JP3877816B2 - ニューマチックケーソンの沈下方法 - Google Patents

ニューマチックケーソンの沈下方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケーソン作業室の気圧を下げることのできるニューマチックケーソンの沈下方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ニューマチックケーソンの下部には、高気圧化の作業室がある。圧気された作業室内での作業員による作業は苦痛を強いられ、かつ潜函病のおそれがあるため、最近、遠隔操作による掘削機を用いて無人化によって掘削することが行われている。
【0003】
しかしながら、例えば、点検とかの何らかの事情で作業員が作業室に入ることがある。また、岩・固結地盤などでは、掘削を無人化することなく作業室内に作業員が入り、掘削作業を行った方がよい場合もある。この場合、作業室内の圧気は極力低いことが望ましい。すなわち、作業室内が低気圧の方が作業時間を多くとれるため、工期を短縮でき、また、作業員の健康上の観点からも望ましい。
また、高気圧化の作業室内の圧気が外部に漏れ、周辺の地盤を乱すこともある。
この意味でも作業室内の圧気は低いことが望ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記のことに鑑み提案されたもので、作業室の気圧の低減を図ることにより、作業員の安全性を向上させ、かつ掘削作業時間の確保をも図り経済的に施工でき、ケーソン躯体も円滑に沈下させ得るニューマチックケーソンの沈下方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、ニューマチックケーソン1の沈下に先立って、予めケーソン刃口3のほぼ直下の地盤、またはニューマチックケーソン1の外側すれすれの地盤を所定の沈下深さに削孔し、この削孔部分にモルタルの如き低強度の充填物を充填して止水壁8を形成し、かつケーソン刃口3の内側であって作業室5内の地山Gの周囲の地盤にディープウエル用の孔9a、9b、9c、9d、9e、9fを複数削孔し、ニューマチックケーソン1を沈下させる場合、前記ディープウエル用の孔9a、9b、9c、9d、9e、9f内の地下水Wをディープウエル用水中ポンプ10を介し外部に排水させ作業室5下方の地盤内の地下水Wを低減させニューマチックケーソン1を沈下させてゆくことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のニューマチックケーソンの沈下方法において、前記ディープウエル用水中ポンプ(10)にディープウエル用ホース(13)の一端が連結され、ディープウエル用ホース(13)の他端は前記作業室(5)内に設けられた少なくとも一以上の水槽内に挿入され、水槽内には排出用水中ポンプ(16)が設けられたことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施例に係るニューマチックケーソンの沈下方法を説明する断面図が示されている。
本実施例は、軟弱地盤が比較的浅い場合に好適な実施例である。
【0007】
図中1は断面が円形または矩形などのニューマチックケーソンであり、この下方にはニューマチックケーソン1の側壁2の刃口3と、ニューマチックケーソン1の上下を仕切るスラブ4とによって、作業室5が区画形成されている。この作業室5内には、周知の手段によって大気圧側からポンプを介し圧気が送られるようになっている。
【0008】
作業室5内には、スラブ4の天井に設けられた走行レールを介して遠隔操作により移動自在な掘削機(いずれも図示せず)が設けられる。スラブ4の略中央部には、略円形のスラブ開口部4Aが形成され、このスラブ開口部4Aには、ニューマチックケーソン1内に設けられたシャフト6が接続され、このシャフト6の上部には、ロック24が取り付けられている。なお、シャフト6は、ニューマチックケーソン1の沈下に伴って順次継ぎ足されるものである。
【0009】
また、図中、8はニューマチックケーソン1と同軸的に設けられる難透水性の止水壁であり、モルタルの如き低強度の部材によって形成される。この止水壁8は、その底部8Aが、図2に示す最終掘削時における刃口3の下端部よりも下方に位置した状態に形成される。ニューマチックケーソン1の側壁2と止水壁8との間には、図1のA部を拡大して示す図4に示す如く、間隙Sに地下水W、あるいは必要に応じて注入された滑り材がある。
【0010】
さらに、作業室5内の地山Gの周囲の適位置には、図1ないし図3に示す如く、ディープウエル用の孔9a〜9fが形成される。ディープウエル用の孔9a〜9fは、ほぼ鉛直方向へ向けて形成され、その底部が止水壁8の底部8Aと略同一深さ位置となるように形成される。これらのディープウエル用の孔9a〜9f内の各々にディープウエル用水中ポンプ10が設けられる。すなわち、図1に示す如く、スラブ4の下面には、吊フック11が取り付けられ、この吊フック11に一端が取り付けられた吊ワイヤー12の他端部にディープウエル用水中ポンプ10が取り付けられる。
【0011】
なお、ディープウエル用の孔9a〜9fの位置としては、ニューマチックケーソン1の断面形状が矩形の場合、図3に示すように、各長辺に沿ってその略中央部に1つ、両端部にそれぞれ一つづつ設け、バランスを図り、地山G内に存在する地下水をディープウエル用の孔9a〜9fに導き、後述のようにディープウエル用水中ポンプ10を介し汲み上げ可能としている。
【0012】
なお、ディープウエル用の孔の数、位置としては、ニューマチックケーソン1が長方形の矩形断面の場合、この実施例のようにすると、少ない孔掘削作業により、ディープウエル用の孔9a〜9fを介し効率良く地下水Wを汲み上げることができるが、必ずしも図示の態様に限定されるものではなく、ニューマチックケーソン1の形状、規模応じ、随時決定される。
【0013】
しかして、後述する如く、地山Gの掘削に伴ってニューマチックケーソン1がその自重により、沈下して行くと、ニューマチックケーソン1と共にディープウエル用水中ポンプ10もディープウエル用の孔9a〜9fの奥側へ移動し、ディープウエル用の孔9a〜9f内の奥側の地下水Wが汲み上げられるようになっている。
【0014】
また、ディープウエル用水中ポンプ10に、ディープウエル用ホース13の一端が連結され、ディープウエル用ホース13の他端部には、作業室5内において例えば、2箇所に設けた水槽14、15内に挿入される。これら水槽14、15内にも、排出用水中ポンプ16が設けられる。
【0015】
すなわち、水槽14、15の位置としては、例えば、一方の長辺側に設けられた一対のディープウエル用の孔9a、9bのほぼ中央部に一つ設けるとすると、他方の長辺側において、いわゆる略対角線上の位置に他の一つを設け、バランスを図ると共に掘削作業、土砂排出作業に極力支障を来たさないよう配慮するのが好ましい。そして、この一方の水槽14にディープウエル用の孔9a〜9c内の各々のディープウエル用水中ポンプ10のディープウエル用ホース13を案内し、かつ他方の水槽15にディープウエル用の孔9d〜9f内の各々のディープウエル用水中ポンプ10のディープウエル用ホース13を案内し、貯水する。
【0016】
排出用水中ポンプ16には、その排水用ホース17に逆止弁18を介して排水用配管19の一端部を連結し、この排水用配管19は、図1及び図2に示すスラブ4を気密状態で貫通させ、ニューマチックケーソン1内をその側壁2の内壁面に沿って延出させ、さらに地上側に設けられた放水池20まで延出させる。
【0017】
各水槽14、15内には、その上端部近傍に排出用リミットスイッチ21を設け、この排出用リミットスイッチ21は、各水槽14、15内の水位が各水層14、15の上端部近傍に位置するときに、オンするように構成する。そして、前記排出用水中ポンプ16は、排出用リミットスイッチ21がオンしたときに、作動するようにする。これにより、水槽14、15内に供給された地下水Wをオーバーフローすることなく、排水用配管19を介して放水池20へ排出できる。なお、特に図示しないが、ニューマチックケーソン1には、掘削機搬入・搬出用のシャフトや、作業員用のシャフト、ロック等が設けられている。
【0018】
次に、本発明に係るニューマチックケーソンの沈下方法について説明する。
ニューマチックケーソン1の設置に先立って、その刃口3付近の軟弱地盤22を削孔機を用い、例えば、連続工法により削孔し、止水壁用孔7を予め形成する。そして、この止水壁用孔7内に低強度のモルタル、またはソイルモルタルのような充填物を充填し難透水性の止水壁8を形成する。
【0019】
これとほぼ同時に、あるいはこれと前後して、ディープウエル用の孔9a〜9fを形成する。このように、予め止水壁8、ディープウエル用の孔9a〜9fを形成した後、軟弱地盤22にニューマチックケーソン1を設置する。この設置にあたっては、刃口3の下端部が止水壁8の肉厚方向略中央部で当接するようにニューマチックケーソン1を設置する。しかる後、作業室5内に、掘削機や、ディープウエル用水中ポンプ10など、掘削作業などに必要とされる各種の機器、設備などを周知の手段によって前記掘削機搬入・搬出用のシャフトを介して搬入する。
【0020】
次いで、作業室5内を圧気状態として、作業室5内の地山Gを掘削機を用いて掘削する。この掘削作業にあたっては、刃口3付近の止水壁8も掘削機によって破砕する。この止水壁8は上記の如く、モルタルの如き低強度の材料が用いられているため、容易に破砕でき、掘削作業に支障を来すことはない。
【0021】
しかして、作業室5内の地山Gを掘削する場合、ディープウエル用の孔9a〜9f内に地下水Wが流入しているため、その地下水Wをディープウエル用水中ポンプ16を用いて各水槽14、15へと汲み上げる。各水槽14、15に汲み上げられた地下水Wは、排出用水中ポンプ10によって、排水用配管19を介して地上の放水池20へ排出する。
従来は作業室5内の地山Gから地下水Wが溢出するのを抑えるために高気圧の圧気をかけていたが、本実施例では上記の如く、ディープウエル用水中ポンプ10で積極的に地下水Wを除去しているため、作業室5内の圧気を低下させることができる。
【0022】
したがって、作業員の負担を軽減できるため、作業時間を長くとることができ、効率良く掘削作業を行うことができ、ひいては工期の短縮を図ることができ、工費を節約することができる。また、上記の如く、作業室5内の圧気を低下させることができるので、作業員が潜函病になるのを防止でき、安全性が向上する。掘削の進行に伴って掘削土砂はシャフト6内を昇降自在な土砂バケット23により、シャフト6を介してロック24より外部に排出する。ニューマチックケーソン1は、その自重により、徐々に沈下してゆく。
【0023】
この場合、ニューマチックケーソン1の周囲に、上記の如く低強度の材料で形成された止水壁8があり、この止水壁8が言わば沈下のガイド壁の作用をなすと共に、止水壁8を容易かつ均一に掘削できるので、図1の状態から図2に示すようにニューマチックケーソン1を傾くことなく、しかも、速やかに沈下させることができる。
【0024】
また、上記の如く、間隙Sに地下水あるいは必要に応じ注入された滑り材があり(図4参照)、この滑り材は止水壁8があるため、逃げることがないので、ニューマチックケーソン1の沈下の際に摩擦が軽減され、ニューマチックケーソン1を速やかに沈下させることができる。
なお、岩・固結地盤25に節理が少なく、間隙もなく、止水壁8の造成状態がよい場合では、少量の地下水の揚水で地下水位の低下が図れ、作業室5内の圧気を低く抑えることができる。
【0025】
図5には、本発明の他の実施例が示されている。本実施例は、軟弱地盤22が深い場合の実施例である。なお、本実施例において、前記実施例と同様の構成のものについては同一符号を付してその説明を省略する。
本実施例では、図5に示す如く、軟弱地盤22が深く形成されているため、軟弱地盤22からの作業室5内への地下水の浸入を確実に抑えるために、止水壁8の肉厚を刃口3の外側へ大きくとってある。すなわち、止水壁8自体の肉厚は図1の実施例のものと略同一となっているが、図5及び図6に示される如く、刃口3を止水壁8の内面近傍の周縁部に当接させ、ニューマチックケーソン1を沈下させるためになされる止水壁8の内側の部位の破砕が、図1のものに比べ薄くなされるようになっている。
【0026】
本実施例では、止水壁8を刃口3の直下に対応する部位に形成しているが、刃口3の外側のすれすれの部位のみに形成してもよい。また、本実施例では、軟弱地盤22が深いので、刃口直下に低強度の止水壁8がなくても、刃口直下の軟弱地盤22が円滑に破砕されるため、ニューマチックケーソン1の沈下に支障を来すことはない。
本実施例におけるニューマチックケーソン1の沈下方法は前記実施例と同様の手順でなされ、その作用も基本的に前記実施例と同様である。
したがって、本実施例においても、前記実施例と同様、作業員の負担を軽減できるため、作業時間を長くとることができ、効率良く掘削作業を行うことができ、ひいては工期の短縮を図ることができ、工費を節約することができる、等の効果を奏する。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、ニューマチックケーソンの沈下に先立って、予めケーソン刃口のほぼ直下の地盤、またはニューマチックケーソンの外側すれすれの地盤を所定の沈下深さに削孔し、この削孔部分にモルタルの如き低強度の充填物を充填して止水壁を形成し、かつケーソン刃口の内側であって作業室内の地山の周囲の地盤にディープウエル用の孔を削孔し、ニューマチックケーソンを沈下させる場合、前記ディープウエル用の孔内の地下水をディープウエル用水中ポンプを介し外部に排水させ作業室下方の地盤内の地下水を低減させニューマチックケーソンを沈下させてゆくように構成したので、作業室の気圧の低減を図ることができ、これにより、作業員の安全性を向上でき、かつ排水効率が良いため、掘削作業時間の確保をも図れ経済的に施工でき、ニューマチックケーソンも円滑に沈下させ得るニューマチックケーソンの沈下方法を提供できる。
さらに、本発明では、上記の如く構成したので、ニューマチックケーソンの外周と止水壁との間に滑り材を注入した場合に、この滑り材は止水壁があるため、逃げることがないので、ニューマチックケーソンの沈下の際に摩擦が軽減され、ニューマチックケーソンを速やかに沈下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るニューマチックケーソンの沈下方法を軟弱地盤が浅い場合に適用した状態を示す断面図である。
【図2】図1が最終掘削時に至った状態を示す断面図である。
【図3】図1のA−A線における断面図である。
【図4】図1のA部を拡大して示す図である。
【図5】本発明に係るニューマチックケーソンの沈下方法を軟弱地盤が深い場合に適用した状態を示す断面図である。
【図6】図5のB−B線における断面図である。
【符号の説明】
1 ニューマチックケーソン
2 側壁
3 刃口
4 スラブ
5 作業室
6 シャフト
7 止水壁用孔
8 止水壁
9 ディープウエル用の孔
10 ディープウエル用水中ポンプ
11 吊フック
12 吊ワイヤ
13 ディープウエル用ホース
14 水槽
15 水槽
16 排出用水中ポンプ
17 排水用ホース
18 逆止弁
19 排出用配管
20 放水池
21 排出用リミットスイッチ
22 軟弱地盤
23 土砂バケット
24 ロック
25 岩・固結地盤
G 地山
W 地下水
S 間隙

Claims (2)

  1. ニューマチックケーソン(1)の沈下に先立って、予めケーソン刃口(3)のほぼ直下の地盤、またはニューマチックケーソン(1)の外側すれすれの地盤を所定の沈下深さに削孔し、この削孔部分にモルタルの如き低強度の充填物を充填して止水壁(8)を形成し、かつケーソン刃口(3)の内側であって作業室(5)内の地山(G)の周囲の地盤にディープウエル用の孔(9a、9b、9c、9d、9e、9f)を複数削孔し、ニューマチックケーソン(1)を沈下させる場合、前記ディープウエル用の孔(9a、9b、9c、9d、9e、9f)内の地下水(W)をディープウエル用水中ポンプ(10)を介し外部に排水させ作業室(5)下方の地盤内の地下水(W)を低減させニューマチックケーソン(1)を沈下させてゆくことを特徴としたニューマチックケーソンの沈下方法。
  2. 請求項1記載のニューマチックケーソンの沈下方法において、前記ディープウエル用水中ポンプ(10)にディープウエル用ホース(13)の一端が連結され、ディープウエル用ホース(13)の他端は前記作業室(5)内に設けられた少なくとも一以上の水槽内に挿入され、水槽内には排出用水中ポンプ(16)が設けられたことを特徴としたニューマチックケーソンの沈下方法。
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