JP4442752B2 - アルカリイオン整水器 - Google Patents

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Description

本発明は、水道から供給される水道水を電離してアルカリイオン水及び酸性イオン水を供給可能なアルカリイオン整水器に関し、特に、水道管の途中に配設されるタイプ、いわゆるビルトインタイプのアルカリイオン整水器に関する。
水道水からアルカリイオン水及び酸性イオン水を生成するアルカリイオン整水器としては、正負の電極間にイオン交換膜を介在させ、水の電気分解作用を利用して、アルカリイオン水と酸性イオン水とに分離生成するものがある。また、このようなアルカリイオン整水器としては、水道のカラン(蛇口)から取水し、専用吐水口からアルカリイオン水、酸性イオン水を吐水する、シンク上へ本体を設置するタイプのものがある。また、アンダーシンク内へ本体を設置する、いわゆるビルトインタイプのものがあるが、これは取水及び吐水を行う専用のカランを有し、水道のカランとは別の専用吐水口からアルカリイオン水を吐水するものである。
このビルトインタイプのアルカリイオン整水器(例えば、特許文献1参照)は、利用者がアルカリイオン整水器へ接続された原水管の水栓を開くことによって原水管から水道水が通水されて電解槽に供給され、この電解槽でアルカリ水と酸性水とが生成される。そして、電解槽で生成されたアルカリ水が吐水管を経て吐水されると共に、酸性水が酸性水吐水管を経て排水される。また、利用者が水栓を閉じることによって原水管からの通水が停止されることによってアルカリ水の吐水が停止する。
このようなアルカリイオン整水器では、アルカリ水の吐水を停止した際、酸性水が排水される酸性水排出管は大気開放されているため、電解槽内のアルカリ水側と酸性水側とで水圧差が生じる。そして、電解槽内に配置されているイオン交換膜は、その厚さが極めて薄く、また水素イオンを通すための小穴が開いているため破損しやすく、このような水圧差によって瞬時に破損してしまうという問題がある。
このため、従来の装置では、水道水の流量が20〜30(L/分)程度であるのに対し、生成されるアルカリイオン水の流量は、2〜3(L/分)程度と極めて少なく抑えなければならず、一般的に、アルカリイオン水は飲料用に用いられるだけで、比較的多くの流量を必要とする入浴・シャワー等には利用することはできなかった。
また、このようなアルカリイオン整水器では、水栓を開閉する利用者が任意で利用水量の水量調節を行っている。このため、酸性イオン水の排出量がアルカリイオン水の利用水量に関係なく一定となるような構造を有するアルカリイオン整水器では、例えば、アルカリイオン水の利用水量が少ない場合には、その利用水量に対する酸性イオン水の排出量の割合は多くなると共に、利用者に提供されるアルカリイオン水の整水濃度(以下、pH値ともいう)が上昇する要因となる。一方で、アルカリイオン水の利用水量が多い場合には、その利用水量に対する酸性イオン水の排出量の割合は少なくなると共に、利用者に提供されるアルカリイオン水の整水濃度が低下する要因となる。このようにアルカリイオン水の整水濃度は、アルカリイオン水側と酸性イオン水側との間の水量変動により生じる装置内部の圧力差に応じて変化する。
このような構造を採用している従来の装置では、水栓が開閉される度合いによって内部にかかる圧力が変動すると共に、酸性イオン水の排出量に対する対策が施されていなかった。このため、一定の整水濃度からなるアルカリイオン水を整水することができず、またアルカリイオン水の利用水量が少ない時などは無駄に酸性イオン水を排出させてしまっていた。
その他に、アルカリイオン水のpH値を調整する技術として、特許文献2に開示されたようなものがある。
特開平10−192858号公報 特開平07−124561号公報
本発明はこのような事情に鑑み、水道水と同等の流量でアルカリイオン水を吐水することができると共に、アルカリイオン水の吐水量が低下しても酸性イオン水が無駄に排出されないようなアルカリイオン整水器を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、イオン交換膜を有すると共に当該イオン交換膜のアルカリイオン水側及び酸性イオン水側にそれぞれ導入された水道水からアルカリイオン水及び酸性イオン水を生成する電解槽と、該電解槽内に水道水を所定の圧力で供給する水道水供給路と、前記電解槽からアルカリイオン水を吐水するとともに下流側に水栓が設けられた吐水路と、前記電解槽から酸性イオン水を排出する排出路とを具備し、アルカリイオン水を利用する利用者が前記吐水路に設けられた水栓を調整することにより、前記吐水路からのアルカリイオン水の吐水量を調整するアルカリイオン整水器において、前記電解槽の少なくとも前記イオン交換膜に対向する領域の一部を可撓膜によって形成すると共に当該電解槽を整水器本体内に配置し、前記電解槽内に供給する水道水を前記電解槽と前記整水器本体との間の空間にも供給して、前記電解槽を水道水中に保持するようにし、且つ、前記吐水路に設けられて前記アルカリイオン水の吐水量を検出する吐水量検出手段と、前記排出路に設けられて前記酸性イオン水の排出量を調整する流量調整手段と、前記吐水量検出手段が検出した実際の吐水量に基づいて、アルカリイオン水の吐水量に対する酸性イオン水の排出量が所定の割合となるように前記流量調整手段を制御する制御手段とを具備することを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第1の態様では、電解槽内で生じる水圧差が電解槽の一部を構成する可撓膜が変形することで実質的に吸収されるため、イオン交換膜が変形することによる破損が防止される。したがって、電解槽に供給する水道水の水圧を上昇させることができ、アルカリイオン水の吐水量を増加させることができる。さらに、アルカリイオン水の実際の吐水量に基づいて、酸性イオン水の排出量を制御するため、アルカリイオン水の吐水量に対する酸性イオン水の排出量の割合を常に一定に保持することができ、アルカリイオン水側と酸性イオン水側にかかる圧力をそれぞれ一定に保って、常に安定した整水濃度からなるアルカリイオン水を整水することができる。
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記排出路には、前記酸性イオン水の排出量を検出する排出量検出手段をさらに具備することを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第2の態様では、酸性イオン水の実際の排出量を検出して酸性イオン水の排出量とアルカリイオン水の吐水量との比率が所定の割合となるように制御できる。
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記空間の前記電解槽とは接触しない領域の少なくとも一部に空気が残留している空気部を有することを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第3の態様では、空気部を設けておくことで、可撓膜が変形しやすくなり、電解槽内で生じる水圧差がより確実に吸収される。
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記電解槽の全面が前記可撓膜で構成されていることを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第4の態様では、電解槽内で生じる水圧差が、可撓膜が変形することで確実に吸収される。
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記可撓膜がプラスチックシートからなることを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第5の態様では、可撓膜を所定材料で形成することで、電解槽内の水圧差を確実に吸収することができる。
本発明の第6の態様は、第2〜5の何れかの態様において、前記制御手段は、前記排出量検出手段が検出した前記酸性イオン水の排出量に基づいて前記酸性イオン水の実際の排出量をフィードバック制御することを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第6の態様では、アルカリイオン水の実際の吐水量に対する酸性イオン水の実際の排出量が所定の割合になっていることを確認しながら確実に制御することができる。
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、前記制御手段は、前記吐水量検出手段が検出した実際の吐水量を取得し、これに基づいて前記アルカリイオン水と前記酸性イオン水とが所定の比率となるように前記流量調整手段を制御することを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第7の態様では、アルカリイオン水の吐水量と酸性イオン水の排出量を所定の比率にすることで、酸性イオン水の無駄な排出を防止すると共に、常に一定の整水濃度からなるアルカリイオン水を吐水することができる。
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様において、前記制御手段は、前記所定の比率が10対2となるように前記流量調整手段を制御することを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第8の態様では、アルカリイオン水の吐水量に対する酸性イオン水の排出量を最小限に抑えることができる。
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れかの態様において、前記整水器本体内には、複数の前記電解槽が、隣接する電解槽と接触することなく所定間隔で保持されていることを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第9の態様では、複数の電解槽を設けることによりアルカリイオン水の流量を増加させることができる。
本発明の第10の態様は、第1〜9の何れかの態様において、前記水道水供給路が水道水の原水管に接続され、前記吐水路が水道管に接続されていることを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第10の態様では、アルカリイオン水を所望の流量で吐水させることができ、アルカリイオン水の吐水量に関係なく、安定した整水濃度からなるアルカリイオン水を連続的に吐水することができる。
本発明の第11の態様は、第1〜10の何れかの態様において、前記吐水路が給湯器に接続されることを特徴とするアルカリイオン整水器にある。
かかる第11の態様では、アルカリイオン水を所望の流量で給湯器に供給することができ、アルカリイオン水の温水を吐水することができる。
本発明のアルカリイオン整水器によれば、電解槽内の圧力差によるイオン交換膜の破損が防止され且つ電解槽の水道水の圧力による破壊が防止されているので、比較的大量のアルカリイオン水を提供することができる。さらに、本発明のアルカリイオン整水器によれば、水栓の開閉の度合いに関係なく、アルカリイオン水の吐水量に対する酸性イオン水の排出量が所定の割合に保持されているので、アルカリイオン水の吐水量が低下しても酸性イオン水が無駄に排出されることが防止される。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
《実施形態1》
図1は、本発明の一実施形態に係るアルカリイオン整水器の側面図であり、図2は、そのA−A’断面図であり、図3は、アルカリイオン整水器の概略構成を示す図であり、図4は、制御系を示す概略ブロック図である。
図示するように、本発明のアルカリイオン整水器10の外枠を構成する整水器本体11内には、内部で水道水が電離されてアルカリイオン水と酸性イオン水とが生成される複数の電解槽12が保持されている。また、整水器本体11には、原水側の水道管110Aからの水道水を内部に導入する水道水導入口11aと、電解槽12内で生成されたアルカリイオン水を吐水するアルカリ水吐水口11bと、酸性イオン水を排出する酸性水排出口11cとを具備する。
具体的には、整水器本体11の水道水導入口11aと連通する水道水供給パイプ13が各電解槽12の下端部側に接続され、また電解槽12の上端部側には、アルカリ水吐水口11bと連通するアルカリ水吐水パイプ14と、酸性水排出口11cと連通する酸性水排出パイプ15とがそれぞれ接続されている。そして、これらの各パイプ13、14、15が整水器本体11に固定されることで、各電解槽12が整水器本体11内に保持されている。
各電解槽12内には、それぞれイオン交換膜16が固定されており、このイオン交換膜16によって電解槽12内が2つの空間12a、12bに区切られている。また、電解槽12内のイオン交換膜16に対向する領域には、一対の電極17a、17bがそれぞれ設けられており、各電極17a、17bは、整水器本体11に設けられた端子部18と接続配線19によって接続されている。本実施形態では、これらの各電極17a、17bは、例えば、メッシュ状のプラスチックシート等からなりイオン交換膜16と同等の大きさを有する固定部材20の一方の面にそれぞれ取り付けられている。そして、これらの固定部材20が、各空間12a、12bにイオン交換膜16を挟持するように配置されることで、イオン交換膜16に対向する領域に電極17a、17bが設けられている。
このような電解槽12の少なくともイオン交換膜16に対向する領域の一部、本実施形態では、電解槽12全体が所定の柔軟性を有する可撓膜によって形成されている。例えば、本実施形態では、電解槽12が、厚さが0.3mm程度のプラスチックシートによって形成されている。
また、このような複数の電解槽12が保持された整水器本体11内、すなわち、各電解槽12と整水器本体11との間の空間には水道水が供給され、整水器本体11内に貯まった水道水(貯留水)21中に各電解槽12が保持されている。また、整水器本体11内には、電解槽12に接触しない領域の一部、例えば、本実施形態では、酸性水排出パイプ15の上部に空気が残留している空気部22が存在する。このように内部に水道水が供給される整水器本体11は、水道水の水圧に耐えられる程度の剛性を有する材料、例えば、ステンレス鋼等で形成する必要がある。
また、貯留水21は、本実施形態では、整水器本体11の水道水導入口11aからの水道水が電解槽12と共に整水器本体11内に供給されたものである。すなわち、水道水供給パイプ13の先端部に、整水器本体11内に連通する微小な連通孔23が設けられており、この連通孔23を介して整水器本体11内に水道水(貯留水21)が供給されている。そして、本実施形態では、酸性水排出パイプ15の先端部にも、整水器本体11内に連通する微小な連通孔24が設けられており、貯留水21はこの連通孔24を介して酸性水排出パイプ15に排出されるようになっている。このため、本実施形態では、整水器本体11内の酸性水排出パイプ15の上部、すなわち、連通孔24の上部側は、空気が残留している空気部22となっている。
なお、本実施形態では、連通孔24を介して貯留水21を酸性イオン水と共に外部に排出するようにしたが、勿論、貯留水21を外部に排出する貯留水排出口を整水器本体11に設け、酸性イオン水とは別に外部に排出するようにしてもよい。
このようなアルカリイオン整水器10は、図3に示すように、水道水供給パイプ13が、原水側の水道管110Aに接続され、アルカリ水吐水パイプ14が、蛇口100側の水道管110Bに接続される。また、酸性水排出パイプ15の一端は、電解槽12によって生成された酸性イオン水が排出される排出口120と接続される。
アルカリ水吐水パイプ14には、水道管110Bとの接続部分に流量センサ40Aが設けられており、この流量センサ40Aによりアルカリイオン水の吐水量が検出される。また、酸性水排出パイプ15の途中には流量調整バルブ30が設けられており、流量センサ40Aからの信号に基づいて流量調整バルブ30を駆動させ、酸性イオン水の排出量が所定量となるように制御されている。さらに、酸性水排出パイプ15の途中には流量センサ40Bが設けられており、この流量センサ40Bにより酸性イオン水の排出量が検出される。各流量センサ40A、40B、及び流量調整バルブ30は、整水器本体11の外部に設置する制御装置60によって制御されている。
また、制御装置60は、整水器本体11に設けられた端子部18と図示しない接続配線によって電気的に接続されており、各電解槽12内の電極17a、17bに供給する電圧を制御している。このような制御装置60としては、入力信号に基づいて演算可能であり、その演算結果に基づいて信号を出力する機能を持つものであれば、その構成は問わない。なお、制御装置60は、整水器本体11の外部に設置されているが、整水器本体11の内部に保持させるようにしてもよい。
以下、このようなアルカリイオン整水器の動作について説明する。
上述したように、アルカリイオン整水器10は水道管110の途中に配設されているため、電解槽12内には水道水供給パイプ13から水道水が常に所定の圧力で供給されている。そして、利用者が蛇口100部分に設けられた水栓101を開くと、電解槽12内で生成されたアルカリイオン水がアルカリ水吐水パイプ14を介して蛇口100から所定の流量で吐水され始める。また同時に、アルカリ水吐水パイプ14と水道管110Bとの間に設けられた流量センサ40Aが、アルカリイオン水が流れ始めたことを検出し、この流量センサ40Aからの信号に基づいて、電解槽12内の電極17a、17b間には所定の電圧が印加される。さらに、酸性水排出パイプ15に設けられた流量調整バルブ30が駆動することにより、排出口120から排出される酸性イオン水量が調整される。すなわち、図4に示す一例のように、制御装置60は、流量センサ40Aが検出したアルカリイオン水の吐水量を取得し、排出する酸性イオン水量が常にアルカリイオン水量の20%前後になるように演算して流量調整バルブ30を駆動する。また、本実施形態では、制御装置60は、酸性水排出パイプ15に設けられた流量センサ40Bが検出する酸性イオン水量を取得し、この排出量に基づいて流量調整バルブ30をフィードバック制御しているので、実際に排出されている酸性イオン水量がアルカリイオン水量の20%前後であるか否かを確認しながら制御することができる。
なお、ここでいうアルカリイオン水量の20%という数値は、本実施形態の装置がアルカリイオン水を所定の整水濃度で吐水させながら、酸性イオン水の排出量を最小限に保持することができる値であるが、これに限定されず、装置規格に応じて変更できるものである。
また、従来のアルカリイオン整水器では、アルカリイオン水と酸性イオン水の排出割合が1対1程度であり、アルカリイオン水の吐水に伴い酸性イオン水(捨て水)の排出が半分程度であったが、本実施形態のアルカリイオン整水器によれば、その酸性イオン水の排出量を極めて少なくできるという利点がある。
上述した制御例では、制御装置60が各流量センサ40A、40Bが検出した流量をそれぞれ取得していたが、これに限定されず、例えば、各流量センサ40A、40Bが検出した流量を制御装置60に通知するように制御してもよい。
ここで、水道水供給パイプ13を介して電解槽12の下端部側から電解槽12内に供給された水道水は、イオン交換膜16で区切られた両側の空間12a、12bにそれぞれ流れ込む。そして、両電極17a、17b間には所定の電圧が印加されているため、電解槽12内、すなわち、イオン交換膜16と各電極17a、17bとの間を通過する際に、水道水中は水素イオンHと水酸イオンOHとに電離し、水素イオンHがイオン交換膜16を介して一方の空間に集まることで、アルカリイオン水と酸性イオン水とが生成される。すなわち、2つの空間のうちの−電極(陰極)17b側の空間12bでは、イオン交換膜16を通過して水素イオンHが集まり、水道水(2HO)は、電子(2e-)によりH+2OH-に整水され、アルカリイオン水が生成される。一方、+電極(陽極)17a側の空間12aでは、水道水(2HO)は、O+4H+4e-に整水され、酸性イオン水が生成される。このように水道水は、この電解槽12を通過する際に連続的に電離され、これにより生成されたアルカリイオン水が蛇口100から吐水されると共に、酸性イオン水が排出口120から排出される。
また、利用者が水栓101を閉めることでアルカリイオン水の供給が停止され、これに伴いアルカリ水吐水パイプ14内の流れが止まると、流量センサ40Aの信号によって酸性水排出パイプ15に設けられた流量調整バルブ30が駆動し、酸性水の排出が停止される。
ここで、水栓101の開閉によりアルカリ水供給パイプ14内の流れが発生又は停止する時刻と、流量センサ40がそれを感知して流量調整バルブ30が開閉される時刻とは、若干のタイムラグが存在する。このタイムラグによって生じる流水の慣性作用により、電解槽12内のアルカリイオン水側の空間12bと酸性イオン水側の空間12aとの内部圧力に差が生じてしまう。さらに、排出する酸性イオン水量を常にアルカリイオン水量の20%前後に制御すると、電解槽12が破損し易くなる。すなわち、アルカリイオン水量と酸性イオン水量が10対2の排出割合に保持されることにより、電解槽12内では、アルカリイオン水側の空間12bと酸性イオン水側の空間12aとの内部圧力に差が生じてしまう。イオン交換膜16は、例えば、膜厚が12μm程度であるため、この圧力差によってイオン交換膜16が変形して破損する虞がある。
しかしながら、本実施形態では電解槽12が可撓膜で形成されているため、例えば、上述のように水栓101を開ける際に2つの空間12a、12bに圧力差が生じたとしても、図5に示すように、電解槽12自体が内側に変形することでこの圧力差が吸収されるため、イオン交換膜16の変形による破損を防止することができる。なお、水栓101を閉じた際には、電解槽12自体が外側に変形することで内部の圧力差が吸収される。したがって、上述のようにアルカリイオン水量と酸性イオン水量の排出割合を10対2に保持することによって生じる圧力差についても、比較的容易に吸収することができる。
また、電解槽12内には、上述したように、その内面の電極17a、17bとイオン交換膜16との間に挟持されるように固定部材20が設けられている。すなわち、これらの固定部材20によってイオン交換膜16が挟持されている。したがって、これらの固定部材20によってもイオン交換膜16の変形が抑えられ、電解槽12の内部圧力差によるイオン交換膜16の破損をより確実に防止することができる。なお、本実施形態では、電解槽12全体が可撓膜で形成されているが、勿論、電解槽12内の圧力差を吸収できれば、可撓膜からなる可撓部を電解槽12のイオン交換膜16に対向する領域の一部に設けるようにしてもよい。
また、電解槽12の変形によって2つの空間12a、12bの圧力差を吸収するためには、電解槽12は、比較的高い柔軟性を有する必要があり、例えば、イオン交換膜16よりも柔軟性を有することが好ましい。この条件を満たすために、電解槽12は、比較的膜厚の薄いプラスチックフィルムからなる可撓膜で形成されている。このため、電解槽12は、それ自体では水道水供給パイプ13を介して電解槽12内に供給される水道水の圧力、例えば、1〜6kg/cm程度の圧力に耐えられず破壊されてしまう虞がある。
しかしながら、本実施形態では、水道水供給パイプ13を介して電解槽12内に水道水が供給される際、水道水供給パイプ13の先端部の連通孔23から整水器本体11内にも水道水が供給され、整水器本体11内に貯まった貯留水21内に各電解槽12が保持されている。このため、整水器本体11内の貯留水21の圧力は、電解槽12内に供給された水道水と略同一の圧力に保持され、電解槽12の外面にも、その内面と略同一の水圧がかかる。したがって、電解槽12内に供給される水道水によって電解槽12の内面に比較的高い圧力がかかった場合でも、電解層12の外面にも略同一の圧力がかかることになり、電解槽12自体も水圧の変化に伴う変形によって破損することはない。
また、本実施形態では、貯留水21は、酸性水排出パイプ15に設けられた連通孔24から酸性イオン水と共に外部に排出されるようになっている。すなわち、整水器本体11内には水道水が満充填されておらず、連通孔24の上部側には空気が残留している空気部22が存在する。このため、上述した電解槽12内の圧力差に伴う電解槽12の変形が貯留水21によって妨げられることがなく、イオン交換膜16の破損を防止することができる。
すなわち、上述したように電解槽12内の圧力差により電解槽12が変形した場合、整水器本体11内の容積が変化する。このとき、貯留水21自体は実質的に容積変化しないため、整水器本体11内に貯留水21が満充填されていると、貯留水21によって電解槽12の変形が妨げられる。しかしながら、本実施形態では、整水器本体11内に空気部22が存在し、電解槽12が変形した場合にこの空気部22が容積変化するため、電解槽12の変形が妨げられることがない。したがって、整水器本体11内に空気部22を設けておくことで、イオン交換膜16の破損をより確実に防止することができる。
なお、このような空気部22の容積は、特に限定されないが、整水器本体11内の容積の20〜30%程度の大きさであることが好ましい。
このように本実施形態のアルカリイオン整水器10では、水道水を比較的高い水圧で供給してもイオン交換膜16及び電解槽12が破損することがないため、所定数の電解槽12を並設することで、水道水と同等の流量、例えば、一般家庭用では20〜30(L/分)程度、業務用では100(L/分)程度の流量でアルカリイオン水を利用者に供給することができる。
したがって、このようなアルカリイオン整水器10によって生成したアルカリイオン水を電気温水器等の給湯器に供給して温水として利用者に提供することもでき、アルカリイオン水を、例えば、入浴やシャワーに利用することができる。なお、アルカリイオン整水器から給湯器にアルカリイオン水を供給する場合、給湯器に供給されるアルカリイオン水の水圧が若干低下する。このため、例えば、図6に示すように、酸性水排出パイプ15内にこの排出流路の一部を遮断する流量調整部材50を設けることにより、給湯器に供給されるアルカリイオン水の水圧を調整するようにしてもよい。
さらに、本実施形態のアルカリイオン整水器10では、アルカリイオン水の吐水量に対する酸性イオン水の排出量を常に所定の比率に保持することができるため、アルカリイオン水の吐水量に対する酸性イオン水の排出量を最小限に抑えることができると共に、アルカリイオン水の吐水量の変動により変化するアルカリイオン水の整水濃度を一定に保つことができる。そして、本実施形態のアルカリイオン整水器10では、電解槽12が所定の柔軟性を有する可撓膜によって形成されているため、アルカリイオン水と酸性イオン水の排出割合を所定の比率に保持することにより生じる内部の圧力差も容易に吸収することができる。
《他の実施形態》
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、図4に示した制御系は一例であり、アルカリイオン水の吐水量に応じて酸性イオン水の排出量を制御するものであればよく、上述した実施形態1の酸性イオン水の流量センサ40Bは必ずしも設ける必要はない。すなわち、流量センサ40Bを有しない場合でも、フィードバック制御しない以外は、上述した制御と同様な制御が実行できる。
また、流量センサ40Bを設けた場合にも、必ずしもフィードバック制御する必要はなく、例えば、制御装置60が、流量センサ40A及び40Bの流量を取得し、これに基づいて両者の比が所定の範囲となるように流量調整バルブ30を制御するようにしてもよい。
また、制御装置60は、常に流量調整バルブ30を制御する必要はなく、アルカリイオン水の吐水量と酸性イオン水の排出量の比が、例えば、10:2±10%〜20%の範囲を外れたときのみに制御するようにしてもよい。
また、制御装置60が行う流量調整バルブ30の駆動は、連続的な駆動ではなく、段階的な駆動であってもよい。すなわち、酸性イオン水の排出量は、アルカリイオン水の吐水量を複数のレベルに設定しておき、そのレベルに合わせて段階的に制御させるものであってもよい。
一方、電解槽の構造も上述したものに限定されるものではなく、例えば、図7に示すような電解槽12Aを用いたアルカリイオン整水器を構成してもよい。なお、図7において、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付してある。
図7に示すように、電解槽12Aには、イオン交換膜16と、イオン交換膜16に対向するように、一対の電極17a、17bが設けられている。また、電解槽12Aは、上述した実施形態と同様に、全体が所定の柔軟性を有する可撓膜によって形成されている。
各電極17a、17bのそれぞれは、電解槽12Aの内面に設けられた4つの固定部材20Aによって固定されている。この固定部材20Aは、電解槽12Aの内面と電極17a、17bとの間に設けられて、例えば、1mmの隙間を形成する円筒形状を有するスペーサ20aと、スペーサ20aとの間で電極17a、17bを挟持する円筒形状を有するスリーブ20bと、スペーサ20a及びスリーブ20bを挿通して一端が電解槽12Aに固定されたリベット20cとで構成されている。
また、イオン交換膜16は、電極17aを保持するスリーブ20bと電極17bを保持するスリーブ20bとの間で挟持されている。すなわち、イオン交換膜16は、各電極17a、17bを固定するスリーブ20bによって4箇所で挟持されている。このとき、各電極17a、17bとイオン交換膜16間は、例えば、それぞれ3mmの隙間となるように構成すればよい。
上述した実施形態1では、メッシュ状の固定部材20によってイオン交換膜16を挟持していた。しかしながら、本発明の実施は、電解槽の構造および電解槽内のイオン交換膜16を挟持する固定部材またはその固定方法には限定されず、例えば、上述した4つの固定部材20Aを用いることによっても同様にイオン交換膜16の破損を防止することができる。
したがって、このような電解槽12Aを上述した実施形態1のアルカリイオン整水器に適用した場合であっても、水栓101を開閉して圧力差が生じた際に、電解槽12Aの可撓膜によってその圧力差を吸収することができ、イオン交換膜16が圧力差により破損することを防止することができる。そして、電解槽12の内部に生じる圧力差を容易に吸収することができるため、アルカリイオン水の吐水量に対する酸性イオン水の排出量を常に所定の比率に保持することができる。
また、例えば、上述した実施形態1では、酸性イオン水は利用することなく配水管に流すようにしたが、例えば、専用タンク等に貯留することにより酸性イオン水も利用できるようにすることもできる。なお、このような場合には、酸性イオン水とは別に貯留水を外部に排出するようにすることが望ましい。
また、上述した実施形態1では、複数の電解槽12が、整水器本体11内に所定の間隔で並設されるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、隣接する各電解槽12の間に間隔を空けずに、外周面が接触するように並設するようにしてもよい。このように隣接する各電解槽12に間隔を空けずに、並設するようにしても、接触していない可撓膜によって電解槽内の圧力差の吸収を行わせることができると共に、小型化することができる。
本発明は、水の電気分解作用によりアルカリイオン水と酸性イオン水を分離生成する際に整水濃度を一定に保持することが要求される用途に適用可能である。
本発明の実施形態1に係るアルカリイオン整水器の側面図である。 本発明の実施形態1に係るアルカリイオン整水器の断面図である。 本発明の実施形態1に係るアルカリイオン整水器の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態1に係るアルカリイオン整水器の制御系を示す概略ブロック図である。 本発明の実施形態1に係る電解槽の変形状態を示す断面図である。 本発明の実施形態1に係るアルカリイオン整水器の変形例を示す断面図である。 本発明の実施形態1に係る電解槽の変形構成例を示す断面図である。
符号の説明
10 アルカリイオン整水器
11 整水器本体
12 電解槽
13 水道水供給パイプ
14 アルカリ水吐水パイプ
15 酸性水排出パイプ
16 イオン交換膜
17 電極
20、20A 固定部材
30 流量調整バルブ
40A、40B 流量センサ
60 制御装置

Claims (11)

  1. イオン交換膜を有すると共に当該イオン交換膜のアルカリイオン水側及び酸性イオン水側にそれぞれ導入された水道水からアルカリイオン水及び酸性イオン水を生成する電解槽と、該電解槽内に水道水を所定の圧力で供給する水道水供給路と、前記電解槽からアルカリイオン水を吐水するとともに下流側に水栓が設けられた吐水路と、前記電解槽から酸性イオン水を排出する排出路とを具備し、アルカリイオン水を利用する利用者が前記吐水路に設けられた水栓を調整することにより、前記吐水路からのアルカリイオン水の吐水量を調整するアルカリイオン整水器において、
    前記電解槽の少なくとも前記イオン交換膜に対向する領域の一部を可撓膜によって形成すると共に当該電解槽を整水器本体内に配置し、前記電解槽内に供給する水道水を前記電解槽と前記整水器本体との間の空間にも供給して、前記電解槽を水道水中に保持するようにし、且つ
    前記吐水路に設けられて前記アルカリイオン水の吐水量を検出する吐水量検出手段と、前記排出路に設けられて前記酸性イオン水の排出量を調整する流量調整手段と、前記吐水量検出手段が検出した実際の吐水量に基づいて、アルカリイオン水の吐水量に対する酸性イオン水の排出量が所定の割合となるように前記流量調整手段を制御する制御手段とを具備することを特徴とするアルカリイオン整水器。
  2. 請求項1において、前記排出路には、前記酸性イオン水の排出量を検出する排出量検出手段をさらに具備することを特徴とするアルカリイオン整水器。
  3. 請求項1又は2において、前記空間の前記電解槽とは接触しない領域の少なくとも一部に空気が残留している空気部を有することを特徴とするアルカリイオン整水器。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記電解槽の全面が前記可撓膜で構成されていることを特徴とするアルカリイオン整水器。
  5. 請求項1〜4の何れかにおいて、前記可撓膜がプラスチックシートからなることを特徴とするアルカリイオン整水器。
  6. 請求項2〜5の何れかにおいて、前記制御手段は、前記排出量検出手段が検出した前記酸性イオン水の排出量に基づいて前記酸性イオン水の実際の排出量をフィードバック制御することを特徴とするアルカリイオン整水器。
  7. 請求項1〜6の何れかにおいて、前記制御手段は、前記吐水量検出手段が検出した実際の吐水量を取得し、これに基づいて前記アルカリイオン水と前記酸性イオン水とが所定の比率となるように前記流量調整手段を制御することを特徴とするアルカリイオン整水器。
  8. 請求項1〜7の何れかにおいて、前記制御手段は、前記所定の比率が10対2となるように前記流量調整手段を制御することを特徴とするアルカリイオン整水器。
  9. 請求項1〜8の何れかにおいて、前記整水器本体内には、複数の前記電解槽が、隣接する電解槽と接触することなく所定間隔で保持されていることを特徴とするアルカリイオン整水器。
  10. 請求項1〜9の何れかにおいて、前記水道水供給路が水道水の原水管に接続され、前記吐水路が水道管に接続されていることを特徴とするアルカリイオン整水器。
  11. 請求項1〜10の何れかにおいて、前記吐水路が給湯器に接続されることを特徴とするアルカリイオン整水器。

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