JP4437619B2 - 近接場光用のプローブ及びその作製方法、並びに近接場光学顕微鏡、光メモリの情報記録再生方式 - Google Patents

近接場光用のプローブ及びその作製方法、並びに近接場光学顕微鏡、光メモリの情報記録再生方式 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、近接場光用のプローブ及びその作製方法、並びに、同プローブを搭載した近接場光学顕微鏡、近接場光用の光プローブを用いた光メモリの情報記録再生方式に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学顕微鏡の分解能は、以下の式で記述されるように、回折現象による限界があった。
【0003】
分解能R=0.5×(NA/λ) NA;開口数、λ;波長
1928年にSygnerにより近接場光を用いると回折限界を克服できることが提案されていたが、近年AFMやSTM技術の進歩に伴い、近接場光学顕微鏡が実現されてきている。
【0004】
また、CDやDVDの光メモリの分野においても、記録密度の飛躍的向上が求められており、記録ピットを縮小することが重要になっている。記録ピットの縮小化には、情報の記録再生に用いる光の短波長化や使用レンズの高NA化がなされているが、いずれも回折現象による限界へと近づきつつあり、新たな情報記録再生方式が望まれ、回折現象が起きない近接場光の利用が注目されている。
【0005】
近接場光を光メモリの情報記録へ応用した最初の例は、E.Betzig, J.K.Tratman等がSNOM(Scanning Near-Field Optical Microscope)を用いPt/Co多層膜からなる光磁気媒体に60nm径の記録ピットを作製したものであり、(Appl.Phys.Lett.,vol.61,P142,(1992))、現在ではTbit/in2 の可能性も示唆されている。
【0006】
近接場光学顕微鏡には、試料表面の近接場光をプローブで検出する集光モードと、プローブ先端の微小開口から近接場光を発生させ、近接場光による試料からの散乱光を検出する照明モードとがあり、プローブを2次元に走査して画像を得るものである。
【0007】
照明モードで用いる近接場光用のプローブでは、近接場光を作り出すためプローブの先端を光の波長よりも小さくする(数十nm程度)必要がある。そのため従来では光ファイバーにCO2レーザーを照射し局所的に溶融して引き伸ばし切断する際に先端を先鋭化する方法や、光ファイバーの先端を緩衝フッ酸のウエットエッチングによって先鋭化する方法が採用されてきた。
【0008】
しかしながら、CO2レーザーを照射する方法では、プローブの形状の制御が困難であり再現性を取ることができなかった。一方、緩衝フッ酸のウエットエッチングを用いる方法では、先端の大きさを数十nmレベルまで縮小化できるが、より高分解能・高感度のプローブの作製するためには先端形状を2重先鋭化、3重先鋭化する必要があり、加工精度が十分ではなかった。
【0009】
また、従来の照明モードで用いられるプローブでは、半導体レーザーから照射された光をプローブの微小開口まで導く必要があるが、プローブを先鋭化したために光の伝達効率が著しく低下し、近接場光によって十分な信号を得ることは容易ではなかった。
【0010】
一般的にプローブの分解能と感度はトレードオフの関係にあるため、分解能と感度の両者を改善するためには先端を複雑な形状にする必要があり、微細化に適した集束イオンビームによる加工の併用もなされてきた。しかしながら、集束イオンビームは装置が高価であり、スループットも小さいことから、より簡便なプローブの作製方法が求められている。
【0011】
また、そのために、より明るい近接場光を作り出すことのできるプローブが望まれており、プローブ自体に発光機能を取り付けること、つまり自己発光型プローブが提案されている。ここでは、特開2000−200681号公報に記載の従来技術を図9に、特開2000−292339号公報に記載の従来技術を図10に示す。
【0012】
図9に示した特開2000−200681号公報の技術では、ガラス基板1の一番突出している個所に光の波長よりも長さの小さい有機EL素子(上部電極3/有機EL層2/下部電極1から構成)を設けている。しかしながら、有機EL素子の大きさを波長以下にするため、上部電極3、下部電極4をEB露光によって作製する必要がある。また、ガラス基板1に凸型の形状を作りこむためには、集束イオンビーム等の加工装置も必要となり、EB露光装置や集束イオンビーム装置のスループットや加工装置の価格から低コストのプローブを作製することはできなかった。
【0013】
また、図10に示した特開2000−292339号公報の技術では、金属芯ないし光ファイバー11の回りに電極(上部電極12、下部電極13)と有機薄膜14を形成して有機EL素子を作製するものである。しかしながら、直径が数100〜数10nmオーダーの金属芯や光ファイバー11の回りに少なくても電子注入層、正孔注入層、上部電極12を、真空蒸着やスパッタリングによって成膜しなければならず、プロセスが複雑であり、低コストのプローブは作製できなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、作製が容易で且つ高分解能、高感度の両立が可能な近接場光用のプローブを提供すること、また低コストで作製できる高分解能、高感度な近接場光学顕微鏡を提供すること、さらに1Tbit/in2以上の情報密度が可能な光メモリへの情報記録方式または光メモリからの情報再生方式を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の近接場光用のプローブは、先端に励起により発光する粒子を内包したナノチューブを保持したことを特徴とする。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、先端に励起により発光する粒子を内包したナノチューブを保持しており、ナノチューブの直径がnmオーダーであるので、ナノチューブに内包された発光粒子からのフォトルミネセンスやエレクトロルミネッセンスをナノチューブの先端から取り出すことによって近接場光を容易に得ることができる。そのため、従来用いられてきたファイバー先鋭化での複雑で高コストなプロセスを回避でき、安価にプローブを作製できる。また極細のナノチューブが容易に得られることから、これらのナノチューブに発光粒子を内包させることにより、光ファイバーを先鋭化した従来のプローブよりも高分解能のプローブが実現できる。
【0017】
請求項2に記載の近接場光用のプローブは、請求項1記載の近接場光用のプロセスにおいて、前記ナノチューブがカーボンナノチューブからなることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、ナノチューブがカーボンナノチューブからなるため、アーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法によって先端径が0.7〜50nm程度のナノチューブを容易に得ることができる。
【0019】
請求項3に記載の近接場光用のプローブは、請求項1または2に記載の近接場光用のプロセスにおいて、前記ナノチューブが、側面を遮光層で被覆された構造を有することを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、ナノチューブの側面が遮光層で被覆されているため、ナノチューブの側面からフォトルミネセンスやエレクトロルミネッセンスによる伝搬光が発生しない。その結果、ナノチューブ先端から近接場光のバックグラウンド光を低減でき、プローブの分解能が向上する。
【0021】
請求項4に記載の近接場光用のプローブは、請求項1〜3のいずれかに記載の近接場光用のプロセスにおいて、前記発光粒子が金属カーバイトであることを特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、内包された発光粒子が金属カーバイトであるから、陽極である炭素電極に前記の金属カーバイトを構成する金属を含有させ、陰極との間でアーク放電を起こすことにより、金属カーバイトを内包したカーボンナノチューブを作製することができる。そのため、空気中では酸化を受けやすく不安定な金属カーバイトを、カーボンナノチューブの中に内包でき、内包された金属カーバイトはグラファイトシートで被覆されているので、空気中でも酸化されず安定である。また、発光粒子がカーボンナノチューブ合成時に同時に作製できるので、事前に発光粒子を合成する必要がなく、プロセスコストを抑えることができる。
【0023】
請求項5に記載の近接場光用のプローブは、請求項1〜4のいずれかに記載の近接場光用のプロセスにおいて、前記発光粒子が、ナノチューブに伝達された光によって励起されて近接場光を発生するものとされていることを特徴とする。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、内包された発光粒子がナノチューブに伝達された光によって励起されて近接場光を発生するため、自己発光型のプローブを実現できる。そのため励起光の強度によって近接場光の強度を変えることができ、プローブの高感度化と高分解能を両立できる。
【0025】
請求項6に記載の近接場光用のプローブは、請求項1〜4のいずれかに記載の近接場光用のプロセスにおいて、前記発光粒子が、ナノチューブに印加された電界によって励起されて近接場光を発生するものとされていることを特徴とする。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、内包された発光粒子がナノチューブに印加された電界によって励起されて近接場光を発生するため、自己発光型のプローブを実現できる。そのため電界強度によって近接場光の強度を変えることができ、プローブの高感度化と高分解能を両立できる。
【0027】
請求項7に記載のプローブの作製方法は、請求項1に記載のプローブを作製する方法であって、ナノチューブの先端を開環し、その後、毛管吸引によって発光粒子をナノチューブの中に内包させることを特徴とする。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、ナノチューブ先端を開環し、その後、毛管吸引によって発光粒子をナノチューブの中に内包させるので、nmオーダーに微粒子化できる材料であれば、ほぼ全て発光材料をナノチューブに内包できる。その結果、発光粒子を選択することによって近接場光の波長を任意に選ぶことが可能となる。また、発光粒子を内包させるプロセス全てを簡単な湿式プロセスで行えることから、ナノチューブの合成装置があれば、発光粒子を内包したナノチューブを簡単に得ることができ、プローブを安価に製造することができる。
【0029】
請求項8に記載のプローブの作製方法は、請求項4に記載のプローブの作製方法であって、陽極である炭素電極に前記金属カーバイトを構成する金属を含有させ、陰極との間でアーク放電を起こすことにより、金属カーバイトを内包したカーボンナノチューブを作製することを特徴とする。
【0030】
請求項8に記載の発明によれば、内包された発光粒子が金属カーバイトであって、陽極である炭素電極に前記の金属カーバイトを構成する金属を含有させ、陰極との間でアーク放電を起こすことにより、金属カーバイトを内包したカーボンナノチューブを作製するので、空気中では酸化を受けやすく不安定な金属カーバイトを、カーボンナノチューブの中に内包させることができ、内包された金属カーバイトはグラファイトシートで被覆されていることから、空気中でも酸化されない安定な構造を提供できる。また、発光粒子がカーボンナノチューブ合成時に同時に作製できるので、事前に発光粒子を合成する必要がなく、プロセスコストを抑えることができる。
【0031】
請求項9に記載の近接場光学顕微鏡は、請求項1〜6のいずれかに記載のプローブを搭載したことを特徴とする。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、請求項1〜6の記載の近接場光を発生するプローブを搭載しているため、発光粒子を内包したナノチューブを加工することなしに、そのままプローブの先端に用いることができ、近接場光学顕微鏡をより安価に作製できる。また、極細のナノチューブを用いたプローブを使用することによって、従来のファイバーを先鋭化したプローブを用いた近接場光学顕微鏡よりも高分解能を実現できる。
【0033】
請求項10に記載の光メモリの情報記録再生方式は、請求項1〜6のいずれかに記載のプローブを用いて、光メモリへの情報記録ないし光メモリからの情報再生の少なくとも一方を行うことを特徴とする。
【0034】
請求項10に記載の発明によれば、請求項1〜6の記載の近接場光を発生するプローブを用いて、光メモリへの情報記録ないし光メモリからの情報再生の少なくても一方を行っているので、情報密度の改善が可能となる。特に極細いナノチューブに発光粒子を内包させることによって、1Tbit/in2以上の情報密度も期待できる。
【0035】
ここでナノチューブの一種であるカーボンナノチューブについて説明する。カーボンナノチューブはグラファイトシートを丸めた円筒状の形状をしている。カーボンナノチューブの大きさは作製法によって異なるが、1個のグラファイトシートの円筒からなる単層カーボンナノチューブでは、直径が0.7〜50nm、円筒の長さは数10nm〜数μm以下となっており、複数のグラファイトシートの円筒が入れ子状の構造を持つ多層カーボンナノチューブでは、直径が1〜50nm、円筒の長さは100nm〜50μm程度になっており、単層・多層カーボンナノチューブとも可視光の波長よりもはるかに小さい先端を持つ繊維状の形状をしている中空物質である。
【0036】
また、カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)等によって作られるが、合成条件を最適化することによってnmオーダーであるにも関わらず比較的直径分布の小さなカーボンナノチューブを得ることができる。
【0037】
また、カーボンナノチューブはグラファイトの円筒の中に種々の金属や化合物を内包できることが知られている。例えば、励起によって光を発生する発光粒子をカーボンナノチューブに内包させる場合、カーボンナノチューブの合成方法や発光粒子の種類、内包手段によって、発光粒子を内包したカーボンナノチューブは図2の4種類の構造をとる。
【0038】
(a)カーボンナノチューブ22の中空に発光粒子21が複数個入っている構造
(b)カーボンナノチューブ22の中空が1個の発光粒子21によって占有されている構造
(c)先端が開環したカーボンナノチューブ22の中空に発光粒子21が複数個入っている構造
(d)先端が開環したカーボンナノチューブ22の中空が1個の発光粒子21によっ占有されている構造
【0039】
これら4種類の構造があるが、いずれにおいても、内包される発光粒子はバルクの特性を保持するため、カーボンナノチューブに励起光を照射すると、カーボンナノチューブに内包された発光粒子からフォトルミネッセンスが発生する場合がある。また、カーボンナノチューブに電界を印加すると、カーボンナノチューブに内包された発光粒子から、ホットエレクトロンが発光中心と衝突する過程で発生する電界励起型エレクトロルミネッセンスや発光粒子にキャリアが注入され電子−正孔が再結合する過程で発光する電流注入型エレクトロルミネッセンスが発生する。
【0040】
ここで、カーボンナノチューブの直径は0.7〜50nm程度であるので、カーボンナノチューブに内包された発光粒子からのフォトルミネセンスや電界励起型エレクトロルミネッセンス、電流注入型エレクトロルミネッセンスをカーボンナノチューブの先端から取り出すことによって近接場光を得ることができる。なお、以後、電界励起型エレクトロルミネッセンスと電流注入型エレクトロルミネッセンスを合わせてエレクトロルミネッセンスと記述する。
【0041】
また、カーボンナノチューブに内包させる発光粒子としては、バルクでフォトルミネッセンスや電界励起型エレクトロルミネッセンス、電流注入型エレクトロルミネッセンスを発生する材料の中から、ナノチューブの中空に入るサイズのものを選択すれば良い。そのため、有機材料よりは比較的低分子である無機の材料がより適しており、例えばV、Gd、Y、Sb、Ta等のメタルカーバイトや、Ca3(PO4)2Ca(F,Cl)2:Sb3+、Sr227:Eu2+、Y23:Eu2+、LiAlO2:Fe3+、発光中心としてMn、Sm、Eu、Ce等をドーピングしたZnS系蛍光体、SrS系蛍光体、CaS系蛍光体等が使用できる。
【0042】
なお、本発明は前述の発光材料に限定されるものではない。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を説明する。
<実施形態1>
本発明の近接場光用のプローブの一例を図1に示す。
【0044】
本実施形態のプローブ20は、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22が励起光に対し透明な支持体23で固定化された構造を有しており、カーボンナノチューブ22の一方の先端が透明支持体23から突出した構造をなしている。また、カーボンナノチューブ22が突出した側の透明支持体23の表面は、カーボンナノチューブ22の先端を除き、遮光膜24で被覆された構造になっている。
【0045】
透明支持体23に発光粒子21の励起光を照射すると、励起光はカーボンナノチューブ22のグラファイトシートを突き抜け、発光粒子21中で電子を励起してフォトルミネセンスを発生させる。ここでカーボンナノチューブ22の先端近傍は遮光膜24で被覆されているため、開口を光の波長よりも小さくでき、フォトルミネッセンスによる伝搬光は発生せず、近接場光のみが発生する。なお、カーボンナノチューブ22の先端以外の領域で発生したフォトルミネッセンスは伝搬光となる(図中PLと記述)が、遮光膜24によってプローブの外部に漏れない構造となっている。
【0046】
このような構造を取ることによって、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22を加工することなしに、そのままプローブの先端として用いることができ、従来用いられてきたファイバー先鋭化での複雑で高コストなプロセスを回避でき、安価にプローブを作製できる。
【0047】
また、直径10nm以下のカーボンナノチューブ22も容易に合成できることから、より細いカーボンナノチューブ22を選択すれば、より高分解能のプローブが実現できる。特に極細の単層ナノチューブを用いると、nm以下の分解能も期待できることから、従来のファイバーを先鋭化したプローブよりも高分解能が可能になる。
【0048】
更に、プローブ自体から発光するため、励起光の強度によって近接場光の強度を変えることができ、プローブの高感度化と高分解能を両立できる。
【0049】
次に本例に使用される発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22の作製法を述べる。作製法の一例を図3に示す。
【0050】
(a)発光粒子の微粒子を分散したグラファイト棒を陽極101とし、グラファイト棒からなる陰極102との距離1mm程度離して、He、Ar、H2等の雰囲気中100〜600Torrで40〜60Aの定電流を流してアーク放電を行う。その際陽極−陰極間距離を制御し一定電流になるように調整する。
【0051】
(b)アーク放電によって陰極102上に堆積物103が生じるので、堆積物103からコア104を取り出す。コア104は多層カーボンナノチューブとアモルファスカーボン、グラファイト片、ナノカプセルが混在した状態になっているので、遠心分離法や電気泳動法等の精製法によって多層カーボンナノチューブ22のみを得ることができる。なお、本方法で得られるカーボンナノチューブ22は、複数の発光粒子21を内包している場合が多い。
【0052】
本方法を用いた場合は、合成時に既に発光粒子21が多層カーボンナノチューブ22の中空に内包されるので、そのままプローブとして用いることができる。また、アーク放電装置は単純な構成であることから、集束イオンビーム等を用いる従来の方法よりプローブの製造コストを抑えることができる。
【0053】
加えて本方法によると、アーク放電時の高温によって内包する粒子が炭化物に変化することを利用することで、空気中では酸化されやすいメタルカーバイトを発光粒子として内包させることができる。例えば、V、Gd、Y等のメタルカーバイトを内包させる場合は、V、Gd、Y等の炭化物を生成しやすい金属を分散させたグラファイト棒を陽極とし、グラファイト棒からなる陰極との間でアーク放電を行うことによって、メタルカーバイドを内包したカーボンナノチューブを作製することができる。この方法によると、発光粒子がカーボンナノチューブ合成時に同時に作製できるので、事前に発光粒子を合成する必要がなく、プロセスコストを抑えることができる。また、内包された金属カーバイトはグラファイトシートで被覆されているので、空気中でも酸化されず安定である。
【0054】
次に本例に使用される発光粒子を内包したカーボンナノチューブの別の作製法を図4に従って述べる。
【0055】
(a)濃硝酸、濃硫酸、過マンガン酸カリウム等の強酸化剤溶液110にアーク放電法、CVD法、レーザーアブレーション法によって作製し、精製したカーボンナノチューブ22を浸漬する。
【0056】
(b)カーボンナノチューブ22は炭素原子のSP2混成軌道で作られているが、先端ではSP2混成軌道が歪みキャップを閉じている。そのためカーボンナノチューブ側面と比較し反応性が高いため、カーボンナノチューブのキャップのみが酸化され、カーボンナノチューブ22が開環する。
【0057】
(c)開環したカーボンナノチューブ22をnmオーダーに粉砕された発光粒子21の微粒子が分散された溶液112に浸漬する。
【0058】
(d)開環したカーボンボナノチューブ22は水や一般的な有機溶媒に対し濡れ性が良いため、毛管現象(毛管吸引)を起こし、発光粒子21をチューブの中空に閉じ込める。その後、加熱等によって溶媒を揮発させることによって、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22が完成される。
【0059】
なお、本方法では、発光粒子21を分散した溶液112を用いたが、発光粒子が溶解している場合も同様にカーボンナノチューブに内包できる。
【0060】
本方法によると、nmオーダーに微粒子化できる材料であればほぼ全ての発光材料をカーボンナノチューブに内包できる。そのため発光粒子を選択することによって近接場光の波長を任意に選ぶことが可能となる。また発光粒子を内包させるプロセス全てを簡単な湿式プロセスで行えることから、カーボンナノチューブの合成装置(アーク放電装置、CVD装置、レーザーアブレーション装置等)があれば、発光粒子を内包したカーボンナノチューブを簡単に得ることができ、プローブを安価に製造することが可能となる。
【0061】
次に本例のプローブ20の作製方法を述べる。
【0062】
図1に示すように、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22を励起光に対して透明な支持体23に分散する。透明支持体23としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の高分子樹脂やガラス、石英等の無機透明絶縁体等が使用できる。発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22を透明支持体23に分散した後、透明支持体23の一面を遊離アルミナ砥粒を用いて機械的に研磨して、カーボンナノチューブ22を突出させる。カーボンナノチューブ22は著しく硬い材料であるため、透明支持体23の材料を適切に選ぶことによって、遊離砥粒によって透明支持体23のみを選択的に削ることができる。特に透明支持体23として透明高分子樹脂を選ぶと、カーボンナノチューブ22と透明支持体23の研磨速度差を大きく取れ、カーボンナノチューブ22の突出が容易になるので望ましい。
【0063】
その後、研磨した面に遮光膜としてAl、Au、Ag等の金属や合金を真空蒸着法やスパッタリング法によって成膜する。発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22の先端にも遮光膜24が成膜されるので、遮光膜24を前記と同様に遊離砥粒によって機械的に研磨し、再度カーボンナノチューブ22を突出させる。このとき透明支持体23上に残す遮光膜24の膜厚は、励起光やフォトルミネッセンスによる伝搬光を完全に遮るため、500nm〜1μmにするのが良く、また突出したカーボンナノチューブ22の先端の長さは可視光の波長よりも短くする必要がある。
【0064】
なお、本例では、カーボンナノチューブを例に取り説明を行ったが、カーボンナノチューブの炭素原子をホウ素や窒素で置換したBCナノチューブ、BCNナノチューブ、CNナノチューブにおいても、前記の方法によって発光粒子を内包したBCナノチューブ、BCNナノチューブ、CNナノチューブが得られ、図示した近接場光用のプローブを作製できる。よって本発明のナノチューブはカーボンナノチューブに限定されるものではない。
【0065】
加えて最近、グラファイトシートがコーン上に積み重なったカーボンナノファイバーも発見されているが、カーボンナノファイバーにも発光粒子を内包させると同様のことが期待できるので、本発明のナノチューブはチューブ全体が中空である必要はなく、チューブの一部のみに中空があるナノチューブ(カーボンナノファイバーを含む)も含まれるものとする。
<実施形態2>
本発明の近接場光用のプローブの別の例を図5に示す。
【0066】
本実施形態のプローブ30においては、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22は、その側面が遮光層24で被覆されている。また、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22は励起光に対し透明な支持体23で固定化されており、カーボンナノチューブ22の一方の先端は、透明支持体23から突出した構造をなしている。
【0067】
本構造では、透明支持体23に発光粒子21の励起光を照射すると、励起光はカーボンナノチューブ22のグラファイトシートを突き抜け、発光粒子21中で電子を励起してフォトルミネセンスを発生させる。しかしながらカーボンナノチューブ22の側面は遮光層24で被覆されているため、フォトルミネッセンスはカーボンナノチューブ22の側面からは伝搬しない。一方、カーボンナノチューブ22の先端では遮光層24がないため、微小な開口から近接場光が発生することになる。
【0068】
なお、本例では、励起光が透明支持体23を通ってプローブ30の外部に漏れ出すが、カーボンナノチューブ22に内包された発光粒子21のフォトルミネッセンスによる近接場光とは波長が異なる。よって試料からの散乱光を検出する受光素子の検出波長を近接場光に合わせることによって、近接場光の散乱光のみを信号として検出することが可能となる。
【0069】
本例の構造を取ることによって、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22を加工することなしに、そのままプローブの先端に用いることができ、従来用いられてきたファイバー先鋭化での複雑で高コストなプロセスを回避でき、安価にプローブを作製できる。また直径10nm以下のカーボンナノチューブも容易に合成できることから、より細いカーボンナノチューブを選択すればより高分解能のプローブも実現できる。更にプローブ自体から発光するため、励起光の強度によって近接場光の強度を変えることができ、プローブの高感度化と高分解能を両立できる。また透明支持体23上に遮光膜24を付ける必要がないので、実施形態1で行う遮光膜からのカーボンナノチューブ突出工程が不要になり、プロセスが簡略化できる。
【0070】
次に本実施形態のプローブ30の作製法を述べる。
【0071】
始めに実施形態1で述べた方法によってカーボンナノチューブ22に発光粒子21を内包させる。その後、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22にAl、Au、Ag等の金属や合金を、真空蒸着法やスパッタリング法によって500nm〜1μmの厚さで成膜し、カーボンナノチューブ22の両端についた金属ないし合金はウエットエッチングによって除去して、遮光層24を完成させる。なお、遮光層24を除去する領域(つまり遮光層24が付いていないカーボンナノチューブ22の先端の長さ)は可視光の波長よりも短くする必要がある。その後、遮光層24で被覆されたカーボンナノチューブ22を励起光に対して透明な支持体23に分散する。透明支持体23としては実施形態1と同様に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の高分子樹脂やガラス、石英等の無機透明絶縁体等が使用できる。
【0072】
遮光層24で被覆されたカーボンナノチューブ22を透明支持体23に分散した後、透明支持体23の一面を遊離アルミナ砥粒を用いて機械的に研磨してカーボンナノチューブ22を突出させる。ここでカーボンナノチューブ22は著しく硬い材料であるため、透明支持体23の材料を適切に選ぶことによって、遊離砥粒によって透明支持体23のみを選択的に削ることができる。特に透明支持体23として透明高分子樹脂を選ぶと、カーボンナノチューブ22と透明支持体23の研磨速度差を大きく取れ、カーボンナノチューブ22の突出が容易になるので望ましい。
【0073】
本例においても、カーボンナノチューブ22を基に説明を行ったが、本発明はカーボンナノチューブに限定されるものではなく、発光粒子21を内包する全てのナノチューブについて言及している。
<実施形態3>
本発明の近接場光用のプローブのさらに別の例を図6に示す。
【0074】
本実施形態のプローブ40は発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22が支持体43で固定化されており、カーボンナノチューブ22の一方の先端は支持体43から突出した構造をなしている。また、カーボンナノチューブ22が突出した側の支持体43表面は、カーボンナノチューブ22の先端を除き、遮光膜24で被覆された構造になっている。更に支持体43の両端には電極41、42が設けられており、外部電源44から電圧を印加できる構造となっている。
【0075】
本例の構造では、電圧を印加すると、カーボンナノチューブ22に電界がかかり、カーボンナノチューブ22に内包された発光粒子21からエレクトロルミネッセンスが発生する。ここでカーボンナノチューブ22の先端近傍は遮光膜24で被覆されているため、開口が光の波長よりも小さくエレクトロルミネッセンスによる伝搬光は発生せず、近接場光のみが発生する。なお、カーボンナノチューブ22の先端以外の領域で発生したエレクトロルミネッセンスは伝搬光となる(図中ELと記述)が、遮光膜に24よってプローブ40の外部に漏れない構造となっている。
【0076】
本例の構造を取ることによって、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22を加工することなしに、そのままプローブの先端に用いることができ、従来用いられてきたファイバー先鋭化での複雑で高コストなプロセスを回避でき、安価にプローブを作製できる。また直径10nm以下のカーボンナノチューブ22も容易に合成できることから、より細いカーボンナノチューブ22を選択すればより高分解能のプローブも実現できる。更にプローブ40自体から発光するため、外部電圧によって近接場光の強度を変えることができ、プローブ40の高感度化と高分解能を両立できる。さらにエレクトロルミネッセンスによって発光するため励起光が不要となり、レーザー等の外部光源が不要となり、プローブ40を小型化できる。なお、本例では直流を印加しているが、交流でも良く、直流・交流を重畳させても良い。
【0077】
次に本例のプローブ40の作製方法を述べる。
【0078】
実施形態1と同様の方法によってカーボンナノチューブ22に発光粒子21を内包させる。その後、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22を支持体43に分散する。支持体43としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の高分子樹脂や、高分子樹脂からなる電子、正孔輸送材、Y23、Al23、Ta25等の無機透明絶縁体等が使用できる。なお、本発明は前述の支持体に限定されるものではない。
【0079】
その後、支持体43の一面を遊離アルミナ砥粒を用いて機械的に研磨してカーボンナノチューブ22を突出させる。カーボンナノチューブ22は著しく硬い材料であるため、支持体43の材料を適切に選ぶことによって、遊離砥粒によって支持体のみを選択的に削ることができる。特に支持体43として高分子樹脂を選ぶと、カーボンナノチューブ22と支持体43の研磨速度差を大きく取れ、カーボンナノチューブ22の突出が容易になる。
【0080】
その後、研磨した面に遮光膜24としてAl、Au、Ag等の金属や合金を、真空蒸着法やスパッタリング法によって成膜する。発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22の先端にも遮光膜24が成膜されるので、遮光膜24を前記と同様に遊離砥粒によって機械的に研磨し、再度カーボンナノチューブ22を突出させる。このとき支持体43上に残す遮光膜24の膜厚は、エレクトルミネッセンスによる伝搬光を完全に遮るため500nm〜1μmにするのが良く、また突出したカーボンナノチューブ22の先端の長さは可視光の波長よりも短くする必要がある。
【0081】
なお、本例においても、カーボンナノチューブ22を基に説明を行ったが、本発明はカーボンナノチューブ22に限定されるものではなく、発光粒子を内包する全てのナノチューブについて言及している。
<実施形態4>
図7は近接場光学顕微鏡の概略図である。この顕微鏡では、発光粒子21を内包した多層カーボンナノチューブ22をエポキシ樹脂等の透明支持体23に固定してなるプローブ(プローブの構造は図5と同様)30を、AFM装置のプローブに置き換え、半導体レーザー(図示略)とプローブ裏面近傍を石英ファイバー(図示略)で接続し、励起光をカーボンナノチューブ22に伝達するようにしている。また、ステージ上の試料50からの散乱光を検出する検出器(受光素子)51は、多層カーボンナノチューブ22に内包された発光粒子21からのフォトルミネッセンスの波長に感度を合わせてある。なお、プローブ30の変位は、AFM装置の光てこによって制御した。
【0082】
膜厚0.1μmのレジスト膜の表面のみをEBで露光し、ウエット現像によって作製したラインアンドスペースパターンを、本発明の近接場光学顕微鏡で観察し、その分解能を調べた。その結果、40nmピッチのラインアンドスペースまで確認でき、分解能は20nm程度であることが判った。
【0083】
本例で用いた多層カーボンナノチューブ22の先端径は10〜15nmであることから、ほぼカーボンナノチューブ22の先端径によって分解能が決定されていることが確認された。
【0084】
本例の近接場光学顕微鏡では、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22を加工することなしにそのままプローブの先端に用いることができるため、従来用いられてきたファイバーの先鋭化が必要なく、安価に近接場光学顕微鏡を作製できる。また直径10nm以下のカーボンナノチューブも容易に合成できることから、より細いカーボンナノチューブを用いたプローブを使用することによって高分解能の近接場光学顕微鏡を実現できる。更にプローブ自体から発光するため、励起光の強度によって近接場光の強度を変えることができ、近接場光学顕微鏡の高感度化と高分解能を両立できる。
<実施形態5>
本発明の近接場光用のプローブを用いたDVDの情報記録再生方式の一例を図8に示す。発光素子21を内包した多層カーボンナノチューブ22からなるプローブ(プローブの構造は図1と同様)20を、各プローブ20の間隔が20μmとなるように20行×20列のアレイ(アレイ化したプローブを符号20Aで示す)にして、相変化型のDVD−RAMの表面に接触させた。
【0085】
プローブ20上には半導体レーザー(図示略)を設け、プローブ20の裏面まで石英ファイバー(図示略)で接続し、励起光をカーボンナノチューブ22に伝達できるようにしている。また、DVD−RAM60の裏面には、記録ピットからの透過光を検出する検出器(受光素子)61をアレイ化して設置した。
【0086】
最初に半導体レーザーの光強度を大きくして、DVD−RAM60に書き込みを行った。本例のアレイ化したプローブ20Aを用いることによって、40〜100nmのサイズの記録ピットが実現できた。次に半導体レーザーの光強度を小さくし、アレイ化したプローブ20Aに照射すると、前記の記録ピットから信号が検出され、DVD−RAM60から情報再生が可能であった。
【0087】
今回実現できた記録ピットの大きさは可視光の波長よりも十分小さく、近接場光によって情報記録再生が行われたことが判る。なお使用した多層カーボンナノチューブ22の先端径は30nm程度であることから、より細いカーボンナノチューブを用いることによって情報の記録密度を著しく改善できる期待がある。
【0088】
本例の光メモリへの情報記録・再生方式においては、発光粒子21を内包したカーボンナノチューブ22を加工することなしにそのままプローブの先端に用いることができる。現在得られている最小のカーボンナノチューブ直径は0.7nmであるので、このカーボンナノチューブに発光粒子を内包させることにより、1Tbit/in2 以上の情報密度も期待できる。
【0089】
なお、本例では、光メモリへの情報記録、光メモリからの情報再生を近接場光によって行ったが、本発明は上記の方式に限定されるわけではなく、どちらか一方のみを本発明のプローブで行っても良く、また光メモリからの散乱光や反射光を検出する方式でも構わない。
【0090】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、先端に励起により発光する発光粒子を内包したナノチューブを保持しているので、ナノチューブに内包された発光粒子からのフォトルミネセンスやエレクトロルミネッセンスを、ナノチューブの先端から取り出すことによって近接場光を容易に得ることができる。そのため、従来用いられてきたファイバー先鋭化での複雑で高コストなプロセスを回避でき、安価にプローブを作製できる。また極細のナノチューブが容易に得られることから、これらのナノチューブに発光粒子を内包させることにより、光ファイバーを先鋭化した従来のプローブよりも高分解能のプローブが実現できる。
【0091】
請求項2に記載の発明によれば、ナノチューブがカーボンナノチューブからなるため、アーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法によって先端径が0.7〜50nm程度のナノチューブを容易に得ることができる。
【0092】
請求項3に記載の発明によれば、ナノチューブの側面が遮光層で被覆されているため、ナノチューブの側面からフォトルミネセンスやエレクトロルミネッセンスによる伝搬光が発生せず、その結果、ナノチューブ先端から近接場光のバックグラウンド光を低減でき、プローブの分解能が向上する。
【0093】
請求項4に記載の発明によれば、内包された発光粒子が金属カーバイトであるから、陽極である炭素電極に前記の金属カーバイトを構成する金属を含有させ、陰極との間でアーク放電を起こすことにより、金属カーバイトを内包したカーボンナノチューブを作製することができる。そのため、空気中では酸化を受けやすく不安定な金属カーバイトを、カーボンナノチューブの中に内包でき、内包された金属カーバイトはグラファイトシートで被覆されているので、空気中でも酸化されず安定である。また、発光粒子がカーボンナノチューブ合成時に同時に作製できるので、事前に発光粒子を合成する必要がなく、プロセスコストを抑えることができる。
【0094】
請求項5に記載の発明によれば、内包された発光粒子がナノチューブに伝達された光によって励起されて近接場光を発生するため、自己発光型のプローブを実現できる。そのため励起光の強度によって近接場光の強度を変えることができ、プローブの高感度化と高分解能を両立できる。
【0095】
請求項6に記載の発明によれば、内包された発光粒子がナノチューブに印加された電界によって励起されて近接場光を発生するため、自己発光型のプローブを実現できる。そのため電界強度によって近接場光の強度を変えることができ、プローブの高感度化と高分解能を両立できる。
【0096】
請求項7に記載の発明によれば、ナノチューブ先端を開環し、その後、毛管吸引によって発光粒子をナノチューブの中に内包させるので、nmオーダーに微粒子化できる材料であれば、ほぼ全ての発光材料をナノチューブに内包できる。その結果、発光粒子を選択することによって近接場光の波長を任意に選ぶことが可能となる。また、発光粒子を内包させるプロセス全てを簡単な湿式プロセスで行えることから、ナノチューブの合成装置があれば、発光粒子を内包したナノチューブを簡単に得ることができ、プローブを安価に製造することができる。
【0097】
請求項8に記載の発明によれば、内包された発光粒子が金属カーバイトであって、陽極である炭素電極に前記の金属カーバイトを構成する金属を含有させ、陰極との間でアーク放電を起こすことにより、金属カーバイトを内包したカーボンナノチューブを作製するので、空気中では酸化を受けやすく不安定な金属カーバイトを、カーボンナノチューブの中に内包させることができ、内包された金属カーバイトはグラファイトシートで被覆されていることから、空気中でも酸化されない安定な構造を提供できる。また、発光粒子がカーボンナノチューブ合成時に同時に作製できるので、事前に発光粒子を合成する必要がなく、プロセスコストを抑えることができる。
【0098】
請求項9に記載の発明によれば、請求項1〜6の記載の近接場光を発生するプローブを搭載しているため、発光粒子を内包したナノチューブを加工することなしに、そのままプローブの先端に用いることができ、近接場光学顕微鏡をより安価に作製できる。また、極細のナノチューブを用いたプローブを使用することによって、従来のファイバーを先鋭化したプローブを用いた近接場光学顕微鏡よりも高分解能を実現できる。
【0099】
請求項10に記載の発明によれば、請求項1〜6の記載の近接場光を発生するプローブを用いて、光メモリへの情報記録ないし光メモリからの情報再生の少なくても一方を行っているので、情報密度の改善が可能となる。特に極細いナノチューブに発光粒子を内包させることによって、1Tbit/in2以上の情報密度も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態のプローブを示す図である。
【図2】 発光粒子を内包したカーボンナノチューブの構造例を示す図である。
【図3】 本発明のプローブの作製方法の一例を示す説明図である。
【図4】 本発明のプローブの作製方法の別の例を示す説明図である。
【図5】 本発明の別の実施形態のプローブを示す図である。
【図6】 本発明の更に別の実施形態のプローブを示す図である。
【図7】 本発明の近接場光学顕微鏡の一例を示す図である。
【図8】 本発明のプローブを用いた光メモリの情報記録再生方式の一例の説明図である。
【図9】 従来の自己発光型プローブの一例を示す図である。
【図10】 従来の自己発光型プローブの別の例を示す図である。
【符号の説明】
20,30,40…プローブ
21…発光粒子
22…カーボンナノチューブ

Claims (10)

  1. 近接場光を発生するプローブにおいて、先端に励起により発光する粒子を内包したナノチューブを保持したことを特徴とする近接場光用のプローブ。
  2. 前記ナノチューブがカーボンナノチューブからなることを特徴とする請求項1に記載の近接場光用のプローブ。
  3. 前記ナノチューブが、側面を遮光層で被覆された構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の近接場光用のプローブ。
  4. 前記発光粒子が金属カーバイトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の近接場光用のプローブ。
  5. 前記発光粒子が、ナノチューブに伝達された光によって励起されて近接場光を発生するものとされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の近接場光用のプローブ。
  6. 前記発光粒子が、ナノチューブに印加された電界によって励起されて近接場光を発生するものとされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の近接場光用のプローブ。
  7. 請求項1に記載のプローブの作製方法において、ナノチューブの先端を開環し、その後、毛管吸引によって発光粒子をナノチューブの中に内包させることを特徴とする近接場光用のプローブの作製方法。
  8. 請求項4に記載のプローブの作製方法において、陽極である炭素電極に前記金属カーバイトを構成する金属を含有させ、陰極との間でアーク放電を起こすことにより、金属カーバイトを内包したカーボンナノチューブを作製することを特徴とする近接場光用のプローブの作製方法。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載のプローブを搭載したことを特徴とする近接場光学顕微鏡。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載のプローブを用いて、光メモリへの情報記録ないし光メモリからの情報再生の少なくとも一方を行うことを特徴とする光メモリの情報記録再生方式。
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