JP2005235728A - 電気部材及び電気装置、並びにこれらの製造方法 - Google Patents

電気部材及び電気装置、並びにこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】カーボンナノチューブの特性を効果的に活用できる電極等の電気部材、及び開閉器等の電気装置を提供する。
【解決手段】基体と、前記基体上に形成された電気接点とを備えた電気部材であって、前記電気接点は、官能基が結合した複数のカーボンナノチューブの前記官能基間を化学結合させて相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体により構成されたことを特徴とする電気部材、及びこれを備えた電気装置。並びに官能基を結合された複数のカーボンナノチューブを含む溶液を基体表面に供給する供給工程と、複数の前記官能基間を化学結合させて、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を電気接点として形成する架橋工程とを含むことを特徴とする電気部材の製造方法。
【選択図】図1(a)

Description

本発明は、電気接点としてカーボンナノチューブ構造体を用いた、電極、接点部材、スイッチ部材、電気装置基板等の電気部材、及びこの電気部材を備えた、開閉器、継電器、遮断器、交換器等の電気装置、並びに、これらの製造方法に関する。
特開2002−75102号公報 特開2000−26760号公報 特表2002−503204号公報 Y.L.Lyubchenko et al.,Nucleic Acids Research, 1993, vol.21, p.1117-1123
カーボンナノチューブ(CNT)は、その特異な形状や特性ゆえに、様々な応用が考えられている。カーボンナノチューブの形状は炭素原子の六員環で構成されるグラフェンシートを巻いた1次元性を有する筒状であり、グラフェンシートが1枚の構造のカーボンナノチューブを単層ナノチューブ(SWNT)、多層の場合を多層ナノチューブ(MWNT)と呼ぶ。SWNTは直径約1nm、多層カーボンナノチューブは数十nm程度であり、従来のカーボンファイバーと呼ばれる物よりも極めて細い。
また、カーボンナノチューブは、マイクロメートルオーダーの長さを有し、直径とのアスペクト比が非常に大きいことが特徴的である。さらに、カーボンナノチューブは炭素原子の六員環の配列が螺旋構造をとることから、金属性と半導体性の両方の性質を有するという、極めて希有な特性を有する物質である。加えて、カーボンナノチューブの電気伝導性は極めて高く、電流密度に換算すると100MA/cm2以上の電流を流すことができる。
カーボンナノチューブは、電気的特性だけではなく、機械的性質についても優れた点を有する。すなわち、炭素原子のみで構成されているため、非常に軽量であるにもかかわらず、1TPaを越えるヤング率を有し、極めて強靱である。また、ケージ物質であるために弾力性・復元性にも富んでいる。このように、カーボンナノチューブは様々な優れた性質を有するため、工業材料として、極めて魅力的な物質である。
これまでに、カーボンナノチューブの優れた特性を利用した応用研究が数多く行われている。樹脂の強化や伝導性複合材料としてカーボンナノチューブを添加したり、走査プローブ顕微鏡の探針として利用されたりしている。また、微小電子源として、電界放出型電子素子やフラットディスプレィとしてカーボンナノチューブが利用され、さらに水素貯蔵への応用が進められている。
このように、カーボンナノチューブは、種々の応用が考えられるが、特に電子材料・電子デバイスとしての応用が注目を浴びている。既にダイオードやトランジスタなどの電子デバイスの試作が行われている。
そのひとつの応用例として、特許文献1には、バインダー用ポリマー中に導電性粒子としてカーボンナノチューブを分散させたものを電気接点材料として用いることで、接触面に酸化膜を形成せず、接触抵抗の変化が少なく、長時間安定して使用することができることが開示されている。
しかしながら、特許文献1のように、カーボンナノチューブを樹脂中に分散させ固化させたものは、混合過程においてカーボンナノチューブ表面に樹脂が付着してしまうため、カーボンナノチューブ表面間の接触は偶発的にしか起こらず、電気パスがカーボンナノチューブ同士の絡み合いだけに依存する不安定なものとなり、衝突や圧接等の作用によって、接点内での電気接続が切断されるなど接続状態が変化してしまう恐れがある。また、ナノチューブ同士がバンドリング(複数本が束になる)するため、絡み合いによって構造体を形成させると網目中の空隙部分が大きくなり、密度が不均一になるため、対向する電気接点が接触する箇所によって電気伝導率のばらつきが生じてしまう。
また、電気接点に対して他の電極を接離させることで導電路の開閉を行う開閉器においては、電気接点に対する接離が繰り返されるため、抵抗率とともに接点の強度も重要な要素である。このため電気接点として金属を用いる場合には、銀や銅とタングステンのような硬質の金属の合金が使用されていた。
一方カーボンナノチューブ自体は強靭であるので、特許文献1のようなカーボンナノチューブ分散樹脂においても、ナノチューブ自体が開閉動作で切断される等の可能性は少ないが、上述したように導電率を上げるため、あるいは、接点におけるナノチューブの分布を均一にするために、ナノチューブの分散量を増加させた場合、バインダー量の減少に伴い、接点自体の強度が低下してしまう。
したがって、本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。詳しくは、本発明の目的は、カーボンナノチューブの特性を効果的に活用できる電極等の電気部材、及び開閉器等の電気装置を提供することにある。
上記目的は、以下の本発明により達成される。
本発明の電気部材は、基体と、前記基体上に形成され、官能基が結合された複数のカーボンナノチューブの前記官能基間を化学結合させて相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体により構成された電気接点を備えることを特徴とする。
すなわち本発明の電気部材は、カーボンナノチューブが相互に架橋しているため、単なるカーボンナノチューブ表面間の接触の場合とは異なり、電気接続が確実且つ安定して得られるため、ナノチューブ間の導通経路が確保され、電気接点自体の抵抗率を低下させることができる。さらに電気接点が化学的に安定なカーボンナノチューブにより構成されているため、長期にわたり安定して使用できる。また、カーボンナノチューブが相互に架橋した状態で網目状に構造化しているので、他の電極等との接触や圧接等の衝撃に対しても破壊されにくく、官能基の存在によりバンドリングが生じにくくなる。なお、カーボンナノチューブは強靭であるとともに柔軟性を有しており、網目構造化したカーボンナノチューブ構造体もその特徴を維持していることから、電気接点の切断による欠落が発生しにくく、長期にわたり安定して使用できる。
なお電気接点とは、他の電極と接触されて電気接続を得るための部分を指しており、開閉器のように接離が繰り返される装置の接点に限らず、圧着や樹脂などで接触状態を他の手段で固定される装置の電気接点として用いる形態の装置に対しても適用できる。
また、接点が形成される基体自体の材料や形状は特に限定されるものではない。例えば、接点が形成される基体を金属板で構成するほか、導電性高分子や金属薄膜、網目構造のカーボンナノチューブ構造体の厚膜で構成してもよい。さらに、本発明の電気接点を構成するカーボンナノチューブ構造体は、均一に形成できるため、微小なパターニングでも接点の電気特性のばらつきを小さくできる。このため、シリコン基板上に形成された微細な配線パターン中の他の素子電極との電気接点として、配線パターン電極上に形成してもよい。
また、本発明の電気部材からなる第1の電極と、さらにこの第1の電極の電気接点と接離可能な第2の電極とを備えることで、開閉器等の電気装置を構成することができる。本発明の開閉器等の電気装置は、カーボンナノチューブ自体の持つ化学的な安定性と強靭性が特に有効に作用し、長期間安定して安定して使用できる。
前記カーボンナノチューブ構造体は、官能基が結合された複数のカーボンナノチューブを含む溶液を硬化させることにより、前記カーボンナノチューブが接続された複数の前記官能基間を化学結合させて架橋部位が形成されてなるものであることが好ましい。
このうち、前記架橋部位として好ましい第1の構造は、前記溶液中に含まれる架橋剤により複数の前記官能基間を架橋した構造であり、該架橋剤は非自己重合性であることがより好ましい。
前記カーボンナノチューブ構造体を、このように溶液硬化により形成すると、前記カーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位は、前記官能基の架橋反応後に残存する残基同士を、前記架橋剤の架橋反応後に残存する残基である連結基で連結した架橋構造となり、安定な電気接点を得ることができる。
カーボンナノチューブ同士を架橋させる架橋剤としては、例えば特許文献2に記載されているようなアルコキシド等を用いることもできるが、前記架橋剤の特性として、アルコキシドのようにそれら同士が重合反応をするような性質(自己重合性)を有すると、当該架橋剤自身が多重に重合し、連結した組織状となって、架橋剤の組織中にカーボンナノチューブが分散しているかのような状態となってしまう場合があり、カーボンナノチューブ構造体中に占める実質的なカーボンナノチューブの密度が低くなってしまう。このとき、電気接点として用いるには、接点自体のサイズを十分に大きくしないと必要な電気伝導度を得られない場合がある。
一方、前記架橋剤が非自己重合性であれば、カーボンナノチューブ相互の間隔を、使用した架橋剤の残基のサイズに制御することができるため、所望のカーボンナノチューブのネットワーク構造を高い再現性で得られるようになる。さらに架橋剤の残基のサイズを小さくすれば、電気的にも物理的にも極めて近接した状態に、カーボンナノチューブ相互の間隔を構成することができ、また、構造体中のカーボンナノチューブを密に構造化できる。
したがって、前記架橋剤が非自己重合性であれば、本発明における前記カーボンナノチューブ構造体を、カーボンナノチューブ自身が有する電気特性および機械的特性を極めて高い次元で発揮することができるものとすることができる。
この結果、電気接点が、均一で高密度となり、安定した電気的接続とすることができる。なお、本発明において「自己重合性」とは、架橋剤同士が、水分等他の成分の存在の下、あるいは他の成分の存在なしに、相互に重合反応を生じ得る性質をいい、「非自己重合性」とは、そのような性質を有しないことを言う。
このため、微細な電極上に微細な電気接点を形成する必要がある場合(例えば、回路基板上の電極上)にも、高密度で均質な電気接点を形成することができる。
なお、前記架橋剤として非自己重合性のものを選択すれば、本発明の電気部材におけるカーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位が、主として同一の架橋構造となる。また、前記連結基としては、炭化水素を骨格とするものが好ましく、その炭素数としては2〜10個とすることが好ましい。この炭素数を少なくすることで、架橋部位の長さが短くなり、カーボンナノチューブ相互の間隙をカーボンナノチューブ自体の長さと比較して十分に近接させることができ、実質的にカーボンナノチューブのみから構成される網目構造のカーボンナノチューブ構造体を得ることができるため、電気接点をより電気的特性に優れたものとすることができる。
前記官能基としては、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を選択することが好ましく、その場合、前記架橋剤として、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得るものを選択する。
また、好ましい前記架橋剤としては、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤を選択することが好ましく、その場合、前記官能基として、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得るものを選択する。
上記好ましい前記官能基として例示された群、および、上記好ましい前記架橋剤として例示された群より、それぞれ少なくとも1つの官能基および架橋剤を、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるように選択することが好ましい。
前記官能基としては、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を特に好適なものとして挙げることができる。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易であり、しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富むため、その後エステル化して官能基を−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)とすることは比較的容易である。この官能基は架橋反応しやすく、カーボンナノチューブ構造体の形成に適している。
また、当該官能基に対応する前記架橋剤として、ポリオールを挙げることができる。ポリオールは、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)との反応により硬化し、容易に強固な架橋体を形成する。ポリオールの中でも、グリセリンやエチレングリコールは、上記官能基との反応性が良好であることは勿論、それ自体生分解性が高く、環境に対する負荷が小さい。
前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋する架橋部位は、前記官能基が−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)であり、前記架橋剤としてエチレングリコールを用いた場合、−COO(CH22OCO−となり、前記架橋剤としてグリセリンを用いた場合、OH基2つが架橋に寄与すれば−COOCH2CHOHCH2OCO−あるいは−COOCH2CH(OCO−)CH2OHとなり、OH基3つが架橋に寄与すれば−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−となる。架橋部位の化学構造は上記4つからなる群より選ばれるいずれかの化学構造であっても構わない。
また、カーボンナノチューブ構造体の架橋部位の構造として好ましい第2の構造は、複数の官能基同士の化学結合により形成されている構造である。そして、化学結合を生ずる反応が、脱水縮合、置換反応、付加反応および酸化反応のいずれかであることがより好ましい。
このカーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブ同士を、このカーボンナノチューブに結合された官能基同士を化学結合を作ることにより架橋部位を形成して網目状の構造体を形成しているため、結合させる官能基によってカーボンナノチューブ間を結合させる架橋部位のサイズが一定となる。カーボンナノチューブは極めて安定な化学構造であるため、修飾させようとした官能基以外の官能基等が結合する可能性は低く、この官能基同士を化学結合させた場合は、設計した架橋部位の構造とすることができ、カーボンナノチューブ構造体を均質なものとすることができる。
さらに、官能基同士の化学結合であることから、官能基間を架橋剤を用いて架橋した場合に比べて、カーボンナノチューブ間の架橋部位の長さを短くできるので、カーボンナノチューブ構造体が密となり、カーボンナノチューブ特有の効果を奏しやすくなる。
また、本発明のカーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブが複数の架橋部位を介して網目構造の状態となっているので、単なるカーボンナノチューブの分散膜や樹脂分散膜のように、カーボンナノチューブ同士が偶発的に接触しているだけで、実質的に孤立した状態の材料とは異なり、カーボンナノチューブの優れた特性を安定的に活用することができる。
前記複数の官能基同士の化学結合としては、縮合反応では、−COOCO−、−O−、−NHCO−、−COO−および−NCH−から選ばれる一つ、置換反応では−NH−、−S−および−O−から選ばれる少なくとも一つ、付加反応では−NHCOO−、酸化反応では、−S−S−であることが好ましい。
また、反応前にカーボンナノチューブに結合させる前記官能基としては、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−X、−COX(Xはハロゲン原子)、−SH、−CHO、−OSO2CH3、−OSO2(C64)CH3−NH2および−NCOを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を選択することが好ましい。
前記官能基としては、−COOHを特に好適なものとして挙げることができる。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易である。しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富み、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等の脱水縮合剤を利用することで、容易に縮合反応をおこし、カーボンナノチューブ構造体の形成に適する。
なお、前記複数のカーボンナノチューブとしては、電気伝導性の高いマルチウォールカーボンナノチューブであることが、電気接続を安定にする点で好ましい。
(製造方法)
一方、本発明の電気部材の製造方法は、官能基が結合された複数のカーボンナノチューブを含む溶液を基体表面に供給する供給工程と、複数の前記官能基間を化学結合させて、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を電気接点として形成する架橋工程とを含むことを特徴とする。前記電気部材からなる第1の電極、及び第2の電極を、前記第2の電極が前記第1の電極の電気接点と接離可能に実装する実装工程により、本発明の電気装置を製造することができる。
本発明においては、まず基体の表面に、官能基を有するカーボンナノチューブを含む溶液(以下、単に「架橋溶液」という場合がある。)を供給する供給工程で、基体の全面あるいはその表面の一部に、架橋溶液による構造体(膜、層、塊等の態様が挙げられる。)を形成する。そして、続く架橋工程で、この供給後による構造体を硬化して、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を形成する。そしてこのカーボンナノチューブ構造体を電気接点として用いる。この2つの工程を経ることで、基体表面において、カーボンナノチューブ構造体の構造自体を安定化させる。
なお、上記供給工程は、架橋溶液を基体表面に塗布する塗布工程とすることができる。基体上への溶液の塗布の方法としては、直接滴下、スクリーン印刷、スピンコーティングの手法を用いる等公知の手法を選択できる。
微細な電気接点を形成する場合には、好ましくは更に、パターニング工程を備えて、前記カーボンナノチューブ構造体の層(以下、カーボンナノチューブ構造体層と云う場合がある。)を電気接点に応じたパターンにパターニングする。この段階では既に上記架橋工程でこのカーボンナノチューブ構造体層の構造自体が安定化しており、この状態でパターニングをするため、パターニング工程においてカーボンナノチューブが飛散してしまうといった不具合が生じる懸念が無く電気接点に応じたパターンにパターニングすることが可能となる。また、カーボンナノチューブ構造体層の膜自体が構造化しているので、確実にカーボンナノチューブ相互間の接続が確保され、カーボンナノチューブの特性を利用した、電気接点を形成することができるようになる。
官能基間の化学結合を形成するとき、架橋部位を形成するのに好ましい第1の方法は、前記溶液中に含まれる架橋剤により複数の前記官能基間を架橋する方法であり、該架橋剤は非自己重合性であることがより好ましい。
本発明の電気部材及び電気装置の製造方法において、前記官能基としては、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を選択することが好ましく、その場合、前記架橋剤として、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得るものを選択する。
また、好ましい前記架橋剤としては、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤を選択することが好ましく、その場合、前記官能基として、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得るものを選択する。
上記好ましい前記官能基として例示された群、および、上記好ましい前記架橋剤として例示された群より、それぞれ少なくとも1つの官能基および架橋剤を、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるように選択することが好ましい。
前記官能基としては、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を特に好適なものとして挙げることができる。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易であり、しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富むため、その後エステル化して官能基を−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)とすることは比較的容易である。この官能基は架橋反応しやすく、カーボンナノチューブ構造体の形成に適している。
また、当該官能基に対応する前記架橋剤として、ポリオールを挙げることができる。ポリオールは、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)との反応により硬化し、容易に強固な架橋体を形成する。ポリオールの中でも、グリセリンやエチレングリコールは、上記官能基との反応性が良好であることは勿論、それ自体生分解性が高く、環境に対する負荷が小さい。
また、架橋部位を形成する第2の好ましい方法は、複数の前記官能基同士を化学結合させる方法である。
このようにすることで、結合させる官能基によってカーボンナノチューブ間を結合させる架橋部位のサイズが一定となる。カーボンナノチューブは極めて安定な化学構造であるため、修飾させようとした官能基以外の官能基等が結合する可能性は低く、この官能基同士を化学結合させた場合は、設計した架橋部位の構造とすることができ、カーボンナノチューブ構造体を均質なものとすることができる。
さらに、官能基同士の化学結合であることから、官能基間を架橋剤を用いて架橋した場合に比べて、カーボンナノチューブ間の架橋部位の長さを短くできるので、カーボンナノチューブ構造体が密となり、カーボンナノチューブ特有の効果を奏しやすくなる。
官能基同士を化学結合させる反応としては、縮合反応、置換反応、付加反応、酸化反応が特に好ましい。
なお、本発明の電気部材及び電気装置の製造方法において使用する前記複数のカーボンナノチューブとしては、電気伝導性の高い多層カーボンナノチューブとすると、官能基を結合させる場合に、内層のグラフェンシート構造の破壊が少ない点から、カーボンナノチューブの特性を劣化させにくい点で好ましい。
本発明によれば、長期に渡って安定して接触による電気接続が行える電気部材及び電気装置、並びにこれらの製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施の形態の説明を通じて、電気部材の一例である電極を備えた電気装置の一例である開閉器と、その製造方法とに分けて詳細に説明することで具体的に示す。
[開閉器]
本発明の電気装置の一例である開閉器60は、電気接点を、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体で構成することを特徴とするものである。
図9に開閉器60の構成の一例を示す。
図9において、開閉器60は、電気接点14’が基体12’に固着された可動片(第1の電極)50’と、電気接点14が基体12に固着された固定片(第2の電極)50とから構成されている。ここで、電気接点14及び14’には、後述するカーボンナノチューブ構造体層が使用されている。可動片12’は、矢印方向及び反矢印方向に移動してオン、オフ動作をする。すなわち、この可動片12’を図示しない電磁石により矢印方向に移動させ、電気接点14が接触した状態のとき、可動片12’と固定片12の電気的パスがつながる。一方、可動片12’を反矢印方向に動かすことで、図9の状態の様に、電気的パスを切断することが可能となる。
本実施形態の開閉器では、電気接点が後で示すように複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体層で構成されている。しかも、架橋剤が非自己重合性であるため、特性が均一で高密度のネットワークが形成され、表面酸化による劣化が少なく、導電性に優れたものとなり、開閉器の電気接続の安定性が向上する。
なお、カーボンナノチューブ構造体に対してパターニングを要する場合、基体の形状に応じて、直接基体表面でカーボンナノチューブ構造体層をパターニングすることができる場合と、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体層を担持する基体ごと第2の基体に貼付けて利用する場合、あるいは、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体層のみを転写する場合等がある。
開閉器の電気接点が形成される基体としては、特に限定されるものではないが、金属、導電性プラスチック、導電性セラミックス、導電化した半導体等を利用することができる。
<カーボンナノチューブ構造体>
本発明において「カーボンナノチューブ構造体」とは、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成する構造体である。相互に架橋した網目構造を構成するようにカーボンナノチューブの構造体を形成することができれば、当該カーボンナノチューブ構造体は如何なる方法で形成されたものであっても構わないが、後述する本発明の電気装置の製造方法により製造されたものであることが、容易に製造可能であるとともに、高性能な電気接点を得ることができ、しかも特性の均一化や制御が容易である。
後述する電気装置の製造方法により製造された、電気接点として用いられる前記カーボンナノチューブ構造体の第1の構造は、官能基を有するカーボンナノチューブおよび前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を含む溶液(架橋溶液)を硬化させることにより、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤とを架橋反応させて架橋部位が形成されてなるものである。また、カーボンナノチューブ構造体の第2の構造は、官能基を有するカーボンナノチューブの官能基同士が化学結合して架橋部位が形成されてなるものである。
以下、当該製造方法による例を挙げて、本実施形態の電気部材及び電気装置の電気接点における前記カーボンナノチューブ構造体層について説明する。なお、特に説明しない場合は、架橋部位の構造を問わない事項である。
(カーボンナノチューブ)
本発明において、主要な構成要素であるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブでも、二層以上の多層カーボンナノチューブでも構わない。いずれのカーボンナノチューブを用いるか、あるいは双方を混合するかは、電気部材の用途により、あるいはコストを考慮して、適宜、選択すればよい。
カーボンナノチューブ構造体層を電気接点とする場合には、当該層に含まれる前記複数のカーボンナノチューブについて、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWNT)とすることが、配線による抵抗損失を抑えることができるため好ましい。導電性のシングルウォールカーボンナノチューブ(SWNT)を用いることも可能であるが、SWNTは半導体型のものと導体型のものが混合して製造され、導体型のものを抽出するのが困難なため、主として導体型が生産されるMWNTを用いる方が、カーボンナノチューブ構造体層に電気接点の機能を担わせる場合には好ましい。
また、単層カーボンナノチューブの変種であるカーボンナノホーン(一方の端部から他方の端部まで連続的に拡径しているホーン型のもの)、カーボンナノコイル(全体としてスパイラル状をしているコイル型のもの)、カーボンナノビーズ(中心にチューブを有し、これがアモルファスカーボン等からなる球状のビーズを貫通した形状のもの)、カップスタック型ナノチューブ、カーボンナノホーンやアモルファスカーボンで外周を覆われたカーボンナノチューブ等、厳密にチューブ形状をしていないものも、本発明においてカーボンナノチューブとして用いることができる。
さらに、カーボンナノチューブ中に金属等が内包されている金属内包ナノチューブ、フラーレンまたは金属内包フラーレンがカーボンナノチューブ中に内包されるピーポッドナノチューブ等、何らかの物質をカーボンナノチューブ中に内包したカーボンナノチューブも、本発明においてカーボンナノチューブとして用いることができる。
以上のように、本発明においては、一般的なカーボンナノチューブのほか、その変種や、種々の修飾が為されたカーボンナノチューブ等、いずれの形態のカーボンナノチューブでも、その反応性から見て問題なく使用することができる。したがって、本発明における「カーボンナノチューブ」には、これらのものが全て、その概念に含まれる。
これらカーボンナノチューブの合成は、従来から公知のアーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法のいずれの方法によっても行うことができ、本発明においては制限されない。これらのうち、高純度なカーボンナノチューブが合成できるとの観点からは、磁場中でのアーク放電法が好ましい。
用いられるカーボンナノチューブの直径としては、0.3nm以上100nm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの直径が、当該範囲を超えると、合成が困難であり、コストの点で好ましくない。カーボンナノチューブの直径のより好ましい上限としては、30nm以下である。
一方、一般的にカーボンナノチューブの直径の下限としては、その構造から見て、0.3nm程度であるが、あまりに細すぎると合成時の収率が低くなる点で好ましくない場合もあるため、1nm以上とすることがより好ましく、10nm以上とすることがさらに好ましい。
用いられるカーボンナノチューブの長さとしては、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの長さが、当該範囲を超えると、合成が困難、もしくは、合成に特殊な方法が必要となりコストの点で好ましくなく、当該範囲未満であると、一本のカーボンナノチューブにおける架橋結合点数が少なくなる点で好ましくない。カーボンナノチューブの長さの上限としては、10μm以下であることがより好ましく、下限としては、1μm以上であることがより好ましい。
前記架橋溶液におけるカーボンナノチューブの含有量としては、カーボンナノチューブの長さ・太さ、単層か多層か、有する官能基の種類・量、架橋剤もしくは官能基同士の結合のための添加剤の種類・量、溶剤やその他添加剤の有無・種類・量、等により一概には言えず、硬化後良好なカーボンナノチューブ構造体が形成される程度に高濃度であることが望まれるが、塗布適性が低下するので、あまり高くし過ぎないことが望ましい。
また、具体的なカーボンナノチューブの割合としては、既述の如く一概には言えないが、官能基の質量は含めないで、架橋溶液全量に対し0.01〜10g/l程度の範囲から選択され、0.1〜5g/l程度の範囲が好ましく、0.5〜1.5g/l程度の範囲がより好ましい。
使用しようとするカーボンナノチューブの純度が高く無い場合には、架橋溶液の調製前に、予め精製して、純度を高めておくことが望ましい。本発明においてこの純度は、高ければ高いほど好ましいが、具体的には90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。純度が低いと、不純物であるアモルファスカーボンやタール等の炭素生成物に架橋剤が架橋して、カーボンナノチューブ間の架橋距離が変動してしまい、所望の特性を得られない場合があるためである。カーボンナノチューブの精製方法に特に制限はなく、従来公知の方法をいずれも採用することができる。
かかるカーボンナノチューブには、所定の官能基が付加された状態で、カーボンナノチューブ構造体の形成に供される。このとき付加される官能基としては、カーボンナノチューブ構造体を形成するのに、既述の第1の方法によるか、第2の方法によるかにより、好ましいものが異なってくる(前者の場合を「官能基1」、後者の場合を「官能基2」とする)。
なお、カーボンナノチューブへの官能基の導入方法については、後述の(架橋溶液の調製方法)の項において説明する。
以下、第1の方法と第2の方法に分けて、カーボンナノチューブ構造体の形成に供し得る構成成分について説明する。
(第1の方法の場合)
架橋部位を架橋剤を用いて形成する第1の方法では、カーボンナノチューブに接続される官能基としては、カーボンナノチューブに化学的に付加させることができ、かつ、何らかの架橋剤により架橋反応を起こし得るものであれば、特に制限されず、如何なる官能基であっても選択することができる。具体的な官能基としては、−COOR、−COX、−MgX、−X(以上、Xはハロゲン)、−OR、−NR12、−NCO、−NCS、−COOH、−OH、−NH2、−SH、−SO3H、−R''CH2OH、−CHO、−CN、−COSH、−SR、−SiR’3(以上、R、R1、R2、R’およびR''は、それぞれ独立に、置換または未置換の炭化水素基である。R、R1、R2、およびR’は、1価の炭化水素基であって、それぞれ独立に、好ましくは−Cn2n-1、又は−Cn2n+1から選ばれ、nは1〜10の整数である。中でもより好ましくは、メチル基、又はエチル基である。R''は、2価の炭化水素基であって、好ましくは−Cn2n−から選ばれ、nは1〜10の整数である。中でもより好ましくは、メチレン基、又はエチレン基である。)等の基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基である。Rは、好ましくは−Cn2n-1、又は−Cn2n+1から選ばれ、nは1〜10の整数である。中でもより好ましくは、メチル基、又はエチル基である。)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を選択することが好ましく、その場合、前記架橋剤として、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得るものを選択する。
特に、−COOR(Rは、上記と同様である。)は、カルボキシル基がカーボンナノチューブへの導入が比較的容易で、それにより得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)をエステル化させることで容易に官能基として導入することができ、しかも、架橋剤による反応性も良好であることから、特に好ましい。
官能基−COORにおけるRは、置換または未置換の炭化水素基であり特に制限は無いが、反応性、溶解度、粘度、架橋溶液の溶剤としての使いやすさの観点から、炭素数が1〜10の範囲のアルキル基であることが好ましく、1〜5の範囲のアルキル基であることがより好ましく、特にメチル基またはエチル基が好ましい。
官能基の導入量としては、カーボンナノチューブの長さ・太さ、単層か多層か、官能基の種類、電気部材の用途等により異なり、一概には言えないが、1本のカーボンナノチューブに2以上の官能基が付加する程度の量とすることが、得られる架橋体の強度、すなわちカーボンナノチューブ構造体の強度の観点から好ましい。なお、カーボンナノチューブへの官能基の導入方法については、後述の[電気装置の製造方法]の項において説明する。
(架橋剤)
前記架橋溶液において必須成分である架橋剤は、カーボンナノチューブの有する前記官能基と架橋反応を起こすものであればいずれも用いることができる。換言すれば、前記官能基の種類によって、選択し得る架橋剤の種類は、ある程度限定されてくる。また、これらの組み合わせにより、その架橋反応による硬化条件(加熱、紫外線照射、可視光照射、自然硬化等)も、自ずと定まってくる。
具体的に好ましい前記架橋剤としては、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤を選択することが好ましく、その場合、前記官能基として、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得るものを選択する。
特に、既述の好ましい前記官能基として例示された群、および、上記好ましい前記架橋剤として例示された群より、それぞれ少なくとも1つの官能基および架橋剤を、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるように選択することが好ましい。下記表1に、カーボンナノチューブの有する官能基と、それに対応する架橋反応可能な架橋剤との組み合わせを、その硬化条件とともに列挙する。
Figure 2005235728
これらの組み合わせの中でも、官能基側の反応性が良好な−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基である。Rは、好ましくは−Cn2n-1、又は−Cn2n+1から選ばれ、nは1〜10の整数である。中でもより好ましくは、メチル基、又はエチル基である。)と、容易に強固な架橋体を形成するポリオールとの組み合わせが好適なものとして挙げられる。なお、本発明で言う「ポリオール」とは、OH基を2以上有する有機化合物の総称であり、これらの中でも炭素数2〜10(より好ましくは2〜5)、OH基数2〜22(より好ましくは2〜5)のものが、架橋性や過剰分投入した時の溶剤適性、生分解性による反応後の廃液の処理性(環境適性)、ポリオール合成の収率等の観点から好ましい。特に上記炭素数は、得られるカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブ相互間を狭めて実質的な接触状態にする(近づける)ことができる点で、上記範囲内で少ない方が好ましい。具体的には、特にグリセリンやエチレングリコールが好ましく、これらの内の一方もしくは双方を架橋剤として用いることが好ましい。
別の視点から見ると、前記架橋剤としては、非自己重合性の架橋剤であることが好ましい。上記ポリオールの例として挙げたグリセリンやエチレングリコールは勿論、ブテンジオール、ヘキシンジオール、ヒドロキノンおよびナフタレンジオールも非自己重合性の架橋剤であり、より一般的に示せば、自身の中に相互に重合反応を生じ得るような官能基の組を有していないことが、非自己重合性の架橋剤の条件となる。逆に言えば、自己重合性の架橋剤とは、自身の中に相互に重合反応を生じ得るような官能基の組を有しているもの(例えば、アルコキシド)が挙げられる。
本発明の電気部材及び電気装置の製造方法において、前記第1の方法の場合には、前記供給工程で使用する前記官能基が結合された複数のカーボンナノチューブおよび架橋剤を含む前記溶液に、さらに溶剤を含ませて、これを前記基体表面に供給することができ、前記架橋剤の種類によっては、当該架橋剤が、その溶剤を兼ねることも可能である。
カーボンナノチューブ構造体を形成するには、前記官能基が結合された複数のカーボンナノチューブと、前記架橋剤とを基体表面に供給し(本発明の電気部材又は電気装置の製造方法における供給工程)、前記官能基間を化学結合させることにより架橋部位を形成(本発明の電気部材又は電気装置の製造方法における架橋工程)すればよい。前記官能基が結合された複数のカーボンナノチューブと、前記架橋剤とを前記基体表面に供給する際に、これらと溶剤とを含む溶液(架橋溶液)を前記基体表面に供給すること、特に架橋塗布液として塗布して架橋体膜を形成することは、簡便で低コストであり、作業を短時間で行うことができる点で好ましい。
(第2の方法の場合)
また、カーボンナノチューブ構造体の架橋部位を、複数のカーボンナノチューブが、少なくともその一端がそれぞれ異なるカーボンナノチューブに結合された複数の官能基同士の化学結合により形成して、相互に架橋した網目構造とする第2の方法の場合、カーボンナノチューブに結合させる官能基としては、カーボンナノチューブに化学的に付加させることができ、かつ、何らかの添加剤により官能基同士を反応させるものであれば、特に制限されず、如何なる官能基であっても選択することができる。具体的な官能基としては、−COOR、−COX、−MgX、−X(以上、Xはハロゲン)、−OR、−NR12、−NCO、−NCS、−COOH、−OH、−NH2、−SH、−SO3H、−R''CH2OH、−CHO、−CN、−COSH、−SR、−SiR’3(以上、R、R1、R2、R’およびR''は、それぞれ独立に、置換または未置換の炭化水素基である。R、R1、R2、およびR’は、1価の炭化水素基であって、それぞれ独立に、好ましくは−Cn2n-1、又は−Cn2n+1から選ばれ、nは1〜10の整数である。中でもより好ましくは、メチル基、又はエチル基である。R''は、2価の炭化水素基であって、好ましくは−Cn2n−から選ばれ、nは1〜10の整数である。中でもより好ましくは、メチレン基、又はエチレン基である。)等の基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
官能基同士を化学結合させる反応としては、脱水縮合、置換反応、付加反応、酸化反応が特に好ましい。これら各反応別に上記官能基から好ましいものを挙げると以下のようになる。
本発明の電気部材又は電気装置の製造方法において、前記第2の方法の場合には、前記供給工程で使用する前記官能基が結合された複数のカーボンナノチューブ、および必要に応じて前記添加剤を溶剤に含ませて供給用の溶液(架橋溶液)とし、これを前記基体表面に供給することができる。
前記官能基同士を化学結合させる反応が脱水縮合である場合には、前記添加剤として縮合剤を添加することが好ましい。具体的に好ましい縮合剤としては、酸触媒、脱水縮合剤、たとえば硫酸、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミドを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの縮合剤を選択することが好ましい。その場合、前記官能基として、選択された縮合剤により官能基同士が反応を起こし得るものを選択する。
また、脱水縮合で用いる前記官能基としては、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基である。Rは、好ましくは−Cn2n-1、又は−Cn2n+1から選ばれ、nは1〜10の整数である。中でもより好ましくは、メチル基、又はエチル基である。)、−COOH、−COX(Xはハロゲン原子)、−OH、−CHO、−NH2からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることが好ましい。
脱水縮合で用いる前記官能基としては、−COOHを特に好適なものとして挙げることができる。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易であり、しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富む。このため網目構造を形成するための官能基を、一本のカーボンナノチューブの複数箇所に導入しやすく、さらにこの官能基は脱水縮合しやすいことから、カーボンナノチューブ構造体の形成に適している。脱水縮合で用いる前記官能基が−COOHである場合、特に好適な縮合剤としては、既述の硫酸、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびジシクロヘキシルカルボジイミドである。
前記官能基同士を化学結合させる反応が置換反応である場合には、前記添加剤として塩基を添加することが好ましい。添加可能な塩基としては、特に制限は無く、ヒドロキシル基の酸性度に応じて任意の塩基を選択すればよい。
具体的に好ましい前記塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピリジンおよびナトリウムエトキシド等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの塩基を選択することが好ましく、その場合、前記官能基として、選択された塩基により官能基同士が置換反応を起こし得るものを選択する。また、このとき前記官能基としては、−NH2、−X(Xはハロゲン原子)、−SH、−OH、−OSO2CH3および−OSO2(C64)CH3からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることが好ましい。
前記官能基同士を化学結合させる反応が付加反応である場合、必ずしも添加剤は必要としない。このとき前記官能基としては、−OHおよび/または−NCOであることが好ましい。
前記官能基同士を化学結合させる反応が酸化反応である場合も、必ずしも添加剤は必要としないが、前記添加剤として酸化反応促進剤を添加することが好ましい。添加するのに好適な酸化反応促進剤としては、ヨウ素を挙げることができる。また、このとき前記官能基としては、−SHであることが好ましい。
また、これらの官能基を一部に含む分子をカーボンナノチューブに結合させ、先に列挙した好ましい官能基部分で化学結合させることも可能である。この場合においても、カーボンナノチューブに結合させる分子量の大きい官能基は意図したように結合されているので、架橋部位の長さは制御可能となる。
官能基同士を化学結合させるに際しては、前記官能基同士の化学結合を生じさせる添加剤を用いることができる。かかる添加剤としては、カーボンナノチューブの有する前記官能基同士を反応させるものであればいずれも用いることができる。換言すれば、前記官能基の種類および反応の種類によって、選択し得る添加剤の種類は、ある程度限定されてくる。また、これらの組み合わせにより、その反応による硬化条件(加熱、紫外線照射、可視光照射、自然硬化等)も、自ずと定まってくる。
既述の好ましい前記官能基として例示された群より、それぞれ少なくとも2つの官能基が相互に反応を起こし得る組み合わせとなるように選択することが好ましい。下記表2に、相互に架橋反応をするカーボンナノチューブの有する官能基(A)および(B)と、それに対応した反応名を列挙する。
Figure 2005235728
カーボンナノチューブ構造体を形成するには、前記官能基が結合された複数のカーボンナノチューブ、および必要に応じて前記添加剤を基体表面に供給し(本発明の電気部材又は電気装置の製造方法における供給工程)、前記官能基間を化学結合させることにより架橋部位を形成(本発明の電気部材又は電気装置の製造方法における架橋工程)すればよい。前記官能基が結合された複数のカーボンナノチューブを前記基体表面に供給する際に、これらと溶剤とを含む溶液(架橋溶液)を前記基体表面に供給すること、特に架橋塗布液として塗布して架橋体膜を形成することは、本発明の電気部材及び電気装置を簡便かつ低コストに、短時間の作業で形成できる点で好ましい。
(その他の添加剤)
前記架橋溶液(第1の方法と第2の方法の双方を含む)においては、溶剤、粘度調整剤、分散剤、架橋促進剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。溶剤は、前記架橋剤もしくは官能基結合用の添加剤のみでは塗布適性が十分で無い場合に添加する。使用可能な溶剤としては、特に制限は無く、用いる架橋剤や官能基結合用の添加剤の種類に応じて選択すればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等の有機溶剤や水、酸水溶液、アルカリ水溶液等が挙げられる。かかる溶剤の添加量としては、塗布適性を考慮して適宜設定すればよいが、特に制限は無い。
粘度調整剤も、前記架橋剤や官能基結合用の添加剤のみでは塗布適性が十分で無い場合に添加する。使用可能な溶剤としては、特に制限は無く、用いる架橋剤や官能基結合用の添加剤の種類に応じて選択すればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、THF等が挙げられる。
これら粘度調整剤の中には、その添加量によっては溶剤としての機能を有するものがあるが、両者を明確に区別することに意義は無い。かかる粘度調整剤の添加量としては、塗布適性を考慮して適宜設定すればよいが、特に制限は無い。
分散剤は、架橋溶液中でのカーボンナノチューブないし架橋剤あるいは官能基結合用の添加剤の分散安定性を保持するために添加するものであり、従来公知の各種界面活性剤、水溶性有機溶剤、水、酸水溶液やアルカリ水溶液等が使用できる。ただし、本発明において、架橋溶液の成分は、それ自体分散安定性が高いため、分散剤は必ずしも必要ではない。また、得られる本発明の電気部材の用途によっては、カーボンナノチューブ構造体に分散剤等の不純物が含まれないことが望まれる場合もあり、その場合には勿論、分散剤は、添加しないか、極力少ない量のみしか添加しない。
つぎに、前記架橋溶液における架橋剤や官能基結合用の添加剤の含有量としては、架橋剤の種類(自己重合性か非自己重合性かの別を含む)や官能基結合用の添加剤の種類は勿論、カーボンナノチューブの長さ・太さ、単層か多層か、有する官能基の種類・量、溶剤やその他添加剤の有無・種類・量、等により一概には言えない。特に、グリセリンやエチレングリコールなどは、それ自身粘度があまり高くなく、溶剤の特性を兼ねさせることが可能であるため、過剰に添加することも可能である。
<架橋溶液の調製方法>
次に、架橋溶液の調製方法について説明する。前記架橋溶液は、官能基を有するカーボンナノチューブに、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤あるいは官能基結合用の添加剤を混合することで調製される(混合工程)。当該混合工程に先立ち、カーボンナノチューブに官能基を導入する付加工程を含んでもよい。
官能基を有するカーボンナノチューブを出発原料とすれば、混合工程の操作のみを行えばよいし、通常のカーボンナノチューブそのものを出発原料とすれば、付加工程から操作を行えばよい。
(付加工程)
前記付加工程は、カーボンナノチューブに所望の官能基を導入する工程である。官能基の種類によって導入方法が異なり、一概には言えない。直接的に所望の官能基を付加させてもよいが、一旦、付加が容易な官能基を導入した上で、その官能基ないしその一部を置換したり、その官能基に他の官能基を付加させたり等の操作を行い、目的の官能基としても構わない。
また、カーボンナノチューブにメカノケミカルな力を与えて、カーボンナノチューブ表面のグラフェンシートをごく一部破壊ないし変性させて、そこに各種官能基を導入する方法もある。
また、製造時点から表面に欠陥を多く有する、カップスタック型のカーボンナノチューブや気相成長法により生成されるカーボンナノチューブを用いると、官能基を比較的容易に導入できる。しかし、グラフェンシート構造が完全である方が、カーボンナノチューブの特性を有効に得られるとともに、特性もコントロールしやすいため、マルチウォールカーボンナノチューブを用いて、最外層に電気接点として適度な欠陥を形成して官能基を結合し架橋させる一方で、構造欠陥の少ない内層をカーボンナノチューブの特性を発揮させる層として利用することが特に好ましい。
付加工程の操作としては、特に制限は無く、公知のあらゆる方法を用いて構わない。その他、特許文献3に各種方法が記載されており、目的に応じて、本発明においても利用することができる。
前記官能基の中でも、特に好適な−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基である。Rは、好ましくは−Cn2n-1、又は−Cn2n+1から選ばれ、nは1〜10の整数である。中でもより好ましくは、メチル基、又はエチル基である。)を導入する方法について説明する。カーボンナノチューブに−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を導入するには、一旦、カーボンナノチューブにカルボキシル基を付加し(1)、さらにこれをエステル化(2)すればよい。
(1)カルボキシル基の付加
カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入するには、酸化作用を有する酸とともに還流すればよい。この操作は比較的容易であり、しかも反応性に富むカルボキシル基を付加することができるため、好ましい。当該操作について、簡単に説明する。
酸化作用を有する酸としては、濃硝酸、過酸化水素水、硫酸と硝酸の混合液、王水等が挙げられる。特に濃硝酸を用いる場合には、その濃度としては、5質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。
還流は、常法にて行えばよいが、その温度としては、使用する酸の沸点付近が好ましい。例えば、濃硝酸では120〜130℃の範囲が好ましい。また、還流の時間としては、30分〜20時間の範囲が好ましく、1時間〜8時間の範囲がより好ましい。
還流の後の反応液には、カルボキシル基が付加したカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブカルボン酸)が生成しており、室温まで冷却し、必要に応じて分離操作ないし洗浄を行うことで、目的のカーボンナノチューブカルボン酸が得られる。
(2)エステル化
得られたカーボンナノチューブカルボン酸に、アルコールを添加し脱水してエステル化することで、目的の官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基である。Rは、好ましいものについては既述の通り。)を導入することができる。
前記エステル化に用いるアルコールは、上記官能基の式中におけるRに応じて決まる。すなわち、RがCH3であればメタノールであるし、RがC25であればエタノールである。
一般にエステル化には触媒が用いられるが、本発明においても従来公知の触媒、例えば、硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸等を用いることができる。本発明では、副反応を起こさないという観点から触媒として硫酸を用いることが好ましい。
前記エステル化は、カーボンナノチューブカルボン酸に、アルコールと触媒とを添加し、適当な温度で適当な時間還流すればよい。このときの温度条件および時間条件は、触媒の種類、アルコールの種類等により異なり一概には言えないが、還流温度としては、使用するアルコールの沸点付近が好ましい。例えば、メタノールでは60〜70℃の範囲が好ましい。また、還流の時間としては、1〜20時間の範囲が好ましく、4〜6時間の範囲がより好ましい。
エステル化の後の反応液から反応物を分離し、必要に応じて洗浄することで、官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基である。Rは、好ましいものについては既述の通り。)が付加したカーボンナノチューブを得ることができる。
(混合工程)
前記混合工程は、官能基を有するカーボンナノチューブに、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤あるいは官能基結合用の添加剤を必要に応じて混合し、架橋溶液を調製する工程である。混合工程においては、官能基を有するカーボンナノチューブおよび架橋剤のほか、既述の[開閉器]の項で説明したその他の成分も混合する。そして、好ましくは、塗布適性を考慮して溶剤や粘度調整剤の添加量を調整することで、基体への供給(塗布)直前の架橋溶液(架橋塗布液)架橋溶液を調製する。
混合に際しては、単にスパチュラで攪拌したり、攪拌羽式の攪拌機、マグネチックスターラーあるいは攪拌ポンプで攪拌するのみでも構わないが、より均一にカーボンナノチューブを分散させて、保存安定性を高めたり、カーボンナノチューブの架橋による網目構造を全体にくまなく張り巡らせるには、超音波分散機やホモジナイザーなどで強力に分散させても構わない。ただし、ホモジナイザーなどのように、攪拌のせん断力の強い攪拌装置を用いる場合、含まれるカーボンナノチューブを切断してしまったり、傷付けてしまったりする虞があるので、極短い時間行えばよい。
以上説明した架橋溶液を、前記基体の表面に対して供給し、硬化することにより、カーボンナノチューブ構造体が形成される。供給方法や硬化方法は、後述の[電気装置の製造方法]の項で詳述する。
本発明におけるカーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブがネットワーク化された状態となっている。詳しくは、該カーボンナノチューブ構造体は、マトリックス状に硬化したものとなり、カーボンナノチューブ同士が架橋部位を介して接続しており、電子やホールの高い伝送特性といったカーボンナノチューブ自身が有する特徴を存分に発揮することができる。すなわち、当該カーボンナノチューブ構造体層は、カーボンナノチューブ相互が緊密に接続しており、しかも他の結着剤等を含まないことから、実質的にカーボンナノチューブのみからなるため、カーボンナノチューブが有する本来の特性が最大限に生かされる。
本発明におけるカーボンナノチューブ構造体層の厚みとしては、用途に応じて、極薄いものから厚めのものまで、幅広く選択することができる。使用する前記架橋溶液中のカーボンナノチューブの含有量を下げ(単純には、薄めることにより粘度を下げ)、これを薄膜状に塗布すれば極薄い塗布膜となり、同様にカーボンナノチューブの含有量を上げれば厚めの塗布膜となる。さらに、塗布を繰返せば、より一層厚膜の塗布膜を得ることもできる。極薄い塗布膜としては、10nm程度の厚みから十分に可能であり、重ね塗りにより上限無く厚い塗布膜を形成することが可能である。一回の塗布で可能な厚膜としては、5μm程度である。また、含有量などを調整した架橋溶液を型に注入し、結合させることで所望の形状にすることも可能である。
前記第1の方法により前記カーボンナノチューブ構造体を形成しようとする場合には、前記カーボンナノチューブ同士が架橋する部位、すなわち、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤との架橋反応による架橋部位は、前記官能基の架橋反応後に残存する残基同士を、前記架橋剤の架橋反応後に残存する残基である連結基で連結した架橋構造となっている。
既述の如く、この場合の前記架橋溶液においては、その構成要素である架橋剤が非自己重合性であることが好ましい。前記架橋剤が非自己重合性であれば、最終的に形成されるカーボンナノチューブ構造体における前記連結基については、前記架橋剤1つのみの残基により構成されることになり、架橋されるカーボンナノチューブ相互の間隔を、使用した架橋剤の残基のサイズに制御することができるため、所望のカーボンナノチューブのネットワーク構造を高い再現性で得られるようになる。また、カーボンナノチューブ間に架橋剤が多重に介在しないので、カーボンナノチューブ構造体中のカーボンナノチューブの実質的な密度を高めることができる。さらに架橋剤の残基のサイズを小さくすれば、電気的にも物理的にも極めて近接した状態(カーボンナノチューブ相互が、実質的に直接接触した状態)に、カーボンナノチューブ相互の間隔を構成することができる。
なお、カーボンナノチューブにおける官能基に単一のものを、架橋剤に単一の非自己重合性のものを、それぞれ選択した架橋溶液により、カーボンナノチューブ構造体層を形成した場合、当該層における前記架橋部位は、同一の架橋構造となる(例示1)。また、カーボンナノチューブにおける官能基に複数種のものを、および/または、架橋剤に複数種の非自己重合性の架橋剤を、それぞれ選択した架橋溶液により、カーボンナノチューブ構造体層を形成した場合であっても、当該層における前記架橋部位は、主として用いた前記官能基および非自己重合性の架橋剤の組み合わせによる架橋構造が、主体的となる(例示2)。
これに対して、カーボンナノチューブにおける官能基や架橋剤が単一であるか複数種であるかを問わず、架橋剤に自己重合性のものを選択した架橋溶液により、カーボンナノチューブ構造体層を形成した場合、当該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位は、架橋剤同士の連結(重合)個数が異なる数多くの連結基が混在した状態となり、特定の架橋構造が主体的とはなり得ない。
つまり、前記架橋剤として非自己重合性のものを選択すれば、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位が、架橋剤1つのみの残基で官能基と結合するため、主として同一の架橋構造となる。なお、ここで言う「主として同一」とは、上記(例示1)の如く、架橋部位の全てが同一の架橋構造となる場合は勿論のこと、上記(例示2)の如く、架橋部位全体に対して、主として用いた前記官能基および非自己重合性の架橋剤の組み合わせによる架橋構造が、主体的となる場合も含む概念とする。
「主として同一」と言った場合に、全架橋部位における「同一である架橋部位の割合」としては、例えば架橋部位において、カーボンナノチューブのネットワーク形成とは目的を異にする機能性の官能基や架橋構造を付与する場合も想定されることから、一律に下限値を規定し得るわけではない。ただし、強固なネットワークでカーボンナノチューブ特有の高い電気的ないし物理的特性を実現するためには、全架橋部位における「同一である架橋部位の割合」としては、個数基準で50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、全て同一であることが最も好ましい。これらの個数割合は、赤外線スペクトルで架橋構造に対応した吸収スペクトルの強度比を計測する方法等により求めることができる。
このように、カーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位が、主として同一の架橋構造のカーボンナノチューブ構造体層であれば、カーボンナノチューブの均一なネットワークを所望の状態に形成することができ、電気的ないし物理的特性を、均質で良好、さらには期待した特性もしくは高い再現性をもって構成することができる。
また、前記連結基としては、炭化水素を骨格とするものが好ましい。ここで言う「炭化水素を骨格」とは、架橋されるカーボンナノチューブの官能基の架橋反応後に残存する残基同士を連結するのに資する、連結基の主鎖の部分が、炭化水素からなるものであることを言い、この部分の水素が他の置換基に置換された場合の側鎖の部分は考慮されない。勿論、連結基全体が炭化水素からなることが、より好ましい。
前記炭化水素の炭素数としては2〜10個とすることが好ましく、2〜5個とすることがより好ましく、2〜3個とすることがさらに好ましい。なお、前記連結基としては、2価以上であれば特に制限は無い。
カーボンナノチューブの有する官能基と架橋剤との好ましい組み合わせとして既に例示した、前記官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基である。Rは、好ましいものについては既述の通り。)とエチレングリコールとの架橋反応では、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋する架橋部位が−COO(CH22OCO−となる。
また、前記官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基である。Rは、好ましいものについては既述の通り。)とグリセリンとの架橋反応では、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋する架橋部位が、OH基2つが架橋に寄与すれば−COOCH2CHOHCH2OCO−あるいは−COOCH2CH(OCO−)CH2OHとなり、OH基3つが架橋に寄与すれば−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−となる。
以上説明したように、前記第1の方法によりカーボンナノチューブ構造体を形成する場合の、カーボンナノチューブ構造体が、複数のカーボンナノチューブが複数の架橋部位を介して網目構造の状態となった状態で形成されているので、単なるカーボンナノチューブの分散膜のように、カーボンナノチューブ同士の接触状態並びに配置状態が不安定になることがなく、電子やホールの高い伝送特性といった電気的特性や、熱伝導、強靭性といった物理的特性、その他光吸収特性等カーボンナノチューブに特有の性質を安定して発揮することができる。
一方、前記第2の方法により前記カーボンナノチューブ構造体を形成しようとする場合には、前記複数のカーボンナノチューブ同士が架橋する部位、すなわち、前記複数のカーボンナノチューブが有するそれぞれの前記官能基同士の架橋反応による架橋部位は、前記官能基の架橋反応後に残存する残基同士が連結した架橋構造となっている。この場合も、該カーボンナノチューブ構造体は、マトリックス状にカーボンナノチューブ同士が架橋部位を介して接続しており、電子やホールの高い伝送特性といったカーボンナノチューブ自身が有する特徴を発揮しやすくできる。すなわち、当該カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブ相互が緊密に接続しており、しかも他の結着剤等を含まないことから、実質的にカーボンナノチューブのみから構成されたものであると云える。
また官能基同士を反応させて架橋部位を形成しているため、カーボンナノチューブ構造体中のカーボンナノチューブの実質的な密度を高めることができ、さらに官能基のサイズを小さくすれば、電気的にも物理的にも極めて近接した状態に、カーボンナノチューブ相互の間隔を構成することができ、カーボンナノチューブ単体の特性をより引き出しやすくなる。
また、架橋部位が官能基同士の化学結合であるため、カーボンナノチューブ構造体が主として同一の架橋構造となるので、カーボンナノチューブの均一なネットワークを所望の状態に形成することができ、電気的ないし物理的特性を、均質で良好、さらには期待した特性もしくは高い再現性をもって構成することができる。
本発明の電気部材には、前記カーボンナノチューブ構造体以外の他の層が形成されていてもよい。例えば、前記基体表面と前記カーボンナノチューブ構造体との間に、両者の接着性を向上させるための接着層を設けることは、カーボンナノチューブ構造体の接着強度を高めることができ、好ましい。接着層の形成方法やその他詳細は、[電気装置の製造方法]の項にて説明することとする。
以上説明したように、本実施形態の開閉器で用いる電気接点は、カーボンナノチューブ構造体が、複数のカーボンナノチューブが複数の架橋部位を介して網目構造の状態となった状態で形成されているので、単なるカーボンナノチューブの分散膜のように、カーボンナノチューブ同士の接触状態並びに配置状態が不安定になることがなく、化学的に安定であることから酸化により絶縁化されにくく、カーボンナノチューブ構造体が強靭性かつ柔軟であることから、繰り返しのオンオフ動作による衝撃に強く、長期に渡って良好な電気接続を得られる。また、カーボンナノチューブ構造体層のパターンの自由度も高いので、電気接点として(多様な形状)とすることができる。
なお、開閉器以外の公知の電気接点を用いる電気装置に対しても、本発明を適用することができ、基板上の配線パターン上に電気接点となるカーボンナノチューブ構造体を設けた後、集積回路などの電子素子と接触により電気接続させたり、基板ではなく電線等の先端電極上にカーボンナノチューブ構造体を設けて、他の電極などと接続する方法等がある。接触状態の固定方法としては、パッケージを用いて電極と接点を挟み込んだり、圧着金具によって固定する等できる。
また、電気接点を他の電極と接触させた後に、樹脂等により固定することで、接触状態を維持させることもできる。
あるいは、カーボンナノチューブ構造体とポリマーとの複合体を形成させて用いることもできる。この場合、カーボンナノチューブ構造体が形成された後にポリマーを複合する方法と、カーボンナノチューブに結合している官能基同士を合成する架橋工程中にモノマーを混合し、複合化させる方法がある。後者の具体的手法としては、例えばカルボン酸で修飾されたナノチューブをグリセリンを架橋剤として架橋する際に、硫酸などの脱水且つ酸化反応を生じさせる触媒を用いて重合させることで、グリセリンを原料とするポリエーテルケトン類ポリマーと、カーボンナノチューブ構造体とが高密度に複合化され、極めて高度の高く、耐熱性の高い電気接点を得ることができる。
[電気装置の製造方法]
本発明の電気装置の一形態である開閉器の製造方法を示しながら、本発明の電気部材及び電気装置の製造方法の実施の形態を示す。具体的には、(A)基体上に、官能基を有するカーボンナノチューブ、および、必要に応じて、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤あるいは官能基同士を化学結合させる添加剤を含む溶液(架橋溶液)を供給する供給工程と、(B)供給後の前記溶液を硬化して、電気接点として用いられ、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体層を形成する架橋工程とを含む。
さらに、(C)前記カーボンナノチューブ構造体層を電気接点に応じたパターンにパターニングするパターニング工程等、他の工程を含めてもよい。
以下、これら各工程に分けて、本形態の開閉器の製造方法の詳細について図1(a)〜(e)を用いて説明する。
ここで図1(a)〜(e)は、本形態の開閉器の製造方法の一例(後述する(C−A−2))を説明するための、製造工程中の基体表面の模式断面図であり、製造工程添って(a)〜(e)の順に示したものである。図中、12は板状の基体、14はカーボンナノチューブ構造体層、16はレジスト層である。なお、板状の基体12は、他の基板上に基体となる層を積層した多層構造であっても良い。
(A)供給工程
本発明において、「供給工程」とは、前記基体の表面に、官能基を有するカーボンナノチューブ、および、必要に応じて、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤あるいは官能基同士を化学結合させる添加剤を含む溶液(架橋溶液)を供給する工程である。なお、供給工程で前記架橋溶液を供給すべき領域は、前記所望の領域を全て含んでさえいればよく、前記基体の表面の全面に供給しなければならないわけではない。
当該供給方法に制限はなく、単に液滴を垂らしたり、それをスキージで塗り広げたりする方法から、一般的な塗布方法まで、幅広くいずれの方法も採用することができる。一般的な塗布方法としては、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、キャストコート法、ロールコート法、刷毛塗り法、浸漬塗布法、スプレー塗布法、カーテンコート法等が挙げられる。
なお、基体、官能基を有するカーボンナノチューブ、架橋剤並びに架橋溶液の内容については、[開閉器]の項で説明した通りである。
(B)架橋工程
本発明において、「架橋工程」とは、供給後の前記架橋溶液を硬化して、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を形成する工程である。なお、架橋工程で前記架橋溶液を硬化して、カーボンナノチューブ構造体層を形成すべき領域は、前記所望の領域を全て含んでさえいればよく、前記基体の表面に供給された前記架橋溶液を全て硬化しなければならないわけではない。図1(a)に、当該(B)架橋工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。
架橋工程における操作は、前記官能基と化学結合のさせ方の組み合わせに応じて、自ずと決まってくる。熱硬化性の組み合わせであれば、各種ヒータ等により加熱すればよいし、紫外線硬化性の組み合わせであれば、紫外線ランプで照射したり、日光下に放置しておけばよい。勿論、自然硬化性の組み合わせであれば、そのまま放置しておけば十分であり、この「放置」も本発明における架橋工程で行われ得るひとつの操作と解される。
官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基である。Rは、好ましいものについては既述の通り。)が付加したカーボンナノチューブと、ポリオール(中でもグリセリンおよび/またはエチレングリコール)との組み合わせの場合には、加熱による硬化(エステル交換反応によるポリエステル化)が行われる。加熱により、エステル化したカーボンナノチューブカルボン酸の−COORと、ポリオールのR’−OH(R’は、置換または未置換の炭化水素基)とがエステル交換反応する。そして、かかる反応が複数多元的に進行し、カーボンナノチューブが架橋していき、最終的にカーボンナノチューブが相互に接続してネットワーク状となったカーボンナノチューブ構造体1が形成される。
上記の組み合わせの場合に好ましい条件について例示すると、加熱温度としては、具体的には50〜500℃の範囲が好ましく、150〜200℃の範囲がより好ましい。また、この組み合わせにおける加熱時間としては、具体的には1分〜10時間の範囲が好ましく、1〜2時間の範囲がより好ましい。
(C)パターニング工程
本発明において、「パターニング工程」とは、前記カーボンナノチューブ構造体層を電気接点に応じたパターンにパターニングする工程である。図1(e)に、当該(C)パターニング工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。 パターニング工程の操作に特に制限はないが、好適なものとして、以下(C−A)および(C−B)の2つの態様を挙げることができる。
(C−A)
前記基体表面における前記電気接点に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体層に、ドライエッチングを行うことで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体層を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体層を前記電気接点に応じたパターンにパターニングする態様である。
ドライエッチングを行うことで、前記電気接点に応じたパターンにパターニングするということは、結局は、前記基体表面における前記パターン以外の領域の前記カーボンナノチューブ構造体層に、ラジカル等を照射することを意味する。そして、その手法としては、直接前記パターン以外の領域の前記カーボンナノチューブ構造体層にラジカル等を照射する方式(C−A−1)と、前記パターン以外の領域をレジスト層で被覆した上で、前記基体表面(勿論、前記カーボンナノチューブ構造体層およびレジスト層が形成された側)の全面にラジカル等を照射する方式(C−A−2)が挙げられる。
(C−A−1)
直接前記パターン以外の領域の前記カーボンナノチューブ構造体層にラジカル等を照射する方式とは、詳しくは、本パターニング工程が、前記基体表面における前記電気接点に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体層に、ガス分子のイオンをイオンビームにより選択的に照射することで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体層を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体層を前記電気接点に応じたパターンにパターニングする態様である。
イオンビームによれば、数nmオーダー程度の緻密さで、選択的にガス分子のイオンを照射することができ、電気接点に応じたパターンのパターニングが一度の操作で容易にできる点で好ましい。
選択可能なガス種としては、酸素、アルゴン、窒素、二酸化炭素、六フッ化硫黄等が挙げられるが、本発明においては特に酸素が好ましい。 イオンビームとは、真空中ガス分子に電圧をかけることで加速させイオン化し、ビームとして照射する方式であり、エッチングの対象とする物質および照射精度は、使用するガスの種類により変更することができる。
(C−A−2)
前記パターン以外の領域をレジスト層で被覆した上で、前記基体表面の全面にラジカル等を照射する方式とは、詳しくは、本パターニング工程が、前記基体表面における前記電気接点に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体層の上に、レジスト層を設けるレジスト層形成工程(C−A−2−1)と、前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体層およびレジスト層が積層された面に、ドライエッチングを行うことで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体層を除去する除去工程(C−A−2−2)と、を含む態様であり、除去工程に引き続いてさらに、レジスト層形成工程で設けられた前記レジスト層を剥離するレジスト層剥離工程(C−A−2−3)を含む場合もある。
(C−A−2−1)レジスト層形成工程
レジスト層形成工程では、前記基体表面における前記電気接点に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体層の上に、レジスト層を設ける。当該工程は、一般にフォトリソグラフィープロセスと称されるプロセスに従って為されるものであり、前記電気接点に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体層の上に直接レジスト層を設けるのではなく、図1(b)に示されるように一旦基体12のカーボンナノチューブ構造体層14が形成された表面全面にレジスト層16を形成し、前記電気接点に応じたパターンの領域を露光して、その後、現像することで露光部以外の部位が除去され、最終的に前記電気接点に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体層14の上にレジスト層16が設けられた状態となる。
図1(c)に、当該(C−A−2−1)レジスト層形成工程を経た後の、表面全面のレジスト層16のうち露光部以外の部位が除去された基体表面の状態を表す模式断面図を示す。なお、レジストの種類によっては、露光部が現像により除去され、非露光部が残存する構成の場合もある。
レジスト層の形成方法は、従来公知の方法で行えばよい。具体的には、レジスト剤を基板上にスピンコーター等を使用して塗布し、加熱することでレジスト層を形成させる。
レジスト層16の形成に用いる材料(レジスト剤)としては、特に制限されず、従来よりレジストの材料として用いられている各種材料をそのまま用いることができる。中でも樹脂により形成する(樹脂層とする)ことが好ましい。カーボンナノチューブ構造体層14は、網目状にネットワークが形成されており、多孔性の構造体であるため、例えば金属蒸着膜の様にごく表面にのみ膜が形成され孔内部まで十分に浸透しない材料によりレジスト層16を形成すると、プラズマ等を照射した際にカーボンナノチューブが十分に封止された状態(プラズマ等に晒されない状態)にできない。そのため、プラズマ等が孔部を通過してレジスト層16の下層のカーボンナノチューブ構造体層14まで侵食し、プラズマ等の回り込みにより残留するカーボンナノチューブ構造体層14の外形が小さくなってしまう場合がある。この小形化を加味して、レジスト層16の外形(面積)を、前記電気接点に応じたパターンに比して十分に大きくする手法も考えられるが、この場合はパターン同士の間隔を広くとらざるをえず、密にパターンを形成できなくなる。
これに対して、レジスト層16の材料として樹脂を用いることで、当該樹脂を孔内部まで浸透させることができ、プラズマ等に晒されるカーボンナノチューブを減少させることができ、結果としてカーボンナノチューブ構造体層14の高密度なパターニングが可能となる。
当該樹脂層を主として構成する樹脂材料としては、ノボラック樹脂、ポリメチルメタクリレート、およびこれらの樹脂の混合物等を挙げることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
レジスト層を形成するためのレジスト材料は、上記樹脂材料あるいはその前駆体と感光材料等の混合物であり、本発明では従来公知のあらゆるレジスト材料を使用しても差し支えない。例えば、東京応化工業製OFPR800、長瀬産業製NPR9710等を例示することができる。
レジスト層16への露光(レジスト材料が熱硬化性の場合には加熱。その他レジスト材料の種類により適宜選択。)および現像の操作ないし条件(例えば、光源波長、露光強度、露光時間、露光量、露光時の環境条件、現像方法、現像液の種類・濃度、現像時間、現像温度、前処理や後処理の内容等)は、使用するレジスト材料に応じて、適宜選択する。市販されているレジスト材料を用いたのであれば、当該レジスト材料の取扱説明書の方法に従えばよい。一般的には、取り扱いの便宜から、紫外光を用いて前記電気接点に応じたパターン様に露光し、アルカリ現像液により現像する。そして水洗で現像液を洗い流し、乾燥してフォトリソグラフィープロセスが完了する。
(C−A−2−2)除去工程
除去工程では、前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体層およびレジスト層が積層された面に、ドライエッチングを行うことで、前記領域以外の領域で表出している(図1(c)を参照。カーボンナノチューブ構造体層14は、レジスト層16が除去された部分から表出している。)カーボンナノチューブ構造体層を除去する。図1(d)に、当該(C−A−2−2)除去工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。
除去工程の操作は、一般にドライエッチングと称される方法全般を含み、方式としては、リアクティブイオン方式などがある。既述の(C−A−1)のイオンビームを用いる方式もドライエッチングに含まれる。
選択可能なガス種やその他装置および操作環境等は(C−A−1)の項で述べた通りである。
ドライエッチングで一般的に選択可能なガス種としては、酸素、アルゴン、フッ素系ガス(フロン、SF6、CF4等)等が挙げられるが、本発明においては特に酸素が好ましい。酸素ラジカルを用いると、除去するカーボンナノチューブ構造体層14のカーボンナノチューブを酸化させ(燃焼させ)、二酸化炭素化することができ、残存物の発生による影響がなく、また正確なパターニングをすることが可能となる。
ガス種として酸素を選択する場合には、酸素分子に紫外線を照射することにより、酸素ラジカルを発生させ、これを利用することができる。この方式で酸素ラジカルを生ずる装置が、UVアッシャーとの商品名で市販されており、容易に入手することができる。
(C−A−2−3)レジスト層剥離工程
本発明の電気部材の製造方法は、以上の(C−A−2−2)除去工程までの操作が完了した段階で終了とすることもでき、それでも本発明の電気部材の一態様(図1(d)に示される態様)のものを得ることができる。しかし、レジスト層16を除去したい場合には、上記除去工程に引き続いてさらに、レジスト層形成工程で設けられたレジスト層16を剥離するレジスト層剥離工程の操作を施すことが必要となる。図1(e)に、当該(C−A−2−3)レジスト層剥離工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。
レジスト層剥離工程の操作は、レジスト層16の形成に用いた材料に応じて選択すればよい。市販されているレジスト材料を用いたのであれば、当該レジスト材料の取扱説明書の方法に従えばよい。レジスト層16が樹脂層である場合には、一般的には、当該樹脂層を溶解し得る有機溶剤に接液することにより除去する。
(C−B)
前記基体表面における前記電気接点に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体層の上に、レジスト層を設けるレジスト層形成工程と、前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体層およびレジスト層が積層された面に、エッチング液を接液させることで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体層を除去する除去工程と、を含む工程である態様。
この態様は、一般的にウェットエッチング(薬液=エッチング液を使用して任意の部分を取り除く方法)と称される方法である。
レジスト層形成工程の詳細については、エッチング液に耐性を有するレジスト材料を用いることが望まれること以外は、既述の(C−A−2−1)レジスト層形成工程と同様である。除去工程に引き続いてレジスト層剥離工程の操作を施しても構わないこと、およびその詳細については、(C−A−2−3)レジスト層剥離工程に記載された内容と同様である。そのため、これらについては、その詳細な説明は割愛する。
図1(c)を参照して説明すれば、除去工程においては、基体12のカーボンナノチューブ構造体層14およびレジスト層16が積層された面に、エッチング液を接液させることで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体層14を除去する。
ここで、本発明において「接液」とは、対象物を液体に接触させる行為全てを含む概念であり、浸漬、スプレー、流し掛け等、いずれの方法で液体に対象物を接触させても構わない。
エッチング液は、一般に酸あるいはアルカリであり、どのような種類のエッチング液を選択すればよいかは、レジスト層16を構成するレジスト材料やカーボンナノチューブ構造体層14におけるカーボンナノチューブ相互間の架橋構造等により決まってくる。できる限りレジスト層16を侵しにくく、カーボンナノチューブ構造体層14を除去しやすい材料を選択することが望ましい。ただし、エッチング液の温度や濃度、および接液時間を適切に制御することで、レジスト層16が完全に消滅してしまう前に、元々表出しているカーボンナノチューブ構造体層14を除去することが可能であれば、レジスト層16を侵してしまうような種類のエッチング液を選択しても構わない。
(D)実装工程
以上の各工程を経ることで得られた電気部材からなる第1の電極と第2の電極とを、第2の電極が前記第1の電極の電気接点と接離可能に実装することにより、本発明の電気装置を製造することができる。
(E)その他の工程
以上の(A)〜(C)の各工程を経ることで、本発明の電気部材を製造することができるが、本発明の電気部材の製造方法においては、その他の工程を含めることもできる。
例えば、前記供給工程に先立ち、前記基体の表面を予め処理する表面処理工程を設けるのも好適である。表面処理工程は、例えば、供給される架橋溶液の吸着性を高めるため、上層として形成されるカーボンナノチューブ構造体層と基体表面との接着性を高めるため、基体表面を清浄化するため、基体表面の電気伝導度を調整するため、等の目的で行われる。
架橋溶液の吸着性を高める目的で行われる表面処理工程としては、例えば、シランカップリング剤(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等)による処理が挙げられる。中でもアミノプロピルトリエトキシシランによる表面処理は、広く行われており、本発明における表面処理工程でも好適である。アミノプロピルトリエトキシシランによる表面処理は、例えば、非特許文献1等に見られるように、従来よりDNAのAFM観察において基板に使うマイカの表面処理に用いられている。
<本発明の電気装置の製造方法の応用例>
本発明の電気装置の製造方法の有用な応用例として、仮基板の表面に一旦カーボンナノチューブ構造体層をパターニングした後、所望とする基体上に転写する方法がある。また、転写工程において、当該仮基板から中間転写体表面にパターニングされたカーボンナノチューブ構造体層を一旦転写し、さらに基体上に転写する構成としても構わない。
当該応用例において使用可能な仮基板としては、[開閉器]の項で説明した基体と同様の材質のものが使用可能であり、好ましいものである。ただし、転写工程における転写適性を考慮すると、少なくとも1つの平面を有することが望まれ、平板状であることがより好ましい。
当該応用例において使用可能な仮基板あるいは中間転写体としては、粘着剤を保持した粘着面、あるいは保持し得る面を有することが必要であり、セロファンテープ、紙テープ、布テープ、イミドテープのような一般的なテープは勿論使用可能である。また、これらテープのような可撓性ないし柔軟性を有する材料以外の硬質の材料からなるものであっても構わない。粘着剤を保持していない材料の場合には、保持し得る面に粘着剤を塗りつけた上で、これを粘着面として、通常のテープと同様に使用することができる。
当該応用例によれば、本発明の電気装置を容易に製造することができる。
なお、導電性の基体の表面に電気接点となるカーボンナノチューブ構造体層を形成した状態のものを用意し、基体表面と導電性基体とを貼付けて、開閉器を製造することもできる。
あるいは、仮基板(もしくは中間転写体)の表面にカーボンナノチューブ構造体層が担持されたカーボンナノチューブ転写体を用いて、基体上に前記カーボンナノチューブ構造体層だけを転写し、仮基板(もしくは中間転写体)を除去するようにすれば、利用者は架橋工程を省略しても、電気接点を作製できる様になる。なお、ここではプロセス上中間転写体がカーボンナノチューブ転写体の仮基板となる場合があるが、カーボンナノチューブ転写体自体としては区別する必要はないので、この場合も含むものとする。
カーボンナノチューブ転写体を用いると、仮基板の表面に架橋された状態でカーボンナノチューブ構造体層が担持されているため、その後の取り扱いが極めて簡便になり、本発明の電気装置の製造は極めて容易に行うことができるようになる。仮基板の除去方法は、単純な剥離、化学的に分解、焼失、溶融、昇華、溶解させる等適宜選択できる。
以下、転写工程について、図2(a)〜(d)を用いて説明する。
ここで図2(a)〜(d)は、本応用例のカーボンナノチューブ転写体の製造方法の一例を説明するための、製造工程中の仮基板および基体の模式断面図であり、製造工程添って(a)〜(d)の順に示したものである。図中、22は仮基板、24はカーボンナノチューブ構造体層、28は基体である。なお、カーボンナノチューブ構造体層24は、図1におけるカーボンナノチューブ構造体層14と同様の構成である。
まず、上記電気部材の製造方法において、基体12に代えて仮基板22を用いて、既述の供給工程、架橋工程およびパターニング工程の操作を経ることで、図2(a)に示すように、仮基板22表面にカーボンナノチューブ構造体層24が形成されたものを作製する。
次に、図2(b)に示すように、例えば粘着テープの如き基体28を用意して、その粘着面をカーボンナノチューブ構造体層24が形成された仮基板22側に向けて、基体28を矢印X方向に移動させて、図2(c)に示すように、両者を貼り合わせる。
そして、図2(d)に示すように、基体28を矢印Y方向に移動させて、カーボンナノチューブ構造体層24が形成された仮基板22から剥離すると、仮基板22表面に形成されていたカーボンナノチューブ構造体層24が、基体28の粘着面に転写される。
以上のようにして、仮基板22を介して、基体28にカーボンナノチューブ構造体層24がパターニングされ、本発明のカーボンナノチューブ転写体を備えた電気部材が製造される。
かかる転写工程を備えた電気部材の製造方法は、例えばデバイスの電極として、そのまま本発明の電気部材の製造方法を適用し難い材質および/または形状のものの場合に、特に有効である。
例えば、前記架橋工程で、供給後の前記溶液を硬化するために加熱する温度が、開閉器の電極にしようとしている材料の融点ないしガラス転移点以上となってしまう場合に、上記本発明の、転写工程を備えた電気部材の製造方法は有効である。このとき、前記加熱温度を前記仮基板の融点よりも低く設定することで、硬化のために必要な加熱温度を確保することができ、適切に本発明の電気部材を製造することができる。
また、例えば、前記パターニング工程が、前記仮基板表面における前記電気接点に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体層に、ドライエッチングを行うことで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体層を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体層を前記電気接点に応じたパターンにパターニングする工程である場合において、電極にしようとしている材料が、前記パターニング工程で行うドライエッチングに対して耐性を有しないときには、上記本発明の、転写工程を備えた電気部材の製造方法が有効である。このとき、前記仮基板にドライエッチングに対して耐性を有する材料を用いることで、前記仮基板にパターニングする工程の操作に対する耐性を確保することができ、適切に本発明の電気部材を製造することができる。
さらに、例えば、前記パターニング工程として、前記仮基板表面における前記電気接点に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体層の上に、レジスト層を設けるレジスト層形成工程と、前記仮基板の前記カーボンナノチューブ構造体層およびレジスト層が積層された面に、エッチング液を接液させることで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体層を除去する除去工程と、を含む場合において、前記パターニング工程で用いるエッチング液に対して、電極の基体は耐性を有しないが、前記仮基板は耐性を有するときには、上記本発明の、転写工程を備えた電気部材の製造方法が有効である。
具体的な耐性、材料等は、用いるエッチング液の種類、濃度、温度、接液時間等の条件により異なるため一概には言えない。例えば、エッチング液が酸性であり、酸に弱いアルミニウム等の材料を電極の基体としたい場合に、酸に耐性のあるシリコン等の材料を仮基板にして本応用例を適用することで、耐性が低いことによる制約から解放される。その他、エッチング液の液性により一概には言えないが、既述の通りエッチング液に対する耐性が低い材料を電極の基体にすることで、耐性が低いことによる制約から解放される。
さらに別の態様として、カーボンナノチューブ構造体層24が形成される基体を、よりハンドリングしやすい電気装置とするために、導電性の第2の基体に貼り付けて、本発明の電気部材およびこれを用いた電気装置を構成しても良い。第2の基体としては、物性的に剛体であっても、可撓性ないし柔軟性であってもよいし、形状的にも球体、凹凸形状等多様な形状のものを選択することができる。
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
図1に記載の電気部材の製造方法の流れにより電極を製造し、更に、この電極を備えた開閉器を製造した。なお、本実施例の説明においては、図1の符号を用いる場合がある。
(A)供給工程
(A−1)架橋溶液の調製(付加工程)
(1)カルボキシル基の付加・・・カーボンナノチューブカルボン酸の合成
多層カーボンナノチューブ粉末(純度90%、平均直径30nm、平均長さ3μm;サイエンスラボラトリー製)30mgを濃硝酸(60質量%水溶液、関東化学製)20mlに加え、120℃の条件で還流を20時間行い、カーボンナノチューブカルボン酸を合成した。以上の反応スキームを図3に示す。なお、図3中カーボンナノチューブ(CNT)の部分は、2本の平行線で表している(反応スキームに関する他の図に関しても同様)。
溶液の温度を室温に戻したのち、5000rpmの条件で15分間の遠心分離を行い、上澄み液と沈殿物とを分離した。回収した沈殿物を純水10mlに分散させて、再び5000rpmの条件で15分間の遠心分離を行い、上澄み液と沈殿物とを分離した(以上で、洗浄操作1回)。この洗浄操作をさらに5回繰り返し、最後に沈殿物を回収した。
回収された沈殿物について、赤外吸収スペクトルを測定した。また、比較のため、用いた多層カーボンナノチューブ原料自体の赤外吸収スペクトルも測定した。両スペクトルを比較すると、多層カーボンナノチューブ原料自体においては観測されていない、カルボン酸に特徴的な1735cm-1の吸収が、前記沈殿物の方には観測された。このことから、硝酸との反応によって、カーボンナノチューブにカルボキシル基が導入されたことがわかった。すなわち、沈殿物がカーボンナノチューブカルボン酸であることが確認された。
また、回収された沈殿物を中性の純水に添加してみると、分散性が良好であることが確認された。この結果は、親水性のカルボキシル基がカーボンナノチューブに導入されたという、赤外吸収スペクトルの結果を支持する。
(2)エステル化
上記工程で調製されたカーボンナノチューブカルボン酸30mgを、メタノール(和光純薬製)25mlに加えた後、濃硫酸(98質量%、和光純薬製)5mlを加えて、65℃の条件で還流を6時間行い、メチルエステル化した。以上の反応スキームを図4に示す。
溶液の温度を室温に戻したのち、ろ過して沈殿物を分離した。沈殿物は、水洗した後回収した。回収された沈殿物について、赤外吸収スペクトルを測定した。その結果、エステルに特徴的な1735cm-1および1000〜1300cm-1の領域における吸収が観測されたことから、カーボンナノチューブカルボン酸がエステル化されたことが確認された。
(混合工程)
上記工程で得られたメチルエステル化したカーボンナノチューブカルボン酸30mgを、架橋剤となるグリセリン(関東化学製)4gに加え、超音波分散機を用いて混合した。さらに、これを粘度調整剤としてのメタノール4gに加え、架橋溶液(1)を調製した。
(A−2)基体の表面処理工程
基体12としてのシリコンウエハー(アドバンテック製、76.2mmφ(直径3インチ)、厚さ380μm、表面酸化膜の厚さ1μm)を用意した。なお、シリコンウェハー表面は1×1015cm-2程度のヒ素をイオン注入し、さらに800℃の熱処理を行い、基体として利用できる状態とした。この上に塗布する架橋溶液(1)と、当該シリコンウエハーとの吸着性を上げるために、アミノプロピルトリエトキシシランにより、シリコンウエハーの表面処理を行った。
アミノプロピルトリエトキシシランによる表面処理は、密閉したシャーレ内で、上記シリコンウエハーをアミノプロピルトリエトキシシラン(アルドリッチ社製)50μlの蒸気に3時間程度晒すことで行った。
なお、比較のために、表面処理を施さないシリコンウエハーも、別途用意した。
(A−3)供給工程
工程(A−1)で調製された架橋溶液(1μl)を、表面処理が施された基体表面にスピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、100rpm、30秒の条件で塗布した。表面処理を施さない比較のための基板についても、同様にして塗布を行った。
(B)架橋工程
架橋溶液を塗布した後、当該塗布膜が形成された基体12を、200℃で2時間加熱し塗布膜を硬化し、カーボンナノチューブ構造体層14を形成した(図1(a))。なお、比較のため表面処理を施さない比較のための基体についても、同様にして塗布膜を硬化した。反応スキームを図5に示す。
得られたカーボンナノチューブ構造体層14の状態を光学顕微鏡で確認したところ、極めて均一な硬化膜となっていた。これに対して、比較のため表面処理を施さない比較のための基体に形成されたカーボンナノチューブ構造体層についても、同様に光学顕微鏡で確認したところ、表面処理を施したものに比して、若干劣るものの、十分に均一な硬化膜となっていた。
(C)パターニング工程
(C−1)レジスト層形成工程
カーボンナノチューブ構造体層14が形成されたシリコンウエハー12(表面処理を施したもの)の当該カーボンナノチューブ構造体層14側の表面に、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、レジスト剤(長瀬産業製、NPR9710、粘度50mPa・s)を、2000rpm、20秒の条件で塗布し、ホットプレートにより2分間、100℃で加熱して製膜させて、レジスト層16を形成した(図1(b))。
なお、レジスト剤NPR9710の組成は、以下の通りである。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:50〜80質量%
・ノボラック樹脂: 20〜50質量%
・感光剤: 10質量%未満
カーボンナノチューブ構造体層14およびレジスト層16が形成されたシリコンウエハー12の当該レジスト層16側の表面に、マスクアライナー(ミカサ製水銀灯、MA−20、波長436nm)を用いて、光量12.7mW/cm2、4秒の条件で、図6(a)の露光部位30に示す形状に露光した。ここで、図6(a)は、残存させるレジスト層16の形状を説明するための、カーボンナノチューブ構造体層14およびレジスト層16が形成されたシリコンウエハー12の当該レジスト層16側から見た拡大平面図であり、30はレジスト層16表面の露光部位である。露光部位30は、本実施例における電気接点の形状を有している。
さらに、露光された基体12をホットプレートにより1分間、110℃で加熱した後、放冷し、現像液として東京応化工業製NMD−3(テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド 2.38質量%)を用い、現像機(AD−1200 滝沢産業)により現像を行った(図1(c))。このとき、レジスト層16が電気接点の形状に形成されていることを、光学顕微鏡観察により確認した。
(C−2)除去工程
以上のようにしてレジスト層16が所定のパターンの形状に形成された基体12を、UVアッシャー(エキシマ真空紫外線ランプ、アトム技研製、EXM−2100BM、波長172nm)により、混合ガス(酸素10mL/min,窒素40mL/min)中200℃で加熱し、5時間紫外線(172nm)を照射することで酸素ラジカルを発生させカーボンナノチューブ構造体層14におけるレジスト層16で保護されていない部分を除去した。その結果、図6(b)に示すように、レジスト層16で覆われた状態でカーボンナノチューブ構造体層14が電気接点の形状に形成された(図1(d))。
ここで、図6(b)は、当該除去工程後の基体12のレジスト層16側から見た拡大平面図であり、レジスト層16は、図に現れないカーボンナノチューブ構造体層14を介して電極12の表面に残存している。
(C−3)レジスト層除去工程
上記「所定のパターン」の形状に形成されたカーボンナノチューブ構造体層14の上層として残存しているレジスト層16を、アセトンで洗い流すことにより洗浄して除去し(図1(e))、得られたカーボンナノチューブデバイスの表面を光学顕微鏡観察により確認したところ、図7に示すように、カーボンナノチューブ構造体層14が、前記「所定のパターン」の形状に形成されていることを確認した。
以上の方法にて、実施例1に用いる開閉器の電気接点として機能するカーボンナノチューブ構造体層14が形成された電極50(電気部材)を得た。
また、可動側の基体12’としてリン青銅(厚さ500μm)も同様に用意した。上記実施例と同様に架橋溶液(1)を調製し、供給工程、架橋工程、パターニング工程を経て、カーボンナノチューブ構造体層14を所定のパターンに形成した。
次に、電気接点として機能するカーボンナノチューブ構造体層14が形成された電極50を、図9に示す開閉器中に実装した。基体12および12’の電気接点が形成されたのと反対の端部には、不図示の電源装置に接続する不図示のリード線を銀ペーストで接続してこれを電極端子とし、開閉器を作製した。
次にピコアンメータ4140B(ヒューレットパッカード製)を使って、直流電流−電圧特性測定を2端子法で行い、得られた実施例1の電気接点のカーボンナノチューブ構造体層14の直流導電率を求めた。その結果、導電率は17S・cm-1であった。カーボンナノチューブ構造体がネットワーク化されていることが確認された。
[比較例1]
多層カーボンナノチューブ粉末(純度90%、平均直径30nm、平均長さ3μm;サイエンスラボラトリー製)10mgを、イソプロピルアルコール20gに分散させた。この分散液は、分散性が極めて悪く、塗料(架橋溶液)としての性状を保持し得ないものであった。
得られた分散液を、パスツールピペットで実施例1と同様の基板上に0.1ml程度滴下して展開し、100℃程度で10分間加熱することで、架橋させていない多層カーボンナノチューブの堆積物(比較例1の電極)を得た。得られた堆積物は、10倍〜20倍程度の光学顕微鏡による観察では、凝集体として島状に分離しており、膜状を呈していないことが確認された。このことから、架橋構造を含まない本比較例の分散液ないし堆積物が、成膜性に劣り、カーボンナノチューブ構造体層として機能し得ないことがわかる。
(検証実験)
実施例1の電極(第1の電極)と、比較例1で得られた堆積物(比較例1の電極)について、電気特性の比較を行った。なお、両者とも、各実施例・比較例に記された方法と同様の方法で、SiO2/Si基板上に1μm程度の厚さでカーボンナノチューブ構造体層あるいは堆積物層を改めて成膜したものを、本検証実験に供した。
それぞれ、形成された膜に対して、ギャップ間隔350μmで2つの金電極を蒸着し、ピコアンメータ4140B(ヒューレットパッカード製)を使って2端子法で、直流導電率の測定を行った。図8に電流−電圧特性測定結果を示す。実施例1の電極では、5Vで0.8A程度電流が流れるのに対し、比較例1の電極では3×10-4A程度と、実施例1の電極の方が3桁以上電流を多く流せることが分かった。
さらに、比較例1の電極では6.4×10-4A(6.0V)程度まで電流を流すと、急速に電流が減少することが分かった。これは、カーボンナノチューブ相互の重なり合った部分で、実施例1のカーボンナノチューブ構造体層のように化学結合されていないために生じる抵抗により発熱し、カーボンナノチューブ相互の重なり合いによる電気的接続が、一部失われてしまうためであると考えられる。
開閉器の変形例として、ロータリースイッチの電気接点に、官能基が結合された複数のカーボンナノチューブの前記官能基間を化学結合させて相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を使用した例を図10に示す。図10(a)はセラミックス等の絶縁性の支持板17に複数個の電気接点14が固着して構成されたロータリースイッチを示す平面図であり、図10(b)はそのB−B断面図を示したものである。支持板17には、導電性端子18が埋め込まれており、電気接点材料を塗布して形成された電気接点14と電気的に接続されている。
この電気接点に対向して、周知のため図示しないが、支持板17の中心を軸として回転し、電気接点と接触する対向電極が設けられ、回転方向に応じて各接点を選択的に接続する回転式のスイッチを設けることで、ロータリースイッチを構成することができる。
このように電気接点17として網目状のカーボンナノチューブ構造体を用いているため、長期間安定な接触による電気接続状態が得られる。
図1(a)は、本発明の一形態である開閉器の製造方法の一例を説明するための、製造工程中の基体表面の模式断面図であり、架橋工程を経た後の基体表面の状態を示したものである。 図1(b)は、本発明の一形態である電極の製造方法の一例を説明するための、製造工程中の基体表面の模式断面図であり、カーボンナノチューブ構造体層14が形成された表面全面にレジスト層16が形成された後の基体表面の状態を示したものである。 図1(c)は、本発明の一形態である電極の製造方法の一例を説明するための、製造工程中の基体表面の模式断面図であり、レジスト層形成工程を経た後の、表面全面のレジスト層16のうち露光部以外の部位が除去された基体表面の状態を示したものである。 図1(d)は、本発明の一形態である電極の製造方法の一例を説明するための、製造工程中の基体表面の模式断面図であり、除去工程を経た後の、表出部分のカーボンナノチューブ構造体層が除去された基体表面の状態を示したものである。 図1(e)は、本発明の一形態である電極の製造方法の一例を説明するための、製造工程中の基体表面の模式断面図であり、レジスト層剥離工程を経た後(パターニング工程を経た後)の基体表面の状態を示したものである。また、図1(e)はこの製造工程により得られた電極(電気部材)を示したものである。 図2(a)は、本発明の一形態である電極の製造方法の応用例を説明するための模式断面図であり、仮基板22表面にカーボンナノチューブ構造体層24が形成された状態を示したものである。 図2(b)は、本発明の一形態である電極の製造方法の応用例を説明するための模式断面図であり、基体28の粘着面を仮基板22のカーボンナノチューブ構造体層24が形成された側に向けて、移動させる様子を示したものである。 図2(c)は、本発明の一形態である電極の製造方法の応用例を説明するための模式断面図であり、基体28と仮基板22とを、カーボンナノチューブ構造体層24を介して貼り合わせた状態を示したものである。 図2(d)は、本発明の一形態である電極の製造方法の応用例を説明するための模式断面図であり、カーボンナノチューブ構造体層24が、仮基板22から剥離されて、基体28の粘着面に転写された状態を示したものである。 図3は、実施例1中の(付加工程)におけるカーボンナノチューブカルボン酸の合成の反応スキームである。 図4は、実施例1中の(付加工程)におけるエステル化の反応スキームである。 図5は、実施例1中の(架橋工程)におけるエステル交換反応による架橋の反応スキームである。 図6(a)は、レジスト層16のうち、残存させる部分の形状を説明するための、カーボンナノチューブ構造体層14およびレジスト層16が形成されたシリコンウエハー12の当該レジスト層16側から見た平面図である。 図6(b)は、実施例1において、除去工程後の基板のレジスト層側から見た平面図である。 図7は、実施例1のレジスト除去後の平面図である。 図8は、実施例1で形成されたカーボンナノチューブ構造体層、および、比較例1で形成された堆積物の層についての、電流−電圧特性測定結果を示すグラフである。 図9は、本発明の一形態である開閉器の模式図を示したものである。 図10(a)は、本発明の一形態である開閉器ロータリースイッチの模式図を示したものであり、セラミックス等の絶縁性の支持板17に複数個の電気接点14が固着して構成されたロータリースイッチを示す平面図である。 図10(b)は、本発明の一形態である開閉器ロータリースイッチの模式図を示したものであり、図10(a)のB−B断面図を示したものである。
符号の説明
12、28:基体、14、24:カーボンナノチューブ構造体層、16:レジスト層、18:導電性端子、22:仮基板、30:露光部位、50:電極(電気部材)、60:開閉器(電気装置)

Claims (36)

  1. 基体と、前記基体上に形成された電気接点とを備えた電気部材であって、前記電気接点は、官能基が結合した複数のカーボンナノチューブの前記官能基間を化学結合させて相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体により構成されたことを特徴とする電気部材。
  2. 請求項1に記載の電気部材からなる第1の電極と、前記電気接点と接離可能な第2の電極とを備えたこと特徴とする電気装置。
  3. 前記カーボンナノチューブ構造体が、官能基が結合された複数のカーボンナノチューブを含む溶液を硬化させることにより、前記カーボンナノチューブが接続された複数の前記官能基間を化学結合させて架橋部位が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の電気部材。
  4. 前記架橋部位は、前記溶液中に含まれる架橋剤により複数の前記官能基間を架橋した構造であり、該架橋剤は非自己重合性であることを特徴とする請求項3に記載の電気部材。
  5. 前記架橋部位が、−COO(CH22OCO−、−COOCH2CHOHCH2OCO−、−COOCH2CH(OCO−)CH2OHおよび−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−からなる群より選ばれるいずれかの化学構造であることを特徴とする請求項3に記載の電気部材。
  6. 前記架橋部位は、複数の前記官能基同士の化学結合により形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電気部材。
  7. 前記化学結合を生ずる反応が、縮合反応、置換反応、付加反応および酸化反応から選ばれる一つであることを特徴とする請求項6に記載の電気部材。
  8. 前記架橋部位が、−COOCO−、−O−、−NHCO−、−COO−、−NCH−、−NH−、−S−、−O−、−NHCOO−、および、−S−S−からなる群より選ばれる一つであることを特徴とする請求項3に記載の電気部材。
  9. 前記複数のカーボンナノチューブが、多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の電気部材。
  10. 官能基を結合された複数のカーボンナノチューブを含む溶液を基体表面に供給する供給工程と、複数の前記官能基間を化学結合させて、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を電気接点として形成する架橋工程とを含むことを特徴とする電気部材の製造方法。
  11. 前記溶液は、複数の前記官能基間を架橋する架橋剤を含むことを特徴とする請求項10に記載の電気部材の製造方法。
  12. 前記架橋剤が、非自己重合性の架橋剤であることを特徴とする請求項11に記載の電気部材の製造方法。
  13. 前記官能基が、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくとも1つの基であり、前記架橋剤が、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得る架橋剤であることを特徴とする請求項11に記載の電気部材の製造方法。
  14. 前記架橋剤が、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤であり、前記官能基が、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得る官能基であることを特徴とする請求項11に記載の電気部材の製造方法。
  15. 前記官能基が、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくとも1つの基であり、前記架橋剤が、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤であり、前記官能基と前記架橋剤とが、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるようにそれぞれ選択されたことを特徴とする請求項11に記載の電気部材の製造方法。
  16. 前記官能基が、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)であることを特徴とする請求項13に記載の電気部材の製造方法。
  17. 前記架橋剤が、ポリオールであることを特徴とする請求項16に記載の電気部材の製造方法。
  18. 前記架橋剤が、グリセリン、エチレングリコール、ブテンジオール、ヘキシンジオール、ヒドロキノンおよびナフタレンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項17に記載の電気部材の製造方法。
  19. 前記溶液が、さらに溶剤を含むことを特徴とする請求項10に記載の電気部材の製造方法。
  20. 前記架橋剤が、溶剤を兼ねることを特徴とする請求項19に記載の電気部材の製造方法。
  21. 前記化学結合を生ずる反応が、複数の前記官能基同士を化学結合させる反応であることを特徴とする請求項10に記載の電気部材の製造方法。
  22. 前記溶液は、前記官能基同士の化学結合を生じさせる添加剤を含むことを特徴とする請求項21に記載の電気部材の製造方法。
  23. 前記反応が脱水縮合であって、前記添加剤が縮合剤であることを特徴とする請求項22に記載の電気部材の製造方法。
  24. 前記官能基が、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COOH、−COX(Xはハロゲン原子)、−OH、−CHO、−NH2からなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項23に記載の電気部材の製造方法。
  25. 前記官能基が−COOHであることを特徴とする請求項24に記載の電気部材の製造方法。
  26. 前記縮合剤が、硫酸、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびジシクロヘキシルカルボジイミドからなる群より選ばれる一つであることを特徴とする請求項23に記載の電気部材の製造方法。
  27. 前記反応が置換反応であって、前記添加剤が塩基であることを特徴とする請求項22に記載の電気部材の製造方法。
  28. 前記官能基が、−NH2、−X(Xはハロゲン原子)、−SH、−OH、−OSO2CH3および−OSO2(C64)CH3からなる群より選ばれる一つであることを特徴とする請求項27に記載の電気部材の製造方法。
  29. 前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピリジンおよびナトリウムエトキシドからなる群より選ばれる一つであることを特徴とする請求項27に記載の電気部材の製造方法。
  30. 前記反応が付加反応であることを特徴とする請求項21に記載の電気部材の製造方法。
  31. 前記官能基が、−OH、および−NCOからなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項30に記載の電気部材の製造方法。
  32. 前記反応が酸化反応であることを特徴とする請求項21に記載の電気部材の製造方法。
  33. 前記官能基が、−SHであることを特徴とする請求項32に記載の電気部材の製造方法。
  34. 前記溶液には、酸化反応促進剤を含むことを特徴とする請求項32に記載の電気部材の製造方法。
  35. 前記酸化反応促進剤が、ヨウ素であることを特徴とする請求項34に記載の電気部材の製造方法。
  36. 請求項10に記載の製造方法により得られた電気部材からなる第1の電極、及び第2の電極を、前記第2の電極が前記第1の電極の電気接点と接離可能に実装する実装工程とを含むことを特徴とする電気装置の製造方法。
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