JP4453951B2 - 高耐候性リグノセルロースとその製造方法及び高耐候性リグノセルロースを利用した高耐候性複合材。 - Google Patents

高耐候性リグノセルロースとその製造方法及び高耐候性リグノセルロースを利用した高耐候性複合材。 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、リグノセルロースを原料とする耐候性を改善した高耐候性素材に関し、詳しくは住宅内・外装材、エクステリア等の使用に適する新規な素材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
今日、石油を原料とする合成樹脂が大量に生産、消費されていて、その非分解性の故に自然環境に深刻な影響を与えているが、このような状況に対する対策の一環として木質系素材が自然環境への適性、質感の持つ自然性、原料の循環性等に着目されて再評価されつつある。例えば、木材、木粉、紙、竹材、稲わら、ムギわら等に係るリグノセルロースは繊維、粉末等の形態で各種製品の素材として広く利用されており、これら製品は、屋内・屋外を問わず様々な用途に供されている。
【0003】
また、木粉、紙、竹粉等のリグノセルロース材と樹脂とによる複合成形材も、リサイクルの容易な製品として環境保全に適する利点を有するため、ここ数年、広く内装・外装建材等に利用されてきており、その需要は年々増加している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リグノセルロースやリグノセルロース/ 樹脂複合材等には経年変化が生じ易いという問題がある。すなわち、耐候性、特に紫外線抗性に難があり、屋外はもちろんのこと、屋内でも直接太陽光があたるような場所で使用する場合、前記素材による製品の外観劣化が著しい。
【0005】
このような問題の解決手段として、グラフト重合反応により紫外線吸収剤(UVA)、紫外線安定化剤等の抗紫外線材をリグノセルロースに結合させて耐候性、特に紫外線抗性を向上させる技術が開示されているが( 特開平10−309705号)、目的によっては必要に応じた性能を得られない場合がある。また、UVAをグラフト反応させたリグノセルロースと樹脂を混練成形する際に、リグノセルロ一スの熱劣化によって色調が濃くなり、その結果、紫外線により短期間に褪色してしまうという問題も発生する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、ヘミセルロ−スが紫外線抗性を阻害する成分であるとの知見に基づき、脱ヘミセルロース処理工程によりリグノセルロース中のヘミセルロース成分を減少もしくは除去してなる高耐候性リグノセルロースと合成樹脂、木材その他の高耐候性処理前のリグノセルロース、セメント、コンクリート、セラミックのいずれか又は全部と混練してなる高耐候性リグノセルロース複合材を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである
【0007】
また、段落0006記載の高耐候性リグノセルロース複合材において、脱ヘミセルロース処理工程は、希アルカリ水溶液を用いたアルカリ処理で構成することがある
【0008】
さらに、段落0006または0007いずれか記載の高耐候性リグノセルロース複合材において、リグノセルロースには、さらに抗紫外線処理および又は抗酸化・撥水処理をなし、前記抗紫外線処理により紫外線吸収剤および又は紫外線安定化剤を、前記抗酸化・撥水処理により抗酸化剤および又は撥水剤をそれぞれリグノセルロースに結合させ構成となすことがある
【0009】
本願発明はまた、段落0006ないし0008いずれか記載の高耐候性リグノセルロース複合材を、合成樹脂、木材、セメント、コンクリート、セラミックのいずれか又は全部からなる基材の全層もしくは表層に積層一体化してなる高耐候性リグノセルロース複合材を提供して上記従来の課題を解決しようとするものである
【0010】
さらに、本願発明は単層押し出し成形、二層押し出し成形、多層押し出し成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、真空成形、インフレーション成形のいずれかにより成形加工してなる段落0006ないし0009いずれか記載の高耐候性リグノセルロース複合材を提供して、上記従来の課題を解決する
【0011】
【発明の実施形態】
リグノセルロースについて、脱ヘミセルロース処理をなすことにより、変色原因であるヘミセルロースやリグニンおよび抽出成分の一部を除去または減少させ、リグノセルロースの耐候性を向上させる。さらに、脱ヘミセルロース処理をなすことにより、紫外線吸収剤や紫外線安定化剤等の抗紫外線材とリグノセルロース材とのグラフト重合反応を促進して従来技術に比して良好な耐候性を得る。
【0012】
これによって、木粉や木質ファイバー、木片チップ、紙、竹粉と樹脂の混練成形時に、色調の濃色化を防ぎ、紫外線による初期褪色を防止する。そして、脱ヘミセルロース処理としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水溶液にリグノセルロース材を所定時間浸漬攪拌してヘミセルロ−ス成分を溶出する手法が好ましい。
【0013】
リグノセルロースとしては、木材、木粉、木質ファイバー、紙、竹材、稲わら、ムギわら、ケナフ、バガス、オイルパーム、麻等などのほか、これらの残廃材が使用できる。
【0014】
抗紫外線剤としての紫外線吸収剤(UVA)、紫外線安定化剤は、ベンゾフェノン系UVA、ベンゾトリアゾール系UVA、サリチル酸フェニル系UVA、トリアジン系UVA等に加え、エポキシ基やイソシアネート基のようなリグノセルロース中の水酸基と反応可能な官能基を付する材料、例えば、2−ヒドロキシ4(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'−ヒドロキシ4,4'(2,2',3,3'−エポキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル等が好ましい。
【0015】
抗紫外線剤とリグノセルロースとのグラフト重合反応における触媒として、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、痾−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンベンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン等を使用する。
【0016】
また、抗紫外線剤とリグノセルロースの効果的なグラフト重合反応を実現して良好な耐候性を得るために、脱ヘミセルロース処理を行ったリグノセルロース中にカルボキシル基の導入処理をなす。この処理手段として、酸無水物による反応、オゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射等が好ましい。
【0017】
なおまた、酸無水物による処理、抗紫外線剤によるリグノセルロースのグラフト重合反応処理は、リグノセルロースと樹脂との相溶性を高める観点からも極めて有効であり、相溶性の向上により、リグノセルロースと樹脂との複合材は紫外線による白色劣化をより有効に防止できる一方、リグノセルロースと樹脂との結合が強固となって耐水性、機械的性能も向上する。
【0018】
酸無水物として無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アルケニル酸、無水トリカルハリル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水ヒロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナドラヒドロフタル酸、無水シクロペンタンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等があげられる。
【0019】
なお、リグノセルロースのグラフト反応処理には、前記抗紫外線剤のほか、抗酸化剤、防カビ剤、撥水・撥油剤等に反応性官能基を導入したものを用いることが可能である。
【0020】
また、上記高耐候性リグノセルロースと、合成樹脂、高耐候性処理前のリグノセルロース、コンクリ−ト、セラミック等のいずれか又は全部とを混練するとともに、この混練材を、単層押し出し成形、二層押し出し成形、多層押し出し成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、真空成形、インフレーション成形のいずれかにより成形加工することにより、高耐候性リグノセルロースを含む成形体を得ることができる。前記合成樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−痾−オレフィン共重合体、エチレン−酢ビ−塩ビ共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、EVA樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン共重合体、ブタジェン−スチレン共重合体、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、ポリブタジェン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、メタクリル−スチレン共重合体、ポリウレタン、熱可塑性エラストマーなどから選択可能である。また、前記高耐候性処理前のリグノセルロースとしては、木材、木粉、木質ファイバー、紙、竹材、稲わら、ムギわら、ケナフ、バガス、オイルパーム、麻などの他、これらの残廃材を使用できる。
【0021】
さらに、段落番号0025に記載した混練材、すなわち高耐候性リグノセルロースと、合成樹脂、高耐候性処理前のリグノセルロース、コンクリート、セラミック等のいずれか又は全部との混練混合物を、以下に説明する基材の全層もしくは表層に積層一体化した成形体を得ることができる。そして、前記基材は、合成樹脂、木材、セメント、コンクリートセラミックのうちのいずれか又は全部から構成される。
【0022】
【発明の実施例】
次に、本願発明に係る実施例を数例説明する。
実施例1:リグノセルロースとしてベイツガを選択して、この木粉(100メッシュ)をソックスレー抽出器によりアセトンで1時間抽出し、摂氏105度で24時間乾燥した。
そして、アセトン抽出した木粉100重量部を、5w/w%および15w/w%の水酸化ナトリウム水溶液1900重量部にそれぞれ混合し、ヘミセルロースの減少または除去を目的として室温で24時間および72時間の攪拌による脱ヘミセルロース処理をなした。
この後、溶出したヘミセルロース、水酸化ナトリウム分の洗浄を蒸留水で繰り返し行い、さらに摂氏105度で24時間乾燥した。
【0023】
上記工程で得た脱ヘミセルロース処理木粉は、次の4種類である。
実施例1−1:脱ヘミセルロース処理(5w/w%水酸化ナトリウム水溶液による24時間処理)。カルボキシル基導入処理なし。抗紫外線処理なし。
実施例1−2:脱ヘミセルロース処理(15w/w%水酸化ナトリウム水溶液による24時間処理)。カルボキシル基導入処理なし。抗紫外線処理なし。
実施例1−3:脱ヘミセルロース処理(5w/w%水酸化ナトリウム水溶液による72時間処理)。カルボキシル基導入処理なし。抗紫外線処理なし。
実施例1−4:脱ヘミセルロース処理(15w/w%水酸化ナトリウム水溶液による72時間処理)カルボキシル基導入処理なし。抗紫外線処理なし。
そして、前記脱ヘミセルロース処理工程を終えてヘミセルロースの減少または除去がなされた前記4種類の木粉とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)とをそれぞれ30:70の割合(重量部)で混合し、ミキシンクエクストルーダーにより摂氏110度下で混練した後、幅15mm、厚み1mmの高耐候性リグノセルロース混練成形体を4種類得た。
【0024】
実施例2:前記実施例1と同様に、1 時間アセトン抽出処理を行い、摂氏105度で24時間乾燥の木粉100重量部を、それぞれ5w/w%および15w/w%の水酸化ナトリウム水溶液1900重量部に混合し、室温で24時間および72時間撹絆による脱ヘミセルロース処理を行った。
この後、解離したヘミセルロース、水酸化ナトリウム分の洗浄を蒸留水で繰り返し行い、さらに摂氏105度で24時間乾燥した。
【0025】
次いで、抗紫外線剤として(2-hydroxy4(2,3-epoxypropoxy)benzophenone)(HEPBP)50重量部または200重量部をそれぞれアセトン1000重量部に溶解し、触媒としてトリエチルアミン(TEA) 2重量部を加えて溶液を調製した。脱ヘミセルロース処理をなして乾燥した前記木粉100重量部を耐圧反応管に入れ、上記HEPBPアセトン溶液を加えた後オイルバスにいれ、摂氏120度で12時間反応させた。これを冷却後、木粉を円筒濾紙に移し、ソックスレ−抽出器を用いてアセトンにより6時間抽出処理を行い、未反応の溶液およびホモポリマ−を完全に除去した後、摂氏105度で24時間乾燥して4種類のUVA−g−木粉を得ると共に各UVAグラフト率( 重量増加率) を求めた。このようにして得たUVA−g−木粉は、以下の4種である。
実施例2−1:脱ヘミセルロース処理(5w/w%水酸化ナトリウム水溶液による24時間処理)。カルボキシル基導入処理なし。抗紫外線処理(HEPBP50重量部)。
実施例2−2:脱ヘミセルロース処理(5w/w%水酸化ナトリウム水溶液による24時間処理)。カルボキシル基導入処理なし。抗紫外線処理(HEPBP200重量部)。
実施例2−3:脱ヘミセルロース処理(5w/w%水酸化ナトリウム水溶液による72時間処理)。カルボキシル基導入処理なし。抗紫外線処理(HEPBP200重量部)。
実施例2−4:脱ヘミセルロース処理(15w/w%水酸化ナトリウム水溶液による72時間処理)カルボキシル基導入処理なし。抗紫外線処理(HEPBP200重量部)。
そして、ミキシングエクストルーダーを使用して前記4種類のUVA−g−木粉につき、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)と混練して4種類の高耐候性リグノセルロース混練成形体を得た。
【0026】
実施例3:実施例1 と同様にアセトン抽出を行なった木粉を5w/w%および15w/w%水酸化ナトリウム水溶液とそれぞれ混合し、室温で24時間(5w/w%水酸化ナトリウム水溶液による場合)および72時間(15w/w%水酸化ナトリウム水溶液による場合)攪拌して脱ヘミセルロース処理を行った後、蒸留水で洗浄を繰り返し摂氏105度で24時間乾燥して、2種の脱ヘミセルロース処理木粉を得た。
【0027】
次いで、無水コハク酸(SA)10重量部および50重量部をジメチルスルホキシド(DMSO)1000重量部に各別に溶解し、触媒としてジメチルベンジルアミン・(DMBA)1重量部を加えてSA−DMSO溶液2種類を、準備調製した。そして、脱ヘミセルロース処理を行い乾燥させた前記木粉100重量部を、耐圧反応管に入れ、それぞれに前記2種類のSA−DMSO溶液を加えた後、耐圧反応管をオイルバスにいれ、摂氏120度で2時間反応させリグノセルロースへのカルボキシル基の導入処理をなした木粉を得た。
これを冷却後、木粉を円筒濾紙に移し、ソックスレー抽出器を用いてアセトンにより6時間抽出処理を行い、未反応の溶液およびホモポリマーを完全に除去した後、摂氏105度で24時間乾燥して、各SAグラフト率(重量増加率)を求めた。
【0028】
一方、実施例2と同様に抗紫外線剤としてのHEPBP50重量部および200重量部をアセトン1000重量部に各別に溶解し、それぞれに触媒としてトリエチルアミン(TEA)10重量部を加えた溶液2種類を準備調製した。次いで、無水コハク酸(SA)反応処理をなし乾燥させた前記木粉において、上記で求めたSAグラフト率から換算して正味の木粉量が100重量部となる量を耐圧反応管に入れてHEPBP−アセトン溶液を加えた後、この耐圧反応管をオイルバスに入れ、摂氏120度で12時間反応させた。冷却後、さらにアセトン抽出処理を6時間行い、不要物を完全に除去した後、摂氏105度で24時間乾燥してUVA−g−SA木粉を得た。このようにして得たUVA−g−SA木粉は、以下の4種である。
実施例3−1:脱ヘミセルロース処理(5w/w%水酸化ナトリウム水溶液による24時間処理)カルボキシル基導入処理(無水コハク酸(SA)10重量部)抗紫外線処理(HEPBP10重量部)
実施例3−2:脱ヘミセルロース処理(5w/w%水酸化ナトリウム水溶液による24時間処理)カルボキシル基導入処理(無水コハク酸(SA)10重量部)抗紫外線処理(HEPBP50重量部)
実施例3−3:脱ヘミセルロース処理(5w/w%水酸化ナトリウム水溶液による24時間処理)カルボキシル基導入処理(無水コハク酸(SA)50重量部)抗紫外線処理(HEPBP50重量部)
実施例3−4:脱ヘミセルロース処理(15w/w%水酸化ナトリウム水溶液による72時間処理)カルボキシル基導入処理(無水コハク酸(SA)50重量部)抗紫外線処理(HEPBP50重量部)
そして、ミキシングエクストルーダーを使用して上記4種類のUVA−g−SAにつき、それぞれエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)と混練して4種類の高耐候性リグノセルロース混練成形体を得た。
【0029】
実施例4:竹粉(40メッシュ)をソックスレー摘出器によりアセトンで1時間抽出し、摂氏105度で24時閥乾燥した。アセトン抽出したこの竹粉100重量部を5w/w%水酸化ナトリウム水溶液1900重量部に混合し、室温で24時間攪拌し脱ヘミセルロース処理をなした後、蒸留水で洗浄を繰り返し摂氏105度で、24時間乾燥した。
次いで、脱ヘミセルロース処理後乾繰した前記竹紛とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)とを、30重量部対70重量部の割合で混合し、ミキシングエクストルーダーにより摂氏110度で混練し、巾15mm、厚さ1mmの高耐候性リグノセルロース混練成形体を得た。
【0030】
実施例5:実施例4と同様に、アセトン抽出を1時間行い、摂氏105度で24時間乾燥した竹粉100重量部を5w/w%水酸化ナトリウム水溶液1900重最部に混合し、室温で24時間攪拌して脱ヘミセルロース処理を行った後、蒸留水で洗浄を繰り返し摂氏105度で24時間乾燥した。他方、抗紫外線剤としてのHEPBP200重量部をアセトン1000重量部に溶解し、触媒としてトリエチルアミン(TEA)10重量部を加えた溶液を調製準備した。
【0031】
脱ヘミセルロース処理をなし乾燥させた前記竹粉100重量部を、耐圧反応管に入れ、上記HEPBPアセトン溶液を加えた後、耐圧反応管をオイルバスに入れ、摂氏120度で12時間反応させた。これを冷却した後、竹粉を円筒濾紙に移してソックスレー抽出器を用いてアセトンにより6時間抽出処理を行い、未反応の溶液およびホモポリマーを完全に除ムした後、摂氏105度で24時間乾燥してUVA−g−竹粉を得た。さらに、UVA−g−竹粉とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)とをミキシングエクストルーダーにより混練して、高耐候性リグノセルロース混練成形体を得た。
【0032】
実施例6:実施例4と同様に、アセトン抽出を行った竹紛を5w/w%水酸化ナトリウム水溶液と混合し、室温で24時間攪拌して脱ヘミセルロース処理を行った後、蒸留水で洗浄を繰り返した後、摂氏105度で24時間乾燥した。他方、無水マレイン酸(MA)50重量都をジメチルスルホキシド(DMSO)1000重量部に溶解し、触媒としてジメチルベンジルアミン(DMBA)1重量部を加えリグノセルロースへのカルボキシル基導入処理のためのMA−DMSO溶液を調製準備した。
【0033】
次いで、脱ヘミセルロース処理を行った前記竹紛100重量部を耐圧反応管に入れ、HEPBPアセトン溶液を加えて耐圧反応管をオイルバスにいれ、摂氏120度で2時間反応させた。
冷却後、竹粉を円筒濾紙に移し、ソックスレー抽出器を用いてアセトンにより6時間抽出処理を行い、未反応の溶液およびホモポリマーを完全に除去した後、摂氏105度で24時間乾燥してUVAグラフト率を求めた。また、実施例5と同様に、HEPBP50重量部をアセトン1000重量部に溶解し、触媒としてのトリエチルアミン(TEA)10重量部を加えた溶液を調製準備した。
【0034】
乾燥した前記竹粉を、前記重量増加率から換算して正味の竹粉量が100重量部となる量を耐圧反応管に入れてHEPBPアセトン溶液を加え、この耐圧反応管をオイルバスにいれ、摂氏120度で12時間反応させた。これを冷却後、アセトン抽出処理を6時間行い、不要物を完全に除去した後、摂氏105度で24時間乾燥してUVA−g−MA竹粉を得た。さらに,ミキシングエクストルーダーを使用して前記UVA−g−MA竹粉とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)とを混練して高耐候性リグノセルロース混練成形体を得た。
【0035】
次に、上記各実施例に係る高耐候性リグノセルロース混練成形体の性能を検証するために、以下のような比較例を生成した。
比較例1: ベイツガ木粉(100メッシュ)を摂氏105度で24時間乾燥させ、ミキシングエクストルーダーにてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との混練によるEVA/木粉混練成形体を得た。
【0036】
比較例2−1: 1時間のアセトン抽出処理の後、摂氏105度で24時間乾燥した木粉(100重量部)を耐圧反応管に入れ、50重量部のHEPBPをそれぞれアセトン(1000重量部)に各別に溶解し、これらに、触媒としてトリエチルアミン(TEA)10重量部をそれぞれ添加した溶液を加えた後オイルバスに入れ、摂氏120度で12時間反応させた。冷却後、アセトン抽出処理を6時間行い、摂氏105度で24時間乾燥して、UVA−g−木粉のUVAグラフト率( 重量増加率) を求めるとともに、木粉とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との混練によるEVA/木粉混練成形体を得た。
比較例2−2: 上記 比較例2−1において、HEPBPを200重量部として処理をなし、同様にUVA−g−木粉のUVAグラフト率( 重量増加率) を求めるとともに、木粉とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との混練によるEVA/木粉混練成形体を得た。
【0037】
比較例3: アセトン抽出処理を1時間行い、摂氏105度で24時間乾燥した木粉(100重量部)を耐圧反応管に入れ、無水コハク酸(SA)50重量部をジメチルスルホキシド(DMSO)1000重量部に溶解し、触媒としてのジメチルベンジルアミン(DMBA)1重量部を添加した溶液を加えた後、オイルバスにより、摂氏120度で2時間反応させた。これを冷却後、アセトン抽出処理を6時間行い、摂氏105度で24時間乾燥しSAグラフト率を求めた。次いで、HEPBP(50重量部)をアセトン(1000重量部)に溶解し、トリエチルアミン(TEA)10重量部を加えた溶液を調製した。乾燥して得た前記SA−木粉を上記で求めたSAグラフト率から換算して正味の木粉量が100重量部に対応する量を耐圧反応管に入れ、HEPBPアセトン溶液を加えた後オイルバスにより、摂氏120度で12時間反応させた。これの冷却後、アセトン抽出処理を6時間行い、摂氏105度で24時間乾燥して生成したUVA−g−木粉のUVAグラフト率を求めるとともに、この木粉とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との混練成形体を形成した。
【0038】
比較例4: 竹粉(40メッシュ)を摂氏105度で24時間乾燥させ、前記竹粉をミキシングエクストルーダーにより、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)と混練して混練成形体を形成した。
【0039】
比較例5: アセトン抽出処理(1時間)をなした後、摂氏105度で24時間乾燥させた竹粉100重量部を耐圧反応管に入れ、HEPBP200重量部をアセトン1000重量部に溶解し、触媒としてトリエチルアミン(TEA)10重量部を添加した溶液を加えた後、オイルバスにより摂氏120度で12時間反応させた。
これの冷却後、アセトン抽出処理を6時間なした後、摂氏105度で24時間乾燥してUVA−g−竹粉を生成した。この竹粉をエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)と混練して混練成形体を形成した。
【0040】
比較例6: アセトン抽出処理(1時間)をなした後、摂氏105度で24時間乾燥させた竹粉100重量部を耐圧反応管に入れ、無水マレイン酸(MA)50重量都をジメチルスルホキシド(DMSO)1000重量部に溶解し、触媒としてジメチルベンジルアミン(DMBA)1重量部を添加した溶液を加えた後、オイルバスにより、摂氏120度で2時間反応させた。これの冷却後、アセトン抽出処理を6時間行い、摂氏105度で24時間乾燥させてMAグラフト率を求めた。次いで、HEPBP50重量部をアセトン1000重量部に溶解し、触媒としてトリエチルアミン(TEA)10重量部を加えた溶激を調製した。他方、乾燥した前記MA竹粉を上記で求めたMAグラフト率から換算して正味の竹粉量が100重量部となる量を耐圧反応管に入れ、HEPBPアセトン溶液を加えた後、オイルバスにより摂氏120度で12時間反応させた。これの冷却後、アセトン抽出処理を6時間なし、摂氏105度で24時間乾繰させてUVA−g−竹粉を生成し、このUVA−g−竹粉とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)とを混練して混練成形体を形成した。
【0041】
図1に示す表1は、上記実施例1ないし6に係る高耐候性リグノセルロースにおける脱ヘミセルロース処理条件に対応するカルボキシル基導入反応および抗紫外線処理(グラフト反応)の結果を対比したものである。なお、SA(又はMA)グラフト率およびUVAグラフト率は、下式により求めた。
SA(又はMA)グラフト率(%)=((カルキシル基導入反応後のリグノセルロース絶乾重量(g) )−(カルキシル基導入反応前のリグノセルロース絶乾重量(g) ))÷(カルキシル基導入反応前のリグノセルロース絶乾重量(g) )×100
UVAグラフト率(%)=((UVAグラフト反応後のリグノセルロース絶乾重量(g) )−(UVAグラフト反応前のリグノセルロース絶乾重量(g) ))÷(UVAグラフト反応前のリグノセルロース絶乾重量(g) )×100
【0042】
表1から、例えば実施例2においてUVAグラフト率はUVA量が多いほど、また、脱ヘミセルロース処理時間の長いほど高まることが判明する。さらに、実施例3において、カルボキシル基導入反応は無水コハク酸(SA)量の増加につれて高まり、そして実施例2との比較から、カルボキシル基導入反応によりUVAグラフト率が格段に高まることが判明する。
【0042】
図2に示す表2は、上記比較例1ないし6のカルボキシル基導入反応処理および抗紫外線処理(UVAグラフト反応)の結果を対比したものである。なお、比較例1および4においては上記のように前記両処理はなされていない。
また、各比較例において、脱ヘミセルロース処理がなされていないことは前述のとおりである。
【0043】
上記実施例および比較例に係る(EVA−リグノセルロース)混練成形体につき、耐候性に関する実験を行い、それぞれの性能を比較した。図3に示す表3は、前記各実施例の屋外暴露による耐候性促進試験における暴露時間に対応する色差(トE)の変化と500時間後の白化劣化状態を示す表であり、色差(トE)は混練成形体の実験前の表面色に対する実験後の表面色の差を示し(色彩分光光度計による)、この色差は、それぞれ100時間、200時間、500時間の経過時点で測定した。
白化劣化の評価は、以下に示すように全面白化劣化を1とし、白化劣化なしを5とし、1から5の9段階の数値を付与して行った。
白色劣化の評価
段 階 評価
1 全面白化劣化
1〜2

2〜3

3〜4

4〜5
5 白化劣化無し
【0044】
前記耐候性実験の結果は、表3に示すように前記実施例中、実施例3のすべておよび実施例6が評価5となり優れた性能を得ている。次いで、実施例2のすべてが評価4ないし5となり、その他は評価4に達したものはなかった。
【0045】
図4に示す表4は、前記各実施例と同様の実験を前記各比較例についてなした結果示す表である。 評価において、比較例3が評価3−4を得たほかは、おしなべて低い評価となっている。
【0046】
表3と表4から判明するように、本願発明に係る高耐候性リグノセルロースが耐候性において優れた性能を示すのに比して、脱ヘミセルロース処理がなされていないリグノセルロースは、たとえカルボキシル基導入処理およびUVAグラフト反応処理を施しても前記評価は、3−4であり(比較例3および6)、本願発明の有効性が実証されている。すなわち、イ:
実施例1(1−1、1−2、1−3、1−4)と比較例1との比較および実施例4と比較例4との比較により、脱ヘミセルロース処理により白化劣化の進行の抑制がなされていることが判明する。
ロ: 実施例2(2−1、2−2、2−3、2−4)と比較例2(2−1、2−2)との比較および実施例5と比較例5との比較により、UVAグラフト反応の前処理として脱ヘミセルロース処理を行うと、初期褪色および白化劣化の進行の抑制がなされていることが判明する。
ハ: 実施例3(3−1、3−2、3−3、3−4)と比較例3との比較および実施例6と比較例6との比較により、UVAグラフト反応の前処理として脱ヘミセルロース処理およびカルボキシル基導入を行うと、白化劣化の抑制が極めて有効になされることが判明する。なお、リグノセルロースの酸無水物処理あるいはUVAグラフト反応処理により、木粉表面の極性が低下し樹脂との相溶性が向上する。これは、SEM写真により確認することができる。
相溶性が向上することにより、複合材の強度性能が向上し、紫外線暴露による性能の低下を抑制できる。
【0047】
【発明の効果】
本願発明は、以上説明したように、リグノセルロースあるいはリグノセルロース/ 樹脂複合体等の耐候性、特に紫外線抗性を高め、屋外はもちろんのこと、屋内でも直接太陽光があたるような場所で使用する場合にも前記素材による製品の外観劣化を極めて有効に防止できる。また、酸無水物処理あるいはUVAグラフト反応処理により樹脂とリグノセルロースとの相溶性が向上し、優れた性能を有する新規な複合素材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】......本願発明に係る実施例における脱ヘミセルロース処理条件に対応するカルボキシル基導入反応および抗紫外線処理(UVAグラフト反応)の結果を対比した表である。
【図2】......脱ヘミセルロ¥ス処理をなしていないリグノセルロース(比較例)におけるカルボキシル基導入反応処理および抗紫外線処理(UVAグラフト反応)の結果を対比した表である。
【図3】......前記各実施例の耐候性促進試験における暴露時間に対応する色差(トE)の変化と500時間後の白化劣化状態を示す表である。
【図4】......本願発明の実施例と比較するための各比較例の耐候性促進試験における暴露時間に対応する色差(トE)の変化と500時間後の白化劣化状態を示す表である。

Claims (5)

  1. 脱ヘミセルロース処理工程によりリグノセルロース中のヘミセルロース成分を減少もしくは除去してなる高耐候性リグノセルロースと合成樹脂、木材その他の高耐候性処理前のリグノセルロース、セメント、コンクリート、セラミックのいずれか又は全部と混練してなる高耐候性リグノセルロース複合材
  2. 請求項1記載の高耐候性リグノセルロース複合材において、脱ヘミセルロース処理工程は、希アルカリ水溶液を用いたアルカリ処理であることを特徴とする高耐候性リグノセルロース複合材
  3. 請求項1または2いずれか記載の高耐候性リグノセルロース複合材において、リグノセルロースには、さらに抗紫外線処理および又は抗酸化・撥水処理をなし、前記抗紫外線処理により紫外線吸収剤および又は紫外線安定化剤を、前記抗酸化・撥水処理により抗酸化剤および又は撥水剤をそれぞれリグノセルロースに結合させてなることを特徴とする高耐候性リグノセルロース複合材
  4. 請求項1ないし3いずれか記載の高耐候性リグノセルロース複合材を、合成樹脂、木材、セメント、コンクリート、セラミックのいずれか又は全部からなる基材の全層もしくは表層に積層一体化してなる高耐候性リグノセルロース複合材
  5. 単層押し出し成形、二層押し出し成形、多層押し出し成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、真空成形、インフレーション成形のいずれかにより成形加工してなる請求項1ないし4いずれか記載の高耐候性リグノセルロース複合材
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