって、第1および第2係止部117,118が装着されるグリップラック116、およびグリップラック116が装着される第2レンズホルダ64に対して、駆動源75の駆動力を伝達できなくなるという不具合の発生を防止することができる。これによって、球面収差の調整、換言すると球面収差の補正ができなくなるという不具合の発生を防止することができる。
図17は、本発明の第8の実施の形態の光学調整装置120を簡略化して示す正面図である。本実施の形態の光学調整装置120は、第2の実施の形態の光学調整装置93と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符を付して説明を省略する。図17では、光学調整装置120の特徴部分のみを示している。
光学調整装置120では、グリップラック121に設けられる係止部84が送りねじ部材80から離脱することを防止するための離脱防止部122が、グリップラック121に設けられる。離脱防止部122は、係止部84、さらに具体的には係止部84が装着される部分のグリップラック121に連接し、係止部84に対向する位置まで延びて送りねじ部材80を囲繞するように形成される囲い部123を含んで構成される。
囲い部123は、たとえば金属製であり、グリップラック121と一体に形成される。囲い部123は、グリップラック121に連接する第1連接部124および第2連接部125を含む。第1連接部124は、グリップラック121における係止部84が装着される部分からさらにY軸方向他方、具体的には第1レンズホルダ73から離反する方向に延びた部分において90度の曲げ加工を受けて鉛直下方、換言するとZ軸方向一方、具体的にはベース88に近接する方向に延びた部分である。第2連接部125は、第1連接部124に連なり、第1連接部124のZ軸方向一端部でさらに90度の曲げ加工を受けて水平方向、換言するとY軸方向一方、具体的には第1レンズホルダ73に近接する方向に延びる部分であって、係止部84に対向するように設けられる。
したがって囲い部123は、光軸L11に対して垂直な断面形状、換言すると近接離反方向Xに対して垂直な断面形状が略L字状に形成される。囲い部123に、グリップラック121の係止部84が装着される部分を付加した部分は、光軸L11に対して垂直な断面形状、換言すると近接離反方向Xに対して垂直な断面形状が略U字状に形成され、送りねじ部材80を、送りねじ部材80のZ軸方向両側およびY軸方向他方側から囲繞することができる。
前述のような囲い部123を設けることによって、第2連接部125が、係止部84が送りねじ部材80から外れにくくするためのストッパとして作用するので、囲い部123が離脱防止部122として機能する。本実施の形態では、係止部84が送りねじ部材80から外れない、換言すると係止部84と送りねじ部材80との噛合状態が解除されない範囲のクリアランスを設けている。これによって、第1レンズホルダ73と第2レンズホルダ64との摺動部分に異常な負荷がかかった場合に、または駆動源75が制御範囲を外れる動作をした場合に、第2連接部125と送りねじ部材80とが当接してロック状態を起こさないようにしている。
前述のように本実施の形態によれば、囲い部123を設けることによって、係止部84が、送りねじ部材80から離脱することを確実に防止することができる。これによって、グリップラック121が装着される第2レンズホルダ64に対して駆動源75の駆動力を伝達できなくなるという不具合、すなわち球面収差の調整、換言すると球面収差の補正ができなくなるという不具合の発生を確実に防止することができる。
図18は、光ピックアップ装置130の構成を簡略化して示す図である。光ピックアップ装置130は、光を発する光源131と、光学調整装置50と、立上げミラー132と、対物レンズ133とを含んで構成される。光ピックアップ装置130は、光記録媒体である光ディスク134に情報を書込む処理および光ディスク134から情報を読出す処理の少なくともいずれか一方の処理をするときに用いられる。
光源131は、たとえば半導体レーザ素子によって実現される。光学調整装置50は、前述のように凹レンズ51と凸レンズ52との相対位置を調整することによって、光学系の球面収差を高精度に調整、換言すると球面収差を高精度に補正することができる。立上げミラー132は、光源131から発せられて光学調整装置50を通過した光の経路を90度屈曲させて、対物レンズ133に入射させる。対物レンズ133は、集光系であり、立上げミラー132で屈曲されて入射する光を集光し、光ディスク134の情報記録面に集光させる。
前述のように本実施の形態によれば、光学調整装置50を備える光ピックアップ装置130では、光学調整装置50に設けられる駆動源75の駆動力が、送りねじ部材80およびグリップラック81を介して第2レンズホルダ64に伝達される。これによって第2レンズホルダ64が、第1レンズホルダ73に対して変位することができるので、凹レンズ51と凸レンズ52との相対位置を調整することができ、光学系の球面収差を調整、換言すると球面収差を補正することができる光ピックアップ装置を実現することができる。
図18では、理解を容易にするために、光学調整装置50が備えられる光ピックアップ装置130の構成について述べたが、前述の第2〜第8の実施の形態の光学調整装置93,95,100,105,110,115,120のうちいずれか1つの光学調整装置が備えられる光ピックアップ装置であっても、本実施の形態と同様に実施することができ、同様の効果を得ることができる。
図19は、光学調整装置50を組立てる組立装置140および組立装置140に載置される光学調整装置50を示す正面図である。図20は、光学調整装置50を組立てる組立装置140において、組立装置140に載置される光学調整装置50のグリップラック81に予め定める範囲の押圧力が与えられている状態を示す組立装置140および光学調整装置50を示す正面図である。光学調整装置50を組立てる組立装置140には、組立冶具台141と、圧力センサ142と、押圧手段であるピン143を有するマイクロメータヘッド144と、表示部145と、固着手段146とを有する。光学調整装置50の組立装置140によって、光学調整装置50は組立てられる。
ここでは、理解を容易にするために、組立装置140によって光学調整装置50を組立てる場合について述べたが、前述の光学調整装置95,100,105,110,115,120も、組立装置140によって組立てることができる。
図21は、光学調整装置50の組立方法の手順を示すフローチャートである。光学調整装置50の組立方法の手順は、第2レンズホルダ64、第1レンズホルダ73、駆動源75、グリップラック81などの部材が整った状態で開始する。ステップb1では、ギア収納台87に第1〜第4減速ギア76〜79、送りねじ部材80および駆動源75が組み込まれ、さらに第1レンズホルダ73、第2レンズホルダ64およびギア収納台87が、ベース88に位置決めされて配置される。ベース88に、第1レンズホルダ73、第2レンズホルダ64およびギア収納台87が配置されるとステップb2に進む。ステップb2では、ステップb1において、駆動源75などが配置されているベース88を、圧力センサ142に当接するように組立冶具台141に載置する。ベース88が組立冶具台141に載置されるとステップb3に進む。
ステップb3では、第2レンズホルダ64の第1上面突起部58および第2上面突起部59に、グリップラック81のラック孔82および切り欠き83を嵌入させ、グリップラック81を、第2レンズホルダ64と送りねじ部材80とにわたって配置する。グリップラック81が、第2レンズホルダ64と送りねじ部材80とにわたって配置されるとステップb4に進む。ステップb4では、圧力センサ142の表示部145の表示を零に設定する。圧力センサ142の表示部145の表示が零に設定されるとステップb5に進む。
ステップb5では、マイクロメータヘッド144が回転され、マイクロメータヘッド144のピン143が、グリップラック81と当接する。さらにマイクロメータヘッド144が回転することによって、グリップラック81に対して送りねじ部材80に近づく方向へ押圧力が与えられる。グリップラック81は、山形部85を有するように形成されることによって、グリップラック81を弾発的に変形させる。グリップラック81に押圧力が与えられると、圧力センサ142によってその押圧力が検知される。圧力センサ142によって予め定める範囲内の押圧力、たとえば10g以上20g以下の押圧力が検知されるまで、マイクロメータヘッド144は、グリップラック81に押圧力を与える。圧力センサ142が、予め定める範囲内の押圧力を検知すると、マイクロメータヘッド144の回転を止めてステップb6に進む。
ステップb6では、図20に示されるように、ステップb5において、グリップラック81に予め定める範囲内の押圧力が与えられ、グリップラック81が弾発的に変形している状態で、接着剤である固着手段146によって、グリップラック81のラック孔82および切り欠き83と、第2レンズホルダ64の第1上面突起部58および第2上面突起部59とが接着部147で固着される。固着手段146によって固着されると、光学調整装置50の組立方法の手順は終了する。前述したステップb1およびステップb2は、配置工程に相当する。またステップb3〜ステップb6は、固着工程に相当する。
図21に示すフローチャートでは、理解を容易にするために、光学調整装置50の組立方法の手順について示しているが、前述の光学調整装置93,95,100,105,110,115,120も、図21のフローチャートに示される手順と同様の手順に従って組立てられる。
本実施の形態では、マイクロメータヘッド144によって、グリップラック81に与えられる予め定める範囲内の押圧力を、10g以上20g以下に設定する。予め定める範囲内の押圧力が10g未満の場合、グリップラック81の係止部84と、送りねじ部材80との噛み合いが弱くなる。したがって駆動源75の駆動にともなって、送りねじ部材80が回転し、グリップラック81および第2レンズホルダ64が第1レンズホルダ73に対して近接離反方向Xへ変位する場合に、外部からの衝撃などによって、グリップラック81の係止部84と送りねじ部材80との噛合状態が解除され、位置ずれが生じる可能性がある。
また予め定める範囲内の押圧力が20gを超える場合、グリップラック81の係止部84と、送りねじ部材80との噛み合いが強くなる。したがって駆動源75の駆動にともなって、送りねじ部材80が回転し、グリップラック81および第2レンズホルダ64が第1レンズホルダ73に対して近接離反方向Xへ変位する場合に、グリップラック81の係止部84と、送りねじ部材80との摩擦力が大きくなり、グリップラック81の係止部84および送りねじ部材80が噛合している部分を損傷する。また第2レンズホルダ64の凸部57の周方向両端部63の送りねじ部材80側の端部と、第1レンズホルダ73の略C字状の案内部68の周方向両端部の送りねじ部材80側の端部とが、摩擦力によって損傷する可能性がある。
したがってグリップラック81に与えられる予め定める範囲内の押圧力を、10g以上20g以下に設定することによって、外部からの衝撃などによって、グリップラック81の係止部84と送りねじ部材80との噛合状態が解除されることを防ぎ、またグリップラック81の係止部84、送りねじ部材80、第2レンズホルダ64の凸部57および第1レンズホルダ73の案内部68の損傷を防ぐことができる。
図22は、図20に示される光学調整装置50の組立装置140において、マイクロメータヘッド144とグリップラック81とが当接している部分を拡大して示す正面図である。光学調整装置50には、グリップラック81が、予め定める範囲の押圧力が与えられることによって、弾発的に変形されるよう構成されている。したがってグリップラック81と、第2レンズホルダ64の凸部57との間には、グリップラック81に予め定める範囲の押圧力が与えられた場合でも、弾発的に変形できるように、隙間が設けられる。たとえば押圧力が20g与えられる場合でも、弾発的に変形できる隙間が設けられている場合に、予め定める範囲の押圧力を15gに設定すると、15gの押圧力分のみ弾発的に変位する。したがって光学調整装置55は、グリップラック81と、第2レンズホルダ64の凸部57との間に隙間が生じるよう構成されている。
前述のようにグリップラック81が、第2レンズホルダ64と送りねじ部材80とにわたって配置され、またグリップラック81に設けられる係止部84が、送りねじ部材80と噛合するように設けられる。さらにグリップラック81は、予め定める範囲内の当接力で弾発的に送りねじ部材80に当接するように設けられる。これによってグリップラック81の係止部84と送りねじ部材80とが、予め定める範囲内の当接力で、噛合することができる。したがって駆動源75の駆動力によって、送りねじ部材80が回転駆動して、グリップラック81が変位する場合において、グリップラック81は、送りねじ部材80と一定の当接力を保持しつつ、送りねじ部材80の回転にともなって、グリップラック81を変位させることができる。したがって外部からの衝撃などによって送りねじ部材80とグリップラック81との噛合状態が解除され、位置ずれが生じることを防止することができる。また送りねじ部材80とグリップラック81との当接力が大きすぎることによって、グリップラック81と送りねじ部材80との間に摩擦力が生じて、各部材が損傷することを防ぐことができ、信頼性の高い光学調整装置55を実現することができる。
また駆動源75の駆動力が、送りねじ部材80を介してグリップラック81に伝達され、グリップラック81は、送りねじ部材80と一定の当接力を保持しつつ、送りねじ部材80の回転にともなって、グリップラック81は変位することができ、第2レンズホルダ64を第1レンズホルダ73に対して変位させて、光ピックアップ装置の光学系の球面収差を調整することができる。
配置工程および固着工程によって、送りねじ部材80に近づく方向へ予め定める範囲内の押圧力をグリップラック81に与えて、グリップラック81を弾発的に変形させている状態で、グリップラック81を第1レンズホルダ73および第2レンズホルダ64のいずれか一方、本実施の形態では第2レンズホルダ64に固着することができる。これによってグリップラック81の係止部84と送りねじ部材80とが、予め定める範囲内の当接力を保持する状態で噛合することができる光学調整装置50を提供することができる。
また光学調整装置50の組立装置140には、グリップラック81を送りねじ部材80に近づける方向へ予め定める範囲内の押圧力をグリップラック81に与えてグリップラック81を弾発的に変形させる押圧手段であるマイクロメータヘッド144が設けられている。固着手段146は、マイクロメータヘッド144よって弾発的に変形されるグリップラック81を、この状態で第2レンズホルダ64に固着することができる。これによってグリップラック81に対して、送りねじ部材80に近づける方向へ予め定める押圧力を与え、グリップラック81を弾発的に変形させることができる。またグリップラック81と送りねじ部材80との間の当接力を一定に保持することができる光学調整装置50を提供することができる。
また第2レンズホルダ64の円筒状の本体部56が、第1レンズホルダ73の略C字状に形成される案内部68に嵌まり込むように設けられるので、第2レンズホルダ64を第1レンズホルダ73に対して変位させるときに、特徴的な大きな力がそれぞれのレンズホルダに与えられることがないので、磨耗などによるガタツキを防止することができる。また第2レンズホルダ64は、第1レンズホルダ73の案内部68に嵌まり込み、近接離反方向Xへ案内されるので、簡単な構成で、第2レンズホルダ64が、第1レンズホルダ73に対して変位可能な光学調整装置50を実現することができる。
また第2レンズホルダ64の凸部57が、円筒状の本体部56の上側、換言すると、立上げミラー53から対物レンズ54へ向かう方向(以下、単に「高さ方向」という)へ形成されるように第2レンズホルダ64を形成し、第1レンズホルダ73に第2レンズホルダ64が嵌め込まれる。また光学調整装置50の高さ方向の寸法を、立上げミラー53から対物レンズ54までの寸法よりも小さく構成されることによって、たとえば近接離反方向Xおよび立上げミラー53から対物レンズ54へ向かう方向にそれぞれ垂直な方向(以下、単に「Y軸方向」という)へ凸部57を形成するような場合と比べて、Y軸方向の寸法を小さくすることができ、光学調整装置を小形化することができる。
前述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、構成を変更することができる。たとえば、凸レンズ52は、2枚1群で構成されているが、複数枚または1枚のレンズで構成されてもよい。また第1レンズホルダ73に凹レンズ51を載置させ、第2レンズホルダ64に凸レンズ52を載置させる構成をとってもよい。またねじ状部材は、ウォームで構成されてもよい。またグリップラックは、第1レンズホルダと送りねじ部材とにわたって設けられてもよい。また第1の実施の形態において、遮蔽板91はグリップラック81に一体形成されているけれども、遮蔽板91がグリップラック81とは別体に設けられてもよい。