JP4449271B2 - 再生加硫フッ素ゴム製造方法及び被再生未加硫フッ素ゴム用組成物 - Google Patents
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Description
【発明に属する技術分野】
本発明は、被再生物である加硫したフッ素ゴムから再加硫を経て再生フッ素ゴムを製造する方法、及び、再加硫に用いられる被再生未加硫フッ素ゴム用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素ゴムは、耐熱性、耐薬品性、耐油性等に優れた特性を有するので、種々の薬品への暴露、高温等の苛酷な使用条件が課される用途、例えば自動車産業、航空機産業、半導体産業等の分野における用途であっても、各種部品の材料等として使用されている。
【0003】
フッ素ゴムは、通常、加硫して成形品等として用いるので、一般の成形品と同様に、成形時の屑や不良品、使用済の成形品等の処理が必要となることがある。しかしながら、加硫したフッ素ゴムは、その優れた特性がかえって化学的処理の妨げとなり、また、燃焼させると腐食性分解物を生じるのでサーマルリサイクルも容易ではないことから、これまでは埋め立て等により廃棄していた。
【0004】
近年、埋め立て量の削減等による環境保護、資源の有効活用等に対する高意識化に伴い、従来廃棄していたフッ素ゴムを再利用する方法の開発が要望されるようになってきた。
【0005】
加硫したフッ素ゴムの再利用方法としては、従来、化学的処理や燃焼が適さないのでフッ素ゴムとして再生させることは困難であり、フッ素ゴム組成物にブレンドするための充填剤として用いることが実用化されているだけであった。充填剤として用いる方法としては、加硫したフッ素ゴムを冷凍粉砕等により機械的に粉砕して用いる方法があった。
【0006】
特開昭61−69805号公報には、加硫したフッ素ゴムを酸素の存在下で加熱処理し、未加硫フッ素ゴムに添加することにより、成形時のロール加工性を改良する方法が提案されている。この方法では、パーオキサイド加硫されたフッ素ゴムが好ましく用いられるが、これにより優れた生成物を与えると記載されており、また、加熱処理したフッ素ゴムを添加した未加硫フッ素ゴムは、実施例でパーオキサイド加硫が行われているので、充填剤として用いるものと考えられる。
【0007】
このように、従来、加硫したフッ素ゴムの再利用方法としては、フッ素ゴム組成物に添加する充填剤として用いる方法しかなく、再利用の途は極めて限定されているという問題があった。再利用の途を拡大し、資源活用を促進するため、加硫したフッ素ゴムから再加硫を経てフッ素ゴムを再生する方法の開発が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、被再生物である加硫したフッ素ゴムから再加硫を経て再生フッ素ゴムを製造する方法、及び、上記再加硫のための組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理して被再生未加硫フッ素ゴム(B)を得た後、上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)に加硫処理(2)を施すことにより再生加硫フッ素ゴム(C)を得ることよりなる再生加硫フッ素ゴム製造方法であって、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)は、加硫処理(1)により得られたものであることを特徴とする再生加硫フッ素ゴム製造方法である。
【0010】
本発明は、加硫により再生加硫フッ素ゴム(C)を得るために用いられる被再生未加硫フッ素ゴム用組成物であって、被再生未加硫フッ素ゴム(B)及び加硫剤からなるものであり、上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理して得られたものであり、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)は、加硫処理(1)により得られたものであることを特徴とする被再生未加硫フッ素ゴム用組成物である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法は、被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理して被再生未加硫フッ素ゴム(B)を得た後、上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)に加硫処理(2)を施すことにより再生加硫フッ素ゴム(C)を得ることよりなるものである。
【0012】
本明細書において、上記「被再生加硫フッ素ゴム(A)」とは、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法により再生を受ける被再生物である加硫フッ素ゴムを意味する。本明細書において、「加硫フッ素ゴム」とは、加硫された状態であるフッ素ゴムを意味する。加硫は、通常、硬化を伴う。上記被再生加硫フッ素ゴム(A)としては、このように本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において被再生物となる加硫フッ素ゴムであれば特に限定されず、例えば、フッ素ゴムの成形時に生じた屑又は不良品であってもよいし、使用済の成形品であってもよい。
【0013】
本明細書において、上記「被再生未加硫フッ素ゴム(B)」とは、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において上記被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理して得られる未加硫フッ素ゴムを意味する。本明細書において、「未加硫フッ素ゴム」とは、実質的に加硫していない状態であるフッ素ゴムを意味する。
【0014】
本明細書において、上記「再生加硫フッ素ゴム(C)」とは、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において再生して得られる再生物であって、上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)を再加硫して得られた加硫フッ素ゴムを意味する。上記再生加硫フッ素ゴム(C)についての加硫フッ素ゴムは、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)について説明した加硫フッ素ゴムと同様である。
【0015】
上記被再生加硫フッ素ゴム(A)から上記再生加硫フッ素ゴム(C)を得ることよりなる本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において、上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、いわば、被再生物である上記被再生加硫フッ素ゴム(A)から、再生して得られる再生物である再生加硫フッ素ゴム(C)を得る過程において得られる中間体ともいえる。
【0016】
本明細書において、上記「加硫フッ素ゴム」は、上述のように、加硫された状態であるフッ素ゴムを意味するものであり、このような状態であるフッ素ゴムであれば特に限定されず、例えば未加硫フッ素ゴム又は未加硫のフッ素ゴム組成物に対し、加硫処理を施して得られるフッ素ゴムであってよく、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法における加硫フッ素ゴム、即ち、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)及び上記再生加硫フッ素ゴム(C)の何れをも指すことがあり、また、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法における加硫フッ素ゴム以外の加硫フッ素ゴムについても一般的に用い得る用語である。
【0017】
上記未加硫のフッ素ゴム組成物は、通常、エラストマー性含フッ素重合体、及び、ゴム加硫のために通常用いられる加硫用添加剤からなるものであり、加硫処理を受けていないものである。上記加硫用添加剤としては、ポリオール加硫、パーオキサイド加硫等の用いる加硫方法によるが、一般的に、加硫剤、加硫促進剤、受酸剤等が挙げられ、これらのうち加硫剤以外のものは、通常、加硫促進等のため所望により用いる任意成分である。
【0018】
本明細書において、上記「エラストマー性含フッ素重合体」とは、主鎖である炭素鎖に直接結合しているフッ素原子を有しているエチレン性重合体であって、加硫により上記加硫フッ素ゴムとなるようなエラストマー性を有するものを意味する。
【0019】
上記加硫フッ素ゴムは、上記エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖に架橋部位が結合してなる分子からなるものである。本明細書において、このような分子を架橋分子ということがある。本明細書において、上記「架橋部位」とは、化学構造上、上記エラストマー性含フッ素重合体に加硫処理により結合した部位であって、加硫処理に用いた加硫剤に由来する部位であり、いわゆる橋かけを形成している部位を意味する。
【0020】
上記架橋部位は、上記エラストマー性含フッ素重合体の1つの分子内における2つの部位の間で結合を形成しているものであってもよいし、上記エラストマー性含フッ素重合体の一つの分子における部位と他の分子における部位との間で結合を形成しているものであってもよい。本明細書において、このような、上記エラストマー性含フッ素重合体の分子において上記架橋部位が結合する部位を、「架橋点」ということがある。
【0021】
上記未加硫フッ素ゴムは、架橋性含フッ素重合体からなるものである。上記架橋性含フッ素重合体は、上記エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖からなるものであり、この炭素鎖に上記架橋部位が少量結合していてもよい。このような少量の架橋部位は、通常、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理した場合に分解されずに残存する架橋部位である。上記加熱処理により、通常、少量の架橋部位が残存するものと考えられる。上記エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖は、上記加熱処理によっては通常切断されないので、被再生加硫フッ素ゴム(A)をなす架橋分子におけるエラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖と実質的に同じである。上記未加硫フッ素ゴムは、加工可能な粘度を有する点で、上記加硫フッ素ゴムとは区別されるものである。上記加工可能な粘度としては、通常、ムーニー粘度(ML1+10、100℃)で5〜200であることが好ましい。
【0022】
本明細書において、単に「エラストマー性含フッ素重合体」というときは、上記架橋部位が結合していないものである。このようなエラストマー性含フッ素重合体は、エラストマー性を有するように重合して得られた後、加硫処理を受けていない含フッ素重合体であり、上述のように未加硫のフッ素ゴム組成物に配合されたものであってもよい。上記エラストマー性含フッ素重合体は、加硫処理を受けておらず架橋部位が結合していない点で、上記加硫フッ素ゴムをなす架橋分子と区別され、また、通常、上記未加硫フッ素ゴムをなす架橋性含フッ素重合体、即ち、エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖に架橋部位が少量結合してなるものとも区別される。
【0023】
上記再生加硫フッ素ゴム(C)は、上述のように、再加硫して得られたものである。本明細書において、上記「再加硫」とは、上記未加硫フッ素ゴムを加硫することを意味する。即ち、上記再加硫は、架橋性含フッ素重合体からなる未加硫フッ素ゴムに対して行うものである。上記再加硫は、上記架橋性含フッ素重合体が、後工程である加熱処理により少なくとも一部の架橋部位が分解されるものの加硫処理を一旦受けたものであり、架橋部位が少量結合してなるものであってもよい点で、架橋部位が結合していないエラストマー性含フッ素重合体からなる未加硫のフッ素ゴム組成物に対して行ういわば初めての加硫とは区別される。
【0024】
上記再加硫における加硫の方法は、上記初めての加硫の方法と同様のものであってもよいし、異なるものであってもよい。上記再加硫と上記初めての加硫は何れも、通常の加硫と同様、1次加硫、又は、1次加硫と2次加硫を行うものである。本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において、上記初めての加硫を行う処理を加硫処理(1)といい、上記再加硫を行う処理を加硫処理(2)という。
【0025】
上記再生加硫フッ素ゴム(C)は、再加硫により得られたものである点で、上記初めての加硫により得られたものである上記被再生加硫フッ素ゴム(A)とは概念上区別されるものであるが、加硫処理の方法が同じである場合等のように、結果的に同様の分子、組成等からなることとなってもよい。
【0026】
本発明者らは、上記エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖に上記架橋部位が結合してなる架橋分子からなる被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理することにより上記エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖を切断する前に上記架橋部位における結合を切断することができること、こうして加熱処理により得られた状態は再加硫することができる状態であること、更に、上記加熱処理と上記再加硫とを行うことにより一旦加硫したフッ素ゴムであっても再加硫を経てフッ素ゴムを再生することができることを見出し、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法を完成した。
【0027】
本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法は、まず、被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理して被再生未加硫フッ素ゴム(B)を得ることよりなるものであり、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)は、加硫処理(1)により得られたものである。
【0028】
上記加硫処理(1)は、未加硫のフッ素ゴム組成物について行う。上記未加硫のフッ素ゴム組成物は、上述のように、エラストマー性含フッ素重合体及び加硫用添加剤からなるものである。
【0029】
フッ素ゴムの加硫としては、一般的に、パーオキサイドを用いるもの、ポリオールを用いるもの、ポリアミンを用いるもの等が挙げられるが、上記加硫処理(1)としては、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)の加熱処理において切断箇所について選択的な切断を効率的に行わせるため、パーオキサイドを用いるものが好ましい。本明細書において、パーオキサイドを用いる加硫をパーオキサイド加硫ということがある。
【0030】
パーオキサイドを用いる加硫は、通常、パーオキサイドから生じたラジカルを、実質上加硫剤として配合する多官能不飽和化合物に付加させて別のラジカルを発生させ、後者のラジカルをエラストマー性含フッ素重合体に付加させる反応を含む連鎖反応により、橋かけを形成するものである。上記多官能不飽和化合物は、パーオキサイド加硫において加硫助剤、加硫促進剤又は共加硫剤と称されることがある。このようなパーオキサイド加硫の機構について、パーオキサイドとしてジアルキルパーオキサイドを用い、上記多官能不飽和化合物としてトリアリルシアヌレートを用いた場合を例にとり、以下に示す。
【0031】
【化1】
【0032】
パーオキサイドを用いる加硫により得られる架橋分子は、通常、用いた加硫助剤に由来する化学構造を架橋部位に有している。このような架橋部位における結合の切断は、架橋分子におけるエラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖における炭素−炭素結合の切断よりも、低温で行うことができる。本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法における上記加熱処理は、この切断温度に差があることに着目し、架橋部位における結合のみを選択的に切断するものである。
【0033】
上記加硫助剤として例えばトリアリルイソシアヌレート〔TAIC〕を用いた場合、得られる架橋分子における架橋部位は、TAICに由来する化学構造を有する。このTAICに由来する化学構造のうち、飽和6員環を構成する窒素にはTAICのアリル基に由来する炭素鎖が結合している。この炭素鎖は、通常、架橋により飽和し、n−プロピレン基である。上記加熱処理により、このn−プロピレン基における結合のうち、上記窒素と隣接炭素との間の結合、又は、上記隣接炭素と更にその隣の炭素との間の結合が切断するものと考えられる。
【0034】
TAICは、パーオキサイド加硫に使用可能な加硫助剤の中で最も耐熱性が良いとされていることから、TAIC以外の加硫助剤を用いてパーオキサイド加硫を行った場合、得られる架橋分子における架橋部位は上記TAICに由来する化学構造よりも結合が低温で切断されるので、上述の切断温度の差が大きく、架橋部位における結合の選択的切断はTAICを用いる場合よりも一層容易であると考えられる。従って、加硫処理(1)としては、パーオキサイド加硫であればTAICを用いる場合に限らず好ましい。
【0035】
加硫処理(1)としてパーオキサイド加硫を行う場合、ラジカルによる連鎖反応により上記加硫処理(1)の反応は進行しやすく、残存する加硫剤はないか微量であると考えられるので、上記加熱処理において、架橋反応はもはや実質上起こらない。加硫処理(1)としてパーオキサイド加硫を採用することは、このように上記加熱処理において架橋反応を伴わずに架橋部位の切断を行うことができる点からも好ましい。
【0036】
なお、ポリオールを用いる加硫により得られる架橋分子、及び、ポリアミンを用いる加硫により得られる架橋分子は、一般的に、架橋部位における結合の切断が、エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖における炭素−炭素結合の切断よりも低温で生じることは、パーオキサイド加硫の場合と同様である。しかしながら、加硫処理(1)でポリオール又はポリアミンを用いる場合、上記加熱処理中において、架橋部位における結合の切断と並行して、加硫処理(1)の後反応せずに残っている加硫剤により加硫が進行する。従って、加硫処理(1)でポリオール又はポリアミンを用いる場合、架橋部位における結合のみを選択的に熱分解することはできず、フッ素ゴムとして再度利用することは困難である。
【0037】
パーオキサイド加硫に用いるパーオキサイドとしては特に限定されないが、通常、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る点から、有機系の過酸化物が好ましい。上記有機系の過酸化物、即ち、有機過酸化物としては特に限定されず、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシル−3−ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)−ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。なかでも、アルキル基を2個有する有機過酸化物であるジアルキル系が好ましく、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンがより好ましい。また、t−ブチルパーオキシベンゾエートも好ましい。
【0038】
上記有機過酸化物の使用量は、有機過酸化物中の式−O−O−で表されるジオキシ基又はエピジオキシ基のうち活性な基の量、分解温度等を考慮して適宜決定することができ、通常、エラストマー性含フッ素重合体100重量部に対し、0.05〜10重量部が好ましく、より好ましい下限は1.0重量部であり、より好ましい上限は5重量部である。
【0039】
上記有機過酸化物によるパーオキサイド加硫では、加硫助剤を使用することにより、加硫が顕著に促進される。上記加硫助剤としては特に限定されず、例えば、従来使用されているもの等が挙げられ、このようなものとしては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のトリアジン誘導体;トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド等の芳香環含有化合物;トリアクリルホルマール、トリアリルホスフェート等の非環式化合物等が挙げられ、なかでも、汎用性等の点から、トリアジン誘導体が好ましく、トリアリルイソシアヌレートがより好ましい。上記加硫助剤の使用量は、エラストマー性含フッ素重合体100重量部に対し、通常、0.1〜10重量部であり、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は5重量部であり、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0040】
パーオキサイド加硫の方法としては特に限定されず、例えば従来と同様の方法により、エラストマー性含フッ素重合体と加硫用添加剤からなる未加硫のフッ素ゴム組成物を用い、ロール練りした後、金型に入れ加圧して1次加硫し、所望により、次いで2次加硫する方法等が挙げられる。一般に、1次加硫の条件は、温度100〜200℃で、時間5〜60分間、圧力2〜10MPa程度の範囲から採用され、2次加硫の条件は温度150〜300℃で、時間30分間〜30時間程度の範囲から採用される。上記加硫用添加剤としては、加硫剤のほか、必要に応じて加硫促進剤を用い、更に適宜混合可能な他の添加剤等を用いてもよい。
【0041】
上記被再生加硫フッ素ゴム(A)は、上記加硫処理(1)により得られたものであり、上述の未加硫のフッ素ゴム組成物におけるエラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖に架橋部位が結合してなる架橋分子からなるものである。上記被再生加硫フッ素ゴム(A)は、このようなものであれば特に限定されないが、架橋しやすい点から、ビニリデンフルオライドを含む単量体成分から得られた共重合体に加硫処理(1)を施して得られるものからなるものであることが好ましく、このような被再生加硫フッ素ゴム(A)は、例えば、主鎖中に−CFR1−CH2−(R1は架橋部位を示す。)で表される部位を有する共重合体からなるものであるといえる。上記被再生加硫フッ素ゴム(A)をなす共重合体の主鎖には、1,1−ジフルオロエチレン基が残存している。上記ビニリデンフルオライドを含む単量体成分から得られた共重合体は、上記エラストマー性含フッ素重合体である。
【0042】
上記エラストマー性含フッ素重合体は、ガラス転移点が25℃以下であるポリマーである。従って、上記エラストマー性含フッ素重合体は、常温で弾性を有するエラストマー性を示す。上記エラストマー性含フッ素重合体としては、ビニリデンフルオライドを含む単量体成分から得られる共重合体のうち、エラストマー性を示す組合せと組成のものを使用することができる。上記エラストマー性含フッ素重合体は、一般に非晶性である。
【0043】
上記エラストマー性含フッ素重合体は、ビニリデンフルオライド並びにパーフルオロオレフィン及び/又はパーフルオロビニルエーテルを含む単量体成分から得られる共重合体が好ましい。パーフルオロオレフィン及び/又はパーフルオロビニルエーテルは、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。上記エラストマー性含フッ素重合体としては、ビニリデンフルオライド及びパーフルオロオレフィンを含む単量体成分から得られる共重合体がより好ましい。
【0044】
上記パーフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。上記パーフルオロビニルエーテルとしては、パーフルオロアルキル基の炭素数が1〜6であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、下記一般式
CF2=CFO(CF2CFX1O)n 1−(CF2CF2CF2O)n 2−Rf1
(式中、X1はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表し、Rf1は炭素数1〜20のフルオロポリオキシアルキル基又は炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表し、n1及びn2は同一又は異なり、0〜5の整数を表す。但し、n1+n2≧1である。)で表されるフルオロビニルエーテル類等が挙げられる。
【0045】
上記エラストマー性含フッ素重合体は、ビニリデンフルオライド並びにパーフルオロオレフィン及び/又はパーフルオロビニルエーテルに加え、架橋性基含有モノマーを上記エラストマー性含フッ素重合体の単量体成分の0.01〜3モル%の割合で重合したものであることが好ましい。本明細書において、上記「架橋性基含有モノマー」とは、架橋性基としてヨウ素原子及び/又は臭素原子を分子内に少なくとも1個有するエチレン性不飽和化合物を意味する。
【0046】
上記架橋性基含有モノマーを含む単量体成分から得られたエラストマー性含フッ素重合体は、主鎖を構成する炭素、及び/又は、側鎖を構成する炭素に結合したヨウ素及び/又は臭素を有することとなる。このヨウ素及び/又は臭素は、上述のように加硫処理(1)としてパーオキサイド加硫を行う際に、ラジカル活性点を供与することとなる。即ち、このようなエラストマー性含フッ素重合体は、パーオキサイド加硫において、パーオキサイドから生じたラジカルによりヨウ素及び/又は臭素が容易に脱離して不対電子を有することとなり、この不対電子が加硫助剤の有する不飽和結合に付加して結合を形成し、効率よく橋かけを形成する。エラストマー性含フッ素重合体は、ヨウ素を有さず、臭素を有しない場合、ラジカルによる攻撃に対して耐性が強いので、パーオキサイド加硫は進行しにくい。本明細書において、上記「ヨウ素を有さず、臭素を有しない」とは、エラストマー性含フッ素重合体等の重合体を構成する原子として、ヨウ素〔I〕が存在せず、臭素〔Br〕が存在しないことを意味する。
【0047】
上記エラストマー性含フッ素重合体は、上記架橋性基含有モノマーを含む単量体成分から得られたものである場合、ビニリデンフルオライド並びにパーフルオロオレフィン及び/又はパーフルオロビニルエーテルを重合して得られるセグメントをAとして、下記一般式
X2−[A−(Y)n3]n4−X3
(式中、X2及びX3は同一又は異なり、重合開始剤若しくは連鎖移動剤に由来する基又は重合後の修飾により得られる基を表す。Yはヨウ素及び/又は臭素を有する炭素鎖を表す。n3は0〜50の整数を表し、n4は1〜5の整数を表す。但し、n3×n4≧1である。n3個のYは、同一であっても異なっていてもよい。n4個の[A−(Y)n3]は、同一であっても異なっていてもよく、異なる場合、n4個のA、n4個のY及びn4個のn3は同一であっても異なっていてもよい。)で表される化学構造を有することが好ましい。
【0048】
上記式中のYは、ブロック共重合、グラフト共重合、交互共重合又はランダム共重合の何れの方法により導入したものであってもよい。X2及びX3は、上記エラストマー性含フッ素重合体の重合時に用いる重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の種類や添加量を選択することにより任意に変えることができ、また、重合により得られた末端基を修飾することによっても任意に変えることができる。X2及びX3としては、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトリル基、ヨウ素原子、臭素原子又はスルホン酸基が好ましい。
【0049】
上記架橋性基含有モノマーとしては、下記一般式
【0050】
【化2】
【0051】
で表されるヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル等が挙げられる。
上記ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルの好ましい例としては、
ICH2CF2CF2OCF=CF2、
I(CH2CF2CF2O)2CF=CF2、
I(CH2CF2CF2O)3CF=CF2、
ICH2CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF=CF2、
ICH2CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]2CF=CF2
等が挙げられ、
ICH2CF2CF2OCF=CF2
がより好ましい。
【0052】
上記エラストマー性含フッ素重合体は、例えば従来公知の方法により製造することができ、例えば、乳化重合、懸濁重合等の重合方法を用いることができる。
【0053】
上記被再生加硫フッ素ゴム(A)における架橋分子は、上記エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖に架橋部位が結合してなるものであり、上記加硫処理(1)により得られたものである。従って、上記炭素鎖は、架橋部位が結合している架橋点を有すること以外に、上記エラストマー性含フッ素重合体と化学構造上差異を有する場合がある。上記炭素鎖は、例えば上記加硫処理(1)でパーオキサイドを用いた場合、パーオキサイド加硫について上述した機構から明らかなように、上記エラストマー性含フッ素重合体が有していたヨウ素及び/又は臭素を分子中に有しない。
【0054】
本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)は、次いで加熱処理を行う。
【0055】
上記加熱処理は、240〜400℃で行うことが好ましい。フッ素ゴムの分解温度は、熱重量測定法(Thermogravimetry;TG測定)によると、通常、400℃を超える温度であり、この範囲内の温度において、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)をなす架橋分子における上述のエラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖が切断されるものと考えられる。一方、パーオキサイド加硫により得られたフッ素ゴムの架橋部位は、通常、240℃以上の温度において分解される。従って、上記炭素鎖の切断開始温度未満であり、上記架橋部位の切断開始温度以上である温度、即ち、240〜400℃において加熱処理を行うことにより、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)をなす架橋分子において、上記エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖を実質的に切断することなく、上記架橋部位のみを選択的に分解することができる。
【0056】
上記加熱処理の加熱条件は、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)の種類や加硫度によるが、上記架橋部位の充分な切断が可能である点から、加熱時間としては、更に加熱装置、加熱温度、加圧圧力等の処理条件等にもより、一概にはいえないが、300℃で加熱する場合、例えば168時間以下で上記架橋部位を充分に切断することができ、通常無加圧で24〜100時間である。
上記加熱処理は、分解しやすい点から、空気中(含酸素雰囲気下)で行うことが好ましい。
【0057】
本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理することにより、被再生未加硫フッ素ゴム(B)が得られる。
上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、未加硫フッ素ゴムについて上述したように、架橋性含フッ素重合体からなるものであり、加工可能な粘度を有するものである。
【0058】
上記架橋性含フッ素重合体は、上述のように、エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖からなるものである。この炭素鎖は、被再生加硫フッ素ゴム(A)における架橋分子に由来するものであるので、例えば加硫処理(1)でパーオキサイドを用いた場合、この架橋分子と同様、エラストマー性含フッ素重合体が有していたヨウ素を有さず、臭素を有しない。
【0059】
上記架橋性含フッ素重合体は、上記エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖に少量の架橋部位が結合したものであってもよい。上記架橋部位は、上述の加熱処理の結果、上記炭素鎖に少量結合しているのが通常であるが、上記加熱処理による分解が充分に行われた結果、結合していない状態となってもよい。上記炭素鎖に結合している架橋部位は、橋かけを形成しているものである。従って、被再生加硫フッ素ゴム(A)をなす架橋分子における架橋部位が上記加熱処理により結合を切断されて一部となり、橋かけはしていないが上記エラストマー性含フッ素重合体に由来する炭素鎖上に依然として結合しているもの(以下、「架橋部位残基」という。)は、「上記炭素鎖に結合している架橋部位」に含まれないし、この架橋点に関しては、上記架橋部位が上記炭素鎖に結合していない状態であるといえる。
【0060】
上記被再生加硫フッ素ゴム(A)をなす架橋分子が有していた架橋部位において上記加熱処理により結合が切断された箇所は、少なくとも加硫処理(1)でパーオキサイドを用いた場合、なかでも、加硫助剤としてトリアリルイソシアヌレートを用いた場合、切断により不安定な鎖末端となり、不安定であるがゆえに通常自然に安定化してカルボキシル基となる。従って、この場合、上記架橋性含フッ素重合体は、側鎖にカルボキシル基を有する。この側鎖は、上記架橋部位に由来する化学構造の一部からなるものである。このようにカルボキシル基を有する側鎖は、上述の架橋部位残基の一つである。
【0061】
上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、上記被再生加硫ゴム(A)がアセトン、テトラヒドロフラン等の極性溶媒に不溶性であるのに対し、上記極性溶媒に可溶性である点で区別することができる。
【0062】
上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、このように、被再生加硫フッ素ゴム(A)の架橋分子が有していた架橋部位が分解されたものであることから、加工可能な粘度を有する。従って、上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、未加硫のフッ素ゴム組成物と実質的に同様に扱い、種々の加硫方法により加硫処理を施すことができる。この加硫処理が、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法における加硫処理(2)である。
【0063】
上記加硫処理(2)の加硫の機構としては特に限定されず、例えば、上記架橋性含フッ素重合体が有する架橋性部位を反応させることよりなるもの等が挙げられる。上記架橋性部位は、(i)−CFR2−CH2−(R2はフッ素原子又は架橋部位残基を示す。)で表される主鎖中の部位、又は、(ii)イオン性基である。上記(i)の部位のうち、式中のR2がフッ素原子である1,1−ジフルオロエチレン基は、通常、エラストマー性含フッ素重合体の単量体成分に含むことが好ましいとして上述したビニリデンフルオライドに由来する2価基である。上記(i)の式中のR2としての架橋部位残基は、加熱処理により切断された架橋部位の一部であるとして上述したものである。上記イオン性基は、被再生加硫フッ素ゴム(A)の加熱処理により架橋部位における結合が切断された結果生じるものであり、例えば、上述したカルボキシル基等が挙げられる。上記架橋性部位としては、架橋性が高い点から、上記(i)の部位が好ましく、上記(i)の部位としては、1,1−ジフルオロエチレン基が好ましい。
【0064】
上記(i)の部位を反応させることよりなる加硫の方法としては、ポリオールを用いた加硫方法、及び、ポリアミンを用いた加硫方法が挙げられる。本明細書において、ポリオールを用いた加硫方法は、ポリオール加硫ということがあり、ポリアミンを用いた加硫方法は、ポリアミン加硫ということがある。
【0065】
加硫処理(2)として用いるポリオール加硫は、一般的に、加硫促進剤として用いるオニウム化合物に水酸化カルシウムを作用させて得られる求核剤により、1,1−ジフルオロエチレン基等の上記(i)の部位から脱フッ化水素させ、得られる二重結合に加硫剤として用いるポリオール化合物を付加させて橋かけを形成させることにより架橋させるものである。生じたフッ化水素は、受酸剤として用いる酸化マグネシウムと反応させることにより、消失させることができる。
【0066】
加硫処理(2)として用いるポリオール加硫に使用するポリオール化合物としては、例えば一般的にフッ素ゴムの加硫剤として従来知られているポリオール化合物を使用することができる。このようなポリオール化合物としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物が好ましく、なかでも、耐熱性、機械的強度等に優れたフッ素ゴムを得やすい点から、ポリヒドロキシ芳香族化合物がより好ましい。
【0067】
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン〔ビスフェノールAF〕、レゾルシン、1,3−トリヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、4,4′−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアンスラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン〔ビスフェノールB〕、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3′,5,5′−テトラクロロビスフェノールA、3,3′,5,5′−テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等であってもよいが、得られる再生加硫フッ素ゴム(C)をなすこととなる架橋分子の凝析を酸を用いて行った場合は、これらの金属塩は使用しないことが好ましい。
【0068】
加硫処理(2)として用いるポリオール加硫に使用する加硫促進剤としては、例えば一般的にフッ素ゴムのポリオール加硫の加硫促進剤として知られているオニウム化合物を使用することができる。このようなオニウム化合物としては、例えば、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物のほか、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物等が挙げられ、なかでも、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩が好ましい。
【0069】
第4級アンモニウム塩としては、例えば8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム−メチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ドデシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−テトラコシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ベンジル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ベンジル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロリド等が挙げられる。
【0070】
第4級ホスホニウム塩としては、例えばテトラブチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロリド等が挙げられる。
【0071】
上記ポリオール加硫に使用するポリオール化合物は、架橋性含フッ素重合体100重量部あたり、通常0.5〜5重量部であり、好ましい下限は1重量部、好ましい上限は2重量部であり、好ましくは1〜2重量部である。
上記ポリオール加硫に使用する加硫促進剤は、架橋性含フッ素重合体100重量部あたり、通常0.2〜10重量部であり、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は5重量部であり、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0072】
加硫処理(2)として用いるポリオール加硫は、従来と同様の方法により行うことができ、例えば、架橋性含フッ素重合体と上述の加硫剤、必要に応じ加硫促進剤、更に適宜混合可能な他の添加剤とをロール練り後金型に入れ加圧して1次加硫し、次いで2次加硫する方法等が挙げられる。一般に、1次加硫の条件は、温度100〜200℃で、時間10〜180分間、圧力2〜10MPa程度の範囲から採用され、2次加硫の条件は、温度150〜300℃で、時間30分間〜30時間程度の範囲から採用される。
【0073】
加硫処理(2)として用いるポリアミン加硫は、一般的に、上述の架橋性部位である1,1−ジフルオロエチレン基等の上記(i)の部位から脱フッ化水素させ、得られる二重結合に加硫剤として用いるポリアミン化合物を付加させて橋かけを形成させ、更に架橋点で脱フッ化水素させて炭素−窒素二重結合を形成させることにより、架橋させるものである。生じたフッ化水素は、受酸剤として用いる酸化マグネシウムと反応させることにより、消失させることができる。
【0074】
加硫処理(2)として用いるポリアミン加硫に使用するポリアミン化合物としては、分子中に2個以上の塩基性窒素原子を結合した一級アミン又は二級アミンであり、多くの場合はこれらを塩の形にして反応性を抑えて使用する。上記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、4,4−ジアミンシクロヘキシルメタンカーバメート等のアルキレンジアミン類;N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン等のシッフ塩基等が挙げられる。そのほか、塩基性に乏しい芳香族ポリアミン化合物も他の塩基性化合物と併用することにより加硫剤として使用することができる。上記他の塩基性化合物としては、例えばジフェニルグアニジン、ジ−O−トリグアニジン、ジフェニルチオウレア、2−メルカプトイミダゾリン等が挙げられ、また、合成ゴム用の加硫促進剤であって分子内にアミノ基〔−NH2〕及び/又はイミノ基〔−NH−〕を有する化合物、2価の金属水酸化物等であってもよい。
上記ポリアミン化合物の使用量は、通常、被再生未加硫フッ素ゴム(B)100重量部に対して0.5〜5重量部が好ましい。
【0075】
加硫処理(2)として(ii)のカルボキシル基等のイオン性基を反応させることよりなる加硫の方法、即ち、イオン性基を利用した加硫方法としては、例えば金属酸化物を用いるもの等が挙げられる。このような加硫は、イオン架橋ということがある。上記イオン性基としてカルボキシル基を反応させる加硫の場合、酸化亜鉛等の金属酸化物をカルボキシル基に作用させ、例えば2個のカルボキシル基と亜鉛等の金属原子との間にイオンクラスターを形成させることにより、架橋させるものであると考えられる。
【0076】
上記イオン架橋に使用する金属酸化物は、被再生未加硫フッ素ゴム(B)100重量部あたり、0.5〜50重量部が好ましい。
上記イオン架橋は、一般的にゴムの加硫として用いられる方法等を用いることができる。上記イオン架橋は、一般的に、ステアリン酸等の脂肪酸を少量配合して行う。
【0077】
加硫処理(2)の加硫の方法としては、上述のように、被再生未加硫フッ素ゴム(B)をなす架橋性含フッ素重合体が、ヨウ素及び臭素を有するエラストマー性含フッ素重合体に由来するものであっても、加硫処理(1)の結果ヨウ素を有さず臭素を有しないことからラジカルによる攻撃を受けにくいので、パーオキサイド加硫は適さない。なお、従来の技術として上述した特開昭61−69805号公報に開示されたパーオキサイド加硫されたフッ素ゴムは、同様に分子内にヨウ素を有さず、臭素を有さず、加熱処理後のパーオキサイド加硫では加硫しないと考えられるので、加熱処理したフッ素ゴムは充填剤として用いられているものと思料される。
【0078】
加硫処理(2)を行うに際し、被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、未加硫のフッ素ゴムをブレンドしたものであってもよい。上記未加硫のフッ素ゴムとしては加硫処理(2)により加硫することができるものであれば特に限定されず、用いる加硫の方法に応じて選択される。加硫処理(2)としてポリオール加硫又はポリアミン加硫を行う場合、1,1−ジフルオロエチレン基を有する含フッ素重合体からなるものが好ましく、イオン架橋を行う場合、例えば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含む単量体成分から得られた含フッ素重合体からなるものを用いることができる。
【0079】
加硫処理(2)は、得られる再生加硫フッ素ゴム(C)として所望の形状を有するように、通常、成形を同時に行う。この成形の方法としては特に限定されず、例えば、金型を用いて加熱圧縮する方法、加熱した金型に圧入する方法、押出機で押出しスチーム加熱する方法等の公知の方法等が挙げられる。上記成形は、通常、1次加硫において行う。
【0080】
加硫処理(2)は、得られる再生加硫フッ素ゴム(C)の特性を向上するため、上記1次加硫により得られた成形品を更に加熱することにより、2次加硫を行うものであってもよい。
【0081】
本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法により得られる再生加硫フッ素ゴム(C)は、架橋分子及び加硫用添加剤に加え、必要に応じてその他の配合剤からなるものであってもよい。上記その他の配合剤は、未加硫のフッ素ゴム組成物、被再生加硫フッ素ゴム(A)及び/又は被再生未加硫フッ素ゴム(B)に配合することができる。上記その他の配合剤としては特に限定されず、例えば、ゴムに一般的に用いられる各種配合剤を用いることができ、このようなものとしては、例えば充填剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤等が挙げられる。
【0082】
充填剤としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化アルミニウム等の充填剤用金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム、珪酸アルミニウム等の珪酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;合成ハイドロタルサイト、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅等の金属硫化物等のほか、珪藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、カーボンブラック、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、湿式シリカ、乾式シリカ、石英微粉末、亜鉛華、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤等が挙げられる。
【0083】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル;ステアリルアミン、オレイルアミン等の高級脂肪族アミン;カルナバワックス、セレシンワックス等の石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等のポリグリコール;ワセリン、パラフィン等のその他の脂肪族炭化水素等のほか、シリコーン系オイル、シリコーン系ポリマー、低分子量ポリエチレン、フタル酸エステル類、燐酸エステル類、ロジン、ジアルキルアミン、ハロゲン化ジアルキルアミン、ジアルキルスルフォン、ハロゲン化ジアルキルスルフォン、界面活性剤等が挙げられる。
【0084】
可塑剤としては、例えばフタル酸誘導体、セバシン酸誘導体等が挙げられ、軟化剤としては、例えば潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、老化防止剤としては、例えばフェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩等が挙げられる。
上述のその他の配合剤としては、また、着色剤、紫外線吸収剤、難燃剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、粘着付与剤、滑剤等を任意に配合することができる。
【0085】
本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法により得られる再生加硫フッ素ゴム(C)は、耐熱性、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、耐候性等に優れたものであり、初めての加硫により得られる加硫フッ素ゴムと同様に用いることができ、例えば高温、薬品等への暴露等の苛酷な条件下であっても、充分使用に耐え得るものであり、各種用途を有する。
【0086】
再生加硫フッ素ゴム(C)の用途としては、例えば自動車用の部品類が挙げられる。自動車用の部品類としては、例えばエンジン本体;エンジンの主運動系、動弁系、潤滑・冷却系;燃料系、吸気・排気系、駆動系のトランスミッション系等;シャーシのステアリング系、ブレーキ系等;電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品等の電装品類等が挙げられる。
再生加硫フッ素ゴム(C)の用途としては、また、シール材、ベローズ、ダイヤフラム、ホース、チューブ、電線等が挙げられ、これらは、特に耐熱性、耐油性、耐燃料油性、耐LLC性及び耐スチーム性が要求されるものが好適である。上記シール材としては、例えばガスケット、非接触型及び接触型のパッキン類等が挙げられ、パッキン類としては、例えばセルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシール等が挙げられる。
【0087】
再生加硫フッ素ゴム(C)の用途としては、例えば、以下の具体的用途に使用可能である。
自動車用エンジン本体における、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケット等のガスケット;O−リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケット等のシール材;コントロールホース等のホース;エンジンマウントの防振ゴム等。
【0088】
自動車用エンジンの主運動系におけるクランクシャフトシール、カムシャフトシール等のシャフトシール等。
自動車用エンジンの動弁系におけるエンジンバルブのバルブステムオイルシール等。
自動車用エンジンの潤滑・冷却系において、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケット等や、ラジエータ周辺のウオターホース、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホース等。
【0089】
自動車の燃料系において、燃料ポンプのオイルシール、ダイヤフラム、バルブ等;フィラー(ネック)ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホース等の燃料ホース;燃料タンクのインタンクホース、フィラーシール、タンクパッキン、インタンクフューエルポンプマウント等;燃料チューブのチューブ本体やコネクターO−リング等;燃料噴射装置のインジェクタークッションリング、インジェクターシールリング、インジェクターO−リング、プレッシャーレギュレーターダイヤフラム、チェックバルブ類等;キャブレターのニードルバルブ花弁、加速ポンプピストン、フランジガスケット、コントロールホース等;複合空気制御装置(CAC)のバルブシート、ダイヤフラム等。
【0090】
自動車の吸気・排気系において、マニホールドの吸気マニホールドパッキン、排気マニホールドパッキン等、EGR(排気際循環)のダイヤフラム、コントロールホース、エミッションコントロールホース等、BPTのダイヤフラム等、ABバルブのアフターバーン防止バルブシート等、スロットルのスロットルボディパッキン、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、タービンシャフトシール等。
【0091】
自動車のトランスミッション系において、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O−リング、パッキン、トルコンホース等、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O−リング、パッキン類等。
自動車のステアリング系におけるパワーステアリングオイルホース等。
自動車のブレーキ系において、オイルシール、O−リング、パッキン、ブレーキオイルホース等、マスターバックの大気弁、真空弁、ダイヤフラム等、マスターシリンダーのピストンカップ(ゴムカップ)等、キャリパーシール、ブーツ類等。
【0092】
自動車の基本電装品において、電線(ハーネス)の絶縁体やシース等、ハーネス外装部品のチューブ等。
自動車の制御系電装品の、各種センサー線の被覆材料等。
自動車の装備電装品における、カーエアコンのO−リング、パッキン、クーラーホース等。
【0093】
自動車用以外では、例えば船舶、航空機等の輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱、耐スチーム及び/又は耐候用のパッキンその他のシール材、O−リング、ホース、ダイヤフラム、バルブ等;化学プラントにおける上記のようなパッキン、O−リング、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ホース、ロール、チューブ;耐薬品用コーティング、ライニング;食品プラント機器及び食品機器(家庭用品を含む)における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ベルト、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブ;原子力プラント機器における同様のパッキング、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、チューブ;一般工業部品における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウエザーストリップ、PPC複写機のロールブレード等の用途に好適である。
【0094】
本発明の被再生未加硫フッ素ゴム用組成物は、加硫により再生加硫フッ素ゴム(C)を得るために用いられるものであって、被再生未加硫フッ素ゴム(B)及び加硫剤からなるものである。上記再生加硫フッ素ゴム(C)、上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)及び上記加硫剤は、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法について上述したものであり、上記加硫は、上記再生加硫フッ素ゴム製造方法における加硫処理(2)である。従って、上記加硫剤としては、ポリオール、ポリアミン及び/又は金属酸化物を用いることができる。
【0095】
本発明の被再生未加硫フッ素ゴム用組成物は、上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)及び加硫剤に加え、必要に応じ、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法における被再生未加硫フッ素ゴム(B)について上述したことと同様、上記加硫剤以外の加硫用添加剤、配合剤、及び/又は、未加硫のフッ素ゴムからなるものであってもよい。
本発明の被再生未加硫フッ素ゴム用組成物は、加工可能な粘度を有することが必要である。上記粘度は、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法における被再生被加硫フッ素ゴム(B)について上述したものと同様である。
【0096】
本発明の被再生未加硫フッ素ゴム用組成物は、上述した組成物であるので、上記加硫処理(2)を施すことにより、加硫フッ素ゴムを再生することを可能にするものである。本発明の被再生未加硫フッ素ゴム用組成物に上記加硫処理(2)を施すに際し、通常、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法について上述したような成形を同時に行う。本発明の被再生未加硫フッ素ゴム用組成物は、下記の2とおりに表すことができる。
【0097】
本発明の第1の被再生未加硫フッ素ゴム用組成物は、加硫により再生加硫フッ素ゴム(C)を得るために用いられるものであって、被再生未加硫フッ素ゴム(B)及び加硫剤からなるものであり、上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理して得られたものであり、上記被再生加硫フッ素ゴム(A)は、加硫処理(1)により得られたものであることを特徴とするものである。
【0098】
本発明の第2の被再生未加硫フッ素ゴム用組成物は、加硫により再生加硫フッ素ゴム(C)を得るために用いられるものであって、被再生未加硫フッ素ゴム(B)及び加硫剤からなるものであり、上記被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、架橋性含フッ素重合体からなるものであり、上記架橋性含フッ素重合体は、ヨウ素を有さず、臭素を有さず、側鎖にカルボキシル基等のイオン性基を有するものであることを特徴とするものである。
【0099】
本発明の第2の被再生未加硫フッ素ゴム用組成物において、上記架橋性含フッ素重合体は、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において上述したものである。従って、上記架橋性含フッ素重合体は、パーオキサイド加硫により得られた加硫フッ素ゴムを加熱処理して得られるものであってよく、この場合、パーオキサイド加硫を行った結果、分子中にヨウ素を有さず、臭素を有しないこととなっており、上記加熱処理により架橋部位を分解した結果、側鎖にカルボキシル基等のイオン性基を有することとなったものである。
【0100】
上記被再生未加硫フッ素ゴム用組成物から得られたものであることを特徴とする再生加硫フッ素ゴムもまた、本発明の一つである。この再生加硫フッ素ゴムは、上述のように、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法により得られる再生加硫フッ素ゴム(C)である。
【0101】
本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法は、また、上記被再生未加硫フッ素ゴム用組成物に加硫処理を施すことにより、再生加硫フッ素ゴムを得ることよりなることを特徴とするものである。この再生加硫フッ素ゴム製造方法を本発明の第2の再生加硫フッ素ゴム製造方法という。上記加硫処理は、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において上述した加硫処理(2)であり、上記再生加硫フッ素ゴムは、本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法において上述した再生加硫フッ素ゴム(C)である。従って、この本発明の第2の再生加硫フッ素ゴム製造方法によっても、再生加硫フッ素ゴム(C)を再生することができる。
【0102】
【実施例】
実施例1
フッ素ゴム(ヨウ素を有するVdF/TFE/HFP共重合体、商品名:ダイエルG−952、ダイキン工業社製)100重量部に対しMTカーボンブラック(商品名:Thermax N−990、Cancarb社製)20重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製)4重量部、パーオキサイド(商品名:パーヘキサ2.5B、日本油脂社製)1.5重量部を、2本ロールを用いて混練りし、160℃で10分間プレス加硫した後、180℃で4時間オーブン加硫し、パーオキサイド加硫により被再生加硫フッ素ゴム(A)を作製した。
この被再生加硫フッ素ゴム(A)を2本ロールを用いて粉砕し、300℃で70時間、オーブンにて加熱処理し、被再生未加硫フッ素ゴム(B)を作製した。
この被再生未加硫フッ素ゴム(B)に、表1に示す配合にてロールにて混練りした後ポリオール加硫を行い、170℃で20分間プレス加硫した後、230℃で24時間オーブン加硫し、再生加硫フッ素ゴム(C)を作製した。上述の混練りしたコンパウンドは、キュラストメーター(JSR社製)を用いて加硫性を測定した。測定した結果を表2に示す。
上記再生加硫フッ素ゴム(C)について、JIS K 6251に準拠して引張強さと切断時伸びを測定し、JIS K 6253に準拠して硬さ(shoreA)を測定した。また、圧縮永久歪み試験を実施した。測定した結果を表3に示す。
【0103】
実施例2
ポリオール加硫を行う代わりに表1に示す配合にてポリアミン加硫を行い、再生加硫フッ素ゴム(C)作製時においてプレス加硫を160℃で20分間行い、オーブン加硫を200℃で24時間行った以外は実施例1と同様にして、再生加硫フッ素ゴム(C)を作製し、測定を行った。測定した結果を表2と表3に示す。
【0104】
実施例3
ポリオール加硫を行う代わりに表1に示す配合にてイオン加硫とポリオール加硫の併用加硫を行った以外は実施例1と同様にして、再生加硫フッ素ゴム(C)を作製し、測定を行った。測定した結果を表2と表3に示す。
【0105】
比較例1
フッ素ゴム(ヨウ素を有するVdF/TFE/HFP共重合体、商品名:ダイエルG−952、ダイキン工業社製)100重量部を用い、表1に示す配合にてポリオール加硫を行い、プレス加硫を170℃で20分間行い、オーブン加硫を230℃で24時間行ってフッ素ゴムを作製し、実施例1と同様の測定を行った。測定した結果を表2と表3に示す。
【0106】
比較例2
フッ素ゴム(ヨウ素を有するVdF/TFE/HFP共重合体、商品名:ダイエルG−952、ダイキン工業社製)100重量部を用い、表1に示す配合にてポリアミン加硫を行い、プレス加硫を160℃で20分間行い、オーブン加硫を200℃で24時間行ってフッ素ゴムを作製し、実施例1と同様の測定を行った。測定した結果を表2と表3に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1において、各商品名及び略号は、それぞれ以下に示すものである。
ビスフェノールAF:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン
DBU−B:8−ベンジル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド
加硫剤V−3:N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、ダイキン工業社製
カルディック#2000:水酸化カルシウム、近江化学工業社製
キョーワマグ150:高活性酸化マグネシウム、協和化学工業社製
キョーワマグ30:低活性酸化マグネシウム、協和化学工業社製
ステアリン酸:試薬一級
ZnO:一種酸化亜鉛、堺化学工業社製
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
表3から、加硫処理(2)としてポリアミン加硫を行った実施例2は、初めての加硫としてポリアミン加硫を行った比較例2と比べると、引張り強さと切断伸びは低下するものの、硬さ(shoreA)はほぼ同程度であることがわかった。
【0112】
【発明の効果】
本発明の再生加硫フッ素ゴム製造方法は、上述の構成を有することから、加硫フッ素ゴムから再加硫を経て加硫フッ素ゴムを再生することができる。本発明の被再生未加硫フッ素ゴム用組成物は、そのような再加硫を可能にするものであり、得られる再生加硫フッ素ゴムは、初めての加硫により得られるフッ素ゴムと同様に幅広い用途を有するものである。
Claims (6)
- 被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理して被再生未加硫フッ素ゴム(B)を得た後、前記被再生未加硫フッ素ゴム(B)に加硫処理(2)を施すことにより再生加硫フッ素ゴム(C)を得ることよりなる再生加硫フッ素ゴム製造方法であって、前記被再生加硫フッ素ゴム(A)は、加硫処理(1)により得られたものであり、前記加硫処理(2)は、ポリアミンを用いた加硫方法、又は、ポリオールを用いた加硫方法であり、前記加硫処理(1)は、パーオキサイドを用いるものであることを特徴とする再生加硫フッ素ゴム製造方法。
- 加熱処理は、240℃〜400℃で行うものである請求項1記載の再生加硫フッ素ゴム製造方法。
- 被再生加硫フッ素ゴム(A)は、ビニリデンフルオライドを含む単量体成分から得られた共重合体に加硫処理(1)を施して得られるものからなるものである請求項1又は2記載の再生加硫フッ素ゴム製造方法。
- 被再生加硫フッ素ゴム(A)は、主鎖中に−CFR1−CH2−(R1は架橋部位を示す。)で表される部位を有する共重合体からなるものである請求項1、2又は3記載の再生加硫フッ素ゴム製造方法。
- 被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、架橋性含フッ素重合体からなるものであり、加硫処理(2)は、前記架橋性含フッ素重合体が有する架橋性部位を反応させることよりなるものであり、前記架橋性部位は、(i)−CFR2−CH2−(R2はフッ素原子又は架橋部位残基を示す。)で表される主鎖中の部位、又は、(ii)イオン性基である請求項1、2、3又は4記載の再生加硫フッ素ゴム製造方法。
- 加硫により再生加硫フッ素ゴム(C)を得るために用いられる被再生未加硫フッ素ゴム用組成物であって、被再生未加硫フッ素ゴム(B)及び加硫剤からなるものであり、前記被再生未加硫フッ素ゴム(B)は、被再生加硫フッ素ゴム(A)を加熱処理して得られたものであり、前記被再生加硫フッ素ゴム(A)は、加硫処理(1)により得られたものであり、前記加硫剤はポリオール又はポリアミンであり、前記加硫処理(1)は、パーオキサイドを用いるものであることを特徴とする被再生未加硫フッ素ゴム用組成物。
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