JP4446211B2 - 高圧気体貯蔵施設および高圧気体貯蔵施設における漏洩防止方法 - Google Patents
高圧気体貯蔵施設および高圧気体貯蔵施設における漏洩防止方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤内を掘削して空洞を形成し、この空洞の内面を気密材により覆うことにより、気密材の内部を、天然ガスなどの高圧気体を貯蔵するためのタンクとして形成した高圧気体貯蔵施設およびこの施設に適用される高圧気体の漏洩防止方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、岩盤内に空洞を形成し、この空洞内に天然ガスなどの高圧気体を貯蔵するタンクとして利用する施設が、近年実現している。この種の施設においては、空洞の内面を気密ライニング材により覆うことにより、貯槽空洞を気密構造としているが、ライニング材の局所的な破断などの原因により貯蔵ガスの漏洩が発生した場合に、漏洩ガスの地盤内への拡散を抑制し、周辺環境への影響を極力抑えることが重要となる。
【0003】
このような漏洩ガスの拡散防止対策としては、図3,4に示す岩盤R内に形成された貯蔵施設1のように、タンク2の周囲に排気孔3,3,…を設置するとともに、これら排気孔3,3,…に対してポンプ4を接続しておき、タンク2内の天然ガスGが漏洩した際には、これら排気孔3,3,…内を減圧して、漏洩ガスを集気し、岩盤R内への漏洩を防止する方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の方法によれば、排気孔3,3,…をタンク2の周囲に密に配置することにより、漏洩ガスをある程度集気することが可能であると考えられるが、漏洩の進行が急激であったり、漏洩の検知の遅れ等の原因で、万一、排気孔3,3,…の間を抜けて貯蔵施設1の外側の岩盤Rに漏洩ガスが到達した場合、その拡散を抑制するのが困難になる。
【0005】
また、漏気の発生の有無に関わらず、常時ポンプ4を駆動して排水を行うことにより、漏洩ガスの岩盤R内への拡散を抑制することも可能であるが、この場合には、施設のランニングコストが増大するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、タンクから漏洩した貯蔵気体の拡散を、低コストで確実に防止することができる高圧気体貯蔵施設および高圧気体貯蔵施設における漏洩防止方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。すなわち、請求項1記載の高圧気体貯蔵施設は、地盤内を掘削して空洞を形成し、該空洞の内面を気密材により覆うことにより、該気密材の内部を、高圧気体を貯蔵するためのタンクとして形成した高圧気体貯蔵施設であって、前記地盤内における前記タンクを囲む位置に注水孔が配置され、前記注水孔と前記タンクとの間に、排水孔が、前記気密材の外面の周囲に位置させて設けられ、前記注水孔および排水孔は、ともに、前記地盤に対して連通する構成とされ、なおかつ、前記注水孔および排水孔は、ポンプを介して接続されて、前記高圧気体が漏洩した際に、前記ポンプによって前記排水孔から吸い上げた水を前記注水孔を通じて地盤内に注水することで地盤内に前記注水孔から前記排水孔に至る水流を発生させるように構成されていることを特徴としている。
【0008】
このような構成としたことにより、排水孔からポンプにより吸い上げた水を注水孔を通じて地盤内に注水することで、注水孔から排水孔へ至る水流を地盤内に形成することができる。これにより、タンクから漏洩した高圧気体が、排水孔の間を通って外側の地盤に達した場合に、地下水流により高圧気体を排水孔へ向かって押し戻すことができる。
【0009】
請求項2記載の高圧気体貯蔵施設は、請求項1記載の高圧気体貯蔵施設であって、
前記タンクの上方の地盤内に作業坑道が設けられ、
複数の前記注水孔が、前記作業坑道内の所定箇所から前記タンクの側方を囲む位置に至るように、平面視した場合に放射状に設けられていることを特徴としている。
【0010】
このような構成としたことにより、複数の注水孔に対して作業坑道内の所定箇所から水を同時に供給することができる。
【0011】
請求項3記載の高圧気体貯蔵施設の漏洩防止方法は、地盤内を掘削して空洞を形成し、該空洞の内面を気密材により覆うことにより、該気密材の内部を高圧気体を貯蔵するためのタンクとして形成した高圧気体貯蔵施設において適用されて、前記高圧気体の漏洩を防止するための方法であって、
前記地盤内における前記タンクを囲む位置に注水孔を配置するとともに、前記注水孔と前記タンクとの間に、排水孔を、前記気密材の外面の周囲に位置させて設け、
これら注水孔および排水孔を前記地盤に連通させた構成としておき、
前記高圧気体が漏洩した際には、前記注水孔に注水を行うとともに、前記排水孔から水を排水することにより、前記地盤内において前記注水孔から前記排水孔に至る水流を発生させることを特徴としている。
【0012】
このような構成により、注水孔から排水孔へ向けて発生させた水流によって、地盤内に拡散した漏洩ガスを排水孔へ押し戻すことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を、図面に基づいて説明する。
図1は、地中に形成された貯蔵施設11の概略構成を模式的に示す立断面図、図2は、同平面図である。この貯蔵施設11は、岩盤(地盤)R内に天然ガス(高圧気体)Gを貯蔵するためのものであり、岩盤R内を掘削して空洞12を形成し、この空洞12の内面を気密材13により覆うとともに、気密材13の内部を天然ガスを貯蔵するためのタンク14として形成したものである。
【0014】
また、この貯蔵施設11においては、タンク14の上方の岩盤Rが掘削されて、作業坑道15が形成されている。作業坑道15の底部15aからは、タンク14の側方の岩盤Rに至るように、複数の注水ボーリング孔(注水孔)16,16,…が削孔されている。この注水ボーリング孔16,16,…は、ボーリングにより形成された裸孔であり、作業坑道15の底部15aから斜め下方に向けて削孔されるとともに、平面視した場合に、作業坑道15の所定箇所を中心とした放射状に設けられている。これにより、注水ボーリング孔16,16,…は、全体として、タンク14を覆う傘型状に形成されている。
【0015】
また注水ボーリング孔16,16,…と、気密材13の外面との間には、排水孔17,17,…が設けられている。排水孔17,17,…は、気密材13と岩盤Rとの間に充填された裏込めコンクリートCの外側に設けられて、気密材13の外面に沿った状態で形成されている。排水孔17,17,…は、有孔管により形成されたものであり、図示しない孔部を通じて岩盤R内と連通する構成となっている。
【0016】
また、排水孔17,17,…は、貯蔵施設11にアクセスするための坑道18内に配置された排水管19の一端部19aに接続されている。この排水管19の他端部19bは、水位計20に対して接続されるとともに、ポンプPを介して、供給管22の一端部22aに対して接続されている。
【0017】
供給管22は、坑道18から作業坑道15に至るように敷設されたものであり、その一端部22aに水位計20が接続されるとともに、その他端部22bが作業坑道15内の注水ボーリング孔16,16,…の基端部16a,16a,…に対して接続された構成となっている。
【0018】
このような構成の貯蔵施設11は、タンク14から天然ガスGの漏洩があった場合に、以下のように機能する。
すなわち、気密材13の局所的な破断等により、図1に示すように漏洩箇所24が発生した場合に、ポンプPを駆動することにより、排水孔17,17,…内を減圧し、これにより、漏洩した天然ガスGを排水孔17,17,…および排水管19を通じて集気することができる。この場合、集気した天然ガスGは図示しない回収手段によって回収するようにする。
【0019】
また、ポンプPにより取水した地下水を供給管22を通じて注水ボーリング孔16,16,…に供給するようにすれば、図1および図2に示すように、岩盤R内において、注水ボーリング孔16,16,…から排水孔17,17,…に至るように、図中矢印で示すような地下水流25を発生させることができる。
【0020】
これにより、タンク14から漏洩した天然ガスGが、万一、排水孔17,17,…の間を通って、その外側の岩盤Rに達した場合にも、発生させた地下水流25により天然ガスGを排水孔17,17,…に向けて押し戻し、排水孔17,17,…および排水管19を介して回収することができ、これにより、天然ガスGの岩盤R内への拡散を防止することができる。
【0021】
以上述べた貯蔵施設11においては、岩盤R内のタンク14を囲む位置に注水ボーリング孔16,16,…が配置され、排水孔17,17,…が、注水ボーリング孔16,16,…とタンク14との間に、気密材13の外面の周囲に位置させて設けられるとともに、注水ボーリング孔16,16,…および排水孔17,17,…がともに、岩盤Rに対して連通する構成とされ、なおかつ、注水ボーリング孔16,16,…および排水孔17,17,…がポンプPを介して互いに接続された構成とされていることから、上述のように、排水孔17からポンプPにより吸い上げた水を注水ボーリング16孔を通じて岩盤R内に注水し、岩盤R内に地下水流25を発生させ、この地下水流25により、タンク14から漏洩した天然ガスGを排水孔17へ押し戻すことができる。これにより、従来と異なり、漏洩ガスの地盤内への拡散を確実に防止するために、タンクの周囲に排気孔を密に配置したり、あるいは、排気孔を減圧するためのポンプを常時稼働させる必要が無く、低コストで確実に天然ガスGの漏洩を防止することができ、なおかつ、安全性が高い。
【0022】
また、上述の貯蔵施設11においては、タンク14の上方の岩盤R内に作業坑道15が設けられ、複数の注水ボーリング孔16,16,…が、作業坑道15内の所定箇所からタンク14の側方を囲む位置に至るように、平面視した場合に放射状に設けられているために、複数の注水ボーリング孔16,16,…の基端部16a,16a,…に対して供給管22を接続しておくことにより、注水ボーリング孔16,16,…にポンプPから水を同時に供給することができる。これにより、タンク14の周囲に互いに独立した注水ボーリング孔を設けた場合に比較して、ポンプの数を減少させることができるとともに、供給管22および掘削すべき注水ボーリング孔の総延長を短くすることができ、必要な設備を低コストで実現することができる。
【0023】
また、上述の貯蔵施設11における天然ガスGの漏洩防止方法は、岩盤Rに対して、注水ボーリング孔16,16,…を通じて注水するとともに、排水孔17,17,…から排水を行うことにより、注水ボーリング孔16,16,…から排水孔17,17,…へ向けて地下水流25を発生させる構成となっているために、タンク14から漏洩した天然ガスGが、万一、排水孔17,17,…の間を通って、その外側の岩盤Rに達した場合にも、発生させた地下水流25により天然ガスGを排水孔17,17,…に向けて押し戻すことが可能となり、従来に比較して、より確実に天然ガスGの岩盤R内への拡散を防止することができる。
【0024】
なお、上記実施の形態において、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で他の構成を採用するようにしても良い。
例えば、上記実施の形態において、貯蔵施設11は、天然ガスGを貯蔵するための施設とされていたが、これに限らず、例えば、プロパンガスを貯蔵する施設であってもよい。
【0025】
また、上記実施の形態における排水孔17,17,…およびポンプPは、貯蔵施設11の施工時、開放点検時に、外水圧を低減するための排水設備と兼用することができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る高圧気体貯蔵施設においては、地盤内のタンクを囲む位置に注水孔が配置され、排水孔が、注水孔とタンクとの間に、気密材の外面の周囲に位置させて設けられるとともに、注水孔および排水孔がともに地盤に対して連通する構成とされ、なおかつ、注水孔および排水孔がポンプを介して互いに接続された構成とされていることから、排水孔からポンプにより吸い上げた水を注水孔を通じて地盤内に注水し、地盤内に地下水流を発生させることができ、この地下水流により、タンクから漏洩した高圧気体を排水孔へ押し戻すことができる。これにより、従来と異なり、漏洩ガスの地盤内への拡散を確実に防止するために、タンクの周囲に排気孔を密に配置したり、あるいは、排気孔を減圧するためのポンプを常時稼働させる必要が無く、低コストで確実に高圧気体の漏洩を防止することができ、なおかつ、安全性にも優れている。
【0027】
請求項2に係る高圧気体貯蔵施設においては、タンクの上方の地盤内に作業坑道が設けられるとともに、複数の注水孔が、作業坑道内の所定箇所からタンクの側方を囲む位置に至るように、平面視した場合に放射状に設けられているために、作業坑道内の所定箇所から複数の注水孔に同時に水を供給することができる。これにより、タンクの周囲に互いに独立した注水孔を設けた場合に比較して、ポンプの数を減少させることができるとともに、必要な配管の総延長を短くすることができ、必要な設備を低コストで実現することができる。
【0028】
請求項3に係る高圧気体貯蔵施設の漏洩防止方法は、地盤に対して注水孔を通じて注水するとともに、排水孔から排水を行うことにより、注水孔から排水孔へ向けて地盤内に水流を発生させる構成となっているために、タンクから漏洩した高圧気体が、万一、排水孔の間を通って、その外側の地盤に達した場合にも、発生させた水流により高圧気体を排水孔に向けて押し戻すことが可能となり、従来に比較して、より確実に高圧気体の地盤内への拡散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1 】 本発明の実施の形態の一例を示す図であって、天然ガスの貯蔵施設の立断面図である。
【図2 】 同、平面図である。
【図3 】 従来の天然ガスの貯蔵施設の立断面図である。
【図4 】 同、平面図である。
【符号の説明】
11 貯蔵施設
12 空洞
13 気密材
14 タンク
15 作業坑道
16 注水ボーリング孔(注水孔)
17 排水孔
G 天然ガス
P ポンプ
R 岩盤
Claims (3)
- 地盤内を掘削して空洞を形成し、該空洞の内面を気密材により覆うことにより、該気密材の内部を、高圧気体を貯蔵するためのタンクとして形成した高圧気体貯蔵施設であって、
前記地盤内における前記タンクを囲む位置に注水孔が配置され、
前記注水孔と前記タンクとの間に、排水孔が、前記気密材の外面の周囲に位置させて設けられ、
前記注水孔および排水孔は、ともに、前記地盤に対して連通する構成とされ、なおかつ、前記注水孔および排水孔は、ポンプを介して接続されて、
前記高圧気体が漏洩した際に、前記ポンプによって前記排水孔から吸い上げた水を前記注水孔を通じて地盤内に注水することで地盤内に前記注水孔から前記排水孔に至る水流を発生させるように構成されていることを特徴とする高圧気体貯蔵施設。 - 請求項1記載の高圧気体貯蔵施設であって、
前記タンクの上方の地盤内に作業坑道が設けられ、複数の前記注水孔が、前記作業坑道内の所定箇所から前記タンクの側方を囲む位置に至るように、平面視した場合に放射状に設けられていることを特徴とする高圧気体貯蔵施設。 - 地盤内を掘削して空洞を形成し、該空洞の内面を気密材により覆うことにより、該気密材の内部を高圧気体を貯蔵するためのタンクとして形成した高圧気体貯蔵施設において適用されて、前記高圧気体の漏洩を防止するための方法であって、
前記地盤内における前記タンクを囲む位置に注水孔を配置するとともに、前記注水孔と前記タンクとの間に、排水孔を、前記気密材の外面の周囲に位置させて設け、これら注水孔および排水孔を前記地盤に連通させた構成としておき、前記高圧気体が漏洩した際には、前記注水孔に注水を行うとともに、前記排水孔から水を排水することにより、前記地盤内において前記注水孔から前記排水孔に至る水流を発生させることを特徴とする高圧気体貯蔵施設の漏洩防止方法。
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