JP4448638B2 - 有機錫触媒及びそれを含む硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機錫触媒及びそれを含む硬化性組成物に関し、より詳しくは、反応性ケイ素基を有する重合体の硬化反応に高い触媒活性を示すとともに、低温貯蔵安定性にも優れる有機錫触媒、及びかかる有機錫触媒と反応性ケイ素基を有する重合体とを含む硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルコキシシリル基等の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体や、同様の反応性ケイ素基を有するポリイソブチレン系重合体は、空気中の湿分により硬化させることが可能であり、硬化後はゴム弾性を有する硬化物が得られることから、シーリング材や接着剤の主剤として用いられている。
【0003】
かかる用途においては、実用上充分な硬化速度を保つために硬化触媒を併用することが通常であり、硬化触媒としては有機錫化合物(有機錫触媒)が広く用いられている。そして、近年では、有機錫触媒に特殊な構造を付与させる方法や、有機錫触媒と他の化合物とを併用する方法等により、硬化速度の更なる向上が図られている。
【0004】
前者の方法において用いられる有機錫触媒としては、異なるアルコキシ基が分子中の異なる錫原子に結合したジアルキル錫オキシド触媒(特開平6−16868号公報)が挙げられ、後者の方法の例としては、同一又は異なる錫原子に2つのアシル基が結合した錫化合物(ビス(ジブチル錫アセテート)オキシドやジブチル錫フタレート等)とアミン化合物との組み合わせを用いる方法(特開平6−16920号公報)や、有機錫カルボン酸塩とアミン化合物との組み合わせを用いる方法(特開平6−16922号公報)等が挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示された硬化触媒では、硬化性シーリング材や接着剤の用途拡大に伴って生じた種々の要求特性を必ずしも満足させ得ない状況が生じて来た。すなわち、近年、作業性や防汚性向上等の観点から反応性ケイ素基を有する重合体の表面硬化性がより重要視されるようになっているが、上記公報に開示された硬化触媒を用いた場合には、表面が硬化して粘着性が消失するまでの時間(タックフリー時間)を短くすることができない問題が生じていた。これに加えて、硬化触媒を低温条件下で保管すると保管中に硬化触媒等の析出が起こり、低温貯蔵安定性に劣る問題も発生していた。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、反応性ケイ素基を有する重合体に添加することにより、該重合体のタックフリー時間を短くして表面硬化性を向上させることができ、また、低温条件下において長期間保存しても析出等を生じることがなく、優れた低温貯蔵安定性を発揮する硬化触媒を提供することを目的とする。本発明は、更に、かかる硬化触媒と、反応性ケイ素基を有する重合体とを含む硬化性組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定反応条件で得られる特定構造の有機錫触媒を、反応性ケイ素基を有する重合体の硬化触媒として用いることにより、上記目的が達成可能であることを見出し本発明を完成させた。
【0009】
本発明の有機錫触媒は、ジアルキル錫オキシドと、モノカルボン酸及びモノカルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1つの有機酸とを、前記ジアルキル錫オキシド1モルに対して、前記有機酸におけるカルボニル基のモル数が0.5〜2モルになるように反応させてなるジアルキル錫カルボン酸塩と;テトラエトキシシランとを;上記ジアルキル錫カルボン酸塩におけるアシルオキシ基1モルに対して、上記テトラエトキシシランを0.5モル反応させてなることを特徴とするものである。
【0010】
上記の有機錫触媒においては、上記ジアルキル錫カルボン酸塩が、上記ジアルキル錫オキシドと、上記有機酸とを、上記ジアルキル錫オキシド1モルに対して、上記有機酸におけるカルボニル基のモル数が1モルになるように反応させてなるものであることが好ましい。
【0011】
更に、上記の有機錫触媒においては、上記ジアルキル錫オキシドが、アルキル基の炭素数が1〜22のジアルキル錫オキシドであり、上記モノカルボン酸が炭素数2〜22の飽和脂肪酸であり、上記モノカルボン酸無水物が炭素数2〜22の飽和脂肪酸の無水物であることが好ましく、上記ジアルキル錫オキシドがジブチル錫オキシドであり、上記モノカルボン酸が酢酸であり、上記モノカルボン酸無水物が無水酢酸であることが特に好ましい。
【0013】
また、本発明の硬化性組成物は、下記一般式(4)で表される反応性ケイ素基を有する重合体と、上記有機錫触媒とを含むことを特徴とするものである。
【化2】
[一般式(4)において、R 41 は炭素数1〜20の置換又は非置換の1価の有機基を示し、Zは水酸基又は加水分解性基を示し、qは1〜3の整数である。]
【0014】
【発明の実施の形態】
上述のように、本発明の有機錫触媒は、ジアルキル錫カルボン酸塩とアルコキシシランとを反応させて得られることを特徴としている。
【0015】
ここで、ジアルキル錫カルボン酸塩は、ジアルキル錫オキシドと、モノカルボン酸及びモノカルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1つの有機酸とを、上記ジアルキル錫オキシド1モルに対して、上記有機酸におけるカルボニル基のモル数が0.5〜2モルになるように反応させてなるものであり(以下、かかる反応を「ジアルキル錫カルボン酸塩生成反応」という。)、ジアルキル錫カルボン酸塩とアルコキシシランとの反応では、ジアルキル錫カルボン酸塩におけるアシルオキシ基の1つのみが、アルコキシシランに由来するアルコキシシリルオキシ基で置換される(以下、かかる反応を「アルコキシシリル化反応」という。)。
【0016】
本発明の有機錫触媒は、ジアルキル錫カルボン酸塩生成反応とアルコキシシリル化反応との結果生じるものであればよく、その反応条件や反応手順等は任意であるが、純度や収率等の観点から、ジアルキル錫カルボン酸塩生成反応を生じせしめた後に、アルコキシシリル化反応を生じせしめることにより得られるものであることが好ましい。
【0017】
ジアルキル錫カルボン酸塩生成反応により得られる化合物は、以下の一般式(I)で表される構造を有する。なお、一般式中、R1及びR2は同一でも異なっていてもよいアルキル基、R11は1価有機基、nは1〜4の数をそれぞれ表す。
【化3】
【0018】
本発明において、ジアルキル錫カルボン酸塩生成反応により得られるジアルキル錫カルボン酸塩は、ジアルキル錫オキシドと、有機酸とを、ジアルキル錫オキシド1モルに対して、有機酸におけるカルボニル基のモル数が1モルになるように反応させてなるものであることが好ましい。かかる反応比率により得られるジアルキル錫カルボン酸塩(化学量論的にnが2のジアルキル錫カルボン酸塩)は、それを用いて合成される有機錫触媒の触媒活性(表面硬化性等)及び低温貯蔵安定性を顕著に向上させ得るからである。
【0019】
本発明におけるジアルキル錫オキシドは、アルキル基の炭素数が1〜22のジアルキル錫オキシドが好ましい。すなわち、上記一般式(I)において、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜22のアルキル基であることが好ましい。R1及びR2が炭素原子を含まない場合(例えば、炭素原子ではなく水素原子の場合)は、良好な触媒活性を得ることができず、R1及びR2が炭素数23以上のアルキル基である場合は、有機酸との反応性が劣るようになる。
【0020】
本発明におけるモノカルボン酸としては、飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸を用いることができるが、炭素数2〜22の飽和脂肪酸、炭素数2〜22の不飽和飽和脂肪酸、炭素数7〜22の芳香族カルボン酸又はナフテン酸が好ましく、炭素数2〜22の飽和脂肪酸が特に好ましい。同様に、モノカルボン酸無水物としては、飽和カルボン酸無水物及び/又は不飽和カルボン酸無水物を用いることができるが、炭素数2〜22の飽和脂肪酸無水物、炭素数2〜22の不飽和飽和脂肪酸無水物、炭素数7〜22の芳香族カルボン酸無水物が好ましい。
【0021】
すなわち上記一般式(I)において、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、アラルキル基等の1価有機基であることが好ましい。R11としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、その炭素数は1〜21が特に好ましい。R11が炭素数22以上のアルキル基である場合は、アルコキシシリル化反応において、R11を含むアシルオキシ基のアルコキシシリルオキシ基への置換反応が低速度化する傾向があり、また、置換反応により副生する化合物(R11を含むエステル等)の沸点が上昇するために、これを除去することが困難になる傾向がある。
【0022】
上記の観点から、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜18のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることが更に好ましい。そして、R1及びR2はブチル基であること(すなわち、ジアルキル錫オキシドがジブチル錫オキシドであること)が特に好ましい。一方、R11は、炭素数1〜17のアルキル基又はアルケニル基であることがより好ましく、炭素数1〜11のアルキル基又はアルケニル基であることが更に好ましい。そして、R11はメチル基であること(すなわち、モノカルボン酸が酢酸でありモノカルボン酸無水物が無水酢酸であること)が特に好ましい。また、nは2であることが好ましい。したがって、ジアルキル錫カルボン酸塩(I)は、R1及びR2がブチル基であり、R11がメチル基であり、nが2である、ビス[ジブチルアセトキシ錫(IV)]オキシドが特に好ましい。
【0023】
ジアルキル錫カルボン酸塩生成反応においては、有機酸としてモノカルボン酸無水物を用いることが好ましい。これは、有機酸としてモノカルボン酸を用いた場合はジアルキルカルボン酸塩を得る場合において水の脱離が起こり、反応速度を高めるためには生じた水の効率的な除去が必要になるのに対して、モノカルボン酸無水物ではかかる問題が生じないからである。また、本発明におけるジアルキル錫カルボン酸塩生成反応の反応は、60〜140℃で行うことが好ましい。
【0024】
ジアルキル錫カルボン酸塩生成反応に続くアルコキシシリル化反応においては、上記の方法により得られたジアルキル錫カルボン酸塩とアルコキシシランとを反応させ、ジアルキル錫カルボン酸塩におけるアシルオキシ基の1つのみを、アルコキシシランに由来するアルコキシシリルオキシ基で置換する。これにより、ジアルキル錫カルボン酸塩におけるアシルオキシ基の1つのみが、アルコキシシランに由来するアルコキシシリルオキシ基で置換された化合物が得られ、ジアルキル錫カルボン酸塩におけるアシルオキシ基のうち1つは置換されずに残る。
【0025】
アルコキシシリル化反応において用いられるアルコキシシランは、下記一般式(II)で表すことができる。式中、R21はアルキル基を示し、R22はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、aは1〜3の整数である。なお、本発明において好適なアルコキシシランは、aが3であるテトラアルコキシシランである。
【化4】
【0026】
そして、アルコキシシラン(II)を用いたアルコキシシリル化反応は以下の反応式に従うことが想定される。
【化5】
【0027】
すなわち、アルコキシシラン(II)と、ジアルキル錫カルボン酸塩(I)とを反応させることにより、ジアルキル錫カルボン酸塩(I)におけるアシルオキシ基(R11COO−)の1つが、アルコキシシラン(II)に由来するアルコキシシリルオキシ基((R21O)a−SiR22 (3-a)O−)で置換され、一般式(1)で表される有機錫触媒が生じる。
【0028】
本発明においては、R21が炭素数1〜22のアルキル基であり、R22が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基であることが好ましい。R21は炭素数1〜18のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることが更に好ましく、エチル基であることが特に好ましい。また、R22は炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることが更に好ましい。また、aは2又は3であることが好ましく、3であることが更に好ましい。
【0029】
アルコキシシリル化反応を生じせしめる場合においては、ジアルキル錫カルボン酸塩生成反応において得られるジアルキル錫カルボン酸塩中のアシルオキシ基1モルに対して、アルコキシシランを0.5モル反応させることが好ましい。かかる反応比率にすることにより、ジアルキル錫カルボン酸塩におけるアシルオキシ基の1つのみを、アルコキシシランに由来するアルコキシシリルオキシ基で置換させることが容易になる。
【0030】
なお、ジアルキル錫カルボン酸塩生成反応において得られるジアルキル錫カルボン酸塩が、nの異なる混合物の場合がありうるため、アルコキシシリル化反応によって得られる本発明の有機錫触媒もnの異なる混合物となる場合がある。また、本発明の有機錫触媒は、ジアルキル錫カルボン酸塩におけるアシルオキシ基の1つのみが、アルコキシシランに由来するアルコキシシリルオキシ基で置換された化合物(一般式(1)で表される化合物等)を含んでいればよく、触媒活性を生じる限りにおいては、副生物や未反応物を含んでいてもよい。なお、ジアルキル錫カルボン酸塩におけるアシルオキシ基の1つのみが、アルコキシシランに由来するアルコキシシリルオキシ基で置換された化合物は、平均して1つのアシルオキシ基が、アルコキシシリルオキシ基で置換された化合物であればよい。
【0031】
本発明におけるアルコキシシリル化反応の反応温度は、70〜140℃であることが好ましい。また、この反応においてカルボン酸エステルが副生するが、この副生するエステルは除去しても除去しなくてもよい。
【0032】
以上述べたことから、本発明の有機錫触媒は下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。なお、式中のR1、R2、R21、R22、X、n及びaは、上記と同義であり、その好適条件も上記と同様である。
【化6】
【0033】
本発明の有機錫触媒は、nが2である下記一般式(2)で表される化合物を含むことが更に好ましく、下記一般式(2)で表される化合物を主成分とすることが特に好ましい。
【化7】
【0034】
また、一般式(2)におけるR1及びR2がブチル基であり、R11がメチル基であり、R21がエチル基であり、aが3である、下記式(3)で表される化合物を含むことが特に好ましい。
【化8】
【0035】
次に、以上説明した有機錫触媒を用いた本発明の硬化性組成物について説明する。本発明の硬化性組成物は、反応性ケイ素基を有する重合体と、上述した有機錫触媒と、を含む硬化性組成物である。
【0036】
ここで、反応性ケイ素基とは、加水分解及び縮合反応等により重合体を架橋せしめることの可能な、ケイ素を含有する基をいい、本発明においては、下記一般式(4)で表される基が好ましい。
【化9】
【0037】
一般式(4)において、R41は炭素数1〜20の置換又は非置換の1価の有機基を示す。R41は、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、フルオロアルキル基又はフェニル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基又はフェニル基である。また、一般式(4)におけるZは水酸基又は加水分解性基を示し、qは1〜3の整数である。なお、R41及びZがそれぞれ複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
Zが加水分解性基である場合、かかる基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基、ケトキシメート基、アミノオキシ基、カルバモイル基、メルカプト基を例示でき、これらのなかではアルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基の炭素数は1〜6が好ましく、1〜4が更に好ましい。アルコキシ基としてはメトキシ基が特に好ましい。
【0039】
上記一般式(4)に代表される反応性ケイ素基は、重合体に直接結合していても、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、尿素結合等の結合を介して結合していてもよい。また、重合体に結合する反応性ケイ素基の数は1以上であればよい。
【0040】
反応性ケイ素基を有する重合体としては、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(特開平3−72527号公報等)及びその変成物、加水分解性ケイ素基を有するアクリル酸エステル重合体(特開昭62−146959号公報、特開平1−131271号公報等)、加水分解性ケイ素基を有するポリイソブチレン系重合体(特開平1−170681号公報等)等が知られており、これらを単独で又は組み合わせて用いることができる。なお、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体」は、アクリル酸アルキルエステル重合体、メタクリル酸アルキルエステル重合体、及びこれらの共重合体を意味する。
【0041】
上記の重合体の中では、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体及びその変成物、並びに加水分解性ケイ素基を有するポリイソブチレン系重合体が好ましい。
【0042】
加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体としては、オキシアルキレン鎖が、アルキレンオキシドの単独重合体、又は複数のアルキレンオキシドのブロック共重合体若しくはランダム共重合体であるものが挙げられ、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好適である。本発明において、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体としては、加水分解性ケイ素基を有するオキシプロピレン重合体が特に好ましい。なお、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体におけるオキシアルキレン鎖は、オキシアルキレンユニット以外にウレタン結合、エステル結合、チオエーテル結合、アルキレン結合等を有していてもよい。
【0043】
加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体は、例えば、公知の方法により得られた水酸基末端オキシアルキレン重合体を用いて、以下の(i)〜(iv)の方法により合成することができる。
(i)水酸基末端オキシアルキレン重合体の末端水酸基を不飽和基に変換した後、該不飽和基に、加水分解性基を有するヒドロシリル化合物を反応させる方法。
(ii)水酸基末端オキシアルキレン重合体と、イソシアネート基及び加水分解性基を有するケイ素化合物とを反応させる方法。
(iii)水酸基末端オキシアルキレン重合体の末端水酸基をイソシアネート基に変換した後、活性水素及び加水分解性基を有するケイ素化合物を反応させる方法。
(vi)水酸基末端オキシアルキレン重合体の末端水酸基を不飽和基に変換した後、当該不飽和基と、メルカプト基及び加水分解性基を有するケイ素化合物とを反応させる方法。
【0044】
加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の変成物としては、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体と(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体との混合物や、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体と(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体のグラフト重合体が代表的であり、前者の変成物は、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルと他の共重合モノマーとの共重合体を添加することにより得ることができ、後者の変成物は、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の存在下で、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルと他の共重合モノマー)を重合することにより得ることができる。
【0045】
本発明で使用される加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)が、5,000〜30,000であることが好ましく、10,000〜25,000であることがより好ましい。Mnが5,000未満である場合は重合体の硬化性が悪くなる傾向にあり、Mnが30,000を超す場合は重合体の粘度が高くなり作業性が悪くなる場合がある。更に、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.7以下であることが好ましい。Mw/Mnがこのように低い値である場合は、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の分子量分布が狭く、低分子量の重合体の含有量が少ないために、Mw/Mnが1.7を超える重合体よりも硬化性が優れるようになる。
【0046】
本発明の硬化性組成物に用いる重合体としては、加水分解性ケイ素基を有するポリイソブチレン系重合体も好適に用いることができる。ここで、加水分解性ケイ素基を有するポリイソブチレン系重合体とは、イソブチレンの単独重合体又はイソブチレンと他の共重合モノマーとの共重合体であって少なくとも1の加水分解性ケイ素基を有するものをいう。なお、共重合体である場合、共重合体を形成する全モノマー中イソブチレンモノマーの含有割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0047】
加水分解性ケイ素基を有するポリイソブチレン系重合体における加水分解ケイ素基としては、下記一般式(5)で表される基が好ましい。
【化10】
【0048】
式中、R51及びR52は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又は(R’)3SiO−(R’は、炭素数1〜20の置換若しくは非置換の炭化水素基であり、3個のR’は同一でも異なっていてもよい。)で示されるトリオルガノシロキシ基であり、Zは上記と同義(水酸基又は加水分解性基、加水分解性基の好適例は上記と同様)である。なお、R51、R52及びZがそれぞれ2個以上存在するときは、これらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、rは0〜3の整数、sは0〜2の整数、mは0〜19の整数をそれぞれ示す。但し、r+ms≧1でなければならない。
【0049】
反応性ケイ素基を有するポリイソブチレン系重合体の製造方法としては、例えば、公知の方法により末端がビニル基であるポリイソブチレン系重合体を合成した後に、かかるビニル基と水素化ケイ素化合物とを反応(ヒドロシリル化反応)させる方法が挙げられる。
【0050】
本発明において用いられる反応性ケイ素基を有するポリイソブチレン系重合体は、GPCによるMnが、500〜30,000であることが好ましく、1,000〜15,000であることが更に好ましい。Mnが500未満である場合は重合体の硬化性が悪くなる傾向にあり、Mnが30,000を超す場合は重合体の粘度が高くなり作業性が悪くなる場合がある。
【0051】
本発明の硬化性組成物は、反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して本発明の有機錫触媒を0.01〜30質量部含有することが好ましく、0.1〜15質量部含有することがより好ましく、0.5〜10質量部含有することが更に好ましい。反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対する有機錫触媒の量が0.01質量部未満である場合は、触媒の添加効果が得られなくなる傾向にあり、30質量部を超す場合は、触媒の添加が無駄になる場合がある。なお、本発明の硬化性組成物は、硬化触媒として本発明の有機錫触媒以外の有機錫触媒やその他の硬化触媒(2価ビスマス化合物触媒等)を含んでいてもよいが、本発明の有機錫触媒の添加効果を充分に発揮させるためには、硬化触媒全質量に占める本発明の有機錫触媒の質量が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0052】
本発明の硬化性組成物は、反応性ケイ素基を有する重合体及び硬化触媒に加えて、有機アミン化合物を更に含有するものであることが好ましい。有機アミン化合物としては、炭素数20以下の脂肪族モノアミン、炭素数20以下の脂肪族ポリアミン又はアミノシラン化合物を用いることができる。炭素数20以下の脂肪族モノアミン又は炭素数20以下の脂肪族ポリアミンを用いた場合には、硬化後の硬化物表面のべたつきが少なく、ほこり、ちり、ごみ等が付着しにくい効果がある。また、アミノシラン化合物を用いた場合には、被着体に対する接着性を向上させる効果がある。
【0053】
炭素数20以下の脂肪族モノアミン又は脂肪族ポリアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、ドデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニリン、トルイジン、ベンジルアミン、ジフェニルアミンが挙げられる。反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対するこれらのアミンの使用量は、0.01〜30質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。有機アミン化合物が、0.01質量部未満では、表面のべたつき低減効果が少なく、30質量部超では、硬化後の物性に悪影響を与える場合がある。
【0054】
アミノシラン化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が好適に用いられる。反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対するこれらのアミノシラン化合物の使用量は、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。アミノシラン化合物が0.1質量部未満では、被着体との接着に対しての寄与が不充分となり、10質量部超では、硬化性及び硬化後の物性に大きな影響を与える場合がある。
【0055】
本発明の硬化性組成物は、上述のように反応性ケイ素基を有する重合体及び有機錫触媒を必須成分とする硬化触媒を含有し、有機アミン化合物を更に含有することもできる。かかる組成物は、例えば、上述の方法等により反応性ケイ素基を有する重合体を合成した後、これに、有機錫触媒を必須成分とする硬化触媒を添加・混合し、必要に応じて有機アミン化合物を更に添加・混合することにより製造することができる。合成や混合の際には有機溶剤を用いることができ、合成又は混合後、必要によりこの有機溶剤を除去することが可能である。
【0056】
本発明の硬化性組成物は、反応性ケイ素基を有する重合体、硬化触媒及び有機アミン化合物の他にも、充填剤、硬化促進剤、接着性付与剤、脱水剤、チキソ性付与剤、溶剤、可塑剤、老化防止剤、光硬化性化合物等の添加剤成分を含んでいてもよい。このような添加剤成分を含む硬化性組成物を調製する場合は、硬化性組成物の製造途中又は製造後の適当な時期に、添加剤成分を一度に、又は何回かに分けて添加すればよい。以下、これらの添加剤成分について説明する。
【0057】
まず、本発明の硬化性組成物に用いることのできる充填剤について説明する。本発明においては、硬化性組成物に対して充填剤を添加することができる。充填剤としては、炭酸カルシウム、フュームドシリカ、沈降性シリカ、表面シリコーン処理シリカ微粉体、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、無機質中空体、有機樹脂中空体、各種粉体状充填剤、繊維状充填剤が挙げられる。これらの充填剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明における充填剤の使用量は、反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して1〜1000質量部が好ましく、50〜250質量部がより好ましい。
【0058】
次に、本発明の硬化性組成物に用いることのできる硬化促進剤について説明する。本発明における反応性ケイ素基の架橋反応は、反応を促進する化合物が存在しなくとも進行するが、反応性ケイ素基が、例えば、アルコキシシリル基の場合、実用上充分な硬化速度を発現させるためには硬化促進剤を使用することが好ましい。硬化促進剤としては、リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸、リン酸−ビス−2−エチルヘキシル等の酸性化合物が挙げられる。硬化促進剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用することも可能であり、硬化促進剤を使用する場合の硬化促進剤の添加量は、反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0059】
次に、本発明の硬化性組成物に用いることのできる接着性付与剤について説明する。本発明において、接着性を改良する目的で硬化性組成物に接着性付与剤を添加してもよい。接着性付与剤としては、(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン、アミノ基含有シラン、メルカプト基含有シラン、エポキシ基含有シラン、カルボキシル基含有シラン、2種以上のシランカップリング剤の反応生成物(アミノ基含有シランとエポキシ基含有シランとの反応物生成物等)等のシランカップリング剤が挙げられる。上記の化合物は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。シランカップリング剤の使用量は、反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。本発明においては、接着性付与剤として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂、難燃型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を添加することもできる。エポキシ樹脂を添加する場合の使用量は反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して0.1〜100質量部が好ましい。エポキシ樹脂を添加する場合においては、エポキシ樹脂の硬化剤(又は硬化触媒)をさらに添加することもできる。エポキシ樹脂硬化剤の使用量はエポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜300質量部が好ましい。
【0060】
次に、本発明の硬化性組成物に用いることのできる脱水剤について説明する。本発明においては、硬化性組成物の貯蔵安定性を改良するために、硬化性や柔軟性に悪影響を及ぼさない範囲で少量の脱水剤を添加することできる。このような脱水剤としては、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のオルトギ酸アルキル;オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等のオルト酢酸アルキル;メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の加水分解性有機ケイ素化合物;加水分解性有機チタン化合物等が挙げられる。なかでも、価格及び効果の点から、ビニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシランが特に好ましい。本発明の硬化性組成物に硬化触媒等を添加して防湿容器に充填して用いる一液配合においては、このような脱水剤は特に有効である。本発明における脱水剤の使用量は、反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましい。
【0061】
次に、本発明の硬化性組成物に用いることのできるチキソ性付与剤について説明する。本発明においては、硬化性組成物の垂れ性改善を目的として、硬化性組成物にチキソ性付与剤を添加することができる。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、微粉末シリカ、有機酸処理炭酸カルシウム等が挙げられる。チキソ性付与剤は、反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して0.5〜10質量部添加することが好ましい。
【0062】
次に、本発明の硬化性組成物に用いることのできる溶剤について説明する。本発明においては、硬化性組成物に、粘度の調整、組成物の保存安定性向上を目的として、溶剤を添加することもできる。かかる溶剤としては脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、エーテルが挙げられる。アルコールを添加することにより、本発明の硬化性組成物の保存安定性が向上する。したがって、硬化性組成物を長期保存する場合等は、アルコールを添加することが好ましい。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソペンチルアルコール、ヘキシルアルコール等の炭素数1〜10のアルキルアルコールが挙げられる。溶剤は、反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して0.1〜500質量部が好ましい。
【0063】
次に、本発明の硬化性組成物に用いることのできる可塑剤について説明する。本発明においては、硬化性組成物に可塑剤を添加することもできる。可塑剤としては、フタル酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、ペンタエリスリトールエステル等のアルコールエステル、リン酸エステル、エポキシ可塑剤、塩素化パラフィン、ポリエステル系可塑剤、ポリエーテル、ポリエーテル誘導体、ポリスチレンオリゴマー、ポリブタジエンオリゴマー、プロセスオイル類、アルキルベンゼン類、トリメリット酸エステル類等が挙げられる。
【0064】
本発明においては、上記に例示した可塑剤のうちMnが1,000以上のいわゆる高分子可塑剤を用いることが好ましい。この場合において、高分子可塑剤のみを用いても、高分子可塑剤と低分子の可塑剤とを併用してもよい。高分子可塑剤を用いることにより、硬化物の表面の汚染性や周辺汚染性の低減、硬化物上の塗料の乾燥性の向上、塗料表面の汚染性の低減等の効果が得られ、耐候性の向上にも寄与する。また、4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−ジ−2−エチルヘキシル等のエポキシ可塑剤を、硬化促進剤として特に2価スズカルボン酸塩と第1級アミンとを組み合わせて使用した場合には、一定条件下に圧縮状態で固定した後、固定を解除したときの戻る割合(圧縮復元率)が大きい硬化物が得られるという効果がある。上記の可塑剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明における充填剤の使用量は、反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して1〜1000質量部が好ましい。
【0065】
次に、本発明の硬化性組成物に用いることのできる老化防止剤について説明する。本発明においては、硬化性組成物に老化防止剤を添加することができる。老化防止剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び光安定剤が挙げられ、酸化防止剤としては例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が使用可能であり、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が使用可能である。また、光安定剤としてはヒンダードアミン系光安定剤が使用可能である。酸化防止剤、紫外線吸収剤及び光安定剤の使用量は、いずれも、反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。0.1質量部未満では老化防止効果が充分に発現せず、10質量部を越える場合は経済的に不利である。
【0066】
次に、本発明の硬化性組成物に用いることのできる光硬化性化合物について説明する。本発明においては、耐候性を更に向上させる目的で、硬化性組成物に光硬化性化合物を添加することが可能である。光硬化性化合物としては多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、多官能(メタ)アクリレートとしてはテトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のような多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを例示することができる。光硬化性化合物の使用量は、反応性ケイ素基を有する重合体100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましい。
【0067】
上記の化合物の他、硬化性組成物に、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料を添加することができる。顔料を添加することにより硬化性組成物は着色するが、それ以外にも耐候性の向上という効果も期待できる。また、シーリング材としての美観を高める目的で、硬化性組成物に対して、その組成物の色と異なる色の微小体を添加することが可能である。これにより、花崗岩や御影石のような表面外観を付与させることができる。さらに、難燃剤、防かび剤、及び塗料用途に使用されている艶消し剤等を添加することも可能である。
【0068】
本発明の硬化性組成物は、以上説明した構成を有しているために、タックフリー時間を短くすることができ低温貯蔵安定性においても優れる。したがって、本発明の硬化性組成物は、作業性、速硬化性、防汚性等が要求されるシーリング材や接着剤等として好適に用いることができ、また、低温で長期間保管しても品質の変化が生じ難いことから、安定した特性を長期間に亘って発揮する。
【0069】
本発明の硬化性組成物は、本発明の有機錫触媒と反応性ケイ素基を有する重合体とを必須成分として含むものであればよく、有機錫触媒は使用の直前に重合体に添加してもよく、予め両者を混合した状態で存在させてもよい。すなわち、本発明の硬化性組成物は1液配合又は2液配合のいずれにも対応可能である。ここで、1液配合とは、硬化性組成物及び硬化剤を同一の配合中に含む配合をいい、湿分を遮断した状態で保管され使用時には空気中の水分等と反応して硬化が進行する。一方、2液配合とは、硬化性組成物を主成分とする主剤と、硬化剤の2成分からなる配合をいい、使用時に主剤と硬化剤とを混練することにより硬化反応を生じせしめる。これらの中では1液配合が好適である。本発明の有機錫触媒は表面硬化性を向上させるのみならず、反応性ケイ素基を有する重合体との共存状態で低温貯蔵安定性を発揮するものだからである。
【0070】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
[有機錫触媒の合成]
(実施例1)
無水酢酸20g(0.4モル)に対し、ジブチル錫オキシド97g(0.8モル)を加え、トルエン150mLを溶媒として使用して、ガラス製反応容器中で攪拌しながら、約3時間加熱還流した後、トルエンを留去して、白色ロウ状のビス[ジブチルアセトキシ錫(IV)オキシド]を得た。これに、テトラエトキシシラン40g(0.2モル)を加えて攪拌しながら加熱し、副生する酢酸エチルを留去して、油状の反応生成物を得た。そして、反応生成物にジオクチルフタレートを加えて、有機錫触媒濃度が50質量%の有機錫触媒溶液(以下「有機錫触媒溶液A」という。)とした。
【0072】
[硬化性組成物の作製]
(合成例1:加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の合成)
グリセリンを開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドを反応させて、Mnが20,000でMw/Mnが1.4のポリオキシプロピレントリオールを得た。このポリオキシプロピレントリオールの末端水酸基をナトリウムアルコキシドとし、過剰の塩化アリルを添加して反応させた。未反応の塩化アリルを除去後、副生した無機塩を除去精製して、23℃における粘度が15,000mPa・sのアリル基末端のポリプロピレンオキシド重合体を得た。
この重合体500gを窒素置換された反応容器に仕込み、1,1,3,3−テトラメチルジビニルシロキサン白金錯体を白金が2ppmになるように添加して、更に30分攪拌した。次に、ジメトキシメチルシラン7.7gを加えて70℃で5時間反応させた。反応終了後、減圧で揮発性物質を除去して、23℃における粘度が16,000mPa・sの淡黄色透明の加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(以下「重合体A」という。)を得た。
【0073】
(実施例2〜6)
セパラブルフラスコ中に、表1に示す重合体A、可塑剤、チキソ性付与剤、充填剤及び老化防止剤を、同表に示す質量比で入れ混練し、その後110℃に加温し脱水を行った。脱水後、フラスコ内の温度が50℃になるまで冷却し、更に、表1に示す脱水剤、接着性付与剤及び硬化触媒をすばやくフラスコ内に入れて、充分攪拌して均一に混合した。次いで、表面を樹脂で被覆したアルミニウム製のカートリッジにすばやく流し込み、水分が混入しないように密封して、硬化性組成物を得た。
【0074】
【表1】
【0075】
(比較例1)
実施例1と同様にして、ビス[ジブチルアセトキシ錫(IV)オキシド](下記式(6)で表される有機錫触媒)を合成し、これにジオクチルフタレートを加えて、有機錫触媒濃度が50質量%の有機錫触媒溶液(以下「有機錫触媒溶液B」という。)とした。
【化11】
【0076】
(比較例2〜6)
有機錫触媒溶液Aに代えて、有機錫触媒溶液Bを用いた他は、実施例2〜6と同様にして硬化性組成物を得た。なお、比較例2、3、4、5及び6の有機錫触媒溶液Bの量は、それぞれ実施例2、3、4、5及び6の有機錫触媒溶液Aの量と同等である。
【0077】
[硬化性組成物の評価]
(表面硬化性:タックフリー時間)
実施例2〜6及び比較例2〜6の硬化性組成物をカートリッジガンを用いてカートリッジから押し出して、JIS A5758(1992)に準拠して試験を行い、硬化性組成物が指先に付着しなくなった時間をタックフリー時間とし、表面硬化性の評価を行った。評価結果を図1に示す。図1から明らかなように、本発明の有機錫触媒を用いた硬化性組成物は、全ての含有量において比較例の有機錫触媒を用いた硬化性組成物に比べて、表面硬化性が優れていた。
【0078】
(低温貯蔵安定性)
有機錫触媒溶液A及び有機錫触媒溶液Bについて、低温での貯蔵安定性試験を行った。50mLのスクリュー管に有機錫触媒溶液A、Bをそれぞれ30mL入れ、−20℃及び5℃の温度に調節したオーブンに保持した。経時変化を外観により観察した結果を表2に示す。表2から明らかなように、本発明の有機錫触媒は、低温での結晶析出が見られないことから、比較例の有機錫触媒に比べて低温貯蔵安定性が優れていた。
【0079】
【表2】
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、反応性ケイ素基を有する重合体に添加することにより、該重合体のタックフリー時間を短くして表面硬化性を向上させることができる。また、低温条件下において長期間保存しても析出等を生じることがなく、優れた低温貯蔵安定性を発揮する硬化触媒を提供することが可能になる。また、かかる硬化触媒と、反応性ケイ素基を有する重合体とを含む硬化性組成物を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2〜6及び比較例2〜6の硬化性組成物のタックフリー時間を示す図である。
Claims (5)
- ジアルキル錫オキシドと、モノカルボン酸及びモノカルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1つの有機酸とを、前記ジアルキル錫オキシド1モルに対して、前記有機酸におけるカルボニル基のモル数が0.5〜2モルになるように反応させてなるジアルキル錫カルボン酸塩と、
テトラエトキシシランとを、
前記ジアルキル錫カルボン酸塩におけるアシルオキシ基1モルに対して、前記テトラエトキシシランを0.5モル反応させてなることを特徴とする有機錫触媒。 - 前記ジアルキル錫カルボン酸塩が、前記ジアルキル錫オキシドと、前記有機酸とを、前記ジアルキル錫オキシド1モルに対して、前記有機酸におけるカルボニル基のモル数が1モルになるように反応させてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の有機錫触媒。
- 前記ジアルキル錫オキシドが、アルキル基の炭素数が1〜22のジアルキル錫オキシドであり、前記モノカルボン酸が炭素数2〜22の飽和脂肪酸であり、前記モノカルボン酸無水物が炭素数2〜22の飽和脂肪酸の無水物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機錫触媒。
- 前記ジアルキル錫オキシドがジブチル錫オキシドであり、前記モノカルボン酸が酢酸であり、前記モノカルボン酸無水物が無水酢酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機錫触媒。
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