JP4447492B2 - 線条スライドファスナー - Google Patents

Description

この発明は、熱可塑性樹脂のモノフィラメントを独特な形状のコイル状、あるいはジグザグ状の線条ファスナーエレメントに形成し、この線条ファスナーエレメントをファスナーテープの一側縁上に各種タイプの縫着糸などの固定糸によって取り付けた線条スライドファスナーに関するものである。

従来の線条スライドファスナーにおけるコイル状ファスナーエレメントにおいて、コイル状ファスナーエレメントをファスナーテープの一側縁上に縫着糸によってミシン縫製する際、スライダーの摺動により縫着糸が損傷しないようにするため、コイル状ファスナーエレメントの上脚部の中央部分に凹状の窪みを形成し、この窪みに縫着糸を収容して保護するものが、図１２に示すように知られている。このコイル状ファスナーエレメントは噛合頭部側と反転部側でのファスナーエレメントの高さが同等に形成し、縫着糸を保護するものである。
米国特許第３１４９３８８号明細書

前述の図１２に示されたコイル状ファスナーエレメントは、縫着糸を収容する凹部の左右に形成した噛合頭部側および反転部側のコイル状ファスナーエレメントが略同等の大きさであるため、不必要にコイル状ファスナーエレメントを大きく形成しなければならない。すなわちコイル状ファスナーエレメントの反転部側はそれ程大きく形成する必要はなく、反転部側を噛合頭部側と同等の大きさに形成することは、コイル状ファスナーエレメントを必要以上に大きく形成しなければならないので、資源のむだ遣いになりコスト高になるなど問題点がある。

この発明は、上述の問題点を考慮して発明したものであり、この発明のうち請求項１記載の発明は、線条スライドファスナーにおけるコイル状ファスナーエレメントまたはジグザグ状ファスナーエレメントにおいて、噛合頭部側に対して縫着糸などの固定糸を収容するための凹部と線条ファスナーエレメントの小型化に役立つ、反転部側の小型化を実現し、資源の節減を図り、かつスライダーの摺動動作を軽快に行うことができ、そのうえ線条ファスナーエレメントの上下脚部間の空隙部部分の上方に凸部部分を形成し、この空隙部部分の高さ寸法を規定することによって、噛合頭部の有効な噛み合いができ、かつ線条ファスナーエレメントの上脚部の表面に形成する凹部部分における噛合頭部と反転部との関係および凹部の勾配について規定し、線条ファスナーエレメントを固定する固定糸の凹部からの脱却を阻止し、円滑な噛み合い、または噛合状態に影響を与えない小型化ができ、さらに上脚部の上面に形成する凹部部分における噛合頭部側から凹部の最深部へ向けての勾配は急勾配であり、反転部側から凹部の最深部へ向けての勾配は、噛合頭部側からの勾配よりもなだらかに形成し、線条ファスナーエレメントは固定糸を保護し、線条ファスナーエレメントを小型化すなわち反転部を小型に形成し、全体として小型化が実現できる線条スライドファスナーを提供することが主たる目的である。

請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の目的に加え、コイル状ファスナーエレメントまたはジグザグ状ファスナーエレメントの上脚部の表面に形成する噛合頭部側、凹部部分、反転部側における幅寸法を規定することによって、噛合頭部の有効な噛み合い、かつ線条ファスナーエレメントにおける反転部側の捲回量を少なくした小型化が実現できる線条スライドファスナーを提供することが目的である。

請求項３記載の発明は、請求項１記載の発明の目的に加え、コイル状ファスナーエレメントまたはジグザグ状ファスナーエレメントの上下脚部間の空隙部部分に形成する噛合頭部側、凸部部分、反転部側における幅寸法を規定することによって、線条ファスナーエレメントの内側形状を限定し、線条ファスナーエレメントの表面に形成される凹部部分および反転部側の形状を小型化に形成できる線条スライドファスナーを提供することが目的である。

請求項４記載の発明は、請求項１記載の発明の目的に加え、コイル状ファスナーエレメントまたはジグザグ状ファスナーエレメントの上脚部の表面に形成する凹部部分における噛合頭部および反転部との関係および凹部の勾配を規定し、線条ファスナーエレメントを固定する固定糸の凹部からの脱却を阻止し、円滑な噛み合い、または噛合状態に影響を与えない小型化ができる線条スライドファスナーを提供することが目的である。

請求項５記載の発明は、請求項１記載の発明の目的に加え、線条ファスナーエレメントを固定するための固定糸を安定した状態で保護し、しかも有効な噛合頭部の噛み合い、または線条ファスナーエレメントの小型化を線条ファスナーエレメントに挿通した芯紐によって助勢することができる線条スライドファスナーを提供することが目的である。

前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項１記載の発明は、コイル状またはジグザグ状の線条ファスナーエレメント１を縫着糸６または織込糸７あるいは経編糸８の固定糸５によって、コイル状またはジグザグ状の線条ファスナーエレメント１の上脚部１２の上面に縫着糸６または織込糸７あるいは経編糸８の固定糸５を収容する凹部１４を形成し、線条ファスナーエレメント１の下脚部１３の下面から上脚部１２の上面までの高さ寸法を線条ファスナーエレメント１における噛合頭部１０側、凹部１４部分、反転部１１側をそれぞれＨ１，Ｈ２，Ｈ３としたとき、Ｈ１＞Ｈ３＞Ｈ２の設定条件を備え、かつ上脚部１２における下面に、下脚部１３の上面ヘ向けて突出する凸部１５を形成し、線条ファスナーエレメント１における上脚部１２の下面と下脚部１３の上面との間の高さ寸法を、噛合頭部１０側、凸部１５部分をそれぞれＨ４，Ｈ５としたとき、Ｈ４＞Ｈ５の設定条件を備え、線条ファスナーエレメント１における上脚部１２の上面に形成する凹部１４において、この凹部１４の線条ファスナーエレメント１の噛合頭部１０側の端部から凹部１４の最深部２０までの幅寸法Ｗ２ａが、凹部１４の反転部１１側の端部から凹部１４の最深部２０までの幅寸法Ｗ２ｂよりも小さく形成し、しかも線条ファスナーエレメント１の上脚部１２の上面に形成する凹部１４部分における噛合頭部１０側の端部から凹部１４部分の最深部２０へ向かう斜面の勾配が、凹部１４部分の反転部１１側の端部から凹部１４部分の最深部２０へ向かう斜面の勾配よりも急勾配に形成した線条スライドファスナーを主な構成とするものである。

請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、コイル状またはジグザグ状の線条ファスナーエレメント１の上脚部１２における上面の噛合頭部１０側、凹部１４部分、反転部１１側の幅寸法をそれぞれＷ１，Ｗ２，Ｗ３としたとき、Ｗ１＞Ｗ２≧Ｗ３の設定条件を備えた線条スライドファスナーである。

請求項３記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、コイル状またはジグザグ状の線条ファスナーエレメント１の上脚部１２と下脚部１３との間における空隙部１６に形成する噛合頭部１０側、凸部１５部分、反転部１１側の幅寸法をそれぞれＷ４，Ｗ５，Ｗ６としたとき、Ｗ５＞Ｗ４＞Ｗ６の設定条件を備えた線条スライドファスナーである。

請求項４記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、コイル状またはジグザグ状の線条ファスナーエレメント１の上脚部１２の上面に形成する凹部１４において、この凹部１４の線条ファスナーエレメント１の噛合頭部１０側の端部から凹部１４の最深部２０までの深さ寸法ｄ１が、凹部１４の反転部１１側の端部から凹部１４の最深部２０までの深さ寸法ｄ２よりも大きく形成した線条スライドファスナーである。

請求項５記載の発明は、請求項１記載の発明の構成に加え、コイル状またはジグザグ状の線条ファスナーエレメント１の上脚部１２と下脚部１３との間に形成する空隙部１６において、上脚部１２に形成した凸部１５部分と反転部１１側に接触する形に芯材となる芯紐１８を挿通した線条スライドファスナーである。

この出願の発明の効果として、請求項１記載の発明は、線条ファスナーエレメントを固定糸によって、ファスナーテープの一側縁に固定する線条スライドファスナーにおいて、線条ファスナーエレメントの上脚部の上面に固定糸を収容する凹部を形成し、下脚部の下面から上脚部の上面までの高さ寸法を噛合頭部側、凹部部分、反転部側をそれぞれＨ１，Ｈ２，Ｈ３としたとき、Ｈ１＞Ｈ３＞Ｈ２の条件を備え、上脚部の下面に下脚部の上面へ向けて突出する凸部を形成し、上脚部の下面と下脚部の上面との間の高さ寸法を噛合頭部側、凸部部分をそれぞれＨ４，Ｈ５としたとき、Ｈ４＞Ｈ５の条件を備え、上脚部の上面に形成する凹部の噛合頭部側の端部から凹部の最深部までの幅寸法Ｗ２ａが、凹部の反転部側の端部から凹部の最深部までの幅寸法Ｗ２ｂよりも小さく形成し、上脚部の上面に形成する凹部の噛合頭部側の端部から凹部の最深部へ向かう斜面の勾配が、凹部の反転部側の端部から凹部の最深部へ向かう斜面の勾配よりも急勾配に形成したことによって、下記の効果を奏するものである。

この発明は、線条ファスナーエレメントを固定する縫着糸または織込糸あるいは経編糸による固定糸をスライダーの摺動動作により磨耗するのを防ぎ、固定糸を完全に保護して摺動性のよいファスナーエレメントに形成できるとともに、ファスナーエレメントの噛合動作は従来品と変りはなく、ファスナーエレメントの反転部側の捲回量を少なくし、ファスナーエレメント全体を小型化に形成することができ、また線条ファスナーエレメントの上脚部と下脚部との間の噛合頭部側、凸部部分、反転部側の空隙部を理想的な空間部分に形成し、ファスナーエレメントの強固な噛み合いができ、線条ファスナーエレメントにおける凹部の噛合頭部側と反転部側との勾配を規定し、固定糸を噛合頭部側へ脱却するのを未然に防ぐとともに、噛合頭部側に位置する固定糸を凹部内へ積極的に滑り込ませ、凹部に収容した固定糸が噛合頭部側へみだりに移動し、凹部内から脱却するのを未然に防ぎ、固定糸を安定した状態でファスナーエレメントが保持できる効果がある。

請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、線条ファスナーエレメントにおける上脚部の上面の噛合頭部側、凹部部分、反転部側の幅寸法をそれぞれＷ１，Ｗ２，Ｗ３としたとき、Ｗ１＞Ｗ２≧Ｗ３の条件を備えたことによって、線条ファスナーエレメントの噛合頭部が有効かつ確実に噛み合い、固定糸は的確に凹部に収容し、反転部は有効に小型化に寄与できる効果がある。

請求項３記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、線条ファスナーエレメントにおける上脚部と下脚部との間の空隙部に形成する噛合頭部側、凸部部分、反転部側の幅寸法をそれぞれＷ４，Ｗ５，Ｗ６としたとき、Ｗ５＞Ｗ４＞Ｗ６の条件を備えたことによって、線条ファスナーエレメントの噛合頭部および凹部を有効に活用するため、空隙部に形成する噛合頭部側、凸部部分および反転部側を規定し、固定糸の収容およびファスナーエレメントの小型化を容易に達成できる効果がある。

請求項４記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、上脚部の上面に形成する凹部の噛合頭部側の端部から凹部の最深部までの深さ寸法ｄ１が、凹部の反転部側の端部から凹部の最深部までの深さ寸法ｄ２よりも大きく形成することによって、線条ファスナーエレメントにおける凹部の噛合頭部側と反転部側との勾配を規定し、固定糸を噛合頭部側への脱却するのを未然に防ぐとともに、反転部側の小型化を推進できる効果がある。

請求項５記載の発明は、請求項１記載の発明の効果に加え、線条ファスナーエレメントの上脚部と下脚部との間の空隙部において、凸部部分および反転部側に芯紐を挿通したことによって、線条ファスナーエレメント内へ芯紐を相通してファスナーチエン割れを未然に防ぐとともに、堅牢で強固な噛み合いができる線条ファスナーエレメントが完成できる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。

この発明における線条スライドファスナーは、熱可塑性樹脂製のモノフィラメントから形成した線条ファスナーエレメント１をコイル状ファスナーエレメント２またはジグザグ状ファスナーエレメント３に捲回または折曲し、この線条ファスナーエレメント１をファスナーテープ４の一側縁に固定糸５たとえば縫着糸６または織込糸７あるいは経編糸８によって取り付け固定する。

たとえばコイル状ファスナーエレメント２は、図２〜４に示すコイル状ファスナーエレメント２の上脚部１２の上面に凹部１４を形成するとともに、上脚部１２の下面に内方へ突出する凸部１５を形成する。このコイル状ファスナーエレメント２は噛合頭部１０側、凹部１４部分および反転部１１側における下脚部１３の下面からの高さ寸法をそれぞれＨ１，Ｈ２，Ｈ３とし、また上脚部１２における噛合頭部１０側、凹部１４部分、反転部１１側の幅寸法をそれぞれＷ１，Ｗ２，Ｗ３としたとき、線条ファスナーエレメント１はＨ１＞Ｈ３＞Ｈ２であり、またＷ１＞Ｗ２≧Ｗ３の設定条件を満たす。

さらに上脚部１２の下面に下脚部１３の上面へ向けて突出する凸部１５を形成するとともに、上脚部１２の下面と下脚部１３の上面との間の寸法を噛合頭部１０側、凸部１５部分、反転部１１側をそれぞれＨ４，Ｈ５，Ｈ６としたとき、設定条件はＨ４＞Ｈ６＞Ｈ５である。

また上脚部１２と下脚部１３との間の空隙部１６に形成する。噛合頭部１０側、凸部１５部分、反転部１１側の幅寸法をそれぞれＷ４，Ｗ５，Ｗ６としたとき、Ｗ５＞Ｗ４＞Ｗ６の設定条件を満たす。

換言すると、この発明における線条ファスナーエレメント１は、噛合頭部１０側の高さが一番高く、次に反転部１１側、凹部１４と続き、線条ファスナーエレメント１の横幅は噛合頭部１０側が一番広く、次に凹部１４、反転部１１側と続き、また線条ファスナーエレメント１における空隙部１６に存在する各高さ寸法は、噛合頭部１０側が高く、次に反転部１１側、凸部１５と続き、さらに空隙部１６内の幅寸法は凸部１５部分が一番広く、次に噛合頭部１０側、反転部１１側と続くものである。

さらに上脚部１２の上面に形成する凹部１４部分における噛合頭部１０側から凹部１４の最深部２０へ向けての勾配は急勾配であり、反転部１１側から凹部１４の最深部２０へ向けての勾配は、噛合頭部１０側からの勾配よりもなだらかに形成されている。このように形成することによって、この発明における線条ファスナーエレメント１は、固定糸５を保護し、線条ファスナーエレメント１を小型化すなわち反転部１１を小型に形成でき、線条ファスナーエレメント１を全体として小型化できる利点がある。

この発明の線条スライドファスナーについて説明すると、図１〜７に示す実施例１の線条スライドファスナーは、線条ファスナーエレメント１をポリアミドあるいはポリエステルのモノフィラメントをコイル状に捲回して形成する。線条ファスナーエレメント１は図２〜６に示すように、一端に噛合頭部１０、他端に反転部１１を形成し、その間を上脚部１２と下脚部１３で連結してコイル状ファスナーエレメント２を形成する。このコイル状ファスナーエレメント２は内部に芯紐１８を挿通してファスナーテープ４の一側縁上に縫着糸６たとえば２本針３本糸の二重環縫によって縫着する。

コイル状ファスナーエレメント２は図２に示すように噛合頭部１０側における上脚部１２の上面から下脚部１３の下面までの高さ寸法をＨ１とし、反転部１１側の高さ寸法をＨ３としたとき、その間の上脚部１２の中央部分に凹部１４を形成し、その高さ寸法をＨ２としたことによって、凹部１４は縫着糸６の収容を可能にし、凹部１４内から縫着糸６が脱却できないように形成するため、その設定条件をＨ１＞Ｈ３＞Ｈ２とする。高さ寸法の具体例としては、噛合頭部１０側の高さ寸法Ｈ１が２．０２〜２．１４ｍｍの範囲であるとき、反転部１１側の高さ寸法Ｈ３が１．８９〜２．０１ｍｍの範囲、凹部１４の高さ寸法Ｈ２が１．８１〜１．９３ｍｍの範囲である。

また図３に示すように、コイル状ファスナーエレメント２の噛合頭部１０側の外端面から凹部１４に向けての噛合頭部１０側の幅寸法をＷ１、反転部１１側の外端面から凹部１４に向けての反転部１１側の幅寸法をＷ３、上脚部１２の上面中央に形成した凹部１４部分の幅寸法をＷ２としたとき、コイル状ファスナーエレメント２は強固な噛み合いと固定糸５の収容およびコイル状ファスナーエレメント２の小型化を実現するため、設定条件をＷ１＞Ｗ２≧Ｗ３とする。幅寸法の具体例としては、コイル状ファスナーエレメント２の噛合頭部１０の外端面から反転部１１の外端面までの全幅寸法が３．９７〜４．０９ｍｍの範囲であるとき、凹部の幅寸法Ｗ２は１．０４〜１．１６ｍｍの範囲にあり、噛合頭部１０側の幅寸法Ｗ１はＷ２の寸法範囲よりも大きく、反転部１１側の幅寸法Ｗ３はＷ２の寸法以下の大きさである。

さらに反転部１１側の幅寸法Ｗ３と凹部１４部分の幅寸法Ｗ２との関係において、凹部１４部分の幅寸法Ｗ２が反転部１１側の幅寸法Ｗ３よりも同等またはそれ以上の幅寸法Ｗ２に形成するとともに、この凹部１４部分の幅寸法Ｗ２と反転部１１側の幅寸法Ｗ３との和が噛合頭部１０側の幅寸法Ｗ１よりも大きく形成して、極力コイル状ファスナーエレメント２の反転部１１側を小さくし、コイル状ファスナーエレメント２の全体を小型化させる。

また、コイル状ファスナーエレメント２の上脚部１２の下面に下脚部１３に向けて空隙部１６内へ突出する凸部１５を形成し、この空隙部１６内における上脚部１２の下面から下脚部１３の上面までの間の噛合頭部１０側の高さ寸法をＨ４、反転部１１側の寸法をＨ６、凸部１５部分をＨ５としたとき、さらに空隙部１６内における噛合頭部１０の内端面から凸部１５までの間の噛合頭部１０側の幅寸法をＷ４、反転部１１の内端面から凸部１５までの間の反転部１１側の幅寸法をＷ６、凸部１５部分の幅寸法をＷ５としたとき、その設定条件をＨ４＞Ｈ６＞Ｈ５およびＷ５＞Ｗ４＞Ｗ６を満たし、コイル状ファスナーエレメント２の全体における形状を小さく小型化できる。

次に図４に示すように、コイル状ファスナーエレメント２の上脚部１２の上面に形成する凹部１４部分における勾配について説明すると、凹部１４における噛合頭部１０側は、反転部１１側の勾配に比較して、凹部１４の噛合頭部１０側の端部から凹部１４の最深部２０に向け急斜面を呈する急勾配であり、反転部１１側は凹部１４の反転部１１側の端部から最深部２０へ向けて緩斜面を呈する緩勾配である。凹部１４における噛合頭部１０側を凹部１４の最深部２０へ向けて急斜面に形成することは、噛合頭部１０側に位置する固定糸５を凹部１４内へ積極的に滑り込ませ、凹部１４に収容した固定糸５が噛合頭部１０側へみだりに移動し、凹部１４内から脱却するのを未然に防ぐとともに、スライダーの摺動が軽快に行うことができる。また凹部１４における反転部１１側を凹部１４の最深部２０へ向けて緩斜面に形成することは、凹部１４の幅寸法Ｗ２を広く確保して、固定糸５を凹部１４内に確実に収容し、固定糸５が凹部１４内から反転部１１側へ移動することを防ぐことができる。

この勾配について、凹部１４の幅寸法が凹部１４の最深部２０に対し、噛合頭部１０側のＷ２ａは急斜面で急勾配になるように形成し、また反転部１１側からＷ２ｂは緩斜面で緩勾配になるように形成する。さらに凹部１４の深さ寸法において、凹部１４の最深部２０に対する噛合頭部１０側をｄ１とする場合、反転部１１側をｄ２とすると、凹部１４においてＷ２ａ＜Ｗ２ｂであり、ｄ２＜ｄ１の関係を保持するものである。深さ寸法の具体例としては、噛合頭部１０側の深さ寸法ｄ１が０．１５〜０．２７ｍｍであるとき、反転部１１側の深さ寸法ｄ２が０．０２〜０．１４ｍｍである。

図５のファスナーストリンガーおよび図６，７に示す線条スライドファスナーは、それぞれコイル状ファスナーエレメント２の内部に芯紐１８を挿通し、具体的には芯紐１８を上脚部１２と下脚部１３との間の空隙部１６における凸部１５部分と反転部１１側の空隙部１６に挿通させ、芯紐１８を凸部１５とこの凸部１５に対向する下脚部１３の上面、そして反転部１１側の上脚部１２の下面と下脚部１３の上面、および反転部１１の内端面に接触させる。このコイル状ファスナーエレメント２の平坦な下脚部１３をファスナーテープ４の一側縁上に載置し、２本針３本糸の二重環縫の縫着糸６によって、芯紐１８およびコイル状ファスナーエレメント２をファスナーテープ４に縫着して取り付ける。このとき縫着糸６による固定糸５はコイル状ファスナーエレメント２の上脚部１２に形成した凹部１４内に収容され、凹部１４から噛合頭部１０側へ移動し脱却することを未然に防ぐことができる。前述のごとく縫着糸６が凹部１４から移動することがないので、同縫着糸６によってファスナーテープ４に固定された芯紐１８は、噛合頭部１０側の空隙部１６内へ移動してしまうことがない。

さらにスライダーの摺動動作によって固定糸５は凹部１４に収容されているため摩耗するのを防ぐことができ、またコイル状ファスナーエレメント２は反転部１１側を小形に形成することができ、従来品に比較してコイル状ファスナーエレメント２全体を小型化に形成することができ、そのうえコイル状ファスナーエレメント２の内部に挿通した芯紐１８は、相対するコイル状ファスナーエレメント２の噛合時に噛合相手方のコイル状ファスナーエレメント２の噛合頭部１０の外端面と接触して押圧し噛み合いを強固なものにする。

図８に示す実施例２の線条スライドファスナーは、ファスナーテープ４の側縁に折り返部２２を作り、この折り返部２２を左右突き合わせて、この折り返部２２にコイル状ファスナーエレメント２に前例と同じ設定条件を備えた上脚部１２、ここでは外側に配された脚部に形成された凹部１４を固定糸５として二重環縫の縫着糸６を用いて縫着し固定した隠しスライドファスナーである。この隠しスライドファスナーも前例と同様な設定条件を備え、上脚部１２に形成した凹部１４に固定糸５が収容され噛合頭部１０側から固定糸５が移動し脱却することがない。またコイル状ファスナーエレメント２の端部に形成した反転部１１を小形に形成することができ、従来の隠しスライドファスナーよりもコイル状ファスナーエレメント２全体を小型化することができ、資源の節減が図れる利点がある。

図９に示す実施例３の線条スライドファスナーは、ファスナーテープ４の側縁上にジグザグ状ファスナーエレメント３を固定糸５に二重環縫の縫着糸６を用いて縫着し固定した線条スライドファスナーである。このジグザグ状ファスナーエレメント３にも前例と同様に各種の設定条件を備え、上脚部１２の噛合頭部１０側が急勾配に形成し、反転部１１側が緩勾配に形成し、このジグザグ状ファスナーエレメント３の上脚部１２と下脚部１３との間に芯紐１８を挿通し、上脚部１２に形成した凹部１４を固定糸５として二重環縫の縫着糸６により縫着し固定する。

この形態の線条ファスナーエレメント１も前例と同様な設定条件を備え、ジグザグ状ファスナーエレメント３の噛合頭部１０側への固定糸５の移動および脱却を凹部１４が阻止し、またスライダーの摺動動作による固定糸５の摩耗を未然に防ぐとともに、ジグザグ状ファスナーエレメント３の反転部１１側を小形に形成することができ、ジグザグ状ファスナーエレメント３全体を従来品に比較して小型化することができ、資源の節減が図れる利点がある。

図１０に示す実施例４の線条スライドファスナーは、コイル状ファスナーエレメント２をファスナーテープ４を織製と同時に織り込んだものであり、コイル状ファスナーエレメント２も前例と同じく設定条件を備え、このコイル状ファスナーエレメント２の内部に芯紐１８を挿通し、コイル状ファスナーエレメント２を経糸２４とダブルピックの緯糸２５によって織製し、コイル状ファスナーエレメント２の上部をダブルピックの緯糸２５と固定糸５として織込糸７を用いて織り込み固定する。

このコイル状ファスナーエレメント２も前例と同様な設定条件を備え、コイル状ファスナーエレメント２は固定糸５としての織込糸７は凹部１４から移動および脱却することがない。またコイル状ファスナーエレメント２の反転部１１側を小形な形状に形成することができ、従来品と比較してコイル状ファスナーエレメント２全体を小型化することができ、資源の節減が図れる利点がある。

図１１に示す実施例５の線条スライドファスナーは、コイル状ファスナーエレメント２を前例と同様に設定条件を備え、上脚部１２に凹部１４を形成し、反転部１１側を小形に形成するとともに、固定糸５に経編糸８ここでは鎖編組織の編糸によってコイル状ファスナーエレメント２を編み込む、ファスナーテープ４は経編組織から編製し、たとえば全ウエールに１−０／０−１の鎖編糸２６と０−０／３−３の緯挿入糸２７を配して交絡させ、またＷ１〜Ｗ３には２−２／０−０の緯挿入糸２８を配して緯挿入糸２７と交錯させ、コイル状ファスナーエレメント２を締付け固定する。上脚部１２の凹部１４部分にＷ２，Ｗ３の鎖編組織の経編糸８を用いて、コイル状ファスナーエレメント２の上脚部１２の凹部１４を捕捉して締付け、経編糸８は上脚部１２の凹部１４部分から移動して脱却することがない。なお経編糸は前記の編糸に限定するものではなく、たとえば全ウエールに１−２／１−０のトリコット編糸、また０−２／２−０の二目編糸を配してファスナーテープ４を編製することは自由である。

この発明の線条スライドファスナーは、あらゆるスライドファスナーを使用した製品の開口部に用いるものであり、使用製品全般に及ぶものである。

線条スライドファスナーの正面図である。 ファスナーエレメントにおける各部の高さ寸法を示す説明図である。 ファスナーエレメントにおける各部の幅寸法を示す説明図である。 ファスナーエレメントの凹部の幅寸法と深さ寸法を示す説明図である。 ファスナーストリンガーの縦断面図である。 線条スライドファスナーの部分正面図である。 同上図６におけるＡ−Ａ断面図である。 実施例２を示す隠しスライドファスナーの断面図である。 実施例３を示すジグザグ状ファスナーエレメントを備えたファスナーストリンガーの断面図である。 実施例４を示す織り込みスライドファスナーの一部正面図である。 実施例５を示す編み込みスライドファスナーの一部正面図である。 公知の線条スライドファスナーの断面図である。

１ 線条ファスナーエレメント
２ コイル状ファスナーエレメント
３ ジグザグ状ファスナーエレメント
４ ファスナーテープ
５ 固定糸
１０ 噛合頭部
１１ 反転部
１２ 上脚部
１３ 下脚部
１４ 凹部
１５ 凸部
１６ 空隙部
１８ 芯紐
２０ 最深部

Claims (5)

1. 線条ファスナーエレメント１を固定糸５によって、ファスナーテープ４の一側縁に固定する線条スライドファスナーにおいて、線条ファスナーエレメント１の上脚部１２の上面に固定糸５を収容する凹部１４を形成し、下脚部１３の下面から上脚部１２の上面までの高さ寸法を噛合頭部１０側、凹部１４部分、反転部１１側をそれぞれＨ１，Ｈ２，Ｈ３としたとき、Ｈ１＞Ｈ３＞Ｈ２の条件を備え、上脚部１２の下面に下脚部１３の上面へ向けて突出する凸部１５を形成し、上脚部１２の下面と下脚部１３の上面との間の高さ寸法を噛合頭部１０側、凸部１５部分をそれぞれＨ４，Ｈ５としたとき、Ｈ４＞Ｈ５の条件を備え、上脚部１２の上面に形成する凹部１４の噛合頭部１０側の端部から凹部１４の最深部２０までの幅寸法Ｗ２ａが、凹部１４の反転部１１側の端部から凹部１４の最深部２０までの幅寸法Ｗ２ｂよりも小さく形成し、上脚部１２の上面に形成する凹部１４の噛合頭部１０側の端部から凹部１４の最深部２０へ向かう斜面の勾配が、凹部１４の反転部１１側の端部から凹部１４の最深部２０へ向かう斜面の勾配よりも急勾配に形成してなる線条スライドファスナー。
2. 線条ファスナーエレメント１における上脚部１２の上面の噛合頭部１０側、凹部１４部分、反転部１１側の幅寸法をそれぞれＷ１，Ｗ２，Ｗ３としたとき、Ｗ１＞Ｗ２≧Ｗ３の条件を備えてなる請求項１記載の線条スライドファスナー。
3. 線条ファスナーエレメント１における上脚部１２と下脚部１３との間の空隙部１６に形成する噛合頭部１０側、凸部１５部分、反転部１１側の幅寸法をそれぞれＷ４，Ｗ５，Ｗ６としたとき、Ｗ５＞Ｗ４＞Ｗ６の条件を備えてなる請求項１記載の線条スライドファスナー。
4. 上脚部１２の上面に形成する凹部１４の噛合頭部１０側の端部から凹部１４の最深部２０までの深さ寸法ｄ１が、凹部１４の反転部１１側の端部から凹部１４の最深部２０までの深さ寸法ｄ２よりも大きく形成してなる請求項１記載の線条スライドファスナー。
5. 線条ファスナーエレメント１の上脚部１２と下脚部１３との間の空隙部１６において、凸部１５部分および反転部１１側に芯紐１８を挿通してなる請求項１記載の線条スライドファスナー。

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