JP4431873B2 - キトサン共重合体 - Google Patents
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Description
ある遺伝子を他の生物へ移植する際にその遺伝子を運ぶ、いわば運びやが必要でありこれをベクタ−と称している。 現在ベクタ−として使用されている物は各種のウイルスであり、細菌に寄生するプラスミドや細菌に感染するファ−ジである。 これらに移植する遺伝子をくっつけて感染させれば細菌に遺伝子を送りこめる。 現在実用化されているベクタ−はこれらウイルスベクタ−であるが、使用するウイルス自体の形質が細胞に移植する際に組み込まれる恐れがあり、安全性に疑問が指摘されている。 キトサンは非ウイルスベクタ−としての可能性が報告されているがウイルスベクタ−と比較すると発現が低く、実用上問題がある。
一方従来イムノアッセイ材料としてラテックス重合生成物が製造されていたが、製造する方法は界面活性剤存在下水溶液中で乳化重合して成された物が大部分であり、界面活性剤の存在しないソ−プレスの物が望まれている。 これは水溶液中に存在する界面活性剤がラテックス診断薬としての作用に影響するからである。 この為、問題点を解決するための手段として、水酸基を有する水可溶性リニア多糖類の陽イオン性誘導体に水中下オレフィンを有する単量体をグラフト重合させ、ソ−プレスのイムノアッセイ材料として有用なラテックス重合生成物を製造される水可溶性リニア多糖類の陽イオン性誘導体−オレフィン単量体グラフト共重合体ラテックスおよびラテックス診断薬の特許が成立している。 乳化重合とは水溶液中にオレフィン単量体を懸濁し通常は界面活性剤などを用いて乳化される重合法で、詳細に述べれば単量体あるいは成長鎖と水素結合、ク−ロン力、電荷移動相互作用、ファンデルワ−ルス力などによって水溶媒界面で相互作用して高分子鎖が重合成長して水溶液中に微粒子を形成さす重合方法である。 通常、重合生成物は重合させた単量体と界面活性剤との混合物として存在する。 この不純物として考えられる界面活性剤はラテックス診断薬に使用される時に妨害する事があり問題と成っていた。 思いもかけずキトサンに水中下オレフィンを有する単量体をグラフト重合させたものはソ−プレスの遺伝子組み替えベクタ−材料として有用であり、本願はソ−プレスのキトサンのラテックス重合生成物を製造するものである。
現在ベクタ−として使用されている物は各種のウイルスであり、細菌に寄生するプラスミドや細菌に感染するファ−ジである。 これらに移植する遺伝子をくっつけて感染させれば細菌に遺伝子を送りこめる。 使用するウイルス自体の形質が細胞に移植する際に組み込まれる恐れがあり、安全性に問題がある。
キトサンの調整
キトサンの単位の式が、
アルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン;ビニルピロリドン;ビニルメチルピロリドンなどが考えられる。
グラフト共重合体の調整
反応は通常水溶液中で行われる。 すなわちキトサンの水溶液中、上記オレフィンを有する単量体を加え、開始剤を添加して反応する。 開始剤としては4価のセリウム塩、4価のマンガン塩、第二鉄塩−過酸化水素が通常用いられるが、他に過硫酸カリウム(KPS)、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)等ラジカル開始剤も用いられる。 反応温度は常温より80℃まで幅広く選択出来る。 必要なら窒素置換して反応を続行させる事も行われる。 それぞれの結合関係は、キトサンのプロトンの引き抜きによるラジカル発生によるオレフィンを有する単量体二重結合の連鎖移動による共有結合である。 この反応では生成物は水溶液中ではラテックスを生じる。 このラテックス重合体は一般的には水、アルコ−ル、又はアセトン、テトラヒドロフラン等有機溶媒に不溶であるがキヤステイング法などにより、容易に成膜出来る。 あるいはアルコ−ルなど不溶溶媒を過剰に加え沈殿として得た後、熱プレス法などにより容易に成型品を作る事が出来る。 上記目的の為に、グラフト重合体中、幹ポリマ−とグラフトポリマ−の比率あるいはその重合度比率は目的に合わせて種々選択出来る。 グラフト重合はその重合率をグラフト率(%)で定められる。 これはグラフト率(%)=(グラフト重合した単量体量/グラフト共重合体中の幹ポリマ−量)×100で定義される。 本発明においてはオレフィン化合物がグラフト鎖として成り、グラフト率が2%から5000%の範囲が適当と考えられる。 本願発明は水酸基を有する部分水可溶性キトサンに水中下オレフィン単量体をグラフト重合させた物である事は繰り返し述べているが、生じた共重合体鎖の構造は特許請求の範囲に記載されている様に(化2)と(化3)よりなる、(化1)式で表わされる、
キトサン共重合体と核酸(DNA、RNA)との複合体
本発明のキトサン共重合体の陽イオン性部分と核酸(DNA、RNA)のリン酸部分は静電的ク−ロン力により容易に結合してポリイオンコンプレックス(PIC)のキトサン共重合体−核酸複合体を生じる。
具体的にはその複合体は
即ち、キトサンを幹ポリマ−とし、オレフィンを有する化合物がグラフト鎖として成る、望ましくはグラフト率が2%から5000%の範囲の(化2)とこの(化3)よりなる、上記(化1)で表わされる、キトサンにオレフィンを有する単量体をグラフト重合して得られる共重合体に、(化4)および(化5)で示されるデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを繰り返し単位とする、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を反応させ生じることを特徴とする、キトサンにオレフィンを有する単量体をグラフト重合して得られる共重合体と、核酸よりなる複合体である。
(化4)、(化5)式はヌクレオチドの構成を示し、式中Bでしめされるプリンまたはピリミジン塩基と糖およびリン酸からなっている。 また式中Bで、具体的にはプリン塩基としてはアデニン、グアニンの2種であり、ピリミジン塩基としてはシトシン、ウラシル、チミンの3種であるが、DNAの繰り返し単位であるデオキシリボヌクレオチドではアデニン、グアニンの2種と、ピリミジン塩基としてはシトシン、チミンが選択され、RNAの繰り返し単位であるリボヌクレオチドではアデニン、グアニンの2種と、ピリミジン塩基としてはシトシン、ウラシルが選択される。 構成される糖はそれぞれデオキシリボヌクレオチドではデオキシリボースであり、リボヌクレオチドではリボースである。
本発明のキトサン共重合体と(化4)、(化5)式中に示されるヌクレオチドを繰り返し単位とする、核酸(DNA、RNA)のリン酸部分は静電的ク−ロン力により容易に結合してポリイオンコンプレックス(PIC)のキトサン共重合体−核酸複合体を生じる。 この複合体形成が遺伝子デリバリーシステムの重要な最初のステップである。 その為、用いる陽イオン性高分子体のベクタ−は疎水親水ドメインを有する事が必要であると思われ、具体的にはキトサンなどの陽イオン性多糖類とビニル単量体の共重合体からなるラテックスを形成し、ビニル単量体の重合部分による疎水部分と陽イオン性多糖類による親水部分をあわせ持たす事が重要であると考えられる。
実施例5のごとく、キトサン共重合体の溶液を鮭の精子由来のDNA溶液に加えたところ、完全に沈澱してキトサン共重合体とDNAの複合体が得られた。
同様な操作をキトサンで行なうとキトサン共重合体と比較して完全に沈澱するのには長時間を要した。
すなわち、キトサン−MMA共重合体/DNAの複合体の沈殿時間は重量増加率180%で30分であつた。 一方その同様な操作を実施例1の原料キトサンの塩酸塩で行なうと完全に沈澱するのに43分を要した。ここで重量増加率は加えたMMAの重量にたいする使用したキトサンの重量との比である。
即ち,重量増加率=(加えたMMAの重量 + 使用したキトサン塩酸塩の重量)/(使用したキトサン塩酸塩の重量)。
同様に実施例6のごとく、キトサン共重合体の溶液を酵母由来のRNA溶液に加えたところ、完全に沈澱して陽イオン性多糖類共重合体とRNAの複合体が得られた。
この場合は同様な操作をキトサンで行なうとキトサン共重合体と比較して、完全に沈澱する時間に差はなかった。
しかしこれらの事はキトサン共重合体がキトサンと比較して核酸との高い反応性を有する事を示している。
この複合体は細胞膜を透過し、エンドサイト−シスで細胞内に容易に導入されエンドソ−ム(輸送小胞体)に取り込まれる。 複合体はさらにエンドソ−ムから細胞室内へ放出され、核膜を透過して核に至り、複合体として核内へ集積する。最終的に核内で複合体から核酸(DNA、RNA)が分離され、転写・遺伝子発現する。
キトサン共重合体ベクタ−によるトランスフェクション
1。トランスフェクションの1日前より被形質変換細胞を100mmシャ−レ中で培養する。 被形質変換細胞の100mm培養シャ−レ中の細胞密度は8×105 個を目安にする。 今回はCOS−1細胞(SV40で形質転換されたアフリカ緑ザル腎細胞)をDMEM培地(牛胎児血清を10%含む)を用い37℃、5%CO2下で培養を行った。
2。洗液のリン酸塩緩衝液1×PBS(phosphate−buffered saline (Dulbecco & Vogt(1954)))を準備する。 この洗液の1×PBS液とキトサン共重合体液を37℃に加温する。
3。10×PBS液を使用して、1×PBS液に希釈する。 トランスフェクション液を次のような手順で準備する。
100mm培養シャ−レを用いて、滅菌チュ−ブ中に組み替えDNAとしてルシフェラ−ゼをコ−ドしたプラスミド(pGL3−Control(プロメガPromega Madison WI))20μgを1×PBS液で540μlに希釈する。 そしてキトサン共重合体液(キトサンとして10mg/ml)の28μlを加える。 よく混ざるように滅菌チュ−ブを指でたたくようにする。
4。被形質変換細胞のCOS−1細胞が存在する培養シャ−レから培養液を除く、 100mm培養シャ−レでは被形質変換細胞を洗液の1×PBSの10mlで2回洗浄する。
5。3。で調整されたDNA−キトサン共重合体複合体液をこの被形質変換細胞に加える。 よく行き渡るように培養シャ−レでは被形質変換細胞をかきまぜる。
6。培養シャ−レを37℃で30分間インキュベイトする。 ときどき培養シャ−レをゆらしてみる。
7。100mm培養シャ−レでは成長培地(DMEM培地)6mlを培養シャ−レに加える。 培養シャ−レを37℃で2時間30分間インキュベイトして、細胞毒性(cytotoxicity)を発現させる。 成長培地を取換え、さらに37℃で48−72時間インキュベイトする。
発現効率
COS−1細胞の形質変換の発現効率は組み込まれている発現ルシフェラ−ゼ活性によった。 すなわちルシフェラ−ゼ アッセイ キット(luciferase asssay kit(Promega Madison WI))を使用し、ルミノメ−タ(Turner model TD−20e luminometer(Turner Designs,Sunnyvale,CA ))により、 TLU値(Turner light units(TLU))を求め、キトサン(脱アセチル化度88.5% 粘度120mpa.S(0.5%酢酸 20℃))のその値を1として各サンプルを比較した。
脱アセチル化度88.5% 粘度120mpa.S(0.5%酢酸 20℃)のキトサン塩酸塩2gを水50mlに溶解し、ついでメタノ−ル5ml、メタクリル酸メチル(MMA)3mlを加え、十分に反応溶液、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後よく攪拌しながら、0.1N硝酸15mlに溶かした硝酸第二セリウムアンモニウムニトレイト190mgを加え反応を開始する。 反応は30℃で1時間行いラテックスが生成する。 反応終了は停止剤としてハイドロキノン1%溶液3mlを使用した。後、反応溶液を3倍量のメタノ−ル中に注入し沈殿を得た。 この沈殿を熱水で十分に洗浄し遠心分離後50℃で減圧乾燥し、ついで乾燥物をソックスレ−抽出器に入れて24時間アセトン抽出を行い、キトサン−MMA共重合体の塩酸塩1.5gを得た。
グラフト率150%
対キトサン収率30%
このものは、キトサン塩酸塩の良溶媒である水にもポリメタクリル酸メチルの良溶媒であるアセトンにも溶けない。 図1はそのものの赤外吸収スペクトルである。
波数1000cm−1から1100cm−1にかけてキトサン由来のピラノーズ環の吸収がみられ、1670cm−1付近にはキトサン塩酸塩には見られないPMMA由来のカルボニル基の吸収がみられる。
実施例2
実施例1と同様な反応を行った後、ラテックスの反応終了溶液をメタノ−ル中に注入せず、水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、キトサン−MMA共重合体ラテックスを得た。 このものは遺伝子組み替えベクタ−として有用でありテスト結果を示す。
テスト方法は(発明の構成の詳細な説明の欄)の手順に従い行った。 即ちベクタ−の効果をみる形質変換の発現効率はCOS−1細胞に組み込まれている発現ルシフェラ−ゼ活性によった。 出発キトサン塩酸塩の値を1として実施例2のサンプルを比較したところ、1.5倍の発現ルシフェラ−ゼ活性が得られた。
実施例3
脱アセチル化度90.5% 粘度60mpa.S(0.5%酢酸 20℃)のキトサン塩酸塩2gを水50mlに溶解し、ついでメタノ−ル5ml、スチレンモノマ−3mlを加え、十分に反応溶液、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後よく攪拌しながら、0.1N硝酸15mlに溶かした硝酸第二セリウムアンモニウムニトレイト190mgを加え反応を開始する。 反応は30℃で1時間行いラテックスが生成する。 反応終了は停止剤としてハイドロキノン1%溶液3mlを使用した。後、反応溶液を3倍量のメタノ−ル中に注入し沈殿を得た。 この沈殿を熱水で十分に洗浄し遠心分離後50℃で減圧乾燥し、ついで乾燥物をソックスレ−抽出器に入れて24時間アセトン抽出を行い、キトサン−スチレン共重合体の塩酸塩1.5gを得た。
グラフト率150%
対キトサン収率30%
このものは、キトサン塩酸塩の良溶媒である水にもポリスチレンの良溶媒であるアセトンにも溶けない。
実施例4
実施例3と同様な反応を行った後、ラテックスの反応終了溶液をメタノ−ル中に注入せず、水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、キトサン−スチレン共重合体ラテックスを得た。 このものは遺伝子組み替えベクタ−として有用でありテスト結果を示す。テスト方法は(発明の構成の詳細な説明の欄)の手順に従い行った。 即ちベクタ−の効果をみる形質変換の発現効率はCOS−1細胞に組み込まれている発現ルシフェラ−ゼ活性によった。 実施例1の出発キトサン塩酸塩の値を1として実施例4のサンプルを比較したところ、1.8倍の発現ルシフェラ−ゼ活性が得られた。
実施例5
実施例2で得られたキトサン−MMA共重合体のラテックスをキトサン換算で10mg/mlの溶液に調整する。
この溶液の1mlを鮭の精子由来のDNA溶液(10mg/ml)1mlに加えたところ、0.5時間で完全に沈澱して、20mgのキトサン−MMA共重合体とDNAの複合体が得られた。同様な操作を原料キトサンの塩酸塩で行なうと完全に沈澱するのに43分を要した。
図2はそのものの赤外吸収スペクトルである。 波数1000cm−1から1100cm−1にかけてキトサン由来のピラノーズ環の吸収がみられ、1220cm−1付近にはDNA由来のP−Oの伸縮振動による吸収がみられ、1730cm−1付近にはMMA由来によるカルボニル基C=Oの吸収が見られる。
実施例6
実施例2で得られたキトサン−MMA共重合体のラテックスをキトサン換算で10mg/mlの溶液に調整する。
この溶液の1mlを酵母由来のRNA溶液(10mg/ml)1mlに加えたところ、1時間で完全に沈澱して、10mgのキトサン−MMA共重合体とRNAの複合体が得られた。 同様な操作を原料キトサンの塩酸塩で行なうと完全に沈澱するのに1時間を要した。
赤外吸収スペクトルをみると、波数1000cm−1から1100cm−1にかけてキトサン由来のピラノーズ環の吸収がみられ、1230cm−1付近にはRNA由来のP−Oの伸縮振動による吸収がみられ、1730cm−1付近にはMMA由来によるカルボニル基C=Oの吸収が見られる。
本発明のキトサンとビニル単量体との共重合体のような非ウイルス性ベクタ−を用いると危険性のあるウイルス類のベクタ−と異なり安全にかつ人工物である事から安定して使用される事になる。 本発明のキトサン共重合体は核酸(DNA、RNA)のリン酸部分と静電的ク−ロン力により容易に結合してポリイオンコンプレックス(PIC)のキトサン共重合体−核酸複合体を生じる。 この複合体形成が遺伝子デリバリーシステムの重要な最初のステップであり、疎水親水ドメインを有している事からこれが核酸との反応を高め、かつエンドサイト−シスで細胞内に容易に導入され、エンドソ−ム(輸送小胞体)に取り込まれる確率を高め、キトサンなどの既存の陽イオン性多糖類ベクタ−の細胞や細胞核への低DNA、低RNA導入率を改善できる。 さらに本発明のキトサン共重合体は化学的に安定である。 たとえばその溶液は120℃、15分のオートクレーブ処理に十分に耐える。 遺伝子組み替えベクタ−を産業化のレベルまで高めるには細胞やバクテリアを大量に培養し、それに効率よく遺伝子導入する技術が必要である事から再現性が優れている事やコストの安い事, 特に化学的に安定している事は重要である。
これらの重要な特性を本発明のキトサン共重合体は具備しており産業上有望であると考えられる。
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