JP4446401B2 - 耐震補強工法及び補強ピース - Google Patents
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Description
しかし、鉄筋コンクリート壁を増設する方法では開口部が壁面で覆われてしまうために、室内の採光に影響が出るなどの問題もある。
したがって、建物の室内を開放したい場合には鉄骨ブレースを増設する方法で耐震補強を行うことが一般的である。
特許文献1には、RC造駆体開口部の耐震補強方法として、開口部内に収まる四角形状の枠の上辺から剪断パネルを垂下させて設け、該剪断パネルを頂点とし、四角形状の枠の下辺部分が底辺となる三角形状をなすように、下辺から剪断パネルに向かって三角形の斜辺をなすブレースを設ける方法が示されている。
また、特許文献3には耐震補強の鉄骨ブレース増強工法として、開口部内に収まる四角形状の枠に上辺が底辺となるように、斜辺をなすブレースを取り付けた鉄骨ブレースを、開口部に組み入れるにあたり、枠と開口部の接触面に接着剤を注入して接着することを特徴とする方法が示されている。
(1)鉄骨ブレースによって開口部の一部が塞がれてしまうので、窓からの景観を損なうおそれがある。
既設建築物の補強を行う鉄骨ブレースは、基本的に開口部に対して三角形を構成するようにブレースを入れて構成されるのが一般的である。これは三角形状に補強することで枠が変形に強くなるためであるが、斜辺をなすブレースは適度な太さが必要となる。
しかし、開口部にこのような鉄骨ブレースを設けることで、特に斜辺をなすブレース部分によって開口部の視野が遮られることになる。
このように、斜辺をなすブレースを用いる補強は、開口部全面を塞ぐものではないので、開口は確保されるものの、内部から窓の外を見る際にはブレースによって景観が損なわれる結果になる。また、外観上も丈夫そうには見えるものの、美観の点では損なわれてしまうおそれがある。
既設建築物の補強を行う鉄骨ブレースは、開口部に対応させてその大きさが決定される
。しかしながら、ビルなどの補強が必要とされる構造物における開口部は、例えば6m×3m程度、或いはもっと大開口となっている場合が多く、鉄骨ブレースは数m単位の大きさを必要とすることが一般的である。
したがって、鉄骨ブレース自体の重量も、それに合わせて大きくなり、数トン規模の重量となることが多いため、人手で搬送することは難しい。
また、建築物の外部から鉄骨ブレースを取り付ける場合には、重機を用いれば比較的容易に取り付けが可能であるが、構造によっては内部からの取り付けが必要な場合もある。この場合、建築物の内部に鉄骨ブレースを搬入するには、鉄骨ブレースのサイズの開口部が必要となり、搬入口がない場合には搬入口を確保するために建物の一部を解体し、工事終了後、再び元通りに戻す必要がある。
このように、従来の特許文献1乃至特許文献3の方法では、(1)開口部の一部が塞がれ、窓からの景観を損なう、(2)開口部の床部分に段差が生じる等の問題があった。
(1)既設建築物の柱と梁から構成される柱梁フレームの、特に柱を補強ユニットにより耐震補強する耐震補強工法において、前記補強ユニットは、鋼材を骨としてその鋼材の周囲にコンクリートを巻くことで角柱状に構成されるものであり、前記既設建築物の内側であって、前記柱梁フレームの開口部間に配置される柱の側面を、一端が下側の梁の上面に当接し、他端が上側の梁の下面に当接する2つの補強ユニットにより狭持し、前記柱と前記補強ユニットとの間に、接合剤を充填することで、前記柱と前記補強ユニットを一体化することを特徴とする。
(2)既設建築物の柱と梁から構成される柱梁フレームの、特に柱を補強ユニットにより耐震補強する耐震補強工法において、前記補強ユニットは、2つの補強ピースを互いに端部で連結することで角柱状に構成されるものであり、前記各補強ピースは、鋼材を骨としてその鋼材の周囲にコンクリートを巻くことで形成され、前記既設建築物の内側であって、前記柱梁フレームの開口部間に配置される柱の側面を、一端が下側の梁の上面に当接し他端が上側の梁の下面に当接する2つの補強ユニットにより狭持し、前記柱と前記補強ユニットとの間に、接合剤を充填することで、前記柱と前記補強ユニットを一体化することを特徴とする。
よって、補強ユニットにより柱を狭持するため、補強ユニットが小型になり、安価で軽量で容易に室内空間に搬入することができ、室内空間の改造が不要となり、短期間の工期で工事を完了することができる。
また、柱梁フレームの開口部への影響を最小限にすることができ、かつ、外周の柱ばかりではなく室内の柱を、その室内空間への影響を最小限にして補強することができる。
よって、補強ピースを組み合わせて補強ユニットを組み立てる方式を採用することで、補強ユニットが小型化され、その可搬性を高めることができる。
また、補強ユニットを既存の柱の側面を狭持するように配置するので、構造体が跳ね出し床形式のタイプに有効であり、床部分に段差が生じることがない。また、室外ばかりではなく室内の柱の補強にも対応できる。
よって、L型補強ピースの一辺と梁の上面又は下面との当接面積が大きいため、既存柱の補強ばかりではなく、柱梁フレームの開口部角部の補強も可能となり、安価に補強ができる。
また、事前に既設建築物の補強すべき開口部の大きさを測定して、その大きさに合わせた補強ユニットを構成できる補強ピースを工場で製作し、該補強ピースを現場に搬入する方法を採ることで、一体の補強ユニットを搬送する場合よりも輸送コストを安くできる。
さらに、既設建築物内に搬入する場合には、開口部の規制を受けにくいので、専用の搬入口を作らなくても済む可能性がある。
これにより、複数の柱梁フレームに取り付けられた補強ユニットは、隣り合う補強ユニット同士で柱を挟み込む状態となるため、柱の補強ユニットで挟まれた部分では、柱と補強ユニットの単純累加以上の効果を得られることになる。これは、例えば上下左右に隣接するユニットがあれば更に効果を高めることが期待できる。
よって、小型で可搬性が良く必要な強度を出すことのできる安価な補強ユニットを構成することが可能である。
(1)補強ユニットをI型状あるいはL型状に構成して既存柱を狭持するように構成したので、開口部の減少が少なくなり、外観が大きく変わらずに補強でき、人の行き来や室内空間への影響を最小限にすることができる。また、四角枠状あるいは門型状の補強ユニットによる補強と比較して、開口部をより大きく取ることができる。
(2)補強ユニットをI型状あるいはL型状に構成することにより、四角枠状あるいは門
型状の補強ユニットによる補強と比較して、補強ピース(繊維コンクリートと鉄骨との組み合わせによるプレキャスト部材)が最小限となるので、施工時の騒音の低減や施工工期の短縮ができ、安価に耐震補強ができる。
(4)既存の柱梁フレームとI型状あるいはL型状の補強ユニットとは、エポキシ樹脂によって接合するため、在来のあと施工アンカーとスタッドによる接合と比較して、施工時の騒音や振動、粉塵が少なくなる。
ここで、図1は、既設の柱梁フレームに補強ユニットを施工した概略正面図であり、図2は、補強ユニットを施工した拡大正面図である。
なお、補強ユニット10は、上下に2分割せずに、一体で構成するものを使用することもできるが、本実施例では、2分割したもので説明する。
H型鋼製の垂直部材22の周りに巻かれているコンクリート23は一般的なSRC(Steel Reinforced Concrete)造に用いられるようなものでも良いし、繊維補強コンクリー
トのようなものでもよい。コンクリート23の上端は、垂直部材22の底部材21の反対側の他端から図5に示すように露出して接合部を形成している。
また、両方のI型補強ピース20の垂直部材22のコンクリート23から露出した先端部は、複数のボルト締結孔22bが設けられてボルト締結側となっている。一方、この両方のボルト締結側を締結するためのボルト挿通孔が設けられたプレート22aが別途準備される。
すなわち、垂直部材22に底部材21を溶接し、ボルト締結孔22bを穿設して加工さ
れた鋼材を型枠内に配置し、型枠内にコンクリート23を流し込んで固化させ、固化後、型枠から取り出してI型補強ピース20を得る。
なお、I型補強ピース20、20は同一寸法で多用される可能性があれば予め同じものを製作しておいてもよい。
なお、I型補強ピース20、20の連結方法としては、溶接や接着なども考えられ、その様な接合方法を否定するものではないが、耐震補強という目的を前提と考えれば、補強ユニット10は機械的に接合する方が望ましい。溶接等を行う場合は、現地で溶接機や電源を必要とするため、余分にコストがかかるなどの問題もあるため、ボルト等で容易に締結できる方がメリットは大きい。
そして、I型補強ピース20、20のコンクリート23から露出した繊維補強コンクリート追加部18の部分を形成する。すなわち、繊維補強コンクリート追加部18の周囲を型枠で覆い、その中に繊維補強コンクリートを流し込んで硬化させればよい。繊維補強コンクリート追加部18の部分は、無収縮モルタルで構成しても良いが、本実施例では、靱性グラウトを使用している。
また、図示は省略したが、柱152が室内空間に存するものの場合には、該柱152の4面の開口部内面15aに補強ユニット10を取り付けて該柱152を補強することができる。
まず、補強ユニット10を既存建築物の柱152に取り付けて、柱152を補強するので、既設建築物の外周の柱梁フレームの開口部だけではなく、室内に配置された柱の四方に補強ユニットを取り付けてこの柱を補強することができる。
このとき、室内空間を仕切ったり空間の高さを小さくしたりすることがなく、室内空間の使い勝手に大きな影響を与えずに効率よく耐震補強をすることができる。
しかも、小型になった補強ユニット10をI型補強ピース20の単位に分割することで、数トン単位の重量をもつ部材が、二百キログラム台まで重量を軽減することとなるので、可搬性の向上に効果がある。
I型補強ピース20の重量が二百キログラム台となれば、人手での搬入が容易にでき、台車等にも乗りやすいサイズとなるため、可搬性が向上する。更に、エレベータに入るサイズにできるため、補強ユニット10を搬入するためにわざわざ搬入口を設ける必要がなくなるというメリットがある。
また、長さも短くなるために通路を搬送しなければならない場合も、制限となるケースは少なくなるものと考えられる。
また、短時間での組み立てが可能であり、施工時間を短くする効果もある。補強ユニット10の垂直部材22に設けたボルト締結孔22bにプレート22aをあてがって締め付けるので、強度的に不足する心配が無く、地震時の補強においては、柱や梁の接合部に特に力がかかることになるが、I型補強ピース20が底部材21で梁151に固定されていることによって、梁151と柱152の両者を補強することとなるため、強度的に不足することはない。
しかしながら、補強部材が開口部を斜めに横切る場合よりも、補強ユニット10の枠が多少太くなる場合の方が、視覚的に圧迫感を与えないこととなるため、結果的には窓からの景観を損ないにくい。また、既設建築物の外側に補強ユニット10を施工する場合でも、内側に施工する場合でも、筋交いやトラス形状となる場合よりも外観的にも、耐震補強しているとわかりにくくなるため、外観を損なうというおそれもない。
すなわち、既設建築物の柱152と梁151から構成される柱梁フレーム15を耐震補強する耐震補強工法において、前記柱梁フレーム15の開口部間に配置される柱152の前記開口部側の側面15aを、前記梁151の上面又は下面に当接する底部材21と、該底部材21から直角に立ち上がる垂直部材22と、垂直部材22を埋め巻くように角柱状に形成されたコンクリート23とからなるI型補強ピース20の自由端同士が連結されるように上下の前記梁151間に挿入して一体化された補強ユニット10により狭持したことを特徴とするので、柱梁フレームの開口部側の柱の側面を補強ピースを組み合わせて補強ユニットを組み立てる方式を採用することで、補強ユニットを小型化し、既設建築物の外観や室内空間に与える影響を少なくして耐震補強ができ、かつ、補強ユニットの可搬性を高めることができる。
補強ユニット110は、図7に示すように、直交する2辺で構成されるL型補強ピース30の、一辺が既存の柱梁フレーム15の梁151の上面又は下面に当接し、他の一辺が柱梁フレーム15の開口部間に配置される柱152の、開口部内面15aに接合剤50を充填して接続され、L型補強ピース30、30の自由端同士が連結されるように上下の前記梁151、151間に挿入され、コ字型状に構成されている、鉄骨にコンクリートを巻いた補強部材である。
また、一方の柱152に当接する側のH形鋼部材31の端部には、第1実施例のものと同じようにボルト締結孔22bが穿設されており、これにボルト挿通孔が設けられたプレート22aをあてがい、ボルト挿通孔からボルト締結孔22bに高張力ボルトを挿通して連結する。
この第2の実施例の補強ユニット110を用いた耐震補強工法及び補強ピースによれば、以下のような優れた作用、効果が得られる。
すなわち、既設建築物の柱152と梁151から構成される柱梁フレーム15の、特に柱を耐震補強する耐震補強工法において、前記柱梁フレーム15の開口部間に配置される柱152の前記開口部側の側面15aを、前記梁151の上面又は下面に当接するH形鋼部材31と、該H形鋼部材31から直角に立ち上がるH形鋼部材32と、H形鋼部材31、32を埋め巻くように角柱状に形成されたコンクリート33とからなるL型補強ピース30の自由端同士が連結されるように上下の前記梁151間に挿入して一体化された補強ユニット110により狭持したことを特徴とするので、梁151との接触面積が第1の実施例の接触面積より大きくできるので、第1の実施例の効果に加えて、さらに梁151と柱152との角部の補強ができる。
例えば、補強ユニット10、110に使用するコンクリートも、高強度繊維を混ぜた高靱性繊維補強セメント複合材料のような部材を使用することを妨げない。さらに、コンクリートで巻かずに鉄骨のみあるいは軽量鉄骨のみで構成しても良い。
また、補強ユニット10の分割数を本実施例では2としているが、直線部分を分割して3分割や4分割にすることを妨げない。
この場合、補強ユニット10、110と柱梁フレーム15のクリアランスの管理が問題となってくるが、例えば無収縮モルタルの板を差し込んだり、鋼材、メッシュ材を差し込んだりしてクリアランスを管理し、接着剤を用いることで、強度を確保することが可能であると考えられる。
また、前記実施例1と実施例2における接合部分と、補強ピースの組み立て順序の組み合わせは、前記実施形態に限定されるものではない。
15 柱梁フレーム
15a 開口部内面
151 既存梁
152 既存柱
18 無収縮モルタル追加部
20 I型補強ピース
21 底部材
22 垂直部材
22a プレート
22b ボルト締結孔
23 コンクリート
30 L型補強ピース
31、32 H形鋼部材
33 コンクリート
42 垂直部材
50 接合剤
Claims (7)
- 既設建築物の柱と梁から構成される柱梁フレームの、特に柱を補強ユニットにより耐震補強する耐震補強工法において、
前記補強ユニットは、鋼材を骨としてその鋼材の周囲にコンクリートを巻くことで角柱状に構成されるものであり、
前記既設建築物の内側であって、前記柱梁フレームの開口部間に配置される柱の側面を、一端が下側の梁の上面に当接し、他端が上側の梁の下面に当接する2つの補強ユニットにより狭持し、
前記柱と前記補強ユニットとの間に、接合剤を充填することで、前記柱と前記補強ユニットを一体化すること、
前記補強ユニットは、前記下側の梁の上面と当接する一端側底部材と、前記上側の梁の下面と当接する他端側底部材と、前記一端側底部材と前記他端側底部材から直角に立上がる、前記鋼材からなる垂直部材とを備え、前記一端側底部材はボルトにより前記下側の梁の上面に固定され、前記他端側底部材はボルトにより前記上側の梁の下面に固定されること、
を特徴とする耐震補強工法。 - 既設建築物の柱と梁から構成される柱梁フレームの、特に柱を補強ユニットにより耐震補強する耐震補強工法において、
前記補強ユニットは、2つの補強ピースを互いに端部で連結することで角柱状に構成されるものであり、前記各補強ピースは、鋼材を骨としてその鋼材の周囲にコンクリートを巻くことで形成され、
前記既設建築物の内側であって、前記柱梁フレームの開口部間に配置される柱の側面を、一端が下側の梁の上面に当接し他端が上側の梁の下面に当接する2つの補強ユニットにより狭持し、
前記柱と前記補強ユニットとの間に、接合剤を充填することで、前記柱と前記補強ユニットを一体化すること、
前記補強ユニットは、前記下側の梁の上面または前記上側の梁の下面と当接する一対の底部材と、前記一対の底部材から直角に立上がる、前記鋼材からなる垂直部材とを備え、前記一対の底部材は、ボルトにより前記下側の梁の上面及び前記上側の梁の下面に固定されること、
を特徴とする耐震補強工法。 - 請求項2に記載される耐震補強工法において、
前記補強ユニットは、前記下側の梁の上面又は前記上側の梁の下面に当接する底部材と、該底部材から直角に立ち上がる垂直部材とからなる2つのI型補強ピースを含み、該I
型補強ピースの自由端同士が連結されるように前記下側の梁と前記上側の梁との間に挿入したことを特徴とする耐震補強工法。 - 請求項2に記載される耐震補強工法において、
前記補強ユニットは、直交する2辺で構成される2つのL型補強ピースを含み、前記2つのL型補強ピースは、一辺が前記下側の梁の上面又は前記上側の梁の下面に当接し、他の一辺の先端同士が互いに連結されるように前記下側の梁と前記上側の梁との間に挿入したことを特徴とする耐震補強工法。 - 請求項3又は請求項4のいずれかに記載される耐震補強工法において、
前記I型補強ピース又は前記L型補強ピースには、他の前記I型補強ピース又は前記L型補強ピースと接合する接合部が設けられるとともに、
前記接合部は、前記I型補強ピース又は前記L型補強ピースの先端にボルト締結孔が設けられたボルト締結側と、ボルト挿通孔が設けられたプレートよりなり、
ボルト締結側を備える前記I型補強ピースあるいはL型補強ピースに前記プレートをあてがい、ボルトで締結することで、前記補強ユニットとして前記I型補強ピース同士あるいは前記L型補強ピース同士が一体化される
ことを特徴とする耐震補強工法。 - 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載される耐震補強工法において、
前記既設建築物の前記柱及び前記梁の太さよりも、前記補強ユニットの太さが細く形成されることを特徴とする耐震補強工法。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載される耐震補強工法に用いることを特徴とする補強ピース。
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