JP4442418B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents
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Description
即ち、内燃機関の温度が過度に低いことにより希釈燃料の蒸発が生じないにもかかわらず、空燃比学習値が燃料噴射量を減量する値に設定されているため、実際の空燃比が過度にリーンとなることに起因して失火をまねくようになる。
<請求項1>
請求項1に記載の発明は、燃料噴射量の算出に際して空燃比学習値による補正を行う内燃機関に適用されて、該空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いに制限を加えるガード値の大きさを燃料希釈の度合いに応じて変更することを要旨としている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記燃料希釈の度合いが大きくなるにつれて前記空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いが小さくなるように前記ガード値の大きさを変更することを要旨としている。
請求項3に記載の発明は、燃料噴射量の算出に際して空燃比学習値による補正を行う内燃機関に適用されて、該空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いに制限を加えるガード値の大きさを希釈燃料の蒸発度合いに応じて変更することを要旨としている。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記希釈燃料の蒸発度合いが大きくなるにつれて前記空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いが小さくなるように前記ガード値の大きさを変更することを要旨としている。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記空燃比学習値の更新を禁止しているとき、前記ガード値による前記空燃比学習値のガードを有効にすることを要旨としている。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記空燃比学習値の更新を許可しているとき、前記ガード値による前記空燃比学習値のガードを無効にすることを要旨としている。
請求項7に記載の発明は、燃料噴射量の算出に際して空燃比フィードバック補正値及び空燃比学習値による補正を行う内燃機関に適用されて、前記フィードバック補正値を算出する空燃比フィードバック制御と前記空燃比学習値を算出する空燃比学習制御とを行う内燃機関の空燃比制御装置において、前記空燃比学習制御を実行していないとき、前記空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いに制限を加えるガード値を設定し、前記ガード値による前記空燃比学習値の制限度合いについて、前記空燃比フィードバック制御を実行していないときの前記制限度合いを、前記空燃比フィードバック制御を実行しているときの前記制限度合いよりも大きく設定し且つ燃料希釈の度合いに応じて設定することを要旨としている。
請求項8に記載の発明は、燃料噴射量の算出に際して空燃比学習値による補正を行う内燃機関に適用されて、現在の空燃比学習値が希釈燃料の蒸発中に更新された値であること且つ希釈燃料の蒸発が生じていないことを検出したとき、前記空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いに制限を加えるガード値の大きさを燃料希釈の度合いに応じて設定することを要旨としている。
<請求項9>
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記ガード値による前記空燃比学習値の制限度合いを燃料希釈の度合いに応じて変更することを要旨としている。
上記構成では、こうしたことを考慮して、燃料希釈の度合いに応じて空燃比学習値の制限度合いを変更するようにしているため、失火の発生をより的確に抑制することができるようになる。
請求項10に記載の発明は、請求項7または8に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記ガード値による前記空燃比学習値の制限度合いを希釈燃料の蒸発度合いに応じて変更することを要旨としている。
上記構成では、こうしたことを考慮して、希釈燃料の蒸発度合いに応じて空燃比学習値の制限度合いを変更するようにしているため、失火の発生をより的確に抑制することができるようになる。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、現在の空燃比学習値を第1の空燃比学習値とし、現在の空燃比が目標の空燃比となるように燃料噴射量を補正する空燃比学習値を第2の空燃比学習値とし、前記空燃比学習制御が実行されていないとき且つ前記第1の空燃比学習値と前記第2の空燃比学習値とのずれが基準値よりも大きいときの前記ガード値をガード値Aとし、前記空燃比学習制御が実行されていないとき且つ前記第1の空燃比学習値と前記第2の空燃比学習値とのずれが基準値よりも大きいとき且つ前記空燃比フィーバック制御が実行されているときの前記ガード値をガード値Bとしたとき、このガード値Bによる前記空燃比学習値の制限度合いを前記ガード値Aによる前記空燃比学習値の制限度合いよりも大きく設定することを要旨としている。
<請求項12>
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記空燃比学習制御が実行されていないとき且つ前記第1の空燃比学習値と前記第2の空燃比学習値とのずれが基準値よりも大きいとき且つ前記空燃比フィーバック制御が実行されていないときの前記ガード値をガード値Cとしたとき、このガード値Cによる前記空燃比学習値の制限度合いを前記ガード値Bによる前記空燃比学習値の制限度合いよりも大きく設定することを要旨としている。
<請求項13>
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記ガード値Cによる前記空燃比学習値の制限度合いを燃料希釈の度合い及び希釈燃料の蒸発度合いに応じて変更することを要旨としている。
<請求項14>
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、希釈燃料の蒸発度合いが基準度合いを下回るときには、希釈燃料の蒸発度合いが同基準度合いを上回るときよりも前記ガード値による前記空燃比学習値の制限度合いが大きく設定されることを要旨としている。
<請求項15>
請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記ガード値は、前記燃料噴射量を減量する方向への補正度合いに制限を加えるものであることを要旨としている。
<エンジンの構造>
図1に、エンジン(筒内噴射式内燃機関)の構造を示す。
シリンダブロック2には、複数のシリンダ21が備えられている。
シリンダ21には、ウォータージャケット22が形成されている。
シリンダブロック2において、シリンダ21の下方には、クランクケース4がシリンダブロック2と一体に形成されている。
オイルパン5には、エンジン1の潤滑油51が貯留されている。
シリンダヘッド3には、インテークポート31及びエキゾーストポート34が設けられている。
エキゾーストバルブ38は、エキゾーストポート34の開閉状態を切り替える。
イグニッションプラグ39は、燃焼室24の混合気に点火する。
エンジン1においては、ブローバイガス還元装置6を通じてクランクケース4内のガスをインテークパイプ33へ供給することが可能となっている。
電子制御装置9は、中央演算処理装置91、リードオンリーメモリ92、ランダムアクセスメモリ93、バックアップメモリ94、インプットポート95及びアウトプットポート96を備えて構成される。
・中央演算処理装置91は、エンジン制御にかかる演算処理を実行する。
・リードオンリーメモリ92は、エンジン制御に必要なプログラムやマップ等を予め記憶している。
・ランダムアクセスメモリ93は、中央演算処理装置の演算結果を一時的に記憶する。
・バックアップメモリ94は、演算結果や記憶されたデータをエンジン停止後も保存する。
・インプットポート95は、外部からの信号を中央演算処理装置91へ入力する。
・アウトプットポート96は、中央演算処理装置91からの信号を外部へ出力する。
回転速度センサ71は、クランクシャフト26の回転速度を検出する。回転速度センサ71を通じて検出されたデータは、エンジン回転速度NEとして電子制御装置9に入力される。
水温センサ73は、ウォータージャケット22内の冷却水の温度を検出する。水温センサ73を通じて検出されたデータは、冷却水温度THWとして電子制御装置9に入力される。
酸素センサ74は、空燃比が理論空燃比をまたいで変化するときに出力電圧が急変する特性を有する。酸素センサ74の出力電圧は、空燃比が理論空燃比よりも大きい(空燃比が理論空燃比に対してリーン)のときには、理論空燃比に対応した出力電圧(基準電圧Vd)よりも小さい値を示す。一方で、空燃比が理論空燃比よりも小さい(空燃比が理論空燃比に対してリッチ)のときには、理論空燃比に対応した出力電圧(基準電圧Vd)よりも大きい値を示す。酸素センサ74の出力電圧は、出力電圧Voとして電子制御装置9に入力される。
エンジン1においては、インジェクタ3Aから噴射された燃料が十分に霧化されないとき(主にエンジン冷間時)、多量の燃料がシリンダ21の内周面に付着するとともにこの燃料が潤滑油と混ざり合うため、潤滑油の燃料希釈が生じる。そして、こうした燃料を含む潤滑油は、ピストン23の往復運動にともなってオイルパン5へかき落とされる。ちなみに、吸気ポートへ向けて燃料を噴射するエンジンにおいても、エンジンの温度が過度に低い場合にはこうした燃料希釈が生じるようになる。
図2を参照して、「燃料噴射量設定処理」について説明する。
本処理は、電子制御装置9を通じて、所定の周期毎に繰り返し実行される。
[ステップS120]基本燃料噴射量Qbse、フィードバック補正係数FAF、空燃比学習値KGi及びその他の補正係数Cに基づいて、インジェクタ3Aに対する燃料噴射量の指令値(最終燃料噴射量Qfin)を設定する。即ち、下記計算式を通じて最終燃料噴射量Qfinを算出する。
Qfin ← Qbse×FAF×KGi×C
フィードバック補正係数FAFは、目標の空燃比(理論空燃比)に対する実際の空燃比(実空燃比)の一時的なずれを補償するための値として算出される。
エンジン1においては、実空燃比を理論空燃比へ収束させるための空燃比制御が行われる。また、空燃比制御として、フィードバック補正係数FAFを算出する空燃比フィードバック制御と、空燃比学習値KGiを算出する空燃比学習制御とが行われる。なお、空燃比フィードバック制御は、後述の「フィードバック補正係数算出処理」を通じて行われる。また、空燃比学習制御は、後述の「空燃比学習値算出処理」を通じて行われる。
図3及び図4を参照して、空燃比フィードバック制御におけるフィードバック補正係数FAFの算出態様について説明する。
図4は、フィードバック補正係数FAFの変化態様の一例を示している。
このとき、フィードバック補正係数FAFから積分量LIが減算される。即ち、フィードバック補正係数FAFが点P1に位置する状態にあるとすると、積分量LIの減算が行われることにより、フィードバック補正係数FAFが点P2に位置する状態へ変化する。こうした積分量LIの減算が所定の周期毎に継続して実行される制御(いわゆる積分制御)を通じて、フィードバック補正係数FAFは徐々に小さくなる。この積分制御が行われるときのフィードバック補正係数FAFの減少傾向は、積分量LIが大きくなるほど急になり、同積分量LIが小さくなるほど緩やかになる。
このとき、フィードバック補正係数FAFにスキップ量RSが加算される。即ち、フィードバック補正係数FAFが点P3に位置する状態にあるとすると、スキップ量RSの加算が行われることにより、フィードバック補正係数FAFが点P4に位置する状態へ変化する。こうしたスキップ量RSを加算する制御(いわゆるスキップ制御)を通じて、フィードバック補正係数FAFは積分制御時よりも大きく変化する。
このとき、フィードバック補正係数FAFに積分量RIが加算される。即ち、フィードバック補正係数FAFが点P4に位置する状態にあるとすると、積分量RIの加算が行われることにより、フィードバック補正係数FAFが点P5に位置する状態へ変化する。こうした積分量RIの加算が所定の周期毎に継続して実行される積分制御を通じて、フィードバック補正係数FAFは徐々に大きくなる。この積分制御が行われるときのフィードバック補正係数FAFの増加傾向は、積分量RIが大きくなるほど急になり、同積分量RIが小さくなるほど緩やかになる。
このとき、フィードバック補正係数FAFからスキップ量LSが減算される。即ち、フィードバック補正係数FAFが点P6に位置する状態にあるとすると、スキップ量LSの減算が行われることにより、フィードバック補正係数FAFが点P7に位置する状態へ変化する。こうしたスキップ量LSを減算するスキップ制御を通じて、フィードバック補正係数FAFは積分制御時よりも大きく変化する。
図5及び図6を参照して、空燃比フィードバック処理について説明する。
本処理は、電子制御装置9を通じて所定の周期毎に繰り返し実行される。
[a]エンジン始動時ではない。
[b]燃料カットが行われていない。
[c]酸素センサ74が活性化している。
(a)上記各条件の全てが成立しているとき、エンジン1の状態が空燃比フィードバック制御を適切に行うことのできる状態であると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップS220の処理が行われる。
電子制御装置9は、ステップS220の判定処理を通じて、実空燃比について次のように判断する。
電子制御装置9は、ステップS230の判定処理を通じて、実空燃比の変化傾向ついて次のように判断する。
FAF ← FAF+RI
を通じて、フィードバック補正係数FAFを算出する。
FAF ← FAF+RS
を通じて、フィードバック補正係数FAFを算出する。なお、スキップ量RSは積分量RIよりも十分に大きい値として設定されている。
電子制御装置9は、ステップS240の判定処理を通じて、実空燃比の変化傾向ついて次のように判断する。
FAF ← FAF−LI
を通じて、フィードバック補正係数FAFを算出する。
FAF ← FAF−LS
を通じて、フィードバック補正係数FAFを算出する。なお、スキップ量LSは積分量LIよりも十分に大きい値として設定されている。
(a)フィードバック補正係数FAFの上限値は上限ガード値GFAFUに制限される。即ち、フィードバック補正係数FAFが上限ガード値GFAFU以上の値に設定されている場合、フィードバック補正係数FAFが上限ガード値GFAFUと同じ大きさに設定されて、最終燃料噴射量Qfinの算出が行われる。
実空燃比と理論空燃比とが定常的に乖離する傾向を有していない場合、フィードバック補正係数FAFは、基準値である「1.0」を中心としてその近傍で変動するようになる。従って、フィードバック補正係数FAFの平均値は略「1.0」と等しくなる。
図7を参照して、「空燃比学習処理」について説明する。
本処理は、電子制御装置9を通じて所定の周期毎に繰り返し実行される。
[a]冷却水温度THWが暖機完了時の温度(暖機水温THWH)以上。
[b]空燃比フィードバック制御が実行されている。
(a)上記各条件の全てが成立しているとき、エンジン1の状態が空燃比学習制御を適切に行うことのできる状態であると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップS320の処理が行われる。
FAFAV ← (FAFS1+FAFS2)/2
を通じて、補正係数平均値FAFAVの算出を行う。
電子制御装置9は、ステップS330の判定処理を通じて、実空燃比について次のように判断する。
KGi ← KGi−LG
を通じて新たな空燃比学習値KGiを算出する。
電子制御装置9は、ステップS330の判定処理を通じて、実空燃比について次のように判断する。
KGi ← KGi+RG
を通じて新たな空燃比学習値KGiを算出する。
ところで、エンジン1の運転中に希釈燃料が蒸発すると、実空燃比が理論空燃比に対して定常的にリッチ側へ乖離する傾向となるため、空燃比学習値KGiがこうした乖離を補償すべく基本燃料噴射量Qbseを減量する値(実空燃比をリッチ側からリーン側へ変化させる値)に更新される。そして、これ以降にエンジン1が停止された後において、エンジン1が過度に温度の低い状態で始動されたとすると、次のような不具合をまねくようになる。
上述のように、希釈燃料の蒸発が生じていない(あるいは生じているものの蒸発量が極めて微量である)ことに起因して現在の空燃比学習値KGiと本来設定されるべき空燃比学習値(現在の空燃比が目標の空燃比となるように燃料噴射量を補正する空燃比学習値(要求学習値))との間に大きな乖離が生じている場合、空燃比学習値KGiにガードをかけることで実空燃比と理論空燃比とのずれを小さくして失火の発生を抑制することが可能となる。なお、要求学習値は、希釈燃料の蒸発が生じていない状態に適合した空燃比学習値に相当する。
[条件A]:空燃比学習制御が行われている。
[条件B]:空燃比学習値と要求学習値とのずれが許容される大きさである。
[条件C]:空燃比フィードバック制御が行われている。
[運転状態A]:[条件A]が成立している状態。
[運転状態B]:[条件A]が成立していない一方で、[条件B]が成立している状態。
[運転状態C]:[条件A]及び[条件B]が成立していない一方で、[条件C]が成立している状態。
[運転状態D]:[条件A]、[条件B]及び[条件C]がともに成立していない状態。
〔1〕[運転状態A]
この場合、フィードバック補正係数FAFによる燃料噴射量の補正、及び空燃比学習値KGiの更新が行われるため、空燃比学習値KGiと要求学習値とが大きく乖離していたとしても、実空燃比が理論空燃比に対して過度にリーン側の値となるおそれはない。このため、下限ガード値GLは設定されない。なお、下限ガード値GLを設定する別途の要求がある場合には、これに従って下限ガード値GLを設定することができる。
この場合、空燃比学習値KGiと要求学習値とのずれが許容される大きさであるため、希釈燃料の蒸発が生じていないことに起因する失火のおそれはない。ただし、空燃比学習値KGiの更新が行われないエンジン冷間時には、良好な燃焼状態が得られないことに起因して失火をまねくことが懸念される。なお、上記許容されるずれの大きさとは、希釈燃料の蒸発が生じていない場合においても、空燃比が過度にリーンとなることのない大きさを示す。
この場合、空燃比学習値KGiと要求学習値とのずれが許容されない大きさであるため、空燃比学習値KGiと要求学習値とが大きく乖離しているとすると、実空燃比が理論空燃比に対して過度にリーン側の値となるおそれがある。一方で、フィードバック補正係数FAFを通じて燃料噴射量の補正が行われるため、空燃比学習値KGiと要求学習値とのずれはフィードバック補正係数FAFを通じてある程度補償される。ただし、フィードバック補正係数FAFに対してガード値が設定されているとともに、空燃比学習値KGiの更新が停止されているため、フィードバック補正係数FAFによる実空燃比のずれの補償には限界がある。
この場合、空燃比学習値KGiと要求学習値とのずれが許容されない大きさであるため、空燃比学習値KGiと要求学習値とが大きく乖離しているとすると、実空燃比が理論空燃比に対して過度にリーン側の値となるおそれがある。また、フィードバック補正係数FAFによる燃料噴射量の補正が行われないため、空燃比学習値KGiと要求学習値とのずれがフィードバック補正係数FAFを通じて補償されることがない。
図11に、各ガード値の関係を示す。
エンジン1においては、冷却水温度THWが低くなるほど燃料が霧化しにくくなる。このため、各ガード値は冷却水温度THWが低くなるにつれて「0」に近づくように設定されている。即ち、冷却水温度THWが低くなるほど、下限ガード値GLによる空燃比学習値KGiの制限度合いが大きくなる。なお、冷却水温度THWが基準水温THWX未満の場合は、上記分類した運転状態にかかわらず実空燃比が過度にリーンとなることに起因する失火の可能性が高くなるため、各ガード値は最も小さい値に設定されている。
図12を参照して、第3ガード値GdCと希釈燃料量FDとの関係について説明する。
図12(a)に示すように、希釈燃料の蒸発が生じていないことに起因して、現在の空燃比学習値KGiと要求学習値KGTとが乖離している場合を想定する。
図13〜図15を参照して、「学習値ガード処理」について説明する。
本処理は、電子制御装置9を通じて、所定の周期毎に繰り返し実行される。
電子制御装置9は、ステップS410の判定処理を通じて、実空燃比について次のように判断する。
(b)空燃比学習制御が行われていないとき、実空燃比が過度にリーン側の値となるおそれがあると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップS420の処理が行われる。
電子制御装置9は、ステップS420の判定処理を通じて、現在の空燃比学習値KGiついて次のように判断する。
(a)希釈燃料量FDが基準希釈量XFD以上のとき、空燃比学習値KGiの大きさは、希釈燃料の蒸発が生じていない場合において、実空燃比を過度にリーン側の値へ変化させる大きさであると判断する。即ち、希釈燃料の蒸発が生じていないことに起因する失火のおそれがあると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップS440の処理が行われる。
電子制御装置9は、ステップS440の判定処理を通じて、設定すべきガード値の大きさについて次のように判定する。
電子制御装置9は、ステップS450の判定処理を通じて、実空燃比について次のように判断する。
電子制御装置9は、ステップS460の判定処理を通じて、下限ガード値GLの設定について次のように判断する。
(a)空燃比学習値KGiの上限値は上限ガード値GUに制限される。即ち、空燃比学習値KGiが上限ガード値GU以上の値に設定されている場合、空燃比学習値KGiが上限ガード値GUと同じ大きさに設定されて、最終燃料噴射量Qfinの算出が行われる。
以上詳述したように、この実施形態にかかる内燃機関の空燃比制御装置によれば、以下に示すような効果が得られるようになる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した、例えば次のような形態として実施することもできる。
2…シリンダブロック、21…シリンダ、22…ウォータージャケット、23…ピストン、24…燃焼室、25…コネクティングロッド、26…クランクシャフト。
71…回転速度センサ、72…吸気量センサ、73…水温センサ、74…酸素センサ。
9…電子制御装置、91…中央演算処理装置、92…リードオンリーメモリ、93…ランダムアクセスメモリ、94…バックアップメモリ、95…インプットポート、96…アウトプットポート。
THW…冷却水温度、THWH…暖機水温、THWX…基準水温。
FAF…フィードバック補正係数、FAFS1,FAFS2…スキップ時補正係数、FAFAV…補正係数平均値、XFAF…基準補正係数、RI,LI…積分量、RS,LS…スキップ量、α,β…判定値、RG,LG…所定値。
GFAFU…上限ガード値、GFAFL…下限ガード値、GU…上限ガード値、GL…下限ガード値、GdA…第1ガード値、GdB…第2ガード値、GdC…第3ガード値、GAU…上限側ガード量GAL…下限側ガード量。
Claims (15)
- 燃料噴射量の算出に際して空燃比学習値による補正を行う内燃機関に適用されて、該空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いに制限を加えるガード値の大きさを燃料希釈の度合いに応じて変更する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記燃料希釈の度合いが大きくなるにつれて前記空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いが小さくなるように前記ガード値の大きさを変更する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 燃料噴射量の算出に際して空燃比学習値による補正を行う内燃機関に適用されて、該空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いに制限を加えるガード値の大きさを希釈燃料の蒸発度合いに応じて変更する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項3に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記希釈燃料の蒸発度合いが大きくなるにつれて前記空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いが小さくなるように前記ガード値の大きさを変更する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記空燃比学習値の更新を禁止しているとき、前記ガード値による前記空燃比学習値のガードを有効にする
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記空燃比学習値の更新を許可しているとき、前記ガード値による前記空燃比学習値のガードを無効にする
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 燃料噴射量の算出に際して空燃比フィードバック補正値及び空燃比学習値による補正を行う内燃機関に適用されて、前記フィードバック補正値を算出する空燃比フィードバック制御と前記空燃比学習値を算出する空燃比学習制御とを行う内燃機関の空燃比制御装置において、
前記空燃比学習制御を実行していないとき、前記空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いに制限を加えるガード値を設定し、
前記ガード値による前記空燃比学習値の制限度合いについて、前記空燃比フィードバック制御を実行していないときの前記制限度合いを、前記空燃比フィードバック制御を実行しているときの前記制限度合いよりも大きく設定し且つ燃料希釈の度合いに応じて設定する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 燃料噴射量の算出に際して空燃比学習値による補正を行う内燃機関に適用されて、現在の空燃比学習値が希釈燃料の蒸発中に更新された値であること且つ希釈燃料の蒸発が生じていないことを検出したとき、前記空燃比学習値による前記燃料噴射量の補正度合いに制限を加えるガード値の大きさを燃料希釈の度合いに応じて設定する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項7または8に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記ガード値による前記空燃比学習値の制限度合いを燃料希釈の度合いに応じて変更する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項7または8に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記ガード値による前記空燃比学習値の制限度合いを希釈燃料の蒸発度合いに応じて変更する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
現在の空燃比学習値を第1の空燃比学習値とし、現在の空燃比が目標の空燃比となるように燃料噴射量を補正する空燃比学習値を第2の空燃比学習値とし、前記空燃比学習制御が実行されていないとき且つ前記第1の空燃比学習値と前記第2の空燃比学習値とのずれが基準値よりも大きいときの前記ガード値をガード値Aとし、前記空燃比学習制御が実行されていないとき且つ前記第1の空燃比学習値と前記第2の空燃比学習値とのずれが基準値よりも大きいとき且つ前記空燃比フィーバック制御が実行されているときの前記ガード値をガード値Bとしたとき、このガード値Bによる前記空燃比学習値の制限度合いを前記ガード値Aによる前記空燃比学習値の制限度合いよりも大きく設定する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項11に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記空燃比学習制御が実行されていないとき且つ前記第1の空燃比学習値と前記第2の空燃比学習値とのずれが基準値よりも大きいとき且つ前記空燃比フィーバック制御が実行されていないときの前記ガード値をガード値Cとしたとき、このガード値Cによる前記空燃比学習値の制限度合いを前記ガード値Bによる前記空燃比学習値の制限度合いよりも大きく設定する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項12に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記ガード値Cによる前記空燃比学習値の制限度合いを燃料希釈の度合い及び希釈燃料の蒸発度合いに応じて変更する
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項1〜13のいずれか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
希釈燃料の蒸発度合いが基準度合いを下回るときには、希釈燃料の蒸発度合いが同基準度合いを上回るときよりも前記ガード値による前記空燃比学習値の制限度合いが大きく設定される
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項1〜14のいずれか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記ガード値は、前記燃料噴射量を減量する方向への補正度合いに制限を加えるものである
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
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