JP4433602B2 - ブラスト処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラスト処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、建築物等の構造物や産業用装置又はその部品において、それらの外表面を被覆した、ペイント、コーティング、スケール、錆、汚れ、バリ等を除去するために、ブラスト処理、液体ホーニングに代表される各種の機械的研磨や化学薬剤による処理が行われている。しかし、近年、環境上、安全上等の問題から化学薬剤による処理の見直しが求められている。
【0003】
ブラスト処理方法は、ケイ砂に代表される粉体のブラストメディア(以下、単にメディアという)を、空気や水等の駆動流体で圧送、加速、噴射することによって、基材表面のペイント、コーティング、スケール、錆、汚れ、バリ等を除去する方法である。
【0004】
このブラスト処理方法としては、主として駆動流体が空気であるエアブラスト工法と駆動流体が高圧水であるウォーターブラスト工法とがある。しかし、両工法ともメディアを粉体として供給するため、安定した連続供給が困難であり、ブラスト処理する際、メディアの流量が脈動することにより所定の流量で安定して流れないことやノズル内で閉塞を起こすおそれがあった。
【0005】
このため、ブラスト処理される被処理物(以下、単に被処理物という)の表面にムラが発生する問題があった。特に、銅、アルミニウム、プラスチック等の傷つきやすい基材を使用した場合、微細な加工処理表面の清浄化、ペイント、コーティング等の被膜やスケール、錆、汚れ、バリ等の不要物を剥離除去する場合等には、微細なメディアを使用する必要があり、メディアが凝集、固結しやすいことから、安定した流量でのメディアの供給が困難であった。
【0006】
上記の問題を解決するため、例えば、メディアに流動性改善及び固結防止の目的で疎水性シリカを添加する方法が知られている。しかし、疎水性シリカを添加する場合には、ブラスト処理した際、被処理物表面に不純物として疎水性シリカが残留しやすいことや、ブラスト処理の際に発生する排水を処理する際に排水表面に疎水性シリカが浮遊し、処理を困難にする等の問題がある。たとえ、良好な流動性を付与できたとしても、粉体の空気輸送においては、メディアが駆動流体に供給される際、メディアが安定して流れないことから、その流量は脈動するため、ブラスト施工の仕上がりは不均一となる欠点がある。
【0007】
また、一般に液体ホーニング法といわれる方法は、メディアである研磨剤に水及び適当な腐食抑制剤を加えたスラリを、被処理物表面に吹き付けて処理する方法であるが、スラリを収容した容器を加圧してスラリを噴射させるために、容器内のスラリの一定量を一定時間だけバッチで排出することとなり、連続した操作は困難である。また、液体として噴射させること及び容器自身を加圧することによる制約のために、充分にメディアを加速できず、研磨効果、洗浄効果ともブラスト処理方法に比べ劣っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、流動性の悪い、細かい粉体のメディアを使用した場合でも、安定した流量で連続して供給することにより、均一な仕上がりを得るブラスト処理方法を提供することにある。これにより、従来はわずかな施工ムラでも傷つきやすく、ブラスト施工が困難であった基材の場合でも良好なブラスト処理を可能とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、液体又は気体を駆動流体とし、該駆動流体にメディアを供給し、該メディアを使用して被処理物をブラスト処理する方法において、前記メディアの70〜100質量%が水溶性粒子であり、かつ該水溶性粒子に対して0.2〜3質量%の親水性シリカを含有する前記メディアを、固体濃度1〜70質量%、かつ分散媒が該水溶性粒子の飽和溶液であるスラリの状態で、前記駆動流体に供給することを特徴とするブラスト処理方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のブラスト処理方法は、例えば、図1に示されるブラストガンを使用して実施できる。駆動流体源25から把持部21を有するブラストガンに供給された駆動流体は、矢印aに沿って配管23を通り、連結部27を経由して噴射口より排出される。連結部27の内部には、駆動流体が矢印bに沿って流れるため負圧状態になり、スラリタンク31からスラリが矢印cに沿ってスラリ吸引ホース33より吸引される。そして、連結部27の内部において、駆動流体にスラリが供給、混合され、噴出口より放出される。
【0011】
本発明のブラスト処理方法は、メディアをスラリの状態で駆動流体に供給するため、従来の方法に比べて、ブラスト処理する際、メディアの流量の脈動、閉塞等の問題もなく、定量的かつ安定的に長時間連続してメディアを供給できる。また、メディアは、スラリとして駆動流体に供給されるため粉塵等の発生も抑えられる。
【0012】
本発明におけるスラリ中の固体濃度は1〜70質量%である。スラリ中の固体濃度が、1質量%未満の場合は、メディアによる十分なブラスト効果が得られず、また、70質量%超の場合は、スラリの粘度が高くなりすぎるため、メディアの安定した供給が困難となる。ここで、固体濃度とは、スラリ中での非溶解状態のメディアの濃度である。メディアが水溶性である場合、スラリの分散媒はメディア成分で飽和しており、さらに、メディアが固体として分散された状態で存在している。
【0013】
本発明において、スラリ中に分散されたメディア粒子の平均粒径は、1〜1000μmが好ましく、特に1〜500μmが好ましい。メディア粒子の平均粒径が1μm未満である場合は、機械的粉砕によって工業的に大量生産することが困難であり、1000μm超である場合は、スラリにしたときにメディアが沈降しやすく、均一なメディアの供給が困難となる。
【0014】
本発明に適した粒度のメディアを得る方法として、篩分けや空気分級操作等により調節して得る方法の他、大きな粒径の原料を湿式粉砕して得る方法もある。
【0015】
本発明におけるメディアには、非水溶性粒子又は水溶性粒子のいずれかを使用してもよく、両者を併用してもよい。
【0016】
メディア中において、水溶性粒子の含有量は、水溶性粒子と非水溶性粒子とを合わせたメディア全量の70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、すべてが水溶性粒子であることがさらに好ましい。水溶性粒子が70質量%未満である場合は、非水溶性粒子が被処理物表面に付着又は突き刺さるために、その後の水洗によっても容易に除去できずに残留してしまうことがある。
【0017】
これに対して、水溶性粒子は、被処理物から水洗によって容易に除去できる利点がある。さらに、水溶性粒子は、スラリ中において粒子の角が溶けてなくなり、丸みを帯びることから、傷つきやすい基材や微細な加工が施された基材表面を清浄化する際又は基材表面から被膜やバリ等の不要物を剥離除去する際に、基材をほとんど傷つけることなくブラスト処理できる利点がある。
【0018】
本発明において、使用できる非水溶性粒子としては、アルミナ、ジルコニア、ガーネット、炭化ケイ素、ケイ砂、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0019】
また、水溶性粒子としては、炭酸水素アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩又はその水和物、及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選ばれる1種以上を使用できる。具体的には、炭酸水素アルカリ金属塩としては、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム等が、炭酸アルカリ金属塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム1水塩、炭酸カリウム、炭酸カリウム1.5水塩等が挙げられる。炭酸アルカリ金属塩としては、特に炭酸ナトリウム1水塩、炭酸カリウム1.5水塩が好ましい。
【0020】
本発明における水溶性粒子としては、特に炭酸水素ナトリウムが好ましい。炭酸水素ナトリウムは、モース硬度2.5程度であり、被処理物の基材が金属等であっても傷つけずに表面をブラスト処理できる。また、炭酸水素ナトリウムは、低級脂肪酸を水溶性のナトリウム塩にできるため、油分を可溶化する作用もあり、油分を除去できる。また、経口急性毒性も低く、水溶性のため呼吸器障害の問題も少ない。さらに、常温で水道水に溶解した場合、最もpHが高くなる0.2〜0.3質量%水溶液でもpH8.3であるため水質汚濁防止法に基づく排水基準を満たしており、剥離物を除去すれば通常そのまま排水できる。
【0021】
メディアを分散させる液体としては、エタノール、アセトン、ハロゲン化炭化水素等の有機溶剤又は水が使用できる。ブラスト処理後の廃水処理を容易にすること、環境への影響から、特に水又は水溶液が好ましい。
【0022】
このメディアが水溶性であり、使用する液体が水の場合、メディアが水に溶解することによるロスを削減する目的で、前もってメディアを溶解した水溶液を使用することもできる。また、メディアの溶解度を下げる目的で、水又は水溶液にさらにアルコール等の成分を加えることもできる。水溶液がメディアにより実質的に飽和である場合、水溶性粒子はスラリ中において微粒子形状を保った状態で存在する。
【0023】
本発明における駆動流体とは、メディアを圧送し、噴射し、ブラスト処理の際の吹付原動力となるものであり、液体又は気体のいずれでもよい。液体としては、水、フロン及び炭化水素等の有機溶剤等が挙げられ、気体としては、空気、窒素、二酸化炭素、ハロゲン化炭化水素等の有機ガス等が挙げられる。
【0024】
駆動流体は、液体である場合は、圧力0.05〜100MPaで、気体である場合は、圧力0.05〜1MPaで、ブラストガンに供給される。
液体の場合、圧力が0.05MPa未満であると、十分なブラスト効果が得られず、100MPa超であると、特別な装置が必要となり実用性が低い。また、気体の場合、圧力が0.05MPa未満であると、十分なブラスト効果が得られず、1MPa超であることは気体を圧縮するためのエネルギーが大きくなり無駄が多い。
ここで、圧力とは、駆動流体の供給源でのゲージ圧の値である。
【0025】
被処理物の基材としては、銅、アルミニウム、マグネシウム、ジュラルミン等の軟かい金属でもよく、プラスチック、セラミックス等の割れやすく傷つきやすいものでもよい。本発明は、高い研磨精度で仕上げた基材、微細なテクスチャを加工した基材、電子回路基板等の精密な電子部品、電子機器用精密部品等に対して特に好適である。
【0026】
本発明において、メディアが水溶性粒子を含む場合、親水性シリカを添加することが好ましい。親水性シリカを添加することにより、メディア自身の固結が防止でき、スラリ化が容易となるうえ、スラリ表面に疎水性成分を浮遊させることなくスラリの流動性改善及び固結防止ができる。
【0027】
親水性シリカの添加量は、メディア中の水溶性粒子に対して0.2〜3質量%が好ましく、特に0.5〜2質量%が好ましい。親水性シリカの添加量が0.2質量%未満であると、流動性改善効果が小さく、また、3質量%超であっても、効果は大きく変わらず、コストが高くなるのみである。
【0028】
親水性シリカの平均粒径は0.01〜15μmが好ましく、特に0.01〜0.1μmが好ましい。親水性シリカの平均粒径が0.01μm未満であると、安価な工業製品として入手できず、また、15μm超であると、流動性改善及び固結防止効果を付与するために必要な添加量が増大し、コスト的に高くなる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例(例6)及び比較例(例1、2、3、4、5、7)を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0030】
〔例1〕
重油燃焼用バーナーの噴射ノズル(40mm径バーナーチップを含む部品で構成)に付着したカーボン及びタール(以下、汚れという)を除去するため以下の操作を行った。平均粒径100μm、200μm、300μmの炭酸水素ナトリウム各1kgに対して、それぞれ水1.5kgの割合で混合して、3種類のスラリを得た。この際のスラリ中の固体濃度は、液温20℃で、いずれのスラリにおいても35質量%であった。
【0031】
得られたスラリを、それぞれ容量20Lポリバケツに入れて撹拌し、駆動流体として、圧力0.5MPa、流量0.50m3/min(標準状態換算、以下同様)の圧縮空気により、メディアをスラリとして供給し、ブラストガン(オオサワ&カンパニー社製、商品名:W301−ES−26型)を使用してブラスト処理を行った。約3分間ブラスト処理を行ったところ、いずれの粒径の炭酸水素ナトリウムメディアにおいてもバーナーチップを傷つけることなく、バーナーチップの孔内部まで綺麗に洗浄できた。また、炭酸水素ナトリウムの使用量は、いずれの粒径の場合も2kgであった。
【0032】
〔例2〕
例1と同様の噴射ノズルに付着した汚れを除去するため、噴射ノズルを構成する各部品を塩化メチレンに2時間浸した後、各部品を傷つけないように手作業で洗浄した。汚れを除去するのに約2時間かかった。
【0033】
〔例3〕
例1と同様の噴射ノズルに付着した汚れを除去するため、平均粒径10μmの炭酸水素ナトリウムを、粉体のまま、駆動流体として、圧力0.7MPa、流量0.60m3/min、の圧縮空気により、例1と同じブラストガンを使用し、ブラスト処理しようとしたところ、炭酸水素ナトリウム粉体の流動性が悪く連続的に噴射できなかった。
【0034】
〔例4〕
例1と同様の噴射ノズルに付着した汚れを除去するため、噴射ノズルを構成する各部品を洗浄剤(セノヤマミズ社製、商品名:マジケム)を使用して、16時間超音波洗浄した後、各部品を傷つけないように専用道具により手作業で洗浄した。汚れを除去するのに約2時間かかった。
【0035】
〔例5〕
平均粒径10μmの炭酸水素ナトリウム20kg及び水100kgを200Lの撹拌機付き容器に投入、混合し、70分間撹拌してスラリを得た。この際のスラリ中の固体濃度は、液温20℃で、9質量%であった。得られたスラリを、駆動流体として、圧力0.7MPa 、流量0.60m3/minの圧縮空気により、例1と同じブラストガンを使用して、スラリを吸引しつつ供給した。この際のスラリの吸引量は、容器全体を秤に乗せて1分毎に秤量することにより求めた。1時間連続作業したところ、供給流量は54〜58kg/hであり、流量の変動はほとんどなかった。
次に、施工対象として、アルミニウム板にエポキシ系塗料を50μm厚塗布、乾燥したものを選び、ブラスト処理したところ、被処理面は、均一であった。
【0036】
〔例6〕
平均粒径10μmの炭酸水素カリウム40kg、平均粒径0.02μmの親水性のヒュームドシリカ0.4kg及び水100kgを200Lの撹拌機付き容器に投入、混合し、10分間撹拌し、スラリを得た。この際のスラリ中の固体濃度は、液温20℃で、5質量%であった。得られたスラリを、圧力0.7MPa、流量0.60m3/minの圧縮空気で、例1と同じブラストガンを使用し、スラリを吸引しつつ供給した。この際のスラリ中の吸引量は、例5と同様にして求めた。1時間連続作業したところ、供給流量は50〜54kg/hであり、流量の変動はほとんどなかった。
次に、施工対象として、アルミニウム板にエポキシ系塗料を50μm厚塗布し、乾燥したものを選び、ブラスト処理したところ、被処理面は、均一であった。
【0037】
〔例7〕
平均粒径10μmの炭酸水素ナトリウム20kg及び平均粒径0.02μmの親水性のヒュームドシリカ0.2kgを逆円錐型の50L容器に投入、混合し、底部から排出できるようにして、メディアを粉体のまま、駆動流体として、圧力0.7MPa、流量0.60m3/minの圧縮空気により、例1と同じブラストガンを使用して、吸引しつつ供給した。この際の吸引量は、例5と同様にして求めた。容器底部から排出が安定しないため、容器底部を叩きながら20分間連続作業したところ、供給量は15〜180kg/hの範囲でかなりの変動があった。
次に、施工対象として、アルミニウム板にエポキシ系塗料を50μm厚塗布、乾燥したものを選び、ブラスト処理したところ、被処理面は、不均一であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、安定した流量で連続的にメディアを供給できるため、ブラスト作業が安定し、均一な仕上がり状態を達成できる。また、傷つきやすい基材を被覆した硬化前若しくは硬化後の塗料やインキ又は不純物等を除去する際に、基材をほとんど傷つけることなく短時間でブラスト処理できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の際に使用できるブラストガンの一例の説明図。
【符号の説明】
21:把持部
23:配管
25:駆動流体源
27:連結部
31:スラリタンク
33:スラリ吸引ホース
Claims (4)
- 液体又は気体を駆動流体とし、前記駆動流体にメディアを供給し、前記メディアを吹き付けることにより被処理物をブラスト処理する方法において、前記メディアの70〜100質量%が水溶性粒子であり、かつ該水溶性粒子に対して0.2〜3質量%の親水性シリカを含有する前記メディアを、固体濃度1〜70質量%、かつ分散媒が該水溶性粒子の飽和溶液であるスラリの状態で、前記駆動流体に供給することを特徴とするブラスト処理方法。
- 前記スラリ中のメディアの平均粒径が1〜1000μmである請求項1に記載のブラスト処理方法。
- 前記スラリの分散媒が水である請求項1又は2に記載のブラスト処理方法。
- 前記水溶性粒子は、炭酸水素アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選ばれる1種以上からなる請求項1、2又は3に記載のブラスト処理方法。
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