JP4451170B2 - マグネシウム合金部材の表面前処理方法 - Google Patents

マグネシウム合金部材の表面前処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、マグネシウム合金部材の表面処理方法及び表面処理をしたマグネシウム合金部材に関するものであり、更に詳しくは、宇宙・航空材料・電子機器材料、自動車部材等幅広い分野で利用することが可能な、マグネシウム合金部材の表面処理方法における、マグネシウム合金部材表面の前処理方法及びこの前処理方法で処理された表面処理マグネシウム合金部材に関するものである。本発明は、マグネシウム合金の表面処理の分野において、従来方法では、多段の表面処理が必要とされていたこと、また、脱脂浴やエッチング浴の組成について厳重な管理が必要であったこと、更に、廃液処理等の問題があったこと、などを踏まえて、これらの諸問題を抜本的に解決することを可能とする、新しいマグネシウム合金部材の表面処理方法を提供するものである。
マグネシウム合金は、実用金属中最も密度が小さく、比強度及び比剛性特性に優れている。そのため、排出二酸化炭素量の削減が緊急の課題となっている自動車産業では、ドアフレーム、エンジンハウジング、ステアリング、ボデー等多くの部品を、マグネシウム合金により製作し、車両重量の軽量化を図ること、それにより、自動車の燃料消費、及び二酸化炭素排出を少なくすることの試みが、近年活発に行われている。また、家電産業では、パソコン、携帯電話等の電子機器の筐体を、リサイクルが困難な樹脂材料から、リサイクルが比較的容易なマグネシウム合金に変更する試みが活発に行われている。
一方、マグネシウムは、実用金属の中で電気的に最も卑であるため、空気中においても化学的腐食を受け易いという問題がある。そのため、自動車部材、家電部材などにマグネシウム合金を利用するためには、防食を目的とした表面処理が必要である。
従来、マグネシウム合金の表面処理としては、化成処理(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)、陽極酸化処理(例えば、特許文献2参照)、塗装処理(例えば、特許文献3、特許文献4参照)、蒸着処理(例えば、特許文献5参照)等が、提案乃至は実施されている。ここで、化成処理は、化学反応により、また、陽極酸化処理は、電気化学反応により、処理液と母材との間に反応膜を生成させる処方であり、塗装処理及び蒸着処理は、マグネシウム合金表面、又は化成処理若しくは陽極酸化処理が施されたマグネシウム合金表面に、被膜を物理(一部化学的)的に積層するものである。
いずれの表面処理を施す場合においても、マグネシウム合金母材表面が、均一な表面を有し、酸化物、油脂分等の不純物が存在しない状態で、その表面処理を行うことが望ましい。マグネシウム合金母材の表面に、油脂分、酸化物等の不純物が存在する場合には、その不純物による凹凸部分を起点として、剥離が生じてしまい、マグネシウム合金母材の表面に、密着性の優れた表面処理膜を形成させることが困難である。
従来から、マグネシウム合金母材表面の不純物を除去するために、種々の前処理が行われてきている。前処理は、主に、機械的前処理と化学的前処理に分類される。機械的前処理では、機械的研磨が、化学的前処理では、主に、脱脂処理、活性化処理等が行われる。機械的研磨は、マグネシウム合金表面上の比較的大きな不純物を物理的に除去するものであり、例えば、バレル研磨、バフ研磨、ショットブラスト、エメリー紙研磨等が利用されている。脱脂処理は、マグネシウム合金表面に付着している油脂分を除去するための処理であり、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を利用した脱脂法、アセトン等の有機溶剤を利用した脱脂法が利用される。活性化処理は、マグネシウム合金母材表面に付着している酸化物を、酸、アルカリ等の溶剤によりエッチングする処理であり、例えば、カルボン酸等による酸洗い、高pH値(11以上)のアルカリ溶液中に浸漬するアルカリエッチング等が行われる。
従来の前処理技術では、良好な前処理を達成するためには、少なくとも上記の機械的研磨、脱脂処理及び活性化処理という、3つの前処理を行う必要がある。また、脱脂浴、エッチング浴の組成(pH)に関して、厳重な管理が必要である。更に、酸、アルカリ溶液を利用することから、廃液処理等の問題も抱えている。これらの問題は、マグネシウム合金の表面処理のコストを引き上げる大きな要因となっている。
特開平4−311575号公報 JIS H8651 特開平7−109598号公報 特開昭63−250498号公報 特開平7−204577号公報 特開2001−73165号公報
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術における、以上で述べた、化学的前処理における問題点、特に、環境負荷の高い溶剤を用いる点、液組成の厳重な管理を必要としていて煩雑である点に鑑みて、それらの諸問題を抜本的に解決することが可能な新しい方法を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、半導体・液晶等の精密洗浄に利用されている超音波洗浄が、マグネシウム合金部材表面の前処理に適用できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の目的は、比較的簡便かつ環境に優しい手法により、マグネシウム合金母材表面の前処理を行うための手法を開発することにある。更に、本発明の目的は、機械的前処理及び中性洗浄液処理を利用した超音波洗浄のみにより、マグネシウム合金母材の表面前処理を行うことであり、マグネシウム合金表面処理を、簡便かつ安価に行うことを可能にするマグネシウム合金部材の表面前処理方法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)マグネシウム合金部材を、クエン酸水素2アンモニウム、3−メチル−3−メトキシブタノール、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル及び水を含む洗浄原液又はその希釈液である洗浄液の中で、超音波を付加して洗浄する、マグネシウム合金部材の表面前処理方法であって、
洗浄原液のpHが、6.5〜7.5であること、マグネシウム合金部材表面に機械的研磨を施した後に洗浄すること、を特徴とするマグネシウム合金部材の表面前処理方法。
(2)洗浄液が、14〜19容量%のクエン酸水素2アンモニウム、13〜20容量%の3−メチル−3−メトキシブタノール、7〜13容量%のポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、残部のアルカリ性溶液、水及び不可避に混入する不純物からなる洗浄原液又はこの洗浄原液を20〜100容量%の範囲において水で希釈した希釈液であることを特徴とする、前記(1)に記載のマグネシウム合金部材の表面前処理方法。
)超音波の印加周波数を、1〜100kHz、印加強度を0.1〜50W/cmとすることを特徴とする、前記(1)に記載のマグネシウム合金部材の表面前処理方法。
)洗浄温度を常温から50℃、洗浄時間を3〜15分とすることを特徴とする、前記(1)に記載のマグネシウム合金部材の表面前処理方法。
)機械的研磨が、バレル研磨、バフ研磨、ショットブラスト又はエメリー紙研磨であることを特徴とする、前記()に記載のマグネシウム合金部材の表面前処理方法。
前記(から(5)のいずれかに記載の表面前処理方法により前処理された、表面に塗布した塗料の剥離がない被膜密着性能[自動車規格(JASO)自動車用材料腐食試験法(M 609−91)に準拠するサイクル試験法による]を有することを特徴とする表面処理マグネシウム合金部材。
次に、本発明について、更に詳細に説明する。
図1は、マグネシウム合金部材の表面前処理方法を説明するためのもので、図1の(a)
は、本発明に係る前処理を経る場合の、マグネシウム合金表面処理の流れ図であり、図1の(b)は、従来の前処理を経る、マグネシウム合金表面処理法の流れ図である。各図で、太線内部が、表面前処理に相当する。図1(b)で示したように、前述した従来のマグネシウム合金表面処理方法では、部材表面上の酸化物等を、バレル研磨、バフ研磨、ショットブラスト、エメリー紙研磨等の機械的研磨方法により、大まかに除去した後、脱脂処理、酸洗い処理及び活性化処理を行う必要があるとともに、処理液のpH等を厳重に管理する必要があった。本発明者らは、従来の前処理方法を簡略化するための手法として、半導体・液晶等の精密洗浄に利用される超音波洗浄に注目した。
超音波洗浄とは、溶液中に超音波を印加した際に起こるキャビテーション現象に依る作用を主に利用したものである。溶液中にkHz帯の超音波を印加すると、溶液中には過圧と負圧が生じる。キャビテーションとは、負圧が溶液に印加された際に、溶液が引き裂かれ、空洞ができる現象を指す。この空洞は、正の半サイクル時に、液圧で押しつぶされるため、瞬時に壊滅するが、その際に、液体分子が衝突し合うことにより、衝撃波が局所的に発生する。超音波洗浄とは、超音波印加に伴い生ずる衝撃波を母材表面にて発生させ、局所的に母材に付着する不純物を除去するものである。
キャビテーションを発生させるためには、溶液中に、一定レベル以上の音圧強度で超音波を印加しなければならず、その条件は、主に印加周波数、溶液の粘性及び溶液の蒸気圧により変化する。飽和水及び脱気水中でキャビテーションを生成させるための、印加周波数と音圧強度の関係を、図2に示す(安井享,超音波 TECHNO, 1999年7月, p.46参照)。本発明で用いる洗浄液(後記実施例参照)の特性は、水のそれとほぼ同じである。図2からは、印加周波数が100kHzを越えると、キャビテーションを生成させるための音圧強度は、急激に上昇する。そのため、印加周波数は100kHz以下にするべきである。一方、印加周波数が100kHz以下の場合、飽和液では、少なくとも0.1W/cm以上の音圧強度が、脱気水であれば、少なくとも1W/cm以上の音圧強度が必要である。なお、本明細書で定義するキャビテーションとは、脱気水のみに発生する気体性キャビテーションだけでなく、飽和水においても発生する蒸気性キャビテーションも含む。
一方、超音波を溶液又は被洗浄物に印加しただけでは、化学反応(脱脂等)は起こらない。そのため、単に、マグネシウム合金母材を水に浸漬した後に超音波を印加するだけでは、被洗浄物表面の不純物、特に、マグネシウム合金母材表面に付着する油分、を有効に除去することは、困難である。本発明者等は、酸化膜及び油分を均一に除去するための手法として、洗浄液の組成に着目し、不純物を除去するために最も高効率を生み出す洗浄液の研究・開発を行った。そして、環境面への負荷を考慮し、中性(pH6.5〜7.5)で良好な洗浄能力を発揮する洗浄液を選定した。
一連の研究・開発の結果、14容量%以上で19容量%以下のクエン酸水素2アンモニウム、13容量%以上で20容量%以下の3−メチル−3−メトキシブタノール、7容量%以上で13容量%以下のポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、並びに残部のアルカリ性溶液及び水によりpH6.5〜7.5に調整した水溶液を、洗浄原液として利用することにより、機械的研磨を施したマグネシウム合金部材に対して、良好な洗浄特性が得られることを見出した。更に、上記洗浄原液は、それの容量%が20容量%になるまで希釈しても、洗浄特性が劣化しないことを確認した。
以上述べたように、本発明は、洗浄を効率良く実施することを可能とする洗浄液を利用して、マグネシウム合金部材を超音波洗浄することを特徴としている。本発明に係る表面前処理では、機械的研磨を行ったマグネシウム合金部材を、中性洗剤中での超音波洗浄に供することにより、前処理が完了するため、本発明により、マグネシウム合金部材の表面前処理プロセスの単純化を図ることが可能となるだけではなく、低環境負荷型のプロセスを構築することが可能となる。
次に、本発明に係る方法を実施するための、マグネシウム合金部材表面前処理装置の一例について、図3を示して説明する。
図3は、本発明に係る、マグネシウム合金部材の超音波洗浄による表面前処理を実施するために用いた装置の構成を示す。この図3で示した装置は、超音波振動子を、下方に設置した場合の一例である。図中、1は洗浄槽、2は洗浄液、3は超音波振動子、4はマグネシウム合金部材、5は温度計、6はpHメータ、7は超音波増幅器、8は超音波発信器を表している。
図3で示したマグネシウム合金部材表面前処理装置において、14容量%以上で19容量%以下のクエン酸水素2アンモニウム、13容量%以上で20容量%以下の3−メチル−3−メトキシブタノール、7容量%以上で13容量%以下のポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、及び残部のアルカリ性溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水等)と蒸留水により、pH6.5〜7.5に調整した水溶液である洗浄原液を、そのまま又はその容量%が、20容量%以上となる範囲で希釈して洗浄液2とし、この洗浄液2を、超音波振動子3、超音波増幅器7及び超音波発信器8が配された洗浄槽1に注入する。次いで、あらかじめ、バレル研磨、バフ研磨、ショットブラスト、エメリー紙研磨等の機械的研磨を施したマグネシウム合金部材4を、洗浄液2内に挿入する。超音波発信器8により、所定の強度・周波数の超音波を、洗浄液2及びマグネシウム合金部材4に印加することにより、マグネシウム合金部材4表面の表面前処理が実施される。
前述のように、洗浄液2中の超音波特性は、水中の超音波特性と、ほぼ同じであるから、超音波の周波数は100kHz以下にすること、及び超音波の強度は0.1W/cm以上にすることにより、飽和水でも、洗浄液2内部にキャビテーション現象が生じる。また、洗浄液2を、洗浄原液そのまま又は洗浄原液の容量%が20容量%以上の範囲内で希釈したものとすること、洗浄時間は3分以上に設定すること、及び洗浄液の温度を常温以上50℃以下に調整することという条件により、良好な表面前処理が可能である。このようなことから、本発明では、超音波の印加周波数は、1〜100kHz、印加強度は0.1〜50W/cmが好ましく、また、洗浄液の温度を10〜50℃、洗浄時間は3〜15分とすることが好ましい。なお、超音波の周波数を1kHz以下にすると、超音波を付加する効果が低くなり過ぎ、超音波の強度を50W/cm以上にしても、エネルギー効率が低下するだけであり、また、洗浄液の温度を10℃よりも低くすることは、前処理に要する時間が長くなるとともに、冷却手段が必要になり、それに要するエネルギーも無駄になるので、敢えてそうする必要が無く、洗浄時間を15分以上としても、エネルギー効率が低下するだけである。
本発明の表面前処理方法は、任意形状を有するマグネシウム合金部材に適用可能である。また、本発明の表面前処理方法は、種々の組成のマグネシウム合金に適用可能である。本発明が適用可能なマグネシウム合金は、マグネシウムを主成分とする限りは、その組成を限定するものではない。
以上説明したように、本発明のマグネシウム合金部材の表面前処理方法は、マグネシウム合金試験片に機械的研磨を施した後に、クエン酸水素2アンモニウム、3−メチル−3−メトキシブタノール、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテルを含有する中性洗浄液中で、超音波洗浄を行うだけであるから、本発明により、(1)前処理プロセスの簡略化を図ることができる、(2)中性洗剤を用いているので、低環境負荷型のプロセスの構築が可能である、という効果が奏される。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(洗浄液の調製)
17容量%のクエン酸水素2アンモニウム、17容量%の3−メチル−3−メトキシブタノール、11容量%のポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、8容量%のアンモニア、47容量%の脱気水により構成される洗浄原液を、50容量%及び20容量%に、脱気水で希釈して、それぞれ洗浄液とした。
(測定方法)
底部に超音波振動子を接続可能なφ120mm×180mmの円筒状アクリル容器に、前記洗浄液を、160mmの深さになるまで注入した。液温は、29℃であった。種々の超音波発信器及び超音波振動子を使用して、超音波の周波数を50kHz、100kH及び200kHz、超音波の出力を50W、100W及び150Wと変化させ、キャビテーションが生成する条件を調査した。
(測定結果)
洗浄原液が50容量%になるように希釈した洗浄液での結果を、図2上にプッロットして、図4として示す。印加周波数が50kHzで、かつ、出力が100W及び150Wであるときのみ、キャビテーションが目視で観察された。この条件は、脱気水内にキャビテーションが発生する条件と、ほぼ一致する。なお、洗浄原液が20容量%になるように希釈した溶液においても、同様の傾向が現れた。
(マグネシウム合金供試材の調製)
代表的なマグネシウム合金鋳造材である、AZ91D平板の試験片(69mm×74mm×3mm)を作製し、600番のエメリー紙で、機械的研磨を行った試料を供試材とした。
(前処理方法)
底部に超音波振動子を接続可能なφ120mm×180mmの円筒状アクリル容器に、実施例1で調製した洗浄原液を50容量%まで希釈した洗浄液(29℃)を、160mmの深さになるまで注入し、上記試験片を、洗浄液内に浸漬して、周波数50kHz、出力100Wの超音波を、試料に5分間印加することにより、超音波洗浄を施して前処理を行った。また、比較例として、前記洗浄液に代えて、蒸留水(29℃)を用いて、実施例2と同様に超音波洗浄を施して前処理を行い、また、前記供試材にアセトン脱脂を行ってから、前記洗浄液に代えて、アルカリ溶液(苛性ソーダが20g/L、リン酸ソーダが10g/L及び 界面活性剤が0.8g/Lである水溶液、90℃)を用いて、実施例2と同様に超音波洗浄を施して前処理を行った。
(塗装処理試験)
前処理を終えた、本実施例及び比較例の各試験片表面に、変性エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂塗料を塗布した後、80℃、30分にて焼き付けを実施した。更に、アクリル樹脂を主成分とする焼付型アクリル樹脂塗料を塗布し、120℃、30分にて焼き付けを実施することにより、マグネシウム合金部材の表面処理を完成させた。次に、表面処理を供した各試験片に、幅1mmのクロスカットを、10mm×10mm四方に付けた後、25回のサイクル試験(塩水噴霧(35℃, 98%rh, 2時間)、乾燥(60℃, 25%rh, 4時間)をし、湿潤(50℃, 99%rh, 2時間))に供した。その後のクロスカット付近の表面状態を調査することにより、表面処理膜の密着性を評価した。なお、サイクル試験は、自動車規格(JASO)自動車用材料腐食試験法(M 609−91)に準拠する。
(試験結果)
アルカリ脱脂による前処理を施した比較例試料の表面処理膜の場合には、剥離は殆ど確認されなかった。また、本発明に係る洗浄剤を使用した実施例試料の表面処理膜の場合には、剥離は全く確認できなかった。一方、前処理を、蒸留水により超音波洗浄を行った比較例試料の表面処理膜は、クロスカットを施したほぼすべての領域で、剥離が生じた。サイクル試験を終えた代表的な試料の外観の写真を、図5にまとめて示す。本発明による表面前処理を施した表面処理被膜は、従来公知の前処理(アルカリ洗浄、酸洗)を施した部材と比べて、より優れた被膜密着性能を有することが確認された。
(洗浄液を構成する薬品の濃度の影響及び洗浄原液の希釈の影響の調査)
ここでは、洗浄液の組成及び濃度以外は、実施例2と同様の洗浄条件で、超音波洗浄を実施した。洗浄液の温度は、29℃と一定とした。また、前処理を施した試験片に、実施例2と同様の表面処理を行った。更に、作製した表面処理膜の剥離特性を、実施例2と同様のサイクル試験をし、外観の写真により評価した。調査を実施した際の洗浄液の組成、原液濃度、表面被膜の密着性を、まとめて表1に記す。表1の密着性の欄において、○は、剥離が確認されなかった試料を、△は、一部剥離が確認された試料を、×はクロスカット部全体が剥離した試料を示す。洗浄液の組成を、14〜19容量%のクエン酸水素2アンモニウム、13〜20容量%の3−メチル−3−メトキシブタノール、7〜13容量%のポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル並びに残部のアルカリ性溶液及び水である組成の範囲内にすることにより、密着性に優れた表面皮膜が形成可能であることが確認された。また、原液濃度を、20容量%以上に希釈しても、密着性に優れた表面被膜の形成が可能であった。
(洗浄液温度の影響及び超音波印加時間の影響の調査)
17容量%のクエン酸水素2アンモニウム、17容量%の3−メチル−3−メトキシブタノール、11容量%のポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、8容量%のアンモニア及び47容量%の蒸留水からなる洗浄原液を、20容量%に蒸留水で希釈した洗浄液中で、実施例2で調製したマグネシウム合金供試材に、試験温度及び超音波印加時間を変えて超音波洗浄を施し、試験温度及び超音波印加時間の影響を調査した。印加時間以外の、超音波の印加条件、試験片の振動条件は、実施例2と同様とした。また、表面前処理を実施した試験片に、実施例2と同様の表面処理を施した後に、実施例2と同様のサイクル試験を実施し、実施例3と同様に、表面被膜の密着性を評価した。その結果を、表2に示す。表2から、洗浄液の温度を50℃以下、洗浄時間を3分以上とすることにより、良好な密着性が得られることが確認された。なお、70℃の洗浄液を使用した際の、密着性が低下した原因としては、試料表面の酸化が進行したためと推測される。
以上詳述したように、本発明は、マグネシウム合金部材の表面前処理方法に係るものであり、本発明のマグネシウム合金部材の表面前処理方法は、マグネシウム合金部材を、中性洗浄液中で、超音波洗浄を行うだけであることから、マグネシウム合金部材の表面処理を行う際に、前処理プロセスの簡略化を図ることができる。また、本発明では、洗浄剤として、中性のものを用いることができるので、低環境負荷型のプロセスの構築が可能である。
マグネシウム合金部材の表面処理方法を説明するチャート図であり、(a)は、本発明に係る表面前処理を利用した表面処理を説明するためのチャート図であり、(b)は、従来の表面前処理を経る表面処理を説明するためのチャート図である。 超音波の印加により水中にキャビテーションを発生させるための、音波強度と音波周波数との関係を示す図である。 本発明に係るマグネシウム合金部材表面前処理装置の一例の模式図である。 本発明で用いる洗浄液中でキャビテーションを発生させるための、音波強度と音波周波数との関係を示す図である。 25回サイクル試験後の、クロスカットした表面処理被膜の状態を、写真で示した図であり、(1)は、アルカリ溶液による前処理を施した場合の表面処理膜、(2)は、本発明に係る洗浄液による前処理を施した場合の表面処理被膜、(3)は、前処理を施していない場合の表面処理膜である。

Claims (6)

  1. マグネシウム合金部材を、クエン酸水素2アンモニウム、3−メチル−3−メトキシブタノール、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル及び水を含む洗浄原液又はその希釈液である洗浄液の中で、超音波を付加して洗浄する、マグネシウム合金部材の表面前処理方法であって、
    洗浄原液のpHが、6.5〜7.5であること、マグネシウム合金部材表面に機械的研磨を施した後に洗浄すること、を特徴とするマグネシウム合金部材の表面前処理方法。
  2. 洗浄液が、14〜19容量%のクエン酸水素2アンモニウム、13〜20容量%の3−メチル−3−メトキシブタノール、7〜13容量%のポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、残部のアルカリ性溶液、水及び不可避に混入する不純物からなる洗浄原液又はこの洗浄原液を20〜100容量%の範囲において水で希釈した希釈液であることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム合金部材の表面前処理方法。
  3. 超音波の印加周波数を、1〜100kHz、印加強度を0.1〜50W/cmとすることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム合金部材の表面前処理方法。
  4. 洗浄温度を常温から50℃、洗浄時間を3〜15分とすることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム合金部材の表面前処理方法。
  5. 機械的研磨が、バレル研磨、バフ研磨、ショットブラスト又はエメリー紙研磨であることを特徴とする、請求項に記載のマグネシウム合金部材の表面前処理方法。
  6. 請求項1からのいずれかに記載の表面前処理方法により前処理された、表面に塗布した塗料の剥離がない被膜密着性能[自動車規格(JASO)自動車用材料腐食試験法(M 609−91)に準拠するサイクル試験法による]を有することを特徴とする表面処理マグネシウム合金部材。
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