[実施例1の構成]
図1ないし図4は本発明の実施例1を示したもので、図1はインジェクタ用電磁弁の主要構造を示した図で、図2は燃料噴射ノズルとインジェクタ用電磁弁とを一体化したインジェクタの全体構造を示した図である。
本実施例は、例えば自動車等の車両に搭載された多気筒ディーゼルエンジン等の内燃機関(以下エンジンと言う)用の燃料噴射システムとして知られるコモンレール式燃料噴射システム(蓄圧式燃料噴射装置)に適用されている。ここで、コモンレール式燃料噴射システムは、液体燃料を加圧して高圧化する燃料供給ポンプ(サプライポンプ)と、このサプライポンプより圧送された高圧燃料を蓄圧するコモンレール(図示せず)と、このコモンレール内に蓄圧された高圧燃料をエンジンの各気筒の燃焼室内へ噴射供給するインジェクタとを備えている。
そして、エンジンの各気筒毎に対応して搭載されたインジェクタは、サプライポンプから圧送供給された高圧燃料を蓄圧するコモンレールより分岐する燃料供給配管(図示せず)の下流端に接続されて、エンジンの各気筒の燃焼室内への燃料噴射を行う燃料噴射ノズル1と、この燃料噴射ノズル1の弁体を開弁方向に駆動する電磁式アクチュエータとしてのインジェクタ用電磁弁(弁部材+電磁駆動部:以下電磁弁と略す)2とを備えている。なお、本実施例の電磁弁2は、コイルボビン3に巻装されるソレノイドコイル4、およびこのソレノイドコイル4やアーマチャ5を伴って磁気回路を形成するステータコア6等を含んで構成されるソレノイドアッセンブリ8をレーザー溶接でインジェクタボデー9に溶着固定されている。
ここで、本実施例のインジェクタは、コモンレール内に蓄圧された高圧燃料を、直接燃焼室内に霧状に噴射供給する直接噴射タイプの電磁式燃料噴射弁であって、燃料噴射ノズル1と電磁弁2との間にチップパッキン(オリフィスプレート)13を挟み込んだ状態で、リテーニングナット10を電磁弁2に締め付け固定することで、燃料噴射ノズル1の密着面と電磁弁2の密着面とを所定の締結軸力で密着させることによって一体化されている。
燃料噴射ノズル1のハウジングは、先端側にノズル噴孔部を有するノズルボデー11と、このノズルボデー11の密着面に液密的に密着固定されたアダプタプレート12とによって構成されている。また、電磁弁2のハウジングは、オリフィスプレート13の密着面に液密的に密着固定されたバルブボデー14と、このバルブボデー14の密着面に液密的に密着固定されたインジェクタボデー9とによって構成されている。
なお、ノズルボデー11の内部には、燃料噴射ノズル1の弁体を構成するノズルニードル15が往復移動自在に収容されている。また、アダプタプレート12の内部には、ノズルニードル15を閉弁方向に付勢する付勢力を発生するコイルスプリング16、およびこのコイルスプリング16のコイル内径側を保持するスプリングガイド17が収容されている。また、バルブボデー14の内部には、電磁弁2の弁体を構成するスプール弁18が収容されている。また、バルブボデー14とインジェクタボデー9との間には、スプール弁18を閉弁方向に付勢する付勢力を発生するコイルスプリング19が装着されている。
ここで、電磁弁2のインジェクタボデー9の軸線方向の一端部(後端部)で開口したインレットポート21からオリフィスプレート13の燃料中継路25を経由して燃料噴射ノズル1の油溜まり室28および制御室33内に高圧燃料を供給する燃料供給経路(電磁弁2の燃料供給経路)は、インレットポート21および燃料通路22〜24等によって構成されている。
また、燃料噴射ノズル1のアダプタプレート12の密着面から油溜まり室28内に高圧燃料を導入する燃料導入経路(燃料噴射ノズル1の第1燃料導入経路)は、燃料通路26およびノズルボデー11の燃料通路27等によって構成されている。また、燃料噴射ノズル1のアダプタプレート12の密着面から制御室33内に高圧燃料を導入する燃料導入経路(燃料噴射ノズル1の第2燃料導入経路)は、燃料通路26、入口側オリフィス31および軸方向孔32等によって構成されている。
また、燃料噴射ノズル1のノズルボデー11の摺動孔とノズルニードル15の径大部との摺動部等より溢流したリーク燃料や、燃料噴射ノズル1の軸方向孔32および制御室33より排出されたリーク燃料(リターン燃料)を燃料系の低圧側(燃料タンク)に戻す燃料排出経路(電磁弁2の燃料排出経路)は、オリフィスプレート13の出口側オリフィス34に連通する燃料通路35、円筒状空間36、弁孔37、連通室39およびリークポート(図示せず)等によって構成されている。
ノズルボデー11は、例えば低炭素鋼またはクロム・モリブデン鋼等の金属材料によって円筒形状に形成されている。このノズルボデー11は、軸線方向の一方側(図示上端側、後端側)から軸線方向の他方側(図示下端側、先端側)に向かって円筒状の径大部、この径大部よりも外径の小さい円筒状の中間部、およびこの中間部よりも外径の小さい円筒状の径小部等を有している。そして、径大部と中間部との間には、リテーニングナット10に係止される円環状の段差部(被係止部)が設けられている。
また、ノズルボデー11の軸線方向の先端側には、内部に円錐形状空間を形成する逆円錐形状のシート面(弁座)が設けられている。このシート面には、エンジンの各気筒の燃焼室内に燃料を噴射するためのノズル噴孔部、つまり複数の噴射孔30が設けられている。そして、ノズルボデー11の内部には、アダプタプレート12の密着面に液密的に当接する密着面(ノズルボデー11の密着面)よりノズル噴孔部側へと真っ直ぐに延びる軸方向孔が設けられている。
ノズルボデー11の軸方向孔の図示上端側には、ノズルニードル15の径大部が摺動する摺動孔(ニードルガイド部)41が形成されている。また、ノズルボデー11の軸方向孔の中間部分には、内部に導入される燃料の油圧力がノズルニードル15の開弁方向に作用する第1圧力室としての油溜まり室(燃料溜まり室)28が設けられている。つまり、油溜まり室28内に導入される燃料の油圧力は、ノズルニードル15をノズル噴孔部を開く方向(開弁方向)に駆動する第1ニードル駆動手段として機能する。また、ノズルボデー11の内部には、ノズルボデー11の密着面から油溜まり室28へ斜めに延びる燃料通路27が形成されている。また、ノズルボデー11の軸方向孔の図示下方側の内周とノズルニードル15の外周との間には、油溜まり室28からノズル噴孔部側へと真っ直ぐに延びる燃料通路(クリアランス)29が形成されている。
アダプタプレート12は、例えば炭素鋼またはクロム・モリブデン鋼等の金属材料によって円筒形状に形成されている。そして、アダプタプレート12の内部には、オリフィスプレート13の密着面に液密的に当接する密着面(アダプタプレート12の密着面)よりノズルボデー側へと真っ直ぐに延びる軸方向孔32が設けられている。この軸方向孔32内には、燃料と共にコイルスプリング16およびスプリングガイド17が収容されている。
また、ノズルボデー11の摺動孔41とアダプタプレート12の軸方向孔32の図示下端側との間との間には、内部に導入される燃料の油圧力がノズルニードル15の閉弁方向に作用する第2圧力室としての制御室33が形成されている。つまり、制御室33内に導入される燃料の油圧力は、ノズルニードル15をノズル噴孔部を閉じる方向(閉弁方向)に駆動する第2ニードル駆動手段として機能する。なお、本実施例の制御室33は、ノズルボデー11の軸方向孔の図示上端で開口した拡径部とノズルニードル15の径大部の環状端面とアダプタプレート12の軸方向孔32の図示下端側とノズルニードル15のニードル頭部42の外周とで囲まれた円筒状空間であって、ノズルニードル15の背圧制御を行う。
また、アダプタプレート12の図示下端部には、ノズルニードル15のリフト量がフルリフト量(最大リフト量)に到達した際に、ノズルニードル15の径大部の環状端面を係止して、この部位より開弁方向へのノズルニードル15の移動を規制する円環状の規制壁(規制面)43が設けられている。また、アダプタプレート12の内部には、アダプタプレート12の密着面からノズルボデー11の燃料通路27へ斜めに延びる燃料通路26が形成されている。また、アダプタプレート12の内部には、アダプタプレート12の密着面または燃料通路26の図示上端部から制御室33へ斜めに延びる燃料通路が形成されている。この燃料通路の途中または制御室33で開口する開口端には、燃料通路の通路断面積を絞る入口側オリフィス(固定絞り)31が設けられている。
オリフィスプレート13は、例えば炭素鋼またはクロム・モリブデン鋼等の金属材料によって円環板形状に形成されている。このオリフィスプレート13の内部には、燃料噴射ノズル1のアダプタプレート12の燃料通路26と電磁弁2のバルブボデー14の燃料通路24とを連通する燃料中継路(連通路、燃料通路)25が設けられている。また、オリフィスプレート13の中心軸線より若干図示左寄りにずれた位置には、制御室33からアダプタプレート12の軸方向孔32を経由して電磁弁2内部に形成される燃料排出経路(燃料通路35および連通室39等)に燃料を排出するための燃料通路が設けられている。この燃料通路の途中には、燃料通路の通路断面積を絞る出口側オリフィス(固定絞り)34が設けられている。
ノズルニードル15は、例えば高速度工具鋼または低炭素鋼またはクロム・モリブデン鋼等の金属材料によって丸棒形状に形成されており、ノズルボデー11のシート面に着座、離座して、ノズル噴孔部(複数の噴射孔30)を閉塞、開放する。このノズルニードル15の先端部には、概略1段または概略2段の円錐形状面が設けられており、1つの円錐形状面または2つの円錐形状面間に設けられる円環状の稜線(エッジ)には、ノズルボデー11のシート面に液密的に接触(着座)するシート部が形成されている。また、ノズルニードル15の図示上端側には、ノズルボデー11の摺動孔41内を往復移動自在に摺動する径大部(ニードル摺動部)が設けられている。
そして、ノズルニードル15の径大部より図示上方側には、径大部よりも外径の小さい円柱形状のニードル頭部42が一体的に形成されている。このニードル頭部42は、径大部の環状端面より制御室33内に突出するように設けられている。なお、本実施例のノズルニードル15のニードル頭部42の図示上端部には、スプリングガイド17が嵌合固定されている。これにより、スプリングガイド17は、ノズルニードル15と一体的に動作可能となっている。
コイルスプリング16は、一端がオリフィスプレート13の図示下端面に保持され、他端がスプリングガイド17の鍔状部の図示上端面(円環状端面)に保持されている。このコイルスプリング16の付勢力(スプリング力)は、ノズルニードル15を、スプリングガイド17を介してノズル噴孔部(複数の噴射孔30)を閉じる方向(閉弁方向)に付勢するニードル付勢手段として機能する。
電磁弁2は、ノズルボデー11の摺動孔41内に摺動自在に収容されたノズルニードル15を、ノズル噴孔部(複数の噴射孔30)を開く方向(開弁方向)に駆動する電磁式アクチュエータである。そして、電磁弁2は、弁部材(弁体)としてのスプール弁(バルブ)18が上記の出口側オリフィス34に連通する燃料排出経路を開閉する弁部と、励磁電流を供給することにより磁気吸引力を発生する電磁駆動部とから構成されており、電磁弁駆動回路(インジェクタ駆動回路)を介してエンジン制御ユニット(以下ECUと呼ぶ)から印加されるパルス状のインジェクタ駆動電流(励磁電流)に応じて、燃料排出経路を開閉制御できるように構成されている。
先ず、弁部は、インジェクタボデー9の密着面とオリフィスプレート13の密着面との間に液密的に挟み込まれたバルブボデー14と、電磁弁2の燃料排出経路を開閉するスプール弁18と、このスプール弁18等の可動部材を、燃料排出経路を閉じる側(軸線方向の他方側、閉弁方向)に付勢するコイルスプリング19とによって構成されている。また、電磁駆動部は、通電されると周囲に磁束を発生してスプール弁18を、燃料排出経路を開く側(軸線方向の一方側、開弁方向)に駆動するソレノイドコイル4と、このソレノイドコイル4により励磁されるアーマチャ5およびステータコア6と、このステータコア6の外周部を被覆して保護するインジェクタボデー9とから構成されている。
バルブボデー14は、例えば低炭素鋼またはクロム・モリブデン鋼等の金属材料によって円筒形状に形成されている。このバルブボデー14は、インジェクタボデー9の図示下端側の外径、オリフィスプレート13の外径、アダプタプレート12の外径と略同一の外径を有している。そして、バルブボデー14の内部には、インジェクタボデー9の密着面に液密的に当接する密着面(バルブボデー14の密着面)よりオリフィスプレート側へと真っ直ぐに延びる軸方向孔が設けられている。この軸方向孔の図示下端側には、スプール弁18の径大部が摺動する摺動孔(バルブガイド部)44が形成されている。また、軸方向孔の図示上端側には、アーマチャ5を往復移動自在に収容する連通室39が形成されている。
また、軸方向孔の摺動孔44と連通室39との間には、スプール弁18の径小部の外周とバルブボデー14の軸方向孔の内周との間に形成される円筒状空間(液体通路)36が形成されている。この円筒状空間36の図示上端側の開口端には、内径が拡径された円錐台形状の弁孔37を形成するシート面が設けられている。また、バルブボデー14の内部には、円筒状空間36とオリフィスプレート13の出口側オリフィス34とを連通する燃料通路(液体通路)35が形成されている。この燃料通路35は、図示上端側が斜めに傾斜しており、図示下端側が出口側オリフィス34に向けて真っ直ぐに延びている。
また、バルブボデー14の内部には、オリフィスプレート13の密着面とバルブボデー14の図示下端面に設けられた凹溝部との間に形成された半径方向孔45と連通室39とを連通する圧力抜き孔46が形成されている。また、バルブボデー14の内部には、インジェクタボデー9の密着面に液密的に当接する密着面(バルブボデー14の密着面)からオリフィスプレート13の燃料中継路25側へと真っ直ぐに延びる燃料通路24が設けられている。
ここで、連通室39は、バルブボデー14の図示上端部に設けられた凹状部とステータコア6の先端磁極面47との間に形成されて、電磁弁2の燃料排出経路および軸方向孔32を介して制御室33と連通している。そして、連通室39の燃料流方向の下流側には、燃料系の低圧側(燃料タンク)に燃料を溢流させるためのリークポートが設けられており、インジェクタ内の各摺動部およびアダプタプレート12の制御室33からのリーク燃料は、燃料還流配管(リターン配管:図示せず)を介して燃料タンク(図示せず)に戻される。
本実施例では、リークポートは、バルブボデー14の軸線方向に対して直交する半径方向の側壁面にて、半径方向の外方に向かって開口している。なお、本実施例のバルブボデー14の側壁面には、インジェクタをストレート形状とする目的で、バルブボデー14の軸線方向に対して直交する半径方向の外方側へ突出する突起物を設けず、リターン配管の先端部をリークポート(連通室39の開口端)に差し込み、リークポートの内周に形成された雌ねじ部にリターン配管の外周に形成された雄ねじ部を螺合させることで、インジェクタにリターン配管を締め付け固定している。
スプール弁18は、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼または低炭素鋼またはクロム・モリブデン鋼等の金属材料によって丸棒形状に形成されている。このスプール弁18には、図示上端側から図示下端側に向かって鍔状部(弁体)、この鍔状部よりも外径の小さい径小部、この径小部よりも外径の大きい径大部(バルブ摺動部)が設けられている。また、鍔状部の図示上端面より図示上方に突出した円柱状のバルブ頭部は、鍔状部よりも外径が小さい。なお、鍔状部の図示下端面には、バルブボデー14のシート面に液密的に接触(着座)する略円錐台形状のシート部が形成されている。
そして、スプール弁18は、電磁弁2のソレノイドコイル4への通電を停止している際に、スプール弁18のシート部がバルブボデー14のシート面に着座して、電磁弁2の燃料排出経路を閉塞する。また、スプール弁18は、電磁弁2のソレノイドコイル4への通電が開始されると、スプール弁18のシート部がバルブボデー14のシート面より離座してアーマチャ5と共に軸線方向の一方側に移動して、電磁弁2の燃料排出経路を開放する。したがって、本実施例の電磁弁2は、常閉型(ノーマリクローズタイプ)の電磁式開閉弁を構成する。
コイルボビン3は、電気絶縁性に優れる熱可塑性樹脂(樹脂材料)によって略円筒形状に形成されている。このコイルボビン3は、ステータコア6のコイル収納部49に収納されており、そのコイルボビン3の内周部には、ステータコア6の外周部に嵌合する断面円形状の嵌合面50が形成されている。また、ソレノイドコイル4は、コイルボビン3の外周に絶縁被膜を施した導線を複数回巻装したコイルであって、通電を受けることにより起磁力を発生してアーマチャ5およびステータコア6を励磁(磁化)することで、アーマチャ5をストローク方向(軸線方向の一方側)に吸引して電磁弁2のスプール弁18を開弁駆動する。
このソレノイドコイル4は、コイルボビン3の外周に巻装したコイル部51、およびこのコイル部51より取り出された一対の端末リード線52を有している。そして、ソレノイドコイル4の一対の端末リード線52は、インジェクタボデー9内部に設けられた軸方向孔(リード線取出孔)53を挿通して、インジェクタボデー9の斜め後方部で開口した開口部54より外部に取り出されている。なお、本実施例では、ソレノイドコイル4をドライコイル化しているので、耐油性のゴム系弾性体としてのOリング等のシール材を廃止している。
アーマチャ5は、例えば純鉄や低炭素鋼(またはフェライト系のステンレス鋼:SUS13)等の軟質磁性材料によって形成されており、ソレノイドコイル4により励磁されると、ステータコア6の先端磁極面47に吸引されて、スプール弁18を伴って軸線方向の一方側、つまりステータコア6の先端磁極面47に接近する側に移動する。このアーマチャ5は、ステータコア6の先端磁極面47に対向して配置される円環状部、およびこの円環状部より軸線方向のステータコア側とは逆側(他方側)に突出すると共に、スプール弁18のバルブ頭部を保持固定する筒状のバルブ保持部(筒状部)を有している。また、アーマチャ5の円環状部には、この円環状部のステータコア側端面の中央部で開口したアーマチャ側凹部55が設けられている。
ステータコア6は、例えば純鉄や低炭素鋼(またはフェライト系のステンレス鋼:SUS13)等の軟質磁性材料によって形成されている。このステータコア6は、ソレノイドコイル4およびアーマチャ5を伴って磁気回路を形成すると共に、ソレノイドコイル4への通電時に磁化されて電磁石となり、アーマチャ5を軸線方向の一方側、つまり円環板状の先端磁極面47に接近する側に吸引する。また、ステータコア6は、ソレノイドコイル4のコイル部51よりも半径方向の内径側に位置する円柱状のインナーコア61と、ソレノイドコイル4のコイル部51よりも半径方向の外径側に位置する円筒状のアウターコア62とに2分割されている。
インナーコア61の図示上端側(先端磁極面側に対して逆側)の外周部には、インジェクタボデー9の段差部に係止される円環状のフランジ部56が設けられている。また、インナーコア61の外周部には、アウターコア62の内周部との間に、コイルアッセンブリ(コイルボビン3、ソレノイドコイル4のコイル部51等)を収納する円筒形状のコイル収納部(円筒状空間)49を形成するための円筒面57が設けられている。また、インナーコア61の図示下端側(先端磁極面側)の外周部には、周溝部59が設けられている。
上記のコイル収納部49は、ステータコア6の先端磁極面47を間に挟んで、連通室側に対して軸線方向の逆側に設けられている。そして、本実施例では、連通室39内を通過するリーク燃料がコイル収納部側に浸入しないように、アウターコア62の外周部をインジェクタボデー9の内周部に全周レーザー溶接して溶着固定している。インナーコア61およびアウターコア62の図示下端面には、電磁弁2の閉弁時に、アーマチャ5の円環状部のステータコア側端面との間に所定の間隙(エアギャップ)を隔てて対向配置される円環状の先端磁極面47がそれぞれ設けられている。
また、インナーコア61の先端磁極面47の中央部には、アーマチャ5の円環状部のアーマチャ側凹部55に対向してステータ側凹部64が設けられている。これらのアーマチャ側凹部55とステータ側凹部64との間には、電磁弁2のアーマチャ5およびスプール弁18等の可動部材を、弁孔37を閉じる側(閉弁方向)に付勢するコイルスプリング19が装着されている。アウターコア62の図示下端側(先端磁極面側)の内周部には、円環状の突起部63が設けられている。そして、インナーコア61の周溝部59とアウターコア62の突起部63との間に形成される円環状空間には、磁気回路からの磁束漏れを低減するための円環板状の非磁性材プレート7が液密的に嵌め込まれている。なお、ステータコア6のアウターコア62の外周部は、インジェクタボデー9に被覆されて保護されている。
インジェクタボデー9は、例えば低炭素鋼またはクロム・モリブデン鋼等の金属材料によって円筒形状に形成されている。このインジェクタボデー9は、リテーニングナット10の最外径部と略同一の外径を有する円柱状のブロック65、このブロック65よりも軸線方向の先端側(図示下端側)に設けられた円筒状のソレノイド保持部(円筒状部)66、およびブロック65よりも軸線方向の後端側(図示上端側)に設けられた円管状の配管継ぎ手(インジェクタの軸線方向の一端部(後端部))67等を有している。
インジェクタボデー9のブロック65は、インジェクタボデー9の最外径部であり、ソレノイド保持部66および配管継ぎ手67よりも外径が大きい。このブロック65の内部には、配管継ぎ手67の一端面(後端面)で開口したインレットポート21から真っ直ぐに延びる燃料通路22、およびこの燃料通路22からバルブボデー14の燃料通路24側へと真っ直ぐに延びる燃料通路23が形成されている。
なお、インレットポート21および燃料通路22は、インジェクタボデー9の軸線方向に対して若干所定の傾斜角度だけ傾斜している。また、燃料通路23は、バルブボデー14の燃料通路24およびオリフィスプレート13の燃料中継路25と同様に、インジェクタボデー9、つまりインジェクタの軸線方向と略平行するように直線状に形成されている。また、ソレノイド保持部66の軸線方向の先端側には、バルブボデー14の円環状の結合端面(バルブボデー14の密着面)に液密的に密着する円環状の結合端面(インジェクタボデー9の密着面)71が設けられている。
このソレノイド保持部66の結合端面71は、ソレノイドアッセンブリ8をインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部に挿入した際に、ステータコア6のアウターコア62の先端磁極面47と略同一平面上になるように配置されている。また、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66の外周には、リテーニングナット10の内周ねじ部(雌ねじ部)72と螺合する外周ねじ部(雄ねじ部)73が形成されている。また、インジェクタボデー9の配管継ぎ手67の外周には、リターン配管の内周ねじ部(雌ねじ部)と螺合する外周ねじ部(雄ねじ部)74が形成されている。
また、ブロック65およびソレノイド保持部66の内部には、バルブボデー14の密着面に液密的に当接する密着面(インジェクタボデー9の密着面)よりインジェクタボデー9の斜め後方部で開口した開口部側に延びる軸方向孔53が形成されている。この軸方向孔53の図示上端側には、内径が最も小さい径小孔が形成されている。また、軸方向孔53の中間部には、径小孔よりも内径の大きい中間孔が形成されている。これらの径小孔および中間孔の内部には、ソレノイドコイル4の一対の端末リード線52が挿通されている。また、軸方向孔53の図示下端側には、インジェクタボデー9の密着面で開口する開口部75が形成されている。
開口部75は、中間孔よりも拡径されており、ステータコア6のアウターコア62の外周部に対向する内周部(インジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部、ステータガイド部)を有し、コイルアッセブリ(コイルボビン3、ソレノイドコイル4等)、ステータコア6および非磁性材プレート7を一体化したソレノイドアッセンブリ8を保持固定するソレノイド保持孔として機能する。なお、軸方向孔53の中間孔と開口部75との間には、円環状の段差部76が設けられている。この段差部76は、ソレノイドアッセンブリ8を、インジェクタボデー9の密着面で開口する開口部75内に差し込んだ際に、ステータコア6のインナーコア61およびアウターコア62の図示上端側の円環状端面(先端磁極面47とは逆側面)を係止してこの部位より更に図示上方へのソレノイドアッセンブリ8の過剰な挿入動作を規制する円環状の規制壁(規制面、ストッパ部)として機能する。
リテーニングナット10は、例えば低炭素鋼またはクロム・モリブデン鋼等の金属材料によってノズルボデー11の中間部および径大部の外周部、アダプタプレート12の外周部、オリフィスプレート13の外周部、バルブボデー14の外周部、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66の外周部を被覆するように円筒形状に形成されている。このリテーニングナット10は、図示上端側から図示下端側に向かって円筒状の径大部(最外径部)、この径大部よりも外径の小さい円筒状の中間部、およびこの中間部よりも外径の小さい円筒状の径小部等を有している。
リテーニングナット10の径大部の図示上端側の内周面には、インジェクタボデー9の外周ねじ部73に螺合する内周ねじ部72が形成されている。また、中間部と径小部の間においてノズルボデー11の径大部の段差部に対向する環状端面には、ノズルボデー11の径大部の段差部を係止する係止部77が設けられている。また、径小部の内部には、ノズルボデー11の中間部を隙間嵌めする嵌合孔78が設けられている。そして、ノズルボデー11の径小部は、リテーニングナット10の径小部の図示下端面より燃焼室側に突出している。
そして、リテーニングナット10は、燃料噴射ノズル1と電磁弁2との間にオリフィスプレート13を挟み込んだ状態で、リテーニングナット10を電磁弁2のインジェクタボデー9のソレノイド保持部66に締め付け固定することで、燃料噴射ノズル1のアダプタプレート12の密着面と電磁弁2のバルブボデー14の密着面とを所定の締結軸力で密着させている。これにより、燃料噴射ノズル1のノズルボデー11の密着面とアダプタプレート12の密着面とがメタルシールされる。また、アダプタプレート12の密着面とオリフィスプレート13の密着面とがメタルシールされる。また、オリフィスプレート13の密着面と電磁弁2のバルブボデー14の密着面とがメタルシールされる。また、バルブボデー14の密着面とインジェクタボデー9の密着面とがメタルシールされる。
[実施例1の組付方法]
次に、本実施例の電磁弁2のインジェクタボデー9の内周部へのソレノイドアッセンブリ8の固定方法を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。ここで、図3および図4はソレノイドアッセンブリを示した図である。
先ず、円環状の非磁性材プレート7の外周部をアウターコア62の先端磁極面側の突起部63の内周部に圧入嵌合して、アウターコア62に非磁性材プレート7を一体的にしかも強固に結合する。なお、アウターコア62と非磁性材プレート7との円環状の結合部に、連通室側からコイル収納部側へのリーク燃料の漏洩または溢流を封止できるだけのシール面圧(またはシール性)を持たせることが望ましい。さらに、アウターコア62と非磁性材プレート7との結合部を例えば全周レーザー溶接等にて全周に渡って円環状に溶着固定することで、アウターコア62と非磁性材プレート7との結合部を完全に封止する。次に、コイルボビン3の外周にソレノイドコイル4のコイル部51を巻装してコイルアッセンブリを構成し、このコイルアッセンブリのコイルボビン3の内周部(嵌合面50)をインナーコア61の外周部(円筒面57)に嵌め合わせて、インナーコア61にコイルアッセンブリを一体化させる。
次に、コイルアッセンブリを保持したインナーコア61の周溝部59およびフランジ部56の外周部に非磁性材プレート7の内周部およびアウターコア62の図示上端側の内周部を圧入嵌合して、インナーコア61に非磁性材プレート7およびアウターコア62を一体的にしかも強固に結合する。このとき、インナーコア61の外周部(円筒面57)とアウターコア62の内周部との間に円筒形状のコイル収納部49が形成される。なお、インナーコア61と非磁性材プレート7との円環状の結合部に、連通室側からコイル収納部側へのリーク燃料の漏洩または溢流を封止できるだけのシール面圧(またはシール性)を持たせることが望ましい。さらに、インナーコア61と非磁性材プレート7との結合部を例えば全周レーザー溶接等にて全周に渡って円環状に溶着固定することで、インナーコア61と非磁性材プレート7との結合部を完全に封止する。これにより、コイルアッセブリ(コイルボビン3、ソレノイドコイル4等)、ステータコア6および非磁性材プレート7が一体的に結合されてソレノイドアッセンブリ8が組み立てられる(図3および図4参照)。
ここで、本実施例の電磁弁2では、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部の表面上、特にインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の開口端側の結合端面71近傍に、公知の浸炭拡散処理または浸炭窒化処理または窒化処理を施して、ソレノイド保持部66の内周部の表面上に浸炭拡散処理層、浸炭窒化処理層、窒化処理層を形成している。あるいは、非磁性のコーティング膜を形成しても良い。これにより、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66の開口端側の結合端面71近傍に、ソレノイドコイル4、アーマチャ5およびステータコア6等よりなる磁気回路からの磁束漏れを低減するための表面硬化処理を施すことができる。なお、公知の浸炭拡散処理として、例えばガス浸炭法、塩浴浸炭法、真空浸炭法を適用しても良い。また、浸炭窒化処理として、例えばガス浸炭窒化法、塩浴浸炭窒化法を適用しても良い。また、窒化処理として、例えばプラズマ窒化法、イオン窒化法または塩浴窒化法を適用しても良い。また、非磁性のコーティング膜として、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)被膜を用い、このDLC被膜を例えばプラズマCVD法を用いてインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部の表面上、特にインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の開口端側の結合端面71近傍に薄膜形成しても良い。
次に、ソレノイドアッセンブリ8を、図1に示したように、インジェクタボデー9の密着面で開口した開口部(ソレノイド保持孔)75内に挿入する。この場合、ステータコア6のアウターコア62の外周部とインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部との間に、ソレノイドアッセンブリ8が軸線方向に移動できる程度のクリアランスを設けても良く(隙間嵌め)、あるいはインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部にステータコア6のアウターコア62の外周部が圧入嵌合するようにしても良い(締まり嵌め)。あるいは中間嵌めでも良い。
ここで、ソレノイドアッセンブリ8をインジェクタボデー9の開口部75に挿入する際には、例えば治具を用いてソレノイドアッセンブリ8のステータコア6のインナーコア61およびアウターコア62の図示上端側の円環状端面(先端磁極面47とは逆側面)をインジェクタボデー9の段差部76に押し付けて、ソレノイドアッセンブリ8の円環状端面をインジェクタボデー9の段差部76に当接(密着)させることが望ましい。これにより、ステータコア6のインナーコア61およびアウターコア62の先端磁極面47とソレノイド保持部66の結合端面71とが略同一平面上に配置される。
次に、上記のように、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66内にソレノイドアッセンブリ8を嵌合させた状態で、ソレノイドアッセンブリ8およびインジェクタボデー9を、図示しないレーザー溶接装置の治具に組み付ける。この治具は、例えばソレノイドアッセンブリ8の中心軸線を中心にして回転方向への移動が可能に構成され、治具の上方に、レーザー装置が設置されている。なお、治具を所定の幅でソレノイドアッセンブリ8の中心軸線方向に対して直交する半径方向に移動できるようにしても良い。ここで、レーザー装置は、レーザー発振器から出力されたレーザー光をレンズ等で集光し、レーザー溶接の溶接箇所、すなわち、ソレノイドアッセンブリ8の先端磁極面側の外周部とインジェクタボデー9の結合端面側の内周部とが近接または接触する円環状部分に照射する。なお、レーザー発振器として、半導体レーザー発振器、パルスYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーや、CO2 レーザーを用いても良い。
そして、レーザー装置のレーザー発振器から溶接箇所(図1のレーザー溶接部W)にレーザー光を照射しながら、治具をソレノイドアッセンブリ8の中心軸線を中心にして回転方向に移動させる。このとき、治具によって、特にソレノイドアッセンブリ8の先端磁極面側の外周部とインジェクタボデー9の結合端面側の内周部とを密着させる。これにより、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66内にソレノイドアッセンブリ8が嵌合した状態で、ソレノイドアッセンブリ8とインジェクタボデー9のソレノイド保持部66とが、図1の溶接位置で全周レーザー溶接される。すなわち、ソレノイドアッセンブリ8がインジェクタボデー9のソレノイド保持部66に全周に渡って円環状にレーザー溶接される。
これによって、ソレノイドアッセンブリ8を全周レーザー溶接を用いてインジェクタボデー9のソレノイド保持部66に溶着固定することができる。具体的には、ソレノイドアッセンブリ8の先端磁極面側の外周部とインジェクタボデー9の結合端面側の内周部とが溶着固定される。なお、図1のレーザー溶接部Wに、連通室側からコイル収納部側へのリーク燃料の漏洩または溢流を封止できるだけの溶け込み深さと、溶接強度を持たせることが望ましい。これにより、電磁弁2の連通室側とコイルボビン3およびソレノイドコイル4を収納するコイル収納部側とを確実(完全)に密閉化(封止)でき、連通室39とコイル収納部49とを液密的に区画できる。
[実施例1の作用]
次に、本実施例の電磁弁2を備えたインジェクタの作用を図1および図2に基づいて簡単に説明する。
エンジンの各気筒毎に対応して搭載された各インジェクタのノズル噴孔部(複数個の噴射孔30)からエンジンの各気筒の燃焼室内への燃料の噴射は、ノズルニードル15の背圧制御を行う制御室33内の燃料圧力を増減制御する電磁弁2のソレノイドコイル4への通電および通電停止によって電子制御される。すなわち、噴射タイミング(燃料の噴射時期)となって、ECUからインジェクタ駆動回路を介してソレノイドコイル4にパルス状のインジェクタ駆動電流が印加されると、ソレノイドコイル4の周囲に磁束が発生する。そして、ソレノイドコイル4の周囲に発生した磁束は、ステータコア6のアウターコア62、アーマチャ5の円環状部、ステータコア6のインナーコア61を通過する。これにより、アーマチャ5およびステータコア6が励磁(磁化)されるため、アーマチャ5にはステータコア6の先端磁極面47に近づく方向(軸線方向の一方側)への吸引力が働く。
したがって、アーマチャ5は、コイルスプリング19の付勢力によってスプール弁18の鍔状部のシート部をバルブボデー14のシート面に押し付けている状態からステータコア6の先端磁極面47に近づく方向(インジェクタの軸線方向の一方側、電磁弁2の軸線方向の一方側)への移動を開始する。このとき、スプール弁18の鍔状部よりも燃料流方向の上流側の制御室33内には、コモンレールから電磁弁2の燃料供給経路→オリフィスプレート13の燃料中継路25→燃料噴射ノズルの第2燃料導入経路を経由して高圧燃料が導入されている。
また、スプール弁18の鍔状部よりも図示下端側(燃料流方向の上流側)の径小部の外周とバルブボデー14の軸方向孔の内周との間に形成される円筒状空間36は、バルブボデー14の燃料通路35、オリフィスプレート13の出口側オリフィス34および軸方向孔32を介して制御室33に連通しており、スプール弁18の鍔状部よりも燃料流方向の下流側の連通室39は、リークポート、リターン配管を介して燃料系の低圧側(燃料タンク)に連通している。このため、スプール弁18の鍔状部よりも燃料流方向の上流側の方が、スプール弁18の鍔状部よりも燃料流方向の下流側に比べて圧力が高いので、アーマチャ5の移動に伴ってスプール弁18の鍔状部のシート部がバルブボデー14のシート面から離座してステータコア6の先端磁極面47に近づく方向へ移動する。
そして、アーマチャ5の円環状部がステータコア6の先端磁極面47に近づく方向へ移動して、アーマチャ5の円環状部のステータコア側端面が非磁性材プレート7の先端環状端面(またはストッパの規制面:図示せず)に当接する。これにより、スプール弁18がフルリフト位置(全開位置)に到達することで、バルブボデー14の弁孔37が開放されるため、制御室33内の燃料が軸方向孔32→出口側オリフィス34→電磁弁2の燃料排出経路→リターン配管を経由して燃料系の低圧側(燃料タンク)に戻される。
これによって、制御室33内の燃料圧力(ノズルニードル15を押し下げる方向(閉弁方向)に作用する油圧力)が低下する。そして、制御室33内の油圧力がノズル開弁圧よりも低くなると、油溜まり室28内の燃料圧力(ノズルニードル15を押し上げる方向(開弁方向)に作用する油圧力)が、制御室33内の油圧力にコイルスプリング16の付勢力(ノズルニードル15を押し下げる方向(閉弁方向)に作用する付勢力)を加えた合力よりも大きくなるため、ノズルニードル15のシート部がノズルボデー11のシート面より離座して、ノズル噴孔部が開弁する。これにより、コモンレール内に蓄圧された高圧燃料がエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給される。すなわち、コモンレールから電磁弁2の燃料供給経路→オリフィスプレート13の燃料中継路25→燃料噴射ノズル1の第1燃料導入経路を経由して油溜まり室28内に導入された高圧燃料が、ノズルボデー11の軸方向孔とノズルニードル15の径小部との間のクリアランス29を経由してノズル噴孔部、つまり複数の噴射孔30からエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給される。
噴射タイミングから指令噴射期間が経過すると、ECUによって電磁弁2のソレノイドコイル4への通電が停止される。すると、アーマチャ5およびステータコア6が消磁されるため、アーマチャ5がコイルスプリング19の付勢力によってステータコア6の先端磁極面47より遠ざかる方向(インジェクタの軸線方向の他方側、電磁弁2の軸線方向の他方側)へ移動して、スプール弁18の鍔状部のシート部をバルブボデー14のシート面に押し付ける。これにより、燃料通路35と連通室39との連通状態が遮断されるため、コモンレールから電磁弁2の第2燃料導入経路→入口側オリフィス31→軸方向孔32を経由して制御室33内に高圧燃料が充満する。これによって、制御室33内の燃料圧力が上昇し、制御室33内の燃料圧力にコイルスプリング16の付勢力を加えた合力が油溜まり室28内の燃料圧力よりも大きくなり、ノズルニードル15のシート部がノズルボデー11のシート面に着座して、ノズル噴孔部が閉弁する。これにより、エンジンの各気筒の燃焼室内への燃料噴射が終了する。
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例のインジェクタ用の電磁弁2においては、コイルボビン3に巻装されるソレノイドコイル4、およびこのソレノイドコイル4やアーマチャ5を伴って磁気回路を形成するステータコア6等を含んで構成されるソレノイドアッセンブリ8を、全周レーザー溶接でインジェクタボデー9のソレノイド保持部66に円環状に溶着固定することで、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66に対してソレノイドアッセンブリ8の固定方法が簡素化されるだけでなく、ソレノイドアッセンブリ8の外周部とインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部との間が密閉化される。
このため、制御室33、燃料噴射ノズル1の摺動部、電磁弁2の摺動部から燃料系の低圧側(燃料タンク)に溢流する溢流燃料(リーク燃料)が通過する連通室39とコイルアッセンブリ(コイルボビン3、ソレノイドコイル4等)を収納するコイル収納部49との間を確実に封止(シール)することが可能となる。これにより、ソレノイドアッセンブリ8のドライコイル化を実現でき、リーク燃料がソレノイドコイル4の周囲を巡らないようにすることができるので、ソレノイドアッセンブリ8、特にソレノイドコイル4の過熱に対する故障対策(過昇温防止対策)や急激な溢流燃料(リーク燃料)の流れによって生じるスパイク状の圧力波によるコイルボビン3の破損対策を施すための複雑な燃料のシール構造が不要となる。
すなわち、ソレノイドアッセンブリ8、特にソレノイドコイル4のドライコイル化を実現できるので、電磁弁2を開弁駆動して制御室33から燃料系の低圧側(燃料タンク)への燃料の溢流が開始され、その際の急激なリーク燃料の流れによって圧力エネルギーが熱エネルギーに変化してリーク燃料が高温度化しても、ソレノイドコイル温度を高温化させることはない。したがって、ソレノイドコイル温度が、コイル周辺部品(例えばソレノイドコイル4の絶縁被膜等)の耐熱温度を超過することはなく、ソレノイドアッセンブリ8、特にソレノイドコイル4の信頼性の低下を招く恐れは全くない。また、急激なリーク燃料の流れによってスパイク状の圧力波が発生してもコイルボビン3に圧力波が作用することはなくコイルボビン3の破損を招く恐れは全くない。これによって、従来のウェットコイルと比べてソレノイドアッセンブリ8、特にソレノイドコイル4の信頼性を向上させることができるだけでなく、ソレノイドコイル4の過熱に対する故障対策(過昇温防止対策)や圧力波によるコイルボビン3の破損対策を施す必要がないので、リーク燃料のシール構造が簡単なものになる。
ここで、本実施例の電磁弁2では、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66に対するソレノイドアッセンブリ8の固定方法を簡素化し、且つリーク燃料のシール構造を簡素化するという目的で、ソレノイドアッセンブリ8のステータコア6の外周部とインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部との間に形成される円環状のギャップを極力狭くしている。あるいは円環状のギャップを廃止している。また、本実施例の電磁弁2のインジェクタボデー9およびバルブボデー14は、低炭素鋼またはクロム・モリブデン鋼によって形成されているので、電磁弁2の開弁駆動時(ソレノイドコイル4の通電時)に、ソレノイドコイル4、アーマチャ5、ステータコア6等よりなる磁気回路からの磁束漏れ、特にステータコア6のアウターコア62の先端磁極面47近傍からインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の図示下端側やバルブボデー14の図示上端側への磁束漏れが発生し易くなる。この結果、磁気回路の磁気効率の低下を招き、アーマチャ5に安定した吸引力を与えることができなくなり、電磁弁2のアーマチャ5およびスプール弁18等の可動部材の作動不良を引き起こす可能性がある。
そこで、本実施例の電磁弁2では、ソレノイドコイル4、アーマチャ5、ステータコア6等よりなる磁気回路からの磁束漏れ、特にステータコア6のアウターコア62の先端磁極面47近傍からインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の図示下端側やバルブボデー14の図示上端側への磁束漏れを低減するための表面処理として、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部の表面、特にソレノイド保持部66の開口端側の結合端面71近傍に、浸炭拡散処理または浸炭窒化処理または窒化処理または非磁性のコーティング膜を施している。これによって、磁気回路からの磁束漏れを低減することができ、磁気回路の磁気効率を向上することができるので、アーマチャ5に安定した吸引力を与えてスプール弁18の動作不良を防止することができる。
また、ソレノイドアッセンブリ8の外周部とインジェクタボデー9のソレノイド保持部66との間に形成される円環状のギャップを廃止しても、磁気回路からの磁束漏れの可能性が低くなるので、インジェクタ用の電磁弁2の体格(外径)、特にインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の半径方向の寸法の縮小化を図ることができる。
[変形例]
本実施例では、本発明の電磁弁を、コモンレール式燃料噴射システムに使用されるインジェクタの電磁弁(弁部材+電磁駆動部)2に採用したが、本発明の電磁弁を、車両に搭載される内燃機関の出力軸に駆動連結される自動変速機の入力軸と出力軸との間に配設された遊星歯車装置の構成要素を接続駆動する少なくとも1つ以上の油圧サーボに連通する油圧回路に供給する出力油圧を、パイロット圧に比例した制御圧に調圧するためのスプール弁を備えた電磁式油圧制御弁(弁部材+電磁駆動部)に適用しても良い。
また、本発明の電磁弁を、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブの少なくとも一方のバルブの開弁時期、閉弁時期を変更する吸排気可変バルブタイミング機構の進角油圧室または遅角油圧室に対して油圧源の油圧を選択的に給排するための電磁式油圧制御弁(弁部材(スプール弁等)+電磁駆動部)に適用しても良い。また、本発明を、電磁式燃料噴射弁や電磁式油圧制御弁だけでなく、水等の液体、液体燃料や作動油等の液体の流量を制御する電磁式流量制御弁または電磁式開閉弁等の電磁弁(弁部材+電磁駆動部)に適用しても良い。
本実施例では、ソレノイドコイル4の周囲に発生する磁束によってスプール弁18およびアーマチャ5よりなる可動部材を軸線方向の一方側に駆動するように構成し、更に可動部材をスプール弁18とアーマチャ5とに少なくとも2分割しているが、ソレノイドコイル4に励磁(磁化)されるアーマチャ機能と弁孔の流路開口面積を変更する弁体機能とを兼ね備えたバルブ一体型アーマチャ(可動部材)を用いても良い。また、本実施例では、電磁弁2のバルブとしてスプール弁18を採用しているが、電磁弁2のバルブとしてボール弁、ポペット弁等の他の形状のバルブを用いても良い。
本実施例では、電磁弁2のソレノイドアッセンブリ8をインジェクタボデー(ハウジング)9のソレノイド保持部66の内周部に挿入した際に、ステータコア6のインナーコア61およびアウターコア62の先端磁極面47とインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の結合端面71とを略同一平面上に配置されるようにしているが、電磁弁2のソレノイドアッセンブリ8をインジェクタボデー(ハウジング)9のソレノイド保持部66の内周部に挿入した後に、ステータコア6のインナーコア61およびアウターコア62の先端磁極面47とインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の結合端面71とを研削または研磨して、ステータコア6のインナーコア61およびアウターコア62の先端磁極面47とインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の結合端面71とを略同一平面上に配置されるようにしても良い。
そして、この後工程として、全周レーザー溶接等の溶接手段を用いて、ステータコア6のアウターコア62の外周部とインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部とを全周に渡って円環状に溶着固定するようにしても良い。なお、ステータコア6のアウターコア62の先端磁極面47よりも、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66の結合端面71が軸線方向の一方側(図示上方側)に引っ込んでいても、また、軸線方向の他方側に突出していても構わない。また、ステータコア6のアウターコア62の外周部とインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部とを全周に渡って連続的に環状に溶着固定できるのであれば、両者の軸線方向の一端から他端に至るどの箇所に溶接部が設けられても構わない。
本実施例では、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部の表面、特にインジェクタボデー9のソレノイド保持部66の開口端側の結合端面71近傍に、表面硬化処理として浸炭拡散処理または浸炭窒化処理または窒化処理を施しているが、インジェクタボデー9のソレノイド保持部66の内周部(例えばステータコア6が当接する段差部76およびこの段差部76近傍を含む)の全表面上に、表面硬化処理として浸炭拡散処理または浸炭窒化処理または窒化処理を施しても良い。なお、バルブボデー14のステータコア側端面の表面上にも、表面硬化処理として浸炭拡散処理または浸炭窒化処理または窒化処理を施しても良い。また、電磁弁2のソレノイドコイル4を通電した際に漏れ磁束が透過するインジェクタボデー9およびバルブボデー14を非磁性材料(例えばステンレス鋼等)によって形成しても良い。