地上におけるデジタル放送では、建物等の遮蔽物によるゴースト妨害(フェージング、マルチパス)の克服に適した変調方式として、マルチキャリアのOFDM変復調方式が知られている。OFDM変復調方式は、1チャンネル帯域内に多数(256〜1024程度)のサブキャリアを設け、映像信号や音声信号を効率よく伝送することが可能なデジタル変調・復調方式である。
キャリア番号kのサブキャリアの情報は複素数形式のZk=Ik+jQkで示されるIQ信号で表現すると、そのOFDM変調されたベースバンド信号は、
と書ける。ここで、Nは全キャリア数である。これは、キャリア情報Zk=Ik+jQkを周波数が、
f
k = 2πk/N (2)
である平面波にのせて信号を多重化したことに相当する。
式(1)におけるZkをZiに変換する信号処理は、周波数情報を時間情報に変換するフーリエ逆変換(IFFT: Inverse Fast Fourier Transform )に相当する。実際に、OFDM変調装置の標準的な構成では、多重化にIFFTが用いられている。OFDM変調処理に相当するIFFT変換の変換窓の期間が、有効シンボル期間tsとなる。有効シンボル期間tsを基本単位としてデジタル変調された全キャリアを加え合わせたものをOFDM伝送シンボルという。
実際の伝送シンボルは、通常、図2に示すように期間tsの有効シンボル1に、ガードインターバル(GI)2aと呼ばれる期間tgを付加して構成される。GI期間tg(2a)の波形は、有効シンボル期間tsの後部2bの信号波形を繰り返したものになっている。例えば、地上波デジタル放送の規格であるARIB STD−B31「地上波デジタルテレビジョン放送の伝送方式」によると、有効シンボル期間長はMODEと呼ばれるパラメータによって表1の様に定義されている。
さらに、GI期間(単位:μs)は、各有効シンボル期間長に対する比であるGI期間長(GI比)と呼ばれるパラメータによって、表2の様に定義されている。
また、伝送シンボルを幾つか集めたものを伝送フレームと称する。伝送フレームは、情報伝送用シンボルが100個程度集まったものに、フレーム同期用シンボルやサービス識別用シンボルを付加したものである。例えば、地上波デジタル放送の規格であるARIB STD−B31「地上波デジタルテレビジョン放送の伝送方式」によると、1フレームは204シンボルと定義されている。受信側では、ガードインターバルにある信号を無視して残りの部分から情報を取り出す。これは、OFDM受信信号にウィンドウをかけて高速フーリエ変換(FFT)し、有効シンボル期間分の信号を復調することを意味する。つまり、OFDM変調波を復調するには、受信データをFFTするために、受信側で有効シンボル期間を如何に正確に切り出すかということが重要となっている。
次に、上記OFDMの伝送シンボルを送信信号として発生するOFDM変調装置の概略構成について簡単に説明する。図17は一般的なOFDM変調装置の一構成例を示すブロック図である。このOFDM変調装置には、QPSKや16QAM等の方式でマッピングされた(一般には複素表現される)送信データが入力される。この送信データはシリアル/パラレル(S/P)変換部11にて各伝送サブキャリアに対応したパラレルデータに変換される。このパラレルデータは、IFFT(逆高速フーリエ変換)部12において逆離散フーリエ変換される。これにより、1つのOFDM伝送シンボルに対応する有効シンボルを得ることができる。
このようにして生成された有効シンボルは、ガードインターバル付加部13に入力される。ここでは、入力された有効シンボルの後部の一部分を有効シンボルの前部へ巡回的に付加し、OFDMの伝送シンボルをベースバンド信号として出力する。一般に、ベースバンド信号は複素形式で表現され、その実数に対応する信号はI信号、虚数に対応する信号はQ信号と呼ばれている。このベースバンド信号は、一般にデジタル信号であるためデジタル/アナログ(D/A)変換部14a、14bによりアナログ信号に変換される。この変換タイミングは、基本タイミング発生部16で発生される基本タイミング周波数(1/Tsamp、またはその2倍など)によって制御される。
さらに、このアナログ信号は、直交変調による周波数変換部15において所要の中間周波数又は高周波へ変換され、送信信号として出力される。そして、周波数変換後の送信信号は、適切に増幅された後、空中線などの伝送路へ供給されて送信される。次に、OFDM復調装置の基本構成について簡単に説明する。図18は一般的なOFDM復調装置の一構成例を示すブロック図である。このOFDM復調装置には、前述のOFDM変調装置から伝送路へ送出され、受信側の空中線にて受信された信号が、フィルタリングなどの信号処理を受けた後、OFDM受信信号として入力される。
このOFDM受信信号は、周波数変換部21によって対応するベースベンド信号に変換され、アナログ/デジタル(A/D)変換部22a、22bによりサンプリングされて、デジタルのベースバンド信号(I信号およびQ信号)となる。このデジタルのベースバンド信号は、ガードインターバル除去部23に入力される。このガードインターバル除去部23は、入力されるベースバンドOFDM信号から伝送シンボル毎にガードインターバル部分を除去し、有効シンボルのみを出力する。
出力された有効シンボルの信号は、FFT(高速フーリエ変換)部24によって高速離散フーリエ変換され、これによって各サブキャリアに対応したパラレルの受信データに変換される。最後に、このパラレル受信データは、パラレル/シリアル(P/S)変換部25によって所要のシリアルの受信データ(複素シンボルデータ)に変換される。
ここで、ガードインターバル除去部23並びにFFT部24等は、シンボルタイミング同期検出部26においてOFDMベースバンド信号から別途生成される伝送シンボルタイミング同期信号、有効シンボルタイミング同期信号、あるいはガードタイミング同期信号などに従って動作する。
精度よく、かつ、より安定にOFDM信号を復調するためには、正確に安定したタイミング周波数(タイミング周期)においてOFDMベースバンド信号をサンプリングし、さらにこのサンプリングされた信号から所要の有効シンボルのみを正しいシンボルタイミング(フェーズ)にて抽出し、FFT処理することが必要である。
特許文献1のOFDM復調装置では、OFDMベースバンド信号の自己相関を計算して、そのピークタイミングから正しいシンボルタイミングを抽出している。
ドップラー効果によるキャリア周波数の周波数誤差、チューナー部における周波数変換精度等に起因する中間周波数の周波数誤差、もしくは、OFDM復調装置の動作クロック周波数と放送局側の動作クロック周波数との間の周波数誤差等、いずれか一つでも周波数誤差が生じると、図2の期間2aと期間2bとを比較した場合に、信号信号強度(振幅)は同じであるが位相誤差が発生する。この位相誤差が大きくなると自己相関は減少し、その減少分は相互相関成分となる。極端な例としては、位相誤差が900度の場合には、自己相関は0となるため、上記特許文献1のような自己相関を用いたシンボルタイミングの抽出は困難となる。この課題については、下記の発明を実施するための最良の形態(基本原理:位相誤差と相関)において数式を用いて詳しく説明する。
上記の周波数誤差の対策として、上記特許文献2では、図19に示すように自己相関と相互相関との両方でシンボルタイミングの抽出を行っている。まず、自己相関器203によりシンボルタイミングの抽出を行う。もし、シンボルタイミングの抽出が出来ない場合には、相互相関器210によりシンボルタイミングの抽出を行う。これにより、図2の期間2aと期間2bとの信号に位相誤差が生じても、シンボルタイミングの抽出ができる。
特開2001−148679号公報(公開日:2001年5月29日)
特開2002−204214号公報(公開日:2002年7月19日)
本発明に係る通信技術は、OFDM受信信号を直交検波して取り出されるOFDMベースバンド信号であって有効シンボルと該有効シンボルの一部に基づいて生成されるガードインターバルとを備えた伝送シンボルを含むOFDMベースバンド信号から前記ガードインターバルを除去して有効シンボルを抽出するOFDM復調装置に関するものである。
尚、移動平均とは、例えば、時刻aにおいて点1〜10までの平均を計算し、次に、時刻bにおいて、点2〜11の平均を計算し、次に、時刻cにおいて、点3〜12の平均を計算し、というように、計算する対象を移動させながら平均を計算する信号処理を指す。計算する領域、例えば上記であれば10点の計算する領域を「移動平均窓」と称する。下記におけるL点が移動平均窓に相当する。
本発明の実施の形態について、図1から図16までを参照しつつ説明を行う。その前に、本発明に係るOFDM復調技術の基本原理について説明を行う。
まず、「相関」という概念について説明する。OFDM受信データ列は、IQ成分をもつ複素数データ列
Zi=ri exp[jθi]=Ii+jQi (3)
と表せる。ここで、jは虚数単位、iはサンプリング点、riはIQ成分の振幅、θiはIQ成分の位相である。ここでは、Tsamp周期のサンプリング点でのデータ列を考える。なお、以下では議論を簡単にする為に、riは全てrであると仮定する。つまり、強度はサンプリング点によらず一定であると仮定する。
時刻(K−i)におけるデータZK−i(t)と、時刻(−i)におけるデータZ−i *(t)との複素相関関数q−i(t)は、
q−i(t)=ZK−i(t) Z−i *(t) (4)
と定義される。ここで、この時間差Kを相関長と呼ぶ。
さらに、該複素相関関数q−i(t)の実部である
s-i(t) = IK−i(t) I−i(t)+QK−i(t) Q−i(t) (5)
を自己相関と呼び、複素相関関数q−i(t)の虚部
t-i(t) = QK−i(t) I−i(t) − IK−i(t)Q−i(t) (6)
を相互相関と呼ぶ。
このデータ列L点の複素相関の移動平均は、
と書ける。
(A)データ列に相関が無い場合(ランダムな場合)
ランダムな複素データ列の複素相関の移動平均(式(7))は、移動平均窓が十分大きいときには、下式(8)に示すようになる。
すなわち、ほぼゼロになる。つまり、複素相関の実部である自己相関も虚部である相互相関もともにほぼゼロとなる。
(B)データ列に相関がある場合
時刻(K−i)におけるデータZK−i(t)と時刻(−i)におけるデータZ−i *(t)との間に「相関がある」とは、下式(9)に示すように、
ZK−i(t) 〜 Z−i (t) …(9)
が成り立つことである。特に理想的には、下式(10)に示すように、
ZK−i(t)=Z−i (t) ⇔ θK−i=θ−i …(10)
となる。L点のデータのうちL2点のデータが相関を持っているとすると、式(7)の移動平均は、下式(11)に示すように、
となる。つまり、複素相関の移動平均の強度は、移動平均窓内の相関をもつ点の数と移動平均窓の長さ比に比例する。特に、該移動平均窓内の全ての点が相関を持つ場合に、式(5)は最大となり、最大値はr
2となる。つまり、複素相関の実部である自己相関は最大値r
2をとるが、虚部である相互相関はゼロとなる。
従って、複素相関、特にその実部である自己相関は、図4(c)に示すようにシンボル期間の先頭でピークをもつ。これを検出することで、OFDMベースバンド信号に含まれている周期性を検出することが可能となる。
次に、周波数誤差δfのシンボル同期への影響について説明する。キャリア周波数やIF周波数が周波数誤差をもつOFDMベースバンド信号には、時間に比例する位相誤差が生じる。以下、有効シンボル期間長(Kサンプリング点)当たりの位相誤差をδθとする。図2の2aと2bの位相誤差がδθであるならば
となる。この式(13)の実部s
-i(t)が自己相関であり、虚部t
-i(t)が相互相関である。すなわち、
となる。位相誤差δθが0度の時は、既に説明したように自己相関はr
2であり相互相関は0となる。δθが0度より大きくなると自己相関の成分が小さくなり相互相関が大きくなる。δθが90度になると、相互相関がr
2となるが自己相関は0になり、自己相関でシンボルタイミングを抽出するのは不可能である。
この位相誤差は、ドップラー効果によるキャリア周波数の周波数誤差、チューナー部で周波数変換精度等に起因する中間周波数の周波数誤差、もしくは、OFDM復調装置の動作クロック周波数と放送局側の動作クロック周波数との間の周波数誤差によって生じる。
キャリア周波数・中間周波数がδfシフトした時の図2の期間2aと期間2bとの間の位相誤差量は、
となる。特に、ドップラー効果によるキャリア周波数シフトの場合には、
となる。但し、f
cはキャリア周波数 [Hz]であり、δvは衛星・移動局の伝送パスに沿った移動速度 [m/s]であり、cは、光速(3×10
8[m/s])である。
移動速度δvが100[km/h]の時のドップラーシフトとキャリア周波数との関係を図12に示す。図12に示すように、キャリア周波数1[GHz]で約90[Hz]シフトする換算になり、約90ppmの周波数精度に相当する。キャリア周波数や移動速度が変化するとドップラーシフトも比例して変化する。受信側の内部クロック周波数が放送側の内部クロックfclkと周波数とがδfclkシフトする場合の位相誤差量は、
である。ここで、f
clkは、放送側動作クロック周波数(規格)[Hz]であり、f
cは、キャリア周波数[Hz]T
clkは、放送側動作クロック周期 T
clk= 1/
fclk [s]であり、βは、受信側動作クロック周期が(1+β)T
clkであるとしたときのβであり、Kは、有効シンボル期間長の放送局側動作クロック周期数となる。
キャリア周波数が0.5MHz、ARIB STD-B31で規定されているmode2とmode3のOFDM受信波において、送信側・受信側間の動作クロック周波数誤差と自己相関の強度の関係を、式(14)と(18)とにより計算し、図13に示した。mode2の場合では、500ppmの誤差が生じると、自己相関の強度は誤差が無い時の1/2になり、1000ppmになると自己相関は0になってしまうmode3の場合にはmode2の時の誤差の半分程度で同じ状況になる。
次に位相誤差がある場合のシンボル同期の方法について説明する。式(14)と式(15)より、自己相関と相互相関との自乗の和を計算すると、
となる。この値r
4は、位相誤差δθに依存しない。以下では、自己相関の自乗と相互相関の自乗の和、もしくは、自己相関の移動平均の自乗と相互相関の移動平均の自乗の和を相関強度と呼ぶことにする。この相関強度を用いれば、位相誤差δθの影響を受けないで安定してシンボルタイミングの抽出が可能となる。
ここで、L点のデータのうちL2点のデータが相関を持っており、位相誤差がδθだけ生じているとすると、式(7)の移動平均は、式(11)と同様の変形で、
となる。この実部が自己相関の移動平均に相当し、虚部が相互相関の移動平均に相当する。したがって、相関強度は自己相関と相互相関の各移動平均の自乗の和であるので、
となる。つまり、相関強度は、移動平均窓内の相関をもつ点の数と移動平均窓の長さ比の自乗に比例する。
発明者らは、実際に数値計算シミュレーションによって、この方法が有効であることを確認した。数値計算シミュレーションでは、まず、バイナリデータの乱数を発生し、QPSKでマッピングを行い、IFFTでOFDM多重化を行い、ガードインターバルを付加することで、OFDM伝送シンボルを作成する。次に、このOFDM伝送シンボルに位相誤差を与えて、OFDM伝送シンボルの自己相関・相互相関・相関強度を計算した結果を示す。位相誤差δθの大きさは、図14はδθ=0、図15はδθ=0.3π、図16はδθ=0.5πである。図14から図16までのぞれぞれのグラフを求める計算に用いたOFDM受信信号は、付加した位相誤差を取り除けば同一のデータである。各グラフの一番上の曲線は自己相関の移動平均であり、真中の曲線は相互相関の移動平均であり、一番下の曲線が自己相関の移動平均と相互相関の移動平均との自乗の和である相関強度の計算結果である。
図14の場合には、相互相関は常にほぼ0であり、有効シンボルの先頭で自己相関がピークを持つ。したがって、この時はシンボル同期が可能である。図14から図16へと位相誤差δθが大きくなると、自己相関は小さくなりシンボル同期が難しくなり、逆に相互相関は大きくなる。ところが、相関強度は、位相誤差に依存せずに常にシンボルの先頭においてほぼ同じ強度でピークをもつ。このように、相関強度に基づいてシンボルタイミングを抽出すれば、位相誤差に依存せずに常にシンボル同期が可能になる。次に、上記の原理に基づいて、本発明の実施の形態によるOFDM復調装置の基本的構成について説明する。
(基本的な構成)
本実施の形態によるOFDM復調装置の基本構成例について簡単に説明する。図1は、OFDM復調装置の一構成例を示すブロック図である。図1に示すOFDM復調装置においては、放送局側のOFDM変調装置から伝送路(一般に空気中)へ送出され受信側の空中線において受信されたOFDM受信信号が、受信RF周波数帯から中間周波数帯に周波数ダウンコンバージョン処理を受けた後、アナログ/デジタル(A/D)変換部によってサンプリングされてデジタルのOFDM受信信号となる(この部分は図1においては省略されている)。その後、IQ生成部109によって、直交検波が行われ、デジタルのベースバンド信号(I信号およびQ信号)となる。このデジタルのベースバンド信号は、ガードインターバル除去部101に入力される。ガードインターバル除去部101は、入力されるベースバンドOFDM信号から伝送シンボル毎にガードインターバル部分を除去し、有効シンボルの信号のみを出力する。この有効シンボルの信号は、FFT(高速フーリエ変換)部102によって高速離散フーリエ変換され、これによって波長多重化(OFDM化)されたベースバンド信号から各サブキャリアのIQデータを取り出すことができる。
次に、伝送路補償処理部において、例えばARIB STD−B31「地上波デジタルテレビジョン放送の伝送方式」で規定されているSP(Scattered Pilot)信号やCP(Continual Pilot)信号を基準にすることにより、上記各サブキャリアのIQデータの位相や振幅の調整を行う。これによって、伝送路でのマルチパス等のフェージングによって生じるIQ信号の擾乱を取り除いた信号を出力する。ここで、ガードインターバル除去部101並びにFFT部102等は、シンボル同期検出部108においてOFDMベースバンド信号から別途生成されるシンボル同期信号に従って動作する。
本実施の形態によるOFDM復調装置においては、IQ生成部109で発生するOFDMベースバンド信号(IQ信号)を複素相関演算部103が入力され、複素相関演算部103で計算された自己相関と相互相関とを移動平均演算部104に入力して各移動平均を計算し、相関強度演算部110において相関強度を計算する。さらに、ガードインバーバル期間は、有効シンボル期間長の1/4、1/8、1/16、1/32とGI比とが定義されている。これらの各MODEとGI比との関係を用いることにより、相関強度の形状やピーク値から、まず、有効シンボル期間長(MODE)の判定を行い、次に、GI期間長(GI比)の判定を行い、最後にこの判定MODEと判定GI比とに基づいてピーク位置検出を順次行う。以上の手順により、フィルタや乗算器を用いることなく、雑音に強いシンボル同期回路を実現することが可能となることを発明者らは見出した。
シンボル同期回路として機能する本実施の形態によるシンボル同期検出部108は、複素相関演算部103と、移動平均演算部104と、相関強度演算部110と、信号形状検出部105と、ピーク位置検出部106と、タイミング発生部107と、を備えている。そして、相関強度の形状やピーク値によって、まず有効シンボル期間長(MODE)判定し、次にGI期間長(GI比)判定を行い、最後に判定有効シンボル期間長(MODE)と判定GI期間長(GI比)とに基づいてピーク位置検出を行う手順が基本となる。図3(a)は、図1に示す複素相関演算部103の詳細な構成例を含む図である。図3(b)は、図1に示す移動平均演算部104の詳細な構成例を含む図である。
図3(a)に示すように、複素相関演算部103は、1個以上の複素相関演算器103aで構成される。図7は複素相関演算器103aの回路の構成例である。図7に示すように、複素相関演算器103aは、入力信号に相関長だけ遅延を与えるFIFO301と、入力信号とFIFOとの出力信号の複素乗算を行う複素乗算器304と、を有している。複素乗算器304は、4個の乗算器302と、その後段の2個の加算器303とで構成される。FIFO301は、データをFirst In First Out、つまり先入れ・先出しで格納し出力するように設定されたメモリである。
図3(b)に示すように、図1に示す移動平均演算部104は、1個以上の移動平均器104aを含んで構成される。移動平均器104aには、例えば図10に示すような回路が、自己相関用および相互相関用に2系統設けられる。図10に示すように、移動平均器104aでは、加算器402に、その後段に設けられたレジスタ403の1クロック過去の値と、現時点での入力信号と、FIFO401により遅延させた過去の入力信号の符号を反転させた信号が入力され、加算器402の出力がレジスタ403に入力される。
従って、レジスタ403の値は、現時点からFIFO401の段数Wだけ過去における入力信号の和となる。レジスタ403の後段の除算器404においてレジスタ403の値を段数Wで割れば、W点の移動平均をリアルタイムに出力することができる。
以下では、基本構成を元に実施の形態について説明を行うが、同じ機能を有するものであれば、上記基本構成に限定されるものではない。
まず、本発明の第1の実施の形態によるOFDM受信装置について図面を参照しつつ説明を行う。
図3(a)に示すように本実施の形態によるシンボル同期検出部は、複数の複素相関演算器103aにより構成される。各複素相関演算器103aの相関長Kは、規格で規定されている各有効シンボル期間長に一致するものとする。例えば、ARIB STD−B31「地上波デジタルテレビジョン放送の伝送方式」では、前述の表2のように規定されている。上記IQ生成部109(図1)からのベースバンド信号(IQ信号)、をこの各複素相関演算器103aに入力する。
図4(a)は、有効シンボル期間長(MODE)判定したいベースバンド信号を示している。このベースバンド信号の有効シンボル期間長をts1とする。有効シンボル期間長ts1と相関長とが異なる場合はts1≠Kとなり、ts1と異なる、例えば長い相関長(図4(b)の符号48)が設定された複素相関演算器に対してこのベースバンド信号を入力した場合は、式(10)が成立する領域はベースバンド信号には存在しない。さらに、逆フーリエ変換部(IFFT)によってサブキャリアが多重化されたOFDM信号は、十分にランダムであるため、上記(基本原理:相関)(B)に相当し、相関強度は常に0となる(図4(b)の太線部分参照)。
有効シンボル期間長と相関長とが互いに等しい場合にはts1=Kとなり、一方、ts1と同じ長さの相関長(図4(c)の符号49)の複素相関演算器にベースバンド信号を入力した場合には、GI期間と有効シンボル期間上の対応する期間が条件式(10)を満たす。したがって、上記(基本原理:相関)(A)に相当し、相関強度は、図4(c)に示す太線のように、0以外の部分を有する、0を示す線に対して凸の形状を備えたものとなる。
従って、信号形状検出部105(図1)が、0ではない相関強度を検出すれば、この出力信号のもとなる自己相関と相互相関とを出力した相関器103aの相関長が、OFDMベースバンド信号の有効シンボル期間長に相当することになる。つまり、有効シンボル期間長(MODE)の判定ができたことになる。
OFDM信号には、有効シンボル期間長以外にGI期間長というパラメータも存在する。すなわち、有効シンボル期間長(MODE)が同じでもGI期間長が異なる信号が存在する。
そこで、GI期間長の長短の影響について説明する。GI期間長が異なっても有効シンボル期間長と複素相関演算器との相関長が一致していれば、上記(基本原理:相関)(A)に相当するので、相関強度は0ではない。つまり、GI期間長(GI比)の影響を受けることなく、本実施の形態によるOFDM受信装置によって有効シンボル期間長(MODE)が判定できる。
次に、本発明の第2の実施の形態によるOFDM受信装置について説明を行う。本実施の形態においては、移動平均窓(図5では符号71a〜f、符号72a〜d、符号73a〜cに相当する。)を、規格で定められたGI期間長の中で最小のものと一致するように複素相関演算器103aが構成されている。この複素相関演算器103aにGI期間長(GI比)の異なるOFDMベースバンド信号を入力する場合を考える。
図5(a)では移動平均窓が位置71cから71eである時、図5(b)では移動平均窓が位置72bから72cである時、図5(c)では移動平均窓が位置73bである時に、この移動平均窓内の点全てが相関を持つ。つまり、何れのGI期間長(GI比)でも相関強度演算部110の出力信号である相関強度のピーク値はベースバンド信号の振幅の4乗の平均(r4)となる。このように、相関強度のピーク値がベースバンド信号の振幅の4乗の平均であれば、相関長に相当する有効シンボル期間長(MODE)を判定したことになる。移動平均器の移動平均窓を、規格で定められたGI期間長(GI比)の中で最小のものと一致させることにより、GI期間長の長短の影響をうけることなく容易に有効シンボル期間長(MODE)判定が可能となる。
次に、本発明の第3の実施の形態によるOFDM復調装置について説明を行う。実際に使用する環境では、空気中の電磁波の状態や受信RF波を中間周波数帯域まで周波数ダウンコンバージョンするアナログデバイスの特性等により、OFDMベースバンド信号には、雑音やマルチパスによるフェージング等の擾乱が含まれるのが一般的である。しかしながら、白色雑音は、相関信号とは異なり相関を持たないので、相関強度演算部110の出力である相関強度は、0を中心に白色雑音を反映して揺らぐことになる。
そこで、本実施の形態においては、信号形状検出部105に、例えばベースバンド信号の振幅の4乗、もしくは、その平均値の1/2や3/4などを第1閾値として設定し、複素相関演算器の出力信号が上記第1閾値よりも大きいか否かをMODE判定条件とするMODE判定機能を付加することを特徴とする。平均値を基準とすると、白色雑音の影響をほぼ除去することができる。これにより、電磁波擾乱に対する耐性を上げ、誤判定を無くすことが可能となる。
次に、本発明の第4の実施の形態によるOFDM復調装置について説明を行う。上記第2の実施の形態では、図1に示すように、複素相関演算部103を複数の複素相関演算器103aにより構成した。本実施の形態においては、相関長が可変である複素相関演算器103aを用いることを特徴とする。これにより、1つの複素相関演算器で第2の実施の形態による複素相関演算部103と同じ機能が実現可能となる。
図6は、本実施の形態による処理の流れを示すフローチャート図である。まず、図1に示す信号形状検出部105は、複素相関演算器103aの相関長を、ある有効シンボル期間長(MODE)と一致するように設定し(図6のステップS1)、続いて、OFDMベースバンド信号における自己相関と相互相関の移動平均を計算し、自己相関と相互相関とから相関強度を計算する(ステップS2)。次に、有意な移動平均演算部104の出力信号から計算した相関強度のピーク値が受信ベースバンド信号の4乗と同じであるか否かを判定し(ステップS3)、同じであれば、このときの相関長が受信ベースバンド信号の有効シンボル長であり、有効シンボル期間長(MODE)判定は完了する(ステップS5)。
逆に、ステップS3において、有意な移動平均演算部104の出力信号から計算した相関強度が無い場合、つまり否の場合には、信号形状検出部105は、複素相関演算器103aの相関長を異なる有効シンボル期間長に変更して、同じフローを行う。これを繰り返すことによって、一つの相関長が可変に設定できる複素相関演算器103aで、受信ベースバンド信号のMODE(有効シンボル期間長)の判定が可能となる。具体的な回路の構成例としては、図7に示すFIFO301の遅延量を可変に設定できるようにすれば、相関長も可変にできる。
次に、第5の実施の形態によるGI期間長(GI比)の判定方法について説明する。本実施の形態によるOFDM復調装置は、GI比が2通り又は3通りしか規定されていない場合にのみ適用可能である。例えばARIB STD−B31「地上波デジタルテレビジョン放送の伝送方式」では前述の表2に示すように4通りのGI比が定義されているが、そのうちの3通り又は2通のみを使用することを運用規定とする放送サービスがあり、そのようなサービスに有効である。
GI期間長(GI比)を判定するために、移動平均器104a(図3(b))を2個又は3個用意する。上記の各実施の形態1から4までに記載のMODE判定回路で判定した有効シンボル期間長(MODE)を、複素相関演算部103の相関長として設定する。複素相関演算部の移動平均窓は、2通りの時は2通りのどちらか一方のGI期間長と、3通りの場合には真中の大きさのGI期間長と、一致するように設定する。
相関強度が、OFDMベースバンド信号におけるGI期間長tgと移動平均器の移動平均窓長Lの大小関係によってどの様に変化するかについて図8を参照して説明する。図8(a)に示すように、GI期間長が移動平均窓より長い場合(tg>L)、移動平均窓が位置74a(GI期間の始まりの直前の位置)よりも左側にある場合には、相関が無いため、上記(基本原理:相関)(A)より相関強度は0となる。移動平均窓が位置74aから位置74b(GI期間の始まりの直後の位置)に移動すると、上記(基本原理:相関)(B)より相関強度は移動平均窓とGI期間長との重なる領域に比例して増加する。
さらに、移動平均窓が位置74c(移動平均窓がGI期間長の中に包含される場合)には、移動平均窓全体がGI期間長と重なるため、相関強度はピーク値r4を示す。移動平均窓が位置74cから位置74d(移動平均窓がGI期間長の中から一部でも外れる位置)に移動すると重なる領域の減少に比例して相関強度は減少し、位置74dよりも右側では相関がなくなるので0となる。従って、相関強度は、シンボル期間長(ts+tg)周期で、ピーク値がr4、形状が台形の信号となる。
図8(b)に示すようにGI期間長と移動平均窓とが等しい場合(tg=L)、移動平均窓が位置75a(GI期間の始まりの直前の位置)よりも左側にある時には、相関が無いので上記(基本原理:相関)(A)より相関強度は0となる。移動平均窓が位置75aから位置75b(GI期間の始まりの直後の位置)までに移動すると、上記(基本原理:相関)(B)より相関強度は移動平均窓とGI期間長との重なる領域に比例して増加する。移動平均窓が位置75bにある時のみ、移動平均窓全体がGI期間長と重なるため、相関強度はピーク値r4を示す。
図8(c)に示すように、さらに、移動平均窓が位置75bから位置75c(移動平均窓がGI期間長の中から一部でも外れる位置)に移動すると、重なる領域に比例して相関強度は減少し、位置75cよりも右側では相関がなくなるので0となる。したがって、相関強度は、シンボル期間長(ts+tg)周期で、ピーク値がr4、形状が三角形の信号となる。
GI期間長が移動平均窓より短い場合(tg<L)、移動平均窓が位置76a(GI期間の始まりの直前の位置)よりも左側にある時には、相関が無いので上記(基本原理:相関)(A)より相関強度は0となる。移動平均窓が位置76aから位置76b(GI期間の始まりの直後の位置)に移動すると、上記(基本原理:相関)(B)より相関強度は移動平均窓とGI期間長の重なる領域に比例して増加する。
移動平均窓が位置76bから位置76cの間にある時は、該移動平均窓の半分のみがGI期間長と常に重複するので、相関強度の強度を求める式(21)においてL2/L=1/2の場合に相当するので、該相関強度のピーク値はr4/4となる。さらに該移動平均窓が位置76cから位置76dに移動すると、重なる領域に比例して該相関強度は減少し、さらに位置76dよりも右側では相関がなくなるので0となる。したがって、該相関強度は、シンボル期間長(ts+tg)周期で、ピーク値がr4/2、形状が台形の信号となる。
信号形状検出部105は、有効シンボル期間長(MODE)判定された信号をシンボル同期検出部108に入力した時の移動平均演算部104の出力信号から、図9に示す処理フローを行うことによって、GI期間長(GI比)判定が可能となる。この点について図9を参照しつつ説明する。
処理を開始した場合(START)は、OFDMベースバンド信号の相関強度を計算し(図9のステップS11)、そのピーク値がベースバンド信号の振幅の4乗の平均であるr4 の1/4であるか否かを判定し(図9のステップS12)、1/4であれば受信OFDM信号のGI期間長は該移動平均窓よりも短いことがわかる(図9のステップS13)。
もし、相関強度のピーク値がベースバンド信号の振幅の4乗r4と同じ場合には(図9のステップS12のNOに相当する)、相関強度演算部110の出力信号の形状を調べる(図9のステップS14)。もし、この形状が三角形の時には、受信OFDM信号のGI期間長は該移動平均窓と同一であり(図9のステップS15)、そうでなければ移動平均窓よりも長いことになる(図9のステップS16)。規格で定められたGI期間長(GI比)が例えば3通りと予め設定されている場合には、上記の方法によって、上記の各GI期間長(GI比)をそれぞれ判定することが可能となる。
次に、本発明の第6の実施の形態によるOFDM受信装置について図面を参照しつつ説明を行う。上記第5の実施の形態において、GI期間長tgと移動平均窓Lが、tg=Lもしくはtg>Lであるかを区別する条件は、移動平均演算部110の出力信号である相関強度の形状が三角形であるか台形であるかである。しかし、雑音やマルチパスによるフェージングやドップラー効果などの周波数シフトなど実際の使用環境における擾乱によって、台形の上辺が斜めになったり、ノイズが乗ったりすることがある。
そこで、信号形状検出部105は、形状ではなく、第2閾値、r4 より小さい値、例えばr4 ×3/4を設定し、この閾値よりも出力信号が大きくなる期間t2を計測する。t2が、t2>Lであれば図8(a)に相当し、t2<Lであれば図8(c)に相当する。このようにt2とLとを比較することにより、信号形状検出部105はGI期間長(GI比)を判定することが可能となる。相関強度演算部110の出力信号である相関強度が、閾値以上である期間t2を計測すれば良いため、実使用環境の擾乱に対する耐性も格段に向上するという利点がある。
次に、本発明の第7の実施の形態によるOFDM受信装置について図面を参照しつつ説明を行う。本実施の形態によるOFDM受信装置は、規格で定められたGI期間長(GI比)の数に制限が無い点を特徴とする。ここで、P個のGI期間長(GI比)が規格として存在し、各GI期間長は、下式(21)に示すように、
tg1>tg2>tg3>・・・>tgP …(21)
であると仮定する。
GI期間長(GI比)を判定するために、図3(b)に示すように、移動平均演算部104をP個の移動平均器104aにより構成する。複素相関演算部103の相関長は、本発明の第1〜第4の実施の形態によるOFDM受信装置において判定した有効シンボル期間長とする。各移動平均器104aの移動平均窓の大きさは、tg1、tg2、tg3、・・・、tgPのP通りとする。
上記第6の実施の形態において説明したGI期間長tgと複素相関演算器の移動平均窓Lとの大小関係と相関強度演算部110の出力信号である相関強度のピーク値の関係をまとめると以下の表3のようになる。
表3において、P個の移動平均器104aの出力信号である自己相関と相互相関とから計算した相関強度のうち、移動平均窓長がL=tgM、tgM+1、tgM+2、・・・、tgPである自己相関演算器のピーク値がr4 となり、残り相関器のピーク値がr4/4以下であったとする。ここで、表3を参照すると、ピーク値がr4 となる移動平均窓Lの最大のものが受信ベースバンド信号のGI期間長tgと一致するので、tg=tgMとGI期間長(GI)比とを判断することができる。
次に、本発明の第8の実施の形態によるOFDM受信装置について図面を参照しつつ説明を行う。上記第7の実施の形態によるOFDM受信装置において、移動平均器104aの移動平均窓が可変に設定できれば、1個の移動平均器のみでGI判定が可能となる。上記第1から第4までのいずれかに記載の方法で、MODE判定を行った後に、複素相関演算器に信号を入力する。移動平均器の移動平均窓長Lをtg1、tg2、tg3、・・・、tgPのP通りに換えて、相関強度演算部110の出力信号である相関強度のピーク値がr4 となる数を調べれば、前記各実施の形態によるOFDM受信装置と同様にGI期間長(GI比)を判定することが可能となる。移動平均の窓を可変にする方法の一例としては、図10に示す回路を、FIFO401の遅延段数Wと除算器404とのWを可変となるように構成すればよい。以上、本実施の形態によるOFDM受信装置によれば、簡素な回路構成にすることができる。
次に、本発明の第9の実施の形態によるOFDM受信装置について説明する。上記第7又は第8の実施の形態による条件判断において、信号形状検出部105において、r4 /4とr4 との間の値、例えばr4 ×3/4を閾値(第2閾値)として設定し、相関強度演算部110の出力信号である相関強度が第2閾値を超えるか否かを調べて、GI期間長(GI比)を判定する。
本実施の形態によるOFDM受信装置によれば、雑音やマルチパスによるフェージングやドップラー効果などの周波数シフトなど実際の使用環境における擾乱に対する耐性を一層向上させることができる。
次に、本発明の第10の実施の形態によるOFDM受信装置について説明する。上記第1から第9までの各実施の形態によるOFDM受信装置において判定した有効シンボル期間長(MODE)とGI期間長(GI比)とを元に、シンボル同期を行うことを特徴とする。複素相関演算部103は、相関長を判定した有効シンボル期間長(MODE)に設定し自己相関と相互相関とを計算し、移動平均演算部104に出力する。移動平均演算部104は、移動平均窓を検出したGI期間長(GI比)に設定し、自己相関と相互相関の各移動平均を計算し相関強度演算部110に出力する。相関強度演算部110は、自己相関と相互相関とのそれぞれの移動平均から相関強度を計算しピーク位置検出部106に出力する。ピーク位置検出部106は、ピーク位置の検出機能と、タイマの機能と、を有する。ピーク位置検出部106は、1度目のピークを検出すると、その時刻tp1を記憶し、タイマによって時刻tp2=tp1+ts+tg(第1のピーク位置にシンボル期間長を加算したもの)にピークが存在するか否かを調べる。
もし、ピークであれば、その位置がシンボルの先頭(GIの先頭)となる。したがって、タイミング発生部107は、その後、ts+tg周期のカウンタを回せば、シンボルの先頭であるシンボル同期信号をシンボル期間長周期で出力することができ、シンボル同期が可能となる。尚、シンボル同期信号を出すタイミングは、ts+tg周期であれば、どのタイミングで出しても良い。FFTや伝送路補償部の仕様に基づいて設定すべきパラメータである。
また、ピーク検出のタイミングにおいてピークとなっていなければ、再度一度目のピーク検出から同様の処理を行う。
上記第1から第9までの各実施の形態において判定した有効シンボル期間長(MODE)とGI期間長(GI比)とからシンボル期間長が分かるため、これをもとにシンボル同期のタイミングを検出すれば、相関強度のピークとピークとの間の雑音やマルチパスによるフェージングやドップラー効果などの周波数シフトなど実際の使用環境における擾乱によって生じた局所的なピークによる影響を受けることなくシンボル同期が正確にできる。
次に、本発明の第11の実施の形態によるOFDM受信装置について説明する。上記第10の実施の形態によるOFDM受信装置において、相関強度の1度目のピーク検出時に時刻tp1と信号強度rp1とを記憶し、時刻tp2=tp1+ts+tgにおける信号強度がrp1×3/4で定義される第3閾値よりも大きいことを確認した場合にタイミング発生部107がts+tg周期のカウンタを回せば、シンボル同期信号をシンボル期間長周期で出力することができ、シンボル同期が可能となる。これにより、フェージングや雑音などの電磁波環境における擾乱やOFDM復調装置の前段に接続されるアナログデバイスの特性等があった場合でも、シンボル同期がしやすいという特徴がある。
なお、第3閾値において示した3/4の値は一例であり、フェージングや雑音などの電磁波環境における擾乱やOFDM復調装置の前段に接続されるアナログデバイスの特性等を考慮して適宜変更して設定することができるものである。
次に、本発明の第12の実施の形態によるOFDM受信装置について説明する。相関強度は基本的にはシンボルの先頭でピークを持つが、フェージングや雑音などの電磁波環境における擾乱やOFDM復調装置の前段に接続されるアナログデバイスの特性等を考慮すると、その周囲にノイズによって局所的なピークが不規則に存在することになる。そこで、そのような雑音に対して耐性のあるピーク検出方法について以下に説明する。
前記第10又は第11の実施の形態において、1度目のピーク検出において、図11に示すように、例えば、相関強度演算部110の出力信号である相関強度の過去8点のデータを保存しておき、前半4点の移動平均av1と後半4点の移動平均av2を計算する回路を設けることにより、相関強度の移動平均を算出できる。すなわち、av2>av1の場合には時間とともに出力が増加しており、av2<av1の時には時間とともに出力が減少していることになる。したがって、この変化点を調べることで、ピーク値を検出することが可能である。さらに、ピーク検出時にピーク値avmを記憶し、ピーク値avmよりも大きな移動平均av1が検出された場合には、もはやavmがピーク値であるとはいえないので、再度、av1、av2を比較してピーク検出を行う(リセット)。上記処理を、入力信号が0から第3閾値以下となるまで続けることにより、ピークのタイミングを検出する。
以上の方法によれば、ピーク値近傍の電磁波環境の擾乱による局所的なピークの影響を受けることなく、正確にピーク位置のタイミングを検出することが可能となる。
次に、本発明の第13の実施の形態によるOFDM受信装置について、説明を行う。システム全体の制約からOFDM復調装置の回路動作クロック周波数が規格と異なる場合に、直交検波部等でサンプリング周波数のレート変換を行うことにより、規格に定められたサンプリング周波数の信号を取り出す。このレート変換での演算精度によっては、サンプリング周波数誤差つまり位相誤差が挿入されてしまう場合がある。また、システム全体の問題やコストの観点から周波数誤差が50ppm以上のクロックを用いる場合には、サンプリング周波数誤差に起因する位相誤差が生じる。
しかし、上記いずれの場合も実施例1から13で説明したシンボル同期回路を用いれば、問題なくシンボルタイミングの抽出が可能となる。したがって、ベースバンド処理回路や動作クロックに対する制約が大幅に低減し、コストダウンやシステム全体での最適化が可能となる。
尚、以上で説明した各実施の形態においては、日本における地上波デジタル放送の規格であるARIB STD−B31「地上波デジタルテレビジョン放送の伝送方式」の規格に基づくOFDM復調装置について説明したが、この規格に限定されるものではなく、それに限定されるものではなく、OFDM変調されてガードインターバル期間が存在する方式であれば、いかなる放送方式に対しても本発明は適用可能であることは言うまでもない。
以上のように、本実施の形態によるOFDM復調装置は、有効シンボルとガードインターバルとを有するOFDMベースバンド信号から有効シンボルを取り出すためのシンボル同期信号を発生するシンボル同期検出部を具備し、シンボル同期検出部は、OFDMベースバンド信号を有効シンボル時間だけ遅延して、その遅延前後の信号の自己相関と相互相関を計算する複素相関演算部と、複素相関演算部の出力から相関強度を計算する相関強度演算部と、相関強度演算部の出力信号からの信号形状検出部とを備え、複素相関演算部と相関強度演算部と信号形状検出部とで有効シンボル期間長とガードインターバル期間長とを検出し、検出した有効シンボル期間長とガードインターバル期間長とを元にシンボル同期信号を発生する構成である。従って、ドップラー効果、中間周波数の変動、動作クロック周波数の誤差等の周波数誤差起因する位相誤差の影響を受けないで、有効シンボル期間長(MODE)や、ガードインターバル期間長(GI比)の判定、シンボル同期が可能となる。
また、相関強度で有効シンボル期間長(MODE)とガードインターバル期間長(GI比)の判定を行い、時間軸上でシンボル同期のタイミングを検出することで、自己相関でシンボル同期のタイミングを検出する方法よりも、電磁波環境の擾乱の影響を受けることなく、より安定したシンボル同期が可能となる。その結果、周波数誤差が生じる環境でも、有効シンボル期間長(MODE)とガードインターバル期間長(GI比)の判定とシンボル同期とが、フィルタの様な複数の複素乗算器を必要とする大規模な従来の回路に比べて、小規模の回路で構成することが可能となる。
また、開発しているシステムが携帯電話システムや無線通信システムのベースバンド処理等を含む為にOFDM放送の規格で定められたクロック周波数とは異なる回路動作クロックを採用する場合や、コストの観点から周波数精度の低い安価なクロックを用いる場合など、いずれの場合でも安定したシンボル同期が可能となる。上記構成は、低消費電力回路でシンボル同期が可能となることによって、低消費電力化が重要課題である携帯電話や携帯端末等のモバイル機器に搭載するOFDM受信装置において、OFDMベースバンド信号の相関強度による同期によって、安定かつ低消費電力で復調することが可能となるという効果を奏する。