JP4445711B2 - 金属酸化物パターン形成方法及び金属配線パターン形成方法 - Google Patents

金属酸化物パターン形成方法及び金属配線パターン形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上での金属酸化物・金属配線の微細パターンを形成するために好適に用いられる金属酸化物パターン形成方法、及び金属配線パターン形成方法、並びに該金属配線パターン形成方法により金属配線が形成された配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属酸化物(特に金属酸化物半導体)は電気・電子、光電、生体などいろいろな分野で重要な役割を担っている。例えば、ウルツ鉱構造を有する酸化亜鉛(ZnO)は、生体機能、電気的機能(圧電効果、導電効果など)、光学的機能(発光効果、光応答性など)、触媒および光触媒機能など様々な特性を持つため、広範囲に研究され、応用されている。ZnO薄膜は、表面弾性波素子、透明導電膜、光電表示素子ならびにガスセンサーなどへの応用が期待される。
【0003】
金属酸化物をベースにした機能性材料において、多くの場合、その機能性を有効に発揮するために微細なパターンの形成が必要になる。例えば、太陽電池、液晶ディスプレー、超伝導製品、レーザ発振器等の機器の回路においては、パターン化されたITO(Indium Tin Oxide)、ZnO、TiO2、SnO2等の金属酸化物膜が使用されている。
【0004】
金属酸化物パターンを形成する従来の代表的な技術は、フォトレジストとフォトマスクを利用したフォトリソグラフィ法である。つまり、基板表面全域に金属酸化物の薄膜を化学蒸着法、スパッタリング法、熱分解、イオンビームなどの製膜法で成膜した後、フォトレジスト層をコーティングする。次にこのフォトレジストをコーティングした膜に所望のパターンを有したフォトマスクを付け、光を照射する(多くの場合は紫外線である)。
【0005】
使われたレジストの種類(ポジティブあるいはネガティブ)によって光を照射した部分あるいは未照射部分のレジストが、現像液により除去され、レジストパターンが形成される。除去したレジスト部分は下地の金属酸化物膜が露出する。何らかの方法でこの金属酸化物膜を除去し、更に定着液でレジスト膜を除去すれば、金属酸化物膜のパターンが形成される。
【0006】
レジストに覆われていない領域の金属酸化物膜を除去する方法(いわゆるエッチング方法)は金属酸化物の種類によって異なるが、ウェットエッチングとドライエッチング手法が代表的である。例えば、酸化亜鉛膜の場合は希塩酸(例えば、非特許文献1参照。)、または、希水酸化ナトリウム(特許文献1参照。)を用いたウェットプロセスで簡単に除去できる。ドライエッチングは、溶液の代わりにガスを用い、ガス中の分子と金属酸化物との化学反応によってレジストに被覆されていない部分の金属酸化物のみを選択的に除去する方法(特許文献2〜3参照。)である。
【0007】
しかし、上述したような従来のパターニング法では、金属酸化物膜を形成するために高価な装置や高温処理などの操作を要するにもかかわらず、パターニングする時にフォトレジストなどの工程が必要であり、操作過程が複雑である。
【0008】
また、前述した従来のパターニング法はサブトラクティブ(Subtractive)法であり、金属酸化物膜パターンを形成するためには、フォトレジストに被覆されていない領域の酸化物膜を除去するエッチング工程が必要である。しかし、エッチング条件の最適化が必ずしも容易ではないので、オバーエッチングやアンダーエッチングの発生によってパターンの解像度が影響を受け易い。したがって、アディティブ(Additive)工法によるパターンの形成法が望まれる。
【0009】
一方、無電解めっき法を利用した酸化亜鉛パターンの形成方法も最近提案されている(非特許文献2参照。)。
この方法では、まず、単結晶Si基板をフェニルトリクロロシランのトルエン溶液に浸漬し、基板の表面に自己組織化膜を作製する。これに、フォトマスクを介して紫外線照射し、表面官能基をフェニル基/OH基にパターン化する。次に、この基板にPd/Snコロイドを付着させ、これを酸化亜鉛析出の触媒として用いる。
【0010】
Pd/Snパターン上での酸化亜鉛の析出には、例えば、特開平2000−8180号公報に開示されている無電解めっき法による酸化亜鉛成膜法を用いることができる。この方法では、酸化亜鉛の析出は、Pd触媒化した基板を硝酸亜鉛とジメチルアミンボランの水溶液に浸し、55℃で一定の時間保持して行われる。上記特開平2000−8180号公報に開示されている無電解めっき法による酸化亜鉛成膜法は、低温(〜60℃)で成膜できるなどの利点を持つことが知られている。
【0011】
一方、従来より、金属配線パターン形成方法としても、無電解めっき法が用いられている。回路基板上の金属配線パターンを形成する従来の代表的な無電解めっき法では、金属層を密着性良く形成するために、セラミックスやガラスなどの基板の表面をエッチングなどの手法で粗化する(表面積を増大するため)必要がある。しかし、エッチング条件の最適化は必ずしも容易ではなく、アンダーエッチングあるいはオバーエッチングが起こりやすい。これは逆に金属の密着性、さらに、作製した配線の解像度などに悪影響を与える。
【0012】
上記の問題は、酸化亜鉛薄膜層を基板上に予め形成することによって解決される(特許文献4〜5参照。)。この方法では、基板を粗化する必要がなく、基板の表面にスプレーパイロリシスなどの方法で酸化亜鉛薄膜をまず成膜し、その後、無電解めっきによって金属膜を酸化亜鉛表面に形成する。上記文献ではこのように、析出した金属膜の密着性が従来法で形成した金属膜より優れることが報告されている。
【0013】
一般に、酸化亜鉛層を形成した基板(セラミックスやガラスなど)上に金属配線を作製する従来技術としても、サブトラクティブ法とアディティブ法がある。
【0014】
サブトラクティブ法では、まず酸化亜鉛薄膜を形成した基板を塩化パラジウムの水溶液に浸漬し、触媒化処理する。その後、無電解めっき浴に浸漬し、配線用導電金属層を基板に形成させる(特許文献4,非特許文献3参照。)。
【0015】
次に、金属層の表面にフォトレジスト層を塗布し、フォトマスクを介して光照射によってレジストをパターニングする。そして、適当なエッチングにより不要な金属膜部分を除去することによって配線パターンを形成する。
【0016】
アディティブ法では、まずフォトリソグラフィの手法を用いてレジスト樹脂パターンを酸化亜鉛薄膜上に形成する。その後、レジストに覆われていない領域の酸化亜鉛膜を適当なエッチング法で除去し、さらにレジストパターンを除去することによって酸化亜鉛パターンが基板上に形成される。次に塩化パラジウムの塩酸溶液で触媒化処理した酸化亜鉛膜パターンを銅、ニッケルなどの無電解めっき浴に浸漬し、金属が酸化亜鉛膜パターン上に選択的に析出し、金属膜パターンが形成される(非特許文献4参照。)。
【0017】
また、酸化亜鉛の光触媒活性を利用したアディティブな配線形成法も開発されている(非特許文献5参照。)。
【0018】
この方法では、まず酸化亜鉛薄膜を形成した基板を塩化パラジウムの塩酸水溶液(pH2.5)に浸漬して、パラジウムイオンを酸化亜鉛膜表面の前面に吸着させる。その後、フォトマスクを表面に載せメタノール雰囲気中で紫外線を照射する。その時に、紫外線照射部分のみ、パラジウムイオンが金属パラジウム(Pd0)に還元される。
【0019】
酸化亜鉛は〜3.0eVのバンドギャップを有する酸化物半導体であり、そのバンドギャップより高いエネルギーを持つ光を照射すると、電子が価電子帯から伝導帯までに励起される。その励起した電子が酸化亜鉛表面に吸着したパラジウムイオンを還元する。
【0020】
次に、パラジウムイオンおよび金属パラジウム粒子が吸着した基材を、pH調整したエチレンジアミン(EDA)の水溶液に浸漬し不要なパラジウムイオン(未照射部分)が、EDAと錯体を形成して除去される。その結果、金属パラジウム微粒子のみが酸化亜鉛膜の表面(照射した領域)に選択的に残され、パラジウムパターンが形成される。それらの金属パラジウム微粒子は、次の無電解めっきの段階で触媒としてはたらく。
【0021】
次に、金属パラジウムパターンを有した基板を金属の無電解めっき液に浸漬することにより、金属膜がパラジウムパターン上に選択的に析出し、金属の配線が形成される。
【0022】
また、硝酸亜鉛と還元剤とを含む水溶液中に基板を浸漬し、紫外線を基板に選択的に照射することにより、基板上に酸化亜鉛を含む配線を形成する配線の形成方法も知られている(特許文献6参照。)。
【0023】
また、酸化亜鉛層を形成した基板の表面に、パーマネントめっきレジストパターンを作製し後、硫酸銅の水溶液に浸漬し、酸化亜鉛層中の亜鉛を銅と置換することによって酸化銅層を形成させ、析出した酸化銅層を所定の還元剤によって金属銅に還元する銅配線の形成方法も開示されている(特許文献7参照。)。この方法では、析出した金属銅が無電解銅めっきの触媒としてはたらく。
【0024】
【特許文献1】
特開平10−318961号公報
【特許文献2】
特開2001−94163号公報
【特許文献3】
特開2001−77059号公報
【特許文献4】
特開平6‐61619号公報
【特許文献5】
特開平6‐334332号公報
【特許文献6】
特開平10−245682号公報
【特許文献7】
特開2001−85358号公報
【非特許文献1】
「回路実装技術、Vol.11,No.6,P.32-36,1995」
【非特許文献2】
「日本セラミックス協会 第14回秋季シンポジウム要旨集、p.227(3D09)」
【非特許文献3】
H. Yoshiki, V. Alexandruk, K. Hashimoto, and A. Fujishima, J. Electrochem. Soc., 141, L56 (1994)
【非特許文献4】
「エレクトロニクス実装技術」1995.6 (Vol.11, No.6), P.32-36
【非特許文献5】
H. Yoshiki, H. Kitahara, K. Hashimoto, and A. Fujishima, J. Electrochem. Soc., 142, L235(1995)
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記無電解めっき法を利用した酸化亜鉛パターン形成法では、紫外線照射工程が依然として不可欠であり、作業効率が低下するとともに高コストとなるという問題点を有している。
【0026】
また、上記特許文献4,5、非特許文献3,5に記載された方法では、酸化亜鉛層を作製するために、高温処理(例えば、スプレーパイロリシス法の場合)や真空装置(例えば、CVD法の場合)などが必要となる。
【0027】
また、非特許文献4および特許文献7に記載した方法では、配線パターンを作製するためにレジスト樹脂パターンの形成が必要であり、工程数の増加が避けられない。
【0028】
また、酸化亜鉛の光触媒性能を利用した配線形成法では、フォトレジストの塗布を要しないが、紫外線照射装置が必要となる。そのうえ、特許文献6に記載した方法では、溶液中に光を照射する必要があり、使用する水溶液中で著しい吸収が起こり、反応界面部に到達するまでの光エネルギー損失が大きい。一方、非特許文献5に記載の方法では、未照射部分のパラジウムイオンをEDAで除去する必要があるが、反応条件の最適化が困難であるという問題点がある。すなわち、EDA溶液中での処理時間が短いと、パラジウムイオンの除去が不完全になり、長いとZnOも溶解され、処理時間が長短いずれに傾いても、配線の解像度に悪影響を与える恐れがある。
【0029】
本発明は、前記従来技術のようなフォトレジスト、高温処理または紫外線照射などの操作を要さずに、アディティブ工法で金属酸化物・金属配線の微細パターンを形成することができる金属パターン形成方法、及び、金属配線パターン形成方法、並びに該金属配線パターン形成方法を用いて金属配線が形成された配線基板を提供することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
請求項1の金属酸化物パターン形成方法は、上記の課題を解決するために、所定形状のパターンをスタンプ表面に形成する工程と、前記スタンプ表面に金属微粒子を吸着させる工程と、金属微粒子が表面に吸着したスタンプを基板に対し押印することにより、金属微粒子パターンを前記基板上に形成させる工程と、前記金属微粒子パターンが形成された基板を、金属イオン、硝酸イオン、および還元剤を含有する水溶液中に、100℃以下の温度で浸漬することによって、前記基板上に形成された金属微粒子上に金属酸化物を選択的に析出させることにより、金属酸化物パターンを形成する工程と、を含むことを特徴としている。
【0031】
上記の構成によれば、フォトレジスト、高温処理または紫外線照射などの工程を必要としないため、より効率的に金属酸化物の微細パターンを形成することができる。
【0032】
請求項2の金属酸化物パターン形成方法は、上記の課題を解決するために、前記スタンプが、ポリジメチルシロキサンからなることを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、前記スタンプとしてポリジメチルシロキサンを用いることにより、アディティブ工法による、より微細な所望のパターン形状をより容易かつ確実に形成することができる。
【0035】
請求項の金属酸化物パターン形成方法は、上記の課題を解決するために、前記スタンプは、液状ポリマー前駆体と硬化剤とを前記所定形状のパターンを有した鋳型に鋳込んだ後、固化、そして前記鋳型から剥離するという模型複製法によって作製されることを特徴としている。
【0036】
請求項の金属酸化物パターン形成方法は、上記の課題を解決するために、前記金属微粒子は、貴金属微粒子であることを特徴としている。
【0037】
請求項の金属酸化物パターンは、上記の課題を解決するために、前記基板は、ガラス基板、セラミック基板、シリコンウェハーおよびポリマー基板からなる群より選ばれるいずれか一種の基板であることを特徴としている。
【0038】
請求項の金属酸化物パターン形成方法は、上記の課題を解決するために、 前記還元剤は、アミン系還元剤であることを特徴としている。
【0039】
請求項の金属酸化物パターン形成方法は、上記の課題を解決するために、前記金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化鉄、酸化セリウムからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種の化合物であることを特徴としている。
【0040】
請求項の金属配線パターン形成方法は、上記の課題を解決するために、請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属酸化物パターン形成方法により、金属酸化物パターンを形成する工程と、前記金属酸化物パターンが形成された基板を、金属触媒を含む金属塩溶液中に浸漬し、前記金属塩溶液中の金属イオンを金属酸化物表面に吸着させる工程と、前記基板を金属めっき液中に浸漬し、金属を金属酸化物パターン上に選択的に析出することにより金属配線パターンを形成する工程と、を含むことを特徴としている。
【0041】
上記の構成によれば、フォトレジスト、高温処理または紫外線照射などの工程を必要としないため、より効率的に金属配線の微細パターンを形成することができる。
【0044】
上記本発明の金属酸化物パターン形成方法及び金属配線パターン形成方法は、たとえば、模型複製法によって作製される。まず、所望の形状のパターンを有したポリジメチルシロキサン(PDMS)製のスタンプを、パラジウム、金、銀、銅などのコロイド溶液に浸し、金属微粒子をスタンプに吸着させる。次に、このスタンプを基板に軽く押しつけ、数分後にスタンプを基板から剥離する。このマイクロコンタクトプリンティング(μCP)法によって、スタンプの形状通りに金属微粒子のパターンが基板上に形成される。次に、金属微粒子パターンを有した基板を金属イオン、硝酸イオンおよび適当な還元剤(例えば、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン)を含有する水溶液に100℃以下の温度で浸漬することによって、金属酸化物が金属微粒子パターン上に選択的に析出し、パターンを形成する。上記μCP法の詳細については、後述する。
【0045】
本発明の金属配線パターン形成方法では、次いで、酸化亜鉛薄膜パターンを有した基板を無電解めっきの触媒となる金属を含む金属塩溶液(例えば、塩化パラジウム)に浸漬し、金属イオンを酸化亜鉛に吸着させる。浸漬は比較的短時間で行うことが望ましい。さらに、基板を無電解金属めっき液に浸漬することによって、金属膜が酸化亜鉛パターン膜上に選択的に析出し、金属配線パターンが形成される。
【0046】
上記のように、本発明では、上記PDMSスタンプ等のスタンプを、金属酸化物の析出に必要な触媒としての金属微粒子を金属微粒子パターンとして形成させるために用いている。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下において、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
本発明の金属酸化物パターン形成方法は、所定形状のパターンをスタンプ表面に形成する工程と、前記スタンプ表面に金属微粒子を吸着させる工程と、前記スタンプを基板に対し押印(押圧)することにより、前記形状どおりに金属微粒子のパターンを前記基板上に形成させる工程と、前記基板上に形成された金属微粒子のパターン上に金属酸化物を選択的に析出させることにより、金属酸化物パターンを形成する工程と、を含んでいる。
【0048】
また、本発明の金属配線パターン形成方法は、上記金属酸化物パターン形成方法により、金属酸化物パターンを形成する工程と、前記金属酸化物パターンが形成された基板を、金属触媒を含む金属塩溶液中に浸漬し、前記金属塩溶液中の金属イオンを金属酸化物表面に吸着させる工程と、前記基板を金属めっき液中に浸漬し、金属を金属酸化物パターン上に選択的に析出することにより金属配線パターンを形成する工程と、を含んでいる。
【0049】
以下に、本発明の金属酸化物パターン形成方法及び金属配線パターン形成方法に用いられるマイクロコンタクトプリンティング法について説明する。
マイクロコンタクトプリンティング法は米国のハーバード大学のG.M.Whitesidesのグループにより最初に報告され、特に自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer)のパターニングに非常に有用な方法である「A. Kumar, H. A. Biebuyck, G. M. Whitesides, Langmuir, 1994, 10, 1489-1511; Y. Xia and G. M. Whitesides, Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 550-575」。
【0050】
μCP法による自己組織化単分子膜の作製過程は以下のようである。まずは、所望の形状のパターンを持ったPDMSスタンプをアルカンチオールのような自己組織化能を持つ有機溶液に浸して、PDMSスタンプ上に前記アルカンチオールをインクのようにしてつける。次に、このスタンプを金、銀などを蒸着した基板に押し付け、スタンプの隆起部分(凸の部分)のアルカンチオール分子を基板に転移する。その結果、基板上にスタンプの形状通りにアルカンチオールの自己組織化単分子層パターンが形成される。
【0051】
PDMSスタンプは模型複製法により容易に作られる。つまり、液状のPDMSポリマーの前駆体と硬化剤とを所望の形状のパターンを有したもの(鋳型)に鋳込んで、PDMSの固化によって作製する。
【0052】
PDMSスタンプによるパターンの形成方法は以下のような特徴をもつ。1)PDMSは弾性体であるため、平面状の基板だけではなく、非平面状の基板(例えば、円状基板、楕円状基板など)でもパターン化ができる。「Y. Xia and G. M. Whitesides, Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 550-575」。2)PDMSスタンプは耐久性を有するため、同じのスタンプが何回でも使える。3)この方法によってサブミクロンオーダーの微細なパターンが容易に作られる。
【0053】
図1は本発明の金属酸化物パターン形成方法の具体的な過程の一例を示す説明図である。また、図2は、本発明の金属配線パターン形成方法の具体的な過程の一例を示す説明図である。
両図中では、金属酸化物がZnOである場合を例として示した。本発明の金属酸化物パターン形成方法の第1ステップは、所望の形状のパターンを有するPDMSスタンプの作製である。一般的な作製方法としては、液状のPDMS前駆体と硬化剤とをパターニングされた模型物質(例えば、シリコンウェハ)に鋳込み、放置・固化することによって作製する。模型物質のパターンの形状および解像度を変形なく複製するためには、模型物質のパターンの形態比が0.5〜2の範囲内にあることが望ましい。
【0054】
次に、得られたPDMSスタンプを金属コロイドの溶液に浸漬し、金属微粒子をスタンプに吸着させる。PDMSの表面は疎水性であるため、適当な界面活性剤で安定した金属微粒子は、容易にPDMSの表面に吸着する。
【0055】
金属微粒子の種類としては、Pd、Au、Cu、Agなどの貴金属微粒子が望ましい。これらの金属微粒子は次の溶液プロセスで金属酸化物膜を析出するための触媒として働く。つまり、このような金属微粒子がなければ、金属酸化物膜が形成できない。貴金属の微粒子を用いるのは、それらが無電解めっき反応の触媒として活性が高いからである。
【0056】
界面活性剤の種類は特に制限されず、金属微粒子を安定させられる界面活性剤であれば良い。通常の溶液プロセスで合成した上記金属微粒子は、その表面がマイナスチャージするので、陽イオン性界面活性剤を用いることが特に望ましい。
【0057】
次に、金属微粒子を吸着したPDMSスタンプを適当な基板(ガラス基板、セラミック基板、シリコンウェハーおよびポリマー基板など)に軽く押し付け、スタンプの突起部分の金属コロイドを基板上に転移させる。その結果、基板上にPDMSの形状通りに金属微粒子のパターンが形成される。
【0058】
転移した金属微粒子を基板上に密着性良く付着させるために、基板を適当な方法で清浄化してもよい。清浄化する方法は基板の種類によって異なるが、基板表面を親水化できる方法であればよい。ガラス、セラミック、シリコンウェハー基板の洗浄については、それぞれ確立されたウェットプロセス(例えば、酸あるいはアルカリ溶液で洗浄)を用いればよい。ポリマー基板の場合は、水素や酸素プラズマで処理すれば、親水化できる。
【0059】
また、前記密着性を改善するために、洗浄以外の方法を用いることもできる。例えば、基板表面を適当なシランカップリング剤で修飾することによって、転移した金属微粒子の密着性、そしてその上に析出した酸化物膜の密着性を向上させることができる。具体的には、ガラス表面を4−アミノブチルトリエトキシシランH2NCH2CH2CH2Si(OC2H5)3で修飾することでパラジウム粒子の密着性が向上したことが本発明者らによって確認されている。
【0060】
金属微粒子パターン上での金属酸化物膜の形成は、たとえば、特開平2000−8180号公報および特開平11−71112号公報に開示された方法を用いることができる。すなわち、金属酸化物膜は、金属微粒子パターンを作製した基板を金属イオン、硝酸イオンおよびジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボランなどのアミン系還元剤を含有する水溶液に、好ましくは、100℃以下の温度で浸漬することによって形成することができる。
【0061】
金属微粒子の触媒作用によって、金属酸化物が金属微粒子パターン上に選択的に析出し、金属酸化物パターンが形成される。本発明の方法によれば、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化鉄、酸化セリウムなどの金属酸化物膜の微細なパターンが容易に作製される。
【0062】
透明な金属酸化物パターン膜を得るためには、上記金属イオンと硝酸イオンの濃度が0.05〜0.5 mol/l、好ましくは0.05〜0.2 mol/lを採用する。また、還元剤の濃度が0.001〜0.5 mol/l、好ましくは0.005〜0.05 mol/lを採用する。反応液の温度は30〜80℃の範囲内が望ましい。
【0063】
本発明の金属配線パターン形成方法では、さらに、酸化亜鉛薄膜パターンを形成した基板を無電解めっきの触媒となる金属を含む金属塩溶液に短時間浸し、金属イオンを酸化亜鉛に吸着させる。
【0064】
無電解めっきの触媒となる金属を含む金属塩溶液としては、例えば、白金、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、コバルトなど酸性塩溶液が挙げられる。特に優れた効果を示すのはパラジウムの塩溶液と銅の塩溶液である。パラジウム、銅の塩溶液における酸化亜鉛膜の浸漬時間は、例えば、数秒から数十分でよいが、通常の場合は数分間の浸漬で十分である。
【0065】
次に、金属イオン(例えば、パラジウムイオン)を吸着した酸化亜鉛パターンを金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、コバルトなどの無電解めっき浴に浸漬する。この時、吸着した金属イオンは無電解めっき浴中の還元剤によってゼロ価の金属(例えば、Pd0)までに還元され、無電解めっき反応の触媒としてはたらく。この触媒作用によって、金属膜が酸化亜鉛パターン膜上に選択的に析出し、金属配線パターンが形成される。
【0066】
本発明の配線基板は、基板上に、上記金属配線パターン形成方法を用いて金属配線パターンを形成してなる。
【0067】
図1〜2に示すように、本発明による金属酸化物膜パターン形成方法はアディティブ工法であり、サブトラクティブ工法に必要なエッチングプロセスが不要であるので、パターンの解像度への悪影響が避けられる。また、操作過程が簡便で、フォトレジスト、高温処理あるいは紫外線照射などの操作も不要である。
【0068】
上記スタンプ用材料としては、上記鋳型に鋳込むことにより微細パターンを形成できるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、上記PDMSのほか、ポリウレタン樹脂や、ポリイミド樹脂等を用いてもよい。上記例示の材料のうち、PDMSが成形性、加工性等に優れているため特に好ましい。
【0069】
【実施例】
以下において、酸化亜鉛微細パターンの作製過程を例にして本発明を具体的に説明する。
【0070】
〔実施例1〕
模型複製法によって解像度50μm、形態比(aspect ratio)1のPDMSスタンプを作製した。所用模型はパターニングされたシリコンウェハであった。具体的には、液状のPDMS前駆体(SYLGARD silicone elastomer 184)と硬化剤とを上記シリコンウェハに鋳込んだ後、室温で1晩中放置し、固化させた。固化したPDMSをシリコンウェハから剥離し、PDMSスタンプを完成させた。
【0071】
金属コロイドは臭化テトラオクタデシルアンモニウムで安定化したパラジウム微粒子(Pd/[C18H37]4N+Br-)を用いた。Pd/[C18H37]4N+Br-は以下の過程で合成した。2g酢酸パラジウムと2.5g臭化テトラオクタデシルアンモニウムとを100mlのトルエン‐THF混合溶媒(5:1(v/v))に分散した後、12.5ml無水エタノールを添加した。その後、65℃で12h還流した。更に50mlエタノールを添加し5h放置した。上澄みを除去した沈殿を乾燥し1g程度の黒い粉末状固体を得た。Pdコロイドは0.3g Pd/[C18H37]4N+Br-を200mlトルエンに超音波で再分散することによって作製した。得られたPd粒子のサイズは10nm程度であることが粒度分布測定と透過電子顕微鏡(TEM)によって分かった。
【0072】
次に、PDMSスタンプを上記Pdコロイド液に5秒間浸漬した後、窒素ガスで乾燥した。この過程を3回繰り返した。その後、スタンプを予処理したガラス基板に軽く押し付け(5分間)、Pd微粒子パターンをガラス基板に転移した。
【0073】
ガラス基板(Corning 1709)の予処理は基板を硫酸‐過酸化水素(7:3(v/v))の混合液に30分間浸漬した後、脱イオン水で洗浄することによって行った。このような清浄化した基板上にはPd微粒子が容易に転写された。
【0074】
酸化亜鉛パターンの形成は上記Pdパターンを有したガラス基板を硝酸亜鉛(0.1mol/l)とジメチルアミンボラン(0.02 mol/l)の混合水溶液に60℃で2時間浸漬することによって行った。この過程によって酸化亜鉛がガラス上のPdパターンに沿って析出し、0.2μm厚さの酸化亜鉛パターン膜(解像度50μm)が得られた。
【0075】
〔実施例2〕
模型複製法によって解像度100μm、形態比(aspect ratio)1のPDMSスタンプを作製した。所用模型はパターニングされたシリコンウェハであった。具体的には、液状のPDMS前駆体(SYLGARD silicone elastomer 184)と硬化剤とを上記シリコンウェハに鋳込んだ後、室温で1晩中放置し、固化させた。固化したPDMSをシリコンウェハから剥離し、PDMSスタンプがを完成させた。
【0076】
金属コロイドは臭化テトラオクタデシルアンモニウムで安定化したパラジウム微粒子(Pd/[C18H37]4N+Br-)を用いた。Pd/[C18H37]4N+Br-は以下の過程で合成した。2g酢酸パラジウムと2.5g臭化テトラオクタデシルアンモニウムを100mlのトルエン‐THF混合溶媒(5:1(v/v))に分散した後、12.5ml無水エタノールを添加した。その後、65oCで12h還流した。更に50mlエタノールを添加し5h放置した。上澄みを除去した沈殿を乾燥し1g程度の黒い粉末状固体が得られた。Pdコロイドは0.3g Pd/[C18H37]4N+Br-を200mlトルエンに超音波で再分散することによって作製した。得られたPd粒子のサイズは10nm前後であることが粒度分布測定と透過電子顕微鏡(TEM)によって分かった。
【0077】
次に、PDMSスタンプを上記Pdコロイド液に5秒間浸漬した後、窒素ガスで乾燥した。この過程を3回繰り返した。その後、スタンプを予処理したガラス基板に軽く押し付け(5分間)、Pd微粒子パターンをガラス基板に転移した。
【0078】
ガラス基板(Corning 1709)の予処理は基板を硫酸‐過酸化水素(7:3(v/v))の混合液に30分間浸漬した後、脱イオン水で洗浄することによって行った。このような清浄化した基板上にはPd微粒子が容易に転移された。
【0079】
酸化亜鉛パターンの形成は上記Pdパターンを有したガラス基板を硝酸亜鉛(0.1mol/l)とジメチルアミンボラン(0.02 mol/l)の混合水溶液に60oCで2時間浸漬によって行った。この過程によって酸化亜鉛がガラス上のPdパターンに沿って析出し、0.2μm厚さの酸化亜鉛パターン膜(解像度100μm)が得られた。
【0080】
次に、酸化亜鉛パターンを形成した基板を無電解めっき浴(組成:CuSO4・5H2O(25g/l、EDTA・2Na(65g/L)、NaOH(40g/l)、ホルムアルデヒド(7.8g/l)、浴温:30°C)に30分間浸漬し、銅膜が酸化亜鉛パターン上に選択的に析出し、銅配線パターン(解像度:100μm厚さ:0.2μm)が形成された。
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、従来法のようなフォトレジストコーティング、高温処理または紫外線照射などの操作を要さずに、アディティブ工法で金属酸化物・金属配線の微細なパターンが容易に形成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係る金属酸化物パターン形成方法による金属酸化物パターン形成過程の概略を示した説明図である。
【図2】 本発明の一実施の形態に係る金属配線パターン形成方法による金属配線パターン形成過程の概略を示した説明図である。

Claims (8)

  1. 所定形状のパターンをスタンプ表面に形成する工程と、
    前記スタンプ表面に金属微粒子を吸着させる工程と、
    金属微粒子が表面に吸着したスタンプを基板に対し押印することにより、金属微粒子パターンを前記基板上に形成させる工程と、
    前記金属微粒子パターンが形成された基板を、金属イオン、硝酸イオン、および還元剤を含有する水溶液中に、100℃以下の温度で浸漬することによって、前記基板上に形成された金属微粒子上に、金属酸化物を選択的に析出させることにより、金属酸化物パターンを形成する工程と、
    を含むことを特徴とする金属酸化物パターン形成方法。
  2. 前記スタンプは、ポリジメチルシロキサンからなることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物パターン形成方法。
  3. 前記スタンプは、液状ポリマー前駆体と硬化剤とを前記所定形状のパターンを有した鋳型に鋳込んだ後、固化、そして前記鋳型から剥離するという模型複製法によって作製されることを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物パターン形成方法。
  4. 前記金属微粒子は、貴金属微粒子であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の金属酸化物パターン形成方法。
  5. 前記基板は、ガラス基板、セラミック基板、シリコンウェハーおよびポリマー基板からなる群より選ばれるいずれか一種の基板であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の金属酸化物パターン形成方法。
  6. 前記還元剤は、アミン系還元剤であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の金属酸化物パターン形成方法。
  7. 前記金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化鉄、酸化セリウムからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の金属酸化物パターン形成方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の金属酸化物パターン形成方法により、金属酸化物パターンを形成する工程と、
    前記金属酸化物パターンが形成された基板を、金属触媒を含む金属塩溶液中に浸漬し、前記金属塩溶液中の金属イオンを金属酸化物表面に吸着させる工程と、
    前記基板を金属めっき液中に浸漬し、金属を金属酸化物パターン上に選択的に析出することにより金属配線パターンを形成する工程と、
    を含むことを特徴とする金属配線パターン形成方法。
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