JP4455948B2 - 熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチとその製造方法 - Google Patents
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Description
有機顔料や無機顔料等の単独使用では、それ自体は微粒子であるが包装、運搬、貯蔵の際に凝集を生じ易く巨大な粒子に成長し易いという性質があり、一旦凝集が起こると通常の着色されるべき熱可塑性樹脂とのブレンド工程で攪拌では、この凝集はほぐれない。
従って、熱可塑性樹脂中への顔料分散性が悪くなり、かかる着色剤配合の熱可塑性樹脂組成物から得られる着色成形品にはカラ−スペック、カラ−ストリ−ク等を生じて、品質が不安定となって好ましくない。
ドライカラ−は、顔料にステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等を混合機を用い、配合処理した粉末状着色剤であり、製造が容易な樹脂用着色剤として使用されている。
しかし、ドライカラ−は、製品として包装の仕方、包装品の貯蔵状態、貯蔵期間、季節等によって影響を受け凝集を生じ易く巨大な粒子に成長し易いという性質があり、これを防ぐことは困難なことである。
そして具体的には、樹脂の着色成形の際に、混合機・成形機周辺の汚れ、作業者の汚れ、粉塵の吸い込みが問題となり、労働安全衛生上からも成形の際には細心の注意をもって作業を行うことが必要になっている。
該マスタ−バッチを製造する際には、顔料粉末と分散剤を、ロ−ル、ニ−ダ−、押出機等の高剪断力により混練して顔料の分散を図っているが、一旦乾燥した顔料粉末は粗大な二次凝集粒子として存在し易く、これら粗大粒子を改めて微細な粒子にして分散することは非常に困難である。しかも、有機顔料の場合には、吸油量が大であるため更に高濃度微分散が困難である。
そこで、近年、エチレンビスアマイド、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等低分子量樹脂ワックスに代えて、分散剤として水を使用の所謂フラッシング法によるマスターバッチの製造法、即ち担体樹脂と粉末顔料を加熱混練する際に水を加えることにより、粉末顔料の凝集体に水分が浸透・破壊して得られる顔料合成時に近い粒径の顔料を担体樹脂中に配合した、分散性の良好な着色剤が得られるフラッシング法によるマスタ−バッチが盛ん商品化されている。
しかし、フラッシング法マスタ−バッチの製造は、他の着色剤の製造工程に比べ、製造ライン及び作業が複雑であり、製造コストも著しく高価になっている。
即ち、フラッシング法によるマスタ−バッチの製造では、混練→練肉→賦形工程と製造ラインが複雑で、それぞれで熱履歴をうけることが多く、担体樹脂自体も熱劣化を生じ易く、着色に際して被着色樹脂の物性を低下させる欠点もある。
特許文献1では、マスタ−バッチとして使用する分散剤として、エチレンビスアマイド、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックス等低分子量樹脂ワックス類を使用する方法が記載されている。
特許文献2では、分散剤に水を主成分とするフラッシング法によるマスタ−バッチの製法が記載されており、分散剤に水を使用して得られるマスタ−バッチが、顔料分散性が非常に良好であると述べられている。
そこで本発明者らは、ドライカラ−を製造の際に使用する混合機の攪拌条件を鋭意検討して従来品のフラッシング法によるカラーマスタ−バッチと同等の顔料分散性に富み、しかも、ドライカラ−の製造法と同様な簡便な生産方法で、熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを製造することを検討したのである。
この事実は、非特許文献2でも、最上段の攪拌羽根より上面では攪拌により作り出された空気流のために混合物が浮遊した状態になり、均一分散性が困難となっていると、記載されている。
特に、熱可塑性樹脂のうち最も汎用であるポリオレフィン系樹脂について詳細に記述すると、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、プロピレン単独重合体等が挙げられる。
顔料は、粉末乾燥顔料、予め、水を含有した乾燥前の顔料ウェットケーキ及びこれらの混合物のいずれであっても良い。尚、顔料ウェットケーキは、顔料一次粒子が非凝集状態を保ったまま、水を2〜70重量%程度含有するものである。
水の添加量が1重量%以下の場合には、粉末乾燥顔料と熱可塑性樹脂の配合物のかさ密度は水を添加しない場合とほとんど変わらず、分散への効果は小さい。
一方、水の添加量が200重量%を超えると脱水工程に多くの時間とエネルギーを要するため好ましくない。
更に、該モデルGシリ−ズの混合機では、投入口が混合機上部に設置されたホッパ−型であり、最初から8m/sec以上の一定スピ−ドの層流状に混合可能な周速度が容易に得られので好ましい。
尚、攪拌軸及び円筒形の槽が基盤(地面)に対し縦型である縦型ミキサ−の場合でも、8m/sec以上の一定スピ−ドの層流状に混合可能な周速度が得られる様に設計されたものであれば良く、例えば、ヘンシェルミキサ−の様な筒形槽が縦型に設置された場合でも、円筒槽の内側面のみに沿った層流状混合が可能な一定方向への層流攪拌ができれば、本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは、容易に得られるものである。
しかし、周速度が8m/secより小さいと本発明が必要とする満足な攪拌効果が得れず、本発明の顔料分散性に富んだ熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは得られない。
尚、本発明品の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチ製造に適した混合機として周速度が90m/secより大きい市販品は見当たらない。
請求項1で記載の周速度に特定して得られた本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは、従来から分散剤として使用のエチレンビスアマイドや、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等低分子量樹脂ワックス等の分散剤を全く配合せずに、これら樹脂用着色剤に劣らぬ顔料分散性を提供するものである。
従って、本発明品は、上記の特徴を生かして各種成形品の用途に使用可能であり、特に紡糸やフィルム成形品として最適である。
本発明品は、従来から使用の各種分散剤使用した場合に発生する耐熱性や耐候性等の低下の心配も全く心配の必要がない。
粉末状乾燥顔料を用いる場合には、予め熱可塑性樹脂、顔料及び水をプレミックスした後に、本発明で使用の高速型混合機に仕込んで製造すれば良い。尚、上記プレミックスは、本発明で使用の高速型混合機を用い、最初に低速回転で操作を行って混合しても良い。
請求項6は、熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンである請求項1〜4いずれかに記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法である。請求項6記載の製造方法で得られる熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは、ポリエチレン樹脂と同様に紡糸やフイルムの製造でも、長時間操業でも何ら支障を生じない作業性に富んでおり、しかも、顔料分散性に富んだ製品を提供するものである。
該熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチでの顔料混合割合は、従来より市販されている有機顔料含有の高濃度品の製造も可能であり、品質も従来製品に劣らぬ優れた製品が、簡便な混合攪拌のみで容易に得られるものである。
しかも、本発明の製造操作は、従来から行われているフラッシング法に比較し非常に簡便であり、小ロット製造が容易であり、熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチ製造の合理化に大いに貢献するものである。
更に、本発明により得られる熱可塑性樹用カラーマスターバッチは、フラッシング法マスタ−バッチの重要な用途である、紡糸や高級フィルムの用途に使用可能な樹脂用着色剤を提供するものである。
以下に実施例及び比較例を記載する。尚、重量部は部と記載する。
実施例1
MFR5g/10分(JIS-K-7210に準拠)、軟化点100.2℃(JIS-K-7206に準拠)の低密度ポリエチレンペレット(宇部ポリエチレン社製商品:F522N、3mm径ペレット)を60部、フタロシアニンブル−(C.I.Pigment Blue15:1)40部及び水道水40部を、予めヘンシェルミキサーによって混合した混合物を、攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を10mmに調節した容量5リットルの脱気孔付き横型高速型混合機(米国DRAISWERKE社製:G5シリ−ズ)の高速型混合機ホッパー口より投入して、回転羽根の先端速度を10m/secとして5分間攪拌し層流状混合を行い、その際に発生する摩擦熱を利用して、脱水しながら軟化塊状化した本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た。
該軟化塊状化状態の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを押出機を用い、ストランド化し押出して、本発明品のペレットを製造した。
実施例1で得られた本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチについて、(a)及び(b)ともに優れた数値を示しており、カラーマスターバッチとして優れていることを証明している。又、比較例4の従来法フラッシング法と変わらぬ着色剤(マスタ−バッチ)が容易に得られる事実を証明している。
試料について厚さ30μmのインフレションフイルムを作成し、容積10cc中のフィルムに存在する0.1mm2以上のグリット個数を測定する。
その結果について、次の基準で顔料分散性の評価を行った。
○‥‥‥10個/cm3未満であり、あらゆる用途に使用可能である
△‥‥‥10個/cm3〜50個/cm3未満であり、分散性が若干劣りフイルム等の薄 物には不適当である。
×‥‥‥50個/cm3以上であり、使用不可能
スクリュ−径15mm単軸押出機の先端に325メッシュの金網を装着し、試料1kgを
押出し、金網の目詰まり状態をダイス部での圧力上昇値(MPa)を測定する。
尚、実施例2〜9及び比較例1〜5についても、同様に(a)と(b)を測定して、その結果を表1に記載する。
MFR5g/10分(JIS-K-7210に準拠)、軟化点100.2℃(JIS-K-7206に準拠)の低密度ポリエチレンペレット(宇部ポリエチレン社製商品:F522N、3mm径ペレット)を60部に対して、フタロシアニンブル−ウェットケーキ「リオノールブルーSM-P」(東洋インキ製造社製商品:顔料濃度50%)70部を、予めヘンシェルミキサーによって混合した混合物を得る。
該混合物を、実施例1記載の高速型混合機を使用し、以後、実施例1と同一条件で操作を行って本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチのペレットを得た。
攪拌羽根が上下2段からなり攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を10mmに調節しており、下段攪拌羽が底部材に平行に取り付けられた脱気孔付き容量1リットル縦型円筒槽である攪拌羽根が2段からなる脱気孔付き実験用高速型混合機(以後ラボミキサ−と称する)を用い、周速度26m/secに調節一定層流で5分間攪拌合した以外は実施例1同様にして、軟化塊状化した本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た後に、押出機によりペレット化した。
実施例1で使用の高速型混合機の周速度を40m/secとした以外は、実施例1同様にして、軟化塊状化した本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た後に、押出機によりペレット化した。
実施例5
実施例1で使用の高速型混合機の周速度を90m/secとした以外は、実施例1同様にして、軟化塊状化した本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た後に、押出機によりペレット化した。
実施例1で使用の高速型混合機の攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を5mmに調節した以外は、実施例1同様にして、軟化塊状化した本発明の塊状化した熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た後に、押出機によりペレット化した。
実施例7
実施例1で使用の高速型混合機の攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を28mmに調節した以外は、実施例1同様にして、軟化塊状化した本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た後に、押出機によりペレット化した。
実施例1において使用の低密度ポリエチレンをMFR7g/10分、軟化点115℃の線状低密度ポリエチレンに代える以外は、実施例1と同様にして、塊状である本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た。
実施例9
実施例1において使用の低密度ポリエチレンをMFR19g/10分、軟化点155.9℃のポリプロピレン(出光石油化学株式会社製J2000GP)に代える以外は、実施例1と同様にして、本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチのペレットを得た。
実施例1における攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を2mmに調節した以外は、実施例1と同じである。
比較例2
実施例1における攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を35mmに調節した以外は、実施例1と同じである。
比較例3
実施例1における周速度を6m/secとする以外は、実施例1と同じである。
ACポリエチレン6A(アライドケミカル&ダイコ−ポレション社製)100部、フタロシアニンブル−(CIピグメントブル−15:1)10部、及び蒸留水50部をニ−ダ−に仕込み加熱混練した後、水分を蒸発させて得られた混合物を3本ロ−ルを用い混練して、フラッシング法によるカラ−マスタ−バッチを得た。
比較例5
比較例4で使用のACポリエチレン6A及びフタロシアニンブル−を予備溶融混練した後に、3本ロ−ルを用いて加熱混練してカラ−マスタ−バッチを得た。
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂、水及び顔料を、攪拌羽根先端部と攪拌槽内壁面との間隙が3〜30mmであり、且つ、回転する攪拌羽根の先端速度が8m/sec以上を有する脱気孔付き高速型混合機を用いて層流状混合を行い、この際に発生する摩擦熱を利用して脱水及び前記熱可塑性樹脂を軟化塊状化し、前記顔料を前記熱可塑性樹脂中に分散してなることを特徴とする熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
- 前記顔料が、粉末乾燥形状である請求項1に記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
- 前記水が、顔料に対し5〜200重量%添加されてなる請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
- 前記顔料が、予め水を含有した乾燥前の顔料ウェットケーキである請求項1または3に記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンである請求項1〜4いずれかに記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンである請求項1〜4いずれかに記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリスチレン樹脂である請求項1〜4いずれかに記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
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