JP4447746B2 - ロボット軌跡の教示方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロボットのアームの先端部を被押圧物体の表面に沿って移動させるためのロボット軌跡を予めロボットに教示するロボット軌跡の教示方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のロボット軌跡の教示方法としては、教示ペンダントによる教示方法が広く知られている。これは、操作者が教示ペンダントを用いて被押圧物体の表面上の多数の座標値を入力していく方法である。かかる教示ペンダントを用いた教示方法は、ロボットに塗装、溶接、シーリング等の作業を行わせる場合には、ロボットのアームの先端の軌跡を制御するだけなので有効な教示方法ではある。
【0003】
しかし、教示ペンダントによる教示方法は、入力作業が煩雑であり、非常に多くの教示点を入力しなければ信頼性の高い軌跡を得ることは困難であった。
【0004】
そのため、近年においては、実際に使用するロボットを用いて操作者が被押圧物体の表面に沿わせてアームを移動させ、その軌跡を記憶させるダイレクト教示方法が考えられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の教示ペンダントを用いた教示方法では、教示時にロボットのアームの先端と被押圧物体との間に作用する押圧力を操作者が認識することができないために、押圧力を制御しながら教示作業を行うことは不可能であった。
【0006】
また、上記従来のダイレクト教示方法でも、教示時にロボットのアームの先端と被押圧物体との間に作用する押圧力を操作者が認識することは極めて困難であるため、押圧力を一定に保持しながらアームの先端を移動させることは、よほど操作者が熟練したとしても殆ど不可能に近かった。
【0007】
したがって、ロボットに研磨作業を行わせる場合等のように、ロボットのアームの先端と被押圧物体との間に作用する押圧力を略一定に保持するようにロボットのアームの先端の軌跡を制御する必要がある場合には、そのような押圧力の力制御が困難な教示ペンダントによる教示方法やダイレクト教示方法は実用的な教示方法とはいえなかった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、ロボットのアームの先端部を被押圧物体の表面に沿って移動させるためのロボット軌跡を予め当該ロボットに教示するロボット軌跡の教示方法において、倣い経路制御装置によって予め設定しておいた目標とする移動量を発生し、前記移動量を第1の速度指令値に変換し、操作者が操作部を操作した操作量を取得し、前記操作量を前記アームの先端部の姿勢変更量に変換し、前記姿勢変更量に基いて第2の速度指令値に変換し、アームの移動後の押圧力が予め設定した値に近似するようにアームの先端部と被押圧物体との間に作用している実際の押圧力から算出した補正量を発生し、前記補正量を第3の速度指令値に変換し、前記第1の速度指令値と前記第2の速度指令値と前記第3の指令値とを加算することにより、第4の速度指令値を算出し、前記第4の速度指令値を関節角速度指令値に変換し、前記関節角速度指令値を前記ロボットのサーボコントローラに入力することとした。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係るロボット軌跡の教示方法は、予め設定しておいた目標とする移動量を倣い経路制御器で発生する一方、ロボットのアームの先端部の姿勢を変更するための姿勢変更手段としてのジョイスティック姿勢制御器によってアームの先端部の姿勢を変更し、更には、ロボットのアームの移動後にアームの先端部と被押圧物体との間に作用する押圧力が予め設定した値に近似するようにアームの先端部と被押圧物体との間に作用している実際の押圧力から算出した補正量を力制御器で発生し、目標とする移動量、補正量、アームの姿勢とに基づいてアームの先端部の実際の移動量を算出し、それによりアームの先端部を被押圧物体の表面に沿わせて移動させ、その際のアームの軌跡を軌跡蓄積器に記憶させるようにしたものである。
【0011】
このように、本発明では、予め設定しておいた目標とする移動量と、アームの移動後の押圧力が予め設定した値に近似するようにアームの先端部と被押圧物体との間に作用している実際の押圧力から算出した補正量とに基づいてアームの先端部を被押圧物体の表面に沿わせて移動せしめ、その軌跡を記憶させているため、アームの先端部と被押圧物体との間に作用する押圧力を略一定に保持しながらアームの先端部が被押圧物体の表面に沿って移動するロボット軌跡を容易に得ることができ、このようにして得られたロボット軌跡に基づいてロボットを制御することによって、ロボットに研磨作業等を行わせることができるものである。
【0012】
しかも、アームの先端部の姿勢を変更するための姿勢変更手段によって変更された姿勢を保持しながら、アームの移動後の押圧力が予め設定した値に近似するようにアームの先端部と被押圧物体との間に作用している実際の押圧力から補正量を算出しているため、操作者はアームの姿勢制御だけに集中して教示作業を行うことができ、教示作業を容易なものとすることができるものである。
【0013】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るロボット軌跡の教示方法を示すブロック線図であり、同図に示すように、本発明では、予め設定しておいた目標とする移動量を倣い経路制御器2で発生する一方、ロボット1のアームの先端部の姿勢を変更するための姿勢変更手段としてのジョイスティック姿勢制御器3によってアームの先端部の姿勢を変更し、更には、ロボット1のアームの移動後にアームの先端部と被押圧物体との間に作用する押圧力が予め設定した値に近似するようにアームの先端部と被押圧物体との間に作用している実際の押圧力から算出した補正量を力制御器4で発生し、目標とする移動量、補正量、アームの姿勢とに基づいてアームの先端部の実際の移動量を算出し、それによりアームの先端部を被押圧物体の表面に沿わせて移動させ、その際のアームの軌跡を軌跡蓄積器5に記憶させている。
【0015】
すなわち、倣い経路制御器2では、被押圧物体のサイズやアーム先端に取付けた工具(例えば、研磨装置)の大きさに応じて、アームの先端部をジグザグ状又は渦巻き状に移動させるジグザグ経路や渦巻き経路等を発生する。この倣い経路制御器2では、アーム先端の位置ベクトル[x、y、z]を発生する。
【0016】
例えば、図2に示すように、被押圧物体の前端から後端に向けてアームの先端部を所定量(例えば、10msごとに10μm)ずつ移動させ、その後、被押圧物体の左右幅方向に所定幅(例えば、1mm)だけ所定量(例えば、10msごとに10μm)ずつ移動させ、その後、被押圧物体の後端から前端に向けてアームの先端部を所定量(例えば、10msごとに10μm)ずつ移動させることを繰り返して、アームの先端部をジグザグ状に移動させるジグザグ経路を発生する。
【0017】
尚、図2に示すジグザグ経路では、アームの先端部を被押圧物体の前後方向(X方向)及び左右幅方向(Y方向)にのみ移動させる経路としており、アームの先端部を被押圧物体の上下方向(Z方向)には移動させていない。これは、表面形状が未知の様々な被押圧物体に対応できるようにしたものであり、また、倣い経路制御器2によって発生する移動量を2方向に簡素化できるようにしたものである。従って、概略の表面形状が既知の被押圧物体の場合には、倣い経路制御器2によってアームの先端部を被押圧物体の上下方向(Z方向)にも移動させる3方向の移動量を発生させてもよい。
【0018】
この倣い経路制御器2で発生する移動量は、あくまで目標とする移動量であって、そのままの移動量でロボット1のアームを移動させているのではない。実際にロボット1のアーム先端の移動量は、倣い経路制御器2で発生する移動量に、後述する力制御器4で発生する補正量を加えたものである。
【0019】
また、ジョイスティック姿勢制御器3では、操作者が操作するジョイスティックの傾斜角度に対応したアーム先端の姿勢を発生する。このジョイスティック姿勢制御器3では、Z−Y−Zオイラー角で表される姿勢ベクトル[φ、θ、ψ]を発生する。
【0020】
尚、ジョイスティック姿勢制御器3では、操作者が操作するジョイスティックの操作量よりもアーム先端の姿勢変更量のほうが少なくなるようにしている。例えば、操作者が操作するジョイスティックの操作量の1/5の変更量でアーム先端の姿勢が変わるようにして、ジョイスティックをφ方向に30度傾斜させた場合には、アーム先端がφ方向に6度傾斜するようにしている。これにより、操作者がジョイスティックを用いてアーム先端の姿勢を容易に微調整できるようにしている。
【0021】
また、力制御器4では、倣い経路制御器2で発生した位置(位置ベクトル[x、y、z])とジョイスティック姿勢制御器3で発生した姿勢(姿勢ベクトル[φ、θ、ψ])とに基づいて次のようにして補正量を発生する。
【0022】
まず、デカルト座標系における目標とするインピーダンス特性を次式で定義する。
【数1】
Figure 0004447746
【0023】
ここで、
【数2】
Figure 0004447746
は、それぞれロボット1のアーム先端に取付けた研磨工具等の位置ベクトル、速度ベクトル、加速度ベクトルを表す。また、
【数3】
Figure 0004447746
は、それぞれ目標慣性行列、目標粘性行列、目標剛性行列であり、これらをインピーダンスパラメータと呼ぶ。また、
【数4】
Figure 0004447746
は、
【数5】
Figure 0004447746
で定義される工具と被押圧物体との間に作用する押圧力ベクトル
【数6】
Figure 0004447746
とモーメントベクトル
【数7】
Figure 0004447746
である。また、
【数8】
Figure 0004447746
は力フィードバックゲイン行列である。また、
【数9】
Figure 0004447746

【数10】
Figure 0004447746
は、目標とする位置ベクトル、速度ベクトル、加速度ベクトル及び力/モーメントベクトルである。SとEはスイッチ行列及び単位行列である。ただし、Md、Bd、Kd及びKfは正定の対角行列とする。
【0024】
式(1)は、S=Eのとき全方向インピーダンス制御系、S=0のとき全方向力制御系となる。
【0025】
全方向力制御系(S=0)のとき、式(1)において
【数11】
Figure 0004447746
とおくと、次の状態方程式が得られる。
【数12】
Figure 0004447746
【0026】
この式(2)を解くと、次式が得られる。
【数13】
Figure 0004447746
【0027】
ここで、サンプリング幅Δtを用いた離散時間kを考える。まず、
【数14】
Figure 0004447746
の時間において、Md、Bd、Kf、F及びFdが全て一定であると仮定し、
【数15】
Figure 0004447746
とすると、次式のような離散時間kでの解が得られる。
【数16】
Figure 0004447746
【0028】
前定義により
【数17】
Figure 0004447746
であり、また、力制御を行う方向における目標の速度を
【数18】
Figure 0004447746
に設定すると、次式に示すデカルト座標系における解が得られる。
【数19】
Figure 0004447746
【0029】
ここで、x(k)は、位置ベクトル[x(k) y(k) z(k)]TとZ−Y−Zオイラー角で表される姿勢ベクトル[φ(k) θ(k) ψ(k)]Tとから構成している。
【0030】
式(5)に積分操作を加えると次式が得られる。
【数20】
Figure 0004447746
【0031】
ここで、
【数21】
Figure 0004447746
は、積分制御ゲインである。
【0032】
式(6)で得られる速度指令値
【数22】
Figure 0004447746
をサンプリング時間ごとにサーボ系の目標値として与えることで、アーム先端に設けた力センサーで検出される押圧力Fを予め設定した目標値Fdに追従させることができる。
【0033】
次に、教示プロセスについて図1に基づいて説明すると、まず、倣い経路制御器2によって予め設定しておいたジグザグ経路等の目標とする移動量を発生し、それを速度指令値
【数23】
Figure 0004447746
に変換する。また、ジョイスティック姿勢制御器3によってアームの先端部の姿勢を操作者が操作するジョイスティックに対応した姿勢となるように姿勢変更量を発生し、それを速度指令値
【数24】
Figure 0004447746
に変換する。更には、力制御器4によってロボット1のアームの移動後にアームの先端部と被押圧物体との間に作用する押圧力が予め設定した値に近似するようにアームの先端部と被押圧物体との間に作用している実際の押圧力から算出した補正量を発生し、それを速度指令値
【数25】
Figure 0004447746
に変換する。
【0034】
尚、図1において、Sp=diag(Sp1,Sp2,Sp3,0,0,0)、So=diag(0,0,0,So1,So2,So3)、Sf=diag(Sf1,Sf2,Sf3,Sf4,Sf5,Sf6)は、それぞれ倣い経路制御器、ジョイスティック姿勢制御器、力制御器の動作を各方向ごとにオン又はオフにするスイッチ行列であり、
【数26】
Figure 0004447746
の関係を有する。また、
【数27】
Figure 0004447746
はサンプリング間隔の逆数、Kν=diag(Kν 1,・・・,Kν 6)は速度変換ゲインである。
【0035】
そして、上記の各速度指令値を加算したデカルト座標系での速度指令値は、次式で与えられる。
【数28】
Figure 0004447746
【0036】
ここで、
【数29】
Figure 0004447746
は、逆ヤコビアンにより関節座標系での関節角速度指令値
【数30】
Figure 0004447746
に変換された後、オープンアーキテクチャ型産業用ロボット1のサーボコントローラへ入力され、アーム先端が移動する。そして、その際のアームの軌跡は、軌跡蓄積器5に記憶される。
【0037】
このように、本発明では、予め設定しておいた目標とする移動量と、アームの移動後の押圧力が予め設定した値に近似するようにアームの先端部と被押圧物体との間に作用している実際の押圧力から算出した補正量とに基づいてアームの先端部を被押圧物体の表面に沿わせて移動せしめ、その軌跡を記憶させているため、アームの先端部と被押圧物体との間に作用する押圧力を略一定に保持しながらアームの先端部が被押圧物体の表面に沿って移動するロボット軌跡を容易に得ることができ、このようにして得られたロボット軌跡に基づいてロボット1を制御することによって、ロボット1に研磨作業等を行わせることができる。
【0038】
しかも、アームの先端部の姿勢を変更するための姿勢変更手段によって変更された姿勢を保持しながら、アームの移動後の押圧力が予め設定した値に近似するようにアームの先端部と被押圧物体との間に作用している実際の押圧力から補正量を算出しているため、操作者はアームの姿勢制御だけに集中して教示作業を行うことができ、教示作業を容易なものとすることができる。
【0039】
本発明の有用性を検証するために、オープンアーキテクチャ型産業用ロボットとして川崎重工業製のJS-10を用い、ジョイスティックとしてサンワサプライ製の3自由度ジョイスティックJY-DV17を用いて教示実験を行った。その際の各制御パラメータは表1に示すとおりであり、また、倣い経路制御器2によって図2に示すジグザグ経路を発生させている。
【0040】
【表1】
Figure 0004447746
【0041】
その結果を図3及び図4に示す。図3は、研磨工具の傾斜角度の変化を示しており、図4は、研磨工具先端のZ座標値の変化を示している。
【0042】
本実験により、研磨用のロボットを高速かつ高精度に自動制御するために必要となる最適な軌道を簡易かつ安全に得られることが確認された。
【0043】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0044】
すなわち、本発明では、倣い経路制御装置によって予め設定しておいた目標とする移動量を発生し、前記移動量を第1の速度指令値に変換し、操作者が操作部を操作した操作量を取得し、前記操作量を前記アームの先端部の姿勢変更量に変換し、前記姿勢変更量に基いて第2の速度指令値に変換し、アームの移動後の押圧力が予め設定した値に近似するようにアームの先端部と被押圧物体との間に作用している実際の押圧力から算出した補正量を発生し、前記補正量を第3の速度指令値に変換し、前記第1の速度指令値と前記第2の速度指令値と前記第3の指令値とを加算することにより、第4の速度指令値を算出し、前記第4の速度指令値を関節角速度指令値に変換し、前記関節角速度指令値を前記ロボットのサーボコントローラに入力するため、アームの先端部と被押圧物体との間に作用する押圧力を略一定に保持しながらアームの先端部が被押圧物体の表面に沿って移動する軌跡を容易に得ることができ、しかも、教示時に操作者はアームの姿勢制御だけに集中することができ、教示作業を容易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るロボット軌跡の教示方法を示すブロック線図。
【図2】倣い経路制御器で発生するジグザグ経路を示す説明図。
【図3】研磨工具の傾斜角度の変化を示すグラフ。
【図4】研磨工具のZ座標値の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
1 ロボット
2 倣い経路制御器
3 ジョイスティック姿勢制御器
4 力制御器
5 軌跡蓄積器

Claims (1)

  1. ロボットのアームの先端部を被押圧物体の表面に沿って移動させるためのロボット軌跡を予め当該ロボットに教示するロボット軌跡の教示方法において、
    予め設定しておいた目標とする移動量を発生し、
    前記移動量を第1の速度指令値に変換し、
    操作者が操作部を操作した操作量を取得し、
    前記操作量を前記アームの先端部の姿勢変更量に変換し、
    前記姿勢変更量に基いて第2の速度指令値に変換し、
    前記アームの移動後の押圧力が予め設定した値に近似するように前記アームの先端部と前記被押圧物体との間に作用している実際の押圧力から算出した補正量を発生し、
    前記補正量を第3の速度指令値に変換し、
    前記第1の速度指令値と前記第2の速度指令値と前記第3の指令値とを加算することにより、第4の速度指令値を算出し、
    前記第4の速度指令値を関節角速度指令値に変換し、
    前記関節角速度指令値を前記ロボットのサーボコントローラに入力する
    ことを特徴とするロボット軌跡の教示方法。
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