JP4445539B2 - 電界放出型電極、その製造方法及びその製造装置 - Google Patents

電界放出型電極、その製造方法及びその製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、電界放出により電子を放出する電界放出型電極、その製造方法、及びその製造装置に関する。
電界放出型電極は、エミッタに強電界を印加することで真空中に冷電子を放出することができ、熱カソードに替わる電子放出素子として注目されており、より低い閾値電界強度、エミッション電流の安定性、均一性をもとめてさまざまな研究がなされている。
電界放出型電極としては、カーボンナノチューブ等の炭素膜を利用する構成等が知られている。
一般に、電界放出型電極では、電子放出サイトの表面に、水蒸気などの極性分子ガスが吸着すると(一般に、大気圧から排気される真空チャンバ内の残留ガスのほとんどは、チャンバ内に吸着していた水分子が脱離したのものと考えてよいため以後水分子とする)、それがエミッタ表面の仕事関数を減少させ、電子放出特性が向上(より低い電界強度で高い電子放出)することが知られている。このため、真空度によって水分子の電子放出素子への吸着状態が変化し、電子放出が真空度に対する依存性を持つことが知られている。
このような吸着分子による特性の変化は電子放出特性を向上(より低い電界強度で大きな電子放出)させることが可能となる一方、電子放出サイトに附着した分子は、電子線照射に伴い真空中に脱離されるため、これが真空度を劣化させる。真空度の劣化は、電子線照射によってイオン化される原子やイオンが増大することを意味し、これが電界によって電子放出素子に衝突することで、電子放出素子を劣化させる原因となる。また、その衝突によってさらに多くのガスがエミッタ表面より脱離することで劣化に正のフィードバックがかかるため、真空度がある程度以上悪くなるとイオンの衝突は火花放電へと成長し、電子放出素子やその周辺の電極構造が大きく損傷させることになる。このため、電界電子放出素子を利用した製品には、電子放出素子とそれを駆動させる電極構造から(電子放出特性を向上させる水分子であっても)ガスを取り除く工程が設けられることが一般的であり、その方法についての出願が数多くなされている。
電子放出素子およびその陽極の脱ガス方法としては、ベーキングと呼ばれる真空排気状態での加熱処理や、特許文献1に開示されているようにエージングと呼ばれる脱ガスを目的とした処理が知られている。
特開2000−243291号公報
本発明者は、プラズマCVD法によって1μmよりも小さい粒径のナノダイヤモンド微粒子を含む電子放出膜を成膜するに至っている。しかし、プラズマCVDでは、ナノダイヤモンド微粒子層が成膜される基板上全面にわたって活性種密度を均一にすることが難しく、基板の位置に応じて電子放出膜の電子放出特性に偏りが発生することがある。このような電子放出特性の偏りを通常のエージングによる手段(電子放出膜中の低電界電子放出サイトの燃焼除去)によって均一化させる手法により均一化をはかると、電子放出特性が弱い部分に特性を揃えることになるため、エミッタの電子放出の総量が大きく減少することになる。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、比較的均一な電子放出密度を有する電界放出型電極の製造方法、電界放出型電極、及び製造装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る電界放出型電極の製造方法は、
電圧の印加により電子を放出する電子放出膜の表面に水分子を吸着させる加湿処理と、
加湿された前記電子放出膜と、前記電子放出膜に対向するように設けられた電極と、の間にエージング電圧を印加する電圧印加処理と、
を含むことを特徴とする。
前記電極は、少なくとも前記電子放出膜と対向する面が親水性であってもよい。
前記電極の前記電子放出膜と対向する面に蛍光体が塗布されていてもよい。
前記電子放出膜を、真空状態で加熱し、水分子を前記電子放出膜上から除去する真空加熱工程を、更に備えてもよい。
前記真空加熱工程は、550℃〜1000℃で行われてもよい。
前記電子放出膜は、グラフェンシートを有するカーボンナノウォールを有してもよい。
前記電子放出膜は、前記カーボンナノウォール上に、更に微結晶ダイヤモンド膜を備えてもよい。
前記電子放出膜は、前記微結晶ダイヤモンド膜の上に突出するように形成され、グラファイトからなる突起部を更に備えてもよい。
前記エージング電圧はパルス電圧であることが好ましい。
前記パルス電圧は、デューティ比が0.2%〜5%であることが好ましい。
前記パルス電圧は、前記電子放出膜の初期時の電子放出密度が0.5mA/cm2〜5mA/cm2となるような電圧であることが好ましい。
前記パルス電圧の繰り返し周期が250Hz〜1kHzであることが好ましい。
前記電子放出膜は加湿雰囲気に晒すことによって、表面に水分子を吸着させてもよい。
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る電界放出型電極は、
上述の第1の観点に係る電界放出型電極の製造方法によって製造される。
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る電界放出型電極の製造装置は、
電圧の印加により電子を放出する電子放出膜の表面に水分子を吸着させるよう加湿処理し、加湿された前記電子放出膜と、前記電子放出膜に対向するように設けられた電極と、の間にエージング電圧を印加する、ことを特徴とする。
本発明によれば、電界放出型電極の表面への水の吸着、脱離を行うことで、電子放出密度を比較的均一化させることが可能な電界放出型電極の製造方法、電界放出型電極、及び製造装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る電界放出型電極の製造方法、電界放出型電極、及び製造装置について図を用いて説明する。
まず、本発明の実施形態に係る電界放出型電極の製造方法によって製造される電界放出型電極10について図面を用いて説明する。図1は電界放出型電極を模式的に示す断面図である。
電界放出型電極10は、図1に示すように導電性の基板11と、電子放出膜13と、を有する。また、本実施形態では電子放出膜13は、曲面をなす花弁状(扇状)の複数のグラファイト構造の炭素薄片が起立しながら互いにランダムな方向に繋がりあっているカーボンナノウォール(Carbon Nano Wall;以下、CNWと記す)31と、CNW31上に連続して堆積された、粒径がナノメートルオーダー(1μm未満)の複数の微結晶ダイヤモンドを含む層である微結晶ダイヤモンド膜(炭素膜)32と、主にCNW31の一部が成長し、微結晶ダイヤモンド膜32の隙間を貫通し、微結晶ダイヤモンド膜32の表面から突き出ている針状の針状炭素棒33と、を有する。また、電子放出膜13は、後述するコンディショニング処理によって、成膜直後より、膜全体に比較的均一に電子が放出されるよう電子放出特性が改善されている。微結晶ダイヤモンド膜32は、集積された複数のダイヤモンド微粒子32aと、ダイヤモンド微粒子32a間に介在するsp2結合が支配的な相32bと、を含んでいる。針状炭素棒33は、カーボンナノチューブのような空洞構造ではなく、内部に芯が詰まった構造であり、機械的強度に優れている。
また、本実施形態の電界放出型電極10は、例えば図2に示すように電界放出蛍光管20等の電子機器に用いられる。電界放出蛍光管20は、図2に示すように、電子放出膜を有する電界放出型電極10(カソード電極)と、電界放出型電極10と対向するように設けられたアノード電極22と、これらカソード電極及びアノード電極22を真空雰囲気で封入するガラス管23と、アノード電極22の電界放出型電極10と対向する面に設けられた蛍光体膜24と、を備えており、電界放出型電極10の基板11には、コバール等の配線26が接続され、アノード電極にはコバール等の配線27がそれぞれ接続されている。また、電界放出型電極(カソード電極)10とアノード電極22とは高圧駆動電源29に接続されている。
また、電界放出蛍光管20は、図2に示すような二極型に限られず、図3に示すように電子を引き出す、又は止める制御を行うためのグリッド電極28を追加し三極型としてもよい。グリッド電極28には電界放出型電極10からの電子放出量を調整することができるよう可変電圧V1が印加されており、アノード電極22及び電界放出型電極10間には蛍光体膜24に適した固定電圧V2が印加されている。
次に、本実施の形態に係る電界放出型電極の製造方法について図を用いて説明する。
まず、基板11を用意し、基板11の表面をエタノール又はアセトンにより脱脂・超音波洗浄を十分に行う。
基板11としては、少なくとも半導体、金属あるいは半金属のいずれかを含む導電性材料、例えばSi、Mo、Ni、ステンレス合金からなる基板を用いる。金属あるいは半金属は、基板11全体に含まれてもよく、電子放出膜13が形成される面側のみ形成されていてもよい。基板11上には図1に示すように電子放出膜13とが形成されており、電子放出膜13はプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置によって成膜されるため、基板11は、この成膜温度以上の融点、好ましくは800℃以上、より好ましくは、1000℃以上の融点を備えることが好ましい。また、配線26及び配線27は、ガラス管23に用いられるソーダガラスとほぼ同一の熱膨張率をもつ材料を用いることが好ましく、例えば42Ni合金を用いるのが好ましい。
次に、基板11上に電子放出膜13を形成する。電子放出膜は直流プラズマCVD装置によって成膜される。この直流プラズマCVD装置100の構成例を図4に示し、また成膜時の基板の温度変化を示すグラフを図5に示す。
図4に示す直流プラズマCVD装置100は、チャンバ110と、ステージ111と、陽極111aと、冷却部材112と、陰極113と、流路113aと、管路113b,113cと、窓114と、分光輝度計115と、ガス供給用管路116と、排気用管路117と、出力設定部118と、制御部118aと、管路119a,119b,119cと、図示しない放射輝度計と、基板11の温度を測定する熱電対と、を備える。
チャンバ110は、基板11をチャンバ110外の外気から遮断する。チャンバ110内には、鋼でできているステージ111が配置され、ステージ111の上部に円板状の熱伝導性のよく、融点が高い金属(モリブデン等)からなる陽極111aが取付けられている。基板11は、陽極111aの上側載置面に固定される。ステージ111は、軸111xを中心にして陽極111aとともに回転するように設定されている。
陽極111aの下側には閉塞された空間111bが設けられており、空間111bには、冷却部材112が配置され、図示しない移動機構により、冷却部材112が矢印の通り上下に移動自在な構造になっている。冷却部材112は、銅等の熱伝導率の高い金属で形成され、その内部に冷却された水又は冷却された塩化カルシウム水溶液等の冷却媒体が管路119aから冷却部材112内の流路119bに入り、管路119cより排出されるように循環し、冷却部材112全体を冷やしている。このため、冷却部材112が上方に移動することにより、図4(b)に示すように、冷却部材112の面112aがステージ111の下面に接近、あるいは当接すると、冷却部材112とステージ111間の熱抵抗が減少し、ステージ111が冷却される。これにより、その上部に位置する陽極111aを間接的に冷却して、陽極111aが基板11の熱を奪う。
陽極111aの上方には、一定の距離を置いて陽極111aと対向するように陰極113が配置されている。陰極113の内部には、冷却媒体が流れる流路113aが形成され、その流路の両端には、管路113b,113cが取付けられている。管路113b,113cは、チャンバ110に形成された孔を貫通し流路113aに連通している。管路113b、流路113a、管路113cには、水、塩化カルシウム水溶液等の冷却媒体が流れることにより陰極113の発熱を抑制する。
チャンバ110の側面には、耐熱性ガラスがはめ込まれた窓114が形成されており、チャンバ110の外側には窓114のガラスを介して基板11の温度を測定する分光輝度計115が配置されている。
また、直流プラズマCVD装置100は、原料ガスをガス供給用管路116を介して導入する原料供給系装置(図示略)とチャンバ110内から気体を排気用管路117を介して排出してチャンバ110内の気圧を調整する排気系装置(図示略)と、出力設定部118とを備えている。
放射輝度計は、図示しない窓から基板11における電子放出膜13が成長する面からの熱輻射による放射輝度を測定するものである。分光輝度計115は、窓114から放射された光の分光輝度の測定を行う。
出力設定部118は、陽極111aと陰極113との間の電圧又は電流値を設定する制御装置であり、制御部118aと可変電源118bとを備えている。制御部118aは、分光輝度計115によって測定されたスペクトルのデータ情報に基づいて予めプログラミングされた演算を行って基板11の正確な温度を算出し、基板11の温度が予定の値になるように、陽極111aと陰極113との間の電圧又は電流値を調整する。制御部118aは、具体的には、プラズマ雰囲気で加熱される基板11からの熱輻射による放射輝度が、放射輝度計の計測誤差以下の状態のプラズマ発光のスペクトルを予め測定しておいてから、測定されたスペクトルのうち、プラズマ誘起電力を変化させても各波長の放射輝度比が変化しない波長領域を選定し、基板11に関するプランクの放射式或いはその近似式とスペクトルを線形結合した式を、選定された波長領域において、基板11の熱輻射とプラズマ発光が重畳したスペクトルに非線形最小自乗法によりフィッティングさせておき、基板11に加熱処理している際に、フィッティングに基づいて基板11の温度を算出する。
このようなCVD装置の陽極112a上に基板11を載置する。
次に、基板11を直流プラズマCVD装置100の陽極111a上に載置する。基板11の載置が完了すると、次に、チャンバ110内を排気系装置を用いて減圧し、続いて、ガス供給用管路116から水素ガスとメタン等の組成中に炭素を含有する化合物のガス(炭素含有化合物)とを導く。
原料ガス中の組成中に炭素を含有する化合物のガスは、全体の3vol%〜30vol%の範囲内にあることが望ましい。例えば、メタンの流量を50SCCM、水素の流量を500SCCMとし、全体の圧力を0.05〜1.5atm、好ましくは0.07〜0.1atmにする。また、基板11ごと陽極111aを10rpmで回転させ、基板11上の温度ばらつきが5%以内になるようにして陽極111aと陰極113との間に直流電源を印加し、プラズマを発生させ、プラズマ状態及び基板11の温度を制御する。
図5は、基板11表面から放出される熱輻射スペクトルから算出された放射率、及び基板11の表面温度を成膜時間に対してプロットした図である。図5に示すように成膜時間約2時間までは、基板11のカーボンナノウォール31が成膜される箇所の温度を960℃〜1100℃に維持し成膜を行う。この温度は分光輝度計115により測定されている。このとき、冷却部材112は、陽極111aの温度に影響がないように十分離間されている。基板の放射率、温度の評価は、分光輝度計115で測定されたスペクトルから、直流プラズマCVD装置のプラズマ輻射のスペクトルを減算して基板11側の表面での熱輻射のみから温度を求めるように設定されている。
基板11上に下地となるカーボンナノウォール31が十分成膜されたら、引き続きガス雰囲気を変えることなく連続したまま、プラズマにより加熱された陽極111aよりも遙かに低い温度の冷却部材112を上昇させてステージ111に接近、あるいは当接させて陽極111aを冷却する。このとき、冷却された陽極111aは、その上で固定されている基板11を冷却させ、基板11側の表面が、図5に示すように、カーボンナノウォール31の成膜時より10℃以上低い複数のダイヤモンド微粒子32aの成膜適正温度にまで急冷する。このときの温度は、890℃〜950℃、より望ましくは920℃〜940℃である。なお、その後の温度を安定にするためにも、冷却時に陽極11a及び陰極となる電界放出型電極10の印加電圧又は印加電流値をあまり変化させないことが好ましい。
基板11が一気に冷えたために、カーボンナノウォール31の成長が抑制されると、カーボンナノウォール31上に粒径が5nm〜10nmの複数のダイヤモンド微粒子32aが成長を開始し、やがてカーボンナノウォール31の成長に代わってダイヤモンド微粒子32aの成長が支配的になる。そして、ダイヤモンド微粒子32aの塊状体が層構造をなす微結晶ダイヤモンド膜32が形成されるとともに、ダイヤモンド微粒子32aの塊状体が形成されていない領域、つまり図1に示すようなダイヤモンド微粒子32aの塊状体間に位置する隙間に、カーボンナノウォール31の表面が変形した針状炭素棒33が成長し、その先端部が微結晶ダイヤモンド膜32の表面より突出するように形成される。カーボンナノウォール31の発生点は主にカーボンナノウォール31の表面であるが、それ以外にも発生することがある。しかしながら、後述するようにカーボンナノウォール31から成長している針状炭素棒33の方が、内部までグラファイト層の芯がつまっているために機械的強度が大きく、かつ電界集中しやすい棒状構造なので針状炭素棒33の先端から安定して電子放出することができる。
成膜の終了段階では、陽極111aと陰極113との間の電圧の印加を停止し、続いて、原料ガスの供給を停止し、パージガスとして窒素ガスをチャンバ110内に供給して常圧に復帰した後、常温に戻った状態で基板11を取り出す。
また、このように成膜した電子放出膜13は、図1に模式的に示すように曲面をなす花弁状(扇状)の複数のグラファイト構造の炭素薄片が起立しながら互いにランダムな方向に繋がりあっているカーボンナノウォール31と、CNW31上に連続して堆積された、複数の微結晶ダイヤモンドを含む層である微結晶ダイヤモンド膜(炭素膜)32と、微結晶ダイヤモンド膜32の表面から突き出ている針状の針状炭素棒33と、を有する。
微結晶ダイヤモンド膜32が成膜される前のCNW31の表面(図1に示すCNW31と微結晶ダイヤモンド膜32との境界面に相当する面)を走査型電子顕微鏡によって走査した画像を図6に示す。また、CNW31のX線回折パターンを図7に、波長=532nmのレーザ光によるラマン分光スペクトルを図8に示す。図6に示すように、CNW31は、曲面をなす花弁状(扇状)の複数の炭素薄片が起立しながら互いにランダムな方向に繋がりあっている。CNW31は、0.1nm〜10μmの厚さである。また、図7に示すX線回折パターンから、グラファイトの面が確認される。更にラマン分光スペクトルを示す図8から、CNW31はsp2結合を有することが分かる。また、CNW31の炭素薄片は、1580cm-1付近のグラファイトの炭素−炭素結合の六角格子内での炭素原子の振動に起因する半値幅が50cm-1未満のGバンドのピークと、1350cm-1付近の格子欠陥をともなうグラファイトにみられるDバンドのピーク以外にピークがほとんど見られないことから、緻密で純度の高いsp2結合のグラファイトからなるといえる。これにより、CNW31の各炭素薄片は、格子間隔が0.34nmの数層〜数十層のグラフェンシートを含むことが分かる。グラフェンシートは、sp2結合を有し、導電性を示す。従って、CNW31は導電性を示す。
また、図1に模式的に示すように、CNW31からは針状炭素棒33が成長している。また、針状炭素棒33の周囲には微結晶ダイヤモンド膜32のダイヤモンド微粒子32aが配置している。このように針状炭素棒33がCNW31から成長することによって、針状炭素棒33とCNW31とが連続しているので、導体であるCNW31から針状炭素棒33に効率よく電子が供給され、針状炭素棒33から良好に電子が放出される。
次に、微結晶ダイヤモンド膜(炭素膜)32の表面を走査型電子顕微鏡によって上面から走査した画像を図9に示し、断面を走査した画像を図10に示す。また、CNW31上に形成された微結晶ダイヤモンド膜32のX線回折パターンを図11に、波長=532nmのレーザ光によるラマン分光スペクトルを図12に示す。なお、微結晶ダイヤモンド膜32は、詳細に後述するように純粋なグラファイトとダイヤモンド粒子だけでなく、sp2とsp3の両方の結合をもつ中間的な相が確認され、これらの複合体を有する膜であるため、炭素膜と称するのが正確ではあるが、説明の便宜上微結晶ダイヤモンド膜と称する。
微結晶ダイヤモンド膜32は、粒径が5nm〜10nmのsp3結合の複数のダイヤモンド微粒子を含んだ層構造であり、その表面には、図9に示すようにダイヤモンド微粒子が数十から数百個程度集まり、笹葉のような組織が形成されている。そして、このような微結晶ダイヤモンド膜32では、図9及び図10に示すように表面に笹葉が複数集まって、図1に模式的に示すように、表面が略円形状の密集した複数の塊状体となってCNW31を覆っている。微結晶ダイヤモンド膜32の塊状体の径は1μm〜5μm程度であり、CNW31上を覆っている程度に成長していることが望ましい。微結晶ダイヤモンド膜32の表面は、下地となっているCNW31の表面より起伏が少なく比較的平滑になっている。また、この微結晶ダイヤモンド膜32の各塊状体の界面(粒界)は、図に示すように、隙間が形成されている。後述するように、微結晶ダイヤモンド膜32が成長していく過程で、微結晶ダイヤモンド膜32が立体障害となって、その下で成長し続けようとするCNW31に応力が加わった結果、CNW31の一部が針状に成長し、この隙間から突出した針状炭素棒33となっている。したがって、微結晶ダイヤモンド膜32及び微結晶ダイヤモンド膜32の塊状体間の隙間は、CNW31の成長を変質して多量の針状炭素棒33を形成させる効果を持っている。
微結晶ダイヤモンド膜32におけるX線回折パターンを調べると、図11に示すように、ダイヤモンド結晶の顕著なピークを有している。このような鋭敏なピークはダイヤモンドライクカーボンのような非晶質相では見られないことから結晶性ダイヤモンドが製造されていることが確認できる。また上記X線回折パターンでは、ダイヤモンドのピーク以外にも、グラファイトのピークもわずかに観察された。このことから、微結晶ダイヤモンド膜32の主表面には、ダイヤモンドのみではなく、針状炭素棒33や後述するsp2結合が支配的な相32b等の結晶性のあるグラファイトが存在し、微結晶ダイヤモンド膜32の表面は、完全な絶縁体ではなく針状炭素棒33が導通する程度に導電性を示しているために電子放出特性に優れていることが判る。
図12は、波長=532nmのレーザ光によるラマン分光測定を行ったものである。実線で示すスペクトルは、微結晶ダイヤモンド膜32の複数のダイヤモンド微粒子32aの集合体とsp2結合が支配的な相32bのラマンスペクトルを750cm-1〜2000cm-1の部分を抜き出し、抜き出した端部近傍を結ぶ線をベースラインとしてスペクトルからベースライン分の数値を取り除いたものである。
次いでポジションの初期値1140cm-1、1330cm-1、1333cm-1、1520cm-1、1580cm-1として擬Voigt型関数を置き、各々のピーク位置、ピーク高さ、線幅に自由度を持たせた非線形最小二乗法により、ピークを重ね合わせたプロファイルが実測スペクトルに合うようにフィットさせた。この結果、図12中で示されるように、実測スペクトルにほぼ一致するプロファイルが得られた。
ここでは、1140cm-1付近にCNWの信号には見られなかった信号が見られる。これは、CVDなどで合成されるダイヤモンドに見られるピークで、C−Cの結合角結合長さがsp3に近い構造を持ち、かつ結晶(あるいはクラスター)がナノオーダーサイズの相に由来するピークとみなされている。また、この図12から線幅の広いグラファイトのDバンドピーク(1355cm-1)に隠れて、1333cm-1にもピークが存在することが示唆されている。これは可視光によるラマン分光測定ではグラファイトに比べて1/20以下の感度しか持たないダイヤモンドに由来するピークと考えられる。このことから、図12のラマンスペクトルはダイヤモンド組成が支配的な結晶性のダイヤモンド微粒子からなる層32に起因することが考えられる。
このような特性を備える電子放出膜13は、プラズマCVD装置100のプラズマによる活性種の密度等の成膜条件によって電子放出特性に影響を及ぼす。このため、電子放出特性のムラを改善するために電子放出膜13の成膜後、コンディショニングを行う。コンディショニングは加湿状態におけるエージング処理と、ベーキング処理とからなる。
まず、図13に示す処理装置200で加湿状態においてエージング処理を行う。
処理装置200は、図13に示すように、真空チャンバ211と、導電性の陽極支持部212と、導電性の載置台(陰極)213と、陽極支持部212に支持された陽極214と、真空排気装置215と、質量分析器216と、高圧電源217と、高圧ソリッドステートスイッチ218と、パルスファンクションジェネレータ219と、高圧プローブ220と、デジタルオシロ221と、制御部222と、ビデオカメラ等の撮像装置223と、載置台213を支持する支持柱224と、陽極支持部212を支持する支持柱225と、を備える。載置台213上の電界放出型電極10と陽極214との間の距離は4.3mmに設定されている。支持柱224は、一部に、載置台213が真空チャンバ211内の床と導通しないためのアルミナ碍子等の絶縁体を備えている。支持柱225は、一部に、陽極支持部212が真空チャンバ211内の床と導通しないためのアルミナ碍子等の絶縁体を備えている。
真空チャンバ211内には、電界放出型電極が載置される載置台213に対向するように設置された陽極214を配する。その際、陽極214は、少なくとも載置台213に対向する面が親水性であることが好ましい。陽極214の表面が親水性であることにより、詳細に後述するようにエージング処理の過程で電界放出型電極10の電子放出膜13から脱離する水分子を一時的に陽極214に吸着させることができ、電極間の水蒸気分圧の急激な変化を緩やかにする効果を得られる。更に、図13に示すように、陽極214を、蛍光板、例えばITOなどの透明導電膜が設けられたガラス板214aのITOが形成された面側に親水性の表面をもつ蛍光体214bが塗布された板とすることで、蛍光体214bの蛍光状態から電子放出素子面状の電子放出分布をエージング過程で撮像装置223にて観察できる。また、陽極214はエージング過程で発生する電子放出膜13からの炭素含有分子(あるいはクラスター)などによって表面が次第に汚れていく。この汚れは大気中で400℃以上に加熱することで燃焼除去することができるため、陽極の材料は大気中で400℃の加熱に耐えるものであることが望ましい。
また、エージング処理においては、電界放出型電極もしくはその載置台213と陽極214との間に印加するピーク電圧とデューティ比とを、高圧電源217と、高圧ソリッドステートスイッチ218と、パルスファンクションジェネレータ219と、によって任意に変化させる。なお、デューティ比は、高圧ソリッドステートスイッチ211の単位時間に占めるオン時間の比率である。また、エージング処理においては、電界放出型電極と陽極との間に印加される電圧と電界放出型電極を介して流れる電流を同時に計測する。これにより、周期的に一定電界強度(印加電圧/電極間距離)を一定時間印加することで、電子放出を間歇的に発生させ、エージングを行う。その際に、パルス的に変化する電子放出量と電圧をオシロスコープなどの計測手段によって逐次評価しながらエージングを行い、電子放出密度の変化が収束した時点でエージングを終了させる。
まず、電界放出型電極10を、高湿度環境下、例えば25℃程度の室温で、湿度100%の状態に1分程度曝露し、その後、約10分間湿度50%で乾燥させる。加湿雰囲気の湿度が100%に限らず、80%以上が好ましく、また、加湿時間は1分に限らず、十分に加湿できれば1分未満であっても1分より長くてもよい。電界放出型電極の電子放出膜13表面は疎水性であり、環境の湿度変化に応じて水分を蒸発させるが、電子放出膜13の最表面にある水分の一部は吸着されたまま残るため、高湿度に曝していない(25℃、湿度50%の大気圧下にあった)電子放出膜と比較して多くの水分子を表面に吸着している。また、室温25℃、湿度50%で乾燥させる時間は約10分間であったが、1時間以内であれば、電子放出膜13は、本発明の目的に充分に適う程度の水分を保持できる。
乾燥後の電子放出素子を、電子放出素子に対して処理装置200の真空チャンバ211内に投入し、1×10-4Paまで真空引きを行う。
上述したように真空チャンバ211内には、エミッタに対向するようエミッタと絶縁された陽極214が配置される。陽極214の表面に親水性の材料を用いる場合、エージング処理中に電子放出膜から脱離する水分子を一時的に陽極214に吸着することができ、真空チャンバ211内の水蒸気圧の急激な変化を緩やかにすることができる。また、透明な陽極214から出射された蛍光を撮像装置223が捕捉することで、エージング処理の過程における電子放出膜上の電子放出分布を観察できる。
エージング処理中、電界放出型もしくは載置台と陽極との間にはピーク電圧とデューティ比を任意に変化させ、パルス電圧を印加する。また、電子放出素子-陽極間に印加される電圧と電子放出素子を介して流れる電流を同時に計測する。このようにして、周期的に一定電界強度(印加電圧/電極間距離)を一定時間印加することで、電子放出を間歇的に発生させ、エージングを行う。
また、エージング処理は、パルス的に変化する電子放出量と電圧をオシロスコープなどの計測手段によって逐次評価しながら行い、電子放出密度の変化が収束した時点でエージング処理を終了する。
なお、上述した加湿した状態におけるエージング処理によって、電子放出膜の不活性な電子放出サイトが活性化するプロセスは、以下のように考えられる。まず、成膜直後の状態では、電界放出型電極の電界放出膜の表面には電子放出を疎外する分子やクラスターが附着(あるいは吸着)している不活性な状態の電子放出サイトがある。このようなサイトに加湿処理によって図14(a)に示すように水分子が吸着する。水分子の吸着によって膜表面の見かけ上の仕事関数が低下した結果、電子放出の閾値電界強度が下がり、図14(b)に示すように電子放出サイトから電子が放出され始める。電子放出がなされることで、図14(c)に示すように吸着していた水分子は脱離されるが、それと同時に不活性要因となっていた分子やクラスターも同時に除去され、これまで不活性だった領域が活性状態に変化する。また、図14(d)に示すように電子放出サイトから脱離した水分子の一部は、パルス電界の休止時間(あるいは電界強度が電子放出の閾値強度以下になっている間)に再び電子放出膜(あるいは電子放出膜に対向する電極上に形成された蛍光体)に吸着する。さらに、その一部が未だ不活性な電子放出サイトに吸着する。また、図14(b)〜(d)が繰り返され、水分子の吸着及び脱離が繰り返されることで活性化された電子放出サイトが漸次的に増加する。このように(キロヘルツオーダーの)速いパルス頻度に対して、ゆっくりと電子放出が増大し、且つ電子放出密度が均一化していくと考えられる。
なお、エージングにおいて、電極間に印加される電力が大きいほど電子放出量の増大する速度が速くなるが、その分、電極間の水蒸気の分圧が高くなるので、電子放出膜がイオンによるボンバードメントによって損傷を受ける可能性が増大する。このため、図を用いて詳細に後述するように駆動電源のパルス頻度、デューティ比、あるいはピーク電圧を変えることによって変化するピーク電子放出密度を適正な量に調節することで、電極間の水蒸気分圧を、電子放出サイトの活性化を行うのに有効な圧力より大きいが、イオンボンバードメントによる劣化がほとんどない圧力以下に維持する必要がある。このような条件を見出すことでエージングによって活性化される電子放出サイトの量を最大化させることができる。なお、これらのパラメータをエージング過程で計測データからフィードバック制御してもよい。さらに印加電圧、電子放出密度、デューティ比を、蛍光体の輝度が飽和しない条件とすることで、蛍光体の発光状態から電子放出の分布状態をリアルタイムで評価することも可能である。
以下、エージング処理におけるパルスデューティ比、パルス頻度、初期の電界放出密度を変化させた場合の電子放出密度の増加量を示す。
まず、エージング処理における電子放出の経時変化のパルスデューティ比に対する依存性を図15に示す。なお、図15では、用いる電極によって初期の電子放出密度にばらつきがあるため、電子放出密度の初期状態からの増加量(Δj)を縦軸にとって、時間変化をプロットした。
電界放出型電極のエージング前の電子放出分布は、ほぼ同程度のムラがある19mm×39mmの電界放出型電極を利用した。続いて、25℃程度の室温で、湿度100%の状態に1分程度曝露し、その後、湿度50%で多少乾燥させた上で、図に示す処理装置200にてエージング処理を施した。処理装置200では、陽極としてITO及びガラスの蛍光板を用い、初期時の真空度が1×10-4Paとなったところでパルス電圧の印加を開始した。また、パルス電圧の繰り返し周期はともに500Hz、パルス電圧によるピーク電界強度はともに1.2V/μmであり、初期のピーク時の電子放出密度(電子放出量/電界放出型電極の面積)は2mA/cm2であった。また、パルスデューティ比は、各電界放出型電極10ごとに0.2%、0.5%、1%、2%、5%と異ならせ、それぞれITO及びガラスの蛍光板で消費される電力は0.2%から順に0.02W/cm2、0.05W/cm2、0.1W/cm2、0.2W/cm2、0.5W/cm2であった。
図15から明らかなように、デューティ比0.2%、0.5%では、増加量Δjはなだらかに増加し、1mA/cm2程度で飽和傾向を示した。1%では、1時間程度で1.5mA/cm2以上増加し、更に増加する傾向を維持している。また、2%では20分経過した後は、ほとんど電子放出が増加せず飽和状態に達している。5%では、開始後5分にピークがあり、その後は電子放出が減少する傾向を示している、これは、電極間における水の分圧が大きくなりすぎて、イオンボンバードメントにより、電子放出膜表面が劣化し、電子放出サイトが劣化したためと考えられる。
次に、パルス中のピーク電圧を異ならせたエージング処理における電子放出の経時変化の初期電子放出密度に対する依存性を図16に示す。なお、図16では、縦軸に電子放出密度の初期状態からの増加量(Δj)を縦軸にとり、横軸にエージング時間をとった。
また、電界放出型電極のエージング前の電子放出分布は、ほぼ同程度のムラがある19mm×39mmの電界放出型電極を利用した。続いて、25℃程度の室温で、湿度100%の状態に1分程度曝露し、その後、約10分間湿度50%で多少乾燥させた上で、図に示す処理装置200にてエージング処理を施した。処理装置200では、陽極としてITO及びガラスの蛍光板を用いた。また、パルス電圧は500Hz、パルスデューティ比は2%とした。また、チャンバ内の真空度が1×10-4Paとなった時点から計測を開始した。また、各電界放出型電極10ごとのパルス中のピーク電圧での電子放出密度が、それぞれ初期状態で0.5mA/cm2、1mA/cm2、2mA/cm2、5mA/cm2の電界放出型電極を用いた。
図16から明らかなように、0.5mA/cm2、1mA/cm2、2mA/cm2と、初期のピーク電子放出密度が高くなるに従って、電子放出の増加の速さが高くなる傾向がみられ、エージング処理が15分以上では、2mA/cm2が最も電子放出特性の改善がみられた。また、飽和値についても初期のピーク電子放出密度が高いほど高い傾向がみられた。しかし、5mA/cm2については、エージングを開始した後、10分程で増加量がピークに達した後、徐々に電子放出量が減少する傾向がみられた。これは、電子放出の絶対量と陽極で消費される電力が大きくなることで、電極間の水蒸気分圧が上昇し、電子放出膜がイオンボンバーメントを受ける程度が大きくなることで、膜の劣化が起き始めていることを示している。
次に、パルス中のピークの繰り返し周期を異ならせたエージング処理におけるパルスのピーク時における電子放出の経時変化のパルス頻度に対する依存性を図17に示す。なお、図17では、縦軸に電子放出密度の初期状態からの増加量(Δj)を縦軸にとり、横軸にエージング時間をとった。
また、電界放出型電極のエージング前の電子放出分布は、ほぼ同程度のムラがある19mm×39mmの電界放出型電極を利用した。続いて、25℃程度の室温で、湿度100%の状態に1分程度曝露し、その後、約10分間湿度50%で乾燥させた上で、図13に示す処理装置200にてエージング処理を施した。処理装置200では、陽極214としてITO及びガラスの蛍光板を用いた。また、パルスデューティ比は2%とし、初期のピーク電子放出密度は2mA/cm2であった。また、チャンバ内の真空度が1×10-4Paとなった時点から計測を開始した。更に、パルス頻度は各電界放出型電極10ごとに250Hz、500Hz、1kHzと異ならせてエージングを行った。
図17から明らかなように、電子放出の増加速度、増加量の飽和値ともに500Hzでエージングを行ったものが最も高くなった。
250Hzで増加速度が遅い理由としては、パルス頻度が遅いと時間あたりの水分子の吸着、脱離サイクルが少なくなり、不活性な電子放出サイトが活性化される速度も遅くなるためと考えられる。
一方、1kHzで、500Hzと比較して増加速度、飽和値が低くなったのは、単位時間あたりの水分子の脱離速度が速くなるため、水蒸気圧が上昇し、電子放出膜がイオンボンバードメントを強く受けるためと考えられる。これは、エージング時間が40分を過ぎたあたりから、電子放出の増加量、(すなわち電子放出密度の絶対値)が徐々に少なくなっていくことからも裏付けられる。
このように、図15〜図17から初期の電子放出密度に応じて、パルスデューティ比、パルスのピーク電圧、パルス頻度を適宜調節し、エージング処理の条件を設定する必要があると言える。
次に、ベーキング処理を行う。ベーキング処理は、例えば真空チャンバ内で電界放出電極を、例えば550℃〜1000℃程度で加熱することによって行う。エージング処理の時間の経過に従って、電子放出膜からの電子放出量は増大するが、不活性な電子放出サイトの量には限りがあるため、電子放出の向上はあるレベルに収束する。このため、エージングは電子放出状態をリアルタイムで計測し、その変化量が規定の数値に達した段階で終了させる。上述したように、エージング処理は真空排気状態を維持しながら行う。従って、エージング処理の終了時点で電界放出型電極の電子放出膜と陽極との間の空間に存在する水分子の量は、エージング処理の初期段階より大きく減少しているが、電界放出型電極の電子放出サイト(電子放出膜表面)ではない部分に吸着した水分子はエージング処理後も吸着したままでいる可能性が高い。よって、エージング終了後に真空加熱により電子放出サイト以外の部分に吸着した水分子の脱離を行う必要がある。
次に、真空加熱装置内に電界放出型電極10を載置させ、5×10-4Pa未満の真空雰囲気としてから、加湿された電子放出膜に昇温速度1℃/秒で800℃までエージングを施し、昇温脱離質量分析を行った結果を図18(a)及び(b)に示す。図18(a)及び(b)から明らかなように、電界放出型電極10のCNW31及び微結晶ダイヤモンド膜32は550℃で全圧、HOの分圧値が最後のピークをもつ。550℃以上では分圧値は温度上昇に対して減少傾向となり、700℃以上で両者の値は計測限界以下となった。これにより吸着分子の活性化エネルギーで(800℃以下の範囲で)最も高いものはε=k・(273+550)=1.14×10-20 Jであることが分かる。以上の解析に基づいて、エージング処理後の真空加熱処理おける加熱温度は550℃以上で効率的に電子放出素子から水分を脱離させることが言える。
また、上述した加湿エージングを行って電子放出を向上、均一化させた電子放出素子について5×10-4Pa以下で600℃、800℃、1000℃の温度で、1時間の真空加熱処理を行い、各々の電子放出特性の変化を比較した。この結果を図19〜21に示す。図19は加熱温度600℃における電子放出特性の変化を示すグラフであり、図20は加熱温度800℃における電子放出特性の変化を示すグラフであり、図21は加熱温度1000℃における電子放出特性の変化を示すグラフである。
図19〜図21から、真空加熱処理の温度が高くなるほど、処理前後の電子放出量が減少していくことが分かった。最も劣化の程度が大きかった1000℃の処理について、ベーキング処理前後での電界放出型電極10を用いた陽極214の蛍光体214bの蛍光を図22(a)及び(b)に示す。図22(a)がベーキング処理前の電界放出型電極10を用いた陽極214の蛍光体214bの蛍光であり、(b)がベーキング処理後の陽極214の蛍光体214bの蛍光を示す画像である。図22(a)及び(b)から明らかなように、電子放出密度分布は局所的に劣化している部分が見られなかった。また、600℃、800℃、1000℃の各温度で処理された電子放出素子のI−V特性をF−Nプロットしたものを図23に示す。図23から明らかなように温度によって傾きに差異は見られなかった。これらのことから、処理温度が高くなることで電子放出特性が劣化するのは、電子放出サイトの仕事関数や、電子放出サイトでの電界集中ファクターが変化したのではなく、全体的にサーマルエッチングを受けたことで電子放出サイトが減少したためと考えられる。従って、1000℃の処理を受けた電子放出素子でもその特性は充分に実用に供することできる範囲ではあるが、サーマルエッチングを最小にするためにも真空加熱処理は550℃から800℃で行うことが望ましい。
このように本実施形態の電界放出型電極の製造方法では、加湿処理を施し、電界放出膜表面に水分子を吸着させた上で、電界放出型電極にパルス電圧を印加する。これにより、電子放出膜の不活性な電子放出サイトを活性化させ、比較的均一な電界放出強度を備える電界放出型電極を製造することができる。
また、本実施形態では特にエージング処理において、電界放出型電極に対向する電極(陽極)を親水性とすることで、水蒸気圧の急激な変化を抑え、電界放出膜表面の損傷を抑制することが可能である。
(実施例1)
次に、エージングを加湿状態で行う点の効果をみるため、加湿処理を施した上でエージングを行い、更にベーキング処理を施した場合と、加湿処理を省略した上で同じ条件でエージング処理及びベーキング処理を施した場合とを比較する。
まず、電子放出膜は基板上に上述した条件でCVD装置によって成膜し、電界放出型電極を作製した。次に、このように成膜した電界放出型電極の電子放出膜に加湿処理を施した。加湿処理は、具体的に、高湿度環境下、例えば25℃程度の室温で、湿度100%の状態に1分程度曝露し、その後、湿度50%で約10分間乾燥させた。
次に、上述した処理装置200を用い、印加する電圧のパルス波高を6kV(1.4V/μm)、パルス頻度500Hz、デューティ比0.5%の条件で加湿された30mm×30mmの大きさの電子放出膜にエージングを行った。なお、処理装置200では陽極として蛍光体(ZnO:Zn)、ITO及びガラスが設けられた蛍光板を用いた。
図24(a)に、エージング前(成膜直後)の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す。電界放出型電極の右下隅が極端に電子放出しているため、他の部位の電子放出が抑制されている。図24(b)は、加湿された電子放出膜に1時間エージング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。また、図25は、加湿された電子放出膜へのエージング時の最大電子放出密度(電子放出量/電極面積)の経時変化を示すグラフである。
図24(a)の左上の領域はその他の領域と比較して、発光の程度が弱く、成膜直後の電界放出型電極は、電子放出特性に偏りがあることが明らかである。これに対し、図24(b)に示すようにエージング処理を施した電界放出型電極は、全体に均一に発光しており、更に図24(a)と比較して、特に左上の発光強度が強まっていることが分かる。これは、図25に示すように、電子放出密度がエージング時間が長くなるにつれて高まっていることからも裏付けられる。
次に、このように加湿エージング処理を施した電界放出型電極を真空加熱によってベーキングした。具体的に、ベーキング開始時の圧力を5×10-4Pa以下とし、温度は800℃、ベーキング時間は1時間とした。
図26(a)に、図25(b)の加湿エージング処理を施した後で且つベーキング前の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す。図26(b)は、図25(b)の加湿エージング処理を施した後で且つ1時間ベーキング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。また、図27は、加湿エージング処理を施した電界放出型電極のベーキング前後I−V特性を示すグラフであり、図28は加湿エージング処理を施した電界放出型電極のベーキング前後のFNプロットである。
図26(a)及び(b)から明らかなように、ベーキング前後で電界放出型電極の電子放出特性に若干の劣化が見られるものの、均一性は著しく損なわれてはいないことがわかる。また、図28から、ベーキング前のFNプロットには傾きに曲率がみられたのに対してベーキング後のFNプロットの傾きはほぼ直線となった。これは加湿エージング終了時にも電子放出サイトに残っていた水分子吸着の影響が、ベーキングによって取り除かれたことを示している。また、図27からベーキング後の閾値電圧(1mA/cm2をもたらす電界強度)が1.05V/μmであることがわかる。
次に、加湿処理を施さずにエージング処理を施し、真空加熱処理した場合の電界放出型電極について図を用いて説明する。
まず、加湿処理を施さずにエージング処理した場合の電界放出型電極の特性について図29〜31に示す。図29(a)は、エージング前の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す。図29(b)は、加湿処理を行わずに1時間エージング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。また、図30は、1.4V/μmのエージング時の最大電子放出密度の経時変化を示すグラフである。図31は、加湿処理の有無によるエージング処理を施した電界放出型電極の電子放出増加量の経時変化の違いを示すグラフである。
図29(a)では、電界放出型電極の右の上では蛍光板の発光程度が他の領域と比較して弱く、電子放出密度には偏りがあることが分かる。次に、図29(b)では、図29(a)と比較して発光領域が広がっていることから、加湿処理を施さない場合であっても、電子放出密度に改善はみられる。しかし、右上の領域では発光しない領域が残っており、加湿処理を施した場合と比較し、電子放出の局所的な偏りが残っていることがわかる。また、図30から、加湿処理を施さない場合はエージング処理開始後10分程度で電子放出密度が飽和することがわかる。一方、図25に示すように加湿処理を施した場合は、1時間までゆっくりと電子放出していき、飽和状態に達するのが遅いことが分かる。また、図31から、電子放出の増加量は、明らかに加湿処理を施すエージングの方が多いことが明らかである。
このように、加湿処理を伴わないエージングでは、電子放出の増加速度とその飽和値が大きく異なる。従って、効率よく電子放出サイトを活性化させていくには加湿処理が必要となると言える。
次に、上述したように加湿処理を施さずにエージング処理を施した上で、ベーキング処理を施した電界放出型電極について図を用いて説明する。具体的に、ベーキング開始時の圧力を1×10-4Pa以下とし、温度は800℃、ベーキング時間は1時間とした。
図32(a)は、加湿処理を施さずにエージング処理を施した後でベーキング前の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す画像である。図32(b)は、加湿処理を施さずにエージング処理を施した後で1時間ベーキング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。また、図33は、ベーキング前後I−V特性を示すグラフである。
図32(a)から、ベーキング前には右上に発光していない領域があることがわかる。しかし、ベーキング処理後には発光している領域が増大し、図33のように、電子放出特性の改善がみられる。一方、上述したように加湿エージングされた電子放出素子では800℃のベーキングされることで、電子放出特性が若干劣化があった。これは加湿なしのエージングでは、不活性な電子放出サイトの多くが残されたままになるため、真空加熱によるサーマルエッチングによってそれら不活性な電子放出サイトが活性化(電子放出の阻害要因が除去)されたためと考えられる。
このように、加湿処理を施さずとも、エージング及びベーキング処理によって、電界放出型電極の電子放出特性を向上させることが可能である。しかし、電子放出特性の向上及び電子放出密度の平均化は、加湿処理を施した場合の方が高く得られるため、加湿処理を施す方が好ましい。
(実施例2)
次に、エージングを施す処理装置において、電界放出型電極と対向する陽極として親水性の材料を用いる点の効果をみるため、実施例1のように加湿処理を施した上で陽極として蛍光体(ZnO:Zn)を用いた処理装置でエージングを行い、更にベーキング処理を施した場合に対して、疎水性材料である銅板を陽極として用いた処理装置で加湿処理を施した上で、エージングを行い、更にベーキング処理を行った場合を比較する。なお、上述したように実施例1の図24〜図33は、加湿処理を施した上で陽極としてのITOに蛍光体(ZnO:Zn)を被膜したガラス板を処理装置でエージングを行い、更にベーキング処理を施したデータであるため、実施例2では、ITOに蛍光体(ZnO:Zn)を被膜したガラス板の代わりに陽極としての銅板を用いた場合のデータのみを示す。
まず、実施例1と同様に電子放出膜は基板上に上述した条件でCVD装置によって成膜し、電界放出型電極を作製した。次に、このように成膜した電界放出型電極の電子放出膜に加湿処理を施した。加湿処理は、具体的に、高湿度環境下、例えば25℃程度の室温で、湿度100%の状態に1分程度曝露し、その後、湿度50%で約10分間乾燥させた。
次に、上述した処理装置200を用い、印加する電圧のパルス波高を6kV(1.4V/μm)、パルス頻度500Hz、デューティ比0.5%の条件でエージングを行った。ここで、処理装置の陽極として銅板を用いた。
図34(a)に、加湿エージング前(成膜直後)の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す。図34(b)は、加湿された電子放出膜に1時間エージング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。また、図35は、加湿、エージングを行った後の電子放出膜にパルス電圧(1.4V/μm)を印加した時の最大電子放出密度の経時変化を示すグラフである。
図34(a)の右上の領域はその他の領域と比較して、発光の程度が弱く、成膜直後の電界放出型電極は、電子放出特性に偏りがあることが明らかである。これに対し、図34(b)に示すようにエージング処理を施した電界放出型電極は、右上の領域でも発光しており全体に発光しているものの、全体的に電子放出密度が減少している。また、図35からエージング時間が経過するに従って電子放出密度が減少していることが明らかである。
図36に、加湿処理された電子放出膜に、蛍光体(ZnO:Zn)、ITO及びガラスが設けられた蛍光板を用いてエージングを行った場合(蛍光板エージング)と、加湿処理された電子放出膜に、銅板を用いてエージングを行った場合の電子放出の増加量の変化を示す。図36からも、蛍光板を用いた場合は1時間まで電子放出量が増加し続けるのに対して、銅板を用いた場合は、時間を経るごとに電子放出量が減少していることが明らかである。
このように処理装置の陽極として疎水材料を用いてエージングを施した場合、電子放出密度の偏りは平均化されるが、全体的に電子放出密度が減少した。これは電極間の水蒸気分圧が大きくなりすぎて、イオンボンバードメントにより電子放出素子が損傷を受けたためと考えられる。清浄な銅板表面は疎水性であり、水分子の吸着量が蛍光板よりも少ない。このため、電子放出にともなって放出される水蒸気によって蛍光板使用時よりも電極間の水蒸気圧は高くなり、このような損傷を受けたと考えられる。
次に、このようにエージング処理を施した電界放出型電極を真空加熱によってベーキングした。具体的に、ベーキング開始時の圧力を5×10−4Pa以下とし、温度は800℃、ベーキング時間は1時間とした。
図37(a)に、エージング処理を施した後でベーキング前の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す。図37(b)は、加湿処理後、銅板を用いてエージングを施した後で1時間ベーキング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。また、図38は、図37(a)及び図37(b)におけるベーキング前後I−V特性を示すグラフである。
図37(a)と図37(b)とを比較、および図38より、ベーキング前後で電子放出特性が電子放出素子面内で比較的均一に向上する傾向が見られた。これは疎水性の表面をもつ銅板を使用した場合、蛍光板使用時に比べて電極間に水蒸気が留まりにくいことから、(加湿なしでエージングした場合と同様に)、不活性な電子放出サイトを多く残した状態でエージングを終了することになり、それが真空加熱時のサーマルエッチングによって電子放出の阻害要因が除去されることで活性化され、電子放出特性が向上したと考えられる。
また、加湿処理を施した電子放出膜に処理装置の陽極として銅板を用いてエージング過程におけるチャンバー内のHOガスの分圧を図39(a)に示す。また、加湿処理を施した電子放出膜に処理装置の陽極として蛍光板を用いた場合のH2Oガスの分圧の経時変化を図39(b)に示す。
図39(a)及び図39(b)から、銅板では電子放出に伴って水分子の分圧が上昇していくが、同様の加湿、エージング処理を行っていても蛍光板を使用したエージングでは、チャンバー内のH2O分圧変化に、エージングが影響を及ぼさない。これは、電子放出に伴ってエミッタから放出されるH2Oガスの大部分が吸水性のある蛍光体に一度吸着されることで、電極系全体としてガス放出速度が小さくなり、その変化量がチャンバー内壁からのガス放出速度に対して、無視できるほど小さくなるためと考えられる。
(実施例3)
次に、パルス電圧を印加することの効果をみるため、パルス電圧を印加し加湿状態でエージングを行った場合と、パルスではない直流定電圧を印加し加湿状態でエージングを施した場合と、を比較する。
まず、実施例1と同様に電子放出膜は基板上に上述した条件でプラズマCVD装置によって成膜し、電界放出型電極を作製した。次に、このように成膜した電界放出型電極の電子放出膜に加湿処理を施した。加湿処理は、具体的に、高湿度環境下、例えば25℃程度の室温で、湿度100%の状態に1分程度曝露し、その後、湿度50%で約10分間乾燥させた。
次に、処理装置200とほぼ同様の構成を採る処理装置において、ITOが設けられたガラス板214a及び蛍光体214bの蛍光板を有する陽極214と電子放出膜との電極間距離を1.3mmとし、印加電圧を定電圧1.65kV(電界強度1.27V/μm)、初期電流密度 1.8mA/cm2としてエージングを行った。
このように行ったエージングでの、電子放出密度の経時変化を図40に示す。図40から明らかなように、エージングと同時に電子放出は急激に増大し、開始4分後には電子放出密度が3.5mA/cm2に達した。しかし、その後、電子放出が瞬間的に0mA/cm2となり、その後、電界強度を行っても電子放出は回復しなかった。
このようにDC電圧を印加した場合、電子放出に伴う水分子の脱離が急速に進む、また、蛍光板に吸着された水分子が連続的な電子ボンバードメントによってパルス印加に比べて急速に脱離されるために電極間の全圧が上昇する。このため、電極間に火花放電が発生し、エミッタを全面的に損傷させたと考えられる。
本発明は上述した実施形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。例えば、上述した実施形態では、電子放出膜はカーボンナノウォールとナノダイヤモンド層と針状炭素棒との3つから構成される場合を例に挙げたが、これに限られない。電子放出膜はカーボンナノウォールのみから構成されても良いし、カーボンナノウォールとナノダイヤモンド層とから構成されても良いし、カーボンナノウォールのないナノダイヤモンド層の構成であってもよい。
また上記実施形態では、加湿された電子放出膜から放出された水分を吸着する材料として親水性の蛍光体を用いたが、処理装置内の水分を適度に吸着する部材であれば、これに限らない。
本発明の実施形態に係る電界放出型電極を模式的に示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る電界放出型電極を備える電子機器の構成例を示す略断面図である。 本発明の実施の形態に係る電子機器の変形例を示す略断面図である。 (a)及び(b)は本発明の実施の形態に係るCVD装置の構成例を示す図である。 電子放出膜を成膜する際の温度変化を示す図である。 カーボンナノウォールの表面を走査型電子顕微鏡で走査した画像である。 カーボンナノウォールのX線回折パターンを示す図である。 カーボンナノウォールのラマン分光スペクトルを示す図である。 ナノダイヤモンド膜(炭素膜)の表面を走査型電子顕微鏡によって走査した画像である。 ナノダイヤモンド膜(炭素膜)の断面を走査型電子顕微鏡によって走査した画像である。 ナノダイヤモンド膜のX線回折パターンを示す図である。 ナノダイヤモンド膜のラマン分光スペクトルを示す図である。 本発明の実施形態に係る処理装置の構成例を示す図である。 電子放出サイトが活性されるプロセスを模式的に説明する図である。 エージング処理における電子放出の経時変化のパルスデューティ比に対する依存性を示す図である。 エージング処理における電子放出の経時変化の初期電子放出密度に対する依存性を示す図である。 エージング処理における電子放出の経時変化のパルス頻度に対する依存性を示す図である。 ベーキング処理における質量分析結果を示す図である。 加熱温度600℃における電子放出特性の変化を示すグラフである。 加熱温度800℃における電子放出特性の変化を示すグラフである。 加熱温度1000℃における電子放出特性の変化を示すグラフである。 (a)はベーキング処理前の蛍光板発光を示す画像であり、(b)はベーキング後の蛍光板発光を示す画像である。 600℃、800℃、1000℃の各温度で処理された電子放出素子のI−V特性をFNプロットしたグラフである。 (a)は、エージング前の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す画像である。(b)は、1時間エージング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。 エージング処理におけるみかけの電子放出密度の経時変化を示すグラフである。 (a)は、ベーキング前の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す画像である。(b)は、1時間ベーキング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。 ベーキング前後I−V特性を示すグラフである。 ベーキング前後のFNプロットである。 (a)は、エージング前の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す画像である。(b)は、1時間エージング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。 ゲートon時(1.4V/μm)時の最大電子放出密度の経時変化を示すグラフである。 加湿処理の有無による電子放出特性の経時変化の違いを示すグラフである。 (a)は、ベーキング前の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す画像である。(b)は、1時間ベーキング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。 ベーキング前後I−V特性を示すグラフである。 (a)は、エージング前の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す画像である。(b)は、1時間エージング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。 ゲートon時(1.4V/μm)時の最大電子放出密度の経時変化を示すグラフである。 蛍光板を用いてエージングを行った場合と、銅板を用いてエージングを行った場合の電子放出の増加量の変化を示すグラフである。 (a)は、ベーキング前の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光の様子を示す画像である。(b)は、1時間ベーキング処理を施した後の電界放出型電極の電子放出による蛍光板発光を示す画像である。 ベーキング前後I−V特性を示すグラフである。 (a)は、銅板電極を用いた場合の加湿エージング過程におけるチャンバー内のH2Oガスの分圧を示すグラフである。(b)は、陽極として蛍光板を用いた場合のH2Oガスの分圧の経時変化を示すグラフである。 電子放出密度の経時変化を示すグラフである。
符号の説明
10・・・電界放出型電極、11・・・基板、13・・・電子放出膜、20・・・電界放出蛍光管、22・・・アノード電極、23・・・ガラス管、24・・・蛍光体膜、26,27・・・配線、28・・・グリッド電極、29・・・高圧駆動電源、31・・・カーボンナノウォール、32・・・ナノダイヤモンド膜、33・・・針状炭素棒

Claims (15)

  1. 電圧の印加により電子を放出する電子放出膜の表面に水分子を吸着させる加湿処理と、
    加湿された前記電子放出膜と、前記電子放出膜に対向するように設けられた電極と、の間にエージング電圧を印加する電圧印加処理と、
    を含むことを特徴とする電界放出型電極の製造方法。
  2. 前記電極は、少なくとも前記電子放出膜と対向する面が親水性であることを特徴とする請求項1に記載の電界放出型電極の製造方法。
  3. 前記電極の前記電子放出膜と対向する面に蛍光体が塗布されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電界放出型電極の製造方法。
  4. 前記電子放出膜を、真空状態で加熱し、水分子を前記電子放出膜上から除去する真空加熱工程を、更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電界放出型電極の製造方法。
  5. 前記真空加熱工程は、550℃〜1000℃で行われることを特徴とする請求項4に記載の電界放出型電極の製造方法。
  6. 前記電子放出膜は、グラフェンシートを有するカーボンナノウォールを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電界放出型電極の製造方法。
  7. 前記電子放出膜は、前記カーボンナノウォール上に、更に微結晶ダイヤモンド膜を備えることを特徴とする請求項6に記載の電界放出型電極の製造方法。
  8. 前記電子放出膜は、前記微結晶ダイヤモンド膜の上に突出するように形成され、グラファイトからなる突起部を更に備えることを特徴とする請求項6又7に記載の電界放出型電極の製造方法。
  9. 前記エージング電圧はパルス電圧であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電界放出型電極の製造方法。
  10. 前記パルス電圧は、デューティ比が0.2%〜5%であることを特徴とする請求項9に記載の電界放出型電極の製造方法。
  11. 前記パルス電圧は、前記電子放出膜の初期時の電子放出密度が0.5mA/cm2〜5mA/cm2となるような電圧であることを特徴とする請求項9に記載の電界放出型電極の製造方法。
  12. 前記パルス電圧の繰り返し周期が250Hz〜1kHzであることを特徴とする請求項9に記載の電界放出型電極の製造方法。
  13. 前記電子放出膜は加湿雰囲気に晒すことによって、表面に水分子を吸着させることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電界放出型電極の製造方法。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の電界放出型電極の製造方法によって製造されることを特徴とする電界放出型電極。
  15. 電圧の印加により電子を放出する電子放出膜の表面に水分子を吸着させるよう加湿処理し、
    加湿された前記電子放出膜と、前記電子放出膜に対向するように設けられた電極と、の間にエージング電圧を印加する、
    ことを特徴とする電界放出型電極の製造装置。
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