JP4435896B2 - 高周波スパッタリング装置及び薄膜作成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、ターゲットをスパッタして基板の表面に所定の薄膜を作成するスパッタリング装置に関し、特に、ターゲットに高周波電圧を与えてスパッタする高周波スパッタリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ターゲットをスパッタして基板の表面に所定の薄膜を作成するスパッタリング装置は、大規模集積回路(LSI)等の半導体デバイス、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置、ハードディスク等の情報記録媒体等の製作に盛んに利用されている。
スパッタリングは、ターゲットの表面を臨む空間にスパッタ放電を生じさせ、ターゲットの表面を正イオンで叩いてターゲットの材料を放出させることにより行う。ターゲットから放出された材料(通常は原子の状態、以下スパッタ粒子と呼ぶ)の基板の表面への到達が重なると、薄膜が堆積することになる。
スパッタ放電のためにターゲットに与える電圧は、負の直流電圧の場合もあるが、高周波電圧を与える場合もある。ターゲットに高周波電圧を与えてスパッタする方式は、高周波スパッタリングと呼ばれる。高周波スパッタリングは、元々、誘電体製のターゲットをスパッタして誘電体膜を作成する用途に開発されたものである。
【0003】
ターゲットが誘電体製である場合、ターゲットに負の直流電圧を与えても、ターゲットの表面は正イオンで覆われて放電は生じない。ターゲットに高周波電圧を与えて高周波放電を生じさせると、正イオンと電子との移動度の違いから、自己バイアス電圧と呼ばれる負の直流分の電圧がターゲットに与えられる。つまり、高周波放電によりプラズマを生じさせると、高周波によるターゲットのキャパシタンスの充放電に正イオンと電子の移動度の違いが影響し、ターゲットの表面は交流に負の直流電圧を重畳させたような電位変化となる。
この自己バイアス電圧は、プラズマ中から正イオンを引き出してターゲットの表面に入射させるよう作用し、誘電体製のターゲットのスパッタが可能となる。ターゲットが金属製の場合であっても、ターゲットと高周波電源との間に適当なコンデンサを介在させることで、同様に高周波スパッタリングが可能となる。
【0004】
図4は、従来の高周波スパッタリング装置の正面概略図である。図4に示す装置は、排気系11を有した処理容器1と、処理容器1内に所定のガスを導入するガス導入系2と、処理容器1内に被スパッタ面31が露出するように設けられたターゲット3と、ターゲット3の背後(被スパッタ面31とは反対側)に設けられた磁石ユニット4と、整合器51を介してターゲット3に高周波電力を供給する高周波電源5と、ターゲット3から放出されるスパッタ粒子によって成膜が行われる処理容器1内の所定位置に基板9を保持する基板ホルダー6等から主に構成されている。図4に示す装置では、ガス導入系2によってアルゴン等のガスを導入し、高周波電源5によってターゲット3に高周波電力を供給すると、前述した通り、ターゲット3がスパッタされ、基板ホルダー6上の基板9の表面に所定の薄膜が作成される。
【0005】
図4に示す装置における磁石ユニット4は、マグネトロンスパッタリングを可能にするものである。マグネトロンスパッタリングは、ターゲット3を介して設定される電界に直交する磁界を設定し、電子をマグネトロン運動させることにより高効率の放電を達成するものである。高効率の放電により、比較的低い圧力でも高い成膜速度で成膜ができ、高品質の薄膜を高い生産性で作成できるというメリットがある。
磁石ユニット4は、中央に設けられた中心磁石41と、中心磁石41を取り囲むリング状の周辺磁石42と、中心磁石41と周辺磁石42とを繋ぐヨーク43とから構成されている。中心磁石41と周辺磁石42との間には、図4に示すようにターゲット3を貫いて膨らむ磁力線40が設定される。この磁力線40は、その膨らんだ頂点の付近等で電界(電気力線)に直交し、マグネトロン放電が達成される。
【0006】
また、磁石ユニット4には、回転機構7が付設されている。この回転機構7は、ターゲット3の被スパッタ面31に生ずるエロージョンを均一化させるものである。マグネトロンスパッタリングでは、電界と磁界との交わりがより直角に近いところでより放電が強くなり、スパッタが速く進む性質を有する。従って、電界と磁界との交わりがより直角に近い空間を臨む部分でターゲット3のエロージョンがより速く進行する。図4に示す装置では、膨らんだ磁力線の頂点付近の上側に位置する部分でエロージョンが速く進行し、その他の部分では比較的遅く進行する。
【0007】
このようにエロージョンの進行が不均一であると、スパッタリングを所定回数繰り返した際、ターゲット3のある箇所ではエロージョンがターゲット3の厚さ近くまで進行してターゲット3の交換時期に来ているのに対し、他の箇所ではまた相当の厚さが残っているという状態になり易い。この状態で交換すると、ターゲット3の材料がまだ多く残っている状態でも交換なので、無駄になるターゲット3の材料が多く、コスト上問題がある。また、ターゲット3上のエロージョンが不均一であると、ターゲット3と基板9との距離が近い場合、基板9の表面での成膜速度も不均一になる場合もある。
【0008】
このような問題を避けるため、回転機構7によって磁石ユニット4を回転させるようにし、エロージョンの均一化を図っている。回転機構7は、ヨーク43の裏面に固定された回転軸71と、回転軸71を回転させるモータ72等から構成されている。回転軸71は、ターゲット3の中心軸に一致している。但し、回転軸71は、磁石ユニット4の中心軸には一致しておらず、少し偏心している。ターゲット3の中央部分は磁力線40が集まってきていてエロージョンの進行が遅い部分であり、回転軸71を磁石ユニット4の中心軸に一致させてしまうと、この部分のエロージョンを促進する効果があまり得られなくなってしまうからである。
【0009】
また、ターゲット3に高周波電力が供給されると、ターゲット3に高周波電流が流れる。この高周波電流によってジュール熱が発生する。このような熱の発生によってターゲット3やその周辺の部材が損傷を受けることを防止するため、冷却機構8が備えられている。冷却機構8は、ターゲット3と磁石ユニット4との間の空間に冷媒を供給することでターゲット3等の冷却を行うよう構成されている。
【0010】
具体的に説明すると、磁石ユニット4の背後にはベース板32が設けられている。ベース板32は、リング状の短絡板33を端部に介在させた状態でターゲット3に対して気密及び水密に設けられている。尚、ターゲット3の端部は、リング状の絶縁材36を介して処理容器1の上縁に気密に接続されている。そして、ベース板32とターゲット3との間の空間に磁石ユニット4が配置されている。ベース板32とターゲット3との間の空間は磁石ユニット4よりも大きく、磁石ユニット4はこの空間内で前述した回転機構7により回転するようになっている。
【0011】
そして、短絡板33には冷媒の流入孔34及び排出孔35が形成されている。流入孔34を通して冷媒がターゲット3とベース板32との間の空間に流入し、排出孔35から排出されるようになっている。この冷媒の流通により、ターゲット3等が所定温度まで冷却されるよう構成されている。尚、ベース板32の中央には前述した回転軸71が貫通している。回転軸71とベース板32との間には不図示の封止部が設けられており、回転軸71の回転を許容しつつ冷媒が漏れないように封止している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明が解決しようとする第一の課題は、高周波電力の供給の際の全体の電力損失を低減させることでプラズマへの電力供給の効率を向上させることである。
また、本願発明が解決しようとする第二の課題は、プラズマへの高周波電力の供給を均一にして均一な成膜処理を可能にすることである。この第二の課題について、以下に説明する。
上述した従来の高周波スパッタリング装置において、発明者の研究によると、高周波電力の供給点の問題に起因して、基板9の表面への成膜が不均一になる問題があることが発見された。この問題について、図4、図5及び図6を使用して説明する。図5は、図4に示す従来の装置における高周波電力の供給点について説明した平面概略図、図6は、図4及び図5に示す従来の装置の問題点を説明した図であり、ターゲット3への高周波電力の供給状況について説明した図である。
【0013】
図4に示すように、高周波電源5からの伝送線52は、ベース板32の裏面に接続されている。即ち、高周波電力は、最初にベース板32に供給され、短絡板33を介してターゲット3に伝えられるようになっている。
また、図5に示すように、ベース板32の裏面における高周波電力の供給点Sは、ベース板32の中心から外れた位置に設定されている。この理由は、ベース板32の中心には、前述した通り、回転機構7の回転軸71が貫通しているためである。
尚、図4に示す伝送線52は、同軸管等であるが、最終的にはこの伝送線52の終端には帯板状の導入部材53が接続されている。導入部材53は銅等の金属製であり、その先端がネジ止めによってベース板32の裏面の供給点Sに固定されている。
【0014】
図6は、図5に示す供給点Sを通る面での断面図になっている。周知のように、周波数が高くなってくると、表皮効果により電流は導体の表面付近のみを流れる傾向がある。図4及び図5に示す装置においても同様であり、供給点Sに供給された高周波電力により流れる高周波電流は、ベース板32の裏面に沿って流れ、短絡板33の表面を流れた後、ターゲット3に達する。そして、ターゲット3の端面から前面側(被スパッタ面31のある側)に周り込み、被スパッタ面31に達する。
【0015】
ここで、図5及び図6に示すように、供給点Sから最も近いベース板32の周縁の点をA1 とし、供給点Sから最も遠いベース板32の周縁の点をB1 とする。また、図6に示すように、ターゲット3の被スパッタ面31上の被スパッタ面31の中心(ターゲット3の中心軸上)から互いに距離の等しい二点をA2 ,B2 とする。供給点Sに供給された高周波電力により、供給点Sから点A1 を通って流れる高周波電流は、ターゲット3の被スパッタ面31上の点A2 に達するものとし、この電流をIaとする。また、点Bを通って流れる高周波電流は、ターゲット3の被スパッタ面31の点B2 に達するものとし、この高周波電流をIbとする。
【0016】
図7は、図6に示すIa,Ibについての等価回路である。図7中、Pはスパッタ放電によって形成されるプラズマであり、Ca,Cbは各々点A,点Bにおけるプラズマとの間の空間容量(プラズマシースの容量)である。Raは線路S−A2 における抵抗、Laは線路S−A2 におけるインダクタンス、Rbは線路S−B2 における抵抗、Lbは線路S−b2 におけるインダクタンスである。さらに、Rabは点AB間の抵抗、Labは点AB間のインダクタンスである。
図7に示すように、高周波電流Ia,Ibは、各々抵抗Ra,Rb及びインダクタンスLa,Lbを通して流れて点A,Bに達し、被スパッタ面31の抵抗Rab及びインダクタンスLabを通して互いに逆側に流れていく。そして、点A,Bからは、キャパシタンスCa,Cbを通してプラズマに高周波電流が流れる。
【0017】
ここで、線路S−A2 や線路S−B2 のような高周波線路における抵抗やインダクタンスは、導体の材質や表面の状態等に依存するが、それらは線路S−A2 も線路S−B2 も同様であると見なせる。従って、線路S−A2 ,S−B2 の長さの違いが線路における全体のインピーダンスを異ならせる要因となる。図6から分かるように、線路S−B2 は線路S−A2 に比べて長い。従って、線路S−B2 のインピーダンスZb(=Rb+iωLb,iは複素数,ωは高周波の角周波数)は、線路S−A2 のインピーダンスZa(=Ra+iωLa)に比べて大きい。このため、点B2 における電圧降下は、点A2 における電圧降下よりも大きくなり、点B2 を通してプラズマPに供給される高周波電力は点A2 を通してプラズマPに供給される高周波電力より小さくなる。
【0018】
上記のようにプラズマに供給される高周波電力が不均一になると、プラズマ密度が不均一になり、その結果、基板9への成膜も不均一になる。この問題を、図4及び図6を使用して説明する。
図4及び図6に示すように、基板ホルダー6の基板9保持面はターゲット3の被スパッタ面31と平行であり、基板9の表面は被スパッタ面31と平行である。そして、上述したように被スパッタ面31の二点A2,B2でプラズマPへの高周波電力の供給が不均一になると、被スパッタ面31に平行な面内(基板9の表面に平行な面内)でプラズマ密度の不均一化が生じる。この結果、二点A2,B2におけるターゲット3のスパッタが不均一になり、スパッタから放出されるスパッタ粒子の量も不均一になる。このため、図6に示すように、基板9の表面における成膜速度もまた不均一になる。
【0019】
本願の発明は、上記のような各課題を解決するために成されたものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、排気系を有する処理容器と、
前記処理容器内にターゲットが設けられた際に高周波電源から印加された高周波電力を前記ターゲットに導入するための導入部材と、
前記処理容器内にターゲットが設けられた際にターゲットに短絡される金属製部材と、
前記処理容器内に基板を保持するための基板ホルダーとを備え、
前記ターゲット又は前記ターゲットに短絡される金属製部材は、その中心軸を通る直線で分割された第1領域及び第2領域を有しており、
前記導入部材は、前記高周波電源からの高周波電力を分割して前記第1領域と前記第2領域とそれぞれ導入するものであるという構成を有する。
上記課題を解決するため、本願の請求項2記載の発明は、上記請求項1の構成において、前記導入部材は、前記高周波電源からの高周波電力を伝送する伝送線を前記第1領域内の第1接続箇所において接続するとともに、前記高周波電源からの高周波電力を伝送する伝送線を前記第2領域内の第2接続箇所において接続するものであり、
前記第1接続箇所と前記第2接続箇所とは、前記中心軸に対して対称に設けられているという構成を有する。
上記課題を解決するため、本願の請求項3記載の発明は、上記請求項2の構成において、前記導入部材は、インピーダンスが均等になるよう分岐して前記伝送線を前記第1接続箇所と前記第2接続箇所とに接続した線路であるという構成を有する。
上記課題を解決するため、本願の請求項4記載の発明は、上記請求項2の構成において、前記導入部材は、距離が均等になるよう分岐して前記伝送線を前記第1接続箇所と前記第2接続箇所に接続した線路であるという構成を有する。
上記課題を解決するため、本願の請求項5記載の発明は、上記請求項1乃至4いずれかの構成において、前記ターゲットが設けられた際にターゲットの被スパッタ面とは逆側に位置すると磁石ユニットと、磁石ユニットを回転させる回転機構とを備えているという構成を有する。
上記課題を解決するため、本願の請求項6記載の発明は、請求項1乃至5いずれかに記載の高周波スパッタリング装置を使用して薄膜を作成するという構成を有する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。
図1は、本願発明の実施形態である高周波スパッタリング装置の正面概略図である。図1に示す高周波スパッタリング装置は、同様に、排気系11を有した処理容器1と、処理容器1内に所定のガスを導入するガス導入系2と、処理容器1内に被スパッタ面31が露出するように設けられたターゲット3と、ターゲット3の背後に設けられた磁石ユニット4と、整合器51を介してターゲット3に高周波電力を供給する高周波電源5と、ターゲット3から放出されるスパッタ粒子によって成膜が行われる処理容器1内の所定位置に基板9を保持する基板ホルダー6等から主に構成されている。
【0022】
本実施形態の装置の大きな特徴点は、高周波電源5が発生させた高周波電力を伝送する伝送線52の先端に接続された導入部材53が複数に分岐しており、ベース板32に複数箇所で接続されている点である。この点を図2及び図3を使用して説明する。図2及び図3は、図1に示す装置における導入部材53の構成について説明する図であり、図2はその平面概略図、図3は図2のX−Xおける正面断面図である。
【0023】
図2及び図3に示す導入部材53は、伝送線52の先端に繋がる高周波線路を二つに分岐させる第一分岐板531と、第一分岐板531で分岐した高周波線路の各々をさらに二つに分岐させる第二分岐板532と、第二分岐板532で分岐した高周波線路の各々をさらに二つに分岐させる第三分岐板533とから構成されている。
第一分岐板531は、図2に示すように、短い帯板状の導入部534と、この導入部534の先端から二つに分かれて延びる分岐部535とから構成されている。二つの分岐部535は、90度の円弧に沿って延びる帯板状であり、二つ合わせて180度の円弧が形成された状態となっている。
そして、各分岐部535の先端は、外側に折れ曲がっており、その先端の下面には、図3に示すように、第一接続ブロック536が設けられている。第一接続ブロック536は、小さな円盤状の部材であり、その上面が分岐部535の先端の下面に固定されている。
【0024】
第一接続ブロック536の下面は、第二分岐板532に固定されている。第二分岐板532は、図2に示すように、90度の円弧に沿って延びる帯板状の部材である。第一接続ブロック536の下面は、第二分岐板532の円弧の中央の部分(45度の部分)に固定されている。第二分岐板532は、第一分岐板531の二つの分岐部535の各々の下側に設けられている。
そして、各第二分岐板532の円弧方向の両端の下面には、図3に示すように、第二接続ブロック537が固定されている。第二接続ブロック537も第一接続ブロック536と同様の小さな円盤状であり、その下面に第三分岐板533が固定されている。
【0025】
第三分岐板533は、図2に示すように、45度の円弧に沿って延びる帯板状の部材である。第二接続ブロック537の下面は、第三分岐板533の円弧の中央の部分(22.5度の部分)に固定されている。第三分岐板533は、各第二分岐板532の両端の下側に設けられており、従って、第三分岐板533は四つである。
そして、第三分岐板533の円弧方向の両端の下面には、第三接続ブロック538が固定されている。第三接続ブロック538も第一,第二接続ブロック537と同様に小さな円盤状の部材である。そして、図3に示すように、この第三接続ブロック538の下面がベース板32に固定されている。
【0026】
図2に示すように、第一分岐板531の分岐部535、第二分岐板532及び第一分岐板531は、全て同心の円弧状となっている。そして、ベース板32は円板状であり、その中心軸は、第一分岐板531の分岐部535、第二分岐板532及び第一分岐板531の中心と一致している。図2に示すように、第三接続ブロック538は、ベース板32の周縁から僅かに内側の箇所でベース板32の上面に固定されている。第三接続ブロック538は、各第三分岐板533の両端の下側に設けられており、従って、第三接続ブロック538は八つ設けられている。
【0027】
上述した、第一、第二、第三分岐板531,532,533及び第一、第二、第三接続ブロック536,537,538は全て銅製であり、導電率を高めるため表面は銀メッキ処理が施されている。また、各接続ブロック536,537,538と各々の分岐板531,532,533又はベース板32との固定は、接続ブロック536,537,538の中央を貫通させた固定ネジによるネジ止めである。この固定は、溶接等でも良い。
尚、上記本実施形態における導入部材53の各部は、不図示の絶縁材で覆われている。これは、各部同士にまたがる放電を防止するためである。絶縁材としては、耐熱性のフッ素樹脂等が好適である。
【0028】
図2及び上記説明からわかる通り、本実施形態では、高周波線路が最終的に八つに分岐し、八つの第三接続ブロック538を介してベース板32に接続されている。従って、高周波電力の供給箇所は八つである。そして、同様に図2及び上記説明からわかる通り、この八つの電力供給箇所は、ベース板32の中心軸と同心状の円弧上に等間隔で並んでいる。即ち、八つの電力供給箇所は、ベース板32の中心軸上の箇所以外の箇所において中心軸対称となっている。
【0029】
本実施形態の装置は、上述したような導入部材53の構成を採用しているので、以下のような大きなメリットがある。
まず、高周波線路を分岐させて複数の電力供給箇所としているので、全体の電力損失が低減する。より具体的に説明すると、八つの電力供給箇所に流れる電流は、従来の電流Iの1/8である。従って、一カ所あたりの電力損失は、(I/8)2 ×R=I2 R/64となる。従って、八カ所合計の電力損失は、I2 R/8となり、従来の1/8に低減する。このため、プラズマへの電力供給の効率が向上し、より高密度のプラズマを形成することができる。プラズマ密度が高くなることで、スパッタ放電が強くなり、成膜速度が高くなって生産性の向上がもたらされる。
また、高周波電力の供給箇所におけるジュール損が低減されることは、供給箇所の温度上昇が抑えられることになり、焼損等の事故の恐れが低減するメリットも得られる。そして、そのような事故を防止するための構成(例えば冷却等)も簡略化できる。
【0030】
さらに、上述したように、複数の電力供給箇所は、ベース板32の中心軸に対して対称となっている。そして、ターゲット3もベース板32と同一の中心軸となるように設けられている。従って、各電力供給点からターゲット3の被スパッタ面31側の中心点までの距離は、全ての電力供給点で同じである。このため、ターゲット3の被スパッタ面31の各点を経由したプラズマへの高周波電力の供給が、従来のように高周波線路の長短による電圧降下の違いから不均一になることがない。従って、プラズマ密度の分布も均一になり、基板9への成膜も均一にできる。尚、基板ホルダー6によって所定位置に保持された基板9は、その中心がターゲット3の中心軸に一致するようになっている。
【0031】
また、上記複数の電力供給箇所は、ベース板32の中心軸以外のところで軸対称であるので、図2に示すように、従来と同様にベース板32の中心軸の部分を貫くようにして回転機構7の回転軸71を設けることができる。従って、磁石ユニット4の回転によるエロージョンの均一化作用も従来と同様に得ることができる。
【0032】
さらに、上述した導入部材53の構成からわかる通り、各分岐板531,532,533は、高周波線路を均等なインピーダンスになるようにそれぞれ二分岐させている。従って、分岐する前の線路の終端(図2に符号539で示す)から見た各電力供給点までのインピーダンスは各電力供給点すべて等しくなるようになっている。従って、導入される高周波電力が丁度八等分されて各電力供給点に導入される。このため、電力のバランスが崩れることによるプラズマ密度の不均一化等もまた防止されている。また、各高周波線路のインピーダンスが均一になることから、導入部材53内での反射波等の発生も防止されており、高周波電力供給の効率が低下することもない。
【0033】
次に、本実施形態の装置の動作について説明する。不図示のゲートバルブを通して基板9が処理容器1内に搬入され、基板ホルダー6上に載置される。基板9は基板ホルダー6上に静電吸着されて所定の温度に加熱される。処理容器1内は予め所定の圧力に排気されており、この状態でガス導入系2が動作して所定のガスが所定の流量で導入される。そして、高周波電源5が動作してターゲット3に高周波電力が供給される。この結果、高周波スパッタ放電が生じるとともにターゲット3に自己バイアス電圧が与えられてターゲット3がスパッタされる。このスパッタによって、ターゲット3の材料の薄膜が基板9に作成される。この際、回転機構7が磁石ユニット4を回転させ、ターゲット3の被スパッタ面31のエロージョンを均一にする。また、ターゲット3は冷却機構8によって例えば20〜30℃程度に冷却される。薄膜が所定の厚さに達したら、高周波電源5の動作を止めるとともに、ガス導入系2の動作を止める。そして、処理容器1内を再度排気した後、基板9を処理容器1から取り出す。成膜の一例について説明すると、本実施形態の装置は、チタンや窒化チタン等の材料の薄膜の作成に好適に使用できる。ターゲット3に与える高周波電力は3kW〜13kW程度であり、周波数は0.3MHz〜60MHz程度である。
【0034】
上述した実施形態では、電力供給箇所は8カ所であったが、少なくとも2カ所以上であれば従来に比べて効果がある。また、導入部材53はベース板32に高周波電力を供給するものであったが、ターゲット3に対して直接高周波電力を供給してもよい。ターゲット3を冷却する必要が無い場合や、ターゲット3が中空で内部に冷媒が流通するような構造の場合、ターゲット3に直接高周波電力を供給する構成とする場合がある。この場合は、電力供給箇所は、ターゲット3の裏面が一般的であるが、ターゲット3の端面等でも良い。さらに、ベース板32以外の金属製でターゲット3に短絡された部材に対して高周波電力を供給するようにしてもよい。
【0035】
【発明の効果】
以上説明した通り、本願の請求項1の発明によれば、高周波線路を分岐させて複数の電力供給箇所を経由してターゲットに高周波電力を供給しているので、全体の電力損失が低減する。従って、プラズマへの電力供給の効率が向上し、より高密度のプラズマを形成することができる。このため、成膜速度が高くなって生産性の向上がもたらされる。また、電力供給箇所の温度上昇が抑えられることになり、焼損等の事故の恐れが低減するメリットも得られる。そして、そのような事故を防止するための構成も簡略化できる。
また、請求項2の発明によれば、上記請求項1の発明の効果に加え、第1接続箇所と第2接続箇所とは、前記中心軸を通る直線に対して対称に設けられているので、均一なプラズマ密度によって均一な成膜を基板に対して行うことができる。
また、請求項5の発明によれば、上記効果を得つつ、磁石ユニットを回転させてターゲットの被スパッタ面のエロージョンを均一化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施形態である高周波スパッタリング装置の正面概略図である。
【図2】図1に示す装置における導入部材53の構成について説明する平面概略図である。
【図3】図1に示す装置における導入部材53の構成について説明する正面断面概略図である。
【図4】従来の高周波スパッタリング装置の概略図である。
【図5】図4に示す従来の装置における高周波電力の供給点について説明した平面概略図である。
【図6】図4及び図5に示す従来の装置の問題点を説明した図であり、ターゲット3への高周波電力の供給状況について説明した図である。
【図7】図6に示すIa,Ibについての等価回路である。
【符号の説明】
1 処理容器
11 排気系
2 ガス導入系
3 ターゲット
31 被スパッタ面
32 ベース板
33 短絡板
4 磁石機構
5 高周波電源
51 整合器
52 伝送線
53 導入部材
531 第一分岐板
532 第二分岐板
533 第三分岐板
6 基板ホルダー
7 回転機構
71 回転軸
8 冷却機構
9 基板
Claims (6)
- 排気系を有する処理容器と、
前記処理容器内にターゲットが設けられた際に高周波電源から印加された高周波電力を前記ターゲットに導入するための導入部材と、
前記処理容器内にターゲットが設けられた際にターゲットに短絡される金属製部材と、
前記処理容器内に基板を保持するための基板ホルダーとを備え、
前記ターゲット又は前記ターゲットに短絡される金属製部材は、その中心軸を通る直線で分割された第1領域及び第2領域を有しており、
前記導入部材は、前記高周波電源からの高周波電力を分割して前記第1領域と前記第2領域とそれぞれ導入するものであることを特徴とする高周波スパッタリング装置。 - 前記導入部材は、前記高周波電源からの高周波電力を伝送する伝送線を前記第1領域内の第1接続箇所において接続するとともに、前記高周波電源からの高周波電力を伝送する伝送線を前記第2領域内の第2接続箇所において接続するものであり、
前記第1接続箇所と前記第2接続箇所とは、前記中心軸に対して対称に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高周波スパッタリング装置。 - 前記導入部材は、インピーダンスが均等になるよう分岐して前記伝送線を前記第1接続箇所と前記第2接続箇所とに接続した線路であることを特徴とすることを特徴とする請求項2記載の高周波スパッタリング装置。
- 前記導入部材は、距離が均等になるよう分岐して前記伝送線を前記第1接続箇所と前記第2接続箇所に接続した線路であることを特徴とすることを特徴とする請求項2記載の高周波スパッタリング装置。
- 前記ターゲットが設けられた際に前記ターゲットの被スパッタ面とは逆側に位置すると磁石ユニットと、磁石ユニットを回転させる回転機構とを備えていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の高周波スパッタリング装置。
- 請求項1乃至5いずれかに記載の高周波スパッタリング装置を使用して薄膜を作成することを特徴とする薄膜作成方法。
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