JP4433837B2 - 走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents
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Description
図5は原子間力顕微鏡(AFM)の概略構成を説明する模式図である。この原子間力顕微鏡は、ステージ11、チューブスキャナ12、カンチレバー13、プローブ14、レーザ光源15、レンズ16、ミラー17、ビームスプリッタ18、検出器19、対物レンズ20とから構成される。
具体的には、チューブスキャナ12により、試料のZ方向位置を制御して、試料Sとプローブ14との間の距離を一定にしながら、試料表面方向(XY方向)に走査する。このときのチューブスキャナ12のZ方向位置の制御信号(高さ制御信号)は、試料表面の凹凸形状を反映することになるので、高さ制御信号を用いて試料表面を表すことができる。
なお、図5との関係を説明すると、撓み量検出部31は、図5のレンズ16、ミラー17、ビームスプリッタ18、検出器19で構成される撓み量検出光学系に対応する。また、位置制御部35は、図5のステージ11、チューブスキャナ12からなる走査駆動系に対応する。
最初に、ユーザは試料の高さ方向(Z方向)の測定範囲を決定し、測定範囲設定部34に対して、測定範囲増幅率(H)として設定する。一般に、原子間力顕微鏡(AFM)では、複数の測定範囲増幅率(H)が設定できるようにしてあり、ユーザが選択できるようにしてある。
この測定範囲増幅率(H)を大きな値に設定すると、フィードバック信号生成部3から送られてくるフィードバック制御信号S3を大きく増幅した高さ制御信号S4が出力されることになり、距離制御部35は高さ方向(Z方向)に大きく変化することになり、測定範囲は広がる。しかし、その一方で、測定範囲が広がった分だけZ方向の制御可能な最小単位が大きくなり、分解能が下がることになる。
したがって、ユーザが測定範囲増幅率(H)の設定値を選択することで、広い測定範囲で測定するか、分解能を上げて測定するかを選択する。
カンチレバー13の撓みは、撓み量検出部31(図5の検出器19)により検出され、撓み量信号S1が出力される。この撓み量信号S1は、撓み量信号増幅部32に送られる。
撓み量信号増幅部32では、撓み量信号S1を増幅する撓み量増幅率(W)が、上述した測定範囲設定部34の測定範囲増幅率(H)に依存するようにして設定してある。そして撓み量信号S1が、撓み量増幅率(W)で増幅され、撓み量増幅信号S2として出力される。
さらに、高さ制御信号S4は、距離制御部35に送られ、プローブ14と試料Sとの間の距離を変化させ、常にカンチレバー13の撓み量が一定になるように制御される。
すなわち、大きな測定範囲増幅率(H)を設定し、測定範囲を広くした場合は、カンチレバー13の撓みが大きく変化するため、撓み量検出部31から出力される撓み量信号S1の変動も大きくなる。そのため、撓み量信号増幅部32の撓み量増幅率(W)は、撓み量増幅信号S2が過大とならないように、小さな値に設定される。
一方、小さな測定範囲増幅率(H)を設定し、測定範囲を狭くした場合は、逆にカンチレバー13の撓みの変化が小さくなるため、撓み量検出部31から出力される撓み量信号S1の変動も小さいものとなる。そのため、撓み量信号増幅部32の撓み量増幅率(W)は、撓み量増幅信号S2が過小とならないように、大きな値に設定される。
そのため、撓み量増幅率(W)を、単に測定範囲のみに依存して決定すると、撓みにくいカンチレバー13を用いた場合には、微細な撓みを検出できない場合がある。また、撓みやすいカンチレバー13を用いた場合には、撓み量信号S1、さらに、これを増幅した撓み量増幅信号S2が過大になるので、撓み量増幅信号S2を元にして生成されるフィードバック信号S3が飽和してしまう場合がある。
また、本発明は、個々のカンチレバー13ごとに最適な撓み量増幅率(W)が設定することができる走査型プローブ顕微鏡を提供することを目的とする。
このカンチレバーの撓みの変化を撓み量検出部で検出し、最小の撓み量信号を出力する。そして、最小の撓み量信号を増幅した最小の撓み量増幅信号を、撓み量増幅率調整部に送る。このとき、撓み量増幅信号が検出できない場合は撓み量増幅率を大きくし、検出できるときは撓み量増幅率を小さくする。この動作を繰り返すことにより、試料とプローブとの距離が最小単位だけ変化した場合に、その変化を検出できる撓み量増幅率の最小値を求めることができる。
このようにして得られた撓み量増幅率は、撓みを確実に検出することができるとともに、フィードバック信号生成の元になる撓み量増幅信号を十分が小さくすることができ、撓み量増幅信号が大きくなりすぎることでフィードバック信号が飽和してしまうことも防ぐことができる。
また、本発明は、走査型プローブ顕微鏡に新たな機器を設けることなく、ソフトウェアの変更のみで生成することができるダミー信号を元にして調整を行い、最適な撓み量増幅率(W)を自動的に求めて設定することができる。
また、撓み量増幅率(W)を調整する場合に、個々のカンチレバーに実際に撓みを与えた上で、そのときに出力される撓み量増幅信号に基づいて、カンチレバーの撓み量増幅率が調整されるので、カンチレバーの撓みやすさを考慮せずに設定してある撓み量増幅率を、個々のカンチレバーについて実測した撓みやすさに基づいて調整することができ、最適な撓み量増幅率にすることができる。
図1は、本発明の走査型プローブ顕微鏡の一実施形態である原子間力顕微鏡の制御系を説明するブロック構成図である。なお、従来例として、図4で示したものと同じ構成部分については、同符号を付すことにより、説明を一部省略する。また、この原子間力顕微鏡の概略構成については図5と同じであるので、本実施形態でも図5を参照する。
また、本発明は、高さ方向(Z方向)の制御について特徴を有しているものであり、XY方向の走査の制御については、通常の走査型プローブ顕微鏡でなされているのと同様であるので、XY方向の制御についての詳細な説明は省略する。
撓み量信号増幅部32は、撓み量増幅率(W)が設定されており、撓み量検出部31から出力される撓み量信号S1を、この撓み量増幅率(W)で増幅して、撓み量増幅信号S2を出力する。
撓み量増幅率(W)は、初期設定の状態、すなわち最適化を行う前の状態では、従来例と同様に、測定範囲増幅率(H)にのみ依存するように設定してある。測定範囲増幅率(H)が大きい値であるときは、撓み量増幅率(W)は小さい値が設定され、測定範囲増幅率(H)が小さい値であるときは、撓み量増幅率(W)は大きい値が設定され、互いに相補的な関係となるようにしてある。なお、測定範囲増幅率(H)の設定切り替えと対応する撓み量増幅率(W)に切り替えとの連動動作は、従来からなされている一般的な制御プログラムによる。
測定範囲増幅率(H)を大きな値に設定すると、フィードバック信号生成部3からのフィードバック制御信号S3を大きく増幅した高さ制御信号S4が出力されることになる。逆に、測定範囲増幅率(H)を小さな値に設定すると、フィードバック制御信号S3を小さく増幅した高さ制御信号S4が出力されることになる。
測定範囲設定部34は、さらに、後述する撓み量増幅率調整部37からダミー信号S5を受けた場合にも、ダミー信号S5を測定範囲増幅率(H)で増幅して、高さ制御信号S4として出力する。
距離制御部36は、高さ制御信号S4に基づいて試料Sを上下移動し、試料Sとプローブ14との距離を変化する。フィードバック信号S3を測定範囲増幅率(H)で増幅した高さ制御信号S4により制御されているときは、試料Sとプローブ14との距離が一定になるように制御されることになる。
CRT36は、試料SをXY方向に走査しながら取得される高さ制御信号S4に基づいて、高さ方向の凹凸を画像化した画面を表示する。
撓み量増幅率調整部37から出力されたダミー信号S5は、測定範囲設定部34において、測定範囲増幅率(H)で増幅され、その測定範囲増幅率(H)の元での最小単位の変位を生じさせる高さ制御信号S4となって距離制御部35に出力される。
その結果、距離制御部35では、ダミー信号S5に基づいて、カンチレバー13と試料Sとの距離が、その測定範囲増幅率(H)の元での最小単位分だけ変化する。
そして、同様の試行を繰り返すことで、使用するカンチレバー13に対して、撓み量増幅率調整部37は、ユーザが設定した測定範囲増幅率(H)ごとに、それぞれ最適な撓み量増幅率(W)を求めることができるようにしてある。
測定範囲設定部34に、高さ方向の測定範囲を設定することにより、測定範囲増幅率(H)を決定する(S102)。
撓み量増幅率(W)として設定可能な最も大きい値(W(max))を、初期値として設定する(S103)。最も大きな値を初期値としているのは、大きい値から順次小さくすることにより、最適化のフローを簡略化するためである。
走査型プローブ電子顕微鏡(SPM)のステージ11に載置される試料Sとプローブ14との距離を近接させ、原子間力が作用した状態で基準高さ(基準点)を決定する(S104)。
距離制御部35の最小の高さ変化に起因して生じる最小のカンチレバー13の撓み量変化を、撓み量検出部31により検出し、最小の撓み量信号S1として出力する(S106)。
撓み量信号増幅部32において、最小の撓み量信号S1を、現在の撓み量増幅率(W)で増幅し、最小の撓み量増幅信号S2を出力する(S107)。
撓み量増幅率調整部37において、最小の撓み量増幅信号S2が検出限界以下であるかを判断する(S108)。
最小の撓み量増幅信号S2が検出限界以下でない場合は、撓み量信号増幅率を一段小さい値に変化させる(S109)。すなわち、現在の撓み量信号増幅率(W(max))を次に大きい撓み量増幅率(W(max−1))にして、S104に戻り、以下、同様の動作を順次繰り返す。
S108からS109へ進み、S104に戻って再びS108まで行う動作を順次繰り返した結果、最小の撓み量増幅信号S2が検出限界以下となった場合は、そのときの撓み量増幅率(W(n))を、ひとつ前の値(W(n+1))に戻す(S110)。この値が、最小の撓み量増幅信号S2を検出することができる検出限界ぎりぎりの撓み量増幅率となる。
S110で求めた撓み量増幅率を最適化した撓み量増幅率(W)として決定する(S111)。
図3において、図1と同じものについては同符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態では、測定範囲設定部34において、複数の測定範囲増幅率(H)が選択可能に用意されている。
また、撓み量信号増幅部32には、撓み量増幅率記憶部38が付設されている。ここには、撓み量増幅率調整部37によって、各測定範囲増幅率(H)に対してそれぞれ調整された複数の撓み量増幅率(W)が記憶されるようにしてある。
この実施形態では、予め、測定範囲設定部34で各測定範囲増幅率(H)がひとつひとつ選択され、それぞれについて、撓み量増幅率調整部37により、対応する撓み量増幅率(W)の最適調整値が求められ、撓み量記憶部38に対応付けて記憶させてある。
したがって、使用の際に、ユーザが設定した測定範囲に対応する最適な撓み量増幅率(W)が即座に設定できるので、使い勝手のよい装置となる。
また、測定範囲増幅率(H)に対応して、最適な撓み量増幅率(W)が設定されることにより、試料の表面形状の正確な画像を得ることができる。
14: プローブ
31: 撓み量検出部
32: 撓み量信号増幅部
33: フィードバック信号生成部
34: 測定範囲設定部
35: 距離制御部
36: CRT
S: 試料
S1: 撓み量信号
S2: 撓み量増幅信号
S3: フィードバック信号
S4: 高さ制御信号
S5: ダミー信号
Claims (2)
- カンチレバーに取り付けられたプローブを試料に近接させることにより生じるカンチレバーの撓みを検出して、撓み量信号として出力する撓み量検出部と、撓み量信号を撓み量増幅率で増幅して撓み量増幅信号として出力する撓み量信号増幅部と、撓み量増幅信号に基づいてフィードバック信号を生成するフィードバック信号生成部と、試料の高さ方向の測定範囲を決定する測定範囲増幅率が設定され、フィードバック信号をこの測定範囲増幅率で増幅して高さ制御信号を出力する測定範囲設定部と、高さ制御信号に基づいて試料とプローブとの距離を制御する距離制御部とを備えた走査型プローブ顕微鏡において、
制御可能な最小単位の制御信号からなるダミー信号を測定範囲設定部に対して出力するとともに、当該ダミー信号を測定範囲増幅率で増幅した高さ制御信号に基づいて試料とプローブとの距離が制御されたときに、撓み量検出部によって検出されるカンチレバーの撓みに応答して撓み量信号増幅部から出力される撓み量増幅信号に基づいて撓み量増幅率を調整する撓み量増幅率調整部を設けたことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。 - 測定範囲設定部は、複数の測定範囲増幅率が設定可能に構成され、撓み量信号増幅部は、各測定範囲増幅率に対して撓み量増幅率調整部により調整された撓み量増幅率を記憶する記憶部を有することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡。
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