JP4442335B2 - デカップリング素子およびその製造方法、並びにそれを用いたプリント基板回路 - Google Patents

デカップリング素子およびその製造方法、並びにそれを用いたプリント基板回路 Download PDF

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Description

本発明は、高周波ノイズ吸収体としてカーボンナノチューブを用いたデカップリング素子、および、その製造方法に関する。また、かかるデカップリング素子を内蔵したプリント基板回路に関する。
近年のCPUの高速化に伴い、不要な高周波電流が発生し、CPU自身やその周辺回路に悪影響を及ぼす例が現れてきた。このため電源には高速応答でより安定な物が求められている。一般に、電源だけの機能で高速性と安定性を満たす事は困難であり、CPU近傍にデカップリング回路が組み込まれる。デカップリング回路には、CPUの所要電流の変化に素早く追従して電源電圧を安定化させる機能の他、CPUの動作に伴う不要な高周波電流をCPU近傍に閉じ込めて、他の回路へ悪影響を及ぼさない機能が求められる。すなわちデカップリング回路は理想的には回路を流れる電流のうちの直流成分だけを通過させるフィルターと考えられる。
デカップリング回路は、低周波領域から高周波領域に渡って低インピーダンスである必要がある。従来は、チョークコイルやセラミックコンデンサー、ポリマーコンデンサー等のいくつかの特性周波数の異なるコンデンサーを組み合わせることが必要であり、その設計や回路自身の複雑さが問題になってきた。
このような背景から特許文献3や非特許文献2には、伝送線路型のノイズフィルターが提案されている。この技術により大幅な部品点数の減少とデカップリング回路の簡略化が図れるものの、将来、さらなるCPUの高速化を考えた場合、対応周波数は充分とはいえない。また、実装によってデカップリング素子が本来持っている性能を充分発揮できないという問題もある。
また、プリント基板内部に強誘電体材料を設けデカップリングコンデンサーを構成したり(特許文献4参照)、プリント基板内部に磁性粉末を分散した樹脂層を設けることによりチョークコイルを構成したり(非特許文献3参照)、スタブを用いて電源ノイズを削減すること等が提案されているが、広い周波数範囲に渡ってデカップリング性能を発揮させることが難しいという問題がある。
ところで、カーボンナノチューブ(CNT)は、その特異な形状や特性ゆえに、様々な応用が考えられている。カーボンナノチューブの形状は炭素原子の六員環で構成されるグラフェンシートを巻いた1次元性を有する筒状であり、グラフェンシートが1枚の構造のカーボンナノチューブを単層ナノチューブ(SWNT)、多層の場合を多層ナノチューブ(MWNT)と呼ぶ。SWNTは直径約1nm、多層カーボンナノチューブは数十nm程度であり、従来のカーボンファイバーと呼ばれる物よりも極めて細い。
また、カーボンナノチューブは、マイクロメートルオーダーの長さを有し、直径とのアスペクト比が非常に大きいことが特徴的である。さらに、カーボンナノチューブは炭素原子の六員環の配列が螺旋構造をとることから、金属性と半導体性の両方の性質を有するという、極めて希有な特性を有する物質である。加えて、カーボンナノチューブの電気伝導性は極めて高く、電流密度に換算すると100MA/cm2以上の電流を流すことができる。
カーボンナノチューブは、電気的特性だけではなく、機械的性質についても優れた点を有する。すなわち、炭素原子のみで構成されているため、非常に軽量であるにもかかわらず、1TPaを越えるヤング率を有し、極めて強靱である。また、ケージ物質であるために弾力性・復元性にも富んでいる。このように、カーボンナノチューブは様々な優れた性質を有するため、工業材料として、極めて魅力的な物質である。
これまでに、カーボンナノチューブの優れた特性を利用した応用研究が数多く行われている。樹脂の強化や伝導性複合材料としてカーボンナノチューブを添加したり、走査プローブ顕微鏡の探針として利用されたりしている。また、微小電子源として、電界放出型電子素子やフラットディスプレィとしてカーボンナノチューブが利用され、さらに水素貯蔵への応用が進められている。
このように、カーボンナノチューブは、種々の応用が考えられるが、特に電子材料・電子デバイスとしての応用が注目を浴びている。既にダイオードやトランジスタなどの電子デバイスの試作が行われており、現在のシリコン半導体に代わるものとして期待されている。上記のようなカーボンナノチューブを使用したデバイスを実用化するためには、ナノメートルオーダーのハンドリング技術が必要となる。
しかしながら、カーボンナノチューブを実際に配置することは極めて困難が伴う。現在、カーボンナノチューブを配線する技術がいくつか試みられている。
1つ目は、走査型電子顕微鏡内において、マニピュレータを用いて1本または数本のカーボンナノチューブをピックアップし、所望の位置に配置する技術である。変形例として、プローブ顕微鏡を用いて、カーボンナノチューブを配置させる技術もある。しかし、この技術は多くの時間と労力を必要とし、基礎的研究には向いているが、実用的ではない。
2つ目は、電気泳動法を用いて、カーボンナノチューブを一定の方向に配向させる技術である。この方法は、一方向ならば配線できる可能性があるが、複数方向の配線を行うことは難しく、現実的ではない。
3つ目は、化学気相成長法(CVD法)を用いる技術である。CVD法は、原料として炭素を含むアセチレンガスやメタンガス等を用い、原料ガスの化学分解反応により、カーボンナノチューブを生成する方法である。
非特許文献5には、基板と水平方向にカーボンナノチューブを配線する方法が開示されている。すなわち、基板上にSiピラーを作製し、そのピラーの頂上部に触媒を載せ、メタンガスを流すことにより、ピラー間にカーボンナノチューブを橋渡しする技術である。この技術による方法では、確かに水平方向の配線を可能にはしたが、カーボンナノチューブ相互間が橋渡しされる確率は非常に低く、任意の位置に配線することは依然として困難であった。
以上のように、カーボンナノチューブを1本または数本の単位で配線する技術は、未だ開発途上の段階である。
一方、カーボンナノチューブを膜にして、配線やパターニングを行う方法が開発されている。例えば、これまでに、スクリーン印刷法やフォトリソグラフィー技術を用いて、カーボンナノチューブのパターン形成がされている。これらの技術は、1度に広い面積にパターン形成することに優れており、電界放出型ディスプレイ(FED)の電子源のパターニングとして用いられている。
しかし、これらの方法は、カーボンナノチューブを溶媒に単に分散させて塗布したり、さらに樹脂を混ぜて塗布したりしているため、機械的強度や電気的な導電性といった性能面で不十分であり、そのまま、電極や電気回路として使用することは困難である。
さらに、本技術をデカップリング素子に適用しようとした場合、得られるカーボンナノチューブの膜は高抵抗であり、低ESR(等価直列抵抗)を求められるデカップリング素子としては適さない。
特許文献1には、官能化されたカーボンナノチューブを用いて3次元構造のカーボンナノチューブを形成することが可能である旨開示されている。しかし、当該文献には、単にクロマトグラフィのフローセル電極として用いるべく、多孔性で通過物質の分離吸着のための官能基を結合させたカーボンナノチューブを金属メッシュ上に堆積させて多孔質化して利用するものや、アルミニウムやシリカのアルコキシド(当該アルコキシド自体は、絶縁物となる。)を架橋剤として用いてカーボンナノチューブ同士を結合させるものが開示されており、高周波ノイズ吸収体としての記載はなく、それを示唆する記載もない。
特許文献5には、磁性発現に関与する元素を担持したカーボンナノチューブを高電気抵抗の物質中に分散した電磁波吸収材料が開示されているが、カーボンナノチューブ同士の接触が充分ではなく高抵抗であることから、低ESRを求められるデカップリング素子としては適さない。
特許文献6には、カーボンナノチューブを回路基板の絶縁性樹脂基剤に混入し、低誘電率基板として利用することが開示されているが、伝送遅延の減少が目的であり、デカップリング素子としての記載はなく、それを示唆する記載もない。
特表2002−503204号公報 特開2002−234000号公報 特開2002−335107号公報 特開平7−022757号公報 特開2003−124011号公報 特開平11−263916号公報 イー・エス・スノー(E.S.Snow)、ジェー・ピー・ノヴァク(J.P.Novak)、ピー・エム・キャンベル(P.M.Campbell)、ディー・パーク(D.Park)著、「ランダム ネットワークス オブ カーボンナノチューブズ アズ アン エレクトロニック マテリアル(Random networks of carbon nanotubes as an electronic material)」、「アプライド フィジックス レターズ(APPLIED PHYSICS LETTERS)」(米国)、2003年、Vol.82,No.13,p.2145〜p.2147。 荒井智次著、「デザイン ウェーブ マガジン(Design Wave Magazine)」(日本)、2003年7月、p.96〜p.102。 吉田史郎、遠矢弘和著、「NEC技報」、1998年、Vol.51,No.6,p.19〜p.24。 名倉徹、池田誠、浅田邦博著、情報処理学会編、研究報告、2003年、Vol.103,No.476,p.217〜p.222。 キャッセル・エヌ・フランクリン(Cassell, N. Franklin)、ティー・トムブラー(T. Tombler)、イー・チャン(E. Chan)、ジェー・ハン(J. Han)、エイチ・ダイ(H. Dai)著、ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ( J. Am.Chem. Soc.)編、「ディレクテット グロース オブ フリースタンディング シングルウォールド カーボン ナノチューブ(Directed Growth of Free-Standing Single-Walled Carbon Nanotubes.)」、1999年、121,p.7975〜7976。
したがって、本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。詳しくは、本発明の目的は、カーボンナノチューブの特性を効果的に活用できるデカップリング性能に優れたデカップリング素子およびその製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、当該優れたデカップリング性能を備えたデカップリング素子を内蔵するプリント基板回路を提供することにある。
上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち、本発明のデカップリング素子は、基体と、該基体表面に支持され、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体からなる高周波ノイズ吸収体と、該高周波ノイズ吸収体にそれぞれ接続された入力電極および出力電極と、を備えることを特徴とする。
本発明のデカップリング素子は、高周波ノイズ吸収体に、複数のカーボンナノチューブが複数の架橋部位を介して網目構造の状態となったカーボンナノチューブ構造体を用いている。このため、前記高周波ノイズ吸収体には、微細なカーボンナノチューブにより形成された網目構造に起因する、複数種類の多角形形状と様々な大きさとを持つ電流経路が形成されており、かつこれらの電流経路が様々な静電容量とインダクタンスとを有するため、多様な周波数に対応した電流経路長を有する高周波ノイズ吸収体が自発的に形成された状態となっている。したがって、当該優れた特性を有する高周波ノイズ吸収体により、これを含む本発明のデカップリング素子は、極めて広帯域なものとなる。
本発明のデカップリング素子において、前記基体としては、板状であることが好ましい。また、前記基体における、少なくとも前記高周波ノイズ吸収体を支持する表面は、絶縁性であることが好ましい。
本発明のデカップリング素子においては、さらに、前記基体のいずれかの箇所に、接地電極が設けられてなることが好ましい。この場合、当該接地電極としては、前記基体の前記高周波ノイズ吸収体を支持する表面と異なる表面や、前記基体の内部に設けることができる。
本発明のデカップリング素子において、前記高周波ノイズ吸収体の表面には、絶縁性の保護層を有することとすることができる。この場合、当該保護層の上にさらに金属電極が設けられ、前記基体の前記高周波ノイズ吸収体を支持する表面と異なる表面に接地電極が設けられ、該接地電極が前記金属電極と電気的に接続されてなることが好ましい。
前記カーボンナノチューブ構造体は、官能基を有するカーボンナノチューブおよび前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液を用い、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤とを架橋反応させて架橋部位が形成されてなるものであることが好ましい。このとき、前記架橋剤としては、非自己重合性の架橋剤であることが好ましい。
前記カーボンナノチューブ構造体を、このように溶液硬化により形成すると、前記カーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位は、前記官能基の架橋反応後に残存する残基同士を、前記架橋剤の架橋反応後に残存する残基である連結基で連結した架橋構造となり、多様な長さ・形状のミクロの電流経路が構造体内部に形成され、極めて広い帯域に渡って低インピーダンスの高周波ノイズ吸収体を備えたデカップリング素子を得ることができる。
前記架橋剤の特性として、それら同士が重合反応をするような性質(自己重合性)を有すると、当該架橋剤自身が2つ以上連結した重合体を前記連結基が含む状態となってしまう場合があり、カーボンナノチューブ構造体中に占める実質的なカーボンナノチューブの密度が低くなるため、高周波ノイズ吸収体として、高周波ノイズの吸収効率が低下する傾向を示してしまう。
一方、前記架橋剤が非自己重合性であれば、カーボンナノチューブ相互の間隔を、使用した架橋剤の残基のサイズに制御することができるため、所望のカーボンナノチューブのネットワーク構造を高い再現性で得られるようになる。さらに架橋剤の残基のサイズを小さくすれば、電気的にも物理的にも極めて近接した状態に、カーボンナノチューブ相互の間隔を構成することができ、また、構造体中のカーボンナノチューブを密に構造化できる。
したがって、前記架橋剤が非自己重合性であれば、本発明における前記カーボンナノチューブ構造体を、カーボンナノチューブ自身が有する電気特性ないし物理的特性を極めて高い次元で発揮することができるものとすることができる。その結果、デカップリング素子の高周波ノイズ吸収体が、高密度で多様な長さ・形状のミクロの電流経路が構造体内部に形成され、広帯域・高吸収効率とすることができる。
なお、本発明において「自己重合性」とは、架橋剤同士が、水分等他の成分の存在の下、あるいは他の成分の存在なしに、相互に重合反応を生じ得る性質をいい、「非自己重合性」とは、そのような性質を有しないことを言う。
前記架橋剤として非自己重合性のものを選択すれば、前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位が、主として同一の架橋構造となる。また、前記連結基としては、炭化水素を骨格とするものが好ましく、その炭素数としては2〜10個とすることが好ましい。この炭素数を少なくすることで、架橋部位の長さが短くなり、カーボンナノチューブ相互の間隙をカーボンナノチューブ自体の長さと比較して十分に近接させることができ、実質的にカーボンナノチューブのみから構成される網目構造のカーボンナノチューブ構造体を得ることができる。このため、電磁シールドのシールド膜たる高周波ノイズ吸収体を、広い周波数に渡って低インピーダンスのものとすることができる。
前記官能基としては、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を選択することが好ましく、その場合、前記架橋剤として、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得るものを選択する。
また、好ましい前記架橋剤としては、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤を選択することが好ましく、その場合、前記官能基として、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得るものを選択する。
上記好ましい前記官能基として例示された群、および、上記好ましい前記架橋剤として例示された群より、それぞれ少なくとも1つの官能基および架橋剤を、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるように選択することが好ましい。
前記官能基としては、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を特に好適なものとして挙げることができる。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易であり、しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富むため、その後エステル化して官能基を−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)とすることは比較的容易である。この官能基は架橋反応しやすく、塗布膜形成に適している。
また、当該官能基に対応する前記架橋剤として、ポリオールを挙げることができる。ポリオールは、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)との反応により硬化し、容易に強固な架橋体を形成する。ポリオールの中でも、グリセリンやエチレングリコールは、上記官能基との反応性が良好であることは勿論、それ自体生分解性が高く、環境に対する負荷が小さい。
前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋する架橋部位は、前記官能基が−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)であり、前記架橋剤としてエチレングリコールを用いた場合、−COO(CH22OCO−となり、前記架橋剤としてグリセリンを用いた場合、OH基2つが架橋に寄与すれば−COOCH2CHOHCH2OCO−あるいは−COOCH2CH(OCO−)CH2OHとなり、OH基3つが架橋に寄与すれば−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−となる。架橋部位の化学構造は、上記4つからなる群より選ばれるいずれかの化学構造であっても構わない。
一方、本発明のデカップリング素子の製造方法は、基体と、該基体表面に支持され、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体からなる高周波ノイズ吸収体と、該高周波ノイズ吸収体にそれぞれ接続された入力電極および出力電極と、を備えることを特徴とするデカップリング素子を製造するための方法であって、前記高周波ノイズ吸収体を前記基体表面に形成する方法として、
官能基を有するカーボンナノチューブ、および、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液を、前記基体表面に塗布する塗布工程と、
塗布後の前記溶液中、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤とを架橋反応させて、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を形成する架橋工程と、
を含むことを特徴とする。
従来、カーボンナノチューブを寄せ集めて相互に接触させることで、カーボンナノチューブ間の相互作用の効果を狙った構造体は、樹脂などで封止するなどしなければカーボンナノチューブの集積物が飛散してしまいパターニングすることができなかった。また、樹脂で封止する際には樹脂の塗布により、パターニングをする以前にカーボンナノチューブが流動してしまうとともに、カーボンナノチューブ相互の接触部位の間に樹脂が流入するため接続が失われてしまい、結局デカップリング素子の高周波ノイズ吸収体として利用することができなかった。
また、予め樹脂溶液中にカーボンナノチューブを分散させた分散液を塗布した場合には、カーボンナノチューブの濃度をかなり高くしない限り、カーボンナノチューブ相互の接触による接続を達成することができず、これもパターニングする以前の問題であった。
本発明においては、まず基体の表面に、官能基を有するカーボンナノチューブ、および、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液(以下、単に「架橋塗布液」という場合がある。)を塗布する塗布工程で、基体の全面あるいはその表面の一部に、架橋塗布液による塗布膜を形成する。
そして、続く架橋工程で、この塗布後の塗布膜を硬化して、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を形成する。当該カーボンナノチューブ構造体を高周波ノイズ吸収体(シールド膜)として用いる。
上記2つの工程を経ることで、前記基体表面において、カーボンナノチューブ構造体の構造自体を安定化させる。
本発明のデカップリング素子の製造方法においては、前記架橋剤として、非自己重合性の架橋剤を用いることが好ましい。前記架橋剤として自己重合性の架橋剤を用い、架橋工程における架橋反応中あるいはそれ以前に、架橋剤同士が相互に重合反応を起こしてしまう場合があり、その場合には、架橋剤同士の結合が巨大化・長大化し、必然的にこれらに結合するカーボンナノチューブ相互の間隙自体が大きく離間してしまう。このとき、架橋剤同士の自己重合性による反応の程度を制御することは事実上困難であるため、カーボンナノチューブ相互間の架橋構造が、架橋剤同士の重合状態のばらつきに応じて、ばらついてしまう。
しかし、非自己重合性の架橋剤を用いれば、少なくとも架橋工程ないしそれ以前に架橋剤同士が相互に重合することがなく、カーボンナノチューブ相互の間の架橋部位には、前記官能基の架橋反応後に残存する残基同士の間に、架橋剤の1つの架橋反応による残基だけが連結基として介在することとなる。この結果、得られるカーボンナノチューブ構造体は、全体として特性が均一化され、この層を、後述するパターニング工程でパターニングした場合にも、パターニング後のカーボンナノチューブ構造体の特性ばらつきを大きく低減することができる。
また、前記架橋剤同士が架橋しなければ、複数種類の非自己重合性の架橋剤を混合して、カーボンナノチューブ間を複数種類の架橋剤で架橋させても、カーボンナノチューブ間の間隔を制御することができるので、同様のばらつき低減の効果を得ることができる。一方、段階的に異なる架橋剤を用いて架橋させる場合には、最初の架橋段階で非自己重合性の架橋剤を用いて架橋すればカーボンナノチューブの網目構造の骨格はカーボンナノチューブ間の距離が制御された状態で出来上がっているため、後の架橋工程で自己重合性の架橋剤もしくは最初の架橋剤(もしくはその残基)に架橋する架橋剤を用いてもよい。
本発明のデカップリング素子の製造方法においては、さらにパターニング工程を備えて、前記カーボンナノチューブ構造体をシールド膜に応じたパターンにパターニングすることが好ましい。この段階では既に上記架橋工程でカーボンナノチューブ構造体の構造自体が安定化しており、この状態でパターニングをするため、パターニング工程においてカーボンナノチューブが飛散してしまうといった不具合が生じる懸念が無く、前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングすることが可能となる。また、カーボンナノチューブ構造体の膜自体が構造化しているので、確実にカーボンナノチューブ相互間の接続が確保され、カーボンナノチューブの特性を利用した、デカップリング素子を製造することができるようになる。
前記パターニング工程としては、前記基体表面における前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ドライエッチングを行うことで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングする工程である態様。
前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングする操作としては、前記パターニング工程がさらに、前記基体表面における前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上に、レジスト層(好ましくは、樹脂層)を設けるレジスト層形成工程と、前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に、ドライエッチングを行う(好ましくは、酸素分子のラジカルを照射。当該酸素分子のラジカルは、酸素分子に紫外線を照射することにより、酸素ラジカルを発生させ、これを利用することができる。)ことで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体を除去する除去工程と、の2つの工程に分かれている態様が挙げられる。この場合、除去工程に引き続いてさらに、レジスト層形成工程で設けられた前記レジスト層を剥離するレジスト層剥離工程を含むことで、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体を表出させることができる。
また、この態様において、その他、前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングする操作としては、前記基体表面における前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ガス分子のイオンをイオンビームにより選択的に照射することで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングする態様が挙げられる。
なお、カーボンナノチューブ構造体を前記高周波ノイズ吸収体に応じた形状にする方法としては、カーボンナノチューブ構造体を直接目的の形状に設ける手法として、前記塗布工程において、前記基体表面における前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンの領域に、スクリーン印刷法を用いて前記官能基を有するカーボンナノチューブ、および、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液を塗布し、その後架橋工程の操作を施す手法が挙げられる。
当該手法は製造コストを下げることができる点で好ましい。
本発明のデカップリング素子の製造方法において、前記官能基としては、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を選択することが好ましく、その場合、前記架橋剤として、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得るものを選択する。
また、好ましい前記架橋剤としては、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤を選択することが好ましく、その場合、前記官能基として、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得るものを選択する。
上記好ましい前記官能基として例示された群、および、上記好ましい前記架橋剤として例示された群より、それぞれ少なくとも1つの官能基および架橋剤を、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるように選択することが好ましい。
前記官能基としては、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を特に好適なものとして挙げることができる。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易であり、しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富むため、その後エステル化して官能基を−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)とすることは比較的容易である。この官能基は架橋反応しやすく、塗布膜形成に適している。
また、当該官能基に対応する前記架橋剤として、ポリオールを挙げることができる。ポリオールは、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)との反応により硬化し、容易に強固な架橋体を形成する。ポリオールの中でも、グリセリンやエチレングリコールは、上記官能基との反応性が良好であることは勿論、それ自体生分解性が高く、環境に対する負荷が小さい。
本発明のデカップリング素子の製造方法においては、前記塗布工程で使用する前記溶液に、さらに溶剤を含ませることができ、前記架橋剤の種類によっては、当該架橋剤が、その溶剤を兼ねることも可能である。
一方、本発明のプリント基板回路は、プリント基板上のLSI電源入力部に、上記本発明のデカップリング素子を内蔵することを特徴とする
本発明によれば、簡単な構成で吸収効率に優れた広帯域幅の高周波ノイズ吸収体を備えるデカップリング素子、およびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明を、デカップリング素子と、その製造方法とに分けて詳細に説明する。
[デカップリング素子]
本発明のデカップリング素子は、基体と、該基体表面に支持され、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体からなる高周波ノイズ吸収体と、該高周波ノイズ吸収体にそれぞれ接続された入力電極および出力電極と、を備えることを特徴とするものである。
以下、本発明のデカップリング素子について、3つの実施形態を挙げて、説明する。
図1は、本発明の例示的一態様である第1の実施形態のデカップリング素子を示す平面図である。また、図2は、図1におけるA−A断面図である。
図1および図2において、1は基体を表し、その表面に長方形の高周波ノイズ吸収体2が形成され、高周波ノイズ吸収体2に接する状態で入力端子(入力電極)3と出力端子(出力電極)4とが形成され、さらに基体1の裏面側に接地電極となる金属面5が配されている。
本実施形態のデカップリング素子においては、高周波ノイズ吸収体2がカーボンナノチューブ構造体により構成されている。本実施形態のデカップリング素子(高周波フィルター)は、高周波フィルター膜としての高周波ノイズ吸収体2が、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体で構成されている。そのため、網目構造に起因する複数の多角形形状と様々な大きさを持つ電流経路が生じており、かつ、これらの電流経路が様々な静電容量とインダクタンスを有する。
したがって、高周波ノイズ吸収体2は、周波数帯域の広い、かつ吸収効率が良好なものとなる。
本実施形態では、図1に示されるように、高周波ノイズ吸収体が長方形の例を示したが、電気信号が高周波ノイズ吸収体中を通過できればよく、本発明において、高周波ノイズ吸収体の形状は長方形に限定されるものではない。
次に、図3は、本発明の例示的一態様である第2の実施形態のデカップリング素子を示す平面図である。また、図4は、図3におけるB−B断面図である。
本実施形態のデカップリング素子は、第1の実施形態のデカップリング素子における高周波ノイズ吸収体2とは形状の異なる高周波ノイズ吸収体2’を用いていることを除いては、第1の実施形態と同様の構成である。したがって、本実施形態において第1の実施形態と同一の機能を有する部材には、図3および図4において図1および図2と同一の符号を付する。
高周波ノイズ吸収体2の吸収効率は、カーボンナノチューブ構造体上を透過する電気信号の道のりが長くなるほど良好となる。このため、図3に示される如く、電気信号の蛇行が大きくなるようにカーボンナノチューブ構造体をパターニングした高周波ノイズ吸収体2'を形成することにより、さらに良好な高周波ノイズ吸収体となる。なお、図3における高周波ノイズ吸収体2'の形状は、電気信号の道のりを長くするためのパターンの一例であり、このパターンに限定されるものではない。
さらに、図5は、本発明の例示的一態様である第3の実施形態のデカップリング素子を示す平面図である。また、図6は、図5におけるC−C断面図である。
本実施形態のデカップリング素子は、第1の実施形態のデカップリング素子に他の構成が付加されているのみであり、当該付加された構成を除けば、第1の実施形態と同様の構成である。したがって、本実施形態において第1の実施形態と同一の機能を有する部材には、図5および図6において図1および図2と同一の符号を付する。
図5において、6は絶縁性の表面保護層(保護層)であり、高周波ノイズ吸収体2の全体、および入力端子(入力電極)3と出力端子(出力電極)4の一部を覆うように形成されている。さらにその上には、金属電極7が形成され、該金属電極7はデカップリング素子の側面を通じて接地電極となる金属面5と電気的に接続されている(不図示)。このようにデカップリング素子表面を金属電極7で覆うことにより、外部からの不要な電波を遮断することができ、デカップリング素子の動作を安定化できる。
なお、カーボンナノチューブ構造体に対してパターニングを要する場合、基体の形状に応じて、直接基体表面でカーボンナノチューブ構造体をパターニングすることができる場合と、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体を担持する基体ごと第2の基体に貼付けて利用する場合、あるいは、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体のみを転写する場合等がある。
基体1の材質としては、特に限定されるものではないが、高周波ノイズ吸収体2を担持するには、ガラスエポキシ樹脂、ガラス、シリコン、アルミナ、酸化ジルコニウム、サファイア、ポリカーボネート、ポリフルオレン等を利用することができる。
本発明のデカップリング素子は、可撓性ないし柔軟性を有する基板を基体とした場合にも、後述する通り容易に製造することができ、しかも表面に形成された高周波ノイズ吸収体2,2'としてのカーボンナノチューブ構造体が架橋構造を有しているため、当該基板を曲げ変形しても、表面のカーボンナノチューブ構造体が破断する危険性が少なく、変形によるデバイスの性能劣化が低減される。
特に、プリント基板やフィルム基板上にカーボンナノチューブ構造体を予め形成し、デカップリング素子を内蔵するプリント基板回路として用いる場合には、折り曲げによる断線の発生が低減され好ましい。可撓性ないし柔軟性を有する基板の材質の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド等の各種樹脂や、薄膜化した酸化ジルコニウム等のセラミック材料を挙げることができる。
また、予めデカップリング素子を内蔵するプリント基板回路とすることにより、実装時に生じるデカップリング素子の高周波領域の帯域低下等の問題を防ぐことができるため、本発明のデカップリング素子の性能をフルに生かすことができ好ましい。
入力端子3、出力端子4、接地電極となる金属面5、および、デカップリング素子表面の金属電極7としては、特に限定されるものではないが、高周波ノイズ吸収体の高周波電流の吸収により発生したジュール熱を外部に放出する役割も有しており、好ましくはそれぞれ独立に、銅、アルミニウム等の金属板、金属ネットを複合加工したものを利用することができる。また軽量性、放熱性、熱伝導の観点からアルミホイールや、有機繊維または無機繊維を用いた高熱伝導樹脂シートを用いることもできる。有機繊維または無機繊維を用いた高熱伝導樹脂シートは、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等の特殊な繊維の繊維方向を制御して高濃度で整列させ、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の熱硬化樹脂で硬化させることにより得られる。
<カーボンナノチューブ構造体>
本発明において「カーボンナノチューブ構造体」とは、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成する構造体であって、主として層状に形成される。相互に架橋した網目構造を構成するようにカーボンナノチューブの構造体を形成することができれば、当該カーボンナノチューブ構造体は如何なる方法で形成されたものであっても構わないが、後述する本発明のデカップリング素子の製造方法により製造されたものであることが、容易に製造可能であるとともに、低コストでしかも高性能な高周波ノイズ吸収体を得ることができ、しかも特性の均一化や制御が容易である。
本発明のデカップリング素子の製造方法により製造された本発明のデカップリング素子において、高周波ノイズ吸収体として用いられる前記カーボンナノチューブ構造体は、官能基を有するカーボンナノチューブおよび前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液(架橋塗布液)を硬化させることにより、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤とを架橋反応させて架橋部位が形成されてなるものである。
以下、当該製造方法による例を挙げて、本発明のデカップリング素子における前記カーボンナノチューブ構造体について説明する。
(カーボンナノチューブ)
本発明において、主要な構成要素であるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブでも、二層以上の多層カーボンナノチューブでも構わない。いずれのカーボンナノチューブを用いるか、あるいは双方を混合するかは、高周波フィルターの用途により、あるいはコストを考慮して、適宜、選択すればよい。
また、単層カーボンナノチューブの変種であるカーボンナノホーン(一方の端部から他方の端部まで連続的に拡径しているホーン型のもの)、カーボンナノコイル(全体としてスパイラル状をしているコイル型のもの)、カーボンナノビーズ(中心にチューブを有し、これがアモルファスカーボン等からなる球状のビーズを貫通した形状のもの)、カップスタック型ナノチューブ、カーボンナノホーンやアモルファスカーボンで外周を覆われたカーボンナノチューブ等、厳密にチューブ形状をしていないものも、本発明においてカーボンナノチューブとして用いることができる。
さらに、カーボンナノチューブ中に金属等が内包されている金属内包ナノチューブ、フラーレンまたは金属内包フラーレンがカーボンナノチューブ中に内包されるピーポッドナノチューブ等、何らかの物質をカーボンナノチューブ中に内包したカーボンナノチューブも、本発明においてカーボンナノチューブとして用いることができる。
以上のように、本発明においては、一般的なカーボンナノチューブのほか、その変種や、種々の修飾が為されたカーボンナノチューブ等、いずれの形態のカーボンナノチューブでも、その反応性から見て問題なく使用することができる。したがって、本発明における「カーボンナノチューブ」には、これらのものが全て、その概念に含まれる。
これらカーボンナノチューブの合成は、従来から公知のアーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法のいずれの方法によっても行うことができ、本発明においては制限されない。これらのうち、高純度なカーボンナノチューブが合成できるとの観点からは、磁場中でのアーク放電法が好ましい。
用いられるカーボンナノチューブの直径としては、0.3nm以上100nm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの直径が、当該範囲を超えると、合成が困難であり、コストの点で好ましくない。カーボンナノチューブの直径のより好ましい上限としては、30nm以下である。
一方、一般的にカーボンナノチューブの直径の下限としては、その構造から見て、0.3nm程度であるが、あまりに細すぎると合成時の収率が低くなる点で好ましくない場合もあるため、1nm以上とすることがより好ましく、10nm以上とすることがさらに好ましい。
用いられるカーボンナノチューブの長さとしては、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの長さが、当該範囲を超えると、合成が困難、もしくは、合成に特殊な方法が必要となりコストの点で好ましくなく、当該範囲未満であると、一本のカーボンナノチューブにおける架橋結合点数が少なくなる点で好ましくない。カーボンナノチューブの長さの上限としては、10μm以下であることがより好ましく、下限としては、1μm以上であることがより好ましい。
前記架橋塗布液におけるカーボンナノチューブの含有量としては、カーボンナノチューブの長さ・太さ、単層か多層か、有する官能基の種類・量、架橋剤の種類・量、溶剤やその他添加剤の有無・種類・量、等により一概には言えず、硬化後良好な塗布膜が形成される程度に高濃度であることが望まれるが、塗布適性が低下するので、あまり高くし過ぎないことが望ましい。
また、塗布工程における「官能基を有するカーボンナノチューブ、および、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液」(以下、当該溶液を「架橋塗布液」という場合がある。)中の、具体的なカーボンナノチューブの割合としては、既述の如く一概には言えないが、官能基の質量は含めないで、架橋塗布液全量に対し0.01〜10g/l程度の範囲から選択され、0.1〜5g/l程度の範囲が好ましく、0.5〜1.5g/l程度の範囲がより好ましい。
使用しようとするカーボンナノチューブの純度が高く無い場合には、架橋塗布液の調製前に、予め精製して、純度を高めておくことが望ましい。本発明においてこの純度は、高ければ高いほど好ましいが、具体的には90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。純度が低いと、不純物であるアモルファスカーボンやタール等の炭素生成物に架橋剤が架橋して、カーボンナノチューブ間の架橋距離が変動してしまい、所望の特性を得られない場合があるためである。カーボンナノチューブの精製方法に特に制限はなく、従来公知の方法をいずれも採用することができる。
(官能基)
本発明において、カーボンナノチューブが有する官能基としては、カーボンナノチューブに化学的に付加させることができ、かつ、何らかの架橋剤により架橋反応を起こし得るものであれば、特に制限されず、如何なる官能基であっても選択することができる。具体的な官能基としては、−COOR、−COX、−MgX、−X(以上、Xはハロゲン)、−OR、−NR12、−NCO、−NCS、−COOH、−OH、−NH2、−SH、−SO3H、−R'CHOH、−CHO、−CN、−COSH、−SR、−SiR'3(以上、R、R1、R2およびR'は、それぞれ独立に、置換または未置換の炭化水素基)等の基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を選択することが好ましく、その場合、前記架橋剤として、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得るものを選択する。
特に、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)は、カルボキシル基がカーボンナノチューブへの導入が比較的容易で、それにより得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)をエステル化させることで容易に官能基として導入することができ、しかも、架橋剤による反応性も良好であることから、特に好ましい。
官能基−COORにおけるRは、置換または未置換の炭化水素基であり特に制限は無いが、反応性、溶解度、粘度、塗料の溶剤としての使いやすさの観点から、炭素数が1〜10の範囲のアルキル基であることが好ましく、1〜5の範囲のアルキル基であることがより好ましく、特にメチル基またはエチル基が好ましい。
官能基の導入量としては、カーボンナノチューブの長さ・太さ、単層か多層か、官能基の種類、デカップリング素子の用途等により異なり、一概には言えないが、1本のカーボンナノチューブに2以上の官能基が付加する程度の量とすることが、得られる架橋体の強度、すなわち塗布膜の強度の観点から好ましい。
なお、カーボンナノチューブへの官能基の導入方法については、後述の[デカップリング素子の製造方法]の項において説明する。
(架橋剤)
前記架橋塗布液において必須成分である架橋剤は、カーボンナノチューブの有する前記官能基と架橋反応を起こすものであればいずれも用いることができる。換言すれば、前記官能基の種類によって、選択し得る架橋剤の種類は、ある程度限定されてくる。また、これらの組み合わせにより、その架橋反応による硬化条件(加熱、紫外線照射、可視光照射、自然硬化等)も、自ずと定まってくる。
具体的に好ましい前記架橋剤としては、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤を選択することが好ましく、その場合、前記官能基として、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得るものを選択する。
特に、既述の好ましい前記官能基として例示された群、および、上記好ましい前記架橋剤として例示された群より、それぞれ少なくとも1つの官能基および架橋剤を、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるように選択することが好ましい。下記表1に、カーボンナノチューブの有する官能基と、それに対応する架橋反応可能な架橋剤との組み合わせを、その硬化条件とともに列挙する。
Figure 0004442335
これらの組み合わせの中でも、官能基側の反応性が良好な−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)と、容易に強固な架橋体を形成するポリオールとの組み合わせが好適なものとして挙げられる。なお、本発明で言う「ポリオール」とは、OH基を2以上有する有機化合物の総称であり、これらの中でも炭素数2〜10(より好ましくは2〜5)、OH基数2〜22(より好ましくは2〜5)のものが、架橋性や過剰分投入した時の溶剤適性、生分解性による反応後の廃液の処理性(環境適性)、ポリオール合成の収率等の観点から好ましい。特に上記炭素数は、得られる塗布膜におけるカーボンナノチューブ相互間を狭めて実質的な接触状態にする(近づける)ことができる点で、上記範囲内で少ない方が好ましい。具体的には、特にグリセリンやエチレングリコールが好ましく、これらの内の一方もしくは双方を架橋剤として用いることが好ましい。
別の視点から見ると、前記架橋剤としては、非自己重合性の架橋剤であることが好ましい。上記ポリオールの例として挙げたグリセリンやエチレングリコールは勿論、非自己重合性の架橋剤であり、より一般的に示せば、自身の中に相互に重合反応を生じ得るような官能基の組を有していないことが、非自己重合性の架橋剤の条件となる。逆に言えば、自己重合性の架橋剤とは、自身の中に相互に重合反応を生じ得るような官能基の組を有しているもの(例えば、アルコキシド)が挙げられる。
前記架橋塗布液における架橋剤の含有量としては、架橋剤の種類(自己重合性か非自己重合性かの別を含む)は勿論、カーボンナノチューブの長さ・太さ、単層か多層か、有する官能基の種類・量、溶剤やその他添加剤の有無・種類・量、等により一概には言えない。特に、グリセリンやエチレングリコールなどは、それ自身粘度があまり高くなく、溶剤の特性を兼ねさせることが可能であるため、過剰に添加することも可能である。
(その他の添加剤)
前記架橋塗布液においては、溶剤、粘度調整剤、分散剤、架橋促進剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
溶剤は、前記架橋剤のみでは塗布適性が十分で無い場合に添加する。使用可能な溶剤としては、特に制限は無く、用いる架橋剤の種類に応じて選択すればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等の有機溶剤や水、酸水溶液、アルカリ水溶液等が挙げられる。かかる溶剤の添加量としては、塗布適性を考慮して適宜設定すればよいが、特に制限は無い。
粘度調整剤も、前記架橋剤のみでは塗布適性が十分で無い場合に添加する。使用可能な粘度調整剤としては、特に制限は無く、用いる架橋剤の種類に応じて選択すればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、THF等が挙げられる。
これら粘度調整剤の中には、その添加量によっては溶剤としての機能を有するものがあるが、両者を明確に区別することに意義は無い。かかる粘度調整剤の添加量としては、塗布適性を考慮して適宜設定すればよいが、特に制限は無い。
分散剤は、架橋塗布液中でのカーボンナノチューブないし架橋剤の分散安定性を保持するために添加するものであり、従来公知の各種界面活性剤、水溶性有機溶剤、水、酸水溶液やアルカリ水溶液等が使用できる。ただし、前記架橋塗布液の成分は、それ自体分散安定性が高いため、分散剤は必ずしも必要ではない。また、形成後の塗布膜の用途によっては、塗布膜に分散剤等の不純物が含まれないことが望まれる場合もあり、その場合には勿論、分散剤は、添加しないか、極力少ない量のみしか添加しない。
(架橋塗布液の調製方法)
次に、架橋塗布液の調製方法について説明する。
前記架橋塗布液は、官能基を有するカーボンナノチューブに、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を混合することで調製される(混合工程)。当該混合工程に先立ち、カーボンナノチューブに官能基を導入する付加工程を含んでもよい。
官能基を有するカーボンナノチューブを出発原料とすれば、混合工程の操作のみを行えばよいし、通常のカーボンナノチューブそのものを出発原料とすれば、付加工程から操作を行えばよい。
前記付加工程は、カーボンナノチューブに所望の官能基を導入する工程である。官能基の種類によって導入方法が異なり、一概には言えない。直接的に所望の官能基を付加させてもよいが、一旦、付加が容易な官能基を導入した上で、その官能基ないしその一部を置換したり、その官能基に他の官能基を付加させたり等の操作を行い、目的の官能基としても構わない。
また、カーボンナノチューブにメカノケミカルな力を与えて、カーボンナノチューブ表面のグラフェンシートをごく一部破壊ないし変性させて、そこに各種官能基を導入する方法もある。
また、製造時点から表面に欠陥を多く有する、カップスタック型のカーボンナノチューブや気相成長法により生成されるカーボンナノチューブを用いると、官能基を比較的容易に導入できる。しかし、グラフェンシート構造が完全である方が、カーボンナノチューブの特性を有効に得られるとともに、特性もコントロールしやすいため、マルチウォールカーボンナノチューブを用いて、最外層にシールド膜として適度な欠陥を形成して官能基を結合し架橋させる一方で、構造欠陥の少ない内層をカーボンナノチューブの特性を発揮させる層として利用することが特に好ましい。
付加工程の操作としては、特に制限は無く、公知のあらゆる方法を用いて構わない。その他、特許文献1に各種方法が記載されており、目的に応じて、本発明においても利用することができる。
前記官能基の中でも、特に好適な−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を導入する方法について説明する。カーボンナノチューブに−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を導入するには、一旦、カーボンナノチューブにカルボキシル基を付加し(i)、さらにこれをエステル化(ii)すればよい。
(i)カルボキシル基の付加
カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入するには、酸化作用を有する酸とともに還流すればよい。この操作は比較的容易であり、しかも反応性に富むカルボキシル基を付加することができるため、好ましい。当該操作について、簡単に説明する。
酸化作用を有する酸としては、濃硝酸、過酸化水素水、硫酸と硝酸の混合液、王水等が挙げられる。特に濃硝酸を用いる場合には、その濃度としては、5質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。
還流は、常法にて行えばよいが、その温度としては、使用する酸の沸点付近が好ましい。例えば、濃硝酸では120〜130℃の範囲が好ましい。また、還流の時間としては、30分〜20時間の範囲が好ましく、1時間〜8時間の範囲がより好ましい。
還流の後の反応液には、カルボキシル基が付加したカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブカルボン酸)が生成しており、室温まで冷却し、必要に応じて分離操作ないし洗浄を行うことで、目的のカーボンナノチューブカルボン酸が得られる。
(ii)エステル化
得られたカーボンナノチューブカルボン酸に、アルコールを添加し脱水してエステル化することで、目的の官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を導入することができる。
前記エステル化に用いるアルコールは、上記官能基の式中におけるRに応じて決まる。すなわち、RがCH3であればメタノールであるし、RがC25であればエタノールである。
一般にエステル化には触媒が用いられるが、本発明においても従来公知の触媒、例えば、硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸等を用いることができる。本発明では、副反応を起こさないという観点から触媒として硫酸を用いることが好ましい。
前記エステル化は、カーボンナノチューブカルボン酸に、アルコールと触媒とを添加し、適当な温度で適当な時間還流すればよい。このときの温度条件および時間条件は、触媒の種類、アルコールの種類等により異なり一概には言えないが、還流温度としては、使用するアルコールの沸点付近が好ましい。例えば、メタノールでは60〜70℃の範囲が好ましい。また、還流の時間としては、1〜20時間の範囲が好ましく、4〜6時間の範囲がより好ましい。
エステル化の後の反応液から反応物を分離し、必要に応じて洗浄することで、官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)が付加したカーボンナノチューブを得ることができる。
前記混合工程は、官能基を有するカーボンナノチューブに、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を混合し、架橋塗布液を調製する工程である。混合工程においては、官能基を有するカーボンナノチューブおよび架橋剤のほか、既述の[デカップリング素子]の項で説明したその他の成分も混合する。そして、好ましくは、塗布適性を考慮して溶剤や粘度調整剤の添加量を調整することで、塗布直前の架橋塗布液を調製する。
混合に際しては、単にスパチュラで攪拌したり、攪拌羽式の攪拌機、マグネチックスターラーあるいは攪拌ポンプで攪拌するのみでも構わないが、より均一にカーボンナノチューブを分散させて、保存安定性を高めたり、カーボンナノチューブの架橋による網目構造を全体にくまなく張り巡らせるには、超音波分散機やホモジナイザーなどで強力に分散させても構わない。ただし、ホモジナイザーなどのように、攪拌のせん断力の強い攪拌装置を用いる場合、含まれるカーボンナノチューブを切断してしまったり、傷付けてしまったりする虞があるので、極短い時間行えばよい。
以上説明した架橋塗布液を、前記基体の表面に対して塗布し、硬化することにより、カーボンナノチューブ構造体が形成される。塗布方法や硬化方法は、後述の[デカップリング素子の製造方法]の項で詳述する。
本発明におけるカーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブがネットワーク化された状態となっている。詳しくは、該カーボンナノチューブ構造体は、マトリックス状に硬化したものとなり、カーボンナノチューブ同士が架橋部分を介して接続しており、電子やホールの高い伝送特性といったカーボンナノチューブ自身が有する特徴を存分に発揮することができる。すなわち、当該カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブ相互が緊密に接続しており、しかも他の結着剤等を含まないことから、実質的にカーボンナノチューブのみからなるため、カーボンナノチューブが有する本来の特性が最大限に生かされる。
本発明におけるカーボンナノチューブ構造体の厚みとしては、用途に応じて、極薄いものから厚めのものまで、幅広く選択することができる。使用する前記架橋塗布液中のカーボンナノチューブの含有量を下げ(単純には、薄めることにより粘度を下げ)、これを薄膜状に塗布すれば極薄い塗布膜となり、同様にカーボンナノチューブの含有量を上げれば厚めの塗布膜となる。さらに、塗布を繰返せば、より一層厚膜の塗布膜を得ることもできる。極薄い塗布膜としては、10nm程度の厚みから十分に可能であり、重ね塗りにより上限無く厚い塗布膜を形成することが可能である。一回の塗布で可能な厚膜としては、5μm程度である。
前記カーボンナノチューブ構造体において、前記カーボンナノチューブ同士が架橋する部位、すなわち、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤との架橋反応による架橋部位は、前記官能基の架橋反応後に残存する残基同士を、前記架橋剤の架橋反応後に残存する残基である連結基で連結した架橋構造となっている。
既述の如く、前記架橋塗布液においては、その構成要素である架橋剤が非自己重合性であることが好ましい。前記架橋剤が非自己重合性であれば、最終的に形成されるカーボンナノチューブ構造体における前記連結基については、前記架橋剤1つのみの残基により構成されることになり、架橋されるカーボンナノチューブ相互の間隔を、使用した架橋剤の残基のサイズに制御することができるため、所望のカーボンナノチューブのネットワーク構造を高い再現性で得られるようになる。また、カーボンナノチューブ間に架橋剤が多重に介在しないので、カーボンナノチューブ構造体中のカーボンナノチューブの実質的な密度を高めることができる。さらに架橋剤の残基のサイズを小さくすれば、電気的にも物理的にも極めて近接した状態(カーボンナノチューブ相互が、実質的に直接接触した状態)に、カーボンナノチューブ相互の間隔を構成することができる。
なお、カーボンナノチューブにおける官能基に単一のものを、架橋剤に単一の非自己重合性のものを、それぞれ選択した架橋塗布液により、カーボンナノチューブ構造体を形成した場合、当該層における前記架橋部位は、同一の架橋構造となる(例示1)。また、カーボンナノチューブにおける官能基に複数種のものを、および/または、架橋剤に複数種の非自己重合性の架橋剤を、それぞれ選択した架橋塗布液により、カーボンナノチューブ構造体を形成した場合であっても、当該層における前記架橋部位は、主として用いた前記官能基および非自己重合性の架橋剤の組み合わせによる架橋構造が、主体的となる(例示2)。
これに対して、カーボンナノチューブにおける官能基や架橋剤が単一であるか複数種であるかを問わず、架橋剤に自己重合性のものを選択した架橋塗布液により、カーボンナノチューブ構造体を形成した場合、当該層におけるカーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位は、架橋剤同士の連結(重合)個数が異なる数多くの連結基が混在した状態となり、特定の架橋構造が主体的とはなり得ない。
つまり、前記架橋剤として非自己重合性のものを選択すれば、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位が、架橋剤1つのみの残基で官能基と結合するため、主として同一の架橋構造となる。なお、ここで言う「主として同一」とは、上記(例示1)の如く、架橋部位の全てが同一の架橋構造となる場合は勿論のこと、上記(例示2)の如く、架橋部位全体に対して、主として用いた前記官能基および非自己重合性の架橋剤の組み合わせによる架橋構造が、主体的となる場合も含む概念とする。
「主として同一」と言った場合に、全架橋部位における「同一である架橋部位の割合」としては、例えば架橋部位において、カーボンナノチューブのネットワーク形成とは目的を異にする機能性の官能基や架橋構造を付与する場合も想定されることから、一律に下限値を規定し得るわけではない。ただし、強固なネットワークでカーボンナノチューブ特有の高い電気的ないし物理的特性を実現するためには、全架橋部位における「同一である架橋部位の割合」としては、個数基準で50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、全て同一であることが最も好ましい。これらの個数割合は、赤外線スペクトルで架橋構造に対応した吸収スペクトルの強度比を計測する方法等により求めることができる。
このように、カーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位が、主として同一の架橋構造のカーボンナノチューブ構造体であれば、カーボンナノチューブの均一なネットワークを所望の状態に形成することができ、電気的ないし物理的特性を、均質で良好、さらには期待した特性もしくは高い再現性をもって構成することができる。
また、前記連結基としては、炭化水素を骨格とするものが好ましい。ここで言う「炭化水素を骨格」とは、架橋されるカーボンナノチューブの官能基の架橋反応後に残存する残基同士を連結するのに資する、連結基の主鎖の部分が、炭化水素からなるものであることを言い、この部分の水素が他の置換基に置換された場合の側鎖の部分は考慮されない。勿論、連結基全体が炭化水素からなることが、より好ましい。
前記炭化水素の炭素数としては2〜10個とすることが好ましく、2〜5個とすることがより好ましく、2〜3個とすることがさらに好ましい。なお、前記連結基としては、2価以上であれば特に制限は無い。
カーボンナノチューブの有する官能基と架橋剤との好ましい組み合わせとして既に例示した、前記官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)とエチレングリコールとの架橋反応では、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋する架橋部位が−COO(CH22OCO−となる。
また、前記官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)とグリセリンとの架橋反応では、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋する架橋部位が、OH基2つが架橋に寄与すれば−COOCH2CHOHCH2OCO−あるいは−COOCH2CH(OCO−)CH2OHとなり、OH基3つが架橋に寄与すれば−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−となる。
以上説明したように、本発明のデカップリング素子は、その高周波ノイズ吸収体を構成するカーボンナノチューブ構造体が、複数のカーボンナノチューブが複数の架橋部位を介して網目構造の状態となった状態で形成されているので、単なるカーボンナノチューブの分散膜のように、カーボンナノチューブ同士の接触状態並びに配置状態が不安定になることがなく、電子やホールの高い伝送特性といった電気的特性や、熱伝導、強靭性といった物理的特性、その他光吸収特性等カーボンナノチューブに特有の性質を安定して発揮することができる。また、カーボンナノチューブ構造体のパターンの自由度も高いので、高周波ノイズ吸収体として多様な形状とすることができる。
本発明のデカップリング素子は、高周波ノイズ吸収体として用いられる前記カーボンナノチューブ構造体以外の他の層が形成されていてもよい。
例えば、前記基体表面と前記カーボンナノチューブ構造体との間に、両者の接着性を向上させるための接着層を設けることは、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体の接着強度を高めることができ、好ましい。接着層の形成方法やその他詳細は、[デカップリング素子の製造方法]の項にて説明することとする。
また、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体の上層として、保護層やその他の各種機能層を設けることもできる。前記カーボンナノチューブ構造体の上層として、保護層(好ましくは絶縁性の保護層)を設けることにより、架橋したカーボンナノチューブのネットワークであるカーボンナノチューブ構造体をより強固に基体表面に保持し、外力から保護することができる。
この保護層には、[デカップリング素子の製造方法]の項にて説明するレジスト層を、そのまま除去せずに残して、利用することもできる。勿論、前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターン以外の領域も含めて全面をカバーする保護層を新たに設けることも有効である。かかる保護層を構成する材料としては、従来公知の各種樹脂材料や無機材料を問題なく、目的に応じて用いることができる。
また、既述の通り、前記基体を可撓性ないし柔軟性を有する基板とすることもできる。前記基体を可撓性ないし柔軟性を有する基板とすることで、デカップリン素子全体としてのフレキシビリティーが向上し、多様な配置や形状に適応して、デカップリング回路がプリント基板上に占める面積を減少させつつ、デカップリング素子として広い帯域と高い吸収効率を発揮させることが可能となる。
以上説明した本発明のデカップリング素子の具体的な形状等は、次の[デカップリング素子の製造方法]の項や実施例の項で明らかにする。勿論、後述する構成はあくまでも例示であり、本発明のデカップリング素子の具体的な態様は、これらに限定されるものではない。
[デカップリング素子の製造方法]
本発明のデカップリング素子の製造方法は、上記本発明のデカップリング素子を製造するのに適した方法である。具体的には、基体と、該基体表面に支持され、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体からなる高周波ノイズ吸収体と、該高周波ノイズ吸収体にそれぞれ接続された入力電極および出力電極と、を備えることを特徴とするデカップリング素子を製造するための方法であって、前記高周波ノイズ吸収体を前記基体表面に形成する方法として、
(A)官能基を有するカーボンナノチューブ、および、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液(架橋塗布液)を、基体の表面に塗布する塗布工程と、(B)塗布後の前記溶液を硬化して、高周波ノイズ吸収体として用いられ、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を形成する架橋工程と、
を含む。さらに、
(C)前記架橋工程に引き続いてさらに行われる、前記カーボンナノチューブ構造体を高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングするパターニング工程等、他の工程を含めてもよい。
以下、これら各工程に分けて、本発明のデカップリング素子の製造方法の詳細について図7を用いて説明する。
ここで図7は、本発明のデカップリング素子の製造方法の一例(後述する(C−A−2))を説明するための、製造工程中の基体表面の模式断面図である。図中、12は基板状の基体、14はカーボンナノチューブ構造体(高周波ノイズ吸収体)、16はレジスト層である。
(A)塗布工程
本発明において、「塗布工程」とは、前記基体の表面に、官能基を有するカーボンナノチューブ、および、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液(架橋塗布液)を塗布する工程である。なお、塗布工程で前記架橋塗布液を塗布すべき領域は、前記所望の領域を全て含んでさえいればよく、前記基体の表面の全面に塗布しなければならないわけではない。
当該塗布方法に制限はなく、単に液滴を垂らしたり、それをスキージで塗り広げたりする方法から、一般的な塗布方法まで、幅広くいずれの方法も採用することができる。一般的な塗布方法としては、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、キャストコート法、ロールコート法、刷毛塗り法、浸漬塗布法、スプレー塗布法、カーテンコート法等が挙げられる。
なお、基体、官能基を有するカーボンナノチューブ、架橋剤並びに架橋塗布液の内容については、[デカップリング素子]の項で説明した通りである。
(B)架橋工程
本発明において、「架橋工程」とは、塗布後の前記架橋塗布液を硬化して、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を形成する工程である。なお、架橋工程で前記架橋塗布液を硬化して、カーボンナノチューブ構造体を形成すべき領域は、前記所望の領域を全て含んでさえいればよく、前記基体の表面に塗布された前記架橋塗布液を全て硬化しなければならないわけではない。図7(a)に、当該(B)架橋工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。
架橋工程における操作は、前記官能基と前記架橋剤との組み合わせに応じて、自ずと決まってくる。例えば、前掲の表1に示す通りである。熱硬化性の組み合わせであれば、各種ヒータ等により加熱すればよいし、紫外線硬化性の組み合わせであれば、紫外線ランプで照射したり、日光下に放置しておけばよい。勿論、自然硬化性の組み合わせであれば、そのまま放置しておけば十分であり、この「放置」も本発明における架橋工程で行われ得るひとつの操作と解される。
官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)が付加したカーボンナノチューブと、ポリオール(中でもグリセリンおよび/またはエチレングリコール)との組み合わせの場合には、加熱による硬化(エステル交換反応によるポリエステル化)が行われる。加熱により、エステル化したカーボンナノチューブカルボン酸の−COORと、ポリオールのR'−OH(R'は、置換または未置換の炭化水素基)とがエステル交換反応する。そして、かかる反応が複数多元的に進行し、カーボンナノチューブが架橋していき、最終的にカーボンナノチューブが相互に接続してネットワーク状となったカーボンナノチューブ構造体14が形成される。
上記の組み合わせの場合に好ましい条件について例示すると、加熱温度としては、具体的には50〜500℃の範囲が好ましく、120〜200℃の範囲がより好ましい。また、この組み合わせにおける加熱時間としては、具体的には1分〜10時間の範囲が好ましく、1〜2時間の範囲がより好ましい。
(C)パターニング工程
本発明において、「パターニング工程」とは、前記カーボンナノチューブ構造体を高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングする工程である。図7(e)に、当該(C)パターニング工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。 パターニング工程の操作に特に制限はないが、好適なものとして、以下(C−A)および(C−B)の2つの態様を挙げることができる。
(C−A)
前記基体表面における前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ドライエッチングを行うことで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングする工程である態様。
ドライエッチングを行うことで、前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングするということは、結局は、前記基体表面における前記パターン以外の領域の前記カーボンナノチューブ構造体に、ラジカル等を照射することを意味する。そして、その手法としては、直接前記パターン以外の領域の前記カーボンナノチューブ構造体にラジカル等を照射する方式(C−A−1)と、前記パターン以外の領域をレジスト層で被覆した上で、前記基体表面(勿論、前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が形成された側)の全面にラジカル等を照射する方式(C−A−2)が挙げられる。
(C−A−1)
直接前記パターン以外の領域の前記カーボンナノチューブ構造体にラジカル等を照射する方式とは、詳しくは、本パターニング工程が、前記基体表面における前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ガス分子のイオンをイオンビームにより選択的に照射することで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記高周波フィルター膜に応じたパターンにパターニングする態様である。
イオンビームによれば、数nmオーダー程度の緻密さで、選択的にガス分子のイオンを照射することができ、高周波ノイズ吸収体に応じたパターンのパターニングが一度の操作で容易にできる点で好ましい。
選択可能なガス種としては、酸素、アルゴン、窒素、二酸化炭素、六フッ化硫黄等が挙げられるが、本発明においては特に酸素が好ましい。
イオンビームとは、真空中ガス分子に電圧をかけることで加速させイオン化し、ビームとして照射する方式であり、エッチングの対象とする物質および照射精度は、使用するガスの種類により変更することができる。
(C−A−2)
前記パターン以外の領域をレジスト層で被覆した上で、前記基体表面の全面にラジカル等を照射する方式とは、詳しくは、本パターニング工程が、
前記基体表面における前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上に、レジスト層を設けるレジスト層形成工程(C−A−2−1)と、
前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に、ドライエッチングを行うことで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体を除去する除去工程(C−A−2−2)と、を含む態様であり、除去工程に引き続いてさらに、
レジスト層形成工程で設けられた前記レジスト層を剥離するレジスト層剥離工程(C−A−2−3)を含む場合もある。
(C−A−2−1)レジスト層形成工程
レジスト層形成工程では、前記基体表面における前記高周波フィルター膜に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上に、レジスト層を設ける。当該工程は、一般にフォトリソグラフィープロセスと称されるプロセスに従って為されるものであり、前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上に直接レジスト層を設けるのではなく、図7(b)に示されるように一旦基体12のカーボンナノチューブ構造体14が形成された表面全面にレジスト層16を形成し、前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンの領域を露光して、その後、現像することで露光部以外の部位が除去され、最終的に前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上にレジスト層が設けられた状態となる。
図7(c)に、当該(C−A−2−1)レジスト層形成工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。なお、レジストの種類によっては、露光部以外が現像により除去され、非露光部が残存する構成の場合もある。
レジスト層の形成方法は、従来公知の方法で行えばよい。具体的には、レジスト剤を基板上にスピンコーター等を使用して塗布し、加熱することでレジスト層を形成させる。
レジスト層16の形成に用いる材料(レジスト剤)としては、特に制限されず、従来よりレジストの材料として用いられている各種材料をそのまま用いることができる。中でも樹脂により形成する(樹脂層とする)ことが好ましい。カーボンナノチューブ構造体14は、網目状にネットワークが形成されており、多孔性の構造体であるため、例えば金属蒸着膜の様にごく表面にのみ膜が形成され孔内部まで十分に浸透しない材料によりレジスト層16を形成すると、プラズマ等を照射した際にカーボンナノチューブが十分に封止された状態(プラズマ等に晒されない状態)にできない。そのため、プラズマ等が孔部を通過してレジスト層16の下層のカーボンナノチューブ構造体14まで侵食し、プラズマ等の回り込みにより残留するカーボンナノチューブ構造体14の外形が小さくなってしまう場合がある。この小形化を加味して、レジスト層16の外形(面積)を、前記高周波フィルター膜に応じたパターンに比して十分に大きくする手法も考えられるが、この場合はパターン同士の間隔を広くとらざるをえず、密にパターンを形成できなくなる。
これに対して、レジスト層16の材料として樹脂を用いることで、当該樹脂を孔内部まで浸透させることができ、プラズマ等に晒されるカーボンナノチューブを減少させることができ、結果としてカーボンナノチューブ構造体14の高密度なパターニングが可能となる。
当該樹脂層を主として構成する樹脂材料としては、ノボラック樹脂、ポリメチルメタクリレート、およびこれらの樹脂の混合物等を挙げることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
レジスト層を形成するためのレジスト材料は、上記樹脂材料あるいはその前駆体と感光材料等の混合物であり、本発明では従来公知のあらゆるレジスト材料を使用しても差し支えない。例えば、東京応化工業製OFPR800、長瀬産業製NPR9710等を例示することができる。
レジスト層16への露光(レジスト材料が熱硬化性の場合には加熱。その他レジスト材料の種類により適宜選択。)および現像の操作ないし条件(例えば、光源波長、露光強度、露光時間、露光量、露光時の環境条件、現像方法、現像液の種類・濃度、現像時間、現像温度、前処理や後処理の内容等)は、使用するレジスト材料に応じて、適宜選択する。市販されているレジスト材料を用いたのであれば、当該レジスト材料の取扱説明書の方法に従えばよい。一般的には、取り扱いの便宜から、紫外光を用いて前記高周波フィルター膜に応じたパターン様に露光し、アルカリ現像液により現像する。そして水洗で現像液を洗い流し、乾燥してフォトリソグラフィープロセスが完了する。
(C−A−2−2)除去工程
除去工程では、前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に、ドライエッチングを行うことで、前記領域以外の領域で表出している(図7(c)を参照。カーボンナノチューブ構造体14は、レジスト層16が除去された部分から表出している。)カーボンナノチューブ構造体を除去する。図7(d)に、当該(C−A−2−2)除去工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。
除去工程の操作は、一般にドライエッチングと称される方法全般を含み、方式としては、リアクティブイオン方式などがある。既述の(C−A−1)のイオンビームを用いる方式もドライエッチングに含まれる。
選択可能なガス種やその他装置および操作環境等は(C−A−1)の項で述べた通りである。
ドライエッチングで一般的に選択可能なガス種としては、酸素、アルゴン、フッ素系ガス(フロン、SF6、CF4等)等が挙げられるが、本発明においては特に酸素が好ましい。酸素ラジカルを用いると、除去するカーボンナノチューブ構造体14のカーボンナノチューブを酸化させ(燃焼させ)、二酸化炭素化することができ、残存物の発生による影響がなく、また正確なパターニングをすることが可能となる。
ガス種として酸素を選択する場合には、酸素分子に紫外線を照射することにより、酸素ラジカルを発生させ、これを利用することができる。この方式で酸素ラジカルを生ずる装置が、UVアッシャーとの商品名で市販されており、容易に入手することができる。
(C−A−2−3)レジスト層剥離工程
本発明のデカップリング素子の製造方法は、以上の(C−A−2−2)除去工程までの操作が完了した段階で終了とすることもでき、それでも本発明のデカップリング素子の一態様(図7(d)に示される態様)のものを得ることができる。しかし、レジスト層16を除去したい場合には、上記除去工程に引き続いてさらに、レジスト層形成工程で設けられたレジスト層16を剥離するレジスト層剥離工程の操作を施すことが必要となる。図7(e)に、当該(C−A−2−3)レジスト層剥離工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。
レジスト層剥離工程の操作は、レジスト層16の形成に用いた材料に応じて選択すればよい。市販されているレジスト材料を用いたのであれば、当該レジスト材料の取扱説明書の方法に従えばよい。レジスト層16が樹脂層である場合には、一般的には、当該樹脂層を溶解し得る有機溶剤に接液することにより除去する。
(D)その他の工程
以上の各工程を経ることで、本発明のデカップリング素子を製造することができるが、本発明のデカップリング素子の製造方法においては、その他の工程を含めることもできる。
例えば、前記塗布工程に先立ち、前記基体の表面を予め処理する表面処理工程を設けるのも好適である。表面処理工程は、例えば、塗布される架橋塗布液の吸着性を高めるため、上層として形成されるカーボンナノチューブ構造体と基体表面との接着性を高めるため、基体表面を清浄化するため、基体表面の電気伝導度を調整するため、等の目的で行われる。
架橋塗布液の吸着性を高める目的で行われる表面処理工程としては、例えば、シランカップリング剤(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等)による処理が挙げられる。中でもアミノプロピルトリエトキシシランによる表面処理は、広く行われており、本発明における表面処理工程でも好適である。アミノプロピルトリエトキシシランによる表面処理は、例えば、Y.L.Lyubchenko et al.,Nucleic Acids Research,1993,vol.21,p.1117-1123等の文献に見られるように、従来よりDNAのAFM観察において基板に使うマイカの表面処理に用いられている。
カーボンナノチューブ構造体自体を2層以上積層する場合には、上記本発明のデカップリング素子の製造方法による操作を、2回以上繰り返せばよい。カーボンナノチューブ構造体の層間に誘電体層や絶縁層等の中間層を設ける場合には、これらの層を形成するための工程を挟んで、上記本発明のデカップリング素子の製造方法による操作を繰り返せばよい。
また、保護層や電極層等その他の層を別途積層する場合には、これらの層を形成するための工程が必要となる。これら各層は、その目的に応じた材料・方法を従来公知の方法から選択して、あるいは、本発明のために新たに開発した物ないし方法により、適宜形成すればよい。
<本発明のデカップリング素子の製造方法の応用例>
本発明のデカップリング素子の製造方法の有用な応用例として、仮基板の表面に一旦カーボンナノチューブ構造体をパターニングした後、所望とする基体に転写する方法がある。また、転写工程において、当該仮基板から中間転写体表面にパターニングされたカーボンナノチューブ構造体を一旦転写し、さらに所望とする基体(第2の基体)に転写する構成としても構わない。
当該応用例において使用可能な仮基板としては、[デカップリング素子]の項で説明した基体と同様の材質のものが使用可能であり、好ましいものである。ただし、転写工程における転写適性を考慮すると、少なくとも1つの平面を有することが望まれ、平板状であることがより好ましい。
当該応用例において使用可能な基体あるいは中間転写体としては、粘着剤を保持した粘着面、あるいは保持し得る面を有することが必要であり、セロファンテープ、紙テープ、布テープ、イミドテープのような一般的なテープは勿論使用可能である。また、これらテープのような可撓性ないし柔軟性を有する材料以外の硬質の材料からなるものであっても構わない。粘着剤を保持していない材料の場合には、保持し得る面に粘着剤を塗りつけた上で、これを粘着面として、通常のテープと同様に使用することができる。
当該応用例によれば、本発明のデカップリング素子を容易に製造することができる。
なお、基体の表面にカーボンナノチューブ構造体が担持された状態のものを用意し、デバイスを構成する所望の第2の基体(例えば筐体)の表面に基体ごと貼付けて、デカップリング素子を製造することもできる。
あるいは、仮基板(もしくは中間転写体)の表面にカーボンナノチューブ構造体が担持されたカーボンナノチューブ転写体を用いて、デカップリング素子を構成する基体の表面に前記カーボンナノチューブ構造体だけを転写し、仮基板(もしくは中間転写体)を除去するようにすれば、利用者は架橋工程を省略しても、デカップリング素子の高周波ノイズ吸収体を作製できる様になる。なお、ここではプロセス上中間転写体がカーボンナノチューブ転写体の仮基板となる場合があるが、カーボンナノチューブ転写体自体としては区別する必要はないので、この場合も含むものとする。
カーボンナノチューブ転写体を用いると、仮基板の表面に架橋された状態でカーボンナノチューブ構造体が担持されているため、その後の取り扱いが極めて簡便になり、デカップリング素子の製造は極めて容易に行うことができるようになる。仮基板の除去方法は、単純な剥離、化学的に分解、焼失、溶融、昇華、溶解させる等適宜選択できる。
かかる応用例のデカップリング素子の製造方法は、デバイスの基体として、そのまま本発明のデカップリング素子の製造方法を適用し難い材質および/または形状のものの場合に、特に有効である。
例えば、前記架橋工程で、塗布後の前記溶液を硬化するために加熱する温度が、デカップリング素子の基体にしようとしている材料の融点ないしガラス転移点以上となってしまう場合に、上記本発明の応用例は有効である。このとき、前記加熱温度を前記仮基板の融点よりも低く設定することで、硬化のために必要な加熱温度を確保することができ、適切に本発明のデカップリング素子を製造することができる。
また、例えば、前記パターニング工程が、前記仮基板表面における前記デカップリング素子に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ドライエッチングを行うことで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングする工程であるとき、デカップリング素子の基体にしようとしている材料が、前記パターニング工程で行うドライエッチングに対して耐性を有しない場合に、上記本発明の応用例は有効である。このとき、前記仮基板にドライエッチングに対して耐性を有する材料を用いることで、前記仮基板にパターニングする工程の操作に対する耐性を確保することができ、適切に本発明のデカップリング素子を製造することができる。
具体的な耐性、材料等は、ドライエッチングのガス種、強度、時間、温度、圧力等の条件により異なるため一概には言えないが、樹脂材料は比較的耐性が低いため、これを前記基体とした場合に、本応用例を適用することで、耐性が低いことによる制約から解放される。したがって、樹脂材料を前記基体に適用することは、本応用例によるメリットを生かし得る点で好適である。一方、無機材料は比較的耐性が高いため、前記仮基板に適している。また、可撓性ないし柔軟性を有する材料は一般に当該耐性が低いため、これを前記基体に適用することは、本応用例によるメリットを生かし得る点で好適である。
さらに別の態様として、カーボンナノチューブ構造体を担持する基体を、よりハンドリングしやすいデカップリング素子とするために、第2の基体に貼り付けて、本発明のデカップリング素子およびこれを用いた装置を構成してもよい。第2の基体としては、物性的に剛体であっても、可撓性ないし柔軟性であってもよいし、形状的にも球体、凹凸形状等多様な形状のものを選択することができる。
また、本発明の他の目的は、当該優れたデカップリング性能を備えたデカップリング素子を内蔵するプリント基板回路を提供することにある。予めデカップリング素子を内蔵するプリント基板回路とすることにより、実装時に生じる高周波領域の帯域低下等の問題を防ぐことができるため、本発明のデカップリング素子の性能をフルに生かすことができ好ましい。
本発明のデカップリング素子を内蔵するプリント基板における前記高周波ノイズ吸収体の好ましい設置場所としては、プリント基板上面(電子部品の実装面)、あるいはプリント基板内部の、LSIの電源入力部の前段部であり、プリント基板裏面の接地面を利用してデカップリング素子を構成する。LSI電源入力部と前記高周波ノイズ吸収体は、できるだけ近づけた方がデカップリングの効果が大きくなる。
前記高周波ノイズ吸収体のプリント基板への設置方法としては、仮基板の表面に一旦カーボンナノチューブ構造体をパターニングした後、プリント基板上面の所望個所に転写したり、直接プリント基板上面にカーボンナノチューブ構造体を形成し、パターニングを行う方法があるが、仮基板を用いる方がプロセス上の制限が少なくなるため好ましい。また、カーボンナノチューブ構造体をパターニングした仮基板をプリント基板上面の所望個所に貼り付けて使用することも好適に実施される。
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図7に記載のデカップリング素子の製造方法の流れにより、図1および図2に示す形状のデカップリング素子を製造した。なお、本実施例の説明においては、図7の符号を用いる場合がある。
(カーボンナノチューブの精製工程)
単層カーボンナノチューブ粉末(CarboLex、平均直径1.5nm、Aldrich Chem.Co.製)約500mgを坩堝に入れ450℃で30分焼いた。これを濃塩酸(35質量%水溶液、関東化学製)に入れ3時間放置した後、ろ過し、乾燥した。回収した粉末を再び坩堝に入れ500℃で30分焼き、これを濃塩酸(35質量%水溶液、関東化学製)に入れ3時間放置した後、ろ過し、乾燥する。さらに回収した粉末を坩堝に入れ550℃で30分焼き、これを濃塩酸(35質量%水溶液、関東化学製)に入れ3時間放置した後、ろ過し、乾燥して、約50mg(純度90%)の単層カーボンナノチューブを得た。
(A)塗布工程(A−1)
架橋塗布液の調製(付加工程)
(i)カルボキシル基の付加・・・カーボンナノチューブカルボン酸の合成
以上のようにして精製した単層カーボンナノチューブ粉末30mgを、濃硝酸(60質量%水溶液、関東化学製)20mlに加え、120℃の条件で還流を2時間行い、カーボンナノチューブカルボン酸を合成した。以上の反応スキームを図8に示す。なお、図8中、カーボンナノチューブ(CNT)の部分は、2本の平行線で表している(反応スキームに関する他の図に関しても同様)。
溶液の温度を室温に戻したのち、5000rpmの条件で15分間の遠心分離を行い、上澄み液と沈殿物とを分離した。回収した沈殿物を純水10mlに分散させて、再び5000rpmの条件で15分間の遠心分離を行い、上澄み液と沈殿物とを分離した(以上で、洗浄操作1回)。この洗浄操作をさらに5回繰り返し、最後に沈殿物を回収した。
回収された沈殿物について、赤外吸収スペクトルを測定した。また、比較のため、用いた多層カーボンナノチューブ原料自体の赤外吸収スペクトルも測定した。両スペクトルを比較すると、多層カーボンナノチューブ原料自体においては観測されていない、カルボン酸に特徴的な1735cm-1の吸収が、前記沈殿物の方には観測された。このことから、硝酸との反応によって、カーボンナノチューブにカルボキシル基が導入されたことがわかった。すなわち、沈殿物がカーボンナノチューブカルボン酸であることが確認された。
また、回収された沈殿物を中性の純水に添加してみると、分散性が良好であることが確認された。この結果は、親水性のカルボキシル基がカーボンナノチューブに導入されたという、赤外吸収スペクトルの結果を支持する。
(ii)エステル化
上記工程で調製されたカーボンナノチューブカルボン酸30mgを、メタノール(和光純薬製)25mlに加えた後、濃硫酸(98質量%、和光純薬製)5mlを加えて、65℃の条件で還流を6時間行い、メチルエステル化した。以上の反応スキームを図9に示す。
溶液の温度を室温に戻したのち、ろ過して沈殿物を分離した。沈殿物は、水洗した後回収した。回収された沈殿物について、赤外吸収スペクトルを測定した。その結果、エステルに特徴的な1735cm-1および1000〜1300cm-1の領域における吸収が観測されたことから、カーボンナノチューブカルボン酸がエステル化されたことが確認された。
(混合工程)
上記工程で得られたメチルエステル化したカーボンナノチューブカルボン酸30mgを、グリセリン(関東化学製)4gに加え、超音波分散機を用いて混合した。さらに、これを粘度調整剤としてのメタノール4gに加え、架橋塗布液(1)を調製した。
(A−2)基体の表面処理工程
基体12としてのガラス板(松島硝子製、MICRO SLIDE GLASS 白緑磨No.1 S−1111、26mm×23mm、厚さ0.9mm)を用意した。この上に塗布する架橋塗布液(1)と、当該ガラス板との吸着性を上げるために、アミノプロピルトリエトキシシランにより、ガラス板の表面処理を行った。
アミノプロピルトリエトキシシランによる表面処理は、密閉したシャーレ内で、上記ガラス板をアミノプロピルトリエトキシシラン(アルドリッチ社製)50μlの蒸気に3時間程度晒すことで行った。
(A−3)塗布工程
工程(A−1)で調製された架橋塗布液(1μl)を、表面処理が施されたガラス板表面にスピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、100rpm,30秒の条件で塗布した。
(B)架橋工程
架橋塗布液を塗布した後、当該塗布膜が形成されたガラス板(基体12)を、200℃で30分間加熱し塗布膜を硬化し、カーボンナノチューブ構造体14を形成した(図7(a))。反応スキームを図10に示す。
上記塗布工程、架橋工程をさらに2度繰り返し、得られたカーボンナノチューブ構造体14の状態を光学顕微鏡で確認したところ、極めて均一な硬化膜となっていた。
(C)パターニング工程(C−1)レジスト層形成工程
カーボンナノチューブ構造体14が形成されたガラス板(基体12)の当該カーボンナノチューブ構造体14側の表面に、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、レジスト剤(長瀬産業製、NPR9710、粘度50mPa・s)を、2000rpm、20秒の条件で塗布し、ホットプレートにより2分間、100℃で加熱して製膜させて、レジスト層16を形成した(図7(b))。
なお、レジスト剤NPR9710の組成は、以下の通りである。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:50〜80質量%
・ノボラック樹脂: 20〜50質量%
・感光剤: 10質量%未満
カーボンナノチューブ構造体14およびレジスト層16が形成されたガラス板(基体12)の当該レジスト層16側の表面に、マスクアライナー(ミカサ製水銀灯、MA−20、波長436nm)を用いて、光量12.7mW/cm2、4秒の条件で、図1および図2における符号2に示す形状(26mm×23mm)に露光した。なお、図1および図2における符号2は、高周波ノイズ吸収体であり、本実施例においては、これが形成される領域、すなわち、図7(d)における符号14あるいは符号16に相当する領域である。逆に言うと、上記マスクアライナーにより照射される露光部位は、図1および図2における符号2で示される領域以外の領域となる。
さらに、露光されたガラス板(基体12)をホットプレートにより1分間、110℃で加熱した後、放冷し、現像液として東京応化工業製NMD−3(テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド:2.38質量%)を用い、現像機(AD−1200、滝沢産業)により現像を行った(図7(c))。このとき、レジスト層16が高周波ノイズ吸収体の形状(図1および図2における符号2で示される形状)に形成されていることを確認した。
(C−2)除去工程
以上のようにしてレジスト層16が所定のパターンの形状に形成されたガラス板(基体12)を、UVアッシャー(エキシマ真空紫外線ランプ、アトム技研製、EXM−2100BM、波長172nm)により、混合ガス(酸素10mL/min,窒素40mL/min)中200℃で加熱し、2時間紫外線(172nm)を照射することで酸素ラジカルを発生させカーボンナノチューブ構造体14におけるレジスト層16で保護されていない部分を除去した。その結果、レジスト層16で覆われた状態でカーボンナノチューブ構造体14が高周波ノイズ吸収体2の形状に形成された(図7(d))。
(C−3)レジスト層除去工程
高周波ノイズ吸収体2の形状に形成されたカーボンナノチューブ構造体14の上層として残存しているレジスト層16を、アセトンで洗い流すことにより洗浄して除去し(図7(e))、実施例1のデカップリング素子(長方形、26mm×23mm)の高周波ノイズ吸収体2として機能するカーボンナノチューブ構造体を得た。
デカップリング素子における高周波ノイズ吸収体として機能するカーボンナノチューブ構造体上面の両端から、ガラス板(基体1)端面近傍までの間に、図1および図2に示すように、幅1mm、長さ2mmの入力端子3および出力端子4となる金配線を、メタルマスクを用い真空蒸着法にて形成した。さらに、ガラス板(基体1)の裏面(高周波ノイズ吸収体2が形成された面と反対側の面)の全面に金を真空蒸着することにより、接地電極となる金属面5を形成し、実施例1のデカップリング素子を得た。
次に、ネットワークアナライザー37397C(アンリツ製)および付属のユニバーサルテストフィクスチャーを用いて、得られた実施例1のデカップリング素子の透過特性(S21)の評価を行った。その結果を図11に示す。図11に示されるように、930MHz〜6.6GHzの広い周波数範囲で−60dB以下の透過特性が得られた。カーボンナノチューブ構造体の利用により広帯域のデカップリング素子が実現することが確認された。
[実施例2]
実施例1で得られた架橋塗布液(1)を用いて、実施例1の手順に従い、図3および図4に示す態様のデカップリング素子を製造した。具体的には、ガラス基板(13mm×11mm)上に、実施例1と同様にして、カーボンナノチューブ構造体からなる高周波ノイズ吸収体(図3および図4の2'の形状、外形11mm×10mm、線幅1.7mm、隣の線との間隙0.16mm)を形成した。
さらに実施例1と同様にして、高周波ノイズ吸収体2'として機能するカーボンナノチューブ構造体上面の両端から、ガラス板(基体1)端面近傍までの間に、図3および図4に示すように、幅1mm、長さ2mmの入力端子3および出力端子4となる金配線を、メタルマスクを用い真空蒸着法にて形成した。さらに、ガラス板(基体1)の裏面(高周波ノイズ吸収体2が形成された面と反対側の面)の全面に金を蒸着することにより、接地電極となる金属面5を形成し、ガラス板(基体1)の裏面の全面に金を蒸着することにより、実施例2のデカップリング素子を得た。
次に、実施例1と同様にネットワークアナライザーを用いて、得られた実施例2のデカップリング素子の透過特性(S21)の評価を行った。その結果を図12に示す。図12に示されるように、80MHz〜5.2GHzの広い周波数範囲で−60dB以下の透過特性が得られ、なおかつ、120MHz〜2.6GHzの周波数範囲で−70dB以下の透過特性が得られた。これは、実施例1のデカップリング素子と比較して、小さな面積で広帯域・高吸収効率のデカップリング素子が実現していることを示すものである。また、図12に示される結果から分かるように、広い周波数範囲でフラットな特性であり、デカップリング素子として適した特性といえる。
本発明の例示的一態様である第1の実施形態のデカップリング素子を示す平面図である。 図1におけるA−A断面図である。 本発明の例示的一態様である第2の実施形態のデカップリング素子を示す平面図である。 図3におけるB−B断面図である。 本発明の例示的一態様である第3の実施形態のデカップリング素子を示す平面図である。 図5におけるC−C断面図である。 本発明のデカップリング素子の製造方法の一例を説明するための基体表面の模式断面図であり、製造工程添って(a)〜(e)の順に示したものである。 実施例1中の(付加工程)におけるカーボンナノチューブカルボン酸の合成の反応スキームである。 実施例1中の(付加工程)におけるエステル化の反応スキームである。 実施例1中の(架橋工程)におけるエステル交換反応による架橋の反応スキームである。 実施例1のデカップリング素子の特性を示すグラフである。 実施例2のデカップリング素子の特性を示すグラフである。
符号の説明
1、12:基体、 2、2':高周波ノイズ吸収体、 3:入力端子、 4:出力端子、 5:金属面(接地電極)、 7:金属電極、 14:カーボンナノチューブ構造体、 16:レジスト層

Claims (38)

  1. 基体と、該基体表面に支持され、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体からなる高周波ノイズ吸収体と、該高周波ノイズ吸収体にそれぞれ接続された入力電極および出力電極と、を備えることを特徴とするデカップリング素子。
  2. 前記基体が、板状であることを特徴とする請求項1に記載のデカップリング素子。
  3. 前記基体における、少なくとも前記高周波ノイズ吸収体を支持する表面が、絶縁性であることを特徴とする請求項1に記載のデカップリング素子。
  4. さらに、前記基体のいずれかの箇所に、接地電極が設けられてなることを特徴とする請求項1に記載のデカップリング素子。
  5. 前記基体の前記高周波ノイズ吸収体を支持する表面と異なる表面に、前記接地電極が設けられてなることを特徴とする請求項4に記載のデカップリング素子。
  6. 前記基体の内部に、前記接地電極が設けられてなることを特徴とする請求項4に記載のデカップリング素子。
  7. 前記高周波ノイズ吸収体の表面に、絶縁性の保護層を有することを特徴とする請求項1に記載のデカップリング素子。
  8. 前記保護層の上にさらに金属電極が設けられ、前記基体の前記高周波ノイズ吸収体を支持する表面と異なる表面に接地電極が設けられ、該接地電極が前記金属電極と電気的に接続されてなることを特徴とする請求項5に記載のデカップリング素子。
  9. 前記カーボンナノチューブ構造体が、官能基を有するカーボンナノチューブおよび前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液を用い、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤とを架橋反応させて架橋部位が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のデカップリング素子。
  10. 前記架橋剤が、非自己重合性の架橋剤であることを特徴とする請求項9に記載のデカップリング素子。
  11. 前記架橋部位が、架橋反応後に残存する前記官能基の残基同士を、前記架橋剤の残基である炭化水素を骨格とする連結基により連結した架橋構造であることを特徴とする請求項9に記載のデカップリング素子。
  12. 前記連結基が、2〜10個の炭素を有する炭化水素を骨格とすることを特徴とする請求項11に記載のデカップリング素子。
  13. 前記官能基が、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくとも1つの基であり、前記架橋剤が、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得る架橋剤であることを特徴とする請求項9に記載のデカップリング素子。
  14. 前記架橋剤が、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤であり、前記官能基が、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得る官能基であることを特徴とする請求項9に記載のデカップリング素子。
  15. 前記官能基が、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくとも1つの基であり、
    前記架橋剤が、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤であり、
    前記官能基と前記架橋剤とが、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるようにそれぞれ選択されたことを特徴とする請求項9に記載のデカップリング素子。
  16. 前記官能基が、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)であることを特徴とする請求項9に記載のデカップリング素子。
  17. 前記架橋剤が、ポリオールであることを特徴とする請求項16に記載のデカップリング素子。
  18. 前記架橋剤が、グリセリンおよび/またはエチレングリコールであることを特徴とする請求項16に記載のデカップリング素子。
  19. 前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋する架橋部位が、−COO(CH22OCO−、−COOCH2CHOHCH2OCO−、−COOCH2CH(OCO−)CH2OHおよび−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−からなる群より選ばれるいずれかの化学構造であることを特徴とする請求項9に記載のデカップリング素子。
  20. 基体と、該基体表面に支持され、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体からなる高周波ノイズ吸収体と、該高周波ノイズ吸収体にそれぞれ接続された入力電極および出力電極と、を備えることを特徴とするデカップリング素子を製造するための方法であって、前記高周波ノイズ吸収体を前記基体表面に形成する方法として、
    官能基を有するカーボンナノチューブ、および、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液を、前記基体表面に塗布する塗布工程と、
    塗布後の前記溶液中、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤とを架橋反応させて、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を形成する架橋工程と、
    を含むことを特徴とするデカップリング素子の製造方法。
  21. 前記架橋剤が、非自己重合性の架橋剤であることを特徴とする請求項20に記載のデカップリング素子の製造方法。
  22. 前記架橋工程に引き続いてさらに、前記カーボンナノチューブ構造体を、前記高周波ノイズ吸収体に応じた形状にパターニングするパターニング工程を含むことを特徴とする請求項20に記載のデカップリング素子の製造方法。
  23. 前記パターニング工程が、前記基体表面における前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ドライエッチングを行うことで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記高周波ノイズ吸収膜に応じたパターンにパターニングする工程であることを特徴とする請求項22に記載のデカップリング素子の製造方法。
  24. 前記パターニング工程が、
    前記基体表面における前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上に、レジスト層を設けるレジスト層形成工程と、
    前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に、ドライエッチングを行うことで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体を除去する除去工程と、
    を含むことを特徴とする請求項22に記載のデカップリング素子の製造方法。
  25. 前記除去工程において、前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に、酸素分子のラジカルを照射することを特徴とする請求項24に記載のデカップリング素子の製造方法。
  26. 酸素分子に紫外線を照射することにより、酸素ラジカルを発生させ、これを前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に照射するラジカルとして用いることを特徴とする請求項25に記載のデカップリング素子の製造方法。
  27. 前記パターニング工程が、除去工程に引き続いてさらに、レジスト層形成工程で設けられた前記レジスト層を剥離するレジスト層剥離工程を含むことを特徴とする請求項24に記載のデカップリング素子の製造方法。
  28. 前記レジスト層が、樹脂層であることを特徴とする請求項24に記載のデカップリング素子の製造方法。
  29. 前記パターニング工程が、前記基体表面における前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ガス分子のイオンをイオンビームにより選択的に照射することで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記高周波ノイズ吸収体に応じたパターンにパターニングする工程であることを特徴とする請求項22に記載のデカップリング素子の製造方法。
  30. 前記官能基が、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくとも1つの基であり、前記架橋剤が、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得る架橋剤であることを特徴とする請求項20に記載のデカップリング素子の製造方法。
  31. 前記架橋剤が、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤であり、前記官能基が、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得る官能基であることを特徴とする請求項20に記載のデカップリング素子の製造方法。
  32. 前記官能基が、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくとも1つの基であり、
    前記架橋剤が、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤であり、
    前記官能基と前記架橋剤とが、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるようにそれぞれ選択されたことを特徴とする請求項20に記載のデカップリング素子の製造方法。
  33. 前記官能基が、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)であることを特徴とする請求項20に記載のデカップリング素子の製造方法。
  34. 前記架橋剤が、ポリオールであることを特徴とする請求項33に記載のデカップリング素子の製造方法。
  35. 前記架橋剤が、グリセリンおよび/またはエチレングリコールであることを特徴とする請求項33に記載のデカップリング素子の製造方法。
  36. 前記溶液が、さらに溶剤を含むことを特徴とする請求項20に記載のデカップリング素子の製造方法。
  37. 前記架橋剤が、溶剤を兼ねることを特徴とする請求項36に記載のデカップリング素子の製造方法。
  38. プリント基板上のLSI電源入力部に、請求項1に記載のデカップリング素子を内蔵することを特徴とするプリント基板回路。
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