JP4432014B2 - フユーエルデリバリパイプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子燃料噴射式自動車用エンジンの燃料加圧ポンプから送給された燃料をエンジンの各吸気通路に燃料インジェクタ(噴射ノズル)を介して供給するためのフユーエルデリバリパイプの改良に関し、特に燃料通路を有する連通管の断面構造及び連通管と燃料インジェクタを受け入れるソケット(ホルダー)部分の接続構造に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
フユーエルデリバリパイプは、ガソリンエンジンの電子燃料噴射システムに広く使用されており、燃料通路を有する連通管から複数個の円筒状ソケットを介して燃料インジェクタに燃料を送った後、燃料タンク側へと戻るための戻り通路を有するタイプと、戻り通路を持たないタイプ(リターンレス)とがある。最近は高温の戻り燃料による蒸散ガス低減対策やコストダウンのため戻り通路を持たないタイプが増加してきたが、それに伴い、燃料ポンプ(プランジャポンプ)による脈動圧や、インジェクタから噴射させるために弁を開閉させるスプールの往復運動に起因する反射波(衝撃波)や脈動圧による燃料噴射脈動によって、フユーエルデリバリパイプや関連部品が振動し耳ざわりな異音を発するという問題が発生するようになってきた。
【0003】
特開昭60−240867号「内燃機関用燃料噴射装置の燃料供給導管」では、燃料供給導管の壁の少なくとも1つが燃料の脈動を減衰させるように弾性的に構成され、剛性の壁に固定されている。また正三角形に近い断面形状が提案されている。しかしながら、弾性の壁が剛性の壁に固定されているため、その撓みが充分でなく、燃料の脈動を減衰させる効果は微少なものである。
特公平3−62904号「内燃機関用燃料レイル」は、インジェクタラップ騒音を防止するために、ダイヤフラムを用いて連通管内部をソケット側と管壁側とに仕切り、ダイヤフラムの可撓性によって脈動及びインジェクタの残留反応を吸収するようにしている。しかしながら、連通管の長手方向に可撓性のダイヤフラムを配置するにはシール部材が必要になる等、構造が複雑化し、全体の形状が限定されることになって多種多様なエンジンの仕様に対応できないという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、燃料噴射に伴う燃料流路内での圧力変動を抑制し、燃料の反射波や脈動圧に起因する振動を抑制して、燃料配管系の振動による車内異音(騒音)の発生や、燃料噴射量の不均一による空燃比のばらつきの増加など各種の不具合を防止することが可能なフユーエルデリバリパイプの構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の前述した目的は、連通管の断面形状が略三角形でかつ3辺のうち最も長い辺を底面としたときの縦横比が2分の1以下の偏平な略三角形に作られ、前記略三角形の各頂部の内側は半径1mm以上のRが付けられた滑らかな形状に作られ、前記3辺のうち最も長い1辺が可撓性の第1アブゾーブ面を形成し、前記3辺のうち最も短い1辺に前記ソケットが取り付けられ、前記略三角形が不等辺三角形から成り、2番目に長い1辺が第2アブゾーブ面を形成しており、これにより、ソケットに流入する燃料の脈動圧と衝撃波を前記第1と第2のアブゾーブ面の撓みで低減させるようになっているフユーエルデリバリパイプによって達成される。
縦横比が2分の1を超える略三角形では、撓みが小さくなり、予期した衝撃吸収能力が得られない。正三角形は縦横比が2分の1を超えるため本発明では除外する。
【0006】
【作用】
かかる構造を採用することにより、鋼又はステンレス鋼製の管やプレス成形で作られた連通管を有するフユーエルデリバリパイプにおいて、インジェクタの反射波や連通管の減衰能に起因する振動や脈動による異音の発生を防止できることが判明した。理論的な根拠としては、燃料インジェクタの開閉時に発生する衝撃波が、ソケットの燃料流入口へと流入あるいは瞬間的な逆流によって流出する際に、可撓性のアブゾーブ面が追随して撓むことによって衝撃や脈動が吸収されることと、バネ定数の比較的小さい薄肉の部材が撓んで変形することにより容積も変化し燃料の圧力変動を吸収するものと理解される。
【0007】
本発明において、アブゾーブ面の肉厚は他の面の肉厚と同じか又はそれ以下であることが望ましい。
本発明において、連通管の各辺の板厚・縦横の比率・ソケットの燃料流入口と対向する面との隙間の範囲などは、特にエンジンのアイドリング時において振動や脈動が最も小さい値になるように実験や解析によって定めることができる。
本発明は基本的に連通管の断面構造及び連通管とソケットの接続構造に係るものであるから、ブラケットの取り付け寸法を維持することにより、従来のフユーエルデリバリパイプに対して互換性を維持することができる。本発明の他の特徴及び利点は、添付図面の実施例を参照した以下の記載により明らかとなろう。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施例によるフユーエルデリバリパイプ(トップフィードタイプ)10の全体を表わしており、偏平な略三角形断面の鋼管から成る連通管11がクランク軸方向に沿って延伸し、連通管11の底面にコネクタ5を介して燃料導入管2がろう付けや溶接で固定されている。連通管11の端部には燃料タンクに戻るための戻り管を設けることができるが、エンジンルームからリターンされた高温の燃料による燃料タンク内燃料の温度上昇に伴う燃料ベーパーの蒸散対策の施されたリターンレスタイプのフユーエルデリバリパイプでは、戻り管は設けられていない。
【0009】
連通管11の底面には、噴射ノズルの先端を受け入れるためのソケット3が、例えば3気筒エンジンであれば3個が所定の間隔と角度で取り付けられている。連通管11には、さらにフユーエルデリバリパイプ10をエンジン本体に取り付けるための厚肉で堅固なブラケット4が2個横方向に架け渡されている。燃料は矢印の方向へと流れ、ソケット3の燃料吸入口6(図2A参照)から燃料インジェクタ(図示せず)を介して各吸気通路へと噴射される。
【0010】
図2A,B,Cは図1のフユーエルデリバリパイプ10のソケット部分及び連通管の断面を表しており、この例では略三角形が不等辺三角形に作られている。連通管11の断面形状は図2Bに示すような略三角形をしており、図2Bにおいて、一例として最も長い辺12aの直線部分長さSが32mm、この長辺12aを底辺と考えたときの高さHが10.2mmで縦横比約0.32の偏平な略三角形に作られている。図2Aに示される略三角形の各頂部の内側13,14,15は半径1mm以上のRが付けられた滑らかな形状に作られている。本発明に基づき、略三角形の3辺のうち最も長い1辺12aが薄肉で可撓性の第1アブゾーブ面を形成している。この実施例ではさらに略三角形の3辺のうち2番目に長い辺12bも薄肉で可撓性の第2アブゾーブ面を形成している。
また、略三角形の3辺のうち最も短い1辺12cにソケット3が取り付けられている。この短辺12cの直線部分長さWは一例として13mmである。
【0011】
図2Cは、ソケット3に流入する燃料の脈動圧と衝撃波を受けて、第1,第2のアブゾーブ面12a,12bが湾曲して撓んだ状態を破線でやや誇張して描いている。かくして、ソケットに流入する燃料の脈動圧と衝撃波がアブゾーブ面の撓みで低減させられるようになっている。
【0012】
図3A,B,Cは本発明の第2実施例によるフユーエルデリバリパイプ20のソケット部分及び連通管の断面を表しており、この例では略三角形が二等辺三角形に作られている。連通管21の断面形状は図3Bに示すような略三角形をしており、図3Bにおいて、一例として最も長い辺22aの直線部分長さLが32mm、この長辺22aを底辺と考えたときの高さNが10.2mmで縦横比約0.32の偏平な略三角形に作られている。図3Aに示される略三角形の各頂部の内側23,24,25は半径1mm以上のRが付けられた滑らかな形状に作られている。本発明に基づき、略三角形の3辺のうち最も長い1辺22aが薄肉で可撓性の第1アブゾーブ面を形成している。この実施例ではさらに略三角形の3辺のうち2番目に長い辺の一方である22bも薄肉で可撓性の第2アブゾーブ面を形成している。
また、略三角形の3辺のうち最も短い辺の一方である22cにソケット3が取り付けられている。これら短辺22b,22cの直線部分長さMは一例として約17mmである。
【0013】
図3Cは、ソケット3に流入する燃料の脈動圧と衝撃波を受けて、第1,第2のアブゾーブ面22a,22bが湾曲して撓んだ状態を破線でやや誇張して描いている。かくして、ソケットに流入する燃料の脈動圧と衝撃波がアブゾーブ面の撓みで低減させられるようになっている。
【0014】
図3Dは、本発明との比較のために従来の略四角形断面の連通管(全幅34mm、直線部長さ24.8mm、高さ10.2mm)の形状を表している。管の周長を一定、板厚、パイプ高さを一定とし、従来形・第1実施例・第2実施例の3種類の連通管にインタンク燃料ポンプにより3.5kgf/cm2 の圧力を加えた場合の内容積変化の実験データは以下のようになった。
【0015】
【表1】
【0016】
圧力の変化によりアブゾーブ面が撓んで容積が増大するが、上記の表から、連通管の断面形状を偏平な略三角形状とすることにより、容積変化率は0.32%から0.78%、0.80%と向上して撓みやすくなっていることが判明した。また、不等辺三角形の形状が最も脈動低減効果に優れた形状であることも判った。
【0017】
【発明の効果】
以上詳細に説明した如く、本発明によれば、燃料インジェクタの開閉時に発生する衝撃波が、ソケットの燃料流入口へと流入あるいは瞬間的な逆流によって流出する際に、略三角形の1辺又は2辺からなるアブゾーブ面の撓みによって衝撃や脈動が吸収され、可撓性の部材が撓んで変形することにより容積も変化し、燃料の圧力変動を吸収することになる。かくして、インジェクタによる反射波や脈動圧に起因する振動などにより引き起こされる異音の発生や各種不具合の発生を防止することができ、その技術的効果には極めて顕著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフユーエルデリバリパイプの全体を表わす正面図である。
【図2】図1のデリバリパイプのソケット部分の断面図である。
【図3】他の実施例によるデリバリパイプのソケット部分の断面図である。
【符号の説明】
3 ソケット
10 フユーエルデリバリパイプ
11,21 連通管
13,14,15 頂部内側
12a,22a 第1アブゾーブ面
12b,22b 第2アブゾーブ面
12c,22c,短辺
Claims (1)
- 直線状に延びる燃料通路を内部に有する連通管と、この連通管の端部又は側部に固定された燃料導入管と、前記連通管に交差して突設され一部が前記燃料通路に連通し開放端部が燃料噴射ノズル先端を受け入れる複数のソケットとを備えて成るフユーエルデリバリパイプにおいて、
前記連通管の断面形状が略三角形でかつ3辺のうち最も長い辺を底面としたときの縦横比が2分の1以下の偏平な略三角形に作られ、
前記略三角形の各頂部の内側は半径1mm以上のRが付けられた滑らかな形状に作られ、
前記3辺のうち最も長い1辺が可撓性の第1アブゾーブ面を形成し、
前記3辺のうち最も短い1辺に前記ソケットが取り付けられ、
前記略三角形が不等辺三角形から成り、2番目に長い1辺が第2アブゾーブ面を形成しており、
これにより、ソケットに流入する燃料の脈動圧と衝撃波を前記第1と第2のアブゾーブ面の撓みで低減させるようになっていることを特徴とするフユーエルデリバリパイプ。
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