JP2007032324A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 燃料によるオイルの希釈度合いが大きい場合に得られた燃料噴射量のフィードバック補正量の学習値を用いることにより、一旦エンジンを停止した後の冷間始動時において噴射される燃料量が不足し、空燃比が目標の空燃比に対してリーンになることを抑制する。
【解決手段】 エンジンECUは、オイル希釈度合算出処理を実行するステップ(S100)と、オイル希釈度が大であるか否かを判断するステップ(S200)と、オイル希釈が大である場合(S200にてYES)、学習値の記憶を禁止するステップ(S300)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】 図2
【解決手段】 エンジンECUは、オイル希釈度合算出処理を実行するステップ(S100)と、オイル希釈度が大であるか否かを判断するステップ(S200)と、オイル希釈が大である場合(S200にてYES)、学習値の記憶を禁止するステップ(S300)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特に、燃料の噴射量の補正値を算出し、算出された補正値に応じた量の燃料が噴射される内燃機関の制御装置に関する。
従来より、混合気の空燃比を所望の空燃比(たとえば理論空燃比)に維持するため、空燃比センサなどにより排気ガス中の空燃比を検知し、フィードバック制御により燃料噴射量を補正する技術が知られている。
特開昭58−25540号公報(特許文献1)は、エンジンの排気ガス成分により空燃比を検出する空燃比センサの検出信号をもとに空燃比を制御する空燃比制御方法を開示する。この空燃比制御方法においては、空燃比センサの検出信号をもとに空燃比が比例積分処理され、比例積分処理により得られる比例積分補正量をもとにエンジンの運転状態に対応させて学習値としてのエンジン状態補正量が演算されて記憶され、記憶された学習値としてのエンジン状態補正量を、空燃比センサのリッチ、リーンの変化時点もしくは比例積分補正方向の変化時点での補正量が所定数取り込まれ、所定数取り込まれた補正量の相加平均値をもとに修正され、修正された学習値としてのエンジン状態補正量に従ってエンジンの空燃比が目標空燃比に帰還制御される。
この公報に記載の空燃比制御方法によれば、空燃比の変動周期に影響されることなく、空燃比の中心を明確にできる。したがって、精度のよい補正記憶に基づく精度の高い空燃比制御を行なうことができる。
特開昭58−25540号公報
ところで、特に、筒内に直接燃料を噴射する筒内噴射用インジェクタが設けられた内燃機関においては、噴射燃料が気筒内周面(シリンダ内周面(ボア))に多量に付着する場合がある。気筒内周面に付着した燃料は、機関ピストンの潤滑のために同気筒内周面に付着している潤滑油と混合されるようになる。その結果、燃料による潤滑油の希釈が発生する。そして、燃料により希釈された気筒内の潤滑油は、機関ピストンが上下動するのに伴ってかき落とされ、オイルパンに戻された後、内燃機関の潤滑に供されるようになる。潤滑油に溶け込んだ燃料は、クランクケース内などにおいて蒸発し、PCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブなどを介して再び筒内に戻される。したがって、空燃比は、インジェクタから噴射された燃料の他、潤滑油を希釈する燃料を加味した空燃比になる。そのため、特開昭58−25540号公報に記載の空燃比学習方法おける空燃比の学習値は、潤滑油を希釈する燃料の影響を受ける。ところが、潤滑油を希釈する燃料の蒸発量は一定ではなく、温度が低いと少なくなる。したがって、エンジンの冷間始動時において、温間時に得た学習値を用いて燃料量を制御すると、噴射される燃料量が必要以上に減量され得る。そのため、空燃比が目標空燃比よりもリーンになって、不適切になり得る。
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、空燃比を適切に制御することができる内燃機関の制御装置を提供することである。
第1の発明に係る内燃機関の制御装置は、燃料を噴射するための燃料噴射手段を備えた内燃機関を制御する。この制御装置は、内燃機関の空燃比を検知するための検知手段と、検知された空燃比に基づいて燃料噴射量の補正値を算出するための算出手段と、補正値に応じた量の燃料が噴射されるように、燃料噴射手段を制御するための制御手段と、内燃機関の潤滑に用いられる潤滑油が燃料により希釈された度合いを推定するための推定手段と、度合いに応じて、補正値を記憶するための記憶手段とを含む。
第1の発明によると、内燃機関の空燃比に基づいて燃料噴射量の補正値が算出される。内燃機関の空燃比は、燃料噴射手段から噴射された燃料の他、内燃機関の潤滑油を希釈する燃料の影響を受ける。潤滑油から蒸発する燃料量は温度により異なるため、内燃機関の温間時において得られた補正値を用いて、冷間時に燃料を噴射すると、燃料噴射量が必要以上に減量され、空燃比が目標の空燃比に対してリーンになり得る。この傾向は、潤滑油を希釈する燃料量が多いほど顕著になる。このような燃料噴射量の減量補正を抑制するため、潤滑油が燃料により希釈された度合いに応じて、燃料噴射量の補正値が記憶される。たとえば、潤滑油が燃料により希釈された度合いが大きいと推定された場合には補正値の記憶が禁止される。これにより、内燃機関を一旦停止してから再度始動する際において、潤滑油が燃料により希釈された度合いが大きい状態で得られた補正値に応じた量の燃料が噴射されることを抑制することができる。そのため、内燃機関の冷間始動時において、燃料の噴射量が必要以上に減量され、空燃比が目標の空燃比に対してリーンになることを抑制することができる。その結果、空燃比を適切に制御することができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
第2の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、記憶手段は、度合いが大きいと推定された場合には補正値の記憶を禁止するための手段を含む。
第2の発明によると、潤滑油が燃料により希釈された度合いが大きいと推定された場合には補正値の記憶が禁止される。これにより、内燃機関を一旦停止してから再度始動する際において、潤滑油が燃料により希釈された度合いが大きい状態で得られた補正値に応じた量の燃料が噴射されることを抑制することができる。そのため、内燃機関の冷間始動時において、燃料の噴射量が必要以上に減量され、空燃比が目標の空燃比に対してリーンになることを抑制することができる。その結果、空燃比を適切に制御することができる。
第3の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加え、燃料噴射手段は、筒内に燃料を噴射する。
第3の発明によると、筒内に燃料を噴射するため、噴射燃料が気筒内周面に付着し、潤滑油が燃料により希釈されやすい内燃機関において、冷間始動時に燃料の噴射量が必要以上に減量され、空燃比が目標の空燃比に対してリーンになることを抑制して、空燃比を適切に制御することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本発明の制御装置で制御される直噴エンジンの全体構成図を示す。
エンジン本体10は、シリンダブロック100の上方にシリンダヘッド110が覆着されてなり、シリンダブロック100に形成されたシリンダ100A内にピストン120が摺動自在に保持されている。シリンダ100A内におけるピストン120の上下往復動がクランク軸130の回転運動に変換され、トランスミッション等へと伝達されるようになっている。クランク軸130は、エンジン始動時にはフライホイール140を介してスタータ30と接続される。
エンジン本体10は、シリンダブロック100の上方にシリンダヘッド110が覆着されてなり、シリンダブロック100に形成されたシリンダ100A内にピストン120が摺動自在に保持されている。シリンダ100A内におけるピストン120の上下往復動がクランク軸130の回転運動に変換され、トランスミッション等へと伝達されるようになっている。クランク軸130は、エンジン始動時にはフライホイール140を介してスタータ30と接続される。
ピストン120の上方にはシリンダブロック100、シリンダヘッド110を室壁として燃焼室1000が形成され、燃焼室1000において燃料と空気との混合気の燃焼が行なわれ、その爆発力によりピストン120を上下往復動せしめる。混合気への点火はシリンダヘッド110を貫通し燃焼室1000内に突出して設けられた点火プラグ150により行なわれる。
混合気を構成する空気の供給は、シリンダヘッド110およびこれと接続された吸気管内部に形成された吸気通路1010により行なわれる。また、燃焼室1000からの排気は排気通路1020により行なわれる。シリンダヘッド110には、吸気通路1010と燃焼室1000との間の連通と遮断とを切り換える吸気バルブ160、排気通路1020と燃焼室1000との間の連通と遮断とを切り換える排気バルブ170が取り付けられている。
吸気管内にはフラップ状のスロットルバルブ190が設けられ、その開度に応じて吸気通路1010内の空気流を調整する。
混合気を構成する燃料の供給は、電磁式のインジェクタ210により行なわれる。インジェクタ210はシリンダヘッド110を貫通して設けられ、先端ノズル部から燃焼室1000内(筒内)に燃料を噴射するようになっている。なお、インジェクタ210に加えて、吸気ポート内もしくは吸気通路1010内に燃料を噴射するインジェクタを設けるようにしてもよい。
インジェクタ210への燃料供給は、燃料タンク250から吸い上げた燃料を低圧ポンプ240および高圧ポンプ230により2段階に昇圧して供給される。高圧ポンプ230はエンジン本体10のクランク軸130からベルト等を介して伝達される動力で駆動される。一方、低圧ポンプ240は電動駆動のもので、始動時には、インジェクタ210も低圧ポンプ240から燃料が供給される。
また、点火プラグ150、スロットルバルブ190、インジェクタ210等のエンジン各部を制御するエンジンコントロールコンピュータ(以下、エンジンECU(Electronic Control Unit)と記載する)60が設けられている。エンジンECU60は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等からなる一般的な構成のもので、各種センサからの検知信号等に基づいて、点火プラグ150を作動せしめ、スロットルバルブ190に制御信号を出力してスロットルバルブ190の開度(スロットル開度)を調整し、インジェクタ210に、制御信号により通電し所定のタイミングで所定時間、インジェクタ210のノズルを開く。
エンジンECU60に入力するセンサには、吸気通路1010内を流通する空気流量を測定するエアフローメータ510、クランク角センサ520、A/Fセンサ530、エンジン温度を代表するエンジン冷却水温を検出する冷却水温センサ等がある。また、エンジンECU60には、始動時に運転者がキーを操作すると、そのイグニッション(IG)オン信号およびスタータオン信号が入力し、運転者がアクセルペダル420を踏み込むと、その踏み込み量が入力するようになっている。
エンジンECU60は、エアフローメータ510等によって検知された吸入空気量に基づいて燃料噴射量を制御する。このとき、エンジンECU60は、各センサからの信号に基づいて、最適な燃焼状態になるように、エンジン回転数およびエンジン負荷に応じた噴射量と噴射時期とを制御する。このエンジン本体10においては、燃料を筒内に直接噴射するため、噴射時期制御と噴射量制御とを同時に行なう。また、エンジンECU60は、クランク角センサ520やカムポジションセンサ等によって検知された信号(ノッキングセンサ等も含む)に基づいて、最適な点火時期になるように点火時期制御が行なわれる。このような制御により、エンジン本体10の高出力化および低エミッション化の両立を実現している。
本実施の形態におけるA/Fセンサ530は、エンジン本体10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域A/Fセンサ(リニアA/Fセンサ)である。なお、A/Fセンサ530としては、エンジン本体10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
本実施の形態において、エンジンECU60は、A/Fセンサ530の出力電圧に基づいて、燃料の総噴射量のフィードバック補正量を算出する。また、予め定められた学習条件が成立した場合、フィードバック補正量の学習値(燃料噴射量の恒常的なズレ量を表す値)を算出する。算出された学習値は、SRAMなどのメモリに記憶される。なお、フィードバック補正量およびその学習値を算出する方法については、一般的に用いられている技術を利用すればよいため、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
エンジン本体10の潤滑系は、クランクケースの一部として形成されるオイルパンと、潤滑油供給装置を備えて構成される。この潤滑油供給装置は、オイルポンプ、フィルタ、オイルジェット機構等を備えている。オイルパン内の潤滑油は、フィルタを介してオイルポンプにより吸引され、オイルジェット機構に供給される。ピストンと気筒内周面(ボア)との間を潤滑するにあたっては、オイルジェット機構に供給された潤滑油が、この機構から気筒内周面に供給される。その後、潤滑油はピストンが往復動するのに伴って気筒内周面からその下方にかき落とされ、最終的にオイルパンに戻される。そして、このかき落とされた潤滑油はオイルパン内の潤滑油と混合された後、再びエンジン本体10の潤滑に供される。なお、気筒内周面に供給されてピストンの潤滑に供された潤滑油は、エンジン本体10の燃焼熱により温度上昇した後、オイルパンに戻される。
図2を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU60により実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、図2のフローチャートに示すプログラムは、所定の時間周期T毎に行なわれる。
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、エンジンECU60は、オイル希釈度合算出処理を実行する。なおこのS100における処理は、別のサブルーチンとして設けられ詳しくは図3を用いて説明する。
S200にて、エンジンECU60は、オイル希釈度が大であるか否かを判断する。この判断は、後述する燃料希釈発生フラグXSがON状態であるか否かに基づいて行なわれる。オイル希釈が大であることを示す燃料希釈発生フラグXSがON状態であると(S200にてYES)、処理はS300へ移される。もしそうでない場合(S200にてNO)、処理はS400に移される。
S300にて、エンジンECU60は、SRAMへの学習値の記憶を禁止する。その後、この処理は終了する。S400にて、エンジンECU60は、SRAMへの学習値の記憶を許可する。その後、この処理は終了する。
図3を参照して、図2のS100のオイル希釈度合い算出処理のサブルーチンプログラムの制御構造について説明する。
本実施の形態においては、潤滑油全体の燃料希釈度合いについて、その増大速度および低下速度を周期的に算出して、現在推定されている燃料希釈度合いの値をこれら算出される増大速度および低下速度に基づいて更新するとともに、その更新値を新たな燃料希釈度合いの値として学習するようにしている。
エンジンECU60は、図2のフローチャートに示されるプログラムを所定の時間周期T毎に行なうため、この図3のフローチャートに示されるサブルーチンプログラムも所定の時間周期T毎に繰り返し実行される。
S110にて、エンジンECU60は、式(1)に基づいて単位時間当たりの燃料希釈量ΔFD、すなわち、時間周期Tの間に行なわれる燃料噴射を通じて潤滑油に新たに混入する燃料の量が算出される。また、この燃料希釈量ΔFDは、潤滑油全体からの燃料蒸発を考慮しない場合での燃料希釈度合いの増大速度に相当する。
ΔFD←Σf(QINJi,AINJi,THWi) …(1)
ここで、i=1,2,3,・・・,n、f()は、1回の燃料噴射により生じる燃料希釈量を求めるための関数であり、その燃料噴射が実行されるときの、燃料噴射量QINJ、燃料噴射時期AINJ、機関冷却水温THWを、パラメータとしている。また、「i」は、その燃料噴射が前回の制御周期から何回目のものに相当するかを示している。たとえば、前回の制御周期から今回の制御周期までの間に3回の燃料噴射が行なわれた場合、式(1)は式(2)のように表わすことができる。
ここで、i=1,2,3,・・・,n、f()は、1回の燃料噴射により生じる燃料希釈量を求めるための関数であり、その燃料噴射が実行されるときの、燃料噴射量QINJ、燃料噴射時期AINJ、機関冷却水温THWを、パラメータとしている。また、「i」は、その燃料噴射が前回の制御周期から何回目のものに相当するかを示している。たとえば、前回の制御周期から今回の制御周期までの間に3回の燃料噴射が行なわれた場合、式(1)は式(2)のように表わすことができる。
ΔFD←f(QINJ1,AINJ2,THW1)+f(QINJ2,AINJ2,THW2)+f(QINJ3,AINJ2,THW3) …(2)
なお、この関数f()は、実験等により予め求められ、エンジンECU60のROMに関数マップとして記憶されている。また、その基本的な特性は、1)燃料噴射量QINJが多くなるほど関数f()の値は大きくなる、2)燃料噴射時期AINJが遅角側にあるほど関数f()の値は大きくなる、3)機関冷却水温THWが低くなるほど関数f()の値は大きくなる。
なお、この関数f()は、実験等により予め求められ、エンジンECU60のROMに関数マップとして記憶されている。また、その基本的な特性は、1)燃料噴射量QINJが多くなるほど関数f()の値は大きくなる、2)燃料噴射時期AINJが遅角側にあるほど関数f()の値は大きくなる、3)機関冷却水温THWが低くなるほど関数f()の値は大きくなる。
なお、関数f()のパラメータとして、それぞれ燃料噴射量QINJ、燃料噴射時期AINJ、機関冷却水温THWを選択するようにした理由は、以下の通りである。燃料噴射により生じる燃料希釈は、気筒内周面に付着した燃料が燃焼に供されることなく残留した場合に発生するため、この気筒内周面の燃料付着量が多くなるほど、潤滑油全体の燃料希釈度合いも大きく増大すると考えられる。この気筒内周面の燃料付着量はこれを直接検出することは通常困難であるが、この気筒内周面の燃料付着量と相関を有するパラメータを適切に選択すれば、これを的確に推定して求めることができるようになる。
燃料噴射量QINJ、燃料噴射時期AINJおよび機関冷却水温THWは、いずれも気筒内周面の燃料付着量と相関を有するパラメータの代表例である。たとえば、燃料噴射量QINJが多くなれば、気筒内周面の燃料付着量は当然ながら多くなる。また、気筒内周
面に燃料が付着する場合、単位面積当たりに付着し得る燃料の量、換言すれば気筒内周面上に形成される燃料層の厚さには上限値が存在する。したがって、燃料の付着面積が増大すれば、そうした燃料層の厚さがその上限値に達することも少なくなり、気筒内周面にはより多くの燃料が付着し得るようになる。そして、この燃料付着面積、すなわち燃料噴射時にピストンにより覆われずに燃焼室に露出する気筒内周面の面積は、燃料噴射時期AINJによって決定され、吸気行程噴射を前提とすれば、同燃料噴射時期AINJが遅角側の時期に設定されるときほど大きくなる。したがって、燃料噴射時期AINJがより遅角側の時期に設定されるときほど気筒内周面の燃料付着量は多くなる。
面に燃料が付着する場合、単位面積当たりに付着し得る燃料の量、換言すれば気筒内周面上に形成される燃料層の厚さには上限値が存在する。したがって、燃料の付着面積が増大すれば、そうした燃料層の厚さがその上限値に達することも少なくなり、気筒内周面にはより多くの燃料が付着し得るようになる。そして、この燃料付着面積、すなわち燃料噴射時にピストンにより覆われずに燃焼室に露出する気筒内周面の面積は、燃料噴射時期AINJによって決定され、吸気行程噴射を前提とすれば、同燃料噴射時期AINJが遅角側の時期に設定されるときほど大きくなる。したがって、燃料噴射時期AINJがより遅角側の時期に設定されるときほど気筒内周面の燃料付着量は多くなる。
さらに、気筒内周面等の燃料付着は基本的に噴射燃料の霧化が促進されず、その粒径が大きいときに顕著になる。また、この霧化程度は、燃料噴射圧を一定とすると、燃焼室や燃料の温度に大きく依存している。さらに、これら燃焼室や燃料の温度は、機関冷却水温THWと相関を有している。したがって、機関冷却水温THWが低いときほど燃料の霧化が促進されず、したがって気筒内周面の燃料付着量は多くなる。
本実施の形態においては、これらの点を考慮して、燃料噴射量QINJ、燃料噴射時期AINJ、および機関冷却水温THWを、気筒内周面の燃料付着量と相関を有するパラメータとして選択している。
S120にて、エンジンECU60は、式(3)に基づいて、単位時間当たりの燃料蒸発量ΔFV、すなわち、時間周期Tの間に潤滑油全体から蒸発する燃料の量を算出する。また、この燃料蒸発量ΔFVは、燃料噴射による燃料希釈を考慮しない場合の燃料希釈度合いの低下速度に相当する。
ΔFV←g(THWST,QINJSUM,GASUM) …(3)
ここで、g()は、時間周期Tあたりの燃料蒸発量ΔFVを求めるための関数であり、機関始動時水温THWST、機関始動後の燃料噴射量積算値QINJSUMおよび機関始動後の吸入空気量積算値GASUMを、パラメータとしている。ちなみに、機関始動時水温THWSTは機関始動時における潤滑油の初期温度を推定するためのものであり、また機関始動後の燃料噴射量積算値QINJSUMおよび吸入空気量積算値GASUMは、その後の潤滑油の温度上昇量を推定するためのものである。すなわち、関数g()は、基本的に、潤滑油温度を推定し、その推定結果を燃料の蒸発量に変換するためのものである。この関数g()は、実験等を通じて予め求められ、エンジンECU60のROMに関数マップとして記憶されている。また、その基本的な特性は、以下に示す通りである。1)機関始動時水温THWSTが高くなるほどg()の値は大きくなる、2)機関始動後の燃料噴射量積算値QINJSUMが多くなるほどg()の値は大きくなる、3)機関始動後の吸入空気量積算値GASUMが多くなるほどg()の値は大きくなる。このようにして単位時間当たり燃料希釈量ΔFDおよび燃料蒸発量ΔFVが算出される。
ここで、g()は、時間周期Tあたりの燃料蒸発量ΔFVを求めるための関数であり、機関始動時水温THWST、機関始動後の燃料噴射量積算値QINJSUMおよび機関始動後の吸入空気量積算値GASUMを、パラメータとしている。ちなみに、機関始動時水温THWSTは機関始動時における潤滑油の初期温度を推定するためのものであり、また機関始動後の燃料噴射量積算値QINJSUMおよび吸入空気量積算値GASUMは、その後の潤滑油の温度上昇量を推定するためのものである。すなわち、関数g()は、基本的に、潤滑油温度を推定し、その推定結果を燃料の蒸発量に変換するためのものである。この関数g()は、実験等を通じて予め求められ、エンジンECU60のROMに関数マップとして記憶されている。また、その基本的な特性は、以下に示す通りである。1)機関始動時水温THWSTが高くなるほどg()の値は大きくなる、2)機関始動後の燃料噴射量積算値QINJSUMが多くなるほどg()の値は大きくなる、3)機関始動後の吸入空気量積算値GASUMが多くなるほどg()の値は大きくなる。このようにして単位時間当たり燃料希釈量ΔFDおよび燃料蒸発量ΔFVが算出される。
S130にて、エンジンECU60は、式(4)に基づいて、燃料希釈度合いFDSUMを算出する。
FDSUM←FDSUM+ΔFD−ΔFV …(4)
式(4)に示されるように、ここでは、燃料希釈度合いFDSUMの増大速度ΔFDおよびその低下速度ΔFVに基づいて、現在の燃料希釈度合いFDSUMが更新される。そして、その更新値が新たな燃料希釈度合いFDSUMとして学習され、エンジンECU60を構成する不揮発性のRAMに記憶される。燃料希釈度合いFDSUMを不揮発性のRAMに記憶することにより、補機バッテリの交換時などにおけるOBD(On Board Diagnosis)の誤検出を防止することができる。
式(4)に示されるように、ここでは、燃料希釈度合いFDSUMの増大速度ΔFDおよびその低下速度ΔFVに基づいて、現在の燃料希釈度合いFDSUMが更新される。そして、その更新値が新たな燃料希釈度合いFDSUMとして学習され、エンジンECU60を構成する不揮発性のRAMに記憶される。燃料希釈度合いFDSUMを不揮発性のRAMに記憶することにより、補機バッテリの交換時などにおけるOBD(On Board Diagnosis)の誤検出を防止することができる。
S140にて、エンジンECU60は、燃料希釈度合いFDSUMと判定値FDSUMHとを比較する。燃料希釈度合いFDSUMが判定値FDSUMH以上であると(S140にてYES)、潤滑油全体の燃料希釈度合いが大きくなっており、これ以上燃料希釈が進行すると潤滑性能の低下等、その悪影響がもはや無視できない程度に大きくなるものと判定され、処理はS150へ移される。もしそうでないと(S140にてNO)、処理はS160へ移される。
S150にて、エンジンECU60は、燃料希釈発生フラグXSを「ON」に設定する。
S160にて、エンジンECU60は、燃料希釈度合いFDSUMと判定値FDSUML(<FDSUMH)とを比較する。燃料希釈度合いFDSUMが判定値FDSUML以下であると(S160にてYES)、潤滑油全体の燃料希釈度合いが小さく、したがって燃料噴射によって燃料希釈が一時的に発生して潤滑油全体の燃料希釈度合いが進行したとしても、これによるエンジン本体10への悪影響はほぼ無視できる程度のものであると判定され、処理はS170へ移される。もしそうでないと(S160にてNO)、この処理は終了する。
S170にて、エンジンECU60は、燃料希釈発生フラグXSを「OFF」に設定する。
なお、各判定値FDSUML,FDSUMHについて(FDSUML<FDSUMH)なる大小関係を設定して異ならせることにより、燃料希釈発生フラグXSのオン・オフ操作する際の実行条件にいわゆるヒステリシスをもたせている。このように設定すると、たとえば、エンジン本体10の運転状態が変化していないのにも関わらず、燃料希釈発生フラグXSが過度にオン・オフ操作されて燃圧が短時間の間に頻繁に変更される等、こうしたヒステリシスを設定していない場合に懸念される燃料噴射制御の不安定化を回避することができる。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU60の動作について説明する。なお、以下の説明では、図3に示す燃料希釈発生フラグXSがON状態にセットされていると想定する。
この状態では、インジェクタ210から噴射された燃料によりオイルの希釈度合いが大であると判断される(S200にてYES)。この場合、オイルから蒸発して、PCVバルブ等から再び気筒内に戻される燃料が混合気の空燃比に与える影響が大きい。そのため、A/Fセンサ530により検出される空燃比が目標の空燃比(たとえば理論空燃比)よりもリッチになる。したがって、フィードバック補正量の学習値は、インジェクタ210からの燃料噴射量を減量するように算出される。
この学習値をそのままSRAMに記憶させたとすると、一旦エンジン本体10を停止した後、再始動する際にも、記憶された学習値に基づいた量の燃料が噴射されることになる。このとき、エンジン本体10が冷めた状態、すなわち冷間始動時においては、オイルから蒸発する燃料量が温間時に比べて少ないため、温間時であって燃料によるオイルの希釈度合いが大きい場合に得られた学習値を用いると、噴射する燃料量が、目標の空燃比に対して不足する。すなわち、実際の空燃比が目標の空燃比よりもリーンになる。
これを抑制するため、燃料によるオイル希釈度合いが大であると判断された場合(S200にてYES)、学習値の記憶が禁止される(S300)。これにより、噴射する燃料量が必要以上に減量され、空燃比が目標の空燃比よりもリーンになることを抑制することができる。
一方、燃料によるオイル希釈度合いが小であると判断された場合(S200にてNO)、この状態で記憶された学習値に基づいた量の燃料を、エンジン停止後の冷間始動時などにおいて噴射しても、燃料量が不足する度合いが小さい。すなわち、空燃比が必要以上にリーンになることが抑制される。したがって、学習値の記憶が許可される(S400)。これにより、学習値により適切に制御された燃料量を得ることができる。そのため、空燃比を目標の空燃比に近づけることができる。
以上のようにして、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECUによれば、燃料によるオイル希釈度合いが大であると判断された場合、燃料噴射量のフィードバック補正量の学習値の記憶が禁止される。これにより、温間時であって燃料によるオイルの希釈度合いが大きい場合に得られた学習値を用いることにより、一旦エンジンを停止した後の冷間始動時において噴射される燃料量が不足し、空燃比が目標の空燃比に対してリーンになることを抑制することができる。
なお、本実施の形態においては、単位時間当たりの燃料希釈量ΔFDおよび燃料蒸発量ΔFVから、燃料希釈度合いFDSUMを算出していたが、燃料希釈度合いFDSUMの算出方法はこれに限らず、その他、燃料希釈量ΔFDおよび燃料蒸発量ΔFVを算出せずに、燃料希釈度合いFDSUMを算出するようにしてもよい。すなわち、燃料噴射量QINJ、燃料噴射時期AINJ、機関冷却水温THW、機関始動時水温THWST、機関始動後の燃料噴射量積算値QINJSUMおよび機関始動後の吸入空気量積算値GASUMの少なくともいずれか一つをパラメータとして、燃料希釈度合いFDSUMを算出するようにしてもよい。
また、燃料によるオイル希釈度合いが大であると判断された場合に学習値の記憶を禁止する代わりに、フィードバック補正量の算出のみを行ない、学習値の算出自体を禁止するようにしてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 エンジン本体、30 スタータ、60 エンジンECU、150 点火プラグ、160 吸気バルブ、170 排気バルブ、190 スロットルバルブ、210 インジェクタ、520 クランク角センサ、530 A/Fセンサ、1000 燃焼室、1010 吸気通路、1020 排気通路。
Claims (3)
- 燃料を噴射するための燃料噴射手段を備えた内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の空燃比を検知するための検知手段と、
前記検知された空燃比に基づいて燃料噴射量の補正値を算出するための算出手段と、
前記補正値に応じた量の燃料が噴射されるように、前記燃料噴射手段を制御するための制御手段と、
前記内燃機関の潤滑に用いられる潤滑油が燃料により希釈された度合いを推定するための推定手段と、
前記度合いに応じて、前記補正値を記憶するための記憶手段とを含む、内燃機関の制御装置。 - 前記記憶手段は、前記度合いが大きいと推定された場合には前記補正値の記憶を禁止するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃料噴射手段は、筒内に燃料を噴射する、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
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-
2005
- 2005-07-25 JP JP2005213645A patent/JP2007032324A/ja active Pending
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DE102015222813B4 (de) | 2014-11-21 | 2019-03-21 | Suzuki Motor Corporation | Steuervorrichtung für einen Verbrennungsmotor |
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