JP4436006B2 - 車両用サンバイザ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両において、乗員を光線から保護するために備えられる車両用サンバイザ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用サンバイザにおいては、遮光部を構成するサンバイザ本体は、該サンバイザ本体に対して回転自在にかつ抜け止め状態で組み付けられた支持アームを介して車室天井に取り付けられる。なお、支持アームは、鉄製パイプをインサート成形した樹脂成形品、すなわち断面円形の二重パイプ構造が一般的である。
図9は、支持アームのサンバイザ本体に対する組付け構造例を示したものである。図示のように、サンバイザ本体101の右右のいずれか一方の隅部に鉄板製の軸受ケース102が内蔵されており、その軸受ケース102に支持アーム103が回転自在に取り付けられている。支持アーム103は、図示のように略L字形に形成されており、その水平部103aをサンバイザ本体101の隅部の図示矢印方向から軸受ケース102内に差し込むことによって組み付ける。
支持アーム103の水平部103aにおける先端外周には、径方向に突出する抜け止め用のリブ104が形成され、そのリブ104が軸受部102に形成した切欠部105の軸方向端面に当接することで支持アーム103が抜け止めされている。
【0003】
上記の抜け止め構造においては、軸受部102の周方向における一部にリブ104が通過し得るスリットを軸方向に沿って備えている。すなわち、軸受ケース102はリブ104付き支持アーム103が貫通可能な断面略鍵穴形に形成されており、支持アーム103を所定位置まで差し込んでから回動すれば、リブ104が軸受ケース102の切欠部105から突出して係止し、抜け止めされる構成となっている。
上記のような構成の抜け止め構造によると、サンバイザ本体101の表面を表皮によって被覆後、そのサンバイザ本体101に支持アーム103を組み付けることができるという生産上の有利さを持つものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の抜け止め構造では、リブの強度にやや難点があり、支持アームに対して抜け方向に大きな外力が作用したとき、リブが鉄板製の軸受ケースによって削り取られてしまう可能性がある。その対策として、例えばリブの幅あるいは軸方向長さ増大することで強度を高める、といったことが考えられるが、スペース上の制約からリブの大型化には自ずと限界がある。
【0005】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、支持アームに抜止部が設けられている車両用サンバイザの抜け止め構造において、抜止部の強度を向上することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明に係る車両用サンバイザは、特許請求の範囲の各請求項に記載の通りの構成を備えた。
請求項1に記載の車両用サンバイザにおいては、抜止部は、少なくともその一部が金属製の強度部材で形成されており、その強度部材はインサート成形によって支持アームに結合されるとともに、該支持アームの外周面よりも内側へ所定深さで埋め込まれた埋込部を有しており、支持アームは、外層を構成する樹脂パイプと、その樹脂パイプによって包み込まれて内層を構成する金属棒とからなる二重構造に形成され、前記強度部材の埋込部が前記金属棒の外周面に沿って延長された構成としている。
上記のように構成される請求項1に記載の発明によれば、従来に比べて抜止部の強度を高め、大きな外力に対しても十分に対抗することが可能な抜け止め構造を提供することができる。また、強度部材を支持アームに結合する構成であり、しかも軸受ケースのスリットを通過できるサイズに設定することが可能なことから、表皮にて被覆されたサンバイザ本体の軸受ケースに支持アームを差し込んで後付けできるという生産上の有利さを損なうこともない。
また、強度部材の埋込部の領域を拡大でき、これにより抜止部の強度をよりアップすることが可能となる。
【0007】
この場合において、請求項2に記載したように、強度部材の全体が樹脂によって被覆されていることが好ましく、このような構成を採用したときは、抜止部の強度をより高め得るとともに、強度部材の防錆効果を得ることができる。
【0009】
また、請求項3に記載の車両用サンバイザの支持装置においては、前記強度部材は、支持アームの軸方向において対向するプレート部と、両プレート部を接続する接続プレート部とからなり、それらプレート部が樹脂によって包み込まれる構成としている。このような構成によれば、プレート間に樹脂が充填されることで強度部材と樹脂との結合力が高められる。また、インサート成形時において、対向するプレートを成形型にセットする際の位置決め基準として用いることができる。すなわち、成形型側に対向するプレート間に差し込む凸部等の受け部を設けておくことで、支持アームに対する強度部材の位置精度を確保できる。
【0010】
また、請求項4に記載の車両用サンバイザの製造方法においては、金属棒がセットされた成形型内に樹脂材料を充填して前記金属棒を樹脂層で被覆した二重構造の支持アームを成形するに際して、前記成形型に抜止部を構成するための金属製の強度部材をセットするステップを含み、該強度部材と前記金属棒を同時にインサート成形する構成としている。
このような製造方法によれば、既存の支持アームの製造方法に、1つのステップを追加するだけで容易に強度部材を有する強度の高い抜止部付き支持アームを得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る車両用サンバイザを図1〜図5に基づいて説明する。図1は車両用サンバイザの一部を破断して示す正面図である。図示のように、車両用サンバイザ1は、サンバイザ本体2と、そのサンバイザ本体2を車両の車室天井に取り付けるための支持装置3とを主体に構成される。サンバイザ本体2は、ワイヤフレーム21で補強された発泡体を芯材22としており、その芯材22を柔軟な表皮23で被覆することで厚肉平板状に形成されている。また、サンバイザ本体2の右右いずれか一方の上隅部(本実施形態では右隅部)内に軸受部4がワイヤフレーム21と共にインサート成形されている。
【0012】
支持装置3は、略L字形の支持アーム31を主体に構成されている。支持アーム31は、縦軸部31aが車内天井面にブラケット39を介して回動可能に取り付けられ、横軸部31bがサンバイザ本体2の軸受部4に回動可能に取り付けられる。かくして、サンバイザ本体2は、支持アーム31の縦軸線回りと横軸線回りに回動可能とされ、天井面に沿う格納位置と、フロントガラス又はドアガラスに沿う日除け位置へ回動変位することができる。
【0013】
図2に示すように、軸受部4は断面形状が略鍵穴を成すように鉄板を折り曲げて形成した軸受ケース41を主体に構成され、その軸受ケース41は下方に延出された対向する平面部41aでサンバイザ本体2のワイヤフレーム21を両側から挟み付けた状態で該ワイヤフレーム21に溶接されている。これにより、対向する平面部間には軸方向に貫通するスリット41Sが形成されている。
また、軸受ケース41には、軸方向の途中位置に弾性クリップ43が設けられている。弾性クリップ43は、サンバイザ1の使用形態において、支持アーム31に対してサンバイザ本体2を回動したとき、軸受ケース41に形成された開口部を通して支持アーム31の軸方向における外周所定部位に形成された平面部(図示省略)に係合することにより、サンバイザ本体2を車両天井面に沿う格納位置に保持するものである。
【0014】
支持アーム31は、図3に示すように、金属棒を構成する鉄製パイプ32と、その鉄製パイプ32の外表面を包み込む硬質の樹脂パイプ33とからなる断面円形の二重パイプ構造である。すなわち、支持アーム31は、内層が金属部品で構成され、外層が樹脂部品で構成された二重構造であり、インサート成形によって形成されている。そして、支持アーム31は、図2に示すように、その横軸部31bが軸受ケース41の円形孔内に差し込まれて回動可能に保持される。
【0015】
支持アーム31における横軸部31bの軸方向略中程には、径方向に突出する四角形の抜止部34が形成されている。この抜止部34は、図2に示すように、横軸部31bをサンバイザ本体2の隅部から軸受ケース41の円形孔に差し込むとき(表皮23には差込スリットが設けられている)、該軸受ケース41のスリット41Sを通す。従って、抜止部34はスリット41Sを通過可能な大きさに設定される。そして、抜止部34は、横軸部31bを規定の位置まで差し込んでから所定角度回動したとき、軸受ケース41の軸方向の略中程に設けた正面視で略U字状の切欠部42を通して外方へ突出されるとともに、該切欠部42の軸方向端面に係止することで支持アーム31を抜け止めする。
抜止部34は縦軸部31aの突出方向に対して約90度の位相差をもって配置されており、これにより、サンバイザ1の使用形態において、サンバイザ本体2の回動操作範囲内では抜止部34がスリット41Sに整合(一致)しない構成となっている。
【0016】
抜止部34は金属製、例えば鉄板製の強度部材35を含んで構成される。すなわち、抜止部34内には、図3に示すように、強度部材35がインサート成形によって包み込まれている。強度部材35は、外層を構成する樹脂パイプ33の外周面から径方向へ突出する突出部37と、樹脂パイプ33の外周面よりも内側に突入された埋込部36を有しており、本実施の形態では埋込部36の埋込端が鉄製パイプ32の外周面に達している。
このように構成される強度部材35入りの抜止部34は、前述した従来の樹脂製ノブに比べてその強度が向上されることになる。従って、支持アーム31に対して抜け方向の外力が作用したとき、その外力で抜止部34が削り取られる(剪断破壊する)ことを防止できる。このことにより、サンバイザ本体2から支持アーム31が抜け出し、剥き出し状態で車室天井側に残存するといった現象が回避される。
【0017】
また、本実施の形態に係る強度部材35は、一枚の鉄板からなり、図5に示すように、軸方向に所定間隔を置いて対向する2枚のプレート部35aと、その両プレート部35aを接続する接続プレート部35bとからなる略正面視で略U字形に形成されている。また、両プレート部35aと接続プレート部35bとの接続部位(突出部37)は、略アリ溝形(台形)に形成されている。上記のような構造を採用することで、インサート成形後においては、プレート部35a,35bがその内外を樹脂で包み込まれることになり、これにより強度部材35と樹脂パイプ33との結合力が高められる。また、強度部材35はその全体を樹脂で包み込まれることから、防錆効果も得られる。
【0018】
また、対向する2枚のプレート部35aは、側面視で半円弧よりやや大きい略C形に形成されている。以下、このプレート部35aをC形プレート部という。C形プレート部35aの内径は、支持アーム31の鉄製パイプ32の外径に対応する大きさに形成され、外径は樹脂パイプ33の外径よりもやや小さく形成されている。従って、インサート成形されるC形プレート部35aは、樹脂パイプ33内に埋め込まれ、前述の埋込部36を構成する。
埋込部36は、強度部材35による抜止部34の強化を図る上で極めて重要であり、特に本実施の形態では、鉄製パイプ32の外周に沿ってほぼ半周にわたって延長している。これにより、外力に対する強度部材35の受承面積が増大され、抜止部34の強度をよりアップすることが可能となる。
【0019】
次に、支持アーム31の製造方法を図6〜図8に基づいて説明する。図6は成形型の下型51を示している。図示のように、下型51は、L形をなす成型空間52の両端にセット用凹部53,54を有し、また長手方向の略中程に強度部材35のC形プレート部35aを保持する凸部55と、接続プレート部35bを収容する凹部56とを有している。
図7は下型51に強度部材35及び鉄製パイプ32がセットされた状態を示している。下型51に対して、先ず、対向するC形プレート部35a間に凸部55が嵌まり込むように強度部材35を上方から差し込んでセットする。このとき、接続プレート部35bが凹部56に所定の隙間を置いて差し込まれ、強度部材35は、凸部55との接触面を除いては、成型空間52に対して中吊り状態に位置決めされる(図8参照)。
【0020】
次に、鉄製パイプ32の縦軸部側にセットピン38を差し込んだのち、下型51のセット用凹部53,54に軸端部を嵌め込むことで、鉄製パイプ32を成型空間52に中吊り状態でセットする。このとき、縦軸部側については先端まで樹脂で包み込む設定のため、上述のセットピン38を利用してセット用凹部53に支持させるが、横軸部側については、先端を樹脂から露出する設定のため、その先端をセット用凹部54に直接支持する。また、鉄製パイプ32は、先にセットされている強度部材35のC形プレート部35aに上方から押し込んで嵌め込まれる(図8仮想線参照)。この場合、半円弧形よりもやや大きく形成されているC形プレート部35aの径方向の弾性変形を利用しての嵌め込みとなる。かくして、鉄製パイプ32と強度部材35とは位置決めされた状態で下型51にセットされる。
なお、上記の説明では、下型51に強度部材35をセットしてから鉄製パイプ32をセットするとしたが、強度部材35を予め鉄製パイプ32にセットしてから、鉄製パイプ32を下型51にセットするという順序で行ってもよい。
【0021】
その後、下型51に上型(図示省略)を型合わせし、溶融樹脂を成形空間内に充填し、固化を待って、抜止部34に強度部材35が埋め込まれて強度がアップされた鉄製パイプ32と樹脂パイプ33からなる二重構造の支持アーム31を得ることができる。
上記のような製造方法においては、鉄製パイプ32と強度部材35とを同時にインサート成形することができ、既存の支持アームの製造方法に、1つのステップ、すなわち強度部材35をセットするステップを追加するだけで容易に強度部材35入りの抜止部34を備えた支持アーム31を得ることができる。また、強度部材35を下型51に設けた凸部55にて保持し、その強度部材35にて鉄製パイプ32を保持するため、従来の製造方法では必要であった鉄製パイプの軸方向中間位置を支えるためのピンを廃止できる。
更には、強度部材35はC形プレート部35aを対向して備える構造としたことにより、その対向間隔に下型51の凸部55を差し込んで成型空間52内に中吊り状態にセットすることができる。
【0022】
なお、本発明は図示の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、支持アーム31の金属棒を構成する部材として鉄製パイプ32を採用しているが、必ずしもパイプに限られるものではなく、中実体であっても何ら差し支えない。
また、本実施の形態では、強度部材35の全体を樹脂パイプ33を構成する樹脂層内に埋め込む構成としたが、埋込部36を除いた部位、すなわち樹脂パイプ33の外周面から突出する突出部37については、その一部あるいは全部を露出する構成に変更してもよい。また、強度部材35を鉄製としたが、鉄以外の金属を用いることも可能であるし、形状についても図示の形状に限定されるものでない。例えば、埋込部36については、C形プレート部35aをリング状に変更したり、あるいは樹脂パイプ33の軸方向に沿って延長する形状に変更することが可能である。
また、サンバイザ本体2の芯材22が発泡体によって構成されるタイプの場合で説明しているが、芯材22が硬質樹脂で形成されるコアタイプに適用することも可能である。
【0023】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、支持アーム側に抜止部が設けられている車両用サンバイザのアーム抜止構造において、支持アームの外周面に突設される抜止部の強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用サンバイザの一部を切断して示す全体正面図である。
【図2】支持アームと軸受部の支持構造を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】強度部材を示す斜視図である。
【図6】下型に対する強度部材及び鉄製パイプのセットを説明する斜視図である。
【図7】下型に強度部材及び鉄製パイプがセットされた状態を示す平面図である。
【図8】下型に強度部材がセットされた状態を示す断面図である。
【図9】従来の支持アームの抜け止め構造を示す説明図である。
【符号の説明】
1 車両用サンバイザ
2 サンバイザ本体
4 軸受部
31 支持アーム
32 鉄製パイプ
33 樹脂パイプ
34 抜止部
35 強度部材
36 埋込部
37 突出部
41 軸受ケース
41S スリット
42 切欠部
Claims (4)
- サンバイザ本体と、そのサンバイザ本体の軸受部に回転可能に貫通されるとともに少なくとも外層が硬質樹脂製の支持アームとを備え、その支持アームには径方向に突出するとともに前記軸受部の一部に当接して抜け止めされる抜止部が形成される車両用サンバイザであって、
前記抜止部は、少なくともその一部が金属製の強度部材で形成されており、その強度部材は、前記支持アームにインサート成形によって結合されるとともに前記支持アームの外周面よりも内側へ所定深さで埋め込まれた埋込部を有しており、
前記支持アームは、外層を構成する樹脂パイプと、その樹脂パイプによって包み込まれて内層を構成する金属棒とからなる二重構造に形成され、前記強度部材の埋込部が前記金属棒の外周面に沿って延長されていることを特徴とする車両用サンバイザ。 - 請求項1に記載の車両用サンバイザであって、前記強度部材は、全体が樹脂によって被覆されていることを特徴とする車両用サンバイザ。
- 請求項1又は請求項2に記載の車両用サンバイザであって、前記抜止部は、支持アームの軸方向において対向するプレート部と、両プレート部を接続する接続プレート部とからなり、それらプレート部が樹脂によって包み込まれていることを特徴とする車両用サンバイザ。
- サンバイザ本体と、そのサンバイザ本体の軸受部に回転可能に貫通される支持アームとを備え、その支持アームには径方向に突出するとともに前記軸受部の一部に当接して抜け止めされる抜止部が形成される車両用サンバイザの製造方法であって、
金属棒がセットされた成形型内に樹脂材料を充填して前記金属棒を樹脂層で被覆した二重構造の支持アームを成形するに際して、前記成形型に抜止部を構成するための金属製の強度部材をセットするステップを含み、該強度部材と前記金属棒を同時にインサート成形することを特徴とする車両用サンバイザの製造方法。
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