JP4437369B2 - 水硬性材料用収縮低減剤及び水硬性材料用添加剤組成物 - Google Patents

水硬性材料用収縮低減剤及び水硬性材料用添加剤組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水硬性材料用収縮低減剤及びその製造方法、並びに、水硬性材料用添加剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
水硬性材料は、強度や耐久性等に優れた硬化物を与えることから、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等として広く用いられており、土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。このような水硬性材料では、硬化した後に、外気温や湿度条件等により、内部に残った未反応水分の散逸が起こり、これに起因すると考えられる乾燥収縮が進行し、硬化物中にひび割れが生じて強度及び耐久性が低下するという問題があった。土木・建築構造物等の強度や耐久性等が低下すると、安全性の低下や修復コストの増大等の重大な問題が生じることになる。
【0003】
このような問題に対して、法規制が強化されようとしている。例えば、1999年6月に成立した住宅の品質確保の促進に関する法律では、コンクリートのひび割れも瑕疵保証の対象となる。また、2005年以降に乾燥収縮によるひび割れに関して性能照準型のレディーミクストコンクリートに関する規格がJIS A5308に導入される可能性がある。このような現在、水硬性材料の硬化物中における乾燥収縮の進行を抑制する水硬性材料用収縮低減剤の重要性が認識され、技術革新が盛んに行われている。
【0004】
例えば、セメント配合物の乾燥収縮を低減させるための薬剤として、特公昭56−51148号公報には炭素数1〜4のアルコールのアルキレンオキシド付加物、特公平1−53214号公報には2〜8価のアルコールのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共付加物、特公平1−53215号公報には低級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加物、特開昭59−152253号公報にはオリゴマー領域のポリプロピレングリコール、特公平6−6500号公報には低分子量アルコール類、特許第2825855号公報には炭素数8の2−エチルヘキサノールのアルキレンオキシド付加物が開示されている。これらの化合物は、何れも分子量が1000以下程度のオリゴマー又は低分子の化合物である。
【0005】
これらの中で現在市販・実用化されている収縮低減剤は、「コンクリート混和剤の開発と最新技術」(第一版、1995年9月18日、シーエムシー社発行)等で紹介されている。しかしながら、これらの収縮低減剤では、標準使用量が単位セメント重量に対して2〜6%と多く、そのためコンクリートに使用した場合にコンクリートのコストが高くなりとても汎用的な剤とは言い難い。
【0006】
一方、高分子量の乾燥収縮低減剤としては、特開平8−268741号公報に開示されている、ポリカルボン酸(塩)の側鎖にオリゴアルキレングリコール類や多価アルコール類が化学的に結合したグラフトポリマーを含有する乾燥収縮低減型セメント分散剤がある。しかしながら、これは剤の製造が容易ではない。
【0007】
容易に高分子量化合物を得る方法として、ポリエーテル化合物にエチレン性不飽和単量体をグラフト重合する方法が知られている。欧州特許公開第0271435(A2)号公報には、ポリエーテルの主鎖ポリマーと不飽和エチレン性単量体を重合してなる側鎖ポリマーより構成されるグラフト重合体が、セメント組成物の流動化剤又は減水剤として使用されることが開示され、特開平11−139855号公報では、特定の単量体を含む重量平均分子量が6千以上のグラフト重合体が、セメント添加剤として使用されることが開示されている。しかしながら、これらのグラフト重合体はセメント組成物の流動性を保ちつつ減水して硬化させることにより、セメント硬化物の強度等を向上しようとするものであることから、乾燥収縮低減剤として使用されることは一切開示されていない。従って、水硬性材料中の添加量を抑制しても乾燥収縮の進行を充分に抑制することができる剤を容易に製造するための研究の余地があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、水硬性材料への添加量を抑制して水硬性材料の製造コストを抑制しつつ、硬化物の乾燥収縮の進行を充分に抑制することにより優れたひび割れ防止効果を発揮する、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤及びその製造方法、並びに、水硬性材料用添加剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、土木・建築分野等に広く用いることができる水硬性材料用収縮低減剤についての問題点を綿密に精査したうえで鋭意研究を行った結果、特定構造を有する重合体を含む水硬性材料用収縮低減剤が、水硬性材料への添加量を抑制して水硬性材料の製造コストを抑制しつつ、硬化物の乾燥収縮の進行を充分に抑制することにより優れたひび割れ防止効果を発揮することができることから、汎用性を高くして土木・建築構造物等の安全性を向上したり修復コストを抑制したりすることができるという劇的な効果が生じる事実に遭遇し、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち本発明は、炭素数2〜30の活性水素を1個もつ化合物の残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1つ結合した構造を有する重合体(a)、炭素数4〜30の活性水素を2個もつ化合物の残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1以上結合した構造を有する重合体(b)、炭素数1〜30の活性水素を3個以上もつ化合物の残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1以上結合した構造を有する重合体(c)、及び、アミン残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1つ結合した構造を有する重合体(d)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含む水硬性材料用収縮低減剤である。
以下に、本発明を詳述する。
【0011】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、上記重合体(a)、重合体(b)、重合体(c)及び重合体(d)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含み、その他の成分を含んでいても含んでいなくてもよいが、該重合体を主成分として含むことが好ましく、各重合体はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、2種以上の重合体が用いられる場合、各重合体の重量比率としては特に限定されるものではない。
【0012】
上記重合体(a)、重合体(b)及び重合体(c)において、「活性水素をもつ化合物の残基」とは、活性水素をもつ化合物から活性水素を除いた構造を有する基を意味し、活性水素をもつ化合物との反応により形成される基に特に限定されるものではない。このような基としては、例えば、アルコールの水酸基から活性水素を除いた構造を有するアルコール残基が好ましく、その他にもカルボン酸のカルボキシル基から活性水素を除いた構造を有するカルボン酸残基等が挙げられる。なお、上記活性水素をもつ化合物としては、活性水素を1個、2個又は3個もつ化合物等が挙げられる。また、上記重合体(d)において、「アミン残基」とは、アミンの窒素原子上の置換基から水素原子を除いた構造を有する基、又は、アンモニア若しくはアミンの窒素原子上の水素原子を除いた構造を有する基を意味し、アンモニア若しくはアミンとの反応により形成される基に特に限定されるものではない。
【0013】
上記重合体において、カルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖としては特に限定されるものではなく、1種であってもよく、2種以上であってもよい。例えば、下記一般式(1);
【0014】
【化2】
Figure 0004437369
【0015】
(式中、R 及びR は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は、カルボキシル基を有する側鎖を表す。Z 及びZ は、同一若しくは異なって、水素原子、又は、カルボキシル基を有する側鎖を表す。)で表される繰り返し単位を有する構造であることが好ましい。但し、該繰り返し単位は、カルボキシル基を有する側鎖をもつ繰り返し単位を必須とする。このような繰り返し単位がオキシアルキレン鎖の主成分となることが好ましく、その他の繰り返し単位を有していても有していなくてもよい。尚、上記R 及びR は、一方が水素原子であり、他方が水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基であることが好ましい。
【0016】
上記重合体は、特定炭素数の活性水素をもつ化合物の残基及び/又はアミン残基にオキシアルキレン鎖が結合した構造と、カルボキシル基を有する側鎖とから構成され、該側鎖は、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とするエチレン性不飽和単量体成分が重合して形成されてなる構造を有するものである。このような重合体は、例えば、後述するように、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とするエチレン性不飽和単量体成分をポリエーテル化合物にグラフト重合して重合体を製造する工程により製造することができる。不飽和カルボン酸系単量体がポリエーテル化合物にグラフト重合した重合体はカルボキシル基を側鎖に有することになり、このようなカルボキシル基により弱いながらもイオン的な作用力で水硬性材料に吸着するか、又は、水硬性材料の表面のカチオン若しくは溶出したカチオンにキレートすると考えられる。このようなカルボキシル基の作用がどのような原理で水硬性材料における硬化物の収縮低減に寄与するのかは定かではないが、驚くべきことに、上記エチレン性不飽和単量体成分が不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とすると、硬化物の乾燥収縮の進行を充分に抑制する作用(以下、収縮低減性能ともいう)が飛躍的に向上することになる。
【0017】
上記重合体の親水性、疎水性については、本発明の作用効果を奏することになる限り特に限定されるものではないが、疎水性が過大であると、コンクリートの空気量を過剰に減少させ、空気量の調整が困難となるおそれがあり、親水性が過大であると、過剰の空気を連行し、やはり適正な空気量に調整することが困難となるおそれがある。上記重合体の親水性と疎水性とを調整するには、例えば、オキシアルキレン鎖の構造を適宜設定することにより行うことができる。
【0018】
上記重合体の重量平均分子量(Mw)としては特に限定されず、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)で測定される重量平均分子量(Mw)が200〜1000000であることが好ましい。より好ましくは、500〜500000であり、更に好ましくは、1000〜100000である。また、分散度(Mw/Mn)としては特に限定されず、例えば、1.5〜100であることが好ましい。より好ましくは、2〜80であり更に好ましくは、3〜50である。上記重合体の分散度は、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値である。
【0019】
本明細書中において、分子量とは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定する値を意味する。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、市販のポリエチレングリコールを標準試料として検量線を作製した際に、狭くても1000から100000の範囲で、3次式で近似でき、その近似式の相関係数(r)が0.99以上となるものを用いることが好ましい。より好ましくは、0.999以上であり、更に好ましくは、0.9999以上である。移動相は、試料を溶解させるものを選択する。検量線は、正確に分子量を計算するにはできるだけ多くの標準試料を用いて描くのが好ましく、その目的のために5点以上の標準試料を用いる。この際、得られる分子量が信頼性をもつために、分子量1500以下と、分子量15万以上を必ず1点ずつ含むこととする。
【0020】
本発明はまた、上記水硬性材料用収縮低減剤の製造方法であって、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とするエチレン性不飽和単量体成分をポリエーテル化合物にグラフト重合して重合体を製造する工程を含む水硬性材料用収縮低減剤の製造方法でもある。これにより、本発明の作用効果を発揮することになる水硬性材料用収縮低減剤を簡便に製造することが可能となる。
以下に、本発明の水硬性材料用収縮低減剤の製造方法について、エチレン性不飽和単量体成分、ポリエーテル化合物、及び、重合体の製造方法を詳述する。
【0021】
〔エチレン性不飽和単量体成分〕
上記エチレン性不飽和単量体成分における不飽和カルボン酸系単量体は、重合性不飽和結合とカルボキシル基とを分子内に少なくとも1つずつ有する単量体であり、不飽和モノカルボン酸系単量体と、α,β−不飽和ジカルボン酸系単量体及び/又はその無水物とを必須成分として含むことが好ましい。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記α,β−不飽和ジカルボン酸系単量体及び/又はその無水物を必須成分として含むことにより、重合反応の暴走による、急激な増粘を防止することができる。なお、上記エチレン性不飽和単量体成分中における不飽和カルボン酸系単量体の含有量としては、本発明の作用効果を奏することになる限り特に限定されず、例えば、主成分として含有することが好ましく、その他の成分を含有していても含有していなくてもよい。
【0022】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、3−メチルクロトン酸、2−メチル−2−ペンテン酸等が挙げられる。これらの中でも、容易に入手できる点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0023】
上記α,β−不飽和ジカルボン酸系単量体及び/又はその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸の無水物等が挙げられる。これらの中でも、容易に入手できる点から、マレイン酸、フマル酸及び無水マレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0024】
上記不飽和カルボン酸系単量体におけるα,β−不飽和ジカルボン酸系単量体及び/又はその無水物の含有量としては、例えば、適度な速度でポリエーテル化合物にグラフト重合させて増粘を防止するためには、0.1〜99.9重量%であることが好ましい。より好ましくは、1〜99重量%であり、更に好ましくは、10〜90重量%であり、特に好ましくは、20〜80重量%である。
【0025】
本発明におけるエチレン性不飽和単量体成分の好ましい態様の1つは、α,β−不飽和ジカルボン酸系単量体と(メタ)アクリル酸とを必須成分として含むことである。このような態様におけるα,β−不飽和ジカルボン酸系単量体と(メタ)アクリル酸との重量比としては、例えば、1/99〜99/1であることが好ましい。より好ましくは、10/90〜90/10であり、更に好ましくは、20/80〜80/20であり、特に好ましくは、30/70〜70/30である。
【0026】
上記エチレン性不飽和単量体成分に含有させることができる不飽和カルボン酸系単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸エステル類やそれ以外のエチレン性不飽和単量体を挙げることができ、これらを1種又は複数種使用できる。
上記エチレン性不飽和カルボン酸エステル類としては、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸のアルキルエステル類;フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸のアルキルエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和カルボン酸エステル類;(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ナフトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、モノフェノキシポリエチレングリコールマレエート、カルバゾールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0027】
上記エチレン性不飽和カルボン酸エステル類以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、以下に記載するもの等が挙げられる。
スチレン等の芳香族ビニル系単量体類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド等のアミド基を有するビニル系単量体類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルキルオキシシリル基を有するビニル系単量体類;γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等のケイ素原子を有するビニル系単量体類;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、オクチルマレイミド、ドテシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体。
【0028】
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基を有するビニル系単量体類;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基を有するビニル系単量体類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート類等のアミノ基を有するビニル系単量体類;(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコールイソプロペニルエーテル等の不飽和エーテル類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸、ヒドロキシアリルオキシプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するビニル系単量体類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール、ビニルピロリドン、エチルビニルエーテル等のその他の官能基を有するビニル系単量体類等。
【0029】
〔ポリエーテル化合物〕
上記ポリエーテル化合物としては、例えば、炭素数2〜30の活性水素を1個もつ化合物のアルキレンオキサイド付加物、炭素数4〜30の活性水素を2個もつ化合物のアルキレンオキサイド付加物、炭素数1〜30の活性水素を3個以上もつ化合物のアルキレンオキサイド付加物、及び、アミンのアルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、その他の成分を含んでいても含んでいなくてもよいが、該アルキレンオキサイド付加物を主成分として含むことが好ましく、各アルキレンオキサイド付加物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記アルキレンオキサイド付加物は、例えば、アルキレンオキサイドを活性水素を有する化合物に公知の方法で重合することにより調製することができ、炭素数2〜30の活性水素を1個もつ化合物の残基にオキシアルキレン鎖が1つ結合した構造、炭素数4〜30の活性水素を2個もつ化合物の残基にオキシアルキレン鎖が1以上結合した構造、炭素数1〜30の活性水素を3個以上もつ化合物の残基にオキシアルキレン鎖が1以上結合した構造、又は、アミン残基にオキシアルキレン鎖が1つ結合した構造を有することになる。また、活性水素をもつ化合物の残基又はアミン残基に結合していないオキシアルキレン鎖の末端は、例えば、水素原子、1価金属原子、2価金属原子、アンモニウム基、有機アミン基、炭素数1〜30の炭化水素基、オキソ炭化水素基、アミド炭化水素基、カルボキシル炭化水素基、炭素数0〜30のスルホニル(炭化水素)基等のいずれかに結合した構造を有することになり、1分子内に2つ以上のオキシアルキレン鎖を有する場合には、該末端構造が同一であってもよく異なっていてもよい。このような末端構造の中でも、汎用性の点から、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基に結合した構造であることが好ましい。
【0031】
上記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、汎用性の点から、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを必須成分として、必要に応じて他のアルキレンオキサイドを用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用することにより、ブロック付加、交互付加、ランダム付加等の付加形態となるようにしてもよい。
【0032】
上記活性水素を有する化合物は、炭素数2〜30の1価アルコール、炭素数4〜30の2価アルコール、炭素数1〜30の3価以上のアルコール、及び、アミンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、必要に応じてカルボン酸等を含んでいてもよい。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、汎用性の点から、比較的安価で入手しやすいアルコール類を用いることが好ましく、炭素数2〜30の1価アルコールが、より好ましい。
【0033】
上記炭素数2〜30の1価アルコールとしては、例えば、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、2−エチルブタノール、n−オクタノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の炭素数2〜22の1級アルコール;iso−プロピルアルコール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、メチルアミルアルコール、2−オクタノール、ノニルアルコール、n−パラフィンを酸化して得られる炭素数12〜14のアルコール等の炭素数3〜18の2級アルコール;tert−ブタノール、tert−ペンタノール等の3級アルコール等が挙げられる。これらの中でも、炭素数が3〜12であるものが好ましい。より好ましくは、炭素数が3〜10である。
【0034】
上記炭素数4〜30の2価アルコールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
上記炭素数1〜30の3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、ペンタエリスリトール、グルコース、フラクトース、ソルビトール、グルコン酸、酒石酸、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0035】
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アリルアミン、シクロブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ラウリルアミン、アニリン、ジフェニルアミン、尿素、チオ尿素、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0036】
上記カルボン酸としては、例えば、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルシン酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸;乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸等が挙げられる。
【0037】
上記アルキレンオキサイド付加物の調製における重合方法としては特に限定されず、例えば、汎用性の点から公知の重合方法を用いることが好ましく、酸触媒又はアルカリ触媒を用いる方法が好適である。例えば、酸触媒としては、三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒である金属及び半金属のハロゲン化合物;塩化水素、臭化水素、硫酸等の鉱酸等が挙げられ、アルカリ触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
上記ポリエーテル化合物はまた、上記アルキレンオキサイド付加物から誘導された誘導体としてもよい。このような誘導体としては特に限定されず、例えば、ポリエーテル化合物の末端官能基を変換してなる末端基変換体や、ポリエーテル化合物と、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、ハロゲン基等の基を1分子中に複数個有する架橋剤とを反応させて得られる架橋体等が挙げられる。
【0039】
上記末端基変換体としては、例えば、ポリエーテル化合物の全ての末端又は一部の末端の水酸基を、(1)炭素数2〜22の脂肪酸、コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸等のジカルボン酸(無水物)でエステル化したもの、(2)ハロゲン化アルキルを用いた脱ハロゲン化水素反応でアルコキシ化したもの、すなわちアルコキシポリアルキレングリコール、(3)クロルスルホン酸、無水硫酸、スルファミン酸等の公知の硫酸化剤で硫酸化したもの、すなわちポリオキシアルキレン硫酸(塩)等が挙げられる。
【0040】
上記ポリエーテル化合物の重量平均分子量としては特に限定されず、例えば、100〜1000000であることが好ましい。より好ましくは200〜100000、更に好ましくは300〜50000である。また、分散度(Mw/Mn)としては特に限定されず、例えば、1〜100であることが好ましい。より好ましくは1.1〜10、更に好ましくは1.1〜3である。
【0041】
上記ポリエーテル化合物は本発明における重合体の原料として用いられるため、このようなポリエーテル化合物の親水性と疎水性のバランスは、得られる重合体の親水性と疎水性のバランスに大きく影響することになる。重合体の疎水性が大き過ぎると、コンクリートの空気量を過剰に減少させて、空気量の調整が困難になる。また、重合体の親水性が大き過ぎると、水硬性材料中に過剰の空気を連行して、適正な空気量に調整することが困難となる。従って、本発明では、ポリエーテル化合物の親水性と疎水性とを適度にバランスさせることが重要な意味を有することとなる。このような親水性と疎水性のバランスを表す指標として、HLBがある。HLBを数値化する試みはいくつかなされているが、本発明においては辻薦著「乳化・可溶化の技術」(第8版、平成4年10月30日出版、工学図書社発行)に記載のデービスの式に準じて算出した値とする。
上記ポリエーテル化合物のHLBとしては、例えば、1〜15であることが好ましい。より好ましくは、2〜12であり、更に好ましくは、3〜9である。
市販のポリエーテル化合物として、例えば、1級アルコールのアルキレンオキサイド付加物であるニューポールLB、50HBシリーズ(商品名、三洋化成社製)、炭素数12〜14の2級アルコールのアルキレンオキサイド付加物であるソフタノール(商品名、日本触媒社製)及び末端アミンポリエーテルであるジェファーミンMシリーズ(商品名、サンテクノケミカル社製)等が挙げられる。
【0042】
〔重合体の製造方法〕
本発明における重合体を調製するグラフト重合は、ポリエーテル化合物から水素原子やハロゲン原子が引き抜かれた際に発生するグラフト部位を開始点としてエチレン性不飽和単量体が付加重合することにより行われる。
【0043】
上記グラフト重合において、ポリエーテル化合物は、グラフト部位が同一分子中に多数存在するものもあれば全く存在しないものもある。また、同一の炭素原子から複数の原子が引き抜かれると、その部位でポリエーテル鎖は切断される。エチレン性不飽和単量体の重合停止反応は、連鎖移動反応、不均化停止反応、再結合停止反応等であり、ポリエーテル化合物と結合してポリエーテル化合物の2量体、3量体等ができることもある。このため、得られる親水性グラフト重合体の分子量分布は広くなり、分散度(Mw/Mn)は大きくなると考えられる。
【0044】
上記グラフト重合の方法としては、ポリエーテル化合物にエチレン性不飽和単量体をグラフト重合することができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、グラフト率を上げると親水性グラフト重合体の収縮低減性能を向上させることができる等の点から、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、公知のラジカル開始剤を用いることができるが、反応性等の点から、有機過酸化物が特に好ましい。
【0045】
上記有機過酸化物としては特に限定されず、例えば、以下の(1)〜(8)に記載するもの等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(1)ケトンパーオキサイド類:メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロメチルエチルケトンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等。
【0046】
(2)ハイドロパーオキサイド類:tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2−(4−メチルシクロヘキシル)−プロパンハイドロパーオキサイド等。
【0047】
(3)ジアルキルパーオキサイド類:ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α′−ビス(tert−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(tert−ブチルパーオキシ)p−イソプロピルヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等。
【0048】
(4)パーオキシエステル類:tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシビバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルエキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、クミルパーオキシオクトエート、tert−ヘキシルパーオキシビバレート、tert−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等。
【0049】
(5)パーオキシケタール類:n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)オクタン等。
【0050】
(6)ジアシルパーオキサイド類:アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド等。
【0051】
(7)パーオキシジカーボネート類:ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−アリルパーオキシジカーボネート等。
(8)その他の有機過酸化物類:アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアリルカーボネート等。
【0052】
上記グラフト重合では、有機過酸化物と共に、有機過酸化物の分解触媒や、還元性化合物を併用してもよい。また、ポリエーテル化合物にエチレン性不飽和単量体成分を添加してグラフト重合を行う場合、重合開始剤等は、予めポリエーテル化合物に添加することもできるが、エチレン性不飽和単量体成分に添加したり、エチレン性不飽和単量体成分と同時に反応系へ添加したりすることもできる。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、例えば、エチレン性不飽和単量体成分に対して0.1〜15重量%とすることが好ましい。0.1重量%未満であっても、15重量%を超えても、ポリエーテル化合物へのグラフト率が低下するおそれがある。より好ましくは、0.5〜10重量%である。
【0053】
上記グラフト重合は、溶液重合や塊状重合等の公知の重合方法により行うことができる。溶液重合を行う際に用いることができる溶媒としては特に限定されず、例えば、重合効率に悪影響を及ぼさない溶媒を用いることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、水;n−ブタン、プロパン、ベンゼン、シクロヘキサン、ナフタレン等の炭化水素系;塩化メチル、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系;プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール系;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル等のエーテル系;メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系;酢酸メチル、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル等のエステル系;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸系;(ポリ)エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールとその誘導体系等の溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記グラフト重合は、回分式でも連続式でも行うことができる。また、グラフト重合の温度は、80〜160℃であることが好ましい。80℃より低いと、グラフト重合が進行しにくく、ポリエーテル化合物へのエチレン性不飽和単量体のグラフト効率が低下するおそれがある。160℃より高いと、原料のポリエーテル化合物及び得られるグラフト重合体の熱分解が起こるおそれがある。より好ましくは、100〜160℃である。
【0055】
上記グラフト重合では、ポリエーテル化合物は、その一部又は全量を初期に仕込むことが好ましい。また、エチレン性不飽和単量体成分として、α,β−不飽和ジカルボン酸系単量体、すなわちマレイン酸、フマル酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1つの単量体等と、(メタ)アクリル酸とを含む場合、α,β−不飽和ジカルボン酸系単量体のうちの半量以上を予めポリエーテル化合物に混合し、この混合物をポリエーテル化合物の流動点(温度)以上に加熱した後、得られる混合物に残りのエチレン性不飽和単量体及び重合開始剤を別々に添加してグラフト重合を行うことが好ましい。この方法により、α,β−不飽和ジカルボン酸系単量体のグラフト重合体への導入率を大幅に向上させることができる。
【0056】
上記エチレン性不飽和単量体成分の使用量としては特に限定されず、例えば、エチレン性不飽和単量体成分中に含まれる不飽和カルボン酸系単量体が、ポリエーテル化合物100重量部に対して、0.1〜100重量部となるようにすることが好ましい。0.1重量部未満であると、重合体がセメントに作用しにくくなり収縮低減性が低下するおそれがある。100重量部を超えると、重合体による硬化遅延性が増大したり、反応混合物の粘度が高くなって取扱いにくくなるおそれがある。より好ましくは、1〜80重量部であり、更に好ましくは、2〜65重量部である。
【0057】
上記グラフト重合により得られる重合体は、そのまま水硬性材料用収縮低減剤として使用してもよいが、溶剤に溶解させて用いることもできる。上記溶剤としては、例えば、水、アルコール等が挙げられるが、水を用いることが好ましい。また、重合体がカルボキシル基、スルホン酸基等の酸基やそのエステル基を有する場合、塩基を添加して酸基やそのエステル基の一部又は全部を塩に変換したものを添加剤として使用してもよい。
【0058】
上記塩基としては特に限定はされず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
上記グラフト重合の方法は、上述した方法に限定されるものではなく、例えば、特許第2945822号公報、特許第2918798号公報、特許第2918799号公報、特開平11−279220号公報等に記載された方法も用いることができる。
【0060】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、水硬性材料が乾燥するときに起こる収縮を低減する効果を有するもので、ひび割れの低減、防止、充填性の向上、反りの防止、剥離の防止などを主目的として使用されることになる。
以下に、本発明の水硬性材料用収縮低減剤の特性について説明する。
【0061】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤では、上記重合体がカルボキシル基及び/又はその水素イオンを金属イオンやアンモニウムイオン等のカチオンで置換した基を有することになる。このような基は、混練水中に添加した際のエステルの加水分解等により発生するものを含む。このような基を有することから、上記重合体は、カルボン酸及び/又はその塩の形態となるものである。
【0062】
上記カルボン酸及び/又はその塩の確認方法は、公知の分析方法で測定することにより行うことができる。このような分析方法としては、例えば、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、中和滴定法等が挙げられ、これらを併用してカルボン酸及び/又はその塩の定性・定量分析ができる。カルボン酸及び/又はその塩が存在する場合、IRを用いると、カルボン酸のC=O伸縮による吸収帯が、1700〜1800cm-1付近に現れる。また、中和滴定法を用いると、正数の酸価を得ることになる。酸価は、試料1g中のカルボン酸及び/又はその塩を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で表される。本発明では、1〜1000mg/gとなるように設定することが好ましい。より好ましくは、10〜500mg/gであり、更に好ましくは30〜300mg/gである。カルボン酸の一部又は全部が塩となっている場合には、一旦完全な酸型又はアルカリ型にしてから中和滴定法を行うことにより総カルボン酸量を知ることができる。また、混練水中に添加した際のエステルの加水分解等によりカルボン酸及び/又はその塩を発生する場合には、試料を予め加水分解し、それを測定することによって分析することができる。
【0063】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤ではまた、モルタルフロー試験によるモルタルフロー値が110mm以上かつ空気連行量が11±2容積%以上となるのに必要な上記水硬性材料用収縮低減剤の添加量が、セメントに対する固形分換算で1.0重量%以上であるか、又は、上記水硬性材料用収縮低減剤をセメントに対する固形分換算で1.0重量%以上添加してもモルタルフロー試験によるモルタルフロー値が110mm以上かつ空気連行量が11±2容積%以上とならないことが好ましい。
【0064】
上記モルタル試験によるモルタルフロー値とは、下記の評価方法により測定される値である。
〔評価方法〕
普通ポルトランドセメント400gと豊浦産標準砂800gとをホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)で30秒間低速で空練りした後、上記セメント添加剤を含む水240gを添加し、3分間中速で混練することによりモルタルを得る。得られたモルタルを、直ちに水平なテーブルに置かれた内径53.5mm、高さ50mmの中空円筒に擦り切りまで充填し、この円筒を静かに垂直に持ち上げた後にテーブルに広がったモルタルの長径と短径とをノギスで測定し、その平均値をモルタルフロー値とする。なお、連行空気量の少ないセメント組成物の評価に関しては、空気連行剤(AE剤)を用いてモルタルの連行空気量を11±2容積%に調整する。また、空気量は、得られたモルタルの容積、重量及び用いた材料の比率から算出する。
【0065】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤では更に、(a)一定の収縮低減効果を得るに必要な添加量が、原料のポリエーテルを収縮低減剤として用いた場合の0.6倍以下となること、(b)プレーンモルタル又はプレーンコンクリートの単位水量に対して、単位水量を18%減水するに必要な添加量が0.5重量%(対セメント)以上であることの両方の要件を満たすことが好ましい。
【0066】
上記(a)において、収縮低減性能を評価する試験方法としては、例えば、JIS A 1129に準拠して硬化させてから28日後の収縮低減性能を評価することが好ましく、試験の回数は3回以上とし、その平均値で比較することが好ましい。また、標準試料として何らかの収縮低減剤を同時に評価することが好ましい。このような標準試料としては、例えば、市販のジエチレングリコールジプロピレングリコールモノブチルエーテルとして日曹丸善ケミカル社製「GE−42−2P」(商品名)、ネオペンチルグリコールとして三菱ガス化学社製のもの、太平洋セメント社製「テトラガードAS21」(商品名)、藤沢薬品社製「ヒビガード」(商品名)、竹本油脂社製「ヒビダン」(商品名)等を用いることができる。なお、モルタルやコンクリートの収縮の程度は、用いるセメントの種類、風化度、骨材の種類、配合、混練条件、養生条件等により変化するため、評価を行う際には同一の試験条件で評価をする必要があり、同一日に同一の材料を用いて同一の養生条件で硬化させる必要がある。
【0067】
上記(a)では、水硬性材料用収縮低減剤をセメントに対して固形分の重量割合で1.2重量%以下用いたときに、上述した重合体を得るために用いるポリエーテル化合物を収縮低減剤としてセメントに対して固形分の重量割合で2重量%用いたときに得られるのと同等の収縮低減性能を得ることができるように水硬性材料用収縮低減剤を適宜調製することを意味する。従来公知の収縮低減剤として市販されているポリエーテル化合物は、その効果を発揮するためには単位セメント量に対して2重量%程度の添加が必要とされているが、上記(a)を満たす本発明の水硬性材料用収縮低減剤を用いると、従来公知の収縮低減剤よりも少ない添加量で充分な収縮低減性能を発揮することになり、日常的に大量に使用されているセメント組成物等の水硬性材料の製造コストを抑制することができることになる。より好ましくは、水硬性材料用収縮低減剤のセメントに対する固形分の重量割合を1.0重量%以下とすることであり、更に好ましくは、0.8重量%以下とすることである。
【0068】
上記(a)ではまた、水硬性材料用収縮低減剤をセメントに対して固形分の重量割合で1.2重量%以下用いたときに、ジエチレングリコールジプロピレングリコールモノブチルエーテルをセメントに対して2重量%用いたときに得られるのと同等の収縮低減効果を得ることができるように水硬性材料用収縮低減剤を適宜調製することが好ましい。より好ましくは、水硬性材料用収縮低減剤のセメントに対する固形分の重量割合を1.0重量%以下とすることであり、更に好ましくは、0.8重量%以下とすることである。
【0069】
上記(b)において、プレーンコンクリートを調製する方法としては、例えば、JIS A 6204に準拠して行うことが好ましく、また、プレーンモルタルでは、プレーンコンクリートでの添加量を再現できる配合とすることが好ましい。再現性の確認には、後述する高性能AE減水剤を標準試料として使用することが好ましい。すなわちプレーンコンクリートの単位水量を18重量%減水するのに必要な高性能AE減水剤の使用量を、18重量%減水したプレーンモルタルに適用した際に、プレーンコンクリートとプレーンモルタルとが減水前と同等の流動性を示せば、その試験は簡易評価法として用いることができる。この際、連行空気量が変わると見かけの流動性が変わるので、適宜、消泡剤やAE剤で空気量を合わせて評価することが好ましい。
上記(b)では、より好ましくは、水硬性材料用収縮低減剤のセメントに対する固形分の重量割合を1.0重量%以上とすることであり、更に好ましくは、2.0重量%以上とすることである。
【0070】
上述した本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、後述するような成分を含むことにより、水硬性材料用添加剤組成物としてもよく、これにより、水硬性材料に対して本発明の効果を発揮させつつ、各種の効果を作用させることができることになる。水硬性材料用添加剤組成物中における水硬性材料用収縮低減剤の濃度としては特に限定されるものではない。
【0071】
本発明は更に、水硬性材料用収縮低減剤とセメント分散剤とを含んでなる水硬性材料用添加剤組成物であって、上記水硬性材料用収縮低減剤は、炭素数1〜30の活性水素を1個もつ化合物の残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1つ結合した構造を有する重合体(A)、炭素数1〜30の活性水素を2個もつ化合物の残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1以上結合した構造を有する重合体(B)、炭素数1〜30の活性水素を3個以上もつ化合物の残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1以上結合した構造を有する重合体(C)、及び、アミン残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1つ結合した構造を有する重合体(D)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含む水硬性材料用添加剤組成物でもある。このような水硬性材料用添加剤組成物により、水硬性材料に優れた乾燥収縮低減性能を付与することができると共に、水硬性材料への水の使用量を低減しても分散性が良好に保たれることから水硬性材料を減水することができるため、硬化物の強度や耐久性を向上させることが可能となる。
【0072】
本発明の水硬性材料用添加剤組成物は、上記水硬性材料用収縮低減剤及びセメント分散剤以外の成分を含んでいても含んでいなくてもよいが、該水硬性材料用収縮低減剤及びセメント分散剤を主成分として含むことが好ましい。
上記水硬性材料用収縮低減剤において、上記重合体(A)及び重合体(B)は、それぞれ上記重合体(a)及び重合体(b)と活性水素をもつ化合物の残基の炭素数の範囲が異なる以外は同様であり、上記重合体(C)及び重合体(D)は、それぞれ上記重合体(c)及び重合体(d)と同様である。
【0073】
上記セメント分散剤としては、セメント粒子を分散させる作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、公知のセメント分散剤や減水剤の他、リグニンスルホン酸や、ポリカルボン酸系、ナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系等の減水剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このようなセメント分散剤を含むことにより、セメント添加剤の水硬性材料中の粒子を分散させる作用が向上することから水硬性材料が流動性に優れたものとなり、作業性が著しく向上されたり、水硬性材料中の水の含有量を低減して硬化物の強度や耐久性等が向上されたりすることになる。
【0074】
上記減水剤において、リグニンスルホン酸等は、一般的にAE減水剤とも呼ばれ、ポリカルボン酸系、ナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系等の減水剤は、一般的に高性能AE減水剤とも呼ばれる。このような減水剤の中でも、高性能AE減水剤を用いることが好ましく、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤を好適に用いることができる。
【0075】
上記水硬性材料用収縮低減剤と上記セメント分散剤との配合割合としては特に限定されず、例えば、セメント分散剤として高性能AE減水剤を用いる場合には、(水硬性材料用収縮低減剤/高性能AE減水剤)が固形分の重量比で、1/100〜100/1であることが好ましい。水硬性材料用収縮低減剤の添加量が上記重量比より多くなると、高性能AE減水剤の減水性を阻害するおそれがある。より好ましくは、1/100〜50/1であり、更に好ましくは、1/100〜25/1である。
【0076】
本発明の水硬性材料用添加剤組成物が水硬性材料に添加される形態としては特に限定されず、例えば、水硬性材料用収縮低減剤とセメント分散剤とが水硬性材料に添加される前に混合されて添加される形態であってもよく、水硬性材料用収縮低減剤とセメント分散剤とが別個に調製され、それぞれが水硬性材料に添加される形態であってもよい。このようなことは、本明細書中の他の組み合わせでも同様である。
【0077】
上述した水硬性材料用添加剤組成物は、本発明の作用効果を奏する限り、必要に応じて、更に、上述した溶剤やその他の成分を含んでいてもよい。例えば、以下の(1)〜(20)に示すような公知の添加剤(材)と組み合わせて使用することができる。
【0078】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレンあるいはポリオキシプロピレンのポリマー又はそれらのコポリマー;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでも良く、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、バキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
【0079】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸並びにその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖等の単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又は、デキストリン等のオリゴ糖、又は、デキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0080】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0081】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0082】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0083】
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0084】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシル基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0085】
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
(20)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
【0086】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、公知の乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
本発明の水硬性材料用添加剤組成物は、例えば、従来公知のコンクリート工法等に広く適用することができる。このような工法としては特に限定されず、例えば、高強度コンクリート工法、超高強度コンクリート工法、高流動コンクリート工法、フローイングコンクリート工法等が挙げられる。また、使用形態も特に限定されず、例えば、そのまま固形状又は粉末状等の形態で用いたり、水と混合して水溶液又は水分散液等の形態で用いてもよい。
【0088】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤や水硬性材料用添加剤組成物が使用される水硬性材料としては、水硬性又は潜在水硬性を有するものであれば特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、シリカセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、アルミナセメント、ビーライト高含有セメント、各種混合セメント;珪酸三カルシウム、珪酸二カルシウム、アルミン酸三カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウム等のセメントの構成成分;潜在水硬性を有するフライアッシュ等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、普通ポルトランドセメントが通常よく使用され、好適に適用することができる。
【0089】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤や水硬性材料用添加剤組成物の使用量としては、例えば、水硬性材料に対して固形分換算で0.0001〜10重量%とすることが好ましい。0.0001重量%未満であると、収縮低減性能が小さいおそれがあり、10重量%を超えると、水硬性材料の硬化遅延が生じやすくなるおそれがある。より好ましくは、0.001〜7重量%であり、更に好ましくは、0.005〜5重量%であり、最も好ましくは、0.01〜3重量%である。
【0090】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤や水硬性材料用添加剤組成物は、水硬性材料の中でも、セメント組成物等に配合されて好適に用いることができる。このようなセメント組成物としては、従来公知のものを使用でき、特に限定されず、例えば、セメント及び水を含むセメント水ペースト(セメント水スラリー);セメント、水及び砂を含むモルタル;セメント、水、砂及び石を含むコンクリート等が挙げられる。
【0091】
上記セメント組成物に配合されるセメントとしては、従来公知のものを使用でき、特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、シリカセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、アルミナセメント、ビーライト高含有セメント、各種混合セメント等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポルトランドセメントが通常よく使用され、上記セメント添加剤を好適に適用することができる。
【0092】
上記セメント組成物におけるセメント添加剤の配合割合としては特に限定されず、例えば、セメント添加剤の必須成分である水硬性材料用収縮低減剤のセメントに対する重量割合が固形分換算で0.0001〜10重量%であることが好ましい。0.0001重量%未満であると、収縮低減性能が充分に発揮されないおそれがあり、10重量%を超えると、セメント組成物の硬化遅延が生じやすくなるおそれがある。より好ましくは、0.001〜7重量%であり、更に好ましくは、0.005〜5重量%であり、最も好ましくは、0.01〜3重量%である。
【0093】
上記セメント組成物における水の配合割合としては特に限定されず、例えば、セメントに対して、10〜80重量%であることが好ましい。10重量%未満であると、各種成分の混合が不充分となって成形できなかったり、強度が低下したりするおそれがあり、80重量%を超えると、セメント組成物の硬化物の強度が低下するおそれがある。より好ましくは、15〜75重量%であり、更に好ましくは、20〜70重量%であり、最も好ましくは、25〜65重量%である。
【0094】
上記セメント組成物をモルタルやコンクリートとして用いる場合、セメント組成物に配合される砂や石としては、従来公知のセメント組成物に用いられるものを使用でき、特に限定されず、例えば、自然作用によって岩石からできた川砂、海砂、山砂等の天然の細骨材;これらの岩石やスラブを粉砕した人工の細骨材;軽量細骨材等が挙げられる。砂の配合量については、従来公知のセメント組成物と同様とすればよく、特に限定されるものではない。また、石の配合量についても、従来公知のセメント組成物と同様とすればよく、特に限定されるものではないが、例えば、細骨材率として、20〜60重量%であることが好ましい。20重量%未満であると、がさがさしたコンクリートとなり、スランプの大きいコンクリートでは、粗骨材とモルタル分とが分離しやすくなるおそれがある。60重量%を超えると、単位セメント量及び単位水量を多く必要とし、また、流動性の悪いコンクリートとなるおそれがある。より好ましくは、30〜50重量%である。
【0095】
上記セメント組成物には必要に応じてその他の材料が配合されていてもよい。その他の材料としては、従来公知のセメント組成物と同様のものを用いることができ、特に限定されず、例えば、シリカヒューム、高炉スラブ、シリカ粉末や、鋼繊維、ガラス繊維等の繊維質材料等が挙げられる。これらの材料の配合量としては、従来公知のセメント組成物と同様とすればよく、特に限定されるものではない。
【0096】
上記セメント組成物を作製する方法としては特に限定されず、例えば、セメントと水と必要に応じてその他の配合材料とを混合するときに、セメント添加剤、その水分散液又は水溶液を添加して一緒に混合する方法等の従来のセメント組成物と同様の方法;セメントと水と必要に応じてその他の配合材料とを予め混合しておき、得られた混合物にセメント添加剤、その水分散液又は水溶液を添加して混合する方法;セメントと必要に応じてその他の配合材料とを予め混合しておき、得られた混合物に、セメント添加剤、その水分散液又は水溶液と水とを添加して混合する方法;セメントと、セメント添加剤、その水分散液又は水溶液と、必要に応じてその他の配合材料とを予め混合しておき、得られた混合物に水を添加して混合する方法等が挙げられる。
【0097】
上記セメント組成物は、その硬化物が強度や耐久性等に優れたものであることから、構造物の安全性を向上したり修復コストを抑制したりすることができ、土木・建築構造物等の様々な分野において広く好適に用いることができるものであり、このようなセメント組成物も本発明の好ましい形態の1つである。
【0098】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例中、「部」、「%」とは、特に断りのない限り、それぞれ「重量部」、「重量%」を表すものとする。
【0099】
(水分量の測定方法)
水分は、カールフィッシャー水分計を用いて測定した。測定機種としてメトラー製のカールフィッシャータイトレーターDL18(商品名)を用い、カールフィッシャー試薬には林純薬工業社製のハイドラナール・コンポジット5K(商品名)を用いた。
【0100】
(水酸基価の測定)
水酸基価は、試料1gに含まれる水酸基の量を水酸化カリウムのmg数で表した数であり、以下の方法により測定した。
(1)無水フタル酸35gにピリジン200gを加えて溶解させ、フタル化試薬とする。
(2)試料約1gをテフロン製の容器に精秤しフタル化試薬10mlを加える。別途、フタル化試薬のみをテフロン製の容器に10ml加えて、ブランクとする。
(3)上記容器を120℃に加熱したホットプレート上に時々攪拌しながら約1時間置き、試料中の水酸基をフタル化させる。
(4)冷却後、0.5規定の水酸化カリウム水溶液で滴定し、試料とブランクとの酸価の差から、水酸基価を算出する。なお、滴定には平沼産業社製の自動滴定装置COMTITE−550(商品名)を使用した。
【0101】
(固形分の測定方法)
固形分は、試料中の不揮発分を測定することにより算出した。この不揮発分は、試料を約1g精秤し、130℃で窒素雰囲気とした乾燥器に1時間投入して、冷却後の重量を精秤することによって算出した。
【0102】
(分子量、分散度の測定方法)
分子量、分散度は次の条件に従い、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。
プレカラム:KF800D(商品名、Shodex社製)1本
カラム:KF800L(商品名、Shodex社製)3本直列
カラム温度:40℃(カラムオーブンにて調温)
移動相:クロロホルム(高速液体クロマトグラフ用、和光純薬工業社製)
流量:1.0ml/min
測定試料:固形分換算で0.5%になるように移動相で希釈し、0.45ミクロンのフィルター クロマトディスク13N(商品名、ジーエルサイエンス社製)でろ過した。
注入量:100μl
検出器:RI Shodex SE−61示差屈折率検出器(商品名、Shodex社製)
検量線用標準試料:ポリエチレングリコール標準サンプル
Mp=960、1470、4250、12600(商品名、ジーエルサイエンス社製)
Mp=21000、45000、85000、160000(商品名、東ソー社製)
【0103】
(検量線作製要領)
上記サンプルのピークトップの時間を横軸に、分子量を縦軸にプロットし3次曲線を作製する。但し、分子量はピ−クトップ分子量(Mp)を用いた。
【0104】
分子量計算
日本分光社製のクロマトグラフィー用データ処理システムBORWIN(商品名)により測定サンプルを計算させ、分子量を決定する。
分子量の較正曲線近似式は、
logM=A+BRt+CRt +DRt
であり、ここに、
M=分子量、Rt=リテンションタイム(分)、
A=24.11、 B=−2.072、C=0.0759、D=−0.00103
となった。
【0105】
(総酸価の測定方法)
総酸価は、試料1gに含まれるカルボン酸の総量を水酸化カリウムのmg数で表した数であり、次の方法に従い測定した。
(1)試料約1gをビーカーに精秤し、水(又はアセトニトリル)50gと攪拌子を入れる。
(2)pHが2.0以下となるまで、0.1N塩酸水溶液(滴定用試薬)を加える。
(3)0.1N水酸化ナトリウム水溶液(滴定用試薬)を滴下して、第一変曲点と第二変曲点との差から酸量を測定する。なお、平沼産業社製の自動滴定装置COMTITE−550(商品名)を使用した。
【0106】
まず、添加剤を以下の方法により調製した。
製造例1
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、ソフタノール30(商品名、日本触媒社製、炭素数12〜14の2級アルコールのエチレンオキサイド(EO)平均3モル付加品、分子量332、分散度(Mw/Mn)=1.36)120.0部及びマレイン酸15.5部を仕込んで、窒素気流下125±5℃まで加温して溶融混合した。次に、温度を125±5℃に保ちながら、アクリル酸14.5部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート:パーブチルI(商品名、日本油脂社製)3.3部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後125±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体1を得た。
グラフト重合体1の重量平均分子量(Mw)は11700、分散度(Mw/Mn)は16.8であった。また、グラフト重合体1の総酸価は、71.9mg/gであった。
【0107】
グラフト重合体1を30.6部に、水275.2部、水酸化ナトリウム水溶液(30%溶液)7.6部を加えることによって、グラフト重合体1のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤1と称する。
得られた添加剤1は、pH8.3、固形分9.1%の淡黄色白濁溶液であり、室温で静置すると白色の不溶分が浮遊・分離した。この添加剤を使用する際には、よく振って均一にしてから使用した。
【0108】
製造例2
温度計、攪拌機、窒素導入管及び圧力計を備えたステンレス製の圧力容器にイソプロピルアルコール(和光純薬工業社製、水分量0.04%含有)601.0部及び水酸化ナトリウム0.4部を仕込み、攪拌下に圧力容器内を窒素置換し、圧力容器内を100±5℃に加熱した。次に、温度100〜140℃、圧力2.0×10-1〜7.8×10-1MPaとして安全圧下でエチレンオキサイド1321.5部を導入し、熟成後、揮発分を除去してイソプロピルアルコールのエチレンオキサイド付加物である中間体aを得た。
【0109】
中間体aの水酸基価から分子量を測定したところ245.8であった。これよりイソプロピルアルコールへのエチレンオキサイドの平均付加数は4.2であることが算出された。
【0110】
次に、温度計、攪拌機、窒素導入管及び圧力計を備えたステンレス製の圧力容器に中間体aを491.6部及び水酸化ナトリウム0.26部を仕込み、攪拌下に圧力容器内を窒素置換し、圧力容器内を120±10℃に加熱した。次に、温度120±10℃、圧力2.9×10-1〜7.8×10-1MPaとして安全圧下でプロピレンオキサイド402.8部を導入し、熟成後、揮発分を除去してイソプロピルアルコールのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド付加物である中間体bを得た。
【0111】
中間体bのプロピレンオキサイド付加数は、物質収支から計算して、3.3であることが算出された。これより中間体bは、イソプロピルアルコール(炭素数3)に対して平均4.2個のエチレンオキサイドと平均3.3個のプロピレンオキサイドがブロック状に付加したものであるとした。
【0112】
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、中間体bを120.0部及びマレイン酸15.6部を仕込んで、窒素気流下125±5℃まで加温して溶融混合した。次に、温度を125±5℃に保ちながら、アクリル酸14.4部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート:パーブチルI(商品名、日本油脂社製)3.0部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後125±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体2を得た。
【0113】
グラフト重合体2の重量平均分子量(Mw)は24300、分散度(Mw/Mn)は30.7であった。また、グラフト重合体2の総酸価は118.7mg/gであった。
【0114】
グラフト重合体2を30.7部に、水276.6部を加えると、pH2.4の半濁溶液となった。これに水酸化ナトリウム水溶液(30%溶液)9.4部を加えることによって、グラフト重合体2のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤2と称する。得られた添加剤2は、pH7.7、固形分9.1%の淡黄色透明溶液であり、室温で短くとも1ヶ月間は分離しなかった。
【0115】
製造例3
低級アルコールアルキレンオキシド付加物である市販の収縮低減剤:テトラガードAS21(商品名、太平洋セメント社製)の水分量は、水分計で14.6%と測定された。そこで、エバポレーターを用いて減圧・加温(50℃、1.3×10-2MPa以下)で脱水を行い、更に真空乾燥器(50℃、6.7×10-3MPa以下)で脱水を充分行うことによって、テトラガードAS21の脱水品(水分量0.4%)を得た。得られたテトラガードAS21の脱水品の水酸基価は181.7mg/gであった。この結果から、テトラガードAS21の平均分子量は309と計算された。また、テトラガードAS21の分散度(Mw/Mn)は1.13と測定された。
【0116】
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、テトラガードAS21(商品名、太平洋セメント社製)の脱水品80.0部及びマレイン酸10.4部を仕込んで、窒素気流下110℃まで加温して溶融混合した。次に、温度を110±10℃に保ちながら、アクリル酸9.2部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート:パーブチルI(商品名、日本油脂社製)2.0部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後120±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体3を得た。
【0117】
グラフト重合体3の重量平均分子量(Mw)は6300、分散度(Mw/Mn)は18.9であった。
グラフト重合体3を100部に、水228.9部及び水酸化ナトリウム水溶液(48%溶液)16.7部を加えることによって、グラフト重合体3のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤3と称する。得られた添加剤3は、pH6.8、固形分26.6%の淡黄色透明溶液であり、室温(約20℃)で少なくとも6ヶ月間分離しなかった。
【0118】
比較例1及び比較例9
収縮低減剤を添加しなかった。
比較例2〜3及び比較例10
製造例3で得られたテトラガードAS21(商品名、太平洋セメント社製)の脱水品を、比較用添加剤1とした。
【0119】
比較例4
ジエチレングリコールジプロピレングリコールモノブチルエーテル:GE−42−2P(商品名、日曹丸善ケミカル社製)を、比較用添加剤2とした。
【0120】
比較例5〜6
上記製造例1で使用したソフタノール30(商品名、日本触媒社製)を、比較用添加剤3とした。
比較例7〜8
上記製造例2で合成した中間体bを、比較用添加剤4とした。
【0121】
以上のようにして得られた添加剤を用いて、以下に示す方法によりモルタルを練り、供試体を作製して長さ変化を測定することにより、収縮低減性能(ひび割れ防止性能)を評価した。
【0122】
(モルタルの混練)
太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント400gと豊浦産標準砂800gとをホバート型モルタルミキサー:型番N−50(商品名、ホバート社製)で30秒間低速で空練りした後、表1、表2に示す所定量の添加剤を秤量して水で希釈したもの260gを添加し、3分間中速で混練することによりモルタルを得た。
得られたモルタルを、直ちに水平なテーブルに置かれた内径53.5mm、高さ50mmのステンレス製の中空円筒に摺り切りまで充填し、この円筒を静かに鉛直に持ち上げた後にテーブルに広がったモルタルの長径と短径をノギスで測定し、その平均値をモルタルフロー値とした。なお、連行空気量が多いとフロー値と収縮量が見かけ上大きくなるので、連行空気量を一定にする必要がある。そこで、適宜、消泡剤(オキシアルキレン系)を用いた。
なお、空気量は得られたモルタルの容積、重量及び用いた材料の比重から算出した。結果を表1に示す。
【0123】
(供試体の作製)
JIS A 1129に習って供試体(4×4×16cm)を作製した。型枠には予めシリコーングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混練して得られたモルタルを型枠に流し込んだ後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿器:PL−2G(商品名、タバイエスペック社製)に入れて初期養生を行った。4日後に脱型し、供試体の表面に付着したシリコーングリースをスポンジ製のたわしを用いて水で洗浄した。続いて、供試体を20℃の静水中で7日間養生した。
【0124】
(長さ変化の測定)
JIS A 1129に習ってダイヤルゲージ(西日本試験機社製)を使用した。静水中で7日間養生した供試体の表面の水を紙タオルで拭き取った後、直ちに測長し、この時点を基準とした。その後、供試体は温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿器に保存し、適時測長した。長さ変化の測定結果を表1に示す。
【0125】
【表1】
Figure 0004437369
【0126】
(試験結果)
表1は、得られたフレッシュモルタルの性状を示す。ここで、モルタルの流動性をある程度確保するために、一定量の高性能AE減水剤を使用した。高性能AE減水剤としてはアクアロックFC−900(商品名、日本触媒社製、ポリカルボン酸系)を使用した。その結果、すべての試験において110mm以上の流動性が確保できた。また空気量が多いと乾燥収縮が大きくなり、見かけ上の長さ変化が大きくなることが懸念される。そこで、消泡剤を適宜加えることによって空気量を調整した。
【0127】
表1は、基準日(水中養生終了日)からの収縮長さ(μm)を表す。この数値が小さい程、収縮量が小さいことを示し、収縮による構造体のひび割れが防止できると考えられる。
【0128】
以下に、表1の28日目の結果を用いて表1の内容を説明する。
比較例1は、収縮低減を目的とする添加剤を添加せずに作製した供試体の長さ変化量であり、16cmの供試体が159μm収縮したことを示す。比較例2は、市販の収縮低減剤:テトラガードAS21(商品名、太平洋セメント社製)を添加した結果を示し、1%の添加によって収縮が130μmに抑えられ、2%の添加によって122μmに抑えられることを示す。比較例1と比べると、1%の添加で収縮低減量は29μm、2%の添加で収縮低減量は37μmであり、添加量が多いほど収縮低減効果が大きいことを示す。
【0129】
比較例7と比較例8についても同様のことが言える。比較例1と比べると、1%の添加で収縮低減量は18μm、2%の添加で収縮低減量は38μmであり、添加量が多いほど収縮低減効果が大きいことがわかる。
【0130】
実施例1は、比較例5及び比較例6で使用したソフタノール30(商品名、日本触媒社製)を原料として合成した本発明の添加剤1を用いた結果である。比較例1(無添加)に比べて収縮が低減されており、更に原料であるソフタノール30を用いた比較例5及び比較例6に比べて半分以下の添加量で、原料を収縮低減剤として用いた場合を凌ぐ収縮低減効果があることを示す。
【0131】
実施例2及び実施例3は、比較例7及び比較例8で用いたポリエーテル(中間体b)を原料として合成した添加剤2を用いた結果である。比較例1(無添加)に比べて収縮が低減されている。更に、原料である中間体bを2%(対セメント)用いた比較例8で収縮が38μm低減されているのに対して、実施例3では1%(対セメント)用いて収縮が42μm低減されており、本発明の添加剤は、半分の添加量で原料と同等の収縮低減効果があることが分かる。
【0132】
実施例4
製造例3で得られた添加剤3を用いて、上述した方法によりモルタルを練り、供与体を作製して長さ変化を測定することにより収縮低減性能(ひび割れ防止性能)を評価した。結果を表2に示した。
【0133】
比較例9
収縮低減剤を添加しなかった。
比較例10
製造例3で得られたテトラガードAS21(商品名、太平洋セメント社製)の脱水品を、比較用添加剤1とした。
【0134】
【表2】
Figure 0004437369
【0135】
実施例4は、比較例10で用いたテトラガードAS21(商品名、太平洋セメント社製)の脱水品を原料として合成した本発明の添加剤3を用いた結果である。比較例9(無添加)に比べて収縮が低減されており、更に原料であるテトラガードAS21(商品名、太平洋セメント社製)の脱水品を用いた比較例10に比べて半分以下の添加量で、原料を収縮低減剤として用いた場合を凌ぐ収縮低減効果があることを示す。
【0136】
製造例4
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、ソフタノール30(商品名、日本触媒社製)を105.0部及びマレイン酸23.3部を仕込んで、窒素気流下125±5℃まで加温して溶融混合した。次に、温度を125±5℃に保ちながら、アクリル酸21.7部及びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート・パーブチルI(商品名、日本油脂社製)4.9部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後125±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体4を得た。
【0137】
グラフト重合体4を6.6部に、水71.4部、水酸化ナトリウム水溶液(30%水溶液)2.9部を加えることにより、グラフト重合体4のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤4と称する。
得られた添加剤4は、pH7.0、固形分8.5%の淡黄色白濁溶液であり、室温で静置すると白色の不溶分が浮遊・分離した。この添加剤を使用する際には、よく振って均一にしてから使用した。
【0138】
製造例5
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、ソフタノール70H(商品名、日本触媒社製、炭素数12〜14の2級アルコールのEO平均7モル付加品)、120.0部及びマレイン酸15.5部を仕込んで、窒素気流下125±5度まで加温して溶融混合した。次に、温度を125±5℃に保ちながら、アクリル酸14.5部及びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート・パーブチルI(商品名、日本油脂社製)3.3部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後125±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体5を得た。
【0139】
グラフト重合体5を12.7部に、水108.1部、水酸化ナトリウム水溶液(30%水溶液)3.9部を加えることにより、グラフト重合体5のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤5と称する。
得られた添加剤5は、pH7.0、固形分10.4%の淡黄色透明溶液であり、室温で短くとも1ヶ月間は分離しなかった。
【0140】
実施例5及び実施例6
以上のようにして得られた添加剤を用いて、上述した方法によりモルタルを練り、供試体を作製して長さ変化を測定することにより収縮低減性能(ひび割れ防止性能)を評価した。結果を表3に示した。
【0141】
比較例11
収縮低減剤を添加しなかった。
比較例12
ソフタノール30(商品名、日本触媒社製)を、比較用添加剤3とした。
比較例13
ソフタノール70H(商品名、日本触媒社製)を、比較用添加剤5とした。
比較例14
製造例3で得られたテトラガードAS21(商品名、太平洋セメント社製)の脱水品を、比較用添加剤1とした。
比較例11〜14の結果を表3に示した。
【0142】
【表3】
Figure 0004437369
【0143】
実施例5は、比較例12で用いたソフタノール30(商品名、日本触媒社製)を原料として合成した本発明の添加剤4を用いた結果であり、実施例6は、比較例13で用いたソフタノール70H(商品名、日本触媒社製)を原料として合成した本発明の添加剤5を用いた結果である。比較例11(無添加)や市販の低減収縮剤(比較用添加剤1)を用いた比較例14に比べて収縮が低減されており、更に原料であるソフタノール30やソフタノール70Hを用いた比較例12や比較例13に比べて半分以下の添加量で、原料を収縮低減剤として用いた場合を凌ぐ収縮低減効果があることを示す。
【0144】
製造例6
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、ソフタノールEP90150(商品名、日本触媒社製、炭素数12〜14の2級アルコールのEO平均9モルプロピレンオキサイド(PO)平均15モル付加品)320.0部及びマレイン酸41.3部を仕込んで、窒素気流下125±5℃まで加温して溶融混合した。次に、温度を125±5℃に保ちながら、アクリル酸38.7部及びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート・パーブチルI(商品名、日本油脂社製)8.8部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後125±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体6を得た。
【0145】
グラフト重合体6を16.0部に、水90.3部、水酸化ナトリウム水溶液(30%水溶液)4.8部を加えることにより、グラフト重合体6のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤6と称する。
得られた添加剤6は、pH7.4、固形分15.3%の淡黄色白濁溶液であり、室温で静置すると白色の不溶分が浮遊・分離した。この添加剤を使用する際には、よく振って均一にしてから使用した。
【0146】
製造例7
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、ソフタノールEP90150(商品名、日本触媒社製)、141.0部及びマレイン酸4.7部を仕込んで、窒素気流下125±5℃まで加温して溶融混合した。次に、温度を125±5℃に保ちながら、アクリル酸4.3部及びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート・パーブチルI(商品名、日本油脂社製)1.0部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後125±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体7を得た。
【0147】
グラフト重合体7を44.9部に、水82.4部、水酸化ナトリウム水溶液(30%水溶液)1.9部を加えることにより、グラフト重合体7のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤7と称する。
得られた添加剤7は、pH7.1、固形分32.9%の淡黄色白濁溶液であり、室温で静置すると白色の不溶分が浮遊・分離した。この添加剤を使用する際には、よく振って均一にしてから使用した。
【0148】
製造例8
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、ソフタノールEP7085(商品名、日本触媒社製、炭素数12〜14の2級アルコールのEO平均7モルPO平均8.5モル付加品)、120.0部及びマレイン酸15.5部を仕込んで、窒素気流下125±5℃まで加温して溶融混合した。次に、温度を125±5℃に保ちながら、アクリル酸14.5部及びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート・パーブチルI(商品名、日本油脂社製)3.3部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後125±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体8を得た。
【0149】
グラフト重合体8を25.1部に、水51.2部、水酸化ナトリウム水溶液(30%水溶液)6.4部を加えることにより、グラフト重合体8のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤8と称する。
得られた添加剤8は、pH7.3、固形分31.0%の淡黄色白濁溶液であり、室温で静置すると白色の不溶分が浮遊・分離した。この添加剤を使用する際には、よく振って均一にしてから使用した。
【0150】
実施例7、実施例8及び実施例9
以上のようにして得られた添加剤を用いて、上述した方法によりモルタルを練り、供試体を作製して長さ変化を測定することにより収縮低減性能(ひび割れ防止性能)を評価した。結果を表4に示した。
【0151】
比較例15
収縮低減剤を添加しなかった。
比較例16
ソフタノールEP90150(商品名、日本触媒社製)を、比較用添加剤6とした。
比較例17
ソフタノールEP7085(商品名、日本触媒社製)を、比較用添加剤7とした。
比較例18
製造例3で得られたテトラガードAS21(商品名、太平洋セメント社製)の脱水品を、比較用添加剤1とした。
比較例15〜18の結果を表4に示した。
【0152】
【表4】
Figure 0004437369
【0153】
実施例7及び実施例8は、比較例16で用いたソフタノールEP90150(商品名、日本触媒社製)を原料として合成した本発明の添加剤6を用いた結果であり、実施例9は、比較例17で用いたソフタノールEP7085(商品名、日本触媒社製)を原料として合成した本発明の添加剤7を用いた結果である。比較例15(無添加)や市販の低減収縮剤(比較用添加剤1)を用いた比較例18に比べて収縮が低減されており、更に原料であるソフタノールEP90150やソフタノールEP7085を用いた比較例16や比較例17に比べて半分以下の添加量で、原料を収縮低減剤として用いた場合を凌ぐ収縮低減効果があることを示す。
【0154】
製造例9
温度計、攪拌機、窒素導入管及び圧力計を備えたステンレス製の圧力容器に1,6−ヘキサンジオール(和光純薬工業社製)177.3部及び水酸化ナトリウム0.3部を仕込み、攪拌下に圧力容器内を窒素置換し、圧力容器内を100±5℃に加熱した。次に、温度115±7℃、圧力2.0×10-1〜7.0×10-1MPaとして安全圧下でエチレンオキサイド493.5部を導入し、熟成後、揮発分を除去して1,6−ヘキサンジオールのエチレンオキサイド付加物である中間体cを得た。
中間体cの水酸基価から分子量を測定したところ444.1であった。これより1,6−ヘキサンジオールへのエチレンオキサイド平均付加数は7.4であることが算出された。
【0155】
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、中間体cを、120.0部及びマレイン酸15.5部を仕込んで、窒素気流下125±5℃まで加温して溶融混合した。次に、温度を125±5℃に保ちながら、アクリル酸14.5部及びジ−t−ブチルパーオキサイド・パーブチルD(商品名、日本油脂社製)2.5部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後125±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体9を得た。
【0156】
グラフト重合体9を34.7部に、水68.2部、水酸化ナトリウム水溶液(30%水溶液)8.7部を加えることにより、グラフト重合体9のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤9と称する。
得られた添加剤9は、pH7.1、固形分32.1%の淡黄色透明溶液であり、室温で短くとも1ヶ月間は分離しなかった。
【0157】
製造例10
温度計、攪拌機、窒素導入管及び圧力計を備えたステンレス製の圧力容器にグリセリン(和光純薬工業社製)92.1部及び水酸化ナトリウム0.1部を仕込み、攪拌下に圧力容器内を窒素置換し、圧力容器内を100±5℃に加熱した。次に、初期の50分は温度112.5±7.5℃以後145±10℃、圧力3.4×10-1〜7.0×10-1MPaとして安全圧下でエチレンオキサイド264.6部を導入し、熟成後、揮発分を除去してグリセリンのエチレンオキサイド付加物である中間体dを得た。
中間体dの水酸基価から分子量を測定したところ181.4であった。これよりグリセリンへのエチレンオキサイド平均付加数は2.0であることが算出された。
【0158】
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、中間体dを、120.0部及びマレイン酸15.5部を仕込んで、窒素気流下125±5℃まで加温して溶融混合した。次に、温度を125±5℃に保ちながら、アクリル酸14.5部及びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート・パーブチルI(商品名、日本油脂社製)3.3部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後125±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体10を得た。
【0159】
グラフト重合体10を30.4部に、水69.2部、水酸化ナトリウム水溶液(30%水溶液)6.6部を加えることにより、グラフト重合体10のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤10と称する。
得られた添加剤10は、pH6.9、固形分29.2%の黄褐色透明溶液であり、室温で短くとも1ヵ月間は分離しなかった。
【0160】
製造例11
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、ジェファーミンM−2005(商品名、サンテクノケミカル社製、アミン末端ポリエーテル、平均分子量2000、EO/PO=5/29(モル比))を、129.0部及びマレイン酸10.9部を仕込んで、窒素気流下125±5℃まで加温して溶融混合した。次に、温度を125±5℃に保ちながら、アクリル酸10.1部及びジ−t−ブチルパーオキサイド・パーブチルD(商品名、日本油脂社製)1.8部とを別々に1時間にわたって連続的に滴下し、その後125±5℃に保ちながら1時間攪拌を続け、グラフト重合体11を得た。
【0161】
グラフト重合体11を51.6部に、水93.5部、水酸化ナトリウム水溶液(30%水溶液)10.1部を加えることにより、グラフト重合体11のナトリウム塩水溶液を得た。これを添加剤11と称する。
得られた添加剤9は、pH7.2、固形分34.1%の黄褐色白濁溶液であり、室温で静置すると白色の不溶分が浮遊・分離した。この添加剤を使用する際には、よく振って均一にしてから使用した。
【0162】
実施例10〜12
以上のようにして得られた添加剤を用いて、上述した方法によりモルタルを練り、供試体を作製して長さ変化を測定することにより収縮低減性能(ひび割れ防止性能)を評価した。結果を表5に示した。
【0163】
比較例19
収縮低減剤を添加しなかった。
比較例20
製造例9で得られた中間体cを、比較用添加剤8とした。
比較例21
製造例10で得られた中間体dを、比較用添加剤9とした。
比較例22
ジェファーミンM−2005(商品名、サンテクノケミカル社製)を、比較用添加剤10とした。
比較例23
製造例3で得られたテトラガードAS21(商品名、太平洋セメント社製)の脱水品を、比較用添加剤1とした。
比較例19〜23の結果を表5に示した。
【0164】
【表5】
Figure 0004437369
【0165】
実施例10は、比較例20で用いた中間体cを原料として合成した本発明の添加剤9を用いた結果であり、実施例11は、比較例21で用いた中間体dを原料として合成した本発明の添加剤10を用いた結果であり、実施例12は、比較例22で用いたジェファーミンM−2005(商品名、サンテクノケミカル社製)を原料として合成した本発明の添加剤11を用いた結果である。比較例19(無添加)や市販の低減収縮剤(比較用添加剤1)を用いた比較例23に比べて収縮が低減されており、更に原料である中間体c、中間体d及びジェファーミンM−2005(商品名、サンテクノケミカル社製)を用いた比較例20、比較例21及び比較例22に比べて半分以下の添加量で、原料を収縮低減剤として用いた場合を凌ぐ収縮低減効果があることを示す。
【0166】
(減水性の簡易評価)
太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント400gと豊浦産標準砂800gとをホバート型モルタルミキサー:型番N−50(商品名、ホバート社製)で30秒間低速で空練りした後、表2に示す所定量の添加剤を秤量して水で希釈したもの240gを添加し、3分間中速で混練することによりモルタルを得た。
【0167】
得られたモルタルを、直ちに水平なテーブルに置かれた内径53.5mm、高さ50mmのステンレス製の中空円筒に摺り切りまで充填し、この円筒を静かに鉛直に持ち上げた後にテーブルに広がったモルタルの長径と短径をノギスで測定し、その平均値をモルタルフロー値とした。なお、連行空気量が多いとフロー値が見かけ上大きくなるので、連行空気量を一定にする必要がある。そこで、適宜、空気連行剤(例えば、山宗化学社製のヴィンソル(商品名))や消泡剤を用いた。
なお、空気量は得られたモルタルの容積、重量及び用いた材料の比重から算出した。結果を表6に示す。
【0168】
【表6】
Figure 0004437369
【0169】
表7は、コンクリートの配合を示す。混和剤を用いないプレーンコンクリート(配合1)から、単位水量を18%減水した配合(配合2)にした際に、同等のスランプ値を達成するに要する、高性能AE減水剤の使用量は0.12%であった。なお、細骨材には大井川水系陸砂(比重2.60、粗粒率=2.70)、粗骨材には青梅産砕石(比重2.65、最大寸法20mm)、セメントには太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント(比重3.16)を使用した。
【0170】
【表7】
Figure 0004437369
【0171】
比較例24は、高性能AE減水剤としてアクアロックFC−900を0.12%(対セメント)使用した結果である。アクアロックFC−900は、コンクリートで単位水量を18%減水するためには0.12%(対セメント)必要であった。この添加量を上述のモルタルに適用した際には、フロー値が110mm、空気量11±2容積%となって、均質なモルタルとなった。
【0172】
実施例13は、添加剤1の減水性を簡易的にモルタルで評価した結果である。添加剤1は、0.5%(対セメント)使用したが74mmしか流れず、これより18%減水するに必要な添加量が0.5%以上であるか、そもそも18%減水できないかの何れかであることが分かった。
【0173】
実施例14は、添加剤3の減水性を簡易的にモルタルで評価した結果である。添加剤3は、0.5%(対セメント)使用したが68mmしか流れず、これより18%減水するに必要な添加量が0.5%以上であるか、そもそも18%減水できないかの何れかであることが分かった。
これらのことから、本発明の添加剤は優れた収縮低減効果をもたらすが、減水性はないか、あるいは、あったとしても小さいことが確認された。
【0174】
【発明の効果】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、上述のような構成からなるので、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等の水硬性材料に適用して、水硬性材料への添加量を抑制して水硬性材料の製造コストを抑制しつつ、硬化物の乾燥収縮の進行を充分に抑制することにより優れたひび割れ防止効果を発揮することにより硬化物の強度や耐久性を向上することができ、土木・建築構造物等の安全性を向上したり修復コストを抑制したりすることができる、汎用性の高いものである。

Claims (8)

  1. 炭素数2〜30の活性水素を1個もつ化合物の残基にオキシアルキレン鎖が1つ結合した構造を有し、デービスの式に準じて算出したHLBが2〜12であるポリエーテル化合物に、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とするエチレン性不飽和単量体成分が付加重合して形成される重合体であって、炭素数2〜30の活性水素を1個もつ化合物の残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1つ結合した構造を有する重合体(a)、及び、
    炭素数4〜30の活性水素を2個もつ化合物の残基にオキシアルキレン鎖が1以上結合した構造を有し、デービスの式に準じて算出したHLBが2〜12のポリエーテル化合物に、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とするエチレン性不飽和単量体成分が付加重合して形成される重合体であって、炭素数4〜30の活性水素を2個もつ化合物の残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1以上結合した構造を有する重合体(b)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含む
    ことを特徴とする水硬性材料用収縮低減剤。
  2. 前記カルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖は、下記一般式(1);
    Figure 0004437369
    (式中、R及びR は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は、カルボキシル基を有する側鎖を表す。Z 及びZ は、同一若しくは異なって、水素原子、又は、カルボキシル基を有する側鎖を表す。但し、カルボキシル基を有する側鎖は、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とするエチレン性不飽和単量体成分が重合して形成されてなる構造を有するものである。)で表される繰り返し単位を有する構造であり、該繰り返し単位は、カルボキシル基を有する側鎖をもつ繰り返し単位を必須とする
    ことを特徴とする請求項1記載の水硬性材料用収縮低減剤。
  3. 前記エチレン性不飽和単量体成分は、α,β−不飽和ジカルボン酸系単量体と(メタ)アクリル酸とを必須成分として含む
    ことを特徴とする請求項2記載の水硬性材料用収縮低減剤。
  4. 請求項1、2又は3記載の水硬性材料用収縮低減剤の製造方法であって、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とするエチレン性不飽和単量体成分をポリエーテル化合物にグラフト重合して重合体を製造する工程を含む
    ことを特徴とする水硬性材料用収縮低減剤の製造方法。
  5. 前記ポリエーテル化合物は、デービスの式に準じて算出したHLBが2〜12である炭素数2〜30の活性水素を1個もつ化合物のアルキレンオキサイド付加物、及び、デービスの式に準じて算出したHLBが2〜12である炭素数4〜30の活性水素を2個もつ化合物のアルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも1種を含む
    ことを特徴とする請求項4記載の水硬性材料用収縮低減剤の製造方法。
  6. 水硬性材料用収縮低減剤とセメント分散剤とを含んでなる水硬性材料用添加剤組成物であって、該水硬性材料用収縮低減剤は、
    炭素数1〜30の活性水素を1個もつ化合物の残基にオキシアルキレン鎖が1つ結合した構造を有し、デービスの式に準じて算出したHLBが2〜12のポリエーテル化合物に、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とするエチレン性不飽和単量体成分を付加重合して形成される重合体であって、炭素数1〜30の活性水素を1個もつ化合物の残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1つ結合した構造を有する重合体(A)、及び、
    炭素数1〜30の活性水素を2個もつ化合物の残基にオキシアルキレン鎖が1以上結合した構造を有し、デービスの式に準じて算出したHLBが2〜12のポリエーテル化合物に、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とするエチレン性不飽和単量体成分を付加重合して形成される重合体であって、炭素数1〜30の活性水素を2個もつ化合物の残基にカルボキシル基を有する側鎖をもつオキシアルキレン鎖が1以上結合した構造を有する重合体(B)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含む
    ことを特徴とする水硬性材料用添加剤組成物。
  7. 前記セメント分散剤は、高性能AE減水剤であることを特徴とする請求項6記載の水硬性材料用添加剤組成物。
  8. 前記水硬性材料用添加剤組成物は、水硬性材料用収縮低減剤と高性能AE減水剤との配合割合(水硬性材料用収縮低減剤/高性能AE減水剤)が固形分の重量比で、1/100〜100/1である
    ことを特徴とする請求項7記載の水硬性材料用添加剤組成物。
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