JP4443318B2 - 反射防止膜及び反射防止膜を有する光学素子 - Google Patents

反射防止膜及び反射防止膜を有する光学素子 Download PDF

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Description

本発明は、基材の表面に形成される反射防止膜に関し、特に広い波長範囲で優れた反射防止特性を有する反射防止膜及び係る反射防止膜を有する光学素子に関する。
光学機器を構成するレンズ、プリズム等の基材の表面には、光透過率を向上させることを目的として、反射防止膜が施される。反射防止膜によって可視域の反射を抑えると、像の明るさや見え易さを向上させることができる。光学機器の多くは、特定の狭い波長範囲の光を使用するものであるので、光学素子に設ける反射防止膜はその使用波長で優れた反射防止効果を有するように設計される。例えば単層の反射防止膜は、反射防止膜表面での反射光と、反射防止膜とレンズの境界での反射光との光路差が波長の1/2の奇数倍となってこれらの光が干渉により打ち消し合う厚さになるように設計されている。
しかし、近年は、幅広い波長領域の光を使用する光学機器も製作されるようになってきており、幅広い波長範囲で優れた光学特性を有する反射防止膜が望まれるようになってきた。特開2003-43202号(特許文献1)には、基材側から数えて第1,8層に低屈折率材料、第2,4,6層に中間屈折率材料、第3,5,7層に高屈折率材料がそれぞれ成膜されており、前記各層の光学的膜厚ndが設計波長λに対して、第1層は(0.9〜2.4)×λ/4、第2層は(0.9〜1.2)×λ/4、第3層は(0.27〜0.50)×λ/4、第4層は(0.17〜0.27)×λ/4、第5層は(1.34〜2.14)×λ/4、第6層は(0.35〜0.45)×λ/4、第7層は(0.26〜0.38)×λ/4、第8層は(1.03〜1.13)×λ/4である反射防止膜が記載されている。この反射防止膜は、波長340〜900 nmの光に対して1.0%未満の反射率を示す。しかし、波長900 〜1000 nmの光に対する反射率は2.52〜2.78%であり、良好な反射防止効果を示す波長範囲が十分に広いとは言えない。
特開平7-333403号(特許文献2)には、スパッタリング成膜の初期に基板をターゲット面に対して対向させ、成膜時間に比例して基板を連続的に傾けながら成膜する反射防止膜の成膜方法が記載されている。ターゲットに対する基板の傾きを大きくしながら反射防止膜を成膜することにより、この傾きに比例して反射防止膜の気孔率が大きくなり、膜の屈折率は小さくなる。ターゲットとしてはSi、SiO2、Al及びAl2O3が記載されている。この成膜方法によって、シリカ、アルミナ等からなり、照射光の波長に依存し難い反射防止特性を有する多孔質反射防止膜が得られる。しかしながら、この製造方法により得られる多孔質反射防止膜は大きな吸湿性を有しており、使用中に微細孔に水が入り込んで屈折率が変化する等、経時劣化が大きいという問題がある。
特開平10-227902号(特許文献3)には、少なくとも、屈折率が異なるフッ素樹脂からなる層を2層有する広帯域反射防止膜であって、当該2層のうち相対的に屈折率の高いフッ素樹脂からなる層の上に、相対的に屈折率の低いフッ素樹脂からなる層を形成してなるものが記載されている。特許文献3には、この広帯域反射防止膜は350〜1350 nmの波長範囲で99.5%以上の透過率を示すと記載されている。しかし、この反射防止膜はフッ素樹脂からなるものであるので、十分な機械的強度を有しておらず、実用に耐えないという問題がある。
特開2003-43202号公報 特開平7-333403号公報 特開平10-227902号公報
したがって、本発明の目的は、幅広い波長範囲で優れた反射防止特性を有し、かつ十分な耐湿性と機械的強度とを有する反射防止膜、及び係る反射防止膜を有する光学素子を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、複数の層からなる反射防止膜であって、各層の屈折率が基材から順に小さくなっており、入射媒質側に金属酸化物からなる多孔質層を有するものは、可視域から赤外域にかけての1200 nm以上の波長範囲で優れた反射防止特性を有することを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の反射防止膜は基材の表面に形成された複数の層からなり、前記基材及び各層の屈折率は前記基材から順に小さくなっており、前記層とその隣の層及び前記基材とそれに接触する層との屈折率差が0.02〜0.2であり、各層の物理層厚が15〜200 nmであり、各層のうち入射媒質側に形成された少なくとも1層が金属酸化物からなる多孔質層であって、可視域から赤外域にかけて1200 nm以上の波長範囲で反射率1%以下であることを特徴とする。
前記多孔質層はシリカエアロゲル層であるのが好ましい。シリカエアロゲル層の空隙率は30〜90%であるのが好ましい。シリカエアロゲル層は有機修飾されているのが好ましい。
本発明の光学素子は、本発明の反射防止膜を有することを特徴とする。
本発明の反射防止膜は基材の表面に形成された複数の層からなり、前記基材及び各層の屈折率は前記基材から順に徐々に小さくなっている。具体的には、隣接する層間の屈折率差、及び基材とそれに接触する層との屈折率差が0.02〜0.2であり、各層の物理層厚が15〜200 nmである。また各層のうち入射媒質側表面の少なくとも1層は、金属酸化物からなる多孔質層である。このような反射防止膜は、基材から入射媒質にかけて屈折率が滑らかに減少しているのに近い状態であり、広い波長範囲で優れた反射防止特性を示す。具体的には、可視域から赤外域にかけて1200 nm以上の波長範囲で反射率1%以下である。このように幅広い波長範囲で優れた反射防止特性を有する本発明の反射防止膜は、広い波長範囲の光を使用する光学機器用の光学素子に好適である。
[1] 反射防止膜を有する光学素子
図1は、基材1の表面11に形成された反射防止膜2を示す。図1に示す反射防止膜2は6層構成であるが、本発明はこれに限定されず、2〜5層、及び7層以上の薄層を有するものを含む。基材1の表面11に第一層21が形成されており、その上に第二層22、第三層23、第四層24、第五層25及び第六層26がこの順に形成されている。第一層21、第二層22及び第三層23は緻密層であり、第四層24、第五層25及び第六層26は多孔質層である。第六層26は入射媒質aに接触している。図1に示す例では平板を基材1としているが、本発明はこれに限定されず、レンズ、プリズム、ライトガイド、フィルム又は回折素子を基材1とするものを含む。また基材1の材料は、ガラス、結晶性材料、プラスチックのいずれでも良い。
図2は反射防止膜2の物理膜厚と屈折率との関係を概略的に示す。各層の物理層厚dはほぼ等しい。本明細書中、「物理層厚」は反射防止膜2を構成する各層の物理的な厚さを示す。各層の物理層厚dは、15〜200 nmである。屈折率は基材1で最大であり、入射媒質aで最小であり、第一層21から第六層26にかけて順に小さくなっている。各層の間、第一層21と基材1との間、及び第六層26と入射媒質aとの間の屈折率差rはほぼ等しく、それぞれ0.02〜0.2である。このため物理層厚に対する屈折率の変化は階段状であり、かつ直線に概略近似できる程度の滑らかさを有する。このように基材1から入射媒質aにかけての物理層厚に対する屈折率の変化が滑らかであるので、巨視的にみると基材1から入射媒質aにかけて屈折率が徐々に減少した状態であり、各層の境界において入射光の反射が起こり難い。したがって反射防止膜2が優れた反射防止効果を示すことができる。構成層の数にもよるが、反射防止膜2の物理膜厚Dは100〜1000 nm程度であるのが好ましい。
物理層厚dが15〜200 nmの範囲でなかったり、屈折率差rが0.02〜0.2の範囲でなかったりすると、各層の物理層厚dに対する屈折率の変化が滑らかでない。このため、界面における反射率が大きくなってしまう。例えば第二層22の物理層厚dが15 nm未満であると、第二層22によって得られる効果が小さ過ぎるので、第一層21の屈折率から第三層23の屈折率に急激に変化したのと変わらなくなってしまう。第二層22の物理層厚dが200 nm超であると、第二層22による干渉が可視域に生じ、反射防止効果を損なうので好ましくない。
反射防止膜2の各層のうち緻密な層21,22,23は、金属酸化物等の無機材料のみからなる層(以下、無機層と言う)でも良いし、無機微粒子とバインダからなる複合層(以下、無機微粒子−バインダ複合層と言う)でも良いし、樹脂からなる層でも良い。各層の材料は、基材1の屈折率より小さく多孔質層24,25,26の屈折率より大きな屈折率を有するものの中から選択することができる。例えば基材1がランタンクラウンガラス(LaKガラス)からなる場合、基材1の屈折率は1.72であるので、各層の屈折率は(a) 1.7以下であって、(b) 最も基材1側の多孔質層より0.02以上大きくなければならない。各層の材料は、このような屈折率を有するものの中から、隣接する層の屈折率差rが0.02〜0.2となるように選択される。
使用可能な無機材料の例としてフッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化セリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、クライオライト、チオライト及びこれらの混合物が挙げられる。
無機微粒子−バインダ複合層の例としてフッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化セリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、クライオライト、チオライト、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ハフニウム及び酸化亜鉛からなるより選択された少なくとも一種の無機物の微粒子をバインダに分散させたものが挙げられる。無機微粒子−バインダ複合層の屈折率は、無機微粒子の組成や含有率の他、バインダーの組成に依存する。
樹脂層の例として、フッ素樹脂層、エポキシ樹脂層、アクリル樹脂層、シリコーン樹脂層及びウレタン樹脂層が挙げられる。一般的に知られているフッ素樹脂にはポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロエチレンプロピレン樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂、ポリビニリデンフルオライド樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂がある。これらの樹脂を使用しても良いが、結晶性を有するものが多いので、透明な反射防止膜2を形成するにはあまり好ましくない。一方、非結晶性のフッ素樹脂からなる層は優れた透明度を有する。非結晶性のフッ素樹脂の具体例として、フルオロオレフィン系の共重合体、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体、フッ素化アクリレート系の共重合体が挙げられる。フルオロオレフィン系の共重合体の例として37〜48質量%のテトラフルオロエチレンと、15〜35質量%のビニリデンフルオライドと、26〜44質量%のヘキサフルオロプロピレンとが共重合したものが挙げられる。含フッ素脂肪族環構造を有する重合体には、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーが重合したものや、少なくとも二つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを環化重合したものがある。
多孔質層は入射媒質a側に一層以上形成される。多孔質層の屈折率は空隙率に依存し、大きな空隙率を有するものほど屈折率が小さい。多孔質層の空隙率は30〜90%であるのが好ましい。空隙率90%超であると、機械的強度が小さすぎる。空隙率30%未満であると、屈折率が大きすぎる。
多孔質層はシリカ、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、マグネシウム等の金属の酸化物からなる。複数の多孔質層が設けられている場合、各多孔質層は(a) 異なる金属酸化物からなっていても良いし、(b) 同じ材料からなり、異なる空隙率を有しても良い。多孔質層には、小さな孔径を有する細孔が均一に形成されているのが好ましい。このような細孔を有する多孔質層は、高い透明性を有する。
好ましい多孔質層の具体例として、シリカエアロゲル層が挙げられる。シリカエアロゲル層は小さな空孔サイズを有し、透明であるのが好ましい。30〜90%の空隙率を有するシリカエアロゲル層の屈折率は、概ね1.05〜1.35である。例えば空隙率78%のシリカエアロゲル層は屈折率約1.1である。シリカエアロゲル層は有機修飾されているのが好ましい。有機修飾されたシリカエアロゲル層は、優れた耐擦傷性及び耐水性を有し、耐久性に優れている。このため有機修飾シリカエアロゲル層は高温高湿の環境でも劣化し難く、屈折率変化を起こし難い。
反射防止膜2の層構成の一例として、第一層21が酸化アルミニウム(屈折率1.64)からなり、第二層22が酸化ケイ素(屈折率1.46)からなり、第三層23がフッ化マグネシウム(屈折率1.38)からなり、第四層〜第六層24,25,26がシリカエアロゲルからなるものが挙げられる。層構成の別の例として、第一層21が酸化チタンとバインダからなり、第二層22がコロイダルシリカとバインダからなり、第三層23がフッ素含有紫外線硬化性樹脂からなり、第四層〜第六層24,25,26がシリカエアロゲルからなるものが挙げられる。
反射防止膜2は広い波長領域で優れた反射防止特性を有する。本明細書中、「反射防止特性」は反射率及び透過率を示し、「優れた反射防止特性を有する」は小さな反射率及び大きな光透過率を有することを示す。反射防止膜2の反射率は、可視域から赤外域にかけて1200 nm以上の波長範囲で1%以下である。したがって、広い波長範囲で入射光を効率的に透過させる。
[2] 反射防止膜の製造方法
無機材料のみからなる層は蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等の化学蒸着法等によって形成することができる。無機微粒子−バインダ複合層はディップコート法、スピン法、スプレー法、ロールコティング法、スクリーン印刷法等の湿式の方法で形成することができる。樹脂層は化学蒸着法やウェット法で形成可能である。
(1) 緻密層の形成
まず、蒸着法によって無機材料層を作製する方法を説明し、次にディップコート法によって無機微粒子−バインダ複合層及びフッ素樹脂層を作製する方法を説明する
(A) 蒸着法
図3に示す蒸着装置30は、真空チャンバ31内に基材ホルダ32と、蒸発源33とを具備する。基材ホルダ32は回転するようになっている。基材1上に第一層21を形成するには、まず表面11が蒸発源33側になるように、基材1を基材ホルダ32に設置し、蒸着材37を蒸発源33に載置する。真空ポンプ接続口35に接続された真空ポンプ(図示せず)により真空チャンバ31内を減圧にした後、蒸発源33により蒸着材37を加熱する。蒸着材37は加熱により蒸発し、基材1表面11に蒸着する。蒸着時間、加熱温度等を適宜設定することにより、所望の厚さを有する層を形成することができる。例えば酸化アルミニウムからなる第一層21を基材1の表面11に形成する場合、光学膜厚D0を100〜130 nmとするには、蒸着時間を4〜5分程度とすればよい。
蒸着法で第二層22を積層するには、第一層21を形成した後、別の蒸着材37’を蒸発源33に載置して再度真空チャンバ31内を減圧にし、蒸着材37’を加熱して第一層21上に蒸着する。この方法と同様にして、第三層23を第二層22上に形成することができる。
(B) ディップコート法
(I) 無機微粒子−バインダ複合層
(a) 無機微粒子含有スラリーの調製
無機微粒子と、バインダ成分とを含有するスラリーを調製する。本明細書中、「バインダ成分」とは、重合によりバインダとなるモノマー及び/又はオリゴマーを言う。
無機微粒子の平均粒径は5〜80 nm程度であるのが好ましい。平均粒径80 nm超であると、反射防止膜が透明性が悪過ぎる。平均粒径5nm未満のものは作製困難である。好ましい無機微粒子の例として、上述の無機材料からなるものが挙げられる。より好ましい無機微粒子としては、コロイダルシリカからなるものが挙げられる。コロイダルシリカは表面処理されているのが好ましい。コロイダルシリカはシランカップリング剤等によって表面処理することができる。
無機微粒子/バインダ成分の質量比は0.05〜0.7とするのが好ましい。無機微粒子/バインダ成分の質量比が0.7超であると、均一に塗布し難過ぎる上、形成する層が脆過ぎる。質量比0.05未満であると、所望の屈折率にし難過ぎる。
バインダ成分は、紫外線硬化性又は熱硬化性の化合物であるのが好ましく、紫外線硬化性化合物であるのがより好ましい。紫外線硬化性の化合物を用いると、基材1が非耐熱性の場合も、バインダを含有する反射防止膜2を設けることができる。紫外線硬化性及び/又は熱硬化性の化合物の例としてラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物が挙げられる。これらの化合物を併用しても良い。バインダ成分はモノマーでも良いし、オリゴマーでも良い。
ラジカル重合性化合物としてはアクリル酸エステルが好ましい。ラジカル重合性化合物の具体例として2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピルアクリレート、カルボキシポリカプロラクトンアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸及びアクリルアミド等の単官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート及びペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート等のジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート誘導体及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、並びにこれらが重合したオリゴマーが挙げられる。
カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物が好ましい。具体例としてはフェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、1,2,8,9-ジエポキシリモネン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペートが挙げられる。
ラジカル重合性化合物及び/又はカチオン重合性化合物のバインダ成分を使用する場合、無機微粒子含有スラリーにラジカル重合開始剤及び/又はカチオン重合開始剤を添加する。ラジカル重合開始剤としては紫外線照射によりラジカルを発生する化合物が用いられる。好ましいラジカル重合開始剤の例としてベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類及びアシルホスフィンオキサイド類が挙げられる。ラジカル重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
カチオン重合開始剤としては、紫外線照射によりカチオンを発生する化合物が用いられる。カチオン重合開始剤の例としてジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。カチオン重合開始剤の添加量は、カチオン重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
2種以上の無機微粒子及び/又はバインダをスラリーに配合しても良い。また物性を損なわない範囲であれば、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤等、一般的な添加剤を使用することができる。
スラリーの濃度は形成する薄膜の厚さに影響する。溶剤の例としてメタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、3-メトキシプロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコキシアルコール類、ジアセトンアルコール等のケトール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi-ブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。溶剤の使用量は無機微粒子とバインダ成分の合計100質量部あたり、20〜10000質量部程度である。
(b) コーティング
ディップコート法、スピン法、スプレー法、ロールコティング法、スクリーン印刷法等によって基材に無機微粒子含有スラリーの層を形成する。例えばディップコート法による場合、形成する層の厚さはスラリーの濃度、浸漬時間、引き上げ速度等によって制御することができる。
無機微粒子含有スラリー層中のバインダ成分を重合させる。バインダ成分が紫外線硬化性の場合、UV照射装置を用いて50〜3000 mJ/cm2程度でUV照射すると、バインダ成分が重合し、無機微粒子とバインダからなる薄層が形成する。層の厚さにも拠るが、照射時間は通常0.1〜60秒程度である。
無機微粒子含有スラリーの溶剤を揮発させる。溶剤を揮発させるには、スラリーを室温で保持しても良いし、30〜100℃程度に加熱しても良い。
(II) フッ素樹脂層
(a) フッ素含有組成物溶液の調製
フッ素樹脂層を形成するには、(a) フッ素含有オレフィン系重合体と、架橋性化合物とを含有する組成物の溶液を基材等に塗布した後で架橋させても良いし、(b) フッ素含有オレフィン系化合物及びこれと共重合する単量体等を含有する組成物の溶液を塗布した後、重合させても良い。フッ素含有組成物を用いてフッ素樹脂層を形成する方法については、特開平07-126552号、特開平11-228631号、特開平11-337706号等に詳細に記載されている。
市販のフッ素含有組成物を適当な溶剤と混合しても良い。使用可能なフッ素含有組成物の例としてオプスター(ジェイエスアール株式会社製)、サイトップ(旭硝子株式会社製)が挙げられる。好ましい溶剤としてメチルエチルケトン、メチルi-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。フッ素含有オレフィン系重合体及び/又はフッ素含有オレフィン系化合物の濃度は、5〜80質量%とするのが好ましい。
(b) コーティング
フッ素樹脂層を形成する方法は、フッ素含有組成物溶液を使用する以外上記(I) 無機微粒子−バインダ複合層とほぼ同じであるので、相違点のみ以下に説明する。フッ素含有組成物溶液の層を形成した後、架橋反応又は重合反応させる。架橋性化合物又はフッ素含有オレフィン系化合物等が熱硬化型の場合、100〜140℃に加熱して30〜60分程度保持するのが好ましい。紫外線硬化型の場合、UV照射装置を用いて50〜3000 mJ/cm2程度でUV照射する。層の厚さにも拠るが、照射時間は通常0.1〜60秒程度である。
第一層を形成した後、無機微粒子含有スラリー又はフッ素含有組成物溶液からなる層をその上に形成する工程と、得られた薄層に紫外線照射して重合する工程とを繰り返すことにより、緻密層を積層することができる。屈折率の条件を満たすのであれば、無機微粒子−バインダ複合層上にフッ素樹脂層を積層しても良いし、フッ素樹脂層上に無機微粒子−バインダ複合層を積層しても良い。
(2) 多孔質層の形成
有機修飾シリカエアロゲル層を積層する場合を例にとって、多孔質層の製造方法を説明する。
(a) シリカエアロゲル層の原料
(a-1) アルコキシシラン及びシルセスキオキサン
アルコキシシラン及び/又はシルセスキオキサンの加水分解重合により、シリカゾル及びシリカゲルが生成する。アルコキシシランはモノマーでも、オリゴマーでも良い。アルコキシシランモノマーはアルコキシル基を3つ以上有するものが好ましい。アルコキシル基を3つ以上有するアルコキシシランを出発原料とすることにより、優れた均一性を有する反射防止膜が得られる。アルコキシシランモノマーの具体例としてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン及びジエトキシジメチルシランが挙げられる。アルコキシシランオリゴマーとしては、上述のモノマーの縮重合物が好ましい。アルコキシシランオリゴマーはモノマーの加水分解重合により得られる。
シルセスキオキサンを出発原料とした場合も、優れた均一性を有する反射防止膜が得られる。シルセスキオキサンは一般式RSiO1.5(ただしRは有機官能基を示す。)により表され、ネットワーク状ポリシロキサンの総称である。Rとしては、例えばアルキル基(直鎖でも分岐鎖でも良く、炭素数1〜6である。)、フェニル基、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)が挙げられる。シルセスキオキサンはラダー型、籠型等種々の構造を有することが知られている。また優れた耐候性、透明性及び硬度を有しており、シリカエアロゲルの出発原料として好適である。
(a-2) 溶媒
溶媒は水とアルコールからなるのが好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコールが好ましく、エタノールが特に好ましい。溶媒の水/アルコール体積比は1〜2であるのが好ましい。水/アルコール比が2超であると、溶媒の揮発に時間がかかり過ぎる。水/アルコール比が1未満であると、アルコキシシラン及び/又はシルセスキオキサン(以下、単に「アルコキシシラン等」という)の加水分解が十分に起こらない。
(a-3) 触媒
アルコキシシラン等の水溶液に触媒を添加するのが好ましい。適当な触媒を添加することによりアルコキシシラン等の加水分解反応を促進することができる。触媒は酸性でも塩基性でもよい。酸性の触媒としては塩酸、硝酸及び酢酸が挙げられる。塩基性の触媒としてはアンモニア、アミン、NaOH及びKOHが挙げられる。好ましいアミンとしてはアルコールアミン、アルキルアミン(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン及びn-プロピルアミン。)が挙げられる。
(b) ゾル及び/又はゲルの作製
水とアルコールからなる溶媒に、アルコキシシラン等を溶解する。溶媒/アルコキシシラン等のモル比は5〜40にするのが好ましい。モル比が5未満であると、アルコキシシラン等が溶解し難過ぎる。モル比が40超であると、シリカ含有ゾルの乾燥に時間がかかり過ぎる。触媒/アルコキシシラン等のモル比は1×10-3〜3×10-2にするのが好ましく、3×10-3〜1×10-2にするのがより好ましい。モル比が1×10-3未満であると、アルコキシシラン等の加水分解が十分に起こらない。モル比を3×10-2超としても、触媒効果は増大しない。
アルコキシシラン等を含む溶液を20〜60時間程度エージングする。具体的には、25〜90℃で溶液を静置するか、ゆっくり撹拌する。アルコキシシラン等、触媒及び溶媒を含む水溶液を15〜60℃で60〜120分撹拌した後、アルコール及び塩基性触媒を添加して15〜30℃で20〜60時間撹拌し、40〜60℃に昇温して20〜60時間静置するのが特に好ましい。エージングによりゲル化が進行し、酸化ケイ素を含有するゾル及び/又はゲルが生成する。本明細書中、「酸化ケイ素を含有するゾル」には酸化ケイ素からなるコロイド粒子が分散状態になっているもののほか、凝集したコロイド粒子からなるゾルのクラスターが分散状態になっているものも含まれる。
(c) 有機修飾
ゾル及び/又はゲルに有機修飾剤の溶液を加え、これらが十分に接触した状態にすることにより、ゾル又はゲルを構成する酸化ケイ素の末端にある水酸基等の親水性基を疎水性の有機基に置換する。好ましい有機修飾剤は下記式(2)〜(7)
MpSiClq ・・・(2)
M3SiNHSiM3 ・・・(3)
MpSi(OH)q ・・・(4)
M3SiOSiM3 ・・・(5)
MpSi(OM)q ・・・(6)
MpSi(OCOCH3)q ・・・(7)
(ただしpは1〜3の整数であり、qはq = 4−p を満たす1〜3の整数であり、Mは水素、アルキル基又はアリール基であり、アルキル基は置換又は無置換であって炭素数1〜18であり、アリール基は置換又は無置換であって炭素数5〜18である。)のいずれかにより表される化合物及びそれらの混合物である。
有機修飾剤の具体例としてトリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、アセトキシトリメチルシラン、アセトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、2-トリメチルシロキシペント-2-エン-4-オン、n-(トリメチルシリル)アセトアミド、2-(トリメチルシリル)酢酸、n-(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルプロピオレート、ノナメチルトリシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール、t-ブチルジメチルシラノール及びジフェニルシランジオールが挙げられる。
有機修飾剤溶液の溶媒はヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物が好ましい。
有機修飾剤の種類や濃度にもよるが、有機修飾反応は10〜40℃で進行させるのが好ましい。10℃未満であると、有機修飾剤が酸化ケイ素と反応し難過ぎる。40℃超であると、有機修飾剤がシリカ以外と反応し易過ぎる。反応中、溶液の温度及び濃度に分布が生じないように、溶液を撹拌するのが好ましい。例えば有機修飾剤溶液がトリエチルクロロシランのヘキサン溶液の場合、10〜40℃で20〜40時間(例えば30時間)程度保持すると、シラノール基が十分にシリル修飾される。修飾率は一般的には10〜30%程度である。
(d) 分散媒の置換
ゾル及び/又はゲルの分散媒は、前述のエージング工程においてエージングを促進したり遅らせたりする表面張力及び/又は固相−液相の接触角や、有機修飾工程における表面修飾の範囲に影響する他、後述するコーティング工程における分散媒の蒸発率にも関係する。ゲルに取り込まれている分散媒は、ゲルの入った容器に置換すべき分散媒を注ぎ、振とうした後でデカンテーションする操作を繰り返すことによって置換することができる。ゾルの場合、低沸点の分散媒又は置換すべき分散媒と共沸する分散媒をゾルに加え、元の分散媒を揮発させた後、新しい分散媒を補給することによって置換することができる。
置換する分散媒として水、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、トルエン、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、メチルi-ブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル及びこれらの混合物を使用するのが好ましい。
(e) 超音波処理
超音波処理により、ゲル状及び/又はゾル状の有機修飾酸化ケイ素をコーティングに好適な状態にすることができる。ゲル状の有機修飾酸化ケイ素の場合、超音波処理により、電気的な力若しくはファンデルワールス力によって凝集していたゲルが解離するか、金属と酸素との共有結合が壊れて、分散状態になると考えられる。ゾル状の場合も、超音波処理によってコロイド粒子の凝集を少なくすることができる。超音波処理には、超音波振動子を利用した分散装置を使用することができる。照射する超音波の周波数は10〜30 kHzとするのが好ましく、超音波照射装置の出力は300〜900 Wとするのが好ましい。
超音波処理時間は5〜120分間とするのが好ましい。超音波を長く照射するほど、ゲル及び/又はゾルのクラスターが細かく粉砕され、凝集の少ない状態になる。このため超音波処理によって得られるシリカ含有ゾル中で、有機修飾酸化ケイ素のコロイド粒子が単分散に近い状態になる。超音波処理時間を5分未満とすると、コロイド粒子が十分に解離しない。超音波処理時間を120分超としても、有機修飾酸化ケイ素のコロイド粒子の解離状態はほとんど変わらない。
シリカ含有ゾルの濃度や流動性が適切な範囲になるように、分散媒を加えても良い。超音波処理に先立って分散媒を添加しても良いし、ある程度超音波処理した後で分散媒を添加しても良い。分散媒に対する有機修飾酸化ケイ素の比率は0.1〜20質量%とするのが好ましい。分散媒に対する有機修飾酸化ケイ素の比率が0.1〜20質量%の範囲でないと、均一な薄層を形成し難過ぎる。
(f) コーティング
シリカ含有ゾルを緻密層又は多孔質層上に塗布する。シリカ含有ゾルからなる層を設ける方法の例としてスプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、フローコート法及びバーコート法が挙げられる。シリカ含有ゾルをコーティングすると、ゾルの構成要素である分散媒が揮発して、シリカエアロゲル層が生成する。シリカエアロゲル層の空隙率は、分散媒が揮発している間は、毛管圧によって生じるゲルの収縮のために小さくなるが、揮発し終わると、スプリングバック現象によって回復する。このためシリカエアロゲル層の空隙率は、ゲルネットワークの元々の空隙率とほぼ同じであり、大きな値を示す。シリカゲルネットワークの収縮及びスプリングバック現象については、米国特許5,948,482号に詳細に記載されている。
単分散に近い状態の酸化ケイ素コロイド粒子を含有するゾルを用いると、小さな空隙率を有するシリカエアロゲル層を形成することができる。凝集した状態のコロイド粒子を含有するゾルを用いると、大きな空隙率を有するシリカエアロゲル層を形成することができる。すなわち、超音波処理時間はシリカエアロゲル層の空隙率に影響すると言うことができる。5〜120分間超音波処理したゾルをディップコートすることにより、空隙率25〜90%のシリカエアロゲル層を得ることができる。
シリカ含有ゾルをコーティングした後、室温で保持しても良いが300℃以下の温度で焼成するのが好ましい。焼成温度が300℃超であると、有機修飾基が脱離し過ぎて親水化してしまう。300℃以下の温度で焼成することにより、ゲル化を十分に進行させることができる。
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
LaFK55からなる平板の表面に下記(1) 及び(2) に示すようにして多層反射防止膜を形成した。
(1) 緻密層の形成
図3に示す成膜装置を使用して、LaFK55ガラスからなる平板(波長550 nmにおける屈折率:1.697)の表面に反射防止膜の緻密層を形成した。基材1の表面11が蒸発源33側になるように、基材1を基材ホルダ32に設置した。酸化アルミニウム(屈折率1.64)を蒸発源33に載置して加熱することにより基材1の表面に酸化アルミニウムを蒸着し、物理層厚91 nmの酸化アルミニウム層を形成した。次いで物理層厚102 nmの酸化ケイ素(屈折率1.46)層、物理層厚108 nmのフッ化マグネシウム(屈折率1.38)層をこの順に形成した。
(2) 多孔質層の形成
(i) 有機修飾シリカ含有ゾルの作製
テトラエトキシシラン5.21 gと、エタノール4.38 gとを混合した後、塩酸(0.01 N)0.4 gを加えて90分間撹拌した。エタノール44.3 gと、アンモニア水溶液(0.02 N)0.5 gとを添加して46時間撹拌した後、この混合液を60℃に昇温して46時間エージングしたところ、湿潤ゲルが生成した。溶媒をデカンテーションした後、素早くエタノールを加えて振とうし、デカンテーションすることにより湿潤ゲルの分散媒をエタノールに置換した。さらにヘキサンを加えて振とうし、デカンテーションすることによりエタノール分散媒をヘキサンに置換した。ゲル状のシリカにトリメチルクロロシランのヘキサン溶液(濃度5体積%)を加え、30時間撹拌して、酸化ケイ素末端を有機修飾した。得られた有機修飾シリカゲルは、ヘキサン洗浄した。
有機修飾シリカゲルを3分割し、それぞれにヘキサンを加えて濃度1質量%にした後、超音波照射(20 Hz、500 W)することによってゾル状にした。超音波照射時間はそれぞれ5分間、10分間、100分間とした。便宜上、超音波照射時間5分のものをA液とし、10分間のものをB液とし、100分間のものをC液とする。
(ii) ディップコート
上記(1) で得られた第三層(フッ化マグネシウム層)上に、C液をディップコートした後、40℃で5分間風乾した。次にB液をディップコートし、40℃で5分間風乾した後、A液をディップコートして40℃で5分間風乾した。これを150℃で5分間焼成したところ、シリカエアロゲル層が形成した。
反射防止膜の構成を表1に示す。
Figure 0004443318
注1 「層No.」は、基材側から順にNo.1、No.2、・・・・No.6とする。
注2 「−」は、緻密層を示す。
実施例2
下記(1) 及び(2) に示すように、BK7からなる平板の表面に多層反射防止膜を形成した。
(1) 緻密層の形成
(i) 第一層
シリコーンハードコート液(ジーイー東芝シリコーン株式会社製、商品名UVHC 8558)30 mLと、i-プロピルアルコール270 mLを混合し、得られた溶液をBK7からなる平板(波長550 nmにおける屈折率:1.518)の表面にディップコートした。形成したスラリーの層にUV照射装置(フュージョンシステムズ社製)を用いて1500 mJ/cm2で紫外線照射し、第一層を形成した。第一層の屈折率は1.47であり、物理層厚は102 nmであった。
(ii) 第二層
パーフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとの共重合体30 g、重合開始剤(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モンフォリノプロパノン-1)1.5 g、メチルi-ブチルケトン1000 mLを混合した。得られたフッ素含有重合体溶液を第一層上にディップコートした以外実施例2(1) (i) と同様にして、第二層を形成した。第二層の屈折率は1.39であり、物理層厚は108 nmであった。
(2) 多孔質層の形成
有機修飾シリカゲルとヘキサンからなる混合物に、それぞれ100分間、10分間、5分間超音波照射し、超音波照射時間100分間のF液、10分間のE液及び5分間のD液を第二層上にこの順でディップコートした以外、実施例1(2) と同様にして第三層〜第五層を形成した。
得られた反射防止膜の構成を表2に示す。
Figure 0004443318
注1 「層No.」は、基材側から順にNo.1、No.2、・・・・No.5とする。
注2 「−」は、緻密層を示す。
実施例1及び2の各シリカエアロゲル層の超音波照射時間と屈折率を表3に示す。
Figure 0004443318
注 「層No.」は、基材側から順にNo.1、No.2、・・・・No.6とする。
比較例1
実施例1(1) と同様にして、LaFK55からなる平板の表面に蒸着法によって緻密な層のみからなる反射防止膜を形成した。得られた緻密反射防止膜の構成を表4に示す。
Figure 0004443318
注 「層No.」は、基材側から順にNo.1、No.2、No.3とする。
比較例2
表5に示す構成になるように、蒸着法によって酸化チタンとフッ化マグネシウムとを交互に積層した以外実施例1(1) と同様にして、LaFK55からなる平板の表面に緻密な層のみからなる反射防止膜を形成した。
Figure 0004443318
注 「層No.」は、基材側から順にNo.1、No.2、・・・・No.6とする。
実施例1及び2、並びに比較例1及び2の多層反射防止膜付き平板の分光反射率を測定した。結果を図4〜7に示す。実施例1及び2の光学素子の分光反射率は400〜1600 nmの波長範囲で1%以下であった。
実施例1及び2の多層反射防止膜をクリーニングワイパーで2〜3回拭き取った後、表面の様子を観察したところ、変化が見られなかった。次に、60℃、90 RH%に設定した恒温恒湿槽に実施例1及び2の多層反射防止膜付き平板を入れ、恒温恒湿槽中に48時間保持した。その後、平板を取り出して分光反射率を測定したところ、図4及び5と比べて全く変化が無かった。
本発明の反射防止膜を有する光学素子の一例を示す断面図である。 本発明の反射防止膜の物理膜厚と屈折率を示すグラフである。 反射防止膜を成膜する装置の一例を示す構成図である。 実施例1の多層反射防止膜付き平板の分光反射率を示すグラフである。 実施例2の多層反射防止膜付き平板の分光反射率を示すグラフである。 比較例1の緻密反射防止膜付き平板の分光反射率を示すグラフである。 比較例2の緻密反射防止膜付き平板の分光反射率を示すグラフである。
符号の説明
1・・・基材
11・・・表面
2・・・反射防止膜
21・・・第一層
22・・・第二層
23・・・第三層
24・・・第四層
25・・・第五層
26・・・第六層

Claims (5)

  1. 基材の表面に形成され複数の層からなり、前記基材及び各層の屈折率前記基材から順に小さくなっており、前記層とその隣の層及び前記基材とそれに接触する層との屈折率差が0.02〜0.2であり、各層の物理層厚が15〜200 nmであり、前記複数の層のうち入射媒質側に形成された少なくとも1層が有機修飾シリカからなる多孔質層であり、可視域から赤外域にかけて1200 nm以上の波長範囲で反射率1%以下である反射防止膜を製造する方法であって、
    前記多孔質層は、分散媒に対して0.1〜20質量%の疎水化処理シリカゲルを含む分散物に、周波数10〜30 kHzの超音波を5〜120分間照射して調製した疎水化シリカ含有ゾルを塗布、乾燥及び焼成することにより形成し、
    前記多孔質層の屈折率は、前記超音波の照射時間により前記分散物の凝集度を調節し、25〜90%の範囲で任意の空隙率を有する前記多孔質層を形成することによって調節することを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  2. 請求項1に記載の反射防止膜の製造方法において、前記複数の層のうち少なくとも1層が無機微粒子と紫外線硬化性のアクリル系バインダとからなる複合層であることを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の反射防止膜の製造方法において、前記複数の層のうち少なくとも1層がフッ素含有紫外線硬化樹脂層であることを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止膜の製造方法において、前記基材の屈折率が波長550 nmにおいて1.697であり、前記反射防止膜が前記基材側から順に3層の前記緻密層及び3層の前記多孔質層を形成してなることを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止膜の製造方法において、前記基材の屈折率が波長550 nmにおいて1.518であり、前記反射防止膜が前記基材側から順に2層の前記緻密層及び3層の前記多孔質層を形成してなることを特徴とする反射防止膜の製造方法。
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