《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図であり、図2は、車両用運転操作補助装置1を搭載した車両の構成図である。
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。
前方カメラ20は、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等であり、前方道路の状況を画像として検出し、コントローラ50へと出力する。前方カメラ20による検知領域は車両の前後方向中心線に対して水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。
車速センサ30は、車輪の回転数や変速機の出力側の回転数を計測することにより自車両の車速を検出し、検出した自車速をコントローラ50に出力する。
コントローラ50は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1全体の制御を行う。コントローラ50は、例えばCPUのソフトウェア形態により、レーンマーカ検出部51,レーン内横位置算出部52、シート回転角算出部53、認知度算出部54およびシート回転角補正部55とを構成する。
レーンマーカ検出部51は、前方カメラ20から入力される車両前方の画像情報に画像処理を施し、自車線の車線識別線(レーンマーカ)を検出する。レーン内横位置算出部52は、レーンマーカ検出部51からの信号に基づいて、自車線のレーンマーカに対する自車両のレーン内横位置を算出する。シート回転角算出部53は、レーン内横位置算出部52で算出したレーン内横位置に基づいて、運転者用シートの左右サイド部の回転角を算出する。
認知度算出部54は、運転者が自車両周囲の状況をどれほど認識しているかを表す認知度を、自車両のレーン内横位置に基づいて算出する。シート回転角補正部55は、シート回転角算出部53で算出した左右サイド部の回転角を、認知度算出部54で算出した運転者の認知度に基づいて補正する。コントローラ50は、シート回転角補正部55で算出した左右サイド部の回転角補正値を、後述するシートサイド駆動機構70のモータ回転角に変換して出力する。このようにコントローラ50は、運転者の周囲状況に対する認知度を考慮しながら、レーンマーカに対する接近度合をシートから発生する押圧力として運転者に伝達する。
シートサイド駆動機構70は、右サイド部アクチュエータ710と左サイド部アクチュエータ720とを備えており、コントローラ50からの指令に応じて、レーンマーカに対する接近の度合をシートからの押圧力として運転者に伝達するために、シートの形状を変更する。図3(a)に、車両用運転操作補助装置1を備えた車両に搭載され、シートサイド駆動機構70によって形状制御される運転者用シート71の構成を示す。図3(b)は図3(a)に示すシート71のA−A断面図を示す。
図3(a)に示すように、シート71は、クッション部72,背もたれ部73,およびヘッドレスト74から構成される。第1の実施の形態においては、シートサイド駆動機構70の右サイド部アクチュエータ710および左サイド部アクチュエータ720によって、背もたれ部73の左右サイド部をそれぞれ回動することにより運転者に押圧力を与える。以下に、背もたれ部73の構成を説明する。
背もたれ部73は、シートバックフレーム73aと、左右のサイドフレーム73b、73cとを備え、これらのフレーム73a〜73cをウレタンパッド75でカバーしている。シートバックフレーム73aには、ウレタンパッド75を支持するスプリング73dが取り付けられている。
右サイド部アクチュエータ710および左サイド部アクチュエータ720は、それぞれ背もたれ部73の左右サブフレーム73b、73cを回動するモータユニット73e、73fから構成される。背もたれ部73に取り付けられたモータユニット73e、73fの回転トルクは、トルクケーブル73g、73hを介してそれぞれサブフレーム73b、73cに伝えられ、左右サブフレーム73b、73cをシートバックフレーム73aの左右端を中心としてそれぞれ回転させる。図3(b)に示すように、左右サブフレーム73b、73cはシート71の形状を変更しないときのの姿勢から、シートバックフレーム73aに対して略垂直になる角度まで回転する。
シートサイド駆動機構70は、コントローラ50からの指令に応じてモータユニット73e、73fをそれぞれ制御し、背もたれ部73の左右サイド部73i、73jをそれぞれ回転させる。背もたれ部73の左右サイド部73i、73jは運転者に押しつけられ、または運転者から離れるように回転し、運転者の脇腹を押すことにより、レーンマーカに対する接近状態を運転者に伝達する。
次に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を説明する。まず、その概要を説明する。
コントローラ50は、自車両がレーンマーカに接近して自車線から逸脱するリスクが高くなると、シート71の右サイド部73iまたは左サイド部73jから押圧力を発生し、運転者にリスク情報を伝達する。一般的に、図4(a)に示すようにリスクが高くなるほど情報伝達の必要度(必要性)は高くなる。しかし、認知度が高く、運転者が周囲の状況を充分に把握している場合は、図4(b)に示すように情報伝達の必要度が低くなる。認知度を考慮しないで不必要な情報伝達を行うと、運転者にわずらわしさを与えてしまう可能性がある。
リスクに関する情報伝達量は、図4(c)に示すようにリスクが高いほど増加する。運転者にわずらわしさを与えないためには、図4(c)(d)に示すように認知度の高さに応じて情報伝達量を一様に低下することが考えられる。しかし、情報伝達量を一様に低下していては、とくにリスクが高い場合に必要な情報伝達を確実に行うことができない可能性がある。
そこで、第1の実施の形態においては、運転者にわずらわしさを与えないように周囲状況に対する運転者の認知度に応じて情報伝達量を調整しながら、リスクが高い場合には確実な情報伝達を行えるように制御を行う。具体的には、図4(c)に一点鎖線で示すように、認知度が高い場合は、リスクが小さいときは情報伝達量を小さくし、反対にリスクが大きいときには情報伝達量を大きくして確実な情報伝達を実現する。
以下に、車両用運転操作補助装置1の動作を図5を用いて詳細に説明する。図5は、第1の実施の形態による車両用運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
ステップS101では、自車両が走行する車線のレーンマーカを検出する。具体的には、前方カメラ20によって検出される自車両前方領域の画像信号に画像処理を施し、自車両が走行する車線のレーンマーカを認識する。
ステップS102では、ステップS101で認識したレーンマーカと自車両との相対位置関係を算出する。具体的には、自車両前方領域の画像情報に基づいてレーン内における自車両の横位置Xを算出する。ここでは図6に示すように、自車線のレーン中央から自車両の中心までの距離をレーン内横位置Xとする。レーン内横位置Xは、自車線のレーン中央を0として、右方向を正の値で表す。従って、車線幅をWLとすると、自車両の右側のレーンマーカ、すなわちレーン右端ではX=WL/2,自車両の左側のレーンマーカ、すなわちレーン左端ではX=−WL/2と表される。レーン内横位置Xは、自車両がレーンマーカに接近して自車線から逸脱するリスクを表しており、走行環境に関する自車両のリスク度であるといえる。
ステップS103では、運転者の運転操作の安定度に基づいて自車両の走行状況に対する運転者の認知度Pを算出する。運転操作が安定しているほど運転者が状況を正確に認識しながら走行していると判断し、認知度Pが高いと判断する。ここでは、図7に示すような自車両のレーン内横位置Xの時間変化から運転操作の安定度を判断し、認知度Pを算出する。
まず、現在から過去の一定期間T1(例えば10秒)のレーン内横位置Xの標準偏差W_STを(式1)から算出する。
図8に、レーン内横位置Xの標準偏差W_STと運転者の認知度Pとの関係を示す。図8に示すように標準偏差W_STが小さく運転操作が安定しているほど、運転者の認知度Pが高くなるように設定する。標準偏差W_STを用いた認知度Pの算出式は以下の(式2)で表される。
・W_ST<W_ST0
P=P1
・W_ST0≦W_ST≦W_ST1
P=((P0-P1)・W_ST+(P1・W_ST1-P0・W_ST0))/(W_ST1-W_ST0)
・W_ST1<W_ST
P=P0 ・・・(式2)
ここで、P1は、運転者の認知度Pが高レベルであるか否かを判定するためのしきい値、P0は運転者の認知度Pの下限を規定する所定値であり、それぞれ適切な値を設定しておく。W_ST0,W_ST1は、所定値P1,P0に対応するように予め設定しておく。
ステップS104では、ステップS102で算出した自車両のレーン内横位置Xに基づいて、シート71の左右サイド部73i、73jの回転角θを算出する。ここでは、右サイド部73iの回転角θR、および左サイド部73jの回転角θLをそれぞれ算出する。なお、回転角θR、θLは、図3(b)に示すように左右サイド部73i、73jが最も外側にあるとき、すなわち運転者から最も離れた位置において、それぞれ基準値0とする。回転角θR、θLが増加すると左右サイド部73i、73jがそれぞれ内側、すなわち運転者側に傾く。左右サブフレーム73b、73cがシートバックフレーム73aに対して略垂直となる位置を、回転角θR、θLの最大値θmaxとする。
図9に、基準となるレーン内横位置Xと回転角θR、θLとの関係を示す。自車両がレーン右端に接近するほど、右サイド部73iの回転角θRが増加するとともに左サイド部73jの回転角θLが低下する。反対に、自車両がレーン左端に接近するほど、左サイド部73jの回転角θLが増加するとともに、右サイド部73iの回転角θRが低下する。レーン内横位置Xがレーン右端に到達するとθR=θmax、θL=0となり、レーン左端に到達するとθR=0,θL=θmaxとなる。自車両が車線中央を走行している場合(X=0)は、回転角θR,θL=θ0となり、左右サイド部73i、73jから同等の押圧力が発生する。
ステップS105では、ステップS104で算出した左右サイド部73i,73jの回転角θR,θLを、ステップS103で算出した運転者の認知度Pに基づいて補正する。具体的には、左右サイド部73i,73jの回転角θR,θLを増加させ始めるレーン内横位置Xの値を認知度Pに基づいて調整する。
図10に、右サイド部73iの回転角θRの増加を開始するレーン内横位置Xを表す補正量Xaと、認知度Pとの関係を示す。認知度Pが高くなるほど補正量Xaを大きくして回転角θRの増加開始位置をレーン左端から遠ざける。認知度Pを用いた補正量Xaの算出式は以下の(式3)で表される。
・P≦P0
Xa=-WL/2
・P0<P<P1
Xa=((Wa_max+WL/2)・P-(P0・Wa_max+P1・WL/2))/(P1-P0)
・P1≦P
Xa=Wa_max ・・・(式3)
ここで、Wa_maxは補正量Xaの最大値であり、認知度Pが高レベルの場合にレーン中央付近で不必要な情報伝達を行って運転者にわずらわしさを与えないように予め適切な値を設定しておく。なお、左サイド部73jの回転角θLについての補正量Xbは、Xb=-Xaとする。
つぎに、認知度Pに基づいて設定した補正量Xa,Xbに応じて左右サイド部73i,73jの回転角θR,θLを補正する。具体的には、自車両がレーン右端に接近していく場合に、右サイド部73iの回転角θRがレーン内横位置X=Xaから増加し始め、レーン右端で最大値θmaxになるとともに、左サイド部73jの回転角θLが徐々に低下してレーン内横位置X=Xbで0になるように、回転角θR,θLの補正値θRc,θLcを設定する。自車両がレーン左端に接近していく場合はこの反対である。
回転角補正値θRc,θLcは、以下の(式4)で表される。
θRc=2θmax/(WL-2Xa)・(X-Xa)
θLc=2θmax/(WL+2Xb)・(-X+Xb) ・・・(式4)
ステップS106では、ステップS105で算出した回転角補正値θRc、θLcに対応するモータ回転角信号を、シートサイド駆動機構70に出力する。シートサイド駆動機構70はコントローラ50からの信号に基づいて、右サイド部73iのモータユニット73eおよび左サイド部73jのモータユニット73fの駆動をそれぞれ制御する。これにより、今回の処理を終了する。
以下に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の作用を説明する。
図10に示すように運転者の認知度PがP0よりも小さい領域Aでは補正量Xa=−WL/2,Xb=WL/2であるので、回転角補正値θRc,θLcは図9と同様に変化する。すなわち、自車両がレーン右端に接近するときは、回転角補正値θRcが増加して右サイド部73iからの押圧力が増加するとともに、回転角補正値θLcが低下して左サイド部73jからの押圧力が減少する。
自車両のレーン内横位置Xがレーン右端WL/2に達すると、右サイド部73iからの押圧力は最大、左サイド部73jからの押圧力は最小となる。同様に、自車両がレーン左端に接近するときは、左サイド部73jからの押圧力が増加するとともに、右サイド部73iからの押圧力が減少する。自車両のレーン内横位置Xがレーン左端−WL/2に達すると、左サイド部73jからの押圧力は最大、右サイド部73iからの押圧力は最小となる。自車両の中心がレーン中央にあるときは、回転角補正値θRc、θLcがともにθ0となり、右サイド部73iおよび左サイド部73jから同等の押圧力が発生する。
このように、運転者の認知度Pが低い場合はレーン内横位置Xに応じて左右両方のサイド部73i、73jから押圧力を発生することにより、レーンマーカへの接近の度合を運転者に確実に知らせるようにする。接近方向と同方向のシートサイド部からの押圧力を増加すると同時に、反対側のシートサイド部からの押圧力を減少することで接近側のシートサイド部からの押圧力を相対的に高め、レーンマーカへの接近状態を一層確実に運転者に知らせることができる。
運転者の認知度Pが中程度の場合、とくに図10に示すように認知度Pが領域Bにある場合、自車両のレーン内横位置Xに対して回転角補正値θRc、θLcは図11に示すように変化する。このとき補正量Xa、Xbはそれぞれ、-WL/2<Xa<0、0<Xb<WL/2である。したがって、自車両がレーン右端に接近していく場合、レーン内横位置X=Xaで右サイド部73iから押圧力が発生し始め、レーン右端に到達すると右サイド部73iから最大の押圧力が発生する。このとき、左サイド部73jからの押圧力は徐々に減少し、レーン横位置X=Xbで0になる。同様に、自車両がレーン左端に接近していく場合、レーン内横位置X=Xbで左サイド部73jから押圧力が発生し始め、レーン左端に到達すると左サイド部73jから最大の押圧力が発生する。このとき、右サイド部73iからの押圧力は徐々に減少し、レーン内横位置X=Xaで0になる。
このように、認知度Pが中程度の領域Bにある場合は、左右両方のサイド部73i、73jから押圧力を発生させるが、左右両方のサイド部73i,73jが同時に作動する範囲を限定して情報伝達量を制限することにより、過剰な情報提供を避けるようにする。
認知度Pが中程度で、とくに図10に示す点Cに相当する場合(認知度P=Pa)、補正量Xa,Xb=0となる。このとき、自車両のレーン内横位置Xに対して回転角補正値θRc、θLcは図12に示すように変化する。自車両がレーン右端に接近していく場合、レーン内横位置X=0で、すなわちレーン中央から右サイド部73iの押圧力が発生し始め、レーン右端に到達すると右サイド部73iからの押圧力が最大となる。このとき、左サイド部からの押圧力は発生しない。自車両がレーン左端に接近していく場合は、レーン内横位置X=0で、すなわちレーン中央から左サイド部73jの押圧力が発生し始め、レーン左端に到達すると左サイド部73jからの押圧力が最大となる。このとき、右サイド部73iからの押圧力は発生しない。
このように、認知度P=Paの点Cに相当する場合は、レーン内横位置Xに応じて左右サイド部73i,73jの一方が作動する。左右両側のサイド部73i,73jが同時に作動する領域がなくなり、情報伝達量はより少なくなっている。
図10に示す領域Dのように認知度Pが高い場合(P>Pa)、補正量Xa,Xbは、それぞれ0<Xa≦Wa_max、-Wa_max≦Xb<0である。この場合、レーン内横位置Xに対する回転角補正値θRc,θLcは図13に示すように変化する。すなわち、レーン内横位置XがXb<X<Xaで自車両がレーン中央付近を走行している場合、左右いずれのサイド部73i,73jからも押圧力が発生しない。ただし、自車両がレーン端に接近すると、接近しているレーンマーカと同方向のサイド部からの押圧力が増加する。このときの押圧力の増加率(傾き)は、認知度Pが低い場合や中程度の場合に比べて大きく設定されているので、押圧力の増加によって運転者に与えられる刺激が急に大きくなる。これにより、認知度Pが高い場合に、リスクの小さいレーン中央付近での情報伝達量を小さくしてわずらわしさを与えることを低減しながら、リスクの大きいレーン端付近での情報伝達を確実に行うことができる。
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置1は、自車両周囲の走行環境に関するリスク度を算出し、リスク度を触覚情報として運転者に伝える。さらに、自車両周囲の走行環境に対する運転者の認知度Pを算出し、リスク度を運転者に伝えるための情報伝達量を、運転者の認知度Pに応じて補正する。リスク度が高いときに、その情報を運転者に確実に伝えるために情報伝達量を不必要に大きくすると、運転者が状況を認知している場合には運転者にわずらわしさを与えてしまう。運転者に認知度Pに応じて情報伝達量を補正することにより、運転者にわずらわしさを与えることなく適切な情報伝達を行うことができる。また、リスク度として自車両のレーン内横位置Xを算出し、レーン内横位置をシート71の左右サイド部73i,73jからの押圧力として運転者に伝達することにより、運転者にわかりやすい情報伝達を行うことができる。
(2)コントローラ50は、リスク度が高レベルの場合は、認知度Pが高くなるほど情報伝達量の変化率を大きくする。具体的には、図13に示すようにレーン内横位置Xがレーン端に接近している場合に、認知度Pが高くなるほどレーン内横位置Xの変化に対する回転角補正値θRc,θLcの変化率を大きくする。これにより、認知度Pが高い場合は、リスク度が低レベルのレーン中央付近では押圧力が発生しないが、リスク度が高くなると認知度Pが低い場合に比べて押圧力が急に増加する。これにより、運転者にわずらわしさを与えることを防止しながら、リスクが高まった場合には確実に情報伝達を行うことができる。また、コントローラ50は、認知度Pが高いほど情報伝達量が小さくなるように補正する。具体的には、図10に示すように認知度Pが高いほど補正量Xa,Xbを大きくして左右両側のサイド部73i,73jから同時に押圧力が発生する領域を小さくすることにより、運転者に伝えられる情報伝達量を低減する。これにより、運転者が車両周囲の状況を認識している場合に、運転者にわずらわしさを与えることなく適切な情報伝達を行うことができる。
(3)認知度算出部54は、自車線における自車両の横位置Xの標準偏差W_STに基づいて運転者の認知度Pを算出する。具体的には、図8に示すように標準偏差W_STが大きいほど認知度Pを小さくする。これにより、運転者の運転操作、および運転操作の結果がどれほど安定しているかに基づいて、走行環境についての運転者の認知度Pを正確に算出することができる。
(4)コントローラ50は、自車両のレーン内横位置Xに応じた触覚情報を運転者に伝達し始めるときのレーン内横位置X、すなわち回転角θR,θLを増加し始めるときのレーン内横位置Xを、認知度Pに応じて調整する。具体的には、図10に示すように認知度Pが高いほど回転角補正量Xa,Xbを大きくして、回転角θR,θLが増加し始めるときのレーン内横位置Xを自車両が接近する方向のレーンマーカ側にずらす。これにより、認知度Pが高くなるほど左右両側のサイド部73i,73jから同時に押圧力が発生する範囲が小さくなり、運転者にわずらわしさを与えることなく適切な情報伝達を行うことができる。
(5)シート71の左右サイド部73i,73jは、レーン内横位置Xおよび認知度Pに応じて設定される回転角補正値θRc,θLcに応じてそれぞれ独立して駆動するように構成されているので、自車両の左右方向に存在するレーン端に対する接近状態を運転者にわかりやすく伝達することができる。
《第2の実施の形態》
以下に、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
第2の実施の形態においては、運転者の認知度Pが所定値P1を超える高レベルの場合に、より詳細に認知度Pを判定する。認知度Pは図14のマップに従って、自車両のレーン内横位置Xの標準偏差W_STに基づいて判定される。さらに、図15に示すように標準偏差W_STの時間変化を計測し、認知度Pが高レベルに達してからの経過時間、すなわち高レベルの持続時間Tkを算出する。認知度Pが高レベルに達してからは、持続時間Tkに応じてさらに認知度Pを定義する。
以下に、第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を図16を用いて詳細に説明する。図16は、第2の実施の形態による車両用運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS201〜S203での処理は、図5に示したステップS101〜S103での処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS204では、ステップS203で算出した認知度Pが所定値P1を超える高レベルであるか否かを判定する。ここで、所定値P1は、図14に示したようにレーン内横位置Xの標準偏差W_STが所定値W_ST0を下回る場合の認知度Pである。ステップS204が肯定判定され、認知度Pが高レベルである場合は、ステップS205へ進む。ステップS205では図15に示すように認知度Pが高レベルに達してからの継続時間、すなわち高レベルの持続時間Tkを算出する。
つづくステップS206では、ステップS205で算出した高レベルの持続時間Tkに基づいて、高レベルの場合の認知度Pを再度算出する。図17に、高レベルの認知度Pの持続時間Tkと認知度Pとの関係を示す。図17に示すように、持続時間Tkが長くなるほど、認知度PはP1からさらに高くなる。高レベルの認知度Pの算出式は以下の(式5)で表される。
・Tk<Tk0
P=P1
・Tk0≦Tk<Tk1
P=((P2-P1)・Tk+(P1・Tk1-P2・Tk0))/(Tk1-Tk0)
・Tk1≦Tk
P=P2 ・・・(式5)
ここで、P2は、運転者の認知度Pの上限を規定する所定値である。Tk0,Tk1は、所定値P1,P2に対応するように予め設定しておく。
一方、ステップS204で、認知度Pが高レベルではないと判定された場合は、ステップS203で算出された認知度Pをそのまま使用する。
ステップS207では、ステップS202で算出されたレーン内横位置Xに基づいて左右サイド部73i,73jの回転角θR,θLを算出する。続くステップS208では、ステップS203またはステップS206で算出された認知度Pに基づいて、左右サイド部73i,73jの回転角θR,θLを補正する。
まず、認知度Pに基づいて、レーン内横位置Xに対する回転角θR,θLの増加開始位置を表す補正値Xa,Xbを算出する。図18に、認知度Pと右サイド部73iの回転角θRについての補正量Xaとの関係を示す。認知度Pに基づく補正量Xaの算出式は、以下の(式6)で表される。
・P≦P0(領域A)
Xa=-WL/2
・P0<P≦P1(領域B+点C)
Xa=(WL/2・P-WL/2・P1)/(P1-P0)
・P1<P<P2
Xa=(Wa_max・P-Wa_max・P1)/(P2-P1)
・P2≦P
Xa=Wa_max ・・・(式6)
このように、認知度Pが高くなるほど補正量Xaが大きくなり、回転角θRの増加開始位置の調整量が大きくなる。認知度P=P2で補正量Xaは最大値Wa_maxに設定される。図18に示すように、認知度Pの上限を認知度Qとする。なお、左サイド部73jの回転角θLについての補正量Xbは、Xb=-Xaである。
つぎに、認知度Pに基づいて設定した補正量Xa,Xbに応じて、上述した(式4)を用いて左右サイド部73i,73jの回転角θR,θLを補正し、回転角補正値θRc,θLcを算出する。
ステップS209では、ステップS208で算出した回転角補正値θRc,θLcに対応するモータ回転角信号を、シートサイド駆動機構70に出力する。シートサイド駆動機構70はコントローラ50からの信号に基づいて、右サイド部73iのモータユニット73eおよび左サイド部73jのモータユニット73fの駆動をそれぞれ制御する。これにより、今回の処理を終了する。
以下に、第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の作用を説明する。
図18に示したように、認知度P=P1のときに補正量Xa=0,Xb=0となる。このときのレーン内横位置Xに対する回転角補正値θRc,θLcを図19に示す。図19に示すように、自車両が車線右側領域(レーン内横位置X>0)でレーン右端に接近していくにつれて、右サイド部73iからの押圧力が大きくなる。一方、自車両が車線左側領域(レーン内横位置X<0)でレーン左端に接近していくにつれて、左サイド部73jからの押圧力が大きくなる。左右サイド部73i,73jが同時に作動する領域がないので、過剰な情報の提供を防止することができる。
認知度P>P1の領域Dにおけるレーン内横位置Xに対する回転角補正値θRc,θLcを図20に示す。図20に示すように、認知度Pが高レベルの場合、レーン中央付近では左右いずれのサイド部73i.73jからも押圧力が発生しない。認知度Pが高レベルの場合はその持続時間Tkを考慮した、より詳細な認知度Pの設定を行っているので、運転者の認知度Pが高いにも関わらず過剰な情報を提供してしまうことを防止できる。なお、自車両がレーン端に接近してレーン内横位置Xが±Wa_maxを超えると、接近方向のレーンマーカと同方向のサイド部から押圧力が発生する。このときの押圧力の増加率は認知度Pが低い場合や中程度の場合よりも大きいので、レーン端に接近していることを確実に運転者に知らせることができる。
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
コントローラ50は、認知度Pが所定値P1以上の高レベルの場合に、その持続時間Tkに応じて認知度Pを補正する。具体的には、所定値P1以上の高レベルの持続時間Tkが長いほど、認知度Pがさらに高くなるように設定する。したがって、所定値P1未満の中レベルおよび低レベルの場合はレーン内横位置Xの標準偏差W_STの関数として認知度Pが定義され、所定値P1以上の高レベルでは持続時間Tkの関数として認知度Pが定義される。認知度Pが高レベルの場合に持続時間Tkの関数として定義することにより、高レベルの認知度Pをより詳細に算出し、不必要な情報伝達を防止することができる。
《第3の実施の形態》
以下に、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図21に、第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の構成を示すシステム図を示す。図21において、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
図21に示すように、第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置2は、GPS受信機を備えたナビゲーションシステム40をさらに備えている。コントローラ50Aは、レーンマーカ検出部51,レーン内横位置算出部52、シート回転角算出部53、認知度算出部54、シート回転角補正部55および道路曲率算出部56とを備えている。
道路曲率算出部56は、道路情報をナビゲーションシステム40から読み込み、自車両が走行する道路の道路曲率を検出する。認知度算出部54は、自車両のレーン内横位置Xに基づいて運転者の認知度Pを算出し、さらに認知度Pが高レベルの場合は、高レベルの持続時間Tkと道路曲率とに基づいて認知度Pを算出する。
以下に、第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の動作を図22を用いて詳細に説明する。図22は、第3の実施の形態による車両用運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS301〜S302での処理は、図5に示したステップS101〜S102での処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS303では、ナビゲーションシステム40から得られる道路情報に基づいて、自車両が走行する道路の道路曲率ρを算出する。道路曲率ρは、図23に示すように右カーブの場合を正の値、左カーブの場合を負の値で表す。
ステップS304では、ステップS302で算出した自車両のレーン内横位置Xに基づいて運転者の認知度Pを算出する。ここでは、レーン内横位置Xの標準偏差W_STに基づいて図8に示すマップから認知度Pを算出する。ステップS305では、ステップS304で算出した認知度Pが所定値P1を超える高レベルであるか否かを判定する。認知度Pが高レベルである場合は、ステップS306へ進み、認知度Pが高レベルに達してからの継続時間、すなわち高レベルの持続時間Tkを算出する。
つづくステップS307では、ステップS303で算出した道路曲率ρおよびステップS306で算出した高レベルの持続時間Tkに基づいて、高レベルの場合の認知度Pを再度算出する。図24に、認知度高レベルの持続時間Tkと認知度Pとの関係を示す。道路曲率ρが所定値|ρ0|よりも小さい場合は、図24に破線で示すように持続時間Tkが長くなるほど認知度Pを徐々に大きくする。道路曲率ρが所定値|ρ0|以上の場合、すなわち自車両が急カーブを走行している場合は、図24に実線で示すように認知度Pを所定値P1に固定する。
一方、ステップS305で、認知度Pが高レベルではないと判定された場合は、ステップS304で算出された認知度Pをそのまま使用する。ステップS308〜S310での処理は、ステップS104〜S106での処理と同様であるので説明を省略する。
道路曲率ρが大きく自車両が急なカーブを走行している場合は、運転者は自車両周囲の状況を認識することが困難となり認知度Pが低下していくと予測される。そこで、道路曲率ρが所定値|ρ0|を超える場合は高レベルの持続時間Tkの長さに関わらず認知度Pを所定値P1に固定する。このように、認知度Pの算出に道路曲率ρを加えることにより、環境の変化に基づいて運転者の将来の認知度Pを予測することができる。
このように、以上説明した第3の実施の形態においては、図24に示すように、自車両が走行する道路の道路曲率ρが所定値|ρ0|以上の場合、高レベルの持続時間Tkに応じた認知度Pの補正をキャンセルする。このように、認知度Pの算出に道路曲率ρ、すなわち走行環境を加味することにより、走行環境の変化に対応した情報伝達を行うことができる。
《第4の実施の形態》
以下に、本発明の第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図25に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の構成を示すシステム図を示す。図25において、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
図25に示すように、車両用運転操作補助装置3はGPS受信機を備えたナビゲーションシステム40と視線検出装置45をさらに備えている。視線検出装置45は、例えばインストルメントパネルに取り付けられた小型のCCDカメラおよび運転者の眼球に赤外線を照射する赤外発光ダイオードからなり、運転者の視線の動きを検出する。
車両用運転操作補助装置3のコントローラ50Bは、レーンマーカ検出部51、レーン内横位置算出部52、シート回転角算出部53、シート回転角補正部55、道路曲率算出部56、将来環境変化推定部57、現在認知度推定部58、および将来認知度予測部59を備えている。
道路曲率算出部56は、ナビゲーションシステム40から得られる道路情報に基づいて、自車両が走行する道路の道路曲率を算出する。将来環境変化推定部57は、道路曲率算出部56で算出された道路曲率と、レーンマーカ検出部51から入力されるセンサの確信度とに基づいて将来の環境変化を推定する。ここで、レーンマーカを検出するセンサである前方カメラ20の確信度を、センサの確信度とする。
現在認知度推定部58は、視線検出装置45からの画像信号に画像処理を施して運転者の視線方向を算出し、視線方向データから運転者の覚醒度を算出する。そして、算出した覚醒度と運転者の現在の操作安定度に基づいて、現在の運転者の認知度を推定する。将来認知度予測部59は、将来環境変化推定部57および現在認知度推定部58の推定結果に基づいて、運転者の将来の認知度を予測する。
シート回転角補正部55は、シート回転角算出部53で算出されたレーン内横位置Xに基づくシート回転角θR,θLを、将来認知度予測部59で予測された将来の認知度に基づいて補正する。コントローラ50Bは、補正されたシート回転角θR,θLに対応するモータ回転角信号を、シートサイド駆動機構70に出力する。
以下に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の動作を説明する。まず、その概要を説明する。車両用運転操作補助装置3は、自車両の走行状況に関するリスクに応じてシート71から押圧力を発生することにより、運転者に情報伝達を行っている。リスクが高くなるほど情報伝達の必要性も高くなるが、運転者が状況を認識しながら運転操作を行っている場合など、情報提供を行うことにより運転者にわずらわしさを与えてしまう可能性がある。
そこで、第4の実施の形態においては、情報伝達が必要な場合には確実に情報伝達を行い、情報伝達の必要性が低い場合にはわずらわしさを低減するような情報伝達を行う。具体的には、現在の運転者の状態と将来の環境変化に基づいて将来の運転者の状態を予測し、将来の運転者の状態に応じた情報伝達を行う。将来の運転者の状態を表す将来の認知度は、図26に示すように現在の運転者の状態を表す現在の認知度と将来の環境変化とに基づいて推定される。
図26に示すように、現在の運転者の認知度が高い場合、将来の環境変化が小さいと将来の認知度がやや高いと推定する。将来の環境変化が大きい場合は、視覚的な変化が大きいため運転者のその変化に気づきやすいと考えられるので、将来の認知度が高いと推定する。一方、現在の運転者の認知度が低い場合、将来の環境変化が小さいと将来の認知度が低いと推定し、将来の環境変化が大きいと将来の認知度が中程度と推定する。
そして、推定した将来の認知度と現在のリスクとに基づいて、図27および図28に示すように情報伝達量を設定する。将来の認知度が高く、現在のリスクが小さい場合は情報伝達量を小さく、現在のリスクが大きい場合は情報伝達量を大きくする。将来の認知度が低く、現在のリスクが小さい場合は情報伝達をやや小さく、現在のリスクが大きい場合は情報伝達量を中程度にする。
以下に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の動作を図29を用いて詳細に説明する。図29は、第4の実施の形態による車両用運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS401〜S402での処理は、図5に示したステップS101〜S102での処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS403では、ナビゲーションシステム40から得られる道路情報に基づいて、自車両が走行する道路の道路曲率ρを算出する。道路曲率ρは右カーブの場合を正の値、左カーブの場合を負の値で表す。
ステップS404では、視線検出装置45で検出される運転者の視線方向およびステップS402で算出される自車両のレーン内横位置Xに基づいて、現在の運転者の状態を表す現在の認知度Paを算出する。ここでの処理を、図30のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS451で、運転者の現在の操作安定度W1を算出する。図31に示すように現在から過去の所定時間T1(例えば10秒)内におけるレーン内横位置Xの標準偏差W_STを算出する。レーン内横位置Xの標準偏差W_STは、以下の(式7)から算出する。
そして、標準偏差W_STの逆数を現在の操作安定度W1として算出する。すなわち、レーン内横位置Xの標準偏差W_STが小さいほど操作安定度W1が高いと評価する。
ステップS452では、視線検出装置45による撮像画像に基づいて運転者の覚醒度W2を判定する。運転者の覚醒度W2の判定方法は、例えば特開平9−20157号公報に開示されている手法を用いる。具体的には、視線検出装置45によって撮像される画像に所定の画像処理を施し、運転者の視線方向データを算出する。そして、算出した視線方向データを、覚醒時の基準パターンと比較することによって、運転者の覚醒度W2を判定する。覚醒度W2が低いほど集中しておらず、漫然と運転していることを表している。
ステップS453では、ステップS451で算出した現在の操作安定度W1と、ステップS452で判定した運転者の覚醒度W2とに基づいて、現在の運転者状態を表す現在の認知度Paを推定する。図32に、操作安定度W1と覚醒度W2に基づく現在の認知度Paの推定マップを示す。基本的には、操作安定度W1および覚醒度W2が高くなるほど現在の認知度Paが高くなるように設定している。ただし、運転者の覚醒度W2が低く、運転操作に集中していないと推定される場合は、操作安定度W1が高くても認知度が低くなるように補正している。
このようにステップS404で現在の認知度Paを推定した後、ステップS405へ進む。
ステップS405では、ステップS403で算出される道路曲率ρと、レーンマーカを検出するセンサである前方カメラ20の確信度に基づいて、将来の環境変化の度合いを表す将来の環境変化度Pbを算出する。ここでの処理を、図33のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS461で、自車両が走行する道路の将来の道路曲率ρ2を算出する。ここでは、図34に示すように、自車両の現在位置から所定距離L前方の将来位置における道路曲率ρ2を、ナビゲーションシステム40のデータベースから取得する。所定距離Lは、現在の自車速Vsで走行した場合に所定時間T2(例えば5秒)で自車両が進む距離であり、以下の(式8)で算出する。
L=Vs・T2 ・・・(式8)
ステップS462では、道路曲率ρの変化を算出する。具体的には、現在から過去の所定時間T1内における平均道路曲率(道路曲率ρの移動平均)ρ0を算出し、ステップS461で算出した将来の道路曲率ρ2と平均道路曲率ρ0との差を、曲率変化δρとして算出する。曲率変化δρは、以下の(式9)から算出できる。
δρ=|ρ2−ρ0| ・・・(式9)
ステップS463では、ステップS462で算出した曲率変化δρの逆数1/δρを、将来の環境の安定度として算出する。
ステップS464では、レーンマーカを検出する前方カメラ20の確信度Sを算出する。ここで、確信度Sは、前方カメラ20によって検出されるレーンマーカの状態にどれだけの不確実性が含まれているかを示す値である。確信度Sが低いと、センサによって検出される走行状況が確実ではない可能性が高いことを示している。そこで、前方カメラ20で検出されるレーンマーカがどれほどレーンマーカらしいかに基づいて、前方カメラ20の確信度Sを算出する。例えば、レーンマーカらしさが高いほど、すなわち撮像画像に含まれるラインがレーンマーカらしい形状を有しているほど、確信度Sが高くなるように設定する。
ステップS465では、ステップS463で算出した将来の環境安定度1/δρと、ステップS464で算出したセンサ確信度Sとに基づいて、将来の環境変化度Pbを推定する。図35に、環境安定度1/δρとセンサ確信度Sに基づく将来の環境変化度Pbの推定マップを示す。基本的には、将来の環境安定度1/δρが低いほど将来の環境変化度Pbが大きくなるように設定している。ただし、センサ確信度Sが低い場合は、環境安定度1/δρが低いほど将来の環境変化度Pbがより大きくなるように、また、環境安定度1/δρが高いほど将来の環境変化度Pbがより小さくなるように補正している。
このようにステップS405で将来の環境変化度Pbを推定した後、ステップS406へ進む。
ステップS406では、ステップS404で算出した現在の認知度Paと、ステップS405で算出した将来の環境変化度Pbとに基づいて、運転者の将来の認知度Pfを予測する。図36に、現在の認知度Paと将来の環境変化度Pbに基づく将来の認知度Pfの推定マップを示す。図36に示すように、現在の認知度Paおよび将来の環境変化度Pbが大きくなるほど、将来の認知度Pfが大きくなると予測する。
つづくステップS407では、ステップS402で算出した自車両のレーン内横位置Xに基づいて基本となる情報伝達量を算出する。ここでは、図9に示したように、自車両がレーン右端に接近するほどシート71の右サイド部73iの回転角θRが増加するように、また、自車両がレーン左端に接近するほど左サイド部73jの回転角θLが増加するように設定する。
ステップS408では、ステップS407で算出した回転角θR,θLを、ステップS406で算出した運転者の将来の認知度Pfに基づいて補正する。まず、将来の認知度Pfに基づいて、レーン内横位置Xに対する回転角θR,θLの増加開始位置を決定する補正量Xa、Xbを算出する。
図37に、将来の認知度Pfと右サイド部73iの回転角θRについての補正量Xaとの関係を示す。図37に示すように、将来の認知度Pfが所定値Pf1以下の場合は補正量Xa=-WL/2に固定する。将来の認知度Pfが高くなるほど補正量Xaを大きくし、将来の認知度Pfが所定値Pf2(>Pf1)以上となると、補正量Xa=Wa_maxに固定する。将来の認知度Pf=Pf3のときに、補正量Xa=0となる。左サイド部73jの回転角θLについての補正量Xbは、Xb=-Xaである。
なお、図37においてPf2は、運転者の認知度Pfが高レベルであるか否かを判定するためのしきい値、Pf1は運転者の認知度Pfの下限を規定する所定値であり、それぞれ適切な値を設定しておく。
このように算出した補正量Xa,Xbを用いて回転角θR,θLを補正し、回転角補正値θRc,θLcを算出する。具体的には、自車両がレーン右端に接近していく場合に、右サイド部73iの回転角θRがレーン内横位置X=Xaから増加し始め、レーン右端で最大値θmaxになるとともに、左サイド部73jの回転角θLが徐々に低下してレーン内横位置X=Xbで0になるように、回転角θR,θLの補正値θRc,θLcを設定する。自車両がレーン左端に接近していく場合はこの反対である。
ステップS409では、ステップS408で算出した回転角補正値θRc,θLcに対応するモータ回転角信号をシートサイド駆動機構70に出力する。シートサイド駆動機構70はコントローラ50Bからの信号に基づいて、右サイド部73iのモータユニット73eおよび左サイド部73jのモータユニット73fの駆動をそれぞれ制御する。これにより、今回の処理を終了する。
以下に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の作用を説明する。
運転者の将来の認知度Pfが所定値Pf1以下の領域Aでは補正量Xa=−WL/2,Xb=WL/2であるので、レーン内横位置Xに対して回転角補正値θRc,θLcは図38に示すように変化する。すなわち、自車両がレーン右端に接近するときは、レーン内横位置X=-WL/2から右サイド部73iの押圧力を増加し始めるとともに、左サイド部73jの押圧力を減少し始める。自車両のレーン内横位置Xがレーン右端WL/2に達すると、右サイド部73iからの押圧力を最大、左サイド部73jからの押圧力を最小にする。同様に、自車両がレーン左端に接近するときは、レーン内横位置X=WL/2から左サイド部73jの押圧力を増加し始めるとともに、右サイド部73iの押圧力を減少し始める。自車両のレーン内横位置Xがレーン左端−WL/2に達すると、左サイド部73jからの押圧力を最大、右サイド部73iからの押圧力を最小にする。
このように、運転者の将来の認知度Pfが低い場合はレーン内横位置Xに応じて左右両方のサイド部73i、73jから押圧力を発生することにより、レーンマーカへの接近の度合を運転者に確実に知らせるようにする。接近方向と同方向のシートサイド部からの押圧力を増加すると同時に、反対側のシートサイド部からの押圧力を減少することで接近側のシートサイド部からの押圧力を相対的に高め、レーンマーカへの接近状態を一層確実に運転者に知らせることができる。
運転者の将来の認知度Pfが中程度の場合(領域B,Pf1<Pf<Pf3)、自車両のレーン内横位置Xに対して回転角補正値θRc、θLcは図39に示すように変化する。このとき補正量Xa、Xbはそれぞれ、-WL/2<Xa<0、0<Xb<WL/2である。したがって、自車両がレーン右端に接近していく場合、レーン内横位置X=Xaで右サイド部73iの押圧力が増加し始め、レーン右端に到達すると右サイド部73iから最大の押圧力が発生する。このとき、左サイド部73jからの押圧力は徐々に減少し、レーン横位置X=Xbで0になる。同様に、自車両がレーン左端に接近していく場合、レーン内横位置X=Xbで左サイド部73jの押圧力が増加し始め、レーン左端に到達すると左サイド部73jから最大の押圧力が発生する。このとき、右サイド部73iからの押圧力は徐々に減少し、レーン内横位置X=Xaで0になる。
このように、認知度Pが領域Bにある場合は、左右両方のサイド部73i、73jから押圧力を発生させるが、左右両方のサイド部73i,73jが同時に作動する範囲を限定して情報伝達量を制限することにより、過剰な情報提供を避けるようにする。
認知度Pが所定値Pf3に相当する場合(点C)、自車両のレーン内横位置Xに対して回転角補正値θRc、θLcは図40に示すように変化する。このときの補正量Xa,Xb=0であるので、自車両がレーン右端に接近していく場合、レーン内横位置X=0で右サイド部73iの押圧力が増加し始め、レーン右端に到達すると右サイド部73iからの押圧力が最大となる。このとき、左サイド部73jからの押圧力は発生しない。自車両がレーン左端に接近していく場合は、レーン内横位置X=0で左サイド部73jの押圧力が増加し始め、レーン左端に到達すると左サイド部73jからの押圧力が最大となる。このとき、右サイド部73iからの押圧力は発生しない。
このように、認知度Pf=Pf3で点Cに相当する場合は、左右両側のサイド部73i,73jをともに作動させる領域がなくなり、情報伝達量はより少なくなっている。
将来の認知度Pが高い場合(領域D,Pf>Pf3)、レーン内横位置Xに対する回転角補正値θRc,θLcは図41に示すように変化する。補正量Xa,Xbは、それぞれ0<Xa≦Wa_max、-Wa_max≦Xb<0である。レーン内横位置XがXb<X<Xaで自車両がレーン中央付近を走行している場合、左右いずれのサイド部73i,73jからも押圧力が発生しない。ただし、自車両がレーン端に接近すると、接近しているレーンマーカと同方向のサイド部からの押圧力が増加する。このときの押圧力の増加率(傾き)は、認知度Pが低い場合や中程度の場合に比べて大きく設定されているので、押圧力の増加によって運転者に与えられる刺激が急に大きくなる。これにより、レーン中央付近での情報伝達量を小さくしながら、レーン端付近で確実な情報伝達を行うことができる。
このように、以上説明した第4の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
コントローラ50Bは、運転者の現在の認知度Paと自車両周囲の将来の環境変化度Pbとに基づいて、運転者の将来の認知度Pfを算出する。そして、レーン内横位置Xに応じた情報伝達量を、将来の認知度Pfに応じて補正する。すなわち、現在のリスク度と将来の認知度Pfに基づいて情報伝達を行う。これにより、運転者が将来的に自車両周囲の状況をどれほど認識しているかという観点に基づいて、適切な情報伝達を行うことができる。また、将来の認知度Pfを現在の認知度Paと将来の環境変化度Pbとに基づいて算出するので、将来、自車両周囲の環境が変化する場合でも運転者の認知度Pfを正確に算出することができる。
《第5の実施の形態》
以下に、本発明の第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置の基本構成は、図25に示した第4の実施の形態と同様である。ここでは、第4の実施の形態との相違点を主に説明する。
第5の実施の形態においては、現在認知度推定部58で、現在の操作安定度W1のみに基づいて運転者の現在の認知度Paを算出する。したがって、現在の認知度Paを算出するときに運転者の覚醒度W2は考慮しない。
現在の操作安定度W1として、上述した(式7)を用いて現在から過去の所定時間T1内のレーン内横位置Xの標準偏差W_STを算出する。そして、図42に示すマップを用いてレーン内横位置Xの標準偏差W_STに応じた運転者の現在の認知度Paを算出する。図42に示すように、標準偏差W_STが所定値W_ST0よりも小さい場合は現在の認知度Pa=P1に固定し、標準偏差W_STが大きくなるにつれて現在の認知度Paを徐々に小さくする。標準偏差W_STが所定値W_ST1よりも大きい場合は、現在の認知度Pa=P0に固定する。
将来認知度予測部59は、上述したように算出した現在の認知度Paと、将来の環境変化度Pbとに基づいて将来の認知度Pfを算出する。シート71の左右サイド部73i,73jの回転角補正値θRc、θLcの算出方法は、上述した第4の実施の形態と同様である。
このように、現在の操作安定度W1に基づいて現在の認知度Paを算出することにより、簡単な算出式で現在の認知度Paを算出することができる。
−第5の実施の形態の変形例−
ここでは、レーン内横位置Xの標準偏差W_STに基づいて算出される現在の認知度Paが高レベルの場合に、高レベルの持続時間Tkに応じて認知度Paを再度判定する。
具体的には、図43に示すようにレーン内横位置Xの標準偏差W_STが所定値W_ST0よりも小さくなってからの経過時間、すなわち高レベルの持続時間Tkを計測する。そして、現在の認知度Paが所定値P1以上となる高レベル領域において、持続時間Tkに基づいて認知度Paを設定する。
図44に、認知度Paが高レベルの持続時間Tkと現在の認知度Paとの関係を示す。図44に示すように、持続時間Tkが所定値Tk0よりも短い場合は、認知度Pa=P1とし、持続時間Tkが長くなるにつれて認知度Paを大きくする。持続時間Tkが所定値Tk1以上となると、認知度Paを所定値P2に固定する。このように、現在の認知度Paが高レベルの領域にある場合は、その持続時間Tkに応じて、より詳細に認知度Paを設定する。
このように、高レベルについて詳細に算出された現在の認知度Paを用いて、将来の認知度Pfを詳細に算出することができる。
《第6の実施の形態》
以下に、本発明の第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図45に、第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置4の構成を示すシステム図を示す。図45において、図25に示した第4の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第4の実施の形態との相違点を主に説明する。
図45に示すように、車両用運転操作補助装置4のコントローラ50Cは、レーンマーカ検出部51、レーン内横位置算出部52、シート回転角算出部53、シート回転角補正部55、道路曲率算出部56、将来環境変化推定部57、現在認知度推定部58、将来認知度予測部59、センサ確信度算出部60、およびシート振動量算出部61を備えている。
センサ確信度算出部60は、レーンマーカを検出する前方カメラ20の確信度Sを算出し、シート振動量算出部61は、センサ確信度Sに応じてシート71の振動量を算出する。なお、第6の実施の形態において将来環境変化推定部57は、センサ確信度Sは考慮せず、将来の環境安定度のみに基づいて将来の環境変化度Pbを推定する。
シートサイド振動機構80は、シート71の左右サイド部73i,73jからそれぞれ振動を発生させる。図46(a)(b)に、シートサイド振動機構80の構成を示す。図46(b)は、図46(a)に示すシート71の背もたれ部73のA-A断面図である。背もたれ部73の左右サイド部73i,73jには、シートサイド振動機構80を構成するバイブレータ(振動子)80a,80bがそれぞれ内蔵されている。バイブレータ80a、80bは、コントローラ50Bからの信号に応じて作動し、運転者に振動を与える。
以下に、第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置4の動作を説明する。車両用運転操作補助装置4は、現在の認知度Paと将来の環境変化度Pbとから推定される運転者の将来の認知度Pfに基づいて、レーン内横位置Xに応じた左右サイド部73i,73jの回転角θR,θLを補正する。さらに、レーンマーカを検出する前方カメラ20の確信度Sに応じて、左右サイド部73i,73jから振動を発生させる。
第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置4の動作を図47を用いて詳細に説明する。図47は、第6の実施の形態による車両用運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS501〜S504での処理は、図29に示したステップS401〜S404での処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS505では、ステップS503で算出される道路曲率ρに基づいて、将来の環境変化の度合いを表す将来の環境変化度Pbを算出する。ここでの処理を、図48のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS551で、自車両の現在位置から所定距離L前方の将来位置における道路曲率ρ2を、ナビゲーションシステム40のデータベースから取得する。ステップS552では、上述した(式9)を用いて、現在から過去の所定時間T1内における平均道路曲率(道路曲率ρの移動平均)ρ0と、ステップS551で算出した将来の道路曲率ρ2との差を、曲率変化δρとして算出する。ステップS553では、ステップS552で算出した曲率変化δρの逆数1/δρを、将来の環境の安定度として算出する。
ステップS554では、ステップS553で算出した将来の環境安定度1/δρに基づいて、将来の環境変化度Pbを推定する。ここでは、将来の環境安定度1/δρが低いほど、将来の環境変化度Pbが大きくなるように設定する。
このようにステップS505で将来の環境変化度Pbを推定した後、ステップS506へ進む。ステップS506〜S509での処理は、図29のステップS406〜S409での処理と同様であるので説明を省略する。
一方、ステップS510では、レーンマーカを検出する前方カメラ20の確信度Sを算出する。上述したように、レーンマーカらしさが高いほど、すなわち撮像画像に含まれるラインがレーンマーカらしい形状を有しているほど、確信度Sが高くなるように設定する。
つづくステップS511では、ステップS510で算出したセンサ確信度Sに基づいて、左右サイド部73i,73jに内蔵されたバイブレータ80a,80bの振動量Fを算出する。図49に、センサ確信度Sと振動量Fとの関係を示す。ここで、振動量Fは、バイブレータ80a,80bに発生させる振動の振幅である。図49に示すように、センサ確信度Sが所定値S1以下となると振動を発生させる。センサ確信度Sが低くなるほど振動量Fを大きくし、センサ確信度Sが所定値S1(<S2)以下となると振動量Fを所定値F1に固定する。
ステップS512では、ステップS511で算出した振動量Fをシートサイド振動機構80に出力する。シートサイド振動機構80は、コントローラ50Cから出力される振動量Fに応じた振動を左右両側のサイド部73i,73jから発生させる。これにより、今回の処理を終了する。
このように、以上説明した第6の実施の形態においては、上述した第1〜第5の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
走行環境を検出するセンサの確信度Sは、将来の走行環境変化に影響を与えるファクターであるが、直接的にはシステム情報である。したがって、レーン内横位置Xおよび将来の認知度Pfに基づく情報伝達からは分離して運転者に伝えることにより、運転者のシステムの作動状態をわかりやすく認識させることができる。すなわち、運転者はシート71の左右両側のサイド部73i,73jから振動が発生するとセンサ確信度Sが低下していると認識することができるので、運転者はシステムを信頼し、安心して運転操作を行うことができる。
《第7の実施の形態》
以下に、本発明の第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図50に、第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置5の構成を示すシステム図を示す。図50において、図25に示した第4の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第4の実施の形態との相違点を主に説明する。
第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置5は、自車両の前後方向に関するリスクを検出し、運転者がアクセルペダルを操作する際に発生する操作反力を介して前後方向のリスクに関する情報伝達を行う。ここで、自車両の前後方向に関するリスクとして、先行車に対する自車両の接近度合を算出する。
図50に示すように、車両用運転操作補助装置5は、レーザレーダ10、車速センサ30、ナビゲーションシステム40、視線検出装置45、コントローラ50D,およびアクセルペダル反力制御装置90を備えている。コントローラ50Dは、先行車検出部62、リスクポテンシャル算出部63、ペダル反力算出部64、交差点判定部65、将来環境変化推定部57、現在認知度推定部58、将来認知度予測部59およびペダル反力補正部66を備えている。
レーザレーダ10は、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを照射して自車両の前方領域、例えば自車正面に対して±6deg 程度の領域を走査する。レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、先行車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を計測し、反射波の到達時間より、先行車までの車間距離と相対速度を検出する。検出した車間距離及び相対速度はコントローラ50Dへ出力される。
先行車検出部62は、レーザレーダ10の検出結果に基づいて、自車両前方領域に存在する先行車を検出する。リスクポテンシャル算出部63は、先行車検出部62で検出された先行車に対する自車両のリスクポテンシャルRPを算出する。ペダル反力算出部64は、リスクポテンシャル算出部63で算出されたリスクポテンシャルRPに基づいてアクセルペダルに発生させる操作反力の反力指令値を算出する。
交差点判定部65は、ナビゲーションシステム40から取得される道路情報に基づいて、自車両の前方道路に交差点が存在するかを判定する。将来環境変化推定部57は、交差点情報および先行車を検出するレーザレーダ10のセンサ確信度Sに基づいて将来の環境変化度Pbを算出する。現在認知度推定部58は、運転者の覚醒度W2とリスクポテンシャルRPに基づいて運転者の現在の認知度Paを算出する。将来認知度予測部59は、将来環境変化推定部57および現在認知度推定部58の推定結果に基づいて、運転者の将来の認知度Pfを推定する。
ペダル反力補正部66は、ペダル反力算出部64で算出されたアクセルペダル反力指令値を、運転者の将来の認知度Pfに基づいて補正する。補正後の反力指令値は、アクセルペダル反力制御装置90に出力される。
アクセルペダル反力制御装置90は、コントローラ50Dからの指令値に応じてアクセルペダル操作反力を制御する。図51に示すように、アクセルペダル91には、リンク機構を介してサーボモータ92およびアクセルペダルストロークセンサ93が接続されている。サーボモータ92は、アクセルペダル反力制御装置90からの指令に応じてトルクと回転角とを制御し、運転者がアクセルペダル91を操作する際に発生する操作反力を任意に制御する。
なお、アクセルペダル反力制御を行わない場合の通常のアクセルペダル反力特性は、例えば、アクセルペダル操作量が大きくなるほどアクセルペダル反力がリニアに大きくなるよう設定されている。通常のアクセルペダル反力特性は、例えばアクセルペダル91の回転中心に設けられたねじりバネ(不図示)のバネ力によって実現することができる。
以下に、第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置5の動作を、図52を用いて説明する。図52は、第7の実施の形態による車両用運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
ステップS601では、レーザレーダ10からの信号に基づいて自車両前方に存在する先行車を検出する。そして、自車両と検出された先行車との車間距離Dと相対速度Vr,車速センサ20によって検出される自車両の走行車速Vsを読み込む。
ステップS602では、先行車に対するリスクポテンシャルRPを算出する。リスクポテンシャルRPを算出するために、まず、先行車に対する余裕時間TTCと車間時間THWを算出する。
余裕時間TTCは、先行車に対する現在の自車両の接近度合を示す物理量であり、自車両と先行車との車間距離Dおよび相対車速Vr(=先行車速−自車速)を用いて以下の(式10)で求められる。
TTC=−D/Vr ・・・(式10)
車間時間THWは、自車両が先行車に追従走行している場合に、想定される将来の先行車の車速変化による余裕時間TTCへの影響度合、つまり相対車速Vrが変化すると仮定したときの影響度合を示す物理量である。車間時間THWは、以下の(式11)で表される。
THW=D/Vs ・・・(式11)
つぎに、余裕時間TTCと車間時間THWを用いて、先行車に対するリスクポテンシャルRPを算出する。自車両周囲のリスクポテンシャルRPは、以下の(式12)で算出することができる。
RP=a/THW+b/TTC ・・・(式12)
ここで、a、bは、車間時間THWおよび余裕時間TTCにそれぞれ適切な重み付けをするための定数であり、予め適切な値を設定しておく。定数a、bは、例えばa=1,b=8(a<b)に設定する。
ステップS603では、ステップS602で算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル91に発生させる操作反力の反力制御指令値FAを算出する。図53に、リスクポテンシャルRPとアクセルペダル反力制御指令値FAとの関係を示す。図53に示すように、リスクポテンシャルRPが所定値RPmaxよりも小さい場合は、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、大きなアクセルペダル反力を発生させるようにアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する。リスクポテンシャルRPが所定値RPmaxより大きい場合には、最大のアクセルペダル反力を発生させるように、アクセルペダル反力制御指令値FAを最大値FAmaxに固定する。
ステップS604では、ナビゲーションシステム40から得られる道路情報に基づいて、自車線の前方に存在する複数の交差点を検出し、自車両の現在位置から各交差点までの距離Lcを検出する。
ステップS605では、視線検出装置45で検出される運転者の視線方向およびステップS602で算出されるリスクポテンシャルRPに基づいて、現在の運転者の状態を表す現在の認知度Paを算出する。まず、運転者の現在の操作安定度W1として、図54に示すように現在から過去の所定時間T1(例えば10秒)内におけるリスクポテンシャルRPの標準偏差RP_STを算出する。そして、標準偏差RP_STの逆数を現在の操作安定度W1として算出する。すなわち、リスクポテンシャルRPの標準偏差RP_STが小さいほど操作安定度W1が高いと評価する。
さらに、運転者の視線方向に基づいて、上述したように運転者の覚醒度W2を算出する。現在の認知度Paは、現在の操作安定度W1と運転者の覚醒度W2とに基づいて、上述した図32のマップに従って推定する。
つづくステップS606では、ステップS604で判定された交差点情報と、先行車を検出するセンサであるレーザレーダ10の確信度Sに基づいて、将来の環境変化の度合いを表す将来の環境変化度Pbを算出する。まず、交差点情報に基づいて将来の環境の安定度を算出する。将来の環境の安定度は、図55に示すように自車両の現在位置から前方にある複数の交差点までの距離Lcに基づいて算出する。
図55に示すように、交差点が存在する場合は交差点フラグFLG=1、交差点が存在しない場合は交差点フラグFLG=0を設定する。自車両の現在位置から前方の所定距離L以内に存在する各交差点までの距離Lcを、L1,L2,・・・Lnとして算出する。ここで、所定距離Lは、現在の自車速Vsで走行した場合に所定時間T3(例えば30秒)で自車両が進む距離であり、以下の(式13)で算出する。
L=Vs・T3 ・・・(式13)
将来の環境安定度W3は、自車両の現在位置に対する交差点の存在位置、すなわち所定距離L内に存在する各交差点までの距離Lc(=L1,L2,・・・Ln)を用いて、以下の(式14)から算出する。
W3=Σ(1/L1+1/L2+・・・+1/Ln)・・・ (式14)
(式14)から算出した将来の環境安定度W3と、検出される先行車がどれほど先行車らしいかに基づいて算出されるレーザレーダ10の確信度Sとに基づいて、図35に示すマップに従って将来の環境変化度Pbを推定する。
ステップS607では、ステップS605で算出した現在の認知度Paと、ステップS606で算出した将来の環境変化度Pbとに基づいて、図36に示すマップに従って運転者の将来の認知度Pfを予測する。
ステップS608では、ステップS603で算出した反力指令値FAを、ステップS607で算出した運転者の将来の認知度Pfに基づいて補正する。ここでは、上述した図37と同様に、将来の認知度Pfが高くなるほどアクセルペダル反力指令値FAの補正量Xcが大きくなるように設定する。そして、以下の(式15)に示すように、リスクポテンシャルRPに基づいて算出したアクセルペダル反力指令値FAから、補正量Xaを引くことによってアクセルペダル反力指令値FAの補正値FAcを算出する。
FAc=FA−Xc ・・・(式15)
ステップS609では、ステップS608で算出したアクセルペダル反力指令補正値FAcを、アクセルペダル反力制御装置90へ出力する。アクセルペダル反力制御装置90は、コントローラ50Dからの信号に基づいてサーボモータ92を制御し、アクセルペダル91に発生する操作反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
このように、以上説明した第7の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
車両用運転操作補助装置5は、自車両の前後方向のリスクである先行車に対するリスクポテンシャルRPを算出し、リスクポテンシャルRPに応じてアクセルペダル操作反力を制御する。これにより、リスク情報を触覚情報として運転者にわかりやすく伝達することができる。さらに、運転者の将来の認知度Pfに基づいてアクセルペダル反力指令値FAを補正することにより、運転者が周囲の状況を認識しながら運転操作を行っている場合に過剰な情報伝達を行って運転者にわずらわしさを与えてしまうことを防止できる。
以上説明した第1から第6の実施の形態においては、レーンマーカに対する接近度合を、背もたれ部73のサイド部73i、73jを回転することによって運転者に伝達した。ただし、これには限定されず、背もたれ部73の左右サイド部73i、73jとともに、クッション部72の左右サイド部を回転させることもできる。または、クッション部72の左右サイド部のみを回転させることもできる。あるいは、レーンマーカに対する自車両の接近度合に応じて、クッション部72の左右サイド部および背もたれ部73の左右サイド部73i、73jを選択的に駆動することもできる。
また、シートサイド駆動機構70は、図3(a)(b)に示す構成には限定されない。例えば、モータユニット73f,73gの代わりに、シート71に空気袋等を内蔵してシート71の形状を変更するように構成することもできる。シート駆動機構70として空気袋を用いる場合は、運転者に対して自車両のレーン内横位置Xに応じた押圧力を与えるように、空気袋の内圧を制御する。また、第6の実施の形態で説明したバイブレータ80a、80bの設置位置も上述した例には限定されないず、バイブレータ80a,80bをクッション部72に配置したり、背もたれ部70の中央にひとつだけ配置することも可能である。あるいは、左右サイド部73i,73jを小刻みに駆動することにより振動を発生させることも可能である。
上述した第3から第6の実施の形態においては、道路曲率ρをナビゲーションシステム40から得られる道路情報に基づいて検出したが、これには限定されず、車両状態や走行環境から周知の方法により算出することも可能である。
なお、上述した第1から第6の実施の形態においては、レーンマーカに対する接近度合という自車両の左右方向のリスクをシート71からの押圧力を介して運転者に伝達し、第7の実施の形態においては、先行車に対するリスクポテンシャルRPという自車両の前後方向のリスクをアクセルペダル91からの操作反力として運転者に伝達した。これらを組み合わせて用いることももちろん可能である。
以上説明した第1から第7の実施の形態において、レーザレーダ10,車速センサ20,および前方カメラ30は走行環境検出手段として機能し、レーン内横位置算出部52およびリスクポテンシャル算出部63はリスク度算出手段として機能し、シート回転角算出部53およびペダル反力算出部64は情報伝達量算出手段として機能し、シートサイド駆動機構70およびアクセルペダル反力制御装置90は、情報伝達手段として機能し、認知度算出部54、将来環境変化推定部57、現在認知度推定部58および将来認知度予測部59は認知度算出手段として機能し、シート回転角補正部55およびペダル反力補正部66は、情報伝達量補正手段として機能することができる。ただし、これらには限定されず、情報伝達手段として、操舵反力を発生させる操舵反力制御装置やブレーキペダル反力制御装置を用いることも可能である。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。