JP4460209B2 - 多層膜作成装置、垂直磁気記録媒体製造方法及び垂直磁気記録媒体製造装置 - Google Patents
多層膜作成装置、垂直磁気記録媒体製造方法及び垂直磁気記録媒体製造装置 Download PDFInfo
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【発明の属する技術分野】
本願の発明は、基板の表面にスパッタリングにより多層膜を作成する多層膜作成装置に関し、特に、垂直磁気記録媒体の製造に好適に使用される多層膜作成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
基板の表面に所定の薄膜を作成することは、LSI(大規模集積回路)等の電子デバイス、LCD(液晶ディスプレイ)等の表示デバイス、磁気記録ディスク等の記録媒体を始めとする各種製品の製造に広く行われている。このような薄膜作成には、品質の良い薄膜を高速に作成できることから、スパッタリングが多く採用されている。
このようなスパッタリングによる薄膜作成においては、製品の機能を満足するため、所望の多層膜を作成することがある。例えば、磁気記録媒体の製造においては、基板上に下地膜を作成し、その上に磁気記録層として磁性膜を積層する。磁性膜も一種ではなく、幾つかの異なる磁性膜を積層することが多い。
【0003】
このような多層膜を作成する多層膜作成装置は、内部で薄膜が作成されるチャンバー(以下、成膜チャンバー)の構成において、大きく分けて二つのパターンがある。一つは、一つの成膜チャンバーで多層膜を作成する構成である。この場合は、一つの成膜チャンバー内に複数のターゲットがあり、基板は、各ターゲットに対向する位置に順次搬送される。もう一つは、各薄膜がそれぞれ専用の成膜チャンバーで作成されるよう、薄膜を積層する数だけ成膜チャンバーを設ける構成である。基板は、各成膜チャンバーに順次搬送され、成膜される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前者の単一チャンバーの構成では、ターゲット相互の汚損の問題がある。つまり、ある層の薄膜を作成している際、別の層の薄膜を作成するターゲットからのスパッタ粒子(スパッタによりターゲットから放出された粒子、通常は原子)が基板に到達してしまうことがある。このため、各層の薄膜の品質が低下し易いという問題がある。
後者の複数チャンバーの構成ではこのような問題はないものの、成膜チャンバー間を基板が移動するのに時間を要するため、作成された薄膜の表面が酸化されて汚染層が形成されてしまう場合がある。特に、垂直磁気記録媒体等の磁気記録媒体の製造においては、磁性膜を20層程度積層する場合がある。このように多数の層を積層する成膜を行う場合、成膜チャンバー間を移動する回数も多くなるため、界面に汚染層が形成される可能性が高くなってしまう。
【0005】
また、複数チャンバー方式は、薄膜の数だけ成膜チャンバーを設けるので、各成膜チャンバーを通して基板を搬送する機構が大がかりとなったり、搬送に時間を要するため生産性が著しく低下したり、装置の占有面積が大きくなったりする問題がある。
垂直磁気記録媒体等の磁気記録媒体の製造の際のような多数の層を積層する必要がある場合、複数チャンバー方式を採用すると、層の数に応じて多数の成膜チャンバーを連続して接続しなければならず、装置の占有面積の増大が著しい。また、各成膜チャンバーにおいて、圧力やガス流量などの成膜条件を精度よく制御しなければならず、必要な信頼性で装置を運転するためには、非常に複雑で大がかりにシステムになってしまう。
【0006】
一方、前者の単一チャンバー方式でも、成膜チャンバー内で基板が移動する必要があるため、積層する薄膜の数が多くなると、移動のための機構が大がかりとなったり、移動に要する時間が生産性を圧迫したりする問題がある。
本願の発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、品質のよい多層膜を作成できる装置であって、機構がそれほど大がかりにならず、生産性の点でも優れた装置を提供する技術的意義がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、基板の表面にスパッタリングにより多層膜を作成する多層膜作成装置であって、
少なくとも一つの基板を保持する基板保持具と、基板保持具に保持された基板にスパッタリングにより多層膜が内部で作成される成膜チャンバーと、
各々ターゲットを備えているとともに成膜チャンバー内に設けられた複数のカソードと、
カソードに電圧を印加してスパッタ放電を生じさせる少なくとも一つのスパッタ電源と、
各ターゲットを一体に回転させる主回転機構とを備えており、
前記ターゲットは、それらの中心軸がある円周上に位置するよう配置されており、
前記主回転機構は、前記円周と同軸の回転軸の周りに各ターゲットを一体に回転させるものであり、
前記基板保持具は、前記回転軸の方向で見た際の所定の領域内に前記基板を保持するものであり、
前記所定の領域内は、回転する前記ターゲット上の二つの点の軌跡によって形成されるものであり、
前記二つの点のうちの一つは、前記回転軸に最も近い点であり、もう一つの点は、前記回転軸から最も遠い点であり、
前記複数のターゲットに前記スパッタ放電のための電力を供給する電力供給系が設けられており、この電力供給系は、各ターゲットに供給する電力を各々独立して制御するものであり、
電力供給系は、各ターゲットが前記基板の前を通過している最中に当該ターゲットに電力を供給する制御を行うものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、基板の表面にスパッタリングにより多層膜を作成する多層膜作成装置であって、
少なくとも一つの基板を保持する基板保持具と、
基板保持具に保持された基板にスパッタリングにより多層膜が内部で作成される成膜チャンバーと、
各々ターゲットを備えているとともに成膜チャンバー内に設けられた複数のカソードと、
カソードに電圧を印加してスパッタ放電を生じさせる少なくとも一つのスパッタ電源と、
各ターゲットを一体に回転させる主回転機構とを備えており、
前記ターゲットは、それらの中心軸がある円周上に位置するよう配置されており、
前記主回転機構は、前記円周と同軸の回転軸の周りに各ターゲットを一体に回転させるものであり、
前記基板保持具は、前記回転軸の方向で見た際の所定の領域内に前記基板を保持するものであり、
前記所定の領域内は、回転する前記ターゲット上の二つの点の軌跡によって形成されるものであり、前記二つの点のうちの一つは、前記回転軸に最も近い点であり、もう一つの点は、前記回転軸から最も遠い点であり、
前記複数のターゲットに前記スパッタ放電のための電力を供給する電力供給系が設けられており、この電力供給系は、各ターゲットに供給する電力を各々独立して制御するものであり、
電力供給系は、各ターゲットが前記基板の前を通過している最中に当該ターゲットに電力を供給する制御を行うものであり、
前記基板保持具は、前記回転軸の方向で見た際の所定の領域内に複数の前記基板を保持するものであり、
前記電力供給系は、各ターゲットが各基板の前を通過している最中に各ターゲットに並行して電力を供給して各基板に並行して成膜を行うものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、基板の表面にスパッタリングにより多層膜を作成する多層膜作成装置であって、
複数の基板を保持する基板保持具と、
基板保持具に保持された各基板にスパッタリングにより多層膜が内部で作成される成膜チャンバーと、
各々ターゲットを備えているとともに成膜チャンバー内に設けられた複数のカソードと、
カソードに電圧を印加してスパッタ放電を生じさせる少なくとも一つのスパッタ電源と、各ターゲットを一体に回転させる主回転機構と、
複数の基板を保持した基板保持具を成膜チャンバー内に搬送し、成膜後に搬出する搬送機構とを備えており、
前記ターゲットは、それらの中心軸がある円周上に位置するよう配置されており、
前記主回転機構は、前記円周と同軸の回転軸の周りに各ターゲットを一体に回転させるものであり、
前記基板保持具は、前記回転軸の方向で見た際の所定の領域内に前記基板を保持するものであり、
前記所定の領域内は、回転する前記ターゲット上の二つの点の軌跡によって形成されるものであり、前記二つの点のうちの一つは、前記回転軸に最も近い点であり、もう一つの点は、前記回転軸から最も遠い点であり、
前記搬送機構は、前記回転軸の方向で見た際、前記所定の領域内に各基板が位置する位置で前記基板保持具を停止させるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項3の構成において、前記複数のターゲットに前記スパッタ放電のための電力を供給する電力供給系が設けられており、この電力供給系は、各ターゲットに供給する電力を各々独立して制御するものであり、
電力供給系は、前記各ターゲットが前記主回転機構により回転して前記各基板の前に位置している際に各ターゲットに並行して電力を供給して各基板に並行して成膜を行うものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項2又は4の構成において、前記複数のターゲットは互いに異なる材料のものであり、前記電力供給系は、前記各ターゲットが前記各基板の前に位置して成膜が行われる際、各基板において前記各ターゲットによる成膜の順序が同じ順序になるよう各ターゲットへの電力供給を制御するものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、前記請求項1乃至5いずれかの構成において、前記各カソードは、前記スパッタ放電をマグネトロン放電にする磁石機構を有しており、前記主回転機構は、前記ターゲットとともにこの磁石機構を一体に回転させるものであり、
前記磁石機構は、前記ターゲットの中心軸に対して非対称の磁界を形成するものであるとともに、前記磁石機構を前記ターゲットの中心軸の周りに回転させる副回転機構が設けられているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項6の構成において、前記副回転機構は、前記主回転機構の回転動力により前記磁石機構を回転させるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項6の構成において、前記副回転機構は、前記主回転機構の回転動力とは別の回転動力により前記磁石機構を回転させるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9記載の発明は、前記請求項1乃至8いずれかの構成において、前記各ターゲットから放出されるスパッタ粒子が、別のターゲットからのスパッタ粒子に混ざらないように遮蔽する遮蔽具が設けられているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、前記請求項1乃至9いずれかの構成において、前記主回転機構は、前記基板保持具に保持された基板と対向した面内で前記各ターゲットを回転させるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項11記載の発明は、磁気記録層の厚さ方向に磁化して情報を記録する垂直磁気記録媒体を製造する垂直磁気記録媒体製造方法であって、
前記磁気記録層は、第一第二の二種の薄膜を交互に積層した人工格子より成るものであり、人工格子を構成する前記第一の薄膜を作成する工程と、前記第二の薄膜を作成する工程とが、同一の成膜チャンバー内でスパッタリングにより行われる方法であり、
前記第一の薄膜を作成するためのターゲットと、前記第二の薄膜を作成するためのターゲットとを、基板に対向する面内で一体に回転させながら、基板に前記第一第二の二種の薄膜を交互に積層する動作を含んでおり、
前記スパッタリングのために各ターゲットに供給する電力を各々独立して制御し、ターゲットが前記基板に対向していない場合には電力の供給を停止するとともに、ターゲットが前記基板に対向している際には供給する電力を制御して膜厚を調整するという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項12記載の発明は、磁気記録層の厚さ方向に磁化して情報を記録する垂直磁気記録媒体を製造する垂直磁気記録媒体製造装置であって、
前記磁気記録層は、第一第二の二種の薄膜を交互に積層した人工格子より成るものであり、人工格子を構成する前記第一の薄膜をスパッタリングにより作成した後、同一チャンバー内でスパッタリングにより前記第二の薄膜を作成を作成して積層する成膜チャンバーを備えており、
この成膜チャンバーは、前記第一の薄膜を作成するためのターゲットと、前記第二の薄膜を作成するためのターゲットとを、基板に対向する面内で一体に回転させる主回転機構を備えており、
前記スパッタリングのために各ターゲットに供給する電力供給系が設けられており、この電力供給系は、各ターゲットに供給する電力を各々独立して制御するものであって、ターゲットが前記基板に対向していない場合には電力の供給を停止するとともに、ターゲットが前記基板に対向している際には供給する電力を制御して膜厚を調整するものであるという構成を有する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態(以下、実施形態)について説明する。以下の説明では、ハードディスクのような磁気記録媒体を製造する際に使用される多層膜作成装置が想定されている。
図1は、本願発明の第一の実施形態の多層膜作成装置の側面断面概略図である。図1に示す装置は、排気系11を備えた成膜チャンバー1と、成膜チャンバー1内の所定位置に基板9を配置するための基板保持具90と、スパッタ放電を生じさせるためのカソードユニット3等から主に構成されている。
【0009】
成膜チャンバー1は、気密な真空容器であり、基板9の出し入れを行うための不図示の開口を備えている。この開口は、不図示のゲートバルブによって開閉される。
成膜チャンバー1には、内部にスパッタ放電用のガスを導入するガス導入系12が設けられている。ガス導入系12は、アルゴン等のスパッタ率の高いガスを導入する。
【0010】
基板保持具90は、基板9を垂直に立った姿勢で保持するものである。基板保持具90は、二枚の基板9を同時に保持できるようになっている。二枚の基板9は、同じ垂直な面に沿っており、同じ高さ(即ち、それらの中心点を結ぶ方向が水平)となっている。
図2及び図3は、図1に示す装置における基板保持具90の構成を説明する図であり、図2はその正面概略図、図3は側断面概略図である。
基板保持具90の構成は、保持具本体92と保持具本体92に設けられた保持爪91とからなる構成である。保持爪91は合計で六つ設けられており、三つが一組となって一枚の基板9を保持する。
【0011】
本実施形態における基板保持具90は、図2に示すように、その下端部には小さな磁石(以下、保持具側磁石)96を多数備えている。各保持具側磁石96は、上下の面に磁極を有している。そしてこの保持具側磁石96は、図2に示すように、配列方向に交互に逆の磁極になっている。
また、基板保持具90の下側には、隔壁83を挟んで磁気結合ローラ81が設けられている。磁気結合ローラ81は丸棒状の部材であり、図2に示すように、螺旋状に延びる細長い磁石(以下、ローラ側磁石)82を有している。このローラ側磁石82は互いに異なる磁極で二つ設けられており、二重螺旋状になっている。
【0012】
磁気結合ローラ81は、ローラ側磁石82が隔壁83を挟んで保持具側磁石96に向かい合うよう配置されている。隔壁83は、透磁率の高い材料で形成されており、保持具側磁石96とローラ側磁石82とは、隔壁83を通して磁気結合している。尚、隔壁83の基板保持具90側の空間は真空側(成膜チャンバー1の内部側)であり、磁気結合ローラ81側の空間は大気側である。このような磁気結合ローラ81は、搬送ラインに沿って設けられている。
【0013】
また、図3に示すように、基板保持具90は、水平な回転軸の回りに回転する主プーリ84の上に載せられている。主プーリ84は、基板保持具90の移動方向に沿って多数設けられている。また、基板保持具90の下端部分には、垂直な回転軸の回りに回転する一対の副プーリ85,85が当接している。この副プーリ85,85は、基板保持具90の下端部分を両側から挟むように押さえて基板保持具90の転倒を防止している。この副プーリ85,85も基板保持具90の移動方向に多数設けられている。
図3に示すように、磁気結合ローラ81には傘歯車を介して駆動棒86が連結されている。そして、駆動棒86には移動用モータ87が接続されており、駆動棒86を介して磁気結合ローラ81をその中心軸の周りに回転させるようになっている。
【0014】
磁気結合ローラ81が回転すると、図2に示す二重螺旋状のローラ側磁石82も回転する。この際、ローラ側磁石82が回転する状態は、保持具側磁石96から見ると、交互に異なる磁極の複数の小さな磁石が一列に並んでその並びの方向に沿って一体に直線移動しているのと等価な状態となる。従って、ローラ側磁石82に結合している保持具側磁石96は、ローラ側磁石82の回転とともに直線移動し、この結果、基板保持具90が全体に直線移動し、基板9が搬送されることになる。この際、図3に示す主プーリ84及び副プーリ85,85は従動する。
【0015】
本実施形態では、基板9の両面に同時に成膜するため、基板保持具90に保持された基板9の両側にカソードユニット3が配置されている。カソードユニット3は、ターゲット30や磁石機構5を含んでいる。
図4を使用して、カソードユニット3の詳細な構造について説明する。図4は、図1に示すカソードユニット3の詳細を示す側面断面図である。図1に示す左右のカソードユニット3は同様の構造(基板9を挟んで対称の構造)であり、図4にはそのうち左側のカソードユニット3の詳細が示されている。尚、図4は、図示の都合上、完全な鉛直面での断面図ではなく、図5におけるX−X面での矢視方向から見た断面となっている。
【0016】
まず、成膜チャンバー1の側壁部には、カソードユニット3の断面積よりも少し大きな開口が設けられている。カソードユニット3は、この開口に挿通されている。
成膜チャンバー1の側壁部の外面には、ユニット取付枠6が固定されている。ユニット取付枠6は、図4に示すような段差のある断面形状の円筒である。ユニット取付枠6の端面は、Oリングのような封止部材60を介して成膜チャンバー1の側壁部の外面に固定されている。
【0017】
ユニット取付枠6の内側には、主ホルダー31が設けられている。主ホルダー31もほぼ円筒であり、ユニット取付枠6と同軸上に設けられている。以下、この主ホルダー31の中心軸を「基準軸」と呼び、図4にAで示す。
主ホルダー31の右側の端部には、右ホルダーフランジ311が設けられている。右ホルダーフランジ311には、カソード取付枠32が固定されている。カソード取付枠32は、図4に示すような断面形状のほぼ円筒状であり、基準軸Aと同軸上に設けられている。
【0018】
カソード取付枠32の右側の端面は成膜チャンバー1内に位置し、この端面に空洞形成板33が固定されている。空洞形成板33には、バッキングプレート34が固定されている。バッキングプレート34には、ターゲット押さえ310によりターゲット30が着脱可能に取り付けられている。左から順に、一つの空洞形成板33、一つのバッキングプレート34及び一つのターゲット30が重ね合わされ、これらで一つのカソードが構成されている。各カソードは、カソード取付枠32の右端面に固定されている。図4からは明らかではないが、カソード取付枠32の右端面には、三つのターゲット30の位置に対応して三つの円形の開口が形成されている。各カソードは、この開口にそれぞれ固定されている。空洞形成板33及びバッキングプレート34は、ターゲット30より少し大きいほぼ円盤状である。尚、カソードとは、スパッタ放電用の電圧が印加される部材の意味であり、本実施形態では、ターゲット30、空洞形成板33、バッキングプレート34等により一つのカソードが構成されている。
【0019】
図5は、ターゲット30の形状や配置位置等を説明する側面概略図である。図5に示すように、本実施形態では、一つのカソードユニット3に三つのターゲット30が設けられている。各ターゲット30は同じ大きさの円盤状である。各ターゲット30は、基準軸A上の点を中心とする円周上に均等間隔で(即ち、120度毎に)設けられている。空洞形成板33は、バッキングプレート34とともに、空洞330を形成する形状となっている。この空洞330内には、後述するように、冷媒が供給される。
【0020】
本実施形態の装置の第一の大きな特徴点は、各ターゲット30の中心点が通る円周と同軸の回転軸の周り(即ち、基準軸Aの周り)に回転させる主回転機構が設けられている点である。主回転機構は、上述した主ホルダー31と、主ホルダー31を回転させるモータのような回転駆動源351等によって構成されている。
具体的に説明すると、主ホルダー31の左側の端部には、左ホルダーフランジ312が設けられている。左ホルダーフランジ312の周面は、ギヤ歯(以下、フランジ側ギヤ歯)になっている。そして、回転駆動源351の出力軸には、フランジ側ギヤ歯に噛み合うギヤ歯を持つ駆動ギヤ352が連結されている。回転駆動源351が駆動されると、駆動ギヤ352を介して主ホルダー31が基準軸Aの周りに回転する。
主ホルダー31は、ユニット取付枠6によって保持されている。ユニット取付枠6と主ホルダー31の間には、ベアリング7が設けられており、上記主ホルダー31の回転を許容するようになっている。
【0021】
カソード取付枠32内には、磁石機構5が設けられている。磁石機構5は、各ターゲット30の背後にそれぞれ設けられている。磁石機構5は、中央磁石51と、中央磁石51を取り囲む円筒状の周辺磁石52と、中央磁石51と周辺磁石52とをつなぐヨーク53とから主に構成されている。中央磁石51と周辺磁石52による磁力線50は、図4に示すように、ターゲット30を貫き、ターゲット30の前方の放電空間に弧状に形成される。ターゲット30と磁力線50とによって形成される閉空間内に電子がマグネトロン運動しながら閉じこめられ、高効率のマグネトロン放電が達成される。
【0022】
ヨーク53は、ターゲット30より少し小さい円盤状であり、垂直に立てて設けられている。中央磁石51は例えば円柱状で、周辺磁石52は例えば円環状である。ターゲット30の中心軸とヨーク53の中心軸は同軸であるが、中央磁石51や周辺磁石52の配置や形状は、ターゲット30の中心軸に対して非対称の形状になっている。即ち、磁石機構5によって形成される磁界は、ターゲット30の中心軸に対して非対称となっている。これは、後述するように磁石機構5が回転した際、ターゲット30の表面における時間平均した磁界強度が均一になるようにするためである。
【0023】
本実施形態の装置の第二の大きな特徴点は、各磁石機構5をターゲット30の中心軸と同軸の回転軸の周りに回転させる副回転機構が設けられている点である。副回転機構は、前述した主回転機構の回転動力により各磁石機構5を回転させるものとなっている。
具体的に説明すると、副回転機構は、各磁石機構5に設けられた従動ギヤ361と、主回転機構の回転動力を各磁石機構5の回転動力に変換する静止ギヤ362とから主に構成されている。
従動ギヤ361は、ヨーク53の下面に固定されている。従動ギヤ361は、ターゲット30の中心軸と同軸である。従動ギヤ361の中心から水平に延びるようにして軸棒363が固定されている。この軸棒363は、ベアリング7を介してカソード取付枠32に保持されている。
【0024】
一方、前述した主回転機構の回転駆動源351は、ベース板300に取り付けられている。ベース板300は、垂直な姿勢で設けられている。ベース板300には、スピンドルが挿通されているスピンドル用開口が設けられている。そして、スピンドル用開口の縁から水平に延びるようにして、ギヤホルダー360が設けられている。ギヤホルダー360は、基準軸Aと同軸のほぼ円筒状である。
静止ギヤ362は、ギヤホルダー360の先端に固定されている。静止ギヤ362のギア歯は、基準軸Aと同軸であり、基準軸Aに対して外側の向いている。そして、図4に示すように、静止ギヤ362は各従動ギヤ361に噛み合っている。静止ギヤ362と各従動ギヤ361の位置関係及び噛み合いが、図5に併せて示されている。
【0025】
図4及び図5から解るように、各磁石機構5は、軸棒363を介してカソード取付枠32に連結されているので、回転駆動源351によって主ホルダー31が回転し、各ターゲット30が基準軸Aの周りに回転する際、各磁石機構5や各従動ギヤ361も、自らの中心軸から偏心した基準軸Aの周りに一体に回転する。以下、このような偏心した軸周りの回転を公転と呼ぶ。従動ギヤ361は基準軸Aよりの箇所で静止ギヤ362に噛み合っているので、上記公転の際、従動ギヤ361は、ターゲット30と同軸の中心軸の周りに回転する。従動ギヤ361は、ターゲット30と同軸なので、結局、従動ギヤ361は、自らの中心軸と同軸の回転軸の周りに回転することになる。以下、このような自らの中心軸と同軸の回転を自転と呼ぶ。従動ギヤ361の自転に伴い、磁石機構5も一体に自転する。結局、磁石機構5は、基準軸Aの周りの公転と、ターゲット30の中心軸の周りの自転とを同時に行うことになる。尚、ギヤホルダー360とユニット取付枠6の間には、ベアリング7が設けられている。
【0026】
一方、主ホルダー31の中央を貫くようにしてスピンドル37が設けられている。スピンドル37は、先端部分で空洞形成板33やバッキングプレート34等を保持している。スピンドル37は、右側の部分が円柱状であり、左側の部分がほぼ同径の円筒状となっている。
スピンドル37の右側の円柱状の部分(以下、円柱部)には、空洞330内に冷媒を導入する冷媒導入路371が設けられている。冷媒導入路371は、途中から三つに分岐しており、この分岐した先が、各ターゲット30の背後の空洞330につながっている。また、円柱部には、各空洞330から冷媒を排出する冷媒排出路372が設けられている。冷媒排出路372は、図4からは明らかでないが、各空洞330のそれぞれに三つ設けられている。
スピンドル37の左側の円筒状の部分(以下、円筒部)内には、冷媒導入路371につながる冷媒導入管373と、冷媒排出路372につながる冷媒排出管374が設けられている。図4では一つしか描かれていないが、冷媒排出管374は、各冷媒排出路372のそれぞれに設けられている。
【0027】
また、スピンドル37の円柱部及び円筒部を貫くようにして給電ロッド381が設けられている。給電ロッド381は、各ターゲット30にスパッタ放電用の電力を供給するものである。図4では一つの給電ロッド381しか描かれていないが、実際には三つの給電ロッド381が設けられている。
図4に示すように、給電ロッド381の先端は、空洞形成板33に接触している。空洞形成板33やバッキングプレート34は、ステンレスや銅のような金属であり、空洞形成板33及びバッキングプレート34を介してターゲット30に給電されるようになっている。尚、給電ロッド381とスピンドル37との間、及び、空洞形成板33やバッキングプレート34とスピンドル37との間には、不図示の絶縁材が設けられている。このため、給電ロッド381が供給する電力がスピンドル37側に漏れないようになっている。また、各カソードの間にも不図示の絶縁材が設けられており、各カソードは相互に絶縁されている。
【0028】
図6は、冷媒の導入排出位置及び給電位置について説明する側面概略図である。図6に示すように、給電ロッド381は、空洞形成板33の最も基準軸Aよりの位置で空洞形成板33に接触している。給電ロッド381の接触位置を、空洞形成板33の中心を原点として0度とすると、冷媒導入路371及び冷媒排出路372は、給電ロッド381を挟んで少し角度が付いた位置で空洞330につながっている。
【0029】
前述した回転に伴い、スピンドル37も基準軸Aの周りに自転する。スピンドル37の自転に拘わらず、電力供給や冷媒の流通ができるよう、スリップリング382及びロータリージョイント375が設けられている。図4に示すように、スリップリング382は、スピンドル37の左側の端部を取り囲むよう設けられている。スリップリング382には、ケーブルによって各給電ロッド381が結線されている。そして、スリップリング382には、各ターゲット30に対応してそれぞれ設けられた三つのスパッタ電源4が接続されている。
スリップリング382は、回転する円筒体の外側面に板バネ状の部材を接触させて導通を確保するものである。ここに使用するスリップリング382としては、例えばグローブテック社製の「φ150−60 3ch SR」等が挙げられる。
【0030】
また、ロータリージョイント375は、スピンドル37の左側の端部に接続されている。ロータリージョイント375には、冷媒導入管373につながる冷媒導入口376と、冷媒排出管374にそれぞれつながる三つの冷媒排出口377が設けられている。ロータリジョイントは、スピンドル37の回転に拘わらず、冷媒導入管373と冷媒導入口376との連通、及び、各冷媒排出管374と各冷媒排出口377との連通を確保するようになっている。このようなロータリージョイント375としては、例えば光洋油圧社製のロータリージョイント375KT−4−02−1Wが使用できる。
【0031】
上記ロータリージョイント375の冷媒導入口376と各冷媒排出口377は、図4に示すように、配管378及びサーキュレータ379を介してつながっている。サーキュレータ379により所定の温度に維持された冷媒は、冷媒導入口376、冷媒導入管373及び各冷媒導入路371を経由して各空洞330に導入される。そして、冷媒は、各空洞330から、各冷媒排出路372、各冷媒排出管374及び各冷媒排出口377を経てサーキュレータ379に戻る。
尚、上述した三つの給電ロッド381、スリップリング382及び三つのスパッタ電源4は、ターゲット30にスパッタ放電用の電力を供給する電力供給系を構成している。そして、各スパッタ電源4は、独立して出力電圧を調整できるようになっており、ターゲット30に供給される電力が独立して制御されるようになっている。
【0032】
上記カソードユニット3の構造において、成膜チャンバー1内で維持される真空のリークがないよう、Oリングのような封止部材が必要な箇所に設けられている。特に、本実施形態では、ユニット取付枠6と主ホルダー31との間に、磁性流体シール61を用いている。磁性流体シール61は、磁性流体を使用した封止部材であり、主ホルダー31の回転を許容しつつ、主ホルダー31とユニット取付枠6との間の空間からのリークを防止している。
【0033】
本実施形態の装置は、上述した成膜チャンバー1を含む複数の真空チャンバーを基板9の搬送ラインに沿って接続したインライン式の装置となっている。各真空チャンバーの構成やレイアウトについては、特開平8−274142号公報の開示を参考にすることができる。また、基板9を保持した基板保持具90を各真空チャンバーに移動させる構成の詳細についても、特開平8−274142号公報に開示のものと同じものを採用することが可能である。
【0034】
次に、成膜時の各ターゲット30と基板9との位置関係について説明する、図7は、図1乃至図6に示す実施形態の装置における成膜時の各ターゲット30と基板9との位置関係について説明する正面概略図である。
前述したように、各ターゲット30は、その中心が基準軸Aを中心とする円周上に120度ずつ離れて位置する位置に設けられている。以下、この円周を基準円周と呼び、図7にSCで示す。
【0035】
一方、基板保持具90は、前述した通り、二枚の基板を同じ高さ、即ち中心点を結ぶ線が水平になるよう保持するものとなっている。この際、基板保持具90は、図7に示すように、正面から見たとき、二枚の基板9の中心点が基準円周SC上に位置する位置関係で二枚の基板9を保持するようになっている。より一般的に言えば、各基板9の中心軸が基準円周SCに垂直に交差する位置関係で保持するようになっている。不図示の搬送系は、成膜チャンバー1内で、図7に示す位置関係になる位置で基板保持具90を停止させるようになっており、この位置で成膜が行われる。
【0036】
また、図1及び図4に示すように、本実施形態の装置は、遮蔽具39を備えている。遮蔽具39は、各ターゲット30から放出されるスパッタ粒子が、隣接する別のターゲット30からのスパッタ粒子に混ざらないように遮蔽するものである。遮蔽具39の構成について、図4及び図8を使用して説明する。図8は、図4に示す遮蔽具39の正面概略図である。
図4に示すように、遮蔽具39は、スピンドル37及び空洞形成板33に固定されている。図4及び図8から解るように、遮蔽具39は、帯板状の部材を組み合わせた構成であり、各ターゲット30が設けられた空間を仕切るよう設けられている。本実施形態では、三つのターゲット30が設けられているため、遮蔽具39は、正面から見ると三つ又状である。
【0037】
図4において、遮蔽具39が無いと、ターゲット30の相互汚染の問題が生ずる。即ち、あるターゲット30から放出されたスパッタ粒子が他のターゲット30に付着することがある。付着した他のターゲット30からのスパッタ粒子は、再スパッタされて放出されるものの、各ターゲット30が異種の材料で形成されている場合、ターゲット30からそのターゲット30の本来の材料ではないものが放出されることになる。このようなことがあると、ある層の薄膜に別の層の薄膜の成分が不純物として混ざることになり、多層膜の品質が低下する。 本実施形態では、遮蔽具39があるため、あるターゲット30から放出されたスパッタ粒子が他のターゲット30に付着することが抑制されている。従って、上述したような相互汚染が防止される。尚、遮蔽具39によって、別のターゲット30からのスパッタ粒子が直接基板9に到達することも防止される。
【0038】
また、図4に示すように、ターゲット30と基板9との間には、シールド板391が設けられている。シールド板391は、基板9やターゲット30と平行な姿勢であり、基板9とほぼ同じ大きさの開口が設けられている。この開口も円形であり、基板9が基板保持具90によって前述した位置に停止した際、シールド板30の開口が基板9と同軸の位置になるようになっている。尚、開口は、基板9に合わせて二つ設けられている。
このシールド板391は、主に、別のターゲット30(対向していないターゲット30)からのスパッタ粒子が直接基板9に到達するのを防止するものである。前記遮蔽具39と併せて、シールド板391により、多層膜の品質がさらに高くなるようにしている。
【0039】
次に、上記構成に係る本実施形態の多層膜作成装置の動作について説明する。不図示のロードロックチャンバーにおいて基板保持具90に基板9が搭載される。基板保持具90は、不図示のプリヒートチャンバーに移動して基板9の予備加熱が行われる。その後、基板保持具90は、図1及び図4に示す成膜チャンバー1に移動する。基板保持具90は、前述したように、二枚の基板9の中心点が正面視で基準円周SC上に位置する位置で停止する。
【0040】
そして、回転駆動源351が動作し、前述した通り、ターゲット30及び磁石機構5の公転と磁石機構5の自転とが開始される。公転の回転速度は、10〜300rpm程度、自転の回転速度は16〜500rpm程度である。また、成膜チャンバー1内は、排気系11によって予め所定の圧力まで排気されている。不図示のゲートバルブを閉じた後、ガス導入系12によって所定のガスが所定の流量で導入される。この状態で、各スパッタ電源4が後述するシーケンスで動作し、各給電ロッド381を介してターゲット30に所定の電圧が印加される。この電圧は、負の高電圧又は高周波電圧である。
電圧印加によって、基板9とターゲット30との間に電界が形成され、スパッタ放電が生じる。スパッタ放電の過程で、イオン衝撃されたターゲット30の表面から粒子(通常は原子)が放出される。放出された粒子(スパッタ粒子)が基板9の表面に到達し、この到達が重なって薄膜が作成される。
【0041】
上記成膜の際、カソードユニット3の回転と各スパッタ電源4の動作のタイミングとを最適化することにより、基板9に対し所望の多層膜が作成できる。この点について、図9を使用して説明する。図9は、図1乃至図8に示す装置における多層膜の作成について示した図である。
説明の都合上、図9に示すように三つのターゲット30をターゲット30A,30B,30Cとし、三つの薄膜aがターゲット30Aにより作成され、薄膜bがターゲット30Bにより作成され、薄膜cがターゲット30Cにより作成されるとする。また、二枚の基板9についても、図9に示すように、向かって左側を基板9Xとし、右側を基板9Yとする。さらに、図4に示すスパッタ電源4についても、ターゲット30Aに電力を供給するものをスパッタ電源4A、ターゲット30Bに電力を供給するものをスパッタ電源4B、ターゲット30Cに電力を供給するものをスパッタ電源4Cとする。
【0042】
まず、図9(1)に示すように、基板9Xがターゲット30Aに対向し、基板9Yがターゲット30Bに対向する位置で基板保持具90が停止する。この際、正面から見たとき、ターゲット30Aの時計回り側の縁が基板9Xの中心付近に位置している。
図9(1)に示す状態で、まず、スパッタ電源4Aが動作を開始し、ターゲット30Aにより基板9Xに対して成膜が行われる。即ち、薄膜aが作成される。この成膜の際、主回転機構が動作し、三つのターゲット30A,30B,30Cが基準軸Aを中心として時計回りの向きに一体に回転する。
【0043】
そして、ターゲット30Aが基板9Xの前を通り過ぎた後、図9(2)に示すように、ターゲット30Bの時計回り側の縁が正面視で基板9Xの中心付近に位置すると(即ち、カソードユニット3が120度時計回りに回転すると)、今度はスパッタ電源4Bが動作を開始する。この結果、基板9Xに対してターゲット30Bによる成膜、即ち薄膜bの作成が開示される。
ターゲット30Bによる基板9Xに対する成膜は、ターゲット30Bが基板9Xの前を通り過ぎるまで続く。そして、カソードユニット3がさらに120度時計回りに回転し、図9(3)に示すように、ターゲット30Cの時計回り側の縁が正面視で基板9Xの中心付近に位置すると、今度はスパッタ電源4Cが動作を開始する。この結果、基板9Xに対するターゲット30Cによる成膜、即ち薄膜cの作成が開始される。
【0044】
また、図9(3)に示す状態になる前に、ターゲット30Aの時計回り側の縁が基板9Yの中心付近に位置する。この際、スパッタ電源4Aが動作しており、従って、基板9Yに対するターゲット30Aによる成膜、即ち薄膜aの作成が行われる。尚、図9(2)の状態からこの時までの間、スパッタ電源4Aは動作を継続していてもよいが、動作を中断して再開した方がターゲット30Aの消費量や電力消費量の無駄が無くせるので好適である。ターゲット30Aによる基板9Yの成膜は、図9(3)になるまで続く。
図9(3)に示す状態からカソードユニット3がさらに120度時計回りに回転すると、図9(4)に示す状態となる。この状態になる前に、ターゲット30Bの時計回り側の縁が基板9Yの中心付近に位置する状態となる。この時から、基板9Yに対するターゲット30Bによる成膜即ち薄膜bの作成が開始され、図9(4)に示す状態まで続く。同様に、ターゲット30Bの時計回り側の縁が基板9Yの中心付近に位置する状態まで、スパッタ電源4Bは一時的に動作を停止させておくことが好ましい。
【0045】
そして、図9(4)に示す状態からカソードユニット3がさらに120度時計回りに回転すると、図9(5)に示す状態となる。この状態になる前に、ターゲット30Cの時計回り側の縁が基板9Yの中心付近に位置する状態となる。この時から、基板9Yに対するターゲット30Cによる成膜即ち薄膜cの作成が開始され、図9(5)に示す状態まで続く。同様に、ターゲット30Cの時計回り側の縁が基板9Yの中心付近に位置する状態まで、スパッタ電源4Cは一時的に動作を停止させておくことが好ましい。尚、図9(3)の状態の後、ターゲット30Aやターゲット30Bが再び基板9Xの前を通過するが、この際には、再び薄膜a,bが基板9Xに作成されないよう、スパッタ電源4A,4Bは停止される。
図9(1)の状態から図9(5)の状態までの過程で、各基板9X,9Yに薄膜a,b,cがこの順で積層される。これで成膜チャンバー1における1タクトの動作が終了である。その後、排気系11が成膜チャンバー1内を再度排気した後、基板保持具90が移動して基板9が成膜チャンバー1から搬出される。その後、基板保持具90は、不図示のアンロードロックチャンバーに移動し、基板保持具90から成膜済みの基板9が回収される。
【0046】
そして、別の基板9X,9Yを保持した別の基板保持具90が成膜チャンバー1に搬入されると、同様の動作を繰り返す。尚、次のタクトを開始するまでに、カソードユニット3は、図9(5)に示す状態から240度(又は逆向きに120度)回転し、図9(1)の状態となっている。
上述したように、本実施形態の装置は、カソードユニット3を回転させながら、各ターゲット30を順次基板9に対向させることで多層膜が作成される。即ち、ある層の薄膜を作成した後、基板9の搬送動作を介在させることなくすぐに次の層の薄膜が同一の成膜チャンバー1内で作成される。このため、生産性が高く、装置の占有面積の増大も抑制され、界面に汚染層が形成される問題もない。そして、遮蔽具39やシールド板391がターゲット30の相互汚損を防止するので、この点でも多層膜の品質が低下することもない。
【0047】
そして、カソードユニット3の回転の際、正面視において、ターゲット30A,30B,30Cの中心点が描く軌跡(即ち、基準円周SC)上に基板9X,9Yの中心点が位置するので、膜厚や膜質の点でより均一な薄膜が基板9の表面に作成される。但し、ターゲット30A,30B,30Cや基板9X,9Yの大きさによっては、基板9X,9Yが正面視で基準円周SC上に位置していなくても均一な成膜が行える。つまり、均一な成膜のためには、正面視で、基板9X,9Yがターゲット30A,30B,30Cからはみ出さないようになっていれば良い。この点について、図10を使用して一般的に説明する。図10は、成膜の均一性の基板配置位置に対する依存性について示した正面概略図である。均一な成膜のためには、基準軸Aに沿った方向で見た際、基板9がある領域内で保持されていれば足りる。図10は、この領域を示している。図10において、L1及びL2は、回転するターゲット30上の二点によって描かれる軌跡である。このうち、軌跡L1は、基準軸Aに最も近い点によって描かれる軌跡である。軌跡L2は、基準軸Aから最も遠い点によって描かれる軌跡である。図10(1)に示すように、基準軸Aに沿って見た際、軌跡L1と軌跡L2によって形成される内に基板9が位置していれば、基板9はターゲット30からはみ出していないので、均一な成膜が行える。一方、図10(2)に示すように、軌跡L1及び軌跡L2によって形成される領域内に基板9が位置していないと、均一な成膜は難しくなる。従って、基板保持具90や搬送機構は、図10(1)に示す関係を満足するよう設計されることが望ましい。
【0048】
尚、上記ターゲット30A,30B,30Cの回転の際、各磁石機構5も公転即ちターゲット30A,30B,30Cとともに回転する。これには、マグネトロンスパッタリングを常に達成しつつ多層膜を作成できるようにする技術的意義がある。
また、磁石機構5が公転に加え自転もするようになっている点は、エロージョンの均一化によりターゲット30を長寿命化させる効果がある。周知のように、スパッタを繰り返すうちにターゲット30は侵食(エロージョン)され、徐々に厚さが薄くなる。エロージョンの進行度合いは、ターゲット30の表面方向で均一ではなく、スパッタ放電が効率良く行われる所では速く進行し、効率良く行われない所では遅く進行する。そして、スパッタ放電の効率は磁石機構5による磁界の分布に依存する。従って、磁石機構5が自転しない場合、磁界強度の高い所ではエロージョンは速く、磁界強度の低い所では遅くなってしまう。このため、磁界強度の高い所ではエロージョンがターゲット30の厚さ程度まで進行してターゲット30の寿命が来た場合でも、磁界強度が低い所ではまだかなりの厚さが残っている場合がある。この状態でもターゲット30は交換しなければならず、残った部分のターゲット30の材料は成膜に使用されず、無駄に廃棄されてしまう。
【0049】
しかしながら、本実施形態のように磁石機構5が自転する場合、磁界強度を時間的に均一にする(即ち、時間積分した磁界強度はターゲット30の面方向で均一になる)ので、ターゲット30のエロージョンも均一に進行する。このため、ターゲット30の寿命を長くし、無駄になるターゲット30の材料を減らすことができる。
尚、前述したように、本実施形態の装置では、副回転機構が主回転機構の回転動力を利用して各磁石機構5を自転させている。この構成は、回転駆動源及び回転駆動の導入系を一つにして、機構を全体に簡略にする技術的意義がある。
【0050】
また、電力供給系が各ターゲット30に供給する電力を独立して制御できるようになっている点は、各成膜の特性に応じて成膜条件を独立して調整することで多層膜の作成を最適化する技術的意義がある。例えば、ある層の薄膜については材料の特性等から成膜速度が遅くなり易い場合、そのターゲット30をスパッタするスパッタ電源4の出力を他のスパッタ電源4より大きくするようにする。
尚、上記の点は、磁石機構5についても同様に言える。即ち、磁石機構5として電磁石からなるものを使用し、各磁石機構5での通電電流を独立して制御するようにする。これによって各層の薄膜の成膜条件を最適化できる。
【0051】
次に、第二の実施形態の多層膜作成装置について説明する。
図11は、第二の実施形態の多層膜作成装置の要部を示す図であり、第二の実施形態におけるカソードユニット3の詳細を示す側面断面概略図である。
前述した第一の実施形態では、カソードユニット3が回転しながら各スパッタ電源4が動作して成膜が行われた。一方、この第二の実施形態では、成膜の合間ではカソードユニット3は回転するものの、成膜時にはカソードユニット3は静止しており、各基板9X,9Yに対してターゲット30A,30B,30Cが静止対向しながら成膜が行われるようになっている。
【0052】
第二の実施形態の装置は、第一の実施形態と各部の構成はほぼ同じである。但し、主回転機構及び副回転機構の構成が若干異なっている。具体的に説明すると、図11に示すように、この実施形態においても、回転駆動源351の出力軸には、フランジ側ギヤ歯に噛み合うギヤ歯を持つ駆動ギヤ352が連結されている。回転駆動源351が駆動されると、駆動ギヤ352を介して主ホルダー31が基準軸Aの周りに回転する。これにより、各ターゲット30A,30B,30Cが一体に基準軸Aの周りに回転する。
【0053】
一方、ベース板300には、図4に示すようなギヤホルダー360や静止ギヤ362は取り付けられておらず、ベース板300には、ギヤホルダー360と同様の形状の静止円筒体364が取り付けられている。そして、静止円筒体364と各磁石機構5とは切り離されており、第一の実施形態のように連結されてはいない。
そして、各磁石機構5を自転させる副回転機構は、それぞれの磁石機構5に接続された内部回転駆動源54によって構成されている。各内部回転駆動源54は、図4に示す軸棒363及びそれを取り囲むベアリング7に代えて設けられており、軸棒363と同様に水平な回転軸の周りに各磁石機構を回転させるものとなっている。尚、内部回転駆動源54は、主ホルダー31に対して取り付けられており、主ホルダー31の回転とともに公転するようになっている。
【0054】
図12は、図11に示す第二の実施形態における成膜時の各ターゲット30A,30B,30Cと基板9X,9Yとの位置関係について説明する正面概略図である。前述したように、本実施形態の装置は静止対向型である。図12に示すように、成膜時には、正面視で、二枚の基板9X,9Yは中心点が三つのターゲット30A,30B,30Cのうちの二つの中心点とそれぞれ一致する位置で基板保持具90は静止するようになっている。
【0055】
次に、上記構成に係る第二の実施形態の装置の動作について説明する。説明の都合上、三つの磁石機構をそれぞれ5A,5B,5Cとする。また、三つの内部回転駆動源を、54A,54B,54Cとする。
第一の実施形態の場合と同様に、二枚の基板9を保持した基板保持具90が成膜チャンバー2内に搬入され、図12に示す位置で停止する。この状態で、まず基板9Xに対向したターゲット30Aのスパッタ電源4Aが動作し、基板9Xに薄膜aが作成される。他のスパッタ電源4B,4Cは停止したままである。この際、主ホルダー31は静止したままであるが、ターゲット30Aの背後の磁石機構5Aは内部回転駆動源54Aにより回転する。
【0056】
所定の成膜時間が経過した後、スパッタ電源4A及び内部回転駆動源54Aが停止する。そして、主回転機構が動作し、カソードユニット3を全体に120度時計回りに回転させて停止させる。この結果、基板9Xには、ターゲット30Bが同軸上に位置して対向する状態となる。この状態で、スパッタ電源4Bが動作し、基板9Xに薄膜bが作成される。この際、ターゲット30Bの背後の磁石機構5Bを回転させる内部回転駆動源54Bが動作する。尚、他のスパッタ電源4A,4C及び他の内部回転駆動源54A,54Cは、停止したままである。
【0057】
所定の成膜時間が経過した後、スパッタ電源4B及び内部回転駆動源54Bが停止する。そして、主回転機構が動作し、カソードユニット3を全体に120度時計回りに回転させて停止させる。この結果、基板9Xにはターゲット30Cが同軸上に位置して対向するとともに、基板9Yにはターゲット30Aが同軸上に位置して対向する状態となる。
この状態で、スパッタ電源4C及びスパッタ電源4Aが動作し、基板9Xに対して薄膜cが作成されるとともに、基板9Yに対して薄膜aが作成される。この際、ターゲット30Cの背後の磁石機構5Cが内部回転駆動源54Cにより回転し、ターゲット30Aの背後の磁石機構5Aが内部回転駆動源54Aにより回転する。尚、スパッタ電源4B及び内部回転駆動源54Bは停止したままである。
【0058】
所定の成膜時間が経過した後、スパッタ電源4C,4A及び内部回転駆動源54C,54Aが停止する。そして、主回転機構が動作し、カソードユニット3を全体に120度時計回りに回転させて停止させる。この結果、基板9Yにターゲット30Bが同軸上に位置して対向した状態になる。この状態で、スパッタ電源4Bが動作し、基板9Yに薄膜bが作成される。この際、ターゲット30Bの背後の磁石機構5Bを回転させる内部回転駆動源54Bが動作する。尚、他のスパッタ電源4A,4C及び他の内部回転駆動源54A,54Cは、停止したままである。
【0059】
所定の成膜時間が経過した後、スパッタ電源4B及び内部回転駆動源54Bが停止する。そして、主回転機構が動作し、カソードユニット3を全体に120度時計回りに回転させて停止させる。この結果、基板9Yにターゲット30Cが同軸上に位置して対向した状態になる。この状態で、スパッタ電源4Cが動作し、基板9Yに薄膜cが作成される。この際、内部回転駆動源54Cが動作し、ターゲット30Cの背後の磁石機構5Cを回転させる。尚、他のスパッタ電源4A,4B及び他の内部回転駆動源54A,54Bは、停止したままである。
【0060】
所定の成膜時間が経過すると、二つの基板9X,9Yに対する成膜がすべて終了し、基板保持具90は成膜チャンバー2外に搬出される。そして、次の基板9X,9Yが搬入されるまでの間に、カソードユニット3は全体に240度時計回りに回転し、当初の姿勢に復帰する。
【0061】
この第二の実施形態では、成膜時に、ターゲット30A,30B,30Cが基板9X,9Yに同軸上に静止対向するので、常時回転させながら成膜する第一の実施形態に比べ、成膜の制御性等の点で優れている。そして、ターゲット30A,30B,30Cが静止中にも磁石機構5A,5B,5Cが回転するので、エロージョンの均一化の効果は同様に得られる。
この第二の実施形態では、各磁石機構5A,5B,5Cの背後にそれぞれ内部回転駆動源54A,54B,54Cを設けたが、一つの回転駆動源によって各磁石機構5A,5B,5Cを同時に回転させるようにしても良い。例えば、第一の実施形態と同様に従動ギヤ361と静止ギヤ362とを設ける。そして、静止ギヤ362を回転駆動源351とは別に設けられた回転駆動源で回転させ、静止ギヤ362及び従動ギヤ361を介して各磁石機構5を同時に回転させる。この際、主ホルダー31が従動して回転しないよう、回転駆動源351は逆向きのトルクを発生させる。
【0062】
上記各実施形態において、基板保持具90が二枚の基板9を同時に保持するものである点は何ら限定的ではなく、一枚のみでも良いし、三枚又はそれ以上でも良い。尚、基板保持具90が三枚の基板9を保持するものである場合には、各基板9の中心点が120度ずつ離れて保持されることが好ましい。また、各実施形態においては、いずれかのスパッタ電源4が動作しないアイドル状態があったが、多層膜作成のプロセス内容によってはアイドル状態が無いかより短い場合もある。尚、上述した多層膜作成装置は、磁気記録媒体の他、LSI、液晶ディスプレイ、プレズマディスプレイ等の製造に用いることができる。
【0063】
磁気記録媒体や磁気ヘッドなどの製造においては、いわゆる層間結合構造を有する多層膜を形成することがあるが、上記各実施形態の装置は、この分野にも応用することができる。例えば、磁気記録媒体(長手方向記録も含む)の製造においては、見かけ上、磁気記録層の厚さを薄くしながら、熱ゆらぎの問題を解消するため、物理的な磁気記録層の体積を大きく(厚さを厚く)することがある。具体的には、例えば、ルテニウムのような膜を間に挿入しながらCoCr膜のような磁性膜を多数積層した構造の磁気記録層が採用されることがある。最上層のCoCr膜の磁化量は下側の各層に比べて少し大きく設定されるとともに、その下側の各層のCoCr膜はRu膜を介して層間反強磁性結合するようにする。層間反強磁性結合している多層CoCr膜により全体の磁気記録層の体積がかせげるので、熱ゆらぎの問題が解消できる。各実施形態の装置は、このような層間結合をさせる多層膜の形成にも効果的に使用できる。
【0064】
次に、垂直磁気記録媒体の製造に関する発明の実施形態について説明する。
図13は、実施形態の方法及び装置により製造される垂直磁気記録媒体の断面概略図である。
図13に示す垂直磁気記録媒体は、ディスク状の基板9と、基板9上に形成された磁気記録層とより成っている。磁気記録層は、基板9に垂直な方向での磁化により記録が行われる垂直磁化膜901より成っている。そして、本実施形態の磁気記録媒体は、図13中に拡大して示すように、垂直磁化層901が、二種の層902,903を交互に積層した多層膜から構成されている。
【0065】
積層された二種の薄膜902,903は、いわゆる人工格子を構成するものである。二種の薄膜を積層することによる形成した垂直磁化層は、人工格子と呼ばれている。これは、単原子ないし二原子分程度の薄い二種の磁性膜を交互に積層したものである。人工格子によると、積層方向(膜の厚さ方向)での保磁力が大きくなる磁気異方性が高く得られる。この理由は、ある層の粒子とその層を挟む上下の別の層の粒子との交換相互作用により、層間方向での磁気モーメントが層の面方向に比べて強くなることによるものと考えられている。人工格子より成る垂直磁化層は、他のものに比べて垂直磁気異方性が高く、いわゆる角形比が大きいので、垂直磁気記録媒体用として有望視されている。
【0066】
垂直磁気記録媒体用の人工格子としては、例えばCo膜とPd膜を交互に積層したもの、Co膜とPt膜を交互に積層したもの等が知られている(図13に示す例はCo/Pd)。また、Co膜の代わりにCoBのようなCo系膜(合金膜又は化合物膜)を使用する場合(例えばCoB/Pd)もあるし、Fe膜又はFe系膜をCo膜の代わりに使用する場合もある。しいずれにしても、垂直磁気異方性が高い磁気特性の良い垂直磁化層を形成するには、一層の膜を薄くし、なるべく多く積層することが好ましい。
【0067】
この他、図13に示すように、基板9と垂直磁化層901の間に裏打ち層904を有する。裏打ち層904は、磁気記録の際の磁気ヘッドによる磁界を垂直磁化層中でより垂直になるようにするものである。また、基板9と裏打ち層904との間、及び、裏打ち層904と垂直磁化層901との間に、下地層905,906を有する。下地層905,906は、シード層とも呼ばれ、裏打ち層904や垂直磁化層901の結晶化度や配向特性等を制御するためのものである。また、垂直磁化層901の上には保護層907が形成されている。
【0068】
図13に示す垂直磁気記録媒体は、多層膜作成装置を使用して製造することができる。即ち、前述した各実施形態の多層膜作成装置は、垂直磁気記録媒体製造装置の発明の実施形態にも該当する。
図13に示す二種の薄膜902,903を第一薄膜902,第二薄膜903とする。例えば、図9において、ターゲット30Aは第一薄膜902用、ターゲット30Bは第二薄膜903用、ターゲット30Cは第一薄膜902用とする。カソードユニット3を回転させながら、基板9Xに対してターゲット30Aにより第一薄膜902を形成した後、ターゲット30Bにより第二薄膜903を形成し、その後ターゲット30Cにより第一薄膜902を形成する。これで終了ではなく、カソードユニット3の回転を続け、第一薄膜902の形成と第二薄膜903の形成とを交互に行う。もう一つの基板9Yについても、基本的に同様である。尚、第一薄膜902が二つのターゲット30A,Cで継続して形成されることになるので、この場合にはそれらのスパッタ電源4A,4Cの出力を低下させる等して膜厚を調整する。
【0069】
このようにして、カソードユニット3を回転させながら、第一薄膜902と第二薄膜903とから成る層を所定数積層し、人工格子を形成する。このようにすると、基板9の搬送動作を介在させることなく、第一薄膜902の形成してからすぐに第二薄膜903が同一の成膜チャンバー1内で形成される。従って、生産性が高く、装置の占有面積の増大も抑制され、界面に汚染層が形成される問題もない。特に、人工格子では、層間の交換相互作用を利用するので、層の界面に汚染層が形成されると、垂直磁気異方性が低下したり、磁気特性が悪くなったりする問題があるが、本実施形態によれば、このような問題はない。また、遮蔽具39やシールド板391がターゲット30の相互汚損や別のターゲット30からのスパッタ粒子の混入を防止するので、この点でも人工格子の品質が高く得られる構成となっている。
【0070】
尚、上記実施形態では、二つのターゲット30A,30Cを第一薄膜902用とし、一つのターゲット30Bを第二薄膜903用としたが、ターゲットを二つだけ設けて、一方を第一薄膜902用、他方を第二薄膜903用としても良い。また、三つのターゲットがある場合でも、一つのターゲットを休止させて二つのターゲットのみで成膜を行ってもよい。さらに、四つのターゲットを設けて、その二つを第一薄膜902用、残りの二つを第二薄膜903用としてもよい。
尚、上述した各実施形態では、複数のスパッタ電源4を設けて、各々のターゲット30にそれぞれ電圧を印加したが、複数のターゲット30で一つのスパッタ電源4を共用する場合もある。従って、スパッタ電源4は少なくとも一つあれば足りる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明した通り、本願の請求項1又は請求項2記載の発明によれば、生産性が高く、装置の占有面積の増大も抑制され、界面に汚染層が形成される問題もない。また、膜厚や膜質の点でより均一な薄膜より成る多層膜が、基板に作成される。
また、請求項6記載の発明によれば、上記効果に加え、マグネトロン放電によって高効率かつ高速のスパッタが行えるのに加え、磁石機構がターゲットと一体に回転するので、さらに均一な成膜が行えたり、磁界の効果を無駄なく使用したりできる効果が得られる。その上、磁石機構による磁界がターゲットの中心軸に対して非対称であるとともに、磁石機構がターゲットの中心軸の周りに回転するので、ターゲット上のエロージョンが均一になる。このため、ターゲットを長寿命化させることができる。
また、請求項7記載の発明によれば、上記効果に加え、副回転機構が主回転機構の回転動力により磁石機構を回転させるので、回転導入のための機構が簡略化される。
また、請求項9記載の発明によれば、上記効果に加え、遮蔽具がターゲットの相互汚損を防止するので、この点でも多層膜の品質が低下することもない。
また、請求項11又は請求項12記載の発明によれば、垂直磁気記録媒体の製造において、生産性が高く、装置の占有面積の増大も抑制される。そして、人工格子を構成する薄膜の界面に汚染層が形成される問題がないので、垂直磁気異方性が高く磁気特性の優れた垂直磁気記録媒体が製造できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第一の実施形態の多層膜作成装置の断面概略図である。
【図2】図1に示す装置における基板保持具90の構成を説明する正面概略図である。
【図3】図1に示す装置における基板保持具90の構成を説明する側断面概略図である。
【図4】図1に示すカソードユニット3の詳細を示す断面図である。
【図5】ターゲット30の形状や配置位置等を説明する側面概略図である。
【図6】冷媒の導入排出位置及び給電位置について説明する側面概略図である。
【図7】図1乃至図6に示す実施形態の装置における成膜時の各ターゲット30と基板9との位置関係について説明する正面概略図である。
【図8】図1及び図4に示す遮蔽具39の正面概略図である。
【図9】図1乃至図8に示す装置における多層膜の作成について示した図である。
【図10】成膜の均一性の基板配置位置に対する依存性について示した正面概略図である。
【図11】第二の実施形態の多層膜作成装置の要部を示す図であり、第二の実施形態におけるカソードユニット3の詳細を示す側面断面概略図である。
【図12】図11に示す第二の実施形態における成膜時の各ターゲット30A,30B,30Cと基板9X,9Yとの位置関係について説明する正面概略図である。
【図13】実施形態の方法及び装置により製造される垂直磁気記録媒体の断面概略図である。
【符号の説明】
1 成膜チャンバー
11 排気系
12 ガス導入系
3 カソードユニット
30 ターゲット
351 回転駆動源
4 スパッタ電源
5 磁石機構
9 基板
90 基板保持具
Claims (12)
- 基板の表面にスパッタリングにより多層膜を作成する多層膜作成装置であって、
少なくとも一つの基板を保持する基板保持具と、
基板保持具に保持された基板にスパッタリングにより多層膜が内部で作成される成膜チャンバーと、
各々ターゲットを備えているとともに成膜チャンバー内に設けられた複数のカソードと、
カソードに電圧を印加してスパッタ放電を生じさせる少なくとも一つのスパッタ電源と、
各ターゲットを一体に回転させる主回転機構とを備えており、
前記ターゲットは、それらの中心軸がある円周上に位置するよう配置されており、
前記主回転機構は、前記円周と同軸の回転軸の周りに各ターゲットを一体に回転させるものであり、
前記基板保持具は、前記回転軸の方向で見た際の所定の領域内に前記基板を保持するものであり、
前記所定の領域内は、回転する前記ターゲット上の二つの点の軌跡によって形成されるものであり、前記二つの点のうちの一つは、前記回転軸に最も近い点であり、もう一つの点は、前記回転軸から最も遠い点であり、
前記複数のターゲットに前記スパッタ放電のための電力を供給する電力供給系が設けられており、この電力供給系は、各ターゲットに供給する電力を各々独立して制御するものであり、
電力供給系は、各ターゲットが前記基板の前を通過している最中に当該ターゲットに電力を供給する制御を行うものであることを特徴とする多層膜作成装置。 - 基板の表面にスパッタリングにより多層膜を作成する多層膜作成装置であって、
少なくとも一つの基板を保持する基板保持具と、
基板保持具に保持された基板にスパッタリングにより多層膜が内部で作成される成膜チャンバーと、
各々ターゲットを備えているとともに成膜チャンバー内に設けられた複数のカソードと、
カソードに電圧を印加してスパッタ放電を生じさせる少なくとも一つのスパッタ電源と、
各ターゲットを一体に回転させる主回転機構とを備えており、
前記ターゲットは、それらの中心軸がある円周上に位置するよう配置されており、
前記主回転機構は、前記円周と同軸の回転軸の周りに各ターゲットを一体に回転させるものであり、
前記基板保持具は、前記回転軸の方向で見た際の所定の領域内に前記基板を保持するものであり、
前記所定の領域内は、回転する前記ターゲット上の二つの点の軌跡によって形成されるものであり、前記二つの点のうちの一つは、前記回転軸に最も近い点であり、もう一つの点は、前記回転軸から最も遠い点であり、
前記複数のターゲットに前記スパッタ放電のための電力を供給する電力供給系が設けられており、この電力供給系は、各ターゲットに供給する電力を各々独立して制御するものであり、
電力供給系は、各ターゲットが前記基板の前を通過している最中に当該ターゲットに電力を供給する制御を行うものであり、
前記基板保持具は、前記回転軸の方向で見た際の所定の領域内に複数の前記基板を保持するものであり、
前記電力供給系は、各ターゲットが各基板の前を通過している最中に各ターゲットに並行して電力を供給して各基板に並行して成膜を行うものであることを特徴とする多層膜作成装置。 - 基板の表面にスパッタリングにより多層膜を作成する多層膜作成装置であって、
複数の基板を保持する基板保持具と、
基板保持具に保持された各基板にスパッタリングにより多層膜が内部で作成される成膜チャンバーと、
各々ターゲットを備えているとともに成膜チャンバー内に設けられた複数のカソードと、
カソードに電圧を印加してスパッタ放電を生じさせる少なくとも一つのスパッタ電源と、各ターゲットを一体に回転させる主回転機構と、
複数の基板を保持した基板保持具を成膜チャンバー内に搬送し、成膜後に搬出する搬送機構とを備えており、
前記ターゲットは、それらの中心軸がある円周上に位置するよう配置されており、
前記主回転機構は、前記円周と同軸の回転軸の周りに各ターゲットを一体に回転させるものであり、
前記基板保持具は、前記回転軸の方向で見た際の所定の領域内に前記基板を保持するものであり、
前記所定の領域内は、回転する前記ターゲット上の二つの点の軌跡によって形成されるものであり、前記二つの点のうちの一つは、前記回転軸に最も近い点であり、もう一つの点は、前記回転軸から最も遠い点であり、
前記搬送機構は、前記回転軸の方向で見た際、前記所定の領域内に各基板が位置する位置で前記基板保持具を停止させるものであることを特徴とする多層膜作成装置。 - 前記複数のターゲットに前記スパッタ放電のための電力を供給する電力供給系が設けられており、この電力供給系は、各ターゲットに供給する電力を各々独立して制御するものであり、
電力供給系は、前記各ターゲットが前記主回転機構により回転して前記各基板の前に位置している際に各ターゲットに並行して電力を供給して各基板に並行して成膜を行うものであることを特徴とする請求項3記載の多層膜作成装置。 - 前記複数のターゲットは互いに異なる材料のものであり、前記電力供給系は、前記各ターゲットが前記各基板の前に位置して成膜が行われる際、各基板において前記各ターゲットによる成膜の順序が同じ順序になるよう各ターゲットへの電力供給を制御するものであることを特徴とする請求項2又は4記載の多層膜作成装置。
- 前記各カソードは、前記スパッタ放電をマグネトロン放電にする磁石機構を有しており、前記主回転機構は、前記ターゲットとともにこの磁石機構を一体に回転させるものであり、
前記磁石機構は、前記ターゲットの中心軸に対して非対称の磁界を形成するものであるとともに、前記磁石機構を前記ターゲットの中心軸の周りに回転させる副回転機構が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の多層膜作成装置。 - 前記副回転機構は、前記主回転機構の回転動力により前記磁石機構を回転させるものであることを特徴とする請求項6記載の多層膜作成装置。
- 前記副回転機構は、前記主回転機構の回転動力とは別の回転動力により前記磁石機構を回転させるものであることを特徴とする請求項6記載の多層膜作成装置。
- 前記各ターゲットから放出されるスパッタ粒子が、別のターゲットからのスパッタ粒子に混ざらないように遮蔽する遮蔽具が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の多層膜作成装置。
- 前記主回転機構は、前記基板保持具に保持された基板と対向した面内で前記各ターゲットを回転させるものであることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の多層膜作成装置。
- 磁気記録層の厚さ方向に磁化して情報を記録する垂直磁気記録媒体を製造する垂直磁気記録媒体製造方法であって、
前記磁気記録層は、第一第二の二種の薄膜を交互に積層した人工格子より成るものであり、人工格子を構成する前記第一の薄膜を作成する工程と、前記第二の薄膜を作成する工程とが、同一の成膜チャンバー内でスパッタリングにより行われる方法であり、
前記第一の薄膜を作成するためのターゲットと、前記第二の薄膜を作成するためのターゲットとを、基板に対向する面内で一体に回転させながら、基板に前記第一第二の二種の薄膜を交互に積層する動作を含んでおり、
前記スパッタリングのために各ターゲットに供給する電力を各々独立して制御し、ターゲットが前記基板に対向していない場合には電力の供給を停止するとともに、ターゲットが前記基板に対向している際には供給する電力を制御して膜厚を調整することを特徴とする垂直磁気記録媒体製造方法。 - 磁気記録層の厚さ方向に磁化して情報を記録する垂直磁気記録媒体を製造する垂直磁気記録媒体製造装置であって、前記磁気記録層は、第一第二の二種の薄膜を交互に積層した人工格子より成るものであり、
人工格子を構成する前記第一の薄膜をスパッタリングにより作成した後、同一チャンバー内でスパッタリングにより前記第二の薄膜を作成を作成して積層する成膜チャンバーを備えており、この成膜チャンバーは、前記第一の薄膜を作成するためのターゲットと、前記第二の薄膜を作成するためのターゲットとを、基板に対向する面内で一体に回転させる主回転機構を備えており、
前記スパッタリングのために各ターゲットに供給する電力供給系が設けられており、この電力供給系は、各ターゲットに供給する電力を各々独立して制御するものであって、ターゲットが前記基板に対向していない場合には電力の供給を停止するとともに、ターゲットが前記基板に対向している際には供給する電力を制御して膜厚を調整するものであることを特徴とする垂直磁気記録媒体製造装置。
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