JP4022020B2 - フユーエルデリバリパイプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子制御燃料噴射式自動車用エンジンの燃料加圧ポンプから送給された燃料をエンジンの各吸気通路あるいは各気筒に燃料インジエクタ(噴射ノズル)を介して供給するためのフユーエルデリバリパイプの改良に関し、特に燃料通路を有する連通管と燃料インジエクタを受け入れるソケット(ホルダー)部分の接続構造に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
フユーエルデリバリパイプは、ガソリンエンジンの電子制御燃料噴射システムに広く使用されており、燃料通路を有する連通管から複数個の円筒状ソケットを介して燃料インジェクタに燃料を送った後、燃料タンク側へと戻るための戻り通路を有するタイプと、戻り通路を持たないタイプ(リターンレス)とがある。最近はコストダウンのため戻り通路を持たないタイプが増加してきたが、それに伴い、燃料ポンプ(プランジャポンプ)やインジェクタのスプールの往復運動に起因する反射波や脈動圧によって、フユーエルデリバリパイプや関連部品が振動し耳ざわりな異音を発するという問題が発生するようになってきた。
【0003】
特開平11−2164号「フユーエルデリバリ」は、この問題に着目し、燃料配管系の脈動共振回転数をアイドル回転数以下にすべく、デリバリ本体を板金プレスで製造し、デリバリ本体の剛性と内容量とを一定範囲に設定することを提案している。しかしながら、フユーエルデリバリパイプの本体は断面が円形又は四角形の鋼管を用いて作られるタイプが多く、エンジンの仕様や強度あるいはコストの問題から上記の方法を採用することは問題が多い。
特公平3−62904号「内燃機関用燃料レイル」は、インジエクタラップ騒音を防止するために、ダイヤフラムを用いて連通管内部をソケット側と管壁側とに仕切り、ダイヤフラムの可撓性によって脈動及びインジエクタの残留反応を吸収するようにしている。しかしながら、連通管の長手方向に可撓性のダイヤフラムを配置するにはシール部材が必要になる等、構造が複雑化し、全体の形状が限定されることになって多種多様なエンジンの仕様に対応できないという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、燃料の反射波や脈動圧に起因する振動を抑制して異音の発生を防止することが可能なフユーエルデリバリパイプの構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の前述した目的は、連通管内で各ソケットの燃料流入口に、燃料の脈動圧を吸収するための弾性変形可能な筒形の減衰部材を、その中心軸線が連通管の中心軸線と概ね平行になるように固定し、各減衰部材の両端を封止すると共にその壁面を貫通する減衰細孔を設けて減衰部材内部と連通管内部を連通させて配置することにより達成される。
【0006】
【作用】
かかる構造を採用することにより、本発明のフユーエルデリバリパイプによれば、弾性変形可能な筒形の減衰部材(パイプなど)が筒状のダンパーとして作用し、インジエクタの反射波や連通管の減衰能に起因する振動や脈動による異音の発生を防止することができる。理論的な根拠としては、燃料インジエクタの開閉時に発生する衝撃波が、ソケットの燃料流入口を通過する際に、
(a)減衰部材に衝突した瞬間に減衰部材が撓んで衝撃エネルギを吸収し、燃料の圧力変動を吸収する
(b)減衰部材に設けられた減衰細孔を通過する瞬間に減衰部材が撓んで衝撃エネルギを吸収し、燃料の圧力変動を吸収する
(c)減衰細孔から連通管の内部へ入る際にその方向を曲げることにより衝撃エネルギを吸収し、燃料の圧力変動を吸収する
(d)減衰細孔を通過して連通管に入る際に容積が急膨張して衝撃エネルギを吸収し、燃料の圧力変動を吸収する、ものと理解される。
【0007】
さらに好適な態様として、連通管の少なくとも1つの外壁面を可撓性のダンピング面で構成することにより、このダンピング面が衝撃エネルギをより吸収することになり、減衰効果が更に高められる。
【0008】
また、衝撃波が減衰細孔から連通管の内部へ入る際に、その方向をできるだけ大きく曲げて減衰効果を高めるために、減衰細孔は前述したダンピング面の正面に開口するのではなく、側面又は対向する面に向けて開口するように穿設されることが望ましい。
【0009】
本発明において、減衰部材の形状・板厚・長さなどは、特にエンジンのアイドリング時において振動や脈動が最も小さい値になるように実験や解析によって定めることができる。
【0010】
本発明は基本的に連通管の内部構造に係るものであるから、従来のフユーエルデリバリパイプに対して互換性を維持することができる。本発明の他の特徴及び利点は、添付図面の実施例を参照した以下の記載により明らかとなろう。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明によるフユーエルデリバリパイプ(トップフィードタイプ)10の基本的な全体形状を表しており、四角形断面、円形断面、その他の断面形状の鋼管から成る連通管11がクランク軸方向に沿って延伸し、連通管11の側部にコネクタ5を介して燃料導入管2がろう付けや溶接で固定されている。連通管の端部には燃料タンクに戻るための戻り管を設けることができるが、燃料の脈動圧が問題となるリターンレスタイプのフユーエルデリバリパイプでは、戻り管は設けられていない。
【0012】
連通管11の底面には、噴射ノズルの先端を受け入れるためのソケット3が3気筒エンジンであれば3個が所定の角度で取り付けられている。連通管11には、さらにフユーエルデリバリパイプをエンジン本体に取り付けるための厚肉で堅固なブラケット4が2個横方向に架け渡されている。燃料は矢印の方向へと流れ、ソケット3から燃料インジェクタ(図示せず)を介して各吸気通路あるいは各気筒へと噴射される。
【0013】
図2は本発明の第1実施例によるフユーエルデリバリパイプ20を断面で表しており、連通管21内でソケット3それぞれの燃料流入口13に、燃料の脈動圧を吸収するための減衰パイプ(減衰部材)25が接続され、その中心軸線は連通管の中心軸線と概ね平行になるように位置決めされている。各減衰パイプ25は各ソケット3の燃料流入口13の前後に沿って短く設けられ、その両端はそれぞれキャップ25a,25bで封止されている。各減衰パイプ25の左右に張り出した部分の下端にはそれぞれ減衰細孔26が穿設され、減衰パイプ25の内部と連通管21の内部とは連通状態が保たれている。
【0014】
図3Aは第1実施例におけるソケット部分の断面図であり、減衰パイプ25と連通管21との位置関係を明瞭に表している。連通管21は全体が薄肉の鋼管で倒立アイマスク形状に作られており、連通管の壁面全体21aが可撓性のダンピング面を提供することになって、衝撃吸収効果を高めている。
【0015】
かくして、燃料流入口13を通過する衝撃波が減衰パイプ25に衝突した瞬間にパイプ25が撓んで衝撃エネルギを吸収し、さらに連通管の壁面21aも撓んで衝撃エネルギを吸収し、燃料の圧力変動を吸収するものと理解される。
【0016】
図3Bは第2の実施例によるフユーエルデリバリパイプ30の断面図であり、減衰パイプ35と連通管31との位置関係を表している。連通管31は全体が薄肉の鋼管で略長円形に作られており、連通管の壁面全体31aが可撓性のダンピング面を提供することになって、衝撃吸収効果を高めている。
【0017】
図4は本発明の他の実施例によるフユーエルデリバリパイプ40を断面で表しており、減衰部材が逆L字形の断面形状を有する減衰パイプ45で形成され、連通管41の上面41aだけが薄肉の鋼板から成るダンピング面を提供している。減衰パイプ45の両端はそれぞれキャップ(図示せず)で封止され、減衰パイプ45の左右に張り出した部分の下端にはそれぞれ減衰細孔(図示せず)が穿設され、減衰パイプ45の内部と連通管41の内部とは連通状態が保たれている。
【0018】
図5A,Bは他の実施例によるフユーエルデリバリパイプ50を断面で表しており、全体が厚肉の鋼板から成る連通管51内に三角形断面の減衰パイプ55が配置されている。減衰パイプ55の両端はそれぞれキャップ55a,55bで封止され、減衰パイプ55の左右に張り出した部分の下端にはそれぞれ減衰細孔56が穿設され、減衰パイプ55の内部と連通管51の内部とは連通状態が保たれている。この実施例では連通管の壁面にダンピング面は設けられていない。
【0019】
図6はさらに他の実施例によるフユーエルデリバリパイプ60を断面で表しており、壁面が薄肉の鋼板から成る連通管61内に楕円形断面の減衰パイプ65が配置されている。減衰パイプ65の両端はそれぞれキャップ65a,65bで封止され、減衰パイプ65の左右に張り出した部分の下端にはそれぞれ減衰細孔66が穿設され、減衰パイプ65の内部と連通管61の内部とは連通状態が保たれている。この実施例ではキヤップ65a,65bが、薄肉の金属、例えばSPCC、SPHC、SUS等の帯板材から絞り加工などの塑性加工によって作られ、減衰パイプ65の端部に固着されることにより、減衰パイプ65の末端部分までが撓むのを容易にし、連通管のダンピング面61aと合わせて衝撃吸収効果を高めている。
【0020】
【発明の効果】
以上詳細に説明した如く、本発明によれば、弾性変形可能な減衰部材が筒状のダンパーとして作用し、インジエクタの反射波や連通管の減衰能に起因する振動や脈動による異音の発生を防止することができ、その技術的効果には極めて顕著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフユーエルデリバリパイプの全体を表わす正面図である。
【図2】本発明によるフユーエルデリバリパイプの第1実施例の縦断面図である。
【図3】図2のフユーエルデリバリパイプのソケット部分の断面図である。
【図4】他の実施例によるソケット部分の断面図である。
【図5】他の実施例によるフユーエルデリバリパイプの縦断面図である。
【図6】他の実施例によるフユーエルデリバリパイプの縦断面図である。
【符号の説明】
2 燃料導入管
3 ソケット
10,20,30,40,50,60 フユーエルデリバリパイプ
11,21,31,41,51,61 連通管
13 燃料流入口
21a,31a,41a,61a ダンピング面
25,35,45,55,65 減衰部材
25a,25b,55a,55b,65a,65b キャップ
26,56,66 減衰細孔
Claims (3)
- 直線状に延びる燃料通路を内部に有する金属製の連通管と、この連通管の端部又は側部に固定された燃料導入管と、前記連通管に交差して突設され一部が前記燃料通路に連通し開放端部が燃料噴射ノズル先端を受け入れる複数のソケットとを備えて成る内燃機関用のフユーエルデリバリパイプにおいて、
前記連通管内で各ソケットの燃料流入口に、燃料の脈動圧を吸収するための弾性変形可能な筒形の減衰部材を、その中心軸線が連通管の中心軸線と概ね平行になるように固定し、各減衰部材の両端を封止すると共にその壁面を貫通する減衰細孔を設けて減衰部材内部と連通管内部を連通させて配置したことを特徴とするフユーエルデリバリパイプ。 - 前記連通管の少なくとも1つの外壁面が可撓性のダンピング面で構成されている請求項1記載のフユーエルデリバリパイプ。
- 前記減衰細孔は前記ダンピング面の側面又は対向する面に向けて穿設されている請求項2記載のフユーエルデリバリパイプ。
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