JP4432266B2 - ディスクブレーキ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ブレーキピストンを組み付けるシリンダをキャリパに後方から加工し、シリンダ底壁となる蓋を取り付けてキャリパを目的の形に仕上げる構造のディスクブレーキに関する。
【0002】
【従来の技術】
首記の構造のキャリパを採用したディスクブレーキは、特開平5−248458号、特開平10−9302号、特開平11−2302052号公報などに示されている。これ等のディスクブレーキは、一般的なピストン対向型ディスクブレーキと違って、シリンダ加工のためにキャリパのインナー部とアウター部を分割する必要がなく、また、一般的な浮動型ディスクブレーキにおいてキャリパのアウター爪に設けているシリンダ加工用工具との干渉回避用切欠部を設ける必要がなく、ピストン対向型、浮動型を問わず、キャリパの高剛性化が図れる利点がある。
【0003】
ところで、前掲の公報に示されるディスクブレーキは、シリンダの底部を封止する蓋(端板)の固定を、下記(1)〜(3)のいずれかで行っている。
(1)シリンダ後方の小径孔部をくぐり抜けた蓋の小径部外周にサークリップやストッパ板を取付け、それをキャリパの外面に係止させる。
(2)シリンダ後方の小径孔部をくぐり抜けた蓋の小径部外周にナットを螺合させてそのナットと蓋の大径部とでキャリパを挟持する。
(3)蓋の小径部外周をシリンダ後方の小径孔部の内面に螺合させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
蓋の固定を前述の(1)の構造で行うものは、蓋ががたつき易く、そのがたつきにより、キャリパの消費液量変動が起こってブレーキの操作フィーリングや性能に悪影響が出る虞れがある。これに加え、サークリップやストッパ板を必要とし、部品数が増える欠点もある。
【0005】
また、(2)の構造で行うものは、ナットの緩み、締め忘れなどが発生する可能性があり、そのような事態が生じたときに蓋ががたついてキャリパの消費液量が変動する。また、ナットを必要とし、コスト面で不利となる。
【0006】
(3)の構造を採用したものも、キャリパに螺合させる蓋の緩み、締め忘れが生じる可能性があり、蓋のがたつきによるキャリパの消費液量変動が考えられる。
【0007】
また、この(3)の構造は、蓋を螺合させるときに、蓋とキャリパ間を液封するOリングなどのシール部材にダメージを与えることも考えられる。
【0008】
この発明は、上記の不具合を無くしたディスクブレーキと、蓋の固定を簡易な道具を用いて簡単に行える方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、ブレーキピストンを組み付けるシリンダをキャリパに貫通して設け、そのシリンダの底壁をキャリパに液密に取り付けた蓋で形成するとともに、前記シリンダの底部に、蓋の座面を支える小径孔部を設け、さらに、蓋の背面に、前記小径孔部をくぐり抜けてディスク軸方向に延び出すリベット部を設け、キャリパに対する蓋の固定を、前記リベット部の先端をかしめて小径孔部の開口縁に係止させて行うディスクブレーキにおいて、前記蓋の背面に、かしめ具をねじ込んで推進させるシリンダと同心の雄ねじ付き軸体を設けたのである。
【0010】
このブレーキは、リベット部の根元を、リベット部のかしめ折り曲げ点よりもシリンダの前部側に入り込ませると好ましい。
【0012】
この発明のディスクブレーキは、蓋をシリンダに挿入した後、前記雄ねじ付き軸体にかしめ具を螺合させて推進させ、このかしめ具に設けた先すぼみの成形面で蓋に設けたリベット部を径方向外方に屈曲させて小径孔部の開口縁に係止させ、しかる後、螺合を解いてかしめ具を取り外す方法で蓋のかしめ固定を行うことができる。なお、この方法を採用するものは、蓋とキャリパの間に、蓋を回り止めする機械的係止部を設けると好ましい。
【0013】
【作用】
この発明では、蓋に設けたリベット部をかしめて蓋をキャリパに固定するので、蓋を回転させずに済み、蓋とキャリパ間に介在されるシール部材にダメージを与えることが無くなる。
【0014】
また、かしめ固定は、サークリップなどによる引き留めやねじ嵌合固定と違って安定しており、蓋のがたつきが無くなってキャリパの消費液量の変動が起こらない。
【0015】
さらに、サークリップ、ストッパ板、ナットなどを必要とせず、部品数が減ってコスト面で有利になるほか、製造時の部品管理なども楽になる。
【0016】
なお、リベット部の根元をかしめ折り曲げ点よりもシリンダの前部側に入り込ませたものは、かしめを比較的小さな力で行える。また、かしめ時に蓋に引き込み力が作用して蓋の座面が小径孔部の内側端面に押圧され、固定がより安定する。
【0017】
このほか、蓋に雄ねじ付き軸体を設けたので、先に述べた方法でリベッティングマシンを使わずにより小さな力でかしめを行なえる。
【0018】
この構造のものは、かしめ具をねじ込む際に蓋が供回りしてシール部材にダメージを与える虞れがあるので、かしめ具のねじ込みは蓋を回り止めして行うのがよい。
【0019】
その蓋の回り止めは、設備を利用して行ってもよいが、蓋とキャリパ間に機械的係止部を設けてキャリパで回り止めすると、かしめ作業をより楽に行える。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1及び図2に、この発明の実施形態を示す。
【0021】
図1のピストン対向型ディスクブレーキは、キャリパ1のインナー部1aとアウター部1b及びディスク(図示せず)を跨ぐブリッジ部1cを一体に鋳造し、インナー部1aに設けるシリンダ2を貫通させてそのシリンダ2とアウター部に設ける非貫通のシリンダ3を共に図の右端側から仕上げて加工している。そして、シリンダ2の底部を蓋4を取付けて閉鎖し、各シリンダに、ピストン5と、ピストンのリトラクト機能をもつピストンシール6とブーツ7を組み付けている。8はピストン5で押圧してディスクの両面に摺接させるパッドである。このパッド8は、キャリパのインナー部1aとアウター部1b間に横架するパッドピン(図示せず)を裏板のピン孔に通してディスク軸方向スライド自在に支持している。
【0022】
なお、各シリンダは通路9経由で連通している。キャリパ内にブレーキ液を供給する導入ポートは図示していない。その導入ポートはキャリパ1に設ける場合と、蓋4に設ける場合がある。
【0023】
図2の浮動型ディスクブレーキは、キャリパ21のインナー部21aにシリンダ22を貫通させて設け、そのシリンダの底部側から仕上げ加工を可能ならしめて、従来、キャリパのアウター爪21bに設けていたシリンダ加工用工具との干渉回避用切欠部を無くしている。
【0024】
シリンダ22の底部は、図1のブレーキと同様、蓋24によって閉鎖される。25はピストン、26はピストンシール、27はブーツ、28はパッドである。
【0025】
キャリパ21は、トルクメンバ等によってディスク軸方向スライド自在に支持されており、ピストン22でインナー側のパッド28をディスク(図示せず)に押圧すると、反力で図中右方にスライドする。その機構は、よく知られているので図示していない。
【0026】
さて、例示のディスクブレーキは、蓋4、24の固定をかしめによって行っており、ここに、この発明の特徴がある。かしめ固定部は、蓋4、24とも同一構造である。従って、以後の説明は蓋4についてのみ行う。
【0027】
図3は、シリンダ2の蓋4による閉塞部を拡大して示している。このように、シリンダ2の底部に小径孔部10を設け、その小径孔部の内側端面に蓋4の背面外周の座面4aを当接させている。11は蓋4とシリンダ2との間を液封するOリング等のシール部材である。
【0028】
蓋4の背面には、小径孔部10をくぐり抜けるリベット部12を設けている。そのリベット部12は、円筒状のものと周方向に複数に分断したものが考えられ、蓋の固定力を重視する場合には前者を、かしめ易さを重視する場合には後者を選ぶとよい。
【0029】
図示のリベット部12は、根元aをかしめ折り曲げ点bよりもシリンダの前部側にL入り込ませており、かしめに要する力が小さくて済む。また、かしめ時に図中右方への引き込み力が発生して小径孔部の端面に対する座面4aの密着性も向上する。
【0030】
図4は、シリンダ2と同心のねじ孔13をキャリパ1に設けたもの、図5は、ねじ孔13を蓋4の背面に設けたものである。このねじ孔13に、先すぼみの成形面31を有するかしめ具30をねじ込み、ねじの推力を利用してかしめを行うと、リベッティングマシンを必要とせず、リベット部12を小さな力で簡単に屈曲させて小径孔部10の開口縁に係止させることができる。
【0031】
図6に示すように、蓋4の背面に雄ねじ付き軸体14を設けてその軸体にかしめ具30を螺合させる構造にしても同じ効果が得られる。この発明のディスクブレーキには、この雄ねじ付き軸体14を備えさせる。この図6の構造は、図4、図5の参考形態に比べてシリンダ底部側のキャリパの薄肉化とキャリパの軽量化が図れる。なお、かしめ具30は、かしめ終了後に取り外す。
【0032】
かしめ時に蓋4に回転力が加わる場合には、シール部材11を保護するために蓋4を回り止めするのがよい。その回り止めは、蓋の仮支持などを行う設備に蓋を係止させて行うこともできるが、蓋4とキャリパ1に、キー15とキー溝16(図7参照)などを設けてキャリパ1で回り止めすると、専用の設備が無くてもシール部材の保護が確実に行える。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明では、シリンダの底部を閉鎖する蓋にリベット部を設けてキャリパに対する蓋の固定をかしめによって行うので、蓋を回転させる必要がなく、シール部材にダメージを与えることが無くなる。
【0034】
また、蓋の固定が安定し、ブレーキの操作フィーリングや性能に影響を及ぼすキャリパの消費液量の変動が無くなる。
【0035】
さらに、部品数が減ってコスト面、部品管理の面でも有利になる。このほか、リベット部の根元をかしめ折り曲げ点よりもシリンダ前部側に入り込ませたものは、かしめを小さな力で行え、かしめ時に生じる引き込み力でキャリパに対する蓋の座面の密着性も向上する。
【0036】
また、かしめ具を蓋に螺合させてかしめ力を発生させるので、リベッティングマシンを使わずにより小さな力で蓋のかしめ固定を行なえる。蓋とキャリパ間に機械的係止部を設けて蓋を回り止めしたものは、シール部材の保護も確実になされ、信頼性がより高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のブレーキの実施形態を示す平面視断面図
【図2】他の実施形態の側面視断面図
【図3】蓋取付け部の拡大断面図
【図4】キャリパに、かしめ具螺合用のねじ孔を設けた例を示す断面図
【図5】蓋に、かしめ具螺合用のねじ孔を設けた例を示す断面図
【図6】蓋に、かしめ具螺合用の雄ねじ付き軸体を設けた例を示す断面図
【図7】蓋の回り止めの一例を示す図
【符号の説明】
1、21 キャリパ
2、3、22 シリンダ
4、24 蓋
4a 座面
5、25 ピストン
8、28 パッド
9 通路
10 小径孔部
11 シール部材
12 リベット部
13 ねじ孔
14 雄ねじ付き軸体
15 キー
16 キー溝
30 かしめ具

Claims (3)

  1. ブレーキピストンを組み付けるシリンダをキャリパに貫通して設け、そのシリンダの底壁をキャリパに液密に取り付けた蓋で形成するとともに、前記シリンダの底部に、蓋の座面を支える小径孔部を設け、さらに、蓋の背面に、前記小径孔部をくぐり抜けてディスク軸方向に延び出すリベット部を設け、キャリパに対する蓋の固定を、前記リベット部の先端をかしめて小径孔部の開口縁に係止させて行うディスクブレーキにおいて、前記蓋の背面に、かしめ具をねじ込んで推進させるシリンダと同心の雄ねじ付き軸体を設けたことを特徴とするディスクブレーキ。
  2. 前記リベット部の根元を、リベット部のかしめ折り曲げ点よりもシリンダの前部側に入り込ませた請求項1記載のディスクブレーキ。
  3. 前記蓋とキャリパの間に、蓋を回り止めする機械的係止部を設けた請求項1又は2記載のディスクブレーキ。
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