JP4430860B2 - 顔料粒子およびインキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、着色剤として用いるために適する顔料粒子に関する。より詳しくは、本発明は、ナノサイズであるとともに、水性インクジェットインキを含む多様な用途で用いるために適する顔料粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1には、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(エチレンイミン)から成る群から選択された成分であって、ヘテロポリアニオンで錯化されている成分に共有結合された染料と水とを含む異種相インキ組成物が開示されている。
【0003】
特許文献2には、(a)(1)インキ着色剤を錯化、レーキ化または媒染させるために前記インキ着色剤と相互作用することが可能な極性親水性モノマーとジアルキルシロキサンとのブロックコポリマーまたはグラフトコポリマー、(2)インキ着色剤を錯化、レーキ化または媒染させるために前記インキ着色剤と相互作用することが可能な官能性側鎖を有するオルガノポリシロキサンコポリマー、(3)過弗化ポリアルコキシポリマー、(4)インキ着色剤を錯化、レーキ化または媒染させるために前記インキ着色剤と相互作用することが可能な少なくとも一個の基をその上に有するパーフルオロアルキル界面活性剤、および(5)それらの混合物から成る群から選択された材料を含む定着(fixing)用流体を基板に塗布(apply)する工程と、(b)前記定着用流体に接触すると錯化、レーキ化または媒染されることになる着色剤と水とを含むインキ組成物をインクジェット印刷装置に組み込む工程と、(c)前記インキ組成物の小滴を基板上に画像状パターンで噴出させる工程と、を含む方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、(a)流体供給と、(b)前記流体供給と連動結合しており、流体でその濡れが可能にされる前記流体分配部材と、(c)前記流体分配部材上に位置する多孔質計量膜であって、前記流体分配部材からの流体を基板上に均一に計量することを可能にする多孔質計量膜と、を含む流体沈積装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第4,705,567号明細書
【特許文献2】
米国特許第6,270,214号明細書
【特許文献3】
米国特許第6,142,618号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
既知の組成物およびプロセスが意図した目的のために適する一方で、改善された着色剤組成物が必要とされ続けている。さらに、染料の色域と明度に匹敵する色域と明度を有する顔料粒子が必要とされ続けている。さらに、比較的均一な平均粒径の顔料粒子が必要とされ続けている。さらに、界面活性剤も分散剤も必要とせずに水に分散できる顔料粒子が必要とされ続けている。顔料着色剤を含有するとともに、染料着色剤を含有するインキに匹敵する色域と明度を有する水性インキも必要とされている。さらに、1200ジェット/インチの密度でインクジェット滴噴出器(ノズル)中で用いるインキの配合物のために適するとともにナノ寸法である顔料粒子を含有する水性インキが必要とされている。さらに、画像性能が良好な画像の作成を可能にする水性インキが必要とされている。さらに、プリント解像度が良好な画像の作成を可能にする水性インキが必要とされている。耐水性が良好な画像の作成を可能にする水性インキも必要とされ続けている。さらに、永久記録保存品質が良好な画像の作成を可能にする水性インキが必要とされ続けている。さらに、インクジェット印刷プロセスにおいて用いるために適する前述した利点を有する水性インキが必要とされ続けている。さらに、熱インクジェット印刷プロセスにおいて用いるために適する前述した利点を有する水性インキが必要とされ続けている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)水中でポリアルキレンオキシド化合物の溶液を調製する工程と、(b)水中でカチオン染料の溶液を調製する工程と、(c)混合物を生じさせるために前記ポリアルキレンオキシド化合物を含有する溶液と前記カチオン染料を含有する溶液とを混合する工程と、(d)水、アルコールまたはそれらの混合物中でヘテロポリ酸を含有する溶液を前記混合物に添加し、よって300nm以下の平均粒径を有する顔料粒子を生じさせる工程と、(e)前記混合物に前記ヘテロポリ酸を添加した後、塩基の添加によって前記混合物を中和する工程と、を含み、
前記ポリアルキレンオキシド化合物は、以下の一般式に示すものであり、
【化10】
(式中、nは7以上70以下の平均値を有する。)
前記カチオン染料は、以下に示す一般式で表されるもの、
【化11】
(式中、Aは、塩化物、臭化物、沃化物、メチルスルホネート、トシレート、トリフレート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、ヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択されるアニオンである。)
または、以下に示す一般式で表される染料であり、
【化12】
(式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 およびR 5 は、それぞれ他とは独立して、ハロゲン原子、メチル基またはエチル基であり、Aは、塩化物、臭化物、沃化物、メチルスルホネート、トシレート、トリフレート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、ヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択されるアニオンである。)
上記(a)から(e)の工程によって調製された顔料粒子に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の顔料粒子は、ポリアルキレンオキシド化合物、カチオン染料およびヘテロポリ酸を混合することにより調製される。いかなる特定の理論にも限定されないが、本発明の顔料粒子が(a)ヘテロポリ酸とカチオン染料の反応生成物と(b)ヘテロポリ酸とポリアルキレンオキシド化合物の反応生成物のアマルガムまたはブレンドを含むことが考えられる。
【0009】
ポリアルキレンオキシド化合物は、反復エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド反復単位を含むいかなる非イオン界面活性剤であることも可能である。適するポリアルキレンオキシド化合物の例には、PLURONIC(登録商標)名で市販されているものなどのエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、PETROLITE(登録商標)名で市販されているものなどのエトキシル化アルコール、SILWET(登録商標)名で市販されているものなどのアルコキシル化シロキサン、GLUCOPAN(登録商標)名で市販されているものなどのアルコキシル化アルキルポリグルコシドなど、およびそれらの混合物が挙げられる。材料の適するクラスの一例は、以下の一般式のアルキルアリールポリアルキレンオキシド化合物のクラスである。
【化13】
式中、R’は水素原子またはメチル基であり、nは反復アルキレンオキシド基の数を表す整数であり、一般には約6〜約60、好ましくは約6〜約30である。但し、nの値は、これらの範囲外であることが可能である。Arは、一般には炭素原子数約6〜約14、好ましくは炭素原子数約6〜約10のアリール基(置換アリール基を含む)である。但し、炭素原子数は、これらの範囲外であることが可能である。Rは、一般には炭素原子数1〜約22、好ましくは炭素原子数1〜約12のアルキル基(直鎖、分岐、飽和、不飽和、環式および置換のアルキル基を含む)である。但し、炭素原子数は、これらの範囲外であることが可能である。ここで置換アルキルおよび置換アリール基上の置換基は、ヒドロキシ基、アミン基、アンモニウム基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、スルフィド基、ホスホニウム基およびハロゲン原子などであることが可能である(しかし、それらに限定されない)。ここで二個以上の置換基は共に接合して環を形成することが可能である。ポリアルキレンオキシド鎖は、例えば、スルフェート基またはスルホネート基で置換させることが可能である。適するポリアルキレンオキシド化合物の例には、例えば、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル(Aldrich Chemical Co.)から入手できるTRITON(登録商標)シリーズの界面活性剤、ミシガン州ミッドランドのダウケミカル(Dow Chemical Co.)から入手できるTERGITOL(登録商標)シリーズの界面活性剤、およびニュージャージー州クランベリーのローヌ・プーラン・サーファクタンツ・アンド・スペッシャリティーズ(Rhone−Poulenc Surfactants and Specialties)から入手できるIGEPAL(登録商標)シリーズの界面活性剤などとして広く市販されているエトキシル化アルキルフェノールが挙げられる。例えば、一般式
【化14】
のポリアルキレンオキシド化合物のTRITON(登録商標)界面活性剤シリーズの中で、TRITON(登録商標)X114(式中、nは約7〜8の平均値を有する)、TRITON(登録商標)X100(式中、nは約9〜10の平均値を有する)、TRITON(登録商標)X102(式中、nは約12〜13の平均値を有する)、TRITON(登録商標)X305(式中、nは約30の平均値を有する)、TRITON(登録商標)X405(式中、nは約40の平均値を有する)、およびTRITON(登録商標)X705(式中、nは約70の平均値を有する)は本発明のために特に適する。
【0010】
適するカチオン染料の例には、式
【化15】
(式中、Aは、塩化物、臭化物、沃化物、メチルスルホネート、トシレート、トリフレート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネートまたはヘキサフルオロホスフェートを含む強酸の共役塩基などの、あらゆる所望のアニオンまたは適するアニオンである)のBasic Yellow51、また一般式、
【化16】
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ他とは独立して、ハロゲン原子、メチル基またはエチル基であり、Aは、塩化物、臭化物、沃化物、メチルスルホネート、トシレート、トリフレート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネートまたはヘキサフルオロホスフェートを含む強酸の共役塩基などの、あらゆる所望のアニオンまたは適するアニオンである)のRhodamine 6G(Basic Red1)、Rhodamine123水和物、Rhodamine B、Rhodamine6G Perchorate、Rhodamine6GテトラフルオロボレートおよびRhodamine110などのRhodamine染料の系列の全部(any)、また式
【化17】
(式中、Aは、塩化物、臭化物、沃化物、メチルスルホネート、トシレート、トリフレート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネートまたはヘキサフルオロホスフェートを含む強酸の共役塩基などの、あらゆる所望のアニオンまたは適するアニオンである)のVictoria Blue B(Basic Blue26)や、Methyl Yellow、Methyl Violet(Solvent Violet8)およびAuramine O(Basic Yellow2)など、Basic Yellow染料番号、17および21など、Basic Red染料番号、2,5,9および29など、Basic Blue染料番号6,7,9,11,12,16,17,24,41,47および66など、他のあらゆるBasic染料およびそれらの混合物が挙げられる。
【0011】
ポリオキソメタレートとしても知られているヘテロポリ酸は、無機の金属−酸素クラスターを含む酸である。これらの材料は、例えば、「Polyoxometalate Chemistry:An Old Field with New Dimensions in Several Disciplines」,M.T.Pope et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,Vol.30,p.34(1991)において論じられている。適するヘテロポリ酸の例には、一般式H3PO4・12WO3・XH2O(式中、Xは、12または24などを含む(しかし、それらに限定されない)一般値を有する変数である)のホスホタングステン酸、一般式H4SiO2・12WO3・XH2O(式中、Xは、12,24または26などを含む(しかし、それらに限定されない)一般値を有する変数である)のシリコタングステン酸、および一般式12MoO3・H3PO4・XH2O(式中、Xは、12,24または26などを含む(しかし、それらに限定されない)一般値を有する変数である)のホスホモリブデン酸など、ならびにそれらの混合物が挙げられ、それらはすべて、例えばウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル(Aldrich Chemical Co.)から市販されている。
【0012】
本発明の顔料粒子は、ポリアルキレンオキシド化合物、カチオン染料およびヘテロポリ酸を混合することにより調製される。より詳しくは、ポリアルキレンオキシド化合物は水に溶解させるか、あるいは分散させて、一般には少なくとも約0.0001モル、好ましくは少なくとも約0.001モル、より好ましくは少なくとも約0.009モル、且つ一般には約2モル以下、好ましくは約1.5モル以下、より好ましくは約1モル以下の濃度で水中のミセルを生じさせる。但し、量は、これらの範囲外であることが可能である。カチオン染料も、一般には少なくとも約0.5重量%、好ましくは少なくとも約1重量%、より好ましくは少なくとも約2重量%、且つ一般には約5重量%以下、好ましくは約4重量%以下の濃度で水に溶解させる。但し、量は、これらの範囲外であることが可能である。
【0013】
その後、これらの二つの溶液を合わせて混合する。ポリアルキレンオキシド化合物とカチオン染料の混合物は、その後攪拌され、一般には約20〜約60分、好ましくは約20〜約40分の時間にわたり、一般には約50〜約90℃、好ましくは約60〜約80℃の温度に加熱される。但し、温度および時間は、これらの範囲外であることが可能である。加熱プロセス後に、混合物は放置して攪拌しながら室温(一般には約20〜約25℃である。但し、温度はこの範囲外であることが可能である)に冷却される。
【0014】
その後、冷却された混合物は、水、アルコール(グリコール、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールなど)またはそれらの混合物中にヘテロポリ酸を含有する溶液で滴定される。ヘテロポリ酸溶液は、一般には少なくとも約0.03モル、好ましくは少なくとも約0.035モル、より好ましくは少なくとも約0.05モル、且つ一般には約0.2モル以下、好ましくは約0.1モル以下の濃度で多酸を含有する。但し、量は、これらの範囲外であることが可能である。この滴定プロセス中に、ヘテロポリ酸溶液は、所望量のヘテロポリ酸が混合物に添加されるまで、激しい攪拌を行いつつ徐々に滴下される。ヘテロポリ酸は、ヘテロポリ酸対ポリアルキレンオキシド化合物のモル比が一般には少なくとも約1:1、好ましくは少なくとも約5:1、且つ一般には約7:1以下、好ましくは約6:1以下、より好ましくは約5.5:1以下であるような量で添加される。但し、量は、これらの範囲外であることが可能である。
【0015】
ポリアルキレンオキシド化合物とカチオン染料の水性混合物にヘテロポリ酸溶液を添加する間、溶液は最初は透明なままであり、後で多少の曇りを示す。ヘテロポリ酸は粒子核形成が起きるまで添加される。多すぎるヘテロポリ酸が添加される場合、塊状凝集が観察される。混合物に添加されるヘテロポリ酸の量は、所望サイズの顔料粒子の形成をもたらすヘテロポリ酸の量を決定するために、滴定および得られた製品の後続の粒子分析によって最適化することが可能である。
【0016】
その後、固体顔料粒子を含有する混合物は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムまたはアミンなどの強塩基(base)を添加することにより一般には約5〜約8、好ましくは約6〜約7のpHに中和される。但し、pHは、これらの範囲外であることが可能である。中和プロセスは、ヘテロポリ酸に結合したプロトンを中和し、形成された顔料粒子の一層の帯電または粒子サイズの一層の成長を妨げる。
【0017】
本発明の顔料粒子は、一般には少なくとも約50nm、好ましくは少なくとも約80nm、より好ましくは少なくとも約100nm、且つ一般には約300nm以下、好ましくは約250nm以下、より好ましくは約200nm以下の平均粒径を有する。但し、粒子サイズは、これらの範囲外であることが可能である。粒子は、多くの場合比較的均一なサイズの粒子であり、GSDの一般な粒子サイズ分布は約1.3以下、好ましくは約1.2以下、より好ましくは1.1以下に等しい。但し、粒子サイズ分布は、これらの範囲外であることが可能である。粒子サイズは、透過電子顕微鏡法またはドップラーシフト光散乱測定などの所望のいかなる技術によっても測定することが可能である。
【0018】
本発明の顔料粒子は、インクジェット印刷のために用いられるインキを含む水性インキなどの用途のために特に適する。顔料粒子を水性インキ中で用いようとする時、インキ調製プロセスは、一切の粒子分離工程を排除することにより単純化することが可能である。他のインキ原料は、粒子調製プロセスから生じる顔料粒子の水性中和分散液に単純に添加することが可能である。しかし、必要ならば、濾過、凍結乾燥、透析、超遠心分離、溶媒の蒸発、またはこれらの技術の組み合わせなどの、いかなる所望の方法または適する方法によっても粒子を分離することが可能であり、そして粒子を他の材料に再分散させることが可能である。粒子のナノサイズを想定すると、樹脂結合剤の添加および溶媒のストリッピングは、別の材料または媒体に粒子を分散させるための好ましい方法でありうる。本発明の顔料粒子の他の用途の例には、電子写真などの静電画像形成プロセス用のトナー中の着色剤、乳化凝集トナー製造プロセス、組織染などの生物学的用途、光学顕微染色液、フレキソ印刷インキ、またはディスプレイにおいて用いるための微粒子分散液が挙げられる。
【0019】
水性インキ組成物において、顔料は、界面活性剤の非イオンセグメントおよび/または粒子の表面上のイオン化基によって可溶化され、通常は、インキ中に安定な状態で粒子を維持するためにインキに追加の界面活性剤も分散剤も添加する必要はない。しかし、本発明は、追加の界面活性剤または分散剤を含有するインキも包含する。
【0020】
本発明の水性インキ組成物は水と本発明による顔料粒子とを含む。インキは水性液体ビヒクルを含む。液体ビヒクルは、水のみから成ることが可能であるか、あるいはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミド、エーテル、ウレア、置換ウレア、エーテル、カルボン酸およびカルボン酸の塩、エステル、アルコール、有機スルフィド、有機スルホキシド、スルホン(スルホランなど)、アルコール誘導体、カルビトール、ブチルカルビトール、セルソルブ、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エーテル誘導体、アミノアルコール、ケトン、N−メチルピロリジノン、2−ピロリジノン、シクロヘキシルピロリドン、ヒドロキシエーテル、アミド、スルホキシド、ラクトン、高分子電解質、メチルスルホニルエタノール、イミダゾール、ベタイン、および他の水溶性材料または水混和性材料、ならびにそれらの混合物などの水溶性成分または水混和性成分と水との混合物を含むことが可能である。水溶性有機液または水混和性有機液と水との混合物が液体ビヒクルとして選択される時、水対有機の比は、一般には約100:0〜約30:70、好ましくは約97:3〜約40:60の範囲である。液体ビヒクルの非水成分は、一般に、水の沸点(100℃)より高い沸点を有する保湿剤または共溶媒として作用する。本発明のインキ組成物において、液体ビヒクルは、一般にはインキの約80〜約99重量%、好ましくはインキの約90〜約99重量%の量で存在する。但し、量は、これらの範囲外であることが可能である。
【0021】
本発明のインキは、一般には少なくともインキの約2重量%、好ましくは少なくともインキの約3重量%、より好ましくは少なくともインキの約4重量%、且つ一般にはインキの約10重量%以下、好ましくはインキの約8重量%以下、より好ましくはインキの約6重量%以下の、いかなる所望の量または有効量でも顔料粒子を含有する。但し、量は、これらの範囲外であることが可能である。必要ならば、顔料、染料またはそれらの混合物などの他の着色剤も本発明のインキに含めることが可能である。
【0022】
インキに対する他の任意の添加剤には、インキの約0.0001〜約4重量%、好ましくはインキの約0.01〜約2.0重量%の量で存在するゼネカ(Zeneca)から入手できるDOWICIL(登録商標)150,200および75のベンゾエート塩、ソルベート塩、PROXEL(登録商標)GXLおよびBD20、ならびにゼネカ(Zeneca)から入手できるPARADYME(登録商標)などの殺虫剤、あるいはインキの0〜約1重量%、好ましくはインキの約0.01〜約1重量%の量で存在する酸または塩基であるホスフェート塩、カルボキシレート塩、スルフィット塩およびアミン塩などのpH調整剤などが挙げられる。
【0023】
インクジェット印刷用途で用いられる時、本発明によるインキ組成物は、一般に、インクジェット印刷プロセスで用いるために適する粘度の組成物である。例えば、熱インクジェット印刷用途に関して、一般には、インキ粘度は、室温(すなわち、約25℃)で、一般には少なくとも約1センチポイズ(約0.1cPa)、且つ一般には約10センチポイズ(約1cPa)以下、好ましくは約7センチポイズ(約0.7cPa)以下、より好ましくは約5センチポイズ(約0.5cPa)以下である。但し、粘度は、特に音響インクジェット印刷などの用途のためにインキを用いる時、これらの範囲外であることが可能である。マーキングペン用途で用いられる時、インキ組成物は、一般に、こうした用途で用いるために適する粘度の組成物である。
【0024】
インキ組成物は、適するいかなるpHまたは所望のpHの組成物であることも可能である。熱インクジェット印刷プロセスなどの幾つかの実施形態において、一般的なpH値は、少なくとも約2、好ましくは少なくとも約3、より好ましくは少なくとも約5、且つ一般には約11以下、好ましくは約10以下、より好ましくは約9以下である。但し、pHは、これらの範囲外であることが可能である。
【0025】
インキ組成物は、適するいかなるプロセスによっても調製することが可能である。一般には、インキは、原料の単純混合によって調製される。一つのプロセスは、インキを得るためにインキ原料のすべてを合わせて混合し、混合物を濾過することを伴う。インキは、原料を混合し、必要ならば加熱し、そして濾過し、続いて所望の追加のあらゆる添加剤を混合物に添加し、均質混合物を得るまで一般には約5〜約10分中程度の振とうにより室温で混合することにより調製することが可能である。あるいは、原料のすべてを混合し、必要ならば加熱し、そして濾過することによるなどの所望のあらゆる手順により行われるインキ調製プロセス中に任意のインキ添加剤を他のインキ原料と混合することが可能である。
【0026】
本発明のインキ組成物は、インキ組成物をインクジェット印刷装置に組み込み、インキ組成物の小滴を基板上に画像状パターンで噴出させることを伴うプロセスにおいて用いることが可能である。特に好ましい実施形態において、印刷装置は、ノズル中のインキを画像状パターンで選択的に加熱し、よってインキの小滴を画像状パターンで噴出させる熱インクジェットプロセスを用いる。もう一つの実施形態において、印刷装置は、インキの小滴を音響ビームによって画像状パターンで噴出させる音響インクジェットプロセスを用いる。なおもう一つの実施形態において、印刷装置は、インキの小滴を圧電振動エレメントの振動によって画像状パターンで噴出させる圧電インクジェットプロセスを用いる。XEROX(登録商標)4024紙などの普通紙、XEROX(登録商標)Image Series紙、Courtland4024 DP紙、罫ノート紙、証券紙、Sharp Companyシリカ被覆紙などのシリカ被覆紙およびJujo紙など、透明材料、布地、織物製品、プラスチック、高分子フィルム、金属および木などの無機基板などを含む適するいかなる基板を用いることも可能である。好ましい実施形態において、本プロセスは、普通紙などの多孔質基板またはインキ吸収基板上に印刷すること伴う。
【0027】
【実施例】
実施例I
シアン、マゼンタおよびイエロー顔料粒子を次の通り調製した。9×10-4モルのエトキシル化(ethoxylated)アルキルフェノール(ニューヨーク州ニューヨークのユニオンカーバイド(Union Carbide)から得られるTRITON(登録商標)X−405)を含有する水溶液を以下の表で明示した塩基性染料と以下の表で示した量で混合した。その後、こうして形成された混合物を20分にわたり80℃に加熱し、その後放置して連続で攪拌しながら室温(約20℃)に冷却した。その後、冷却された混合物を一定混合しつつ0.03472モルのホスホタングステン酸(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル(Aldrich Chemical Co.)から得られるもの)の水溶液で計算量が添加されるまで徐々に滴定した。この量は、様々な量のホスホタングステン酸溶液を類似の混合物に添加し、続いて、こうして形成された顔料粒子の得られた粒子サイズを測定する日常的な実験によって前もって決定されていた。その後、水酸化アンモニウムの添加によって中和を行いつつ混合物を攪拌した。顔料粒子の塩基滴定は、最適pHが約7以下であったことを示した。中和が完了した時、得られた顔料粒子分散液を透過電子顕微鏡によって粒子形状およびサイズについて調べ、ドップラーシフト光散乱測定を用いて確認した。
【0028】
【表1】
【0029】
これらの溶液の色域もX−RITE938デンシトメータで評価した。比較の目的で、本発明の三元顔料粒子を製造した同じ染料のレーキ化顔料3重量%を含有する水溶液の色域も評価した。結果は次の通りであった。
【0030】
【表2】
【0031】
データが示すように、本発明の三元顔料粒子は、多くの場合、それらの三元顔料粒子を調製した染料のレーキ化顔料に匹敵する色域と明度を示した。
【0032】
実施例II
以下の原料の単純混合によってインキ組成物を調製した。用いた顔料は実施例Iにおいて調製された三元顔料であった。SILWET(登録商標)材料をコネチカット州グリニッジのクロンプトンコーポレーション(Crompton Corporation)から得た。表に示した量は重量%である。
【0033】
【表3】
【0034】
こうして調製されたインキをHEWLETT−PACKARD694cインクジェットプリンタに組み込み、紙上および透明素材上に画像を生じさせるために用いた。インキは、XEROX(登録商標)トランスペアレンシ上の優れた色域、優れた投影効率、XEROX(登録商標)Color Xpressions紙上の90%より大きい耐水性値、およびこの紙上の0.05未満の湿り汚れおよび乾燥汚れを示した。
Claims (4)
- (a)水中でポリアルキレンオキシド化合物の溶液を調製する工程と、(b)水中でカチオン染料の溶液を調製する工程と、(c)混合物を生じさせるために前記ポリアルキレンオキシド化合物を含有する溶液と前記カチオン染料を含有する溶液とを混合する工程と、(d)水、アルコールまたはそれらの混合物中でヘテロポリ酸を含有する溶液を前記混合物に添加し、300nm以下の平均粒径を有する顔料粒子を生じさせる工程と、(e)前記混合物に前記ヘテロポリ酸を添加した後、塩基の添加によって前記混合物を中和する工程と、を含み、
前記ポリアルキレンオキシド化合物は、以下の一般式に示すものであり、
前記カチオン染料は、以下に示す一般式で表されるもの、
または、以下に示す一般式で表される染料であり、
上記(a)から(e)の工程によって調製された顔料粒子。 - (a)水中でポリアルキレンオキシド化合物の溶液を調製する工程と、(b)水中でカチオン染料の溶液を調製する工程と、(c)混合物を生じさせるために前記ポリアルキレンオキシド化合物を含有する溶液と前記カチオン染料を含有する溶液とを混合する工程と、(d)水、アルコールまたはそれらの混合物中でヘテロポリ酸を含有する溶液を前記混合物に添加し、300nm以下の平均粒径を有する顔料粒子を生じさせる工程と、(e)前記混合物に前記ヘテロポリ酸を添加した後、塩基の添加によって前記混合物を中和する工程と、を含み、
前記ポリアルキレンオキシド化合物は、以下の一般式に示すものであり、
前記カチオン染料は、以下に示す一般式で表されるもの、
または、以下に示す一般式で表される染料であり、
上記(a)から(e)の工程によって調製された顔料粒子と水とを含むインキ組成物。 - (a)水中でポリアルキレンオキシド化合物の溶液を調製する工程と、(b)水中でカチオン染料の溶液を調製する工程と、(c)混合物を生じさせるために前記ポリアルキレンオキシド化合物を含有する溶液と前記カチオン染料を含有する溶液とを混合する工程と、(d)水、アルコールまたはそれらの混合物中でヘテロポリ酸を含有する溶液を前記混合物に添加し、300nm以下の平均粒径を有する顔料粒子を生じさせる工程と、(e)前記混合物に前記ヘテロポリ酸を添加した後、塩基の添加によって前記混合物を中和する工程と、を含み、
前記ポリアルキレンオキシド化合物は、以下の一般式に示すものであり、
前記カチオン染料は、以下に示す一般式で表されるもの、
または、以下に示す一般式で表される染料であり、
上記(a)から(e)の工程によって顔料粒子を調製する方法。 - 請求項2に記載のインキ組成物をインクジェット印刷装置に組み込む工程と、インキ組成物の小滴を基板上に画像状パターンで噴出させる工程とを含む方法。
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