JP4434528B2 - 内燃機関のシリンダライナ構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダライナの高温部分のみの冷却を可能にする内燃機関のシリンダライナ構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図2は、従来の内燃機関のシリンダブロック200の縦断正面略図である。シリンダブロック200内にはシリンダライナ90が上部支持部98と下部支持部99とで支持されている。シリンダライナ90の円筒側壁90aとシリンダブロック200の間には冷却水ジャケット94が形成されている。冷却水ジャケット94は、紙面と直角方向に伸びる冷却水通路93と連通しており、冷却水通路93から冷却水が供給されるようになっている。また、冷却水通路93の上には給気連絡通路95が設けてある。
【0003】
図2は、ピストン91が下死点の位置にあり、シリンダライナ90の内壁面とピストン91の上端面及び燃料噴射弁96を備えたシリンダヘッド97の下面とで形成された燃焼室89の容積が最大の状態となっている。図2に示すように冷却水ジャケット94は、燃焼室89の最下端(ピストン91が下死点の位置にあるときの下端)よりもさらに下方の位置まで延びており、シリンダライナ90をほぼ全長に渡って冷却するようになっている。
【0004】
ところで、シリンダライナ90は、燃焼が行われる燃焼室89の特にシリンダヘッド97側が高温となり、シリンダライナ90の下方は比較的低温である。図2に示す構成では、シリンダライナ90を全長に渡ってほぼ一様に冷却するため、大量の冷却水が必要であるばかりでなく、必要以上に冷却することにより熱効率の低下を招いてしまう。
【0005】
さらに、シリンダライナ90を冷却し過ぎると、シリンダライナ90の内壁に結露が生じ、これに燃焼ガスのSOX成分が溶解して硫酸となり、シリンダライナ90を腐食して故障の原因と成る可能性がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明では、シリンダライナの高温部分のみを冷却することができて熱効率の低下を防止し、かつシリンダライナの耐久性を向上させることができる内燃機関のシリンダライナ構造を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、シリンダライナが、環状の第1支持部及び環状の第2支持部によって、シリンダブロックに固定されており、前記シリンダライナの円筒側壁と前記シリンダブロックとの間に形成された冷却水ジャケット内の冷却水によって、前記シリンダライナのシリンダヘッド側端部近傍からピストンの下死点位置より上方の高温領域のみを、冷却可能となるように、前記第1支持部は、前記冷却水ジャケットの下端を限定するよう、前記シリンダライナと前記シリンダブロックとの間に設けられており、前記第1支持部において、前記シリンダライナの円筒外側壁に形成された外向きで環状の第1フランジ部が、前記シリンダブロックに形成された内向きで環状の第2フランジ部の上に水密を保ち搭載されており、前記第2支持部は、前記第1支持部より下方に位置し、前記シリンダライナと前記シリンダブロックとの間に設けられており、前記第1支持部と前記第2支持部との間の前記シリンダライナの円筒側壁と前記シリンダブロックとの間であり、且つ、前記冷却水ジャケットの下方には、環状空間が形成されており、前記第2支持部には、前記環状空間とクランク室とを連通する孔が設けられており、前記孔によって、前記クランク室内の高温のミストが前記環状空間内に流入可能となっている。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を実施した内燃機関のシリンダブロック100の縦断正面略図である。シリンダブロック100内にはシリンダライナ1が内挿されており、シリンダライナ1は上部支持部9,中間支持部10及び下部支持部11でシリンダブロック100内に固定されている。シリンダブロック100の上方には燃料噴射弁8を備えたシリンダヘッド7が配置されている。
【0009】
図1に示すように中間支持部10では、シリンダライナ1の円筒外側壁に形成された外向きで環状のフランジ部14がシリンダブロック100の内向きで環状のフランジ部15の上に水密を保ち搭載されている。
【0010】
シリンダブロック100には紙面と直角方向に延びる冷却水通路4が設けてある。この冷却水通路4の上(シリンダヘッド7側)には紙面と直角方向に延びる給気連絡通路6が設けてある。
【0011】
上部支持部9と中間支持部10の間のシリンダライナ1の円筒外側壁とシリンダブロック100の間には環状の冷却水ジャケット5が形成されている。冷却水通路4内には冷却水が流れており、この冷却水は冷却水ジャケット5内へ流入することができるように冷却水通路4と冷却水ジャケット5とは連通している。また、冷却水ジャケット5内の冷却水は、シリンダライナ1を冷却した後に、連絡通路18を介してシリンダヘッド7の冷却水通路19へと流れる。
【0012】
中間支持部10と下部支持部11の間のシリンダライナ1の外側壁とシリンダブロック100の間には環状空間13が形成されている。この環状空間13と冷却水ジャケット5とは中間支持部10により隔離されており、連通していない。
【0013】
シリンダライナ1の内壁面をピストン2が往復移動可能に配置されている。ピストン2には連接棒3の上端が連結されており、連接棒3の下端は図示しないクランクに連結されている。このピストン2とシリンダライナ1の内周面及びシリンダヘッド7の下面とで燃焼室17が形成されている。
【0014】
ピストン2の下方には連接棒3と接続された図示しないクランクが回動する空間(クランク室12)が形成されている。下部支持部11には孔16が設けてある。この孔16により環状空間13とクランク室12とが連通している。
【0015】
図1に示すピストン2は下死点時の位置にあり、燃焼室17の容積は最大となっている。冷却水ジャケット5の下端は、下死点にあるピストン2の上端よりも上方(シリンダヘッド7側)にある。つまり、冷却水ジャケット5は、シリンダライナ1の高温領域に形成されている。
【0016】
また、冷却水ジャケット5の下方の環状空間13には、クランク室12内の高温のミストが浸入し充満している。シリンダライナ1の低温領域(高温領域と比較して低温な部分)は、環状空間13及びクランク室12内の高温のミストにより保温されている。この高温のミストでシリンダライナ1の低温領域を保温することにより、内燃機関の熱効率の低下を抑制することができる。
【0017】
内燃機関の運転時には、ピストン2が図1で見て上下方向に往復移動するが、その際に発生するピストン2の振動は、上部支持部9,中間支持部10及び下部支持部11により抑制され、シリンダライナ1の内周面とピストン2(正確には図示しないピストンリング)との間で消費される潤滑油量を低減させることができる。
【0018】
本発明によるシリンダライナ構造は、ピストンのストロークの長い内燃機関に適用すると、熱効率,潤滑油消費量及び結露に起因するシリンダライナの腐食の回避の点で特に効果が大きい。
【0019】
【発明の効果】
本発明では、冷却水ジャケット5の下端を限定する中間支持部10を設け、シリンダライナ1の高温領域のみを冷却するようにしたので、冷却水ジャケット5の容量を小さくすることができ、使用する冷却水の量を低減することができる。また、シリンダライナ1の高温領域以外は冷却しないようにしたので、熱効率の低下を抑制することができる。
【0020】
更に本発明では、シリンダライナ1の低温領域をクランク室12内の高温のミストで保温可能にしたので、請求項1の発明よりもさらに熱効率の低下を抑制することができる。
【0021】
また、結露によりシリンダライナ1の内壁に水滴が付着することを防止することができ、引いては燃焼ガス中に含まれるSOX成分が水滴に溶解して硫酸が生じ、この硫酸によるシリンダライナ1の腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施した内燃機関のシリンダブロックの縦断正面略図である。
【図2】従来の内燃機関のシリンダブロックの縦断正面略図である。
【符号の説明】
1 シリンダライナ
2 ピストン
3 連接棒
4 冷却水通路
5 冷却水ジャケット
6 給気連絡通路
7 シリンダヘッド
8 燃料噴射弁
9 上部支持部
10 中間支持部(環状の支持部)
11 下部支持部
12 クランク室
13 環状空間
14 フランジ部(シリンダライナ1側に設けた外向きのフランジ)
15 フランジ部(シリンダブロック100に設けた内向きのフランジ)
16 孔
17 燃焼室
100 シリンダブロック
Claims (1)
- シリンダライナが、環状の第1支持部及び環状の第2支持部によって、シリンダブロックに固定されており、
前記シリンダライナの円筒側壁と前記シリンダブロックとの間に形成された冷却水ジャケット内の冷却水によって、前記シリンダライナのシリンダヘッド側端部近傍からピストンの下死点位置より上方の高温領域のみを、冷却可能となるように、前記第1支持部は、前記冷却水ジャケットの下端を限定するよう、前記シリンダライナと前記シリンダブロックとの間に設けられており、
前記第1支持部において、前記シリンダライナの円筒外側壁に形成された外向きで環状の第1フランジ部が、前記シリンダブロックに形成された内向きで環状の第2フランジ部の上に水密を保ち搭載されており、
前記第2支持部は、前記第1支持部より下方に位置し、前記シリンダライナと前記シリンダブロックとの間に設けられており、
前記第1支持部と前記第2支持部との間の前記シリンダライナの円筒側壁と前記シリンダブロックとの間であり、且つ、前記冷却水ジャケットの下方には、環状空間が形成されており、
前記第2支持部には、前記環状空間とクランク室とを連通する孔が設けられており、前記孔によって、前記クランク室内の高温のミストが前記環状空間内に流入可能となっている、ことを特徴とする内燃機関のシリンダライナ構造。
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